れいめい塾
Gazing At " Promised Land "
2003年度 7月第5週
7月28日
昨夜、中3が夕食に出払ってる時に征希がやって来てポツリ・・・「日曜やけど、なんや寂しいね」 さっそく治療。磁気シップならぬ、磁気そのものを俺の背中に張りつけテーピング。「これで半永久的に効きますよ」 夏期講習早々情けない身体になっちまった。日曜日ということもあり静かな教室だった。昨日の話題といえば、愛(津高1年)由子(津東1年)が昼の授業で先輩相手に英文法デビューしたことくらい。「もし高1に負けたらこのホームページに名前を載せるぞ!」と脅したものの、怜美とブーちゃんと小林(久居高2年)、さっそく掲載。
さてさて今日から試験が終わった大学生が順次帰省してくる。トップバッターは古西、なにしろこ奴、BBSに帰省日程を予告登板までしてくるのだから始末が悪い?いやありがたい。
夕刻過ぎに古西襲来。塾内を睥睨したと思ったら、さっそく杉野の携帯へ連絡。「先輩、古西です。ただ今帰ってまいりました」 明日、神戸の妹の下宿へ行く予定だった杉野、健気にも塾に顔を出す。あと一人あと一人と探しあぐねるものの、森下は京都、佑臣とも連絡を取れず(亮太、携帯代えたんなら連絡せえよ)、征希も古市んとこのコンビニでバイトに勤しみ、結局は3人でマージャンを打つ羽目に。今年の夏季の第1ラウンドは俺がリー即で四暗刻を和ったものの土壇場で古西にまくられちまい惨敗。今の体調を彩るスタートとなる。
マージャンが終わり深夜2時、杉野が帰っていく。教室にはブーちゃんと娘のれい。「あんた、こんな時間に何やってるねん」と俺。「歴史の試験勉強」とれい。夏休みになるとウチの塾のイベント、中2から高2までが参加する歴史の試験がある。高校生は全員参加ではなく、日本史選択が決まっている生徒に限られる。今年は高2の小林と高1の愛(津高1年)が参加する。さらに今年は小6の歴史大好き少年の久保と私立中学受験を控えるかすみが参加する。6学年をまたにかけての試験、れいはこの試験の勉強をしているわけだ。古西が「征希先輩の職場見学としゃれこみますか」「ええな、ホンマに働いているか俺も気になるわ」と俺。すかさず「うちも行っていい?」とれい。「明日、ちゃんと起きるんやったら行ってええわ」 一瞬考え込むれい。ポケットをまさぐった俺は叫ぶ。「金がねえや。オマエある?」「1000円ちょっとなら」「じゃあいっしょに行こうや」 横合いから「変な親子やな」と古西介入。深夜2時30分、かくして奇妙な3人組が高田高校横のサンクスを目指して走る。
7月29日
朝8時30分、大森(津西3年)に足を叩かれ目覚める。今日の高3のゲストは菊山(津高3年)と大森の二人、いつものように英文法20題。これは英文法をやりたいんじゃなくて、目覚まし時計代わり。ただでさえ勢い勝負のウチの生徒、明け方まで勉強する心意気は良しとしても、起きる時間が昼となれば何をやっているか分からない。つまりは俺が言うのも変だが、規則正しい生活を!というスローガンから生まれた産物。
古西がめいに起こされて午前10時に教室のドアを明ける。授業をやってる俺は見て「さすがやね」と一言。「当たり前やん、俺はプロやから」
古西は今夜の深夜バスに乗り込み東京へ向かうという。今井(立教大学2年)やアキちゃん(早稲田大学1年)など塾の同輩や後輩、そして高校時代の同級生の下宿を転々とする気楽な旅。大学生はこんなところがうらやましい。余裕を持って言うじゃなくて俺は心底うらやましい。正真正銘うらやましく思う俺ってまだまだ社会人としての自覚が欠落しているんだろう。古西が言う。「今週末に刀根さんが来るのにこっちにいなくてすいません」「ええよ、なんとかしのぐから」「・・・でも、できれば佑臣に会いたかったな」
そんな古西、ブツブツ言いながら塾の中を行ったり来たり、あげく「俺さ、恐ろしいほどヒマなんさ!」と絶叫。高校生の教室にいた知早(津東3年)と初遭遇、ヒマにまかせて三角関数を教え始める。
夜、高2に化学を教える横田がやってくる。「先生、来週から西医大でしばらく留守にします」 始まった・・・この時期に医学部の面々は姿を消す。西医大・・・西日本医学部体育大会の略。「今年はどこでするの」「姫路です」「勝算は?」「第一戦が琉球大なんで勝てるとは思うんですけどね」「じゃあ、いつ帰ってくる予定なん」「そりゃあ、できれば優勝を・・・」 俺はため息をつきながら言う。「全力尽くして、かつなるべく早く負けてほしいよ」「橋本が帰ってくるんですよね」「ああ、今日の試験が終わったら帰省するって掲示板に入れてきたよ」「佑輔も帰ってくるって」「ああ、なんとか橋本と佑輔の二人で踏ん張ってもらうよ。だけどね、なるべく早く帰ってきてや」 横田、再三のアピールにも笑って答えない。
古市(三重大教育2年)の生物の授業。今までは基礎力がないことで外れていた怜美(伊勢女子3年)が拓也(高田U類3年)とともに授業を受ける。今日の授業内容は黒本(河合塾模試過去問題)だとか。果たしてどうなることやら・・・。
宮口(近畿大4年)が帰省。さっそく顔を出す。「先生、三日間連荘でコンサートスタッフのバイトやりましたよ」「誰のや」「チューブっす」「時間は?」「始発から最終まで束縛されましたよ」「それでなんぼ?」「日当1万円」「計3万円か・・・そりゃ懐具合あったかいやん、どう一杯?」
中3は二次方程式、育伸社のシリウス発展編を突き進む。質問の連打でやっと夏期講習らしくなったと安堵してたら時刻は0時過ぎ。今ごろ古西の乗る夜行バスは東名高速に乗ったあたりか。明日の午前6時半には池袋東口に到着予定。今日、めいに起こされて眠かったはず。しかしなんとか漫画の武田信玄を読みながら睡魔を堪えていた。そして昼からはあすかのワンポイントで知早を教えていた。今ごろは疲れて眠っているはず。懐かしい歌を口ずさむ・・・東京へはもう何度も行きましたね、君の住む懐かし都♪ あの頃の俺は・・・そんな感慨に浸っていると、直嗣(津西3年)と寺沢(三重高3年)が姿を見せ、俺の感傷に水を差す。「先生、英文読解お願いします」と直嗣。現実に引き戻された俺の7月30日が始まった。
7月30日
朝方までプリントを打ち続け、それでも高3の英単語のプリントが打ち切れずベッドに横になり仮眠。2時間ほどで人の気配を感じて目覚める。午後8時30分、絵梨香が勉強している。絵梨香を家に送っていったのは深夜1時30分だったはず、ちったあ本気になってきた? 古西は池袋界隈を散策しているはず、冷やかしに電話をかける。「おい、東京は元気か!」と怒鳴ったら、「おかけになった電話番号は現在・・・」ときやがった。携帯代えたんなら連絡しろよ!
午前9時からのお目覚め英文法の出席者は、机で眠りこけている知早と綾奈と菊山とぶーちゃんの4人。あくびをかみ殺しいつもの一日がスタートする。
この日記を見た前田(早稲田大学院)からさっそく電話。「先生、古西の携帯の電話を教えてあげますよ」 そして俺は勢い込んで古西に電話する。しかし地下にいるのか繋がらない。「クソ! 自分だけ楽しみやがって」
午後3時31分、叔母が亡くなった。動かなくなった叔母の姿を見て泣き出したのは新米の看護士さん達だった。そして彼女達が驚いたのは女医さんが叔母に丹念に死に化粧を施したことだった。その時刻、俺のオフクロは急を聞きつけて名古屋に向かっている。亡くなった時刻、オフクロはちょうど久居駅から近鉄に乗っている。時刻は3時31分発名古屋行き。
夜になって高橋ドクター登場、絶好調で自分の1年目の生活を紡ぎ出してくれる。その話は改めて書くつもりだが、今ドクターは隣でウチの娘のめいに向かって現在の教育のあるべき姿を語っている。俺は高橋ドクターに話を聞きたがっていた塚崎に電話する。しかしあいにく刈谷の実家。さらばと征希に電話するものの・・・出ない。これではもう高橋ドクターの突進をとめられる者はいない・・・。
橋本がふらついている。獣医を目指したものの、約束の地・北海道には届かず、和歌山で悶々として暮らしている。そんな橋本の現状に業を煮やした高橋ドクター、怒れるアドバイザーに変身。「橋本をここに呼べ!」と寺沢(三重高3年)を一喝。もう家に帰ったと聞くや、古い塾の菊山を呼び出し橋本の携帯番号を聞く。そして深夜1時を過ぎているのに委細躊躇せず携帯の番号を押す。しかしアドバイザーである前に完全な酔っ払い、番号を正確に押せない。あげく携帯電話に向かって悪態をつく。「おまえ、携帯の分際で俺に楯突く気か! 上等じゃねえか、勝負してやろう!」
7月31日
高橋ドクターが眠り込んでいるのを横目に中3のプリントを打つ。因果な商売ではある。仮眠を幾度も取りながら朝を迎える。がさつなほど陽気な声、征希だ。「キャンちゃん、起きて!起きて!」と俺に目礼、高橋ドクターの至近距離から言い放つ。土産はサンクスの商品ごっそりと・・・俺と高橋君、机をうめていく小学生を眺めながら朝食が始まる。
叔母の通夜は今夜、そして葬式は明日の朝10時から。一挙に忙しくなる。あいの服を買いにジャスコへ走る。その間、中3は三重県統一テスト11期生の社会・理科・数学。高3は英文読解を進める。明日の高3の授業を前倒しにして午後3時に終了、ふと見ると橋本(近畿大学1年)が漂っている。「やっと姿を見せたな、この野郎!」
橋本は昨日塾に来ている。しかし古い塾で菊山や直嗣を教えて新しい塾はお見限り? 「そんなに俺とおるんが嫌なんかい」「いやいや」「挨拶くらいしに来いや」「まあ」 こんな調子で俺の怒りは素通りしていく。「佑輔から電話があって、数Vは佑輔が教えるから僕は数T・Uを教えてくれって」「こんな手狭な塾だ。守備範囲はざっぱに決めるだけでいい。後はその状況に応じて対処していくのがベストだろ」「今日の高2の数学、塚崎先輩が遅くなるから代わりにすることに・・・」「そうでっか、せいぜい気張ってや。あとな、岡(三重6年制)の数学をこの夏で建て直しときたいんや、頼むわ。本人さんに危機感はない。とりあえず姿を見たらうむを言わさず首でも締めとけや」
さっきまでいたはずの橋本の姿なし。綾奈と知早に尋ねると今しがた出ていったとか。「あの野郎!また逃げやがったな」 微笑む綾奈に頼む。「後生やから橋本に数学の質問してやってくれよ。こっちの塾ではすることないと、すぐに古い塾に行っちまう。あげくバイト料も請求せずに和歌山に帰っちまう。あいつにはさわやかな厚かましさがない、いつだって暑苦しい謙虚さだけだ」 綾奈、笑いながら頷く。
夜となり、中1は宿題のメドがついた者から方程式に突入。まずは亜紀子・愛友の二人、続いて朋弘・陵を教える。瞭は?というと一人で一次関数の問題をパソコンから出して解いている。
高田恵(皇學館1年)がやっとこさ登場。前々から夏休みには小学生を教えてくれと頼んであった。しかし音沙汰なし。「やっと真打登場でっか」「ごめんなさい! 大学の試験が29日まであるなんて思いもしなかったんで」と消え入りそうな声。「でも先生、やっと自動車の免許取ったから」「そりゃありがたい、これで俺達はおおっぴらに遠出して酒を飲めるってわけだ」「でもお父さんもお母さんも、私の車には乗りたくないって」「平気やで俺は。いつだってアンタと心中してみせるよ」 恵は保育士を目指していた。しかし受かった大学は皇學館のコミュニケーション学科、それでも保育士の夢を育んでほしいと俺はウチの小学生を担当させた。恵は4日からウチの夏に参入する。
花衣(三重県立看護1年)が姿を見せる。僥倖! すかさず頼む、「明日の午前中、塾で小学生の面倒見てや。俺は朝から岡崎まで葬式に行かなあかんねん」「起きれるかな?」「たまには世話になった塾の先生を助けろよ」
岡が姿を見せる。「橋本に何か言われたか」「突然首を締められました」「そりゃ良かった、愛情や愛情」 中3の質問を後回しにして説教を始める。岡は実力はある。しかし怠惰な日常、いつしか大学受験まで折り返し地点を過ぎた。スロースターターもそろそろ返上、痺れるような三年前のリズムを取り戻させることが最優先。明日からは毎日塾に来るように申し渡す。
鳥羽のオッサンから電話、「おまえ、今どこにおるんや」「塾」「アホ! なんで通夜に行かへんかった!」「段取りが組まれへん、大学生でディフェンスできへんかったんや」「今は塾なんてどうでもええやろ! 今日は行くべきやろ!」
中3の絵梨香と真打の恵を送って塾に戻ると午前1時。塚崎が真歩と慎太郎を相手してる。珍しい、高2がこんな時間までいるなんて・・・。
8月1日
午前6時に起きる。高校生の毎日20問勝負のプリント、8月1日分を作る。これでずっと欲しかった、叔母のことだけを考える時間がもてる・・・。今から家にもどり、風呂に入り、おんぼろエスティマに家族と親父とお袋を乗せ高速を走る。ずっと叔母のことを考えるはずだ。
8月2日
パソコンの復旧が遅れている。森下が何度も顔をゆがめる。今日は久居の花火・・・。こんな日でも佳子は高3に国語を教えている。感謝・・・。
|