れいめい塾
Gazing At " Promised Land "
2003年度 10月第3週
10月12日
肩の痛みをおして前田のお父さんの見舞いに出向く。右手だけの運転、予想以上にきつい。病院はウチのオフクロもお世話になっている津の遠山病院。土産を何にしようかと考える。なにしろマル暴、鉄アレイなど病室に身体を鍛える器材を持ち込んでの入院。やたら威勢がいいと前田から情報収集。かといって糖尿の気配もあり果物も・・・。思いあぐね考えあぐね、結局は息子の崇が大学時代に最も気に入っていた小説『神々の山嶺』と、俺が今気に入っている『クライマーズ・ハイ』を携えて病室に。
深夜、前田から見舞いのお礼かたがた連絡がある。「おまえ、東京か」「いや、たった今こっちへ帰ってきたところですよ」
10月15日
南郊中の試験が始まる。
高3の理系対象で漢文を教えてほしいという俺のリクエストを征希、やっと受諾。入院中の大西君の穴が埋まった格好だが、丁寧に一歩一歩進む大西君の授業は、こと今年の高3理系の菊山や直嗣にとっては退屈な気がする。この学年は高校入試の時もスピードが取りえだった。いい意味でのいいかげんさで疾走する学年。こんな奴らには理詰めで進む大西君より、営業で鍛えられた緩急自在の征希のほうが向いているはず。問題は、かつてセンター試験の国語で200点満点を叩いた実力が今、どれほどのひび割れをきたしているか。しかし俺は自信を持って菊山や直嗣を預けるつもり。だって征希も菊山も直嗣も、受験生として同じ匂いを持っている。漢文の授業開講は、とりあえず1週間ほど勉強させてくれとのことで来週の週末あたりか。
10月16日
久居東、久居中の試験が始まる。
10月17日
夜、塾の3階に顔を出したのは中3を除けば付属の生徒だけ。あとの中学の試験は終了、全員が試験休みに入っている。中2の曜子に声をかける、「中2は誰もおらん。さみしいな」 曜子、いつものように微笑むのみ。
塾の1階では、試験があろうと試験が終わろうと、ただひたすらに突き進む古西の英語の授業。今日も前田がゲスト、俺も3階の授業の合間を縫うようにして冷やかしに行く。following の訳がおかしかったけど、まあ授業がスウィングしているからいいか。
高1は中間試験に入る津東の由子と千紗を除いて来週、ターゲットの試験。範囲は501〜800、基本の名詞。
10月18日
森下は仁志を率いて京都の福王寺祭りに参加している。
森下の京都暮らしもはや二年目。しかし京都の下宿界隈の祭りに参加するのは三回目。立命館に合格を決めた年の秋、大西君の誘いで右京の福王寺の神輿をかついだ。福王寺界隈を練り歩くと、道々酒を振舞われ続ける。酔いが全身を焦がすものの、それも一瞬。神輿を担ぐ重労働の前にはアスファルトにほとばしる汗となって消えていく。大学生が京都の祭りに参加する・・・普通ではありえない。京都の人々にとり大学生は所詮四年間だけの通りすがり。京都の住人とまわりから認知された者だけが祭りに参加できる。その意味で森下が祭りの神輿を担ぐのは稀有な出来事、これには妙心寺南組に所属する大西君の尽力がある。
この祭りに去年から仁志が加わった。衣笠キャンパスへ仁志が出向くと森下のベースキャンプの飲み屋『あげたて』に入り浸るのが常。いつしかそこで仁志の祭りへの参加が決まっていた。
仁志は高校時代から孤高が似合った。仲のいい12期生のなか、仁志は一人浮いていた。そして「古西の色に染まらないために」という震えるフレーズで古い塾から新しい塾に移ってきた。立命館に進学し、琵琶湖でのキャンパスライフが始まったが仁志はやはり仁志。普通なら掃いて捨てるほどある大学生ならではの馬鹿っ話、とんと耳にしなかった。
森下が仁志を下宿に呼びつける回数が増えた。そして『あげたて』や他の店で食ったり飲んだりした。そのかいがいしさは1年前に大西君が森下に世話をやいたのを思い出させてくれた。
ゆえに森下の授業は中止、代打ちは俺。久しぶりに高2を教えることになる。教材は法政大学の問題、単語レベルは容易。ターゲット基礎レベルで読める。しかし蓋を開けてみれば読めない読めない。基本的な単語が身についていない。松原と亜矢歌と小林に苦言を呈し授業は終了。
高2の英単語の完成度はまだまだ。古西が高1に課しているターゲットの試験をさせてみようか・・・。
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