れいめい塾
Gazing At " Promised Land "
2003年度 12月第1週
11月30日
ベッドで眠り込んでいた俺を起こしたのは、なんと智子! 5期生のアイドルと呼ばれていた性格のきっつい!女の子だ。笑いながら俺を見ている智子の後ろに幼児を抱いた智子のお母さんがいる。「あいつが翔吾か」「そうよ」 智子は母親の顔で微笑む。俺はさっそく奥さんに電話、来てもらうことに。生徒がわざわざ子供を連れてきてくれても気の利いた台詞を吐けない。いつだって俺にとっちゃ、かつての俺の生徒にしか興味がない。確かに今は人の親になったわけだが、ウチの塾で過酷な受験生を演じていた頃の面影を追いかけちまう。つまりは子供そっちのけで昔話に興じちまうわけだ。智子のお母さんが初孫を愛しげに抱きながら教室の中を歩く。「翔君も小4になったらここで勉強するのよ」 こんな時に奥さんはありがたい。俺と世間の間を取り持つ掛け橋をやってくれる。
ついつい時計に目をやってしまう。怜美の試験が始まっている。塾内には明日から試験が始まる嬉野と久居中が点在している。中3は一部のメンバーが昨日から冬季講習に入った。試験が終了した連中、付属と南郊中に東中だ。デンちゃん特製の私立対策数学のプリントに悪戦苦闘している。
征希が倉敷の研修(カイロプラクティック)からそのまま塾に直行する。怜美のことが気になっているんだろう。その怜美、今日は自宅で休養かと思いきや、顔を出したのは褒めてやろう。しかし中塚(三重大医学部3年)にマンツーマンで物理を教えてもらっている。たぶん期末の勉強だろう。「アホやな」と一人ごちる。今の状況を分かっていない。怜美は今日の推薦試験が終わった以上、果報は寝て待て状態となる。合格発表は12月10日。それで受かれば晴れて受験生終了。しかし落ちた場合はセンター試験から私立大学入試に臨むことになる。ここは期末試験の勉強なんぞゴミ箱に捨てて入試課目の没頭すべきなのだ。センターは数学と生物、一般受験では英語が加わる。推薦入試が終わったという安堵感にくるまれながら中塚の説明を聞いている。平和な静寂・・・だから入試に向いていないんだ。
森下に征希を加え、今日も二人鍋をいくつか買い込んで飲み会が始まる。「怜美のことが気になったんで倉敷の研修が終わってから電話したんさ。出来は?って、すると怜美、良かったって」「俺はまだ聞いてねえけどな」 征希の優しさに呆れながら、報告のない怜美に腹を立てている。そんなところに物理の勉強を終えた怜美が姿を見せる。「先生、推薦入試が終わりました」「小論の出来は」「一応時間内に書けました。先生から言われていた理想論は書かないようにしました」「理想論は書いていいんさ、根拠のねえ夢想論がダメだって言ってる。で、面接のほうは?」「これが自分でも驚くくらい、自分に言いたいことがすらすらいえたんです」 征希と視線が合う。「そりゃ良かったな」
「今の様子をどう思う」と俺が水を向けると、「ありゃ、合格しそうな。倉敷からの電話でもそうやったけど自信満々や」と征希。「まあ、オーラだけは合格するモードやな」と森下。確かにやることはしたという満足感が表情には窺えた。合格はしてほしい、しかし旅の途中・・・。
12月1日
久居中と嬉野中の試験が始まる。今回の期末試験では最後のグループ。試験までの時間的余裕があるから高得点を叩けるのか?これが逆で、その余裕が安心感となって試験前に緊張感を欠く勉強になることが往々にしてある。そこんとこは十分に気をつけたつもりだが・・・。
試験勉強をするグループの横で中3が黙々と試験に取り組む。
中2の授業開始。試験休みを当て込んでいたためか、たった3人でスタート。平方根の四則はほぼできるレベルにはなっている。今日は三平方の定理だ。こんなジャンルを教えると一番粘るのが曜子。兄貴(津高1年の竜神)とは違い典型的な理系、将来が楽しみな逸材。しかし、まだまだ受験生としての欲に欠ける。塾内の第一回志望校調査では松阪高校を出してきた。曜子は津高しかない。
健太(浪人)から電話。「先生、鈴鹿医療の結果が出ました」「でやった」「一般入試頑張ります」 再び黒星、クソッ! なかなか楽に和(あが)らせてくれへんわい!
12月2日
久居中期末が終了。紗耶加がさっそく姿を見せてデンちゃんの数学の問題に取り組んでいる。
今日は三重大学テニス部キャプテンの初陣。ところが遅い。古市が車で連れてくる予定なのだが・・・。彼女の担当を予定していた中1の授業は俺がやることになり、英語の時制を進める。過去形の規則変化と不規則変化のルール、さらにwillを用いた未来形を同時進行で教えていく。
中1の授業が終わる頃になってキャプテン、古市とともに登場。さっそく高2の香織から化学の質問、さらに1階から高1の由子や千紗(ともに津東)が化学の質問を抱えて安堵の表情で取り囲む。テニス部キャプテン挨拶する暇もなく机に這いつくばることに。
12月3日
ジグゾーパズルがはまらない、どうにもうまくはまらない。ああでもねえ、こうでもねえと考える。考えても仕方がないのに考える。夜が明ける。
12月4日
依然として考える虫になっている俺がいる。塾の中はそんなことお構いなしに進んでいく。中1には進行形から過去形・未来形へと文型を一覧にして提示。今年中に識別だけは徹底させようと思う。このあたりになると小学校から英語を習っている面々も知らないことだらけ。得意なことを鼻にかけず、謙虚に英語を習得していってほしい。
今夜もろくすっぽ食事もせず、最近売れているダイエット茶を飲みながら夜が明ける。
12月5日
中井から電話、「先生、APU(アジア太平洋立命館)の募集要項、塾にある」「ねえよ」「じゃあ送ろうか」「ありがたい!」
やっと中2が大勢が姿を見せる。過去2回俺の授業を受けている加央里と曜子は平方根から三平方、二次方程式へと進んでいる。今日姿を見せたメンバーとは恐ろしい開きができている。自主的に試験休みを決める弊害がこんな時に出る。
古西が自動車学校に行くとか。それで今日の授業は明日に変更したことから今夜は寂しい金曜日。久しぶりに家に戻り体重計に乗る。66.4kg・・・やっと67kgの壁を越えた。とんとマラソンはしていない。しかし体重が落ちているという実感はあった。ここ数日、ジグゾーパズルの絵合わせに没頭。埋まるようで埋めれない苦しみのなかにいた。それに伴うかたちでダイエット茶中心の食生活が続いた。体重が落ちた原因はそのあたりだろう。身体はともかく、精神はいやというほど病んでいる。
12月6日
中村耕治(10期生)が高っえ酒『雪中梅』を持参。今までも新潟の地酒を土産に帰省してきたが、今回は新潟の三梅と持て囃される『雪中梅』。こちとら何かあると勘ぐりたくなる。「何かあったんかいな」 耕治、あらぬ方に視線を向けて「実はさ・・・」「なんや」「来月、結婚することに決まった」「なんやて!」
今年の初夏、耕治と小瀬古を訪ねては酒を飲んだ。その時に訪れた耕治のアパートの壁にツーショットの写真が我が世の春とばかりに貼ってあった。大学の時から続いている彼女だ。
「大阪の医療事務をしていた彼女か」「そうそう」「兄貴を追い越してオマエが結婚てな。さぞかし祥宜(8期生)の奴、悔しがってるやろな」「ふふふ」
征希が3階のパソコンの部屋で直嗣と知早に漢文を教え、同じく3階では森下が高2相手に粛々と英文読解を教える。そして1階では古西がジェットコースターのような授業を高1相手に演じる。俺と耕治は古西の授業を見学。「中村君、It is a quarter to five. って何時何分や」と古西が耕治に下剋上攻撃に出る。
中3には申し訳ないが、勉強している横で結婚記念の飲み会が始まる。メンバーは古市、古西、征希、耕治に俺。古市が「バツイチになったら私が慰めたげる」 征希がすき焼き担当、砂糖山ほど、醤油がないと見るや刺身醤油をぶちまけ、「もったいねえ!」との俺の叫びを無視して『雪中梅』も注ぐ。森下も授業が終わって合流し乾杯!
中村耕治・結婚報告の日の歴史的対局(半荘4回トータル)
征希 +45 +52 −13 + 5 + 89
森下 − 9 −14 − 8 +56 + 25
古西 0 − 2 +33 −22 + 9
耕治 −36 −36 −12 −29 −113
滅多に見ることのできない大敗!ざまあ見ろである。
12月7日
二日酔いのまま、中3に高田高校平成10年度の5教科をぶっ放つ。予想通り数学でほぼ全員がこける。やはり慣れるにはかなりの時間が必要だろう。ただ、英語が総じていいのには安堵。めいまでが70点強を叩いている。めいの期末試験は散々だった。この点数では津東の内申に届かない。となるとどうするか・・・行く価値のない高校なら行かなくともよいわけだが。
耕治から電話、「先生、今妙高なんやけどさ。雪一色・・・めちゃくちゃ怖いわ」「時速50kmくらいでトロトロやってんのか」「60kmくらいかな、側道はチェーンを巻く車ばっかしや」「耕治、初遭遇の新潟の冬やな。結婚決まってツキも急降下や。ざまあ見ろ」 耕治の笑い声が響いた。
甚ちゃんが姿を見せ、森下も合流して3人して飲み始める。ジグゾーパズルもなんとか組み立てることができた。徒労感が身体の奥底に沈殿している。
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