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Gazing At " Promised Land "

2004年度10月第3週



10月11日

昼前に鳥羽の先生から電話、「あと10分ほどしたら行くからな、待っとれよ」 やっかいなポセイドンの降臨、神出鬼没やな。「ところで森下はおるんか?」と馴れた口調で諮問。「ああ、1階で眠っとるよ。起こしてやってくれや」と、少々の遠慮心ぐらいは残しているだろうとの希望的楽観から口にしてみる。数分後、眠気眼の森下を警官が押し出す盾のように押し立て、俺を拉致するかのごとくのハイテンションで3階に鉄面皮のポセイドン降臨。
「昨日大阪へ行ってリハーサルやってきたんや」と開口一番。今週の金曜日、鵜方のエバーグレイスで高校時代の悪友ともどもライヴを行うことになっている。ウチの塾からは5名予約を入れておいた。ライヴは多士済々、プロもいればオッサンのように同窓会的風情もいる。食い放題だとかで、夜はバンガローで二次会が始まることになる。
「掲示板見たら古西、東京で電通の関係者に会うんやろ。5名もう予約してあるぞ」「まあ、皆の都合が悪かったらウチの娘さん達を連れて行くよ」「わかった、・・・そういや昨日、ユタカに連絡とってな、午前2時に会う段取りをつけたんやけどな」「どうやった報道局次長の様子は?」「それがアカンかったわ。会う直前に連絡あってな、仕事が入ってきたからって・・・引退した八木や、なんやサンスポで解説者するらしいわ」

中3に国語の助動詞を教えているところへ森下が割り込む、くぐもった声に妙に力がある。「先生、佐藤君な」「佐藤って高校3年の?」「いや・・・舞の友達の」「ああ、どうした」「・・・亡くなったって」「ええ!」「舞からのメール・・・今、大学病院へ向かっているって」

「里恵は舞になんもいうてあげれやんよ」・・・里恵から俺の携帯へメール。

真歩と良太と松原(ともに津高3年)が姿を見せる。良太なんぞ塾にカンバックした頃は謙虚に英語の勉強に姿を見せたのにとんとご無沙汰、懐かしくて涙が出る。
この三人ともが、高校で数学か物理の教師をしたいとの夢を描いていた佐藤君の正真正銘、かつての教え子だった。

落ち着いた声の舞から電話、「先生、仮通夜は明日・・・場所はフェニックス」「ああ、森下から聞いたよ。時間は?」「午後6時から」「そうか」「それと・・・佐藤君、キリスト教なんやって」「・・・知らんかった」「だから香典袋はアカンよ」「・・・分かった。適切な忠告を感謝するよ」「それでさ、先生花屋さん知らん?」「なんで?」「明日の仮通夜に学生達からお花を贈ることになって」「分かった、ウチの父兄がサウスウェストで『ピアンタ』って花屋やってる」「電話番号分かる?」 住所録なんていう気の利いたものがウチの塾になかったという事実にふと気付いた。「1分経ってかけなおせ!」

今週木曜日に中間試験を控えている久居中と久居東の生徒が中心となり、塾を占拠する。しかし活気がない、ドツきたくなるほどの活気がない。クソッ!それは俺の心の投影かい!

10月11日

舞に起こされる。「先生、前夜祭は午後6時からよ」「前夜祭って?」「佐藤君はキリスト教徒でしょ。仏教ならお通夜なんでしょうけど、キリスト教では前夜祭っていうんだって」「へえ、午後6時ね、はいはいはい、覚えてまっせ」「今、ピアンタでお花の準備してきたんよ」「そうか、まにあったか」 頭をふる・・・昨夜は森下と飲んでいたはずだが、いつのまにか眠ってしまったんだろう。いつものことだが二日酔だった。
家に戻り久しぶりに風呂に入る。礼服を着る段になり黒のネクタイがないと奥さんが騒いでいる。とにかくジャスコへ車を走らせる。黒のネクタイを使ったのは・・・叔母の葬式か。

亜矢歌と慎太郎と松原を車に載せ、フェニックスに着いたのが午後5時30分。会場の外では附属の制服が目立つ。教育実習で佐藤君が教えた最後の教え子たちだろう。
記帳に臨むや、やはり違和感ある俺の髪の毛。佐藤君と顔つきが似ている上品そうな白髪のおばあちゃん、怪訝そうな表情で俺を見やる。「佐藤君がウチの塾で教えてくれまして、この子たちは彼が教えた生徒たちです」「・・・そうですか、この子たちが剛の教えた生徒さん」 記帳している俺の視界がおばあちゃんの手を捉える。小刻みに震えている。
真歩と良太がやって来る。亜矢歌など、制服の高校はこんな時は便利だ。私服の高校は大変だ、松原・慎太郎・良太は津高、親父さんから借りた礼服? 真歩お嬢様はオシャレな礼服。
京都に礼服を置いている森下も親父さんの礼服を拝借して登場。
俺の隣には誰も座らない、後ろでたくさんの人たちが立っているのに。やはり金髪の髪の毛が災いしているのか・・・遅れてきた森下、俺の隣に腰をおろす。

たくさんの人々が集まった。舞が佐藤君のお母さんから「前夜祭にはどれくらい集まるかしら」と聞かれ「40〜50人ほどだと思いますが」と答えたのが昨夜。そして友人たちからの電話やメールで出席者の数は増えていき、一夜明けた今日の朝『ピアンタ』で花を購入した時点では100人を越えたという。そして今、前夜祭が始まっても記帳に並んでいる人の列は途切れる気配はない。
弔辞は友人代表。「タケニー(剛兄)・・・」と言ったきり絶句。確かに兄貴肌、豪放磊落で快活、同級生や下級生から頼りにされているのが見てとれた。

お父さんは大学で教鞭を取っていると聞いていた。
「俺も中学校の先生の子供というだけで言われたくないことを言われ、聞きたくことを耳にしてきた。これが大学教授の子供となるとプレッシャー、大変やったやろな」 俺の質問に逡巡して佐藤君は答えた。「ええ、それなりに反抗期もありましたよね。高校3年と浪人の頃は自分の成績が上がらないことを親のせいにしてました。なんでもっと頭のいい子供に産まなかったんだって。勉強したくなかった、それを親のせいにした。最低ですよね。まあ、親父譲りの頭脳明晰さは弟が一手に引き受けてくれたかな。僕としては高校の数学家物理の教師になれたとしたら一歩親父に近付いたかなと・・・身の丈にあった一歩ですけどね」
前夜祭の最後、親父さんの挨拶が始まった。
玄関から出てきた舞は森下の電信柱のような体躯に顔をうずめ嗚咽し始めた。俺は生徒たちを促して車に載せ、渋滞の道に車を乗り入れた。雨が降り始めた。

10月12日

午前10時、佐藤君は津の斎場で荼毘にふされた。
佐藤君が最も濃密で充足した4年間を過ごした津の空に煙が広がっていった。

久しぶりに教育実習を終えた田辺(三重大学4年)が登場、高校2年相手に化学の授業をしている。授業のない舞もまた姿を見せる。「ヨーグルトケーキをつくったからみんなで食べよ」 亜矢歌に生物を教えていた佳子(星城大学2年)、かいがいしくナイフで切り始める。こんな風景、いつまでたっても先輩後輩の位置関係は変わらない。「今は佐藤君がいなくなったんやって信じられへんけど、これで日常の生活が始まったら徐々に寂しくなるんかな・・・」と舞。「それにしてはヨーグルトケーキづくりで一日が暮れるとはな」「現実逃避だって十分分かっているわよ」

塾内を支配している試験直前の喧騒も俺の血管を逆流させるまではいかない。それより身体の疲れからかいつしか座ったままでまどろんでいる始末。今日は必ず帰るからって奥さんに約束したっけ。帰ろう、帰ろう、帰ろう・・・お題目のように唱えては千鳥足で家を目指す。

10月13日

明日から大票田の東中と久居で中間試験が始まる。中3よりも中2のほうが早く姿を見せるってのが今年のウチの最大のネックやね。

今日もまた昼過ぎから中2の姿がポツリポツリと・・・。まだまだ騒がしく、大学生や社会人の顰蹙を買うことが甚だ多いが、この学年は来年伸びると思う。

この日、深夜バスで古西が東京へ向かう。
目的は9期生の克典がセッティングしてくれた電通の関係者に会うことだ。
この週末には松原(関西学院大学4年)が帰省の予定。両親との話し合い、三重に戻るか関西で就職するかのネタに加え、週末に来襲する大西君とのランデブー。
就職戦線は徐々に煮詰まってきている。今年のウチの受験戦線より、遥かに緊迫感を感じてしまう今日この頃の俺なのだ。

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2004年10月30日松原氏講演要旨
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