れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾 れいめい塾
Gazing At " Promised Land "

2004年度 1月第1週


1月1日

ウチの塾の中3の元旦は、明け方に自転車で伊勢湾へ密航することから始まる。例年なら海岸周辺の学区である南郊中の生徒が誘導を担当。中3たちは初日の出を拝みに海岸までの約4km、白い息を吐きながら自転車を走らせる。ところが今年は南郊中の那理が家の都合もあり元旦の午前3時に家に戻る。残された中3、ツアーコンダクター不在で漆黒の闇の中へ・・・。結局、道に迷い迷いして海岸までたどり着いたものの、先行しているはずの大学生や社会人たちには出会えないままで初日の出を待つ。

かたや免許取立ての古西(名古屋大学経済学部2年)、愛や由子など高1を車に後部座席に詰め込み助手席にはちゃっかりとあすか(星城大学1年)を乗せ、香良洲の海岸で日の出を待つ。甚ちゃんは、中3が到着予定の御殿場の海岸に姿を見せないため大慌てでブ〜ちゃんに探索を命じる。元旦の海岸沿いを息せき切りながら走るブ〜ちゃん、センターまであと17日・・・。

大晦日からパチンコを打ちにいった社会人の越知(4期生)と臼井(4期生)と竹中(7期生)のコンビはというと、午前6時に越知と臼井がリタイア、竹中を残して塾へとと戻る。

同じ社会人でも谷(6期生)は、1年後輩となる7期生の里恵を家に送ってから自宅に戻る。彼女はいないと言い張りながらも「先生、静かに初詣できる穴場はない」との発言、底が見え見えや。

今年の初日の出は3年ぶりに見事なものだったとか・・・。俺はその時刻、スラム街のベッドで束の間の睡眠を貪っている。

後片付けをしていると教室内がざわくつ。ブ〜ちゃんがいる、甚ちゃんもいる。教室長に出世した甚ちゃんは元旦の今日も仕事だとか・・・見習わなくっちゃ。そしてドヤドヤと中3が初詣から戻ってくる。聞けば日本鋼管のテトラポットまで行っていたとか・・・。この日のために遥香は三雲の家から塾まで自転車で来たという。その距離や約12km! そして初日の出に往復12km、さすがは県内に名の通った女子ソフトの強者。その遥香、志望は三重高。三重高で女子ソフトを続けトヨタに入社するのが夢だとか・・・。その三重高の入試まであとひと月。

初詣から帰ってきた前田・古西・村瀬といった面子に、パチンコでやられた越知と臼井の社会人組、さらにお年始に訪れた杉野(第一薬科大学3年)が加わり再びマージャンが始まる。そこへやはり早朝までパチンコをして2万円いかれてしまった大森(皇學館大学4年)も参加。今春から大阪府警に就職が決定、来年の正月には住吉さんの警備に追われる悪夢を振り払うように緑の海で大ハシャギ。歴戦の強者相手に勝ちをせしめてしまう。

3人の娘たちを車に俺は奥さんの実家・大阪は通天閣を目指して西名阪をひた走る。いつもなら1週間ほど大阪に泊めてもらう娘たちだが、れいとめいが受験生ともあればそうともいかぬ。末娘のあいは数日間泊めてもらうものの、れいとめいは俺といっしょにトンボ帰り。奥さんは翌日に戻ることに。

塾は元旦だけは休み。しかし毎年、勝手に来ては勉強している。センター直前の高3は淡々と受験生の日々が続く。高3の大森(津西)、元旦のこの日も塾で目覚める。

俺の携帯の着メロが大阪の奥さんの実家で突如流れる。相手はブ〜ちゃんのオヤジだ、「今、関のインターから伊勢自動車道に入ったから」「あれ、オマエ来るの明日だろ!」「ちゃうよ、今日や今日。征希が明日やったら都合が悪いって言ってたから一日早く来たんや」

午後7時過ぎに大阪を出発、途中塾に電話を入れる。呼び出し音7回・・・だれもいないか・・・「れいめい塾です」 あれ・・・「ああ、オレオレ、おまえ誰?」「響平です」「響平! おまえ、元旦に塾に来たんか」「水曜だから」「なるほどね。ところで森下か誰かおる?」「いや、誰もいません」 森下にブ〜ちゃんのオヤジがやって来ていることを知らせたかった。「わかった、ありがと」 車の中から携帯電話をかけたら罰金5万円・・・あれっていつからだっただろう? そんなことよりも響平が塾の電話を取った! それが俺の気持ちを高ぶらせ、それにつれておんぼろエスティマは速度を増した。

響平の受験大学が決定した。関西学院・立命館・龍谷・仏教大の4大学の社会学部のみ。あまりにも潔い受験スタイル。大学のブランドには一切こだわらず、学部だけを目指す。俺とすれば雰囲気に慣れる意味で、学部にこだわらず受ける数を増やす戦略もありと思ったが響平はこれでよしとした。センター利用でも受験するが、国語は1番と2番のみ。つまりは現代文だけで勝負できる大学、立命館一本である。社会福祉の道に進みたいという自分の将来の夢を最優先した選択、シンプル・イズ・ビューティフル・・・しかし響平がこんな潔くて生一本の勝負を臨むなんて。胸の中を熱いものが駆け巡る。

ブ〜ちゃんのオヤジと麻雀を打つことを楽しみにしている連中がウチの塾にたむろしている。しかし来るのが予定より1日早い、あげく元旦。とりあえずはメンツの召集にかかる。古西は親戚の家から帰る車の中で携帯を取る。「今は松阪、あと30分ほどで行くよ」「ほんまは美杉の親戚の家に行くことになっていたんですけどね」と言いながら教室に入ってきた越知の顔は笑っている。常駐の森下(立命館大学国際関係学部4年)が黙々とマージャンの準備を始めている。そんな時に姿を見せたのが智樹(静岡学園1年)。去年の初夏、静岡学園の練習を見物して以来だ。

静岡学園は昨年の高円宮杯サッカー大会で全国準優勝を果たした。優勝したのはプロの横浜マリノス相手に互角以上の試合をした市立船橋。静岡学園、この準優勝のご褒美にオーストラリア遠征と今回の全国高校サッカーでのスーパーシード権を獲得。「でも先輩たちが言うにはこのスーパーシードで試合勘が鈍ったって・・・結局は敗退しちゃった」「今の2年、つまり新3年生の出来はどないや」「ちょっと微妙かな・・・」「じゃあオマエさんたち1年にも十分チャンスがあるやん」「うん、早くAチームに上がって試合をやりたいんですけどね」

静岡学園サッカー部はAチーム・B1チーム・B2チームの3グループに分かれている。智樹はB1チームに所属。この序列は当然A→B1→B2となるわけだが、頻繁にミニゲームが実施され、その内容次第で上げられたり下げられたりする。「ケガをするときついんですよ。Aチームなら猶予をくれるんですけどB1ならB2に落とされ最初っからのスタートです。だからケガだけはしないようにしてるんですけどね。先生が見学に来てくれた時もミニゲームをやってた日でしたね」

身体はヒョロッとしてはいるが、半年振りに会う智樹は浅黒くなり一段と逞しさを増していた。「身長がないのが心配やってな。バレーほどではないにせよ、やっぱサッカーでも身長は関係あるんか」「いえ、僕の先輩で160cmもないのにレギュラーやってる先輩がいますよ」「そりゃすげえや。よっほどのテクしとるんやろな」「でもその先輩は静学のセレクションに落ちて一般で入ってきたんですよ」「どの程度がプロに入っていくんや」「ジュビロには毎年3人ほど、あとは他のチームにちょこちょこと・・・」「大学進学は?」「成績じゃだめでしょうね、もう数学なんてほとんど分からない。でもサッカー部員なら静岡産業大学なら絶対入れるとか言われてますけど」「やっぱ勉強する時間はないか」「あることはあるんですが、ついつい寝てしまいますね」

午後10時、この日のために備え一日のサイクルを夜型に切り替え、午前6時までは集中力の持続を心がけてきた前田(早稲田大学院ドクターコース)が登場。「ボクはこの日のために帰ってきたんですからね。ダーティさん(ブ〜ちゃんオヤジのハンドルネーム)宜しくお願いします」 果たして今宵、前田の稲妻ヅモは炸裂するのか?

前田のお父さんも入院から通院となり元気になられたという。よかった・・・。

日付が変わった頃に村瀬(横浜市立大学2年)がいつもの定番・横浜中華街のシューマイを土産にバイクでやって来る。

ブ〜ちゃんオヤジの急遽元旦襲撃の原因となった征希だが、彼女と元旦の夜を過ごしている。ブ〜ちゃんオヤジ、再三の呼び出しをかけるものの登場は大幅に遅れる。深夜2時、「どうもどうもご苦労さんです」と言いつつ厚顔無恥のカイロプラクティスの伝道者・上野征希登場。

ブ〜ちゃんのオヤジは午前4時にリタイア。駐車場に止めた車の中でバスマットを敷き毛布にくるまる。ブーちゃんオヤジに代わって授業を終えたばかりの森下、再び参戦。疲れた奴はそこいらで眠り、起きたら再び現場復帰。産休とも見まがうこれがウチの塾の正月、ロイヤルランボー形式の麻雀である。午前5時、俺は少しだけ仮眠を取ろうとベッドに向かう。しかしスラム街には越知が腕を組みながら熟睡している。しかたなく床にバスマットを2枚敷いて横になる。バスマット2枚・・・ささやかな幸せ。

1月2日

麻雀は小休止。古西とブ〜ちゃんオヤジと村瀬の3人揃って競艇場へ。祐臣(13期生で村瀬と同期)の応援にかこつけ、あわよくば一攫千金を夢見る大学生たち。ブーちゃんオヤジ、すっかり三重の正月に馴染んでいる。

津西が選抜高校野球の21世紀枠・東海地区代表に選ばれたのは佑臣の功績大だ。津西の選考過程で評価された、2002年度の春季大会準優勝や夏の大会でのベスト4は佑臣がキャプテンの時の実績である。兄貴の亮太に憧れて始めた野球、そして兄貴の後を追いかけて津西に進学。ピッチャーとして海星と名勝負を演じた亮太の時代が津西の成長期だった。そして花を咲かせたのが佑臣の時代。21世紀枠の最終決定は1月15日である。

この日の祐臣、スタート最高の出来で最初のコーナーに突入。そこを2着で旋回するものの直線で他の艇につかまる。「直線でのスピードに致命的に欠けてるねん」とは古西の発言。結局は次々に抜かされていまい結局は6着。しかし古西とブ〜ちゃんオヤジ、予想屋「横綱」から情報を買って3連単をゲット! 

競艇へ出張っていた3人組、昼前に塾に戻り俺を起こす。那理が勉強している。越知の姿はない。この時点では越知は家から呼び出しがかかりオフクロさんの実家へと向かっている。モーニングの喫茶店・・・さすがに2日に開いていないようだ。逡巡した後に選択肢はファミレスしか残らず、俺たちはガストで沈没。

征希・ブ〜ちゃんオヤジ・森下と俺で2日目スタート。途中、森下が授業で抜けると征希が前田と古西を緊急集合発令。さっそく駆けつけたのは古西。「たっぷりすき焼きを食べてきたからな! 負けへんで」とマージャン再開、さらに前田が姿を現す。俺は中3の授業があり、前田とバトンタッチ。そこへ越知が鹿の肉持参で登場。「親戚でもらったんすけど、生でもいけるし焼きでもいける」 古西がさっそく料理にとりかかる。大晦日の料理の宴の残骸とともにガスコンロやホットプレートなども転がっている。鹿の焼ける匂いが教室内に立ち込める。夜になり村瀬合流。授業を終えた森下も疲れた表情ながら当然のごとく席に着く。しかし睡眠時間を削りながら最前線に立つ森下、徐々に劣勢となり、前夜血まみれの前田と越知のリベンジ戦の様相を呈し始める。機を見るに敏、「このままやると俺もやられるな」とブ〜ちゃんのオヤジ、あっさりリタイア。駐車場の車に駆け込み再び冬眠に入る。

正月の挨拶かたがた大西君(立命館研究員)、奈良より登場。最近連絡が取れないと思っていたら、ベルリンのフンボルト大学へひと月ほど研修に行っていたとか。ええんかいな、新婚さん。

年末から塾に常駐、直嗣(津西)や知早(津東)の面倒を見てくれていた佑輔(早稲田大学工学部1年)が明日東京に戻る。「バイト料の請求を早く出せよ」という俺に「今回はそれほど教えてないので結構です」 明日の夜は東京で横田(三重大医学部5年)と飲むという、うらやましいことだ。いつだって生徒たちを見送ってきた。受験会場へ吸い込まれる生徒たちの背中を眺めて今までを過ごしてきた。そして私生活でも俺は塾に常駐し、たまに舞い戻ってくる連中を相手に大立ち回りを演じるものの、最後はいつも同じエンディング・・・背中を見送りながら時を刻む。当たり前かもしれない。しかしひょんな時に染み出るこの鬱々たる想い、いつまでたっても慣れる気になれない。仮定法を教える度に失笑を買うフレーズ・・・「もし私が鳥だったら・・・」 たとえ笑われようとも高らかに発音する・・・ If I were a bird 〜 

深夜2時、佑輔を自宅まで送る。「今度帰ってきたら経営工学の話をもっともっと俺にしてくれ」 佑輔は微笑みながら言う。「わかりました・・・」

今夜は1卓に6人ほどがたむろする。これじゃ俺の出番はないなとベッドに横になる。大西君も体調維持から半荘1回だけでリタイア、村瀬にタッチ。結局は残された5人(古西・前田・越知・森下・村瀬)で朝方まで闘牌。前田と越知、先輩の意地を見せつけて村瀬と森下を完膚なきまで叩き潰す。そして越知は前日の莫大なマイナスを相殺するや姿を消す。古西も加わり前田の独壇場、半荘4回連続トップを取った頃には新しい一日が始まっている。

1月3日

前田は同窓会があるからと家に戻る。森下と古西と村瀬、眠りこけている俺を尻目にデニーズへ。それから睡眠不足が顔に出るからと古西、実家へ戻る。森下、塾に戻るとブ〜ちゃんオヤジが「森下、どっかへモーニング食べにいこや」とコメダ珈琲店へ。再び塾に戻ると大西君稼動、「なんか食べに行きませんか」 俺とブ〜ちゃんオヤジは連荘、ゼンマイ仕掛けの森下は三連荘。開いているファミレス以外の店を探し求め久居の町をエスティマを走らせる。アメリカ産牛肉の今後を占いがてら『アミーゴ』で焼肉にありつく。

久しぶりの大西君はうきうきと、かたや森下は古刹の仏像のような表情で打っている。さすがに睡眠不足がこたえているんだろう。しかし絶対に背中を向けないのがビギナー、今日は勝てないと踏むや、姑息な手段に訴えても一目散に寝床に退散する中年とは違う。ところが大西君、チョンボはするわ和了っているのにチーするわで、大波乱の展開。いつもの大西君じゃない、集中力が感じられない。笑顔ほどには身体は元気じゃなええな・・・みなの胸に去来する思いは同じはず。しかし勝負は勝負、淡々と続いていく。結局大西君は半荘1回でリタイア、教室の片隅でバスマットを敷いて横になる。正真正銘の病人の大西君と半病人の森下を抱えてもウチの塾のロイヤルランボー止まらない。

松原・姉(関西学院大学2年)が姿を見せ、将来できれば保育士の道に進みたいとのこと。合格したと思ったら松原、いつしかこの4月から3回生。今年の秋には人並みに洩れず就職活動が待っている。

中1は今日から塾に戻ってくる。年末にやった一次方程式の式立ての復習、そして類似問題で演習。この演習問題は中3にも解かせて競わせる。平均算で中1の瞭が中3に水をあける。

高2の愛矢歌(松阪高)が姿を見せる。教室内はいくばくかはましになったものの、依然として大晦日から続く祭りの残骸が散らばっている。「何かあったんですか」と聞く無垢な疑問の表情で尋ねる愛矢歌に俺は切れちまう。「あのな、オマエ!」

大晦日は高校生が料理をつくる。これはウチの塾の伝統。高1と高2が独自の料理を出す。ゲストはウチの塾の主役たる高3と中3。この伝統が高2によって踏みにじられていく。大晦日に限ったことではなく、一昨年の夏休みのカラオケ大会以来、ことごとく踏みにじってきた。ことに高2になってからは王様気分でウチの塾に鎮座している。何があっても高1がやるだろう・・・てなところか。これで大晦日までも無視を決め込まれてでもしたら全員解雇!てな気分で俺はいたね。そして予想通りの展開、誰一人として塾に姿を見せず・・・。

中3の1年間、幾多のイベントがあり、その度に先輩主導でささやかながらパーティめいたイベントが開催される。その度に俺はスピーチで中3に訴える。「来年からは今年1年で先輩たちが自分たちにやってくれたことを、そのまま後輩たる来年の中3に伝えていってほしい」 しつこいと思われようが、それこそ耳にタコができるくらい繰り返す。そして過去1年間、ウチの主役であった中3は受験終了とともに王様の座から高1というペーペーの学年へと移行していく。しかし16期生、いつまでたっても王様の座から降りようとはしない。いつだって施される側にまわって口を開けているだけ、乞食やん! たぶん、あっけんからんとした表情で言うんだろう、「あっ、忘れてました」 そして理由を聞けば、享楽追求高校生!友達とでも遊んでいたんだろう。ウチの16期生、塾生たる最低限の筋すら通せない。ウチの16期生、れいめい塾の粗大ゴミ。

何度か足を運んだが俺が不機嫌に愛矢歌と話している気配を察したんだろう、話が一段落した頃合を見計らいドアが開く。高1のあいが竜神(ともに津高1年)と姿を見せ、教室を覗き込む。「どないした」「後片付けをしに来たんですけど」 今年のおでんの出来は今ひとつだった。湯通しせずに入れた食材があり、ダシが行き渡らなかったのが原因か。鍋の中には大量のおでんが残っていた。例年なら俺が少しずつ食べていくのだが、ブ〜ちゃんのオヤジが来たこともあり外食にかまけ鍋は大晦日のまま残っていた。

「うわ!この匂い、めげるわ!」と竜神、嘆きつつ愛のサポートに務める。チーム竜神、今日も元気だ。その様子を窺っていたのか、愛矢歌が鍋洗いを申し出る。大晦日に欠席した愛矢歌なりの筋の通し方?遠慮する高1を制して愛矢歌が撤収作業に入る。

愛矢歌に説教した以上は戦線は拡大する。高2の真歩(津高)・慎太郎(津高)・小林(久居)が顔を揃えたところで開戦。「クラブやっててな、練習にも出てこない。試合にも出てこない。そんな先輩がレギュラーやってる。そんなチームが試合に勝てると思てるんか! オマエらな、中3の時の王様気分でこの2年間を乗り切って、下級生に何も残さずまた高3や。下級生になんら糧になること、役に立つこと教えずに、気がついたらまた高3や、王様や。下積みの苦労、補欠の苦労も一切せずに、レギュラーてか! そんなチームに下級生の誰がついていくねん。今までの先輩連中な、下級生に愛情と厳しさを併せ持つ学年に限って成績もええわい。オマエらの成績見てみい。あんな成績で今のえらそうな志望大学へいけるはずないやろ! オマエら、ウチの塾の粗大ゴミや。このままゴミやってんねんやったら塾を辞めろ。全員で辞めてもらって大いに結構。この教室、大家に返すだけや」

長島回生病院の田丸ドクター、高2に雷を落とす直前に頭之宮のお守り持参で登場していた。お守りを中3に配り、高3のお守りは征希の漢文の授業を受けていた知早と直嗣に全員の分を託した。

「となりの教室で田丸ドクター、お守り持参で来てくれてるねん。田丸ドクター、塾に来るのは1年に数回や。懐かしい、久しぶりやで俺も田丸と話していたいわい! ここでアホを相手にくだらん話しとうもないわ。田丸ドクター、ウチの塾で講師やってくれたけどウチの塾の生徒ちゃうで。生徒でもない田丸が毎年毎年この時期になったら頭之宮のお守り持参で来てくれる。ウチの生徒のためにや! 講師でもそこまでしてくれる。ウチの塾は生徒だけでなく講師まで一枚板や! それにひきかえオマエらなんや! 生え抜きの生徒のくせして先輩から貰うだけ貰うて、後輩には何もやらへんてか! いつでも辞めてくれ、いつでもこの教室閉めたる!」

田丸ドクターのもとに戻った俺の不機嫌な顔を物ともせずに征希、いそいそとマージャンの支度を始める。その後に続く古西。田丸ドクターを囲む面子は征希と古西と俺・・・起家の古西がサイコロを振る。サイコロが緑の海原に転がった。「ルールは変則やけど、東風戦でノーテン親流れなし。なにしろ田丸君、新婚さんや。それに奥さん風邪で寝込んどる。これやったら田丸君、都合のいい時に抜けれるやろ」 俺の言葉に田丸ドクター、苦笑しながら牌に手を伸ばす。

村瀬がバイクで駆けつけ、アキちゃん(早稲田大学第二文学部1年)も姿を見せた。田丸ドクターの後釜が決まった以上、今日も夜と昼の狭間をノンストップで駆け抜ける。

1月4日

森下が京都に戻り、圭亮(立教大学院1年)も東京に戻った。大学院進学を決めた森下とは好対照、大学院1年目の圭亮は就職活動カウントダウンが始まっている。年齢制限の関係で当初本命のテレビ局はNHKのみ、それでも電通・博報堂とキラ星が並ぶ試練の3番勝負。そして臼井や越知や竹中などの社会人は明日から仕事。今日は明日からの日常に備えて英気を養っていることだろう。そんな連中裏腹に俺はここにいる。瞬く間に抜け殻のようになっちまったような塾に。祭りの後?そんなカッコいいもんじゃねえ、抜け殻だよ抜け殻。

古西は徹夜明けでデートに臨む。律儀さの限界点に興味を抱き、携帯で様子を尋ねると、サンバレーで買い物に付き合っているところとか。徹夜明けに彼女の買い物の付き合い・・・男にとっちゃ地獄やな。

この日、古西に初めてバイト料を渡した。7万ちょっとだった。バイトは去年の10月からスタートしていたが、こ奴のほうから「月ぎめで貰うとすぐに使っちゃうからまとめて貰うよ」といわれていた。「あすかちゃんの差し金か」「そんなこともないけどさ」「じゃあ、あすかに渡そうか。貯金しといてもらえよ」「あかんあかん、あいつの買い物めちゃ派手なんや」 俺が古西に渡すのを鵜の目鷹の目で眺めていた高1、さっそく「古西先輩、何か奢ってください!」と来たもんだ。

れいとめいが夕方に塾から家に帰ると炬燵で征希が寝ている。征希がやって来て奥さんに言ったとか・・・「みんな帰っていったからな、塾に行っても誰もおらんし・・・。かと言って、仕事を終えて誰もいない家に帰るのも寂しいし・・・。ボクって寂しがりやなんや」 

寂しがりやは俺も同じや。でも俺はここにいるしかない。今夜も正月ボケの中2がやって来た。中3との理科の2分野対抗戦をボイコットした連中がたくさんいる。昨日から続く機嫌の悪さが引き金か? ついつい言っちまう。「オマエらな、理科の2分野の試験どない気分で来んかったんや! あんなチョろいテストは中3にすりゃ楽勝や。でもな、来年受験生となるオマエさんらを鍛えるために中3はオマエらと勝負する。ウチの塾は昔からずっとそやった。暗記モンの試験には必ず中3が試合相手になってくれた。自分たちだけで試験やるんやったら燃えへんやろ。中3にしても下級生がテンション上げたら無様な試合できへんやろ。ええか、強いチームには強いだけの理由があるねん。試験を投げ出したオマエらは中3に対しても失礼やし、チームとしての自覚に欠ける。試験逃げ出した奴は中3に土下座して来い!」

そんな連夜に渡る暴風雨のなかを100kgを越す巨躯がゆらりと現れ出る・・・克典(東京学芸大学4年)! 「先生、一応明日東京に帰ろうということで・・・」「克典! 1階で古西がデート疲れで熟睡しとる。一発、フライングボディプレスかましてこいや!」

年末の文法試験・・・「ミス7以上なら俺の授業からはずす!」という古西の試験に落ちた面々が再テスト。今回の試験はアトランダムではなく、すべての問題300問ほどを順番どおりに試験するという大甘の試験。古西の初めての妥協の産物、しかしこの試験もまた落とす輩がいる・・・荒井(津高)と沙耶加(津高)の高1と小林と藤田(三重6年制)の高2コンビ。「もう一度試験していいですか」と泣きそうな声で沙耶加。「ああ、かまへんよ」と不機嫌そうな古西。それから沙耶加はミス14をクリアするまで5回繰り返す。やっと終わったのが午前3時30分・・・。どうのこうの言っても、このあたりの粘りが大学受験の勝負の趨勢を分ける。

そしてウチの塾のホットコーナー・高2、この日の夜に森下が指示したターゲット1〜1500までの試験を始めたのは慎太郎と松原(津高)の二人だけ。そして3時間に及ぶ試験の結果は、松原がミス8で慎太郎がミス6。順番どおりとはいえなにしろ1500単語! 上出来といってもいいだろう。あとは口頭で1時間以内に言う試験があり、これは俺の担当。1500単語を1時間以内で言うには1単語2秒で答えなければならない。そしてこの試験に合格したら、晴れて決戦場ともいえる“古い塾”に移動する。ちなみに去年、一番早く古い塾に辿り着いたのは菊山(津高)。しかしあまりにも早く到着しすぎて、それ以降の約2ケ月を幽霊屋敷と異名を取る古い塾で一人で過ごすことになる。

森下から高2と俺あてにメールが入った。「4日に行われたターゲット試験でミス10以下だった者は、高3の授業に参加することを認めます。

センター試験直前で沸き立つ塾内、しかしその一方で静かに潜行する高2の基礎レベルの仕上げ。目の前に広がる高3の喧騒、そしてその背後に潜む高2の苛立ち・不安・逃避・焦りという屈折した感情。しかしそんな感情を笑い飛ばすかのように来年度の大学受験はすでに始まっている。
前の日記に戻る

トップページに戻る

2002年
2003年
2004年1月第一週
2004年1月第二週
2004年1月第三週
2004年1月第五週
2004年3月第三週

2004年4月第一週
2004年5月第三週
2004年6月第四週
2004年9月第三週
2004年9月第四週

2004年9月第五週
2004年10月第一週
2004年10月第ニ週
2004年10月第三週
2004年10月第五週
2004年10月30日松原氏講演要旨
れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾リンク集 れいめい塾 三重県津市久居 学習塾一覧表:れいめい塾発『25時』 三重県津市久居 学習・進学塾『 HARD & LOOSE 』 れいめい塾 津市久居れいめい塾の日記(関係者ブログ集) 三重県津市久居広告一覧 れいめい塾 三重県津市久居 学習塾 進学塾サイトマップ|れいめい塾 三重県津市久居 進学塾&学習塾
当ホームページに掲載されているあらゆる内容の無許可転載・転用を禁止します。
れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾Copyright(c) 2000-2009.reimei-juku. All rights reserved. Never reproduce or republicate without permission
ホームページ管理:橋本康志橋本クリニック|皮膚科(皮ふ科)|広島県呉市の皮膚科(皮ふ科) 日曜診療 ゆめタウン呉