788
貞子の休日8


貞子と昇が食い入る様に文面に首を伸ばす。同時に二人は思っていた、さっき家で見た時には、こんな書き込みはなかったと。しかも日付が今日から1日前となっているではないか。
富江が「さあ知っていることを話して、みつおさん。上の段落には私たちの会話らしき文章もあるわね。何故なの何で、二人の会話がここに書きこまれているの、さあ、みつおさん、何もかも教えて」
それぞれの胸中には、せせらぎの音にも似たあの穏やかだか、実にせわしない緊張が孕まれている不安な胎動の予感が流れていた。

「僕は僕ではない、それはさっきも言った、富江さんには悪いが事実だと思う。これは確信ではない何か使命のような事実さ。778の板石掲子さんも指令を受けてさっまであそこにいた。ところが異変が起きた。彼女の反乱ともいうべき行動さ、みんなに警告だと話し始めたよね、だから削除された。そういうことんなんだ、彼女は掲示板の化身の振りをしてどうしてもここに来なければいけなかった、なぜかは真意はよく分からない。今、ここにる僕たちはあらかじめ決定されているんだ、これは間違いない、みつおの冒険でもそう言ってるよね、或る特異な意思が決定し、そして記すことによって、つまり書かれる事によって僕らは書かれたものになっているんだ、でも印鑑のように絶対の不自由ではない、少なくともここでも時間は流れている。考えることも自在だって事さ。ただ問題は」「問題は」貞子が聞き返す「問題はこれから急展開していく事件に対して、予防策がないってことなんだよ、これはある意味、絶望的かも知れない」
その時であった、形相がまるで別人のように憤怒の情を露にした堅井研二が「おい、さっきから聞いてたら、相当バカバカしい、書き込みざっと見たけどな、確かにみつおさんとやらと富江さんの会話みたいなものがある、だったら赤いバーのサイトのBBSだろ、そこのマスターだよな、よく知ってるよ。そこに直接談判に行こうじゃないか、すぐ近くなんだし、あんたのグダグダした説明を聞かされるより早いんじゃないの」かなり興奮している。いつものように木刀を持っていたらたら、きっと血の雨が降っただろう、だが幸い今日は日曜日であった。「そうだよ、赤いバーに行けばいいだ」長島君も思わず熱くなる。だがみつおは「人ひとり消えてるんだ、そんな簡単なことでない、大事なのはよく考えるということなんだ」堅井「考えてどうなるんだ、俺はな行動右翼なんだぞ!乗り込め、今すぐ!なあ、みんな」と血走った目で賛同を何よりも昇に求めようと振り向いたが、その姿はなかった。貞子も見えない。「あれ、店長さんさあ、2人ここから出でいったかよ〜」「いえ、そんな気配は」「誰か出て行くとこ見たか」みな黙りこくっている。
二人の蒸発に続き、新たな異変を発見したのは加也子だった。画面を指差し「ちょっとこれみて、さっまでなかったわよね、778までだったはずね、779夜歩く、780貞子の休日〜、何よこれ!782まで書き込まれてる、日付は今日、時刻はつい今しがたよ、ひえ〜っ!みつおさんこれどういうことなのよ」「おい俺のことも書いてあるぞ〜、これ今日の俺のことじゃないか!」堅井が怒鳴る。「私たちの合コンも適中だわ」加也子は失神しそうになった。「みつおさんどういうことなんです」長島君は震えが止まらなくなっている。
「それよりなあ、お前は何もんなんだ!」堅井が再び怒声を放った。「僕の事はいずれわかります、さっきもいったはずだ、順を追っていかないとだめなんだ。時間はさかのぼれない。掲子さんの事にもどります、彼女は特異な意思がよこした使者だった、時空を越えてやってきたといったも過言じゃない、それくらいの大事な使者だった。よくこの書かれたものを読んでみて欲しい、彼女はみつと呼ばれる人物と対面している、そこでみつおという名を尋ねてる、僕には実際はよくわからない、これは本当なんだ。肝心なところは二人は白紙で遮断されているという鮮明な状況だと思う」「で、そのみつが鍵を握っていると」加也子は何とかこれだけはと振り絞るように確認してみた。「今のところはそこしか見いだせません、下の776の日本虚無党復活式ところに注目していただきたい、書き込み主はみつ、それにみつ教という言葉もでているこのみつと名乗る人物と掲子さんとの関係がわかれば、、、」
「あ〜、付き合いきれんわ」店長が呆れ顔でそろそろ、仕事場を気にしかけた時であった。次なる異変が瞬時にしてこの部屋を恐怖のどん底に落とし入れたのは。