ムラさん通信 第20号

2002年7月7日

ムラさん通信の索引へ
 第15号  |  第16号  |  第17号  |  第18号  |  第19号 

  ザ・サークルのギター弾き「ムラさん」から、 日頃お世話になっている「みなさん」へのお便りです。 ホーム・ページでは十分に伝えられないザ・サークルの近況や、 文化情報、私の雑感などを、随時お知らせします。
メイルでも配布していますので、必要な方はお知らせください。次回からお送りします。
ご意見、ご感想などは、 Eメール でどうぞ。

 旧聞になりますが、 6月3日付けの中日新聞のコラム「番」によると、 小泉首相は、 5月下旬に「ビューティフル・マインド」を都内の映画館でご覧になり、 「良かったろ、愛が一番大事」とおっしゃったとか。
その前週には、「突入せよ!『あさま山荘』事件」を鑑賞。
ゲェ、小泉首相と同じ趣味と思われるやんか。

 今週末は、特に見に行きたいと思う映画がかかっていませんので、 ムラさん通信でも(?)書くことにしました。

七夕の日に、 ひっそりと20号記念。

 ◇「星空コンサート」に出演します◇ 

 四日市の四郷(よごう)郷土資料館では、 毎年夏の夜空のもと、前庭にて「星空コンサート」を開催しています。
今年は、私たちザ・サークルが出演することになりました。

7月27日(土)18:30開場19:00開演
雨天の場合は、四郷小学校の体育館です。

会場の 四郷郷土資料館 は、大正10年に三重郡四郷村役場として建てられた四日市市の有形文化財。
地域のボランティアで守られているのだそうです。

 「この町自慢見つけ旅・三重」(1997年、伊勢志摩編集部)によると、 四郷は、明治初期に工場が多くできた、『工業都市・四日市が産声をあげた町』。 四郷資料館は、紡績で成功した伊藤傳七(1852年〜1924年)が寄付したもので、 『日本一の村役場』といわれたとのこと。
「四郷は戦災を逃れたため、明治・大正時代からの建物が数多」いそうです。
四郷のまちを散策したあと、星空の下で缶ビール片手にコンサートなんて 贅沢はいかがでしょうか。

 「星空コンサート」については、 同コンサートのHP をご覧ください。

 8月3日(土)には、 松阪で、ストリート・ライブの予定。
午後4時から8時30分頃まで、 松阪 七夕まつり・鈴の音市へどうぞ。

 ◇感動のライブ・ビデオ「Down From the Mountain」◇ 

 2000年に製作された映画「オー・ブラザーズ!」のサントラ盤 (アマゾンのHP) がアメリカでヒットしています。
そして、そのサントラ盤で演奏したアーティストたちが、 ナシュビルのライマン公会堂で2000年5月24日に演奏会を開きました。

その時の様子が 「Down From the Mountain」というビデオ になって出ています。

 リハーサルの様子、控室での様子なども含めて映されているのですが、 その1年後くらいに亡くなるジョン・ハートフォードの姿が痛ましい。 「非ホジキン性リンパ腫との21年に及ぶ闘病の末」(ムーンシャイナー誌2001年7月号) 63才で亡くなったといいますが、ビデオの映像では、相当やつれて見えます。
それがステージでは、司会を務めながら、実に美しくもリズミカルなフィドルを聞かせてくれるのですよ。
胸がジーーンと、思わず涙が…。

映画が1930年代を舞台にしている関係もあって、 このビデオで演奏されているのは、アメリカのいわゆるルーツ音楽。 出演者たちは、音楽を通して、 みずからのアイデンティティを表現しているようにみえます。
「オー・ブラザーズ!」のサントラ盤のヒットも、 アメリカ人が、音楽のなかにアイデンティティを感じているからではないでしょうか。

 そして今年は、この手の音楽がレコードという商品になるうえで、 記念すべき年に当たります。
カーター・ファミリーとか、ジミー・ロジャースなど、 現在のカントリー・ミュージックのルーツになるアーティストの初録音が、 ブリストルという町で、行われてから75周年なのだそうです。 (ムーンシャイナー誌2002年6月号)

ブリストルという町は、アパラチアの山間部、 ヴァージニア州とテネシー州の境にあるそうです。
この辺りには、 300年くらい前のアイルランドやスコットランドの音楽が伝わっていて、 それら白人のルーツ音楽が、アフリカ音楽の影響を受けた独自の音楽が残っていた。
そして、その音楽が、日常生活のなかで、演奏されていたのです。

そのような音楽が、商品化できることが分かって、1927年、 ブリストルの町の仮設スタジオで歴史的な録音がされたのです。

 ところで、カーター・ファミリーの「Keep On The Suuny Side (陽気に行こう)」 をお手本に、 ギター・ワークショップ、第5回 です。
この曲は、 「オー・ブラザーズ!」のサントラ盤でも、 「Down From the Mountain」でも、歌われています。

 ◇人類百年の愚行◇ 

 NIMBY(ニンビ)という言葉を知っていますか。
Not In My Back Yard (私の裏庭は駄目よ)の頭文字をとったもので、 ゴミ処理工場など、いわゆる迷惑施設に対して、 作ることは必要かもしれないが、私の近隣地域に作ることには反対だ、 という住民感情をいうものだそうです。

 「百年の愚行」という本(写真集) (アマゾンのHP) を見ると、 自分の裏庭だけはきれいにと考えている間に、 この地球は、見えないところで、すっかり汚れてしまった、 いやわれわれが汚してしまったことを、 いやというほど思い知らされます。

6月1日付け中日新聞のコラム「中日春秋」 を読んで買いました。

 環境問題だけではありません。 戦争、難民、アパルトヘイト、 目を背けたくなる写真ばかり、 とても正視できないのですが、 それでもお薦めします。

 ◇ウナギ文のなぞ〜日本人百年の誤謬◇ 

 ウナギ文というのをご存知ですか。
「昼飯でも一緒に食おうか」
「何が食べたい」
「僕はウナギだ」
この最後の文がウナギ文です。

学校で習った文法で解釈しますと、 主語が「僕は」で述語が「ウナギだ」ですから、 『僕=ウナギ』という重大な事実を告白したことになってしまいます。
われわれも、日常よく使いますが、 単に、僕はウナギが食べたいと言っているだけのことですね。

 コンニャク文というのもあるのです。
「コンニャクは太らない」
というのがそれです。
これも文法に忠実に解釈すると、おかしな意味になってしまいます。
「ケーキは太る」
お化けケーキの話だとは誰も思いません。

 実は学校で教える文法が間違っているというのですね。
金谷 武洋「日本語に主語はいらない」講談社選書メチエ (アマゾンのHP) を読んで、実にすっきりした気持ちです。
副題が「百年の誤謬を正す」というのですが、 文章を書いていても、 日本語の文法は今ひとつピンとこない、 (推敲の役に立たない) と感じていましたが、 その文法自体が間違っていたというのです。

 著者は、外国人に日本語を教えていて、 通説の日本語文法では変な日本語を教えてしまうことになる、 と実感してこの本を書いたようなのです。

 その主張は、実際に読んでいただくとして、 特に印象的な部分をご紹介します。

 日本語の構文については、特に次を主張しています。
1 日本語に主語という概念はない
2 日本語の基本構文は次の三つ
   愛らしい(形容詞文)
   赤ん坊だ(名詞文)
   泣いた(動詞文)
いわゆる「述語」だけで文が成り立つというのですね。
「主語」や「目的語」といわれるものは、 意味を補うための「補語」で、構文上要求されているのではないというのです。

 三重県の生んだ偉大な国学者・本居宣長や、 その長子・春庭(はるにわ)などは、 すぐれた日本語の文法研究を行ったが、 一切「主語」という概念を扱わなかった。

明治維新の脱亜入欧の時代精神が、 英語などの文法を日本語に当てはめようとし、 それが文部省に採用されたため、 誤った文法が学校で教えられ、国語が混乱した、 と主張しています。

うなぎ文「ぼくはうなぎだ」、
こんにゃく文「こんにゃくは太らない」
の正しい文法的解釈も載っています。

 文章を書く人、 日本語を教える人、 などにはお薦めというより、必読ですね。
是非、ご一読ください。 目からうろこです。

 日本語本ブームらしい。
7月7日付け中日新聞によると、 2日トーハン調べの週間ベストテンの8位に、 以前紹介した「声に出して読みたい日本語」が入っています。
草思社のHPによると、 「ただいま125万部突破!!」で、
8月上旬には、 「声に出して読みたい日本語 2」  も出るようですが、  まずは、文法から確かめてみましょう。

お便り、ご意見は、 Eメールでどうぞ

ムラさん通信の索引へ

HOMEに戻る