これらの物語りは、掲示板にて連載された小説をまとめたものである
序章1養生記〜みつお編 貞子の休日 6
序章2みつおの冒険 貞子の休日 7
序章3夜歩く 貞子の休日 8
貞子の休日1 貞子の休日 9
貞子の休日 2 貞子の休日 10
貞子の休日 3 貞子の休日 11
貞子の休日 4 貞子の休日 12
貞子の休日 5
ある日、従姉妹の加也子から合コンの誘いを受ける川村貞子。見知らぬ面々の集結はまったく予期しなかった事件へと、様々な情念と思惑をはらみつつ発展していく。<みつお>の夢見た世界で繰広げられる不条理な観念劇とは。山下昇が酒場からの帰途、夜空にとけ込む異相の自分をかいま見ることになって、、、
ネット時代の情報性のもうひとつの世界像に、仮想現実ならではの信憑が胎動し始める。エロスが秘める肉体性の血と陶酔は、重層に連なる時間を複合しながら多重空間へとすべりこみ、独自の無常観に導かれていく、、、アフォリズムを散りばめた論理とレトリックが絶妙な配合を見せる、彗星の如く現れた新感覚掲示版劇場、鮮烈なる処女作。
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暗殺の夜・青い影
暗殺の夜 2
暗殺の夜 3 青い影 3
暗殺の夜 4 青い影 4
暗殺の夜 5 青い影 5
肉体の門 青い影 6
青い影 7
己の影を喪失したのは、何故なのか、、、まぼろしの虚像の奥底を覗き見る者たち。あらかじめ決められたのは悲劇という名の桃源郷だったとしたら、、、それぞれの魂の彷徨を、破壊的なエロティシズムで通し、現代人の抱える暗黒面の中に鋭く切り込んだ、無益な情熱劇の沸騰点。全作品にわたり貫く<山下昇>の純粋理性省察とも言える「暗殺の夜」、のちにひとつの奇跡へと架け橋を見せる<森田梅男>の宿命的な暗渠への転落を丹念な筆致で描いた「青い影」、他に導入部の「肉体の門」を収録。
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理由なき反抗
理由なき反抗 1 理由なき反抗 8 理由なき反抗 15
理由なき反抗 2 理由なき反抗 9 理由なき反抗 16
理由なき反抗 3 理由なき反抗 10 理由なき反抗 17
理由なき反抗 4 理由なき反抗 11 理由なき反抗 18
理由なき反抗 5 理由なき反抗 12 理由なき反抗 19
理由なき反抗 6 理由なき反抗 13 理由なき反抗 20
理由なき反抗 7 理由なき反抗 14 理由なき反抗 21
「貞子の休日」は始まりでしかなかった、、、霧に包まれたどんよりした森の中、人々は渦にのみ込まれてゆくように何処までも突き進もうとする。遠心力は自らの羅針盤と壊れた双眼鏡を大いなる愛の嵐の砂塵へと連れゆき、疾風は襞の間隙にまで吹き荒び、めまいを与えるだろう。 ざらついた手触りは不快な感触をもたらすも、忘れ去った夢魔なる過去が甘美な被虐性に或る一面を彩られているのを見逃してはならない。 奇妙な果実は底なし沼の畔に棲息している。
あれから月日は流れたが、風に運ばれない種子に似た思いは加也子の胸中に沈滞したままだった。貞子の従姉妹をめぐる幼年期からの想い出を縦軸にしながら、個から外部への超越性を、イデア論と永遠回帰の融合を大胆に駆使して挑んだ問題作。
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大いなる正午
大いなる正午1 大いなる正午11 大いなる正午21
大いなる正午2 大いなる正午12 大いなる正午22
大いなる正午3 大いなる正午13 大いなる正午23
大いなる正午4 大いなる正午14 大いなる正午24
大いなる正午5 大いなる正午15 大いなる正午25
大いなる正午6 大いなる正午16 大いなる正午26
大いなる正午7 大いなる正午17 大いなる正午27
大いなる正午8 大いなる正午18 大いなる正午28
大いなる正午9 大いなる正午19 大いなる正午29
大いなる正午10 大いなる正午20 大いなる正午30
壮絶な死闘の後に残されたものは、、、現実から虚像が構築されようとする「場」に向き合う人々を、透徹した洞察で抉った心理小説。花野西安と木梨銀路の物語が交互に展開する中、みつおの残した迷宮の謎が判明していく、、、生から死へ、或いは死から生へと潜り抜ける超越性の極限を提示して見せることにより、不確実なる領域は止揚され、新たなる次元に可能性が見い出されようとされる。全編が白日夢に覆われ、シニシズムで貫ら抜かれながらも、基調には聖性への限り無い畏敬の念なる魂が横たわる様を薫らせる。無常感そのものが大きく肯定される際を、絢爛たる悪魔的筆致で描いた異色作。
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純愛残酷物語〜第一部・晩夏
「大いなる午後」の前後を至上主義的な愛で謳いあげる独立した三つの物語。愛の原型があるとすれば、どのような形で表出されるのだろうか、その内部の複雑な構造への辛辣なまでの分析。第一部では純粋無垢な盲目の恋病に宿る、結晶の完結性の中へ省察を企て、恋愛関係に於ける囚われと云う神話要素を地上にもう一度引き下ろし、更には地下深くに眠る自意識の根源にまで遡って行く。小高鈴子はある日の午後、幼子を連れた女性の姿にある種の感銘を受ける。そして次第に木梨銀路に対する淡い憧憬が、無惨なる年代記のベールとして剥がされてゆく、、、偽悪的讃辞の文体を駆使しながら純愛に肉迫する。
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純純愛残酷物語〜第二部・残身
惨劇からすでに十年の月日が流れていた。この町出身の俳優花野西安は自ら演出を手がけるまでに成長し、国際的な評価が高まる中、最新作として惨劇そのものを題材にした映画を製作すると発表したのだった。そんな彼にもとに事件後、消息を絶ったあの森田梅男の父親から思いもよらない手紙が届けられる、、、かつて西安は梅男と共演した縁もあり、その父親を一度だけ訪ねた経緯があった。意味あり気な文面はつかみどころがなさそうにも読めたが、次第に熱病に患ったかのほとばしる心情が吐露されだし、微かながら狂気の色調さえおびだしてくるのだった、、、ほぼ全編が書中で展開される、、、未来へと疾走する血煙の鎮魂歌。
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純純愛残酷物語〜第三部・断章
第三部・断章1 第三部・断章9 第三部・断章17
第三部・断章2 第三部・断章10 第三部・断章18
第三部・断章3 第三部・断章11 第三部・断章19
第三部・断章4 第三部・断章12 第三部・断章20
第三部・断章5 第三部・断章13 第三部・断章21
第三部・断章6 第三部・断章14 第三部・断章22
第三部・断章7 第三部・断章15
第三部・断章8 第三部・断章16
「貞子の休日」での舞台の提供者でもあり、また重要な役どころを演じた、大橋性也の若き日の物語。社会人として出発した青年を待ち受けていたのは、禁断の果実とも云える魅惑の恋であった。見失われたのは決して行方ではない、、、性也はどこか覚めた愛欲を深い内省で捉えて整合性を保持しようと努めるのだが。やがては大きな現実の障壁に阻まれるまでの心の襞を、硬質な文体で綴りあげた三部作有終を飾る美の結晶。
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もうすでに描かれてしまった紋様が、いま新たに過ぎ去りし時の彼方から展望される。ちょうど凶夢を予知しつつも、濃い霧のむこうに切なくなるほどの眺望が開けてくる胸の高鳴りを感じてしまうように。
「貞子の休日」のラスト、ただひとり見知らぬ世界に取り残される木下富江の少女時代にまつわる限りなく現実的な物語を敷物にしながら、闇夜に彷徨する足音は無重力空間のうえを滑ってゆく緊張と弛緩を産出する。はかなくもおぞましげに展開される多重時空への冷徹な接触、それは手作りのぬくもりを醸し出す根源的な溶岩を味わいつくす為にとぐろ巻く文体となり、焼けただれた美学へと疾走してゆく。
このアナクロニズムこそ、現代ではもはや語られることのない世界であろう。
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磯野孝博は夢見の機を証明すべく、夜の川で出会った遠藤と名乗る人物を訪ねる為、わだかまりを危惧しながらも息子晃一を伴い再び郷里に向かおうとする。遠藤には妹との秘められた過去があったのだが、年代記に即すようその奇妙な関わりを語りだす。少女時代の美代から始まる淡い官能が精緻な筆で綴られてゆく「異名」そして、大団円さながらに集った人物を緊密に描くことでまんだら図絵を浮かびあがらせる「虚空のスキャット」父と子の紐帯はそれぞれの性愛に彩られつつ、めくるめく霊性へと昇華されるのだろうか。著者渾身の連作、ここに完結。
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ねずみのチューザー
「それは思いもかけない出来事だった。僕は言葉を喋るねずみが運転するバスに乗っていた。きっと君には信じられないだろうな」
喪失した光と影が異空間に大きく広がってゆくとき、この眼は一体なにを凝視できるのだろうか。浮遊する足もとに自愛を込め、消え去る肉体をまさぐり、一本のジュースをしみじみ飲み干せば、キュウソネコをカムもまんざらではないと僕は思うのだったが、、、
美しき日本と、生けとし生きるものにこの物語りを捧ぐ。
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短編集
みみずが鳴くって知ってるかい、いや聞いたことないよ。
日向から日影へゆく、こたつにもぐり、冷蔵庫へ顔をつっこむ。雨ふりの遊戯、青空のしたでどうして陰気くさい顔してるの?答えなくてはならないかい。
別に、、、幼年期が綿菓子なら思春期は肉まんかなあ、で、今は焼きめし。具がネギだけのにゅうめんなんて、おとなもこどもも関係ないよね、風邪ひいて気が弱ってるんだけど、どこか淡い休日みたいでなんとなく楽しい。
峻烈な意志ってどう思う、過激な考えとか、不埒で傲慢で、まるで自虐史をたどるような気力の高揚、裏返せば、生きている間が花ってこと。あら、そうとは限らないわ、夭折の美はいつの時代もあこがれを形成してきた。では皆殺しのブルースでも聴いてもらおうか、いやだね、もっと斬新で、さっぱりしたのがいい。そういや最近ファンタアップルって飲んだことある、ないな。ごまかしたわね。
あっ、そう、、、色とりどりの掌編短編たち、飛び立ちはしない、ここに閉じ込めておく。
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峠に差しかかろうとした自分の背後から若い女が声をかけてきた。
「ばあ様の話しなんぞ聞いてきな」
長閑な田畑にきらめく女の顔の向こうには下世話が待っているかも知れなかったけれど、ほんの気休めと思いつつも淡い期待など抱き民家に足を踏み入れたのだった、、、
が、めくるめく転生の謎に引き込まれた自分はもう昔話しに聞き入るより仕方がなく、夜の帳が降りてなお、こころ奪われ、果ては妖し気な色香に包まれる。
性の深淵に棲みついた、うなぎの牛太郎にまつわる奇譚を軸に展開される生と死のものがたり。