理由なき反抗19


闇は地を這い、散花の想いを糧に繁る緑が夜気に溶けこむ。加也子は腕時計に目をやり約束の時間の10分前を確認した。幸いに辺りに人影はなく、ひとり公園中央のベンチで時を待つ。左手の仮倉庫の影には森田、山下、天満が息をひそめながら、高まる心音に緊張を募らせていた。
夜風が微かに頬をなでると、見知らぬ影をそこに運んで来た、みつおは葬儀の帰りといったなりでいつの間にやら、加也子の近くに静かに佇んでいる、漆黒のスーツにネクタイ姿で。
「あら、みつおさん」不意の現れに胸中がさざ波立つ。挨拶めいた表情は示さず「そこに掛けていいですか」と一言。
「ええ、どうぞ、待ってましたわ」無言のまま少し空白をあけ、みつおが腰かけると「いよいよですね、あなたはもう知ってるんでしょ、でもこれは謎じゃないかしら」
加也子はじっと相手の目をみつめながらほんのわずか笑みを浮かべると、さっと雲に陰るようにまつげをふせて、すり寄りみつおの体を抱きしめた。そして唇を重ねた。みつおはなすがままといった反応でいる。
舌先を少しだけ入れひと舐めするとすっと顔を引き「そのまま、じっとしてて、、、」と囁き、おもむろにみつおのズボンのベルトを緩めてファスナーを下ろし、まだ柔らかいままのものを、優しく口にした。片手を使い、先からゆっくりと頬張っていく。にわかに膨張はじめたものを親しみのある玩具のように、慈しみながら愛撫する。
みつおの陰茎は次第に熱を持ち始めて、登攀者の悦びに到達した。機が熟したことを感じた加也子は、口先をぴったりと吸い付けて舌をころがせ、間の手は引きしろを心得ながら巧みに根元へしごいていった。それまでだらりと虚脱な姿勢であったみつおの体は伝熱にほだされたのか、両腕が少し力が入り、加也子の背中からまわしこむと、ちょうど胸のふくらみに触れて、その手はもどかしさをつかみ取ろうとする。
そのままあって、下半身が硬直を見せたかと思うと、口に含んだものは脈打ちだし、飛翔にあふれ出す前兆を知った加也子は手を緩めながら、ぐっと深く飲みこむ。間もなく一条の噴水が喉元に熱くしぶきを上げた、軽く痙攣しながら。
吹き上げた白い滑りをすべて、ごくりと喉の奥に流しいれ、いったん、口を離してまだ屹立したままのものからしみ出す残り水がよだれにようにしたたりだすと、再び優しく吸いこんだ。
加也子はことの遂行を成し終えた落ち着きで、ポケットから白いハンカチを取り出し、さっとみつおの股間を拭き取り、その後で自分の口許を拭う。母親が子供に見せる慈愛の笑みをもって。
それからこう言った「どう、気持ちよかったでしょ、予測できたかしら」
「僕は予言者なんかじゃない、わからない。でも信じられないくらい感じることができました、お礼など言ったら変かも知れないが、うれしかった、ありがとう三島さん」みつおのいつも青ざめた顔色に血の気が宿っている。
「お礼言ってくれていいのよ、いいことしてあげたんだから」と小悪魔の仕草の如く、みつおの瞳の中を射抜くように見つめ「さあ、今度はあなたが今度はわたしの求めていることを察してもらいたいわ、わかるでしょ、話してほしいのよ、すべてをね」
「知っている、、、」「そうそれを」「知らない、、、」「知っているわ」いきなり屹然と加也子は立ち上がった。
「あなたはあっちの人だかどうかは知らないけど、ちゃんと勃起もするし、感じてたじゃない、もう謎々は終わりにしましょう」
「いや、三島さん、決して終わりは来ないのです、ひとつの舞台の幕が閉じることはあっても、、、わかりました僕が思ってることを言いましょう。あなたは、あなたじゃい、見失っている、、、」
「それって前にも誰かに言ったセリフじゃないですか、ふざけないで」
「ふざけてなんかいません、書かれたもの、そうあなたは不確かで曖昧な空気を吸っていると感じているようだが、書かれたものであっても別にかまわないじゃないですか、何故それを否定しようとする、大きく肯定してあげれば、書かざるを得ないものにと成長していくかもわからない、決して絶対ではないけど、、、僕があっちの世界を知ってるなんてことじゃないんです、あなた達があっちの世界を知りたがって僕を追いつめているだけです。僕はあなたの兄でなはありません、さっきはそれを試してみたかったんでしょ、心のどこかでそう信じていたから、、、それから僕は気配は感じるけど、見通すことなど出来ません」

そこまで話し終えるのを待っていたように、道路側の前方から大きな声が響き渡った。
「もういい、そこまでだ」不適な笑いを浮かべる天満育が姿を見せた「おっと、動かないように、、、」