Happy-Twins Day 2
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「それで蔵馬さん。私にお話というのは? 私でお伺いできることだといいんですけれど……」
 ほどなくして、雪菜さんはキッチンから温かい紅茶を三人分運んできて、音も立てずテーブルに並べた。湯気と共に上品な香りが辺りを包む。
「ええ、雪菜さんがもし知っていればいいのですが……」
「何のことでしょう?」
 雪菜さんの隣に座っている桑原くんは、オレと雪菜さんの顔を交互に見やっていた。まるで振り子時計のようだ。
 いよいよ本題だ……!
「雪菜さんの誕生日、もし知っていたら教えてもらえませんか?」
 どうか、雪菜さんが答えてくれますように……!
「まああ、私の誕生日を、ですか」
 雪菜さんは、少し驚いたような表情をみせた。
「お、おい蔵馬ァ。『もし知っていたら』って、自分の誕生日を知らないヤツがいるわけねぇだろうがよぅ」
 素っ頓狂な顔になった桑原くんが間に入って気がついた。自分でも知らない間に、肩に力が入っていたらしい。
 オレは一つ呼吸を置いて、自分を落ち着かせるためにも、桑原くんに説明することにした。
「人間だと、それもこんな平和な社会の中に生まれて生きていると、それが当然になってしまいますけれど、妖怪の中には結構いるんですよ。自分がいつ生まれたのかを知らない者が。オレもそうです。妖狐のオレは、誕生日がいつか知りません」
 そしてそれは飛影も同じだ。
「あ……」
「生まれたときから生母であれ何であれ、きちんと育ててもらえるケース、余程の高等妖怪でなければ珍しいくらいです。暦を使わず一生を送る種族も多いですしね。……雪菜さんは家族構成がちょっと複雑だと聞いています。だから、もし答えられなかったら結構ですよ」
 いやいや結構じゃない。何が何でも知りたい! それはイコール飛影の誕生日なのだから。
「蔵馬さん……ご心配、ありがとうございます。でも大丈夫ですわ。私は生まれたときから、泪さんという母の友人に大切に育てて頂きました。決して、不幸な生まれではありません。私の誕生日も、泪さんから聞いて知っています」
「そうですか。それはよかったです」
 よかった! 雪菜さんは自分の誕生日を知っている! 思わずガッツポーズをとりそうになる。
「ですが……蔵馬さん、私の誕生日を知ってどうなさるんですか?」
「それはもちろん、誕生日パーティーをするに決まっているじゃないですか!」




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