Pullman から西へ約３００miles（４８０ｋｍ）、四度目のシアトルへの通い道、その途中はな〜んにもない。ただただ「地球って丸いんだなぁ」って思いながら車をひたすら走らせる。頭の中の半分は常に運転に、もう半分はいろんなことを考える。車の中、外部と隔離された空間、人はたびたびそこにその人固有の世界を見いだす。誰かが言った、車を一人で流しているとすごく落ち着くんだ。まるで自分以外の全てのものが動いていて、自分は唯ひとり静寂の中たたずんでいる。そんなことを考えていた。運転時間は約５時間。それが俺に与えられた時間。何か悩み事がある時、それは非常に短く感じられた。かつて、アリゾナ州南部を運転していた時、まる一日、約８００ｋｍを走り文明に何かしら関係のあるものを全く見なかった時。俺は果てしない孤独と地球の巨大さを感じた。その頃から俺の中に、新しい人間観とでも言うものが芽生えているのを発見した。それは、俺が今地球上から消えてなんくなるのは、たとえば今自分が踏み潰した蟻の死とたいして違いがないのじゃないかと。これが後の今の俺の死に対する考え方のもとになっていく。Pullman から初めて Seatle に帰る時、俺は人が死ぬのはこんな時なんじゃなかろうか？と訝ってみたものだ。そこには俺を待つ人がいて、俺もテスト開けを無理して深夜出発した。そこに何のためらいもなかった。早く会いたい。その気持ちのみが俺の右足に力を込める。約１００mileも走っただろうか、ふと”死ぬかも”という思いがよぎった。やっと周りが見えた気がした。冷静にはやる気持ちをなだめた。俺はこんなにもちっぽけで、簡単に死んでしまう。１時間遅れてもいい、安全運転で行こうと思い直した。それ以来俺は極力、車の中で考え事をする事にした。将来の事、学校の事、友達の事、考える事は尽きない。考え疲れた時、眼前には地平線に消える一本の道があるのみ。それを見ながら何も考えず、何も聞かずに過ごす時間もなかなか乙なものだ。

　ずいぶんご無沙汰してしまった。実は感謝祭の間、ず〜っと Seatle および Tacoma の host family のところに行ってきました。その間にもアメリカの大統領選挙が決まったり、日本の政界の動きが大変気になったり（最近円が安くなったのはあなたがたのせいなんじゃないですか？！）、いろいろありました。

　よしきへ。返信どうもありがとう。アメリカに来たら、本場のデジャブにでも行きましょう。日本のビールは売ってるけど、アサヒスーパードライはないで！

　大統領選挙、感謝祭のこと、留学生の長期休暇の過ごし方など、書くことはいっぱいあるのですが、それらは後ほどということで、特にアメリカ大統領選挙は以前流動的で自分自身も考えがまとまらないというのもあります。いずれダイジェストでお伝えしたいと思っています。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　森下直樹

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