魚拓ミニミニ図鑑


2 魚拓入門



ホタルイカの上に色を置いていきます。........出来上がりです。
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下記は「美術魚拓って何?」について、これまで掲載しましたfile4〜6から抜粋し、多少の補正を加えたものです。主として直接法ですが、これから実践される方にとって、参考になると思います。
つぎのセクションにわけて記述します。もし、初めて挑戦してみょうと思われる方は、まず2と3と4をマスターしたら7に移るといいでしょう。

(1) 「直接法魚拓」1/2

 前半の1、2、3、4 を記します。後半の5、6、7へ飛びたい方は、「後半」をクリッルしてください。
      
  1. 直接法と間接法の二つの拓し方があります   
  2. 魚体の観察と準備   
  3. 絵の具のぬり方(直接法で進めます)   
  4. 拓し方   
  5. 美術魚拓と構図   
  6. 避けたい色調の乱用  
  7. 裏打ちと落款    以上です。
1. 直接法と間接法

魚拓のとり方は、まことに簡単、魚体に墨、または絵の具を塗り、上から紙をかぶせ、指か手のひらで押し、静かにはがし、目を書き入れる方法が直接法。魚体に紙を密着させ、上からタンポで彩色する方法を間接法と言いますが、この二つの方法が、通常の拓法とされています。

2. 魚体の観察と準備

いずれの拓法の場合も、その魚体を十分に知る必要があります。まずよくよく観察しましょう。



魚体の部分的名称や、魚の特徴、習性などを調べてみる。時には水族館へ出かけ、目的ある観察に努めるのも良いでしょう。
(1) 前処理
 よい魚拓、きれいな魚拓をとるためには、まず大切な事は魚に付着している「ヌメリ」の除去です。「ヌメリ」の取り方にもいろいろな方法がありますが、一般には食塩が良いでしょう。通常拓す側(一般的には魚の頭を右方向にします)に均一に塩をふりかけます。特に各ヒレの付け根やその裏側、吻(口付近)や鼻の付近は「ヌメリ」が多いので、食塩を十分使いながら丁寧に水洗いします。
(2) 魚の固定
 「ヌメリ」を取り去ったら魚を固定します。先ず適当なサイズ(例えば50cmx35cm位)の板を用意し、その上に魚を置きますが、魚は厚みがあるので、そのままではグラグラします。そこで「まくら」を使います。「安定板」とも言います 。折り曲げた新聞紙を図示したように、ヒレの下にあてて魚体が動かないようにします。新聞紙のかわりに板、ゴム板等を必要なサイズに作って使用してもいいでしょう。また発泡スチロール板に魚の形をほって、そこへ魚を置く人もいます。とにかく動かないようにしたら、形を整えます。この場合、必要以上に各ヒレを開かないように、自然体を大切にしたいものです。口は少し開いていたほうがいいでしょう。下図の魚は口を閉じていますが、やはりちょっと開いたほうが、と思います。

     

次に鼻の穴、エラぶたの下、肛門、吻腔内の清掃をします。この作業はコヨリなどを使うと便利です。ついで、胸ビレ、尻ビレ、腹ビレをおこし、ティシュペーパーをあてて、残る水分や「ヌメリ」を取り去ります。こうして各部の処理をした後、魚体全部をティシュペーパーか魚拓用紙で覆い、軽く圧着して、魚体表面の水分を押し取ります。またこの時、水の出やすい箇所とか残り水がはっきりしますから適時処理してください。

3. 絵の具のぬり方.......以下は直接法を述べたものです。

(1)準備する用具
   筆.....毛筆の柔らかな多少腰のある平筆か丸筆、それに細筆も必要です。
   墨.....良質な青墨。最初は手許にある墨(墨汁は使用しない)で結構です。
   絵の具.....日本画用絵の具。先ず墨から始めましょう。
   紙.....和紙に限ります(画仙紙、美濃紙、奉書紙等)ニジミの少ない、あまり厚くないもの
   その他.....絵の具皿、筆洗い、文鎮、古新聞紙、ピンセット、ハサミ、ティシュペーパー等々
(2)墨のぬり方
  ヌメリをとり、魚体を整え、固定したら、捨て紙2〜3枚を挿入します。ヒレ、ときに吻部の下などに、これは墨または絵の具をぬった時安定板を汚さないためにです。墨または絵の具をぬる作業に入ります。初めは墨一色で練習した方がよいでしょう。それでは、墨を用いた直接法の手順について記します。
  墨をつける前に、魚体に均一に水をぬります。この水の塗布は、ぬった墨がハケ目を残さないためと、拓すときに、墨が部分的に乾いて、不鮮明な魚拓となることを防ぐために必ず実行します。気温の高いときや、湿度の少ないときは多めに、冬季や、湿度の高いときは控えめに塗布した方が良いでしょう。ヒレは乾きやすいので、多めに、鼻孔や吻部など水のたまりやすい場所には注意しましょう。
  墨の塗布に移ります。基本的には濃い墨、中位の墨、淡い墨の三種類を用意します。そして濃い色から順次淡い色を(逆に 淡、中、膿、の順の場合も)下のイラスト(黄土色ラインでその大凡の範囲を示しています)を標準にして、色の境目が出ないようにボカシながら塗布します。

濃い墨中位の墨淡い墨


口より第一背ビレに至る部位に最も濃色をぬります。この部位は魚種によりそれぞれ異なった線となり、それぞれ特徴をもっているので、特に入念にします。
各ヒレは、膜を「淡」で、筋を「中」で、親骨やトゲを「濃」でぬります。
  墨のぬり方としては、魚は丸く厚みがあるため必ず、丸いものを描くように、背から腹下へと筆を運びます。この時ウロコに注意、一般的にはウロコの硬い魚は魚体の頭部から尾部の方向へ運筆します。つまり一方通行の形をとります。また、筆に墨の含ませ具合いの加減も大事です。多過ぎればあたり一面にニジミができ、少な過ぎれば色付きばわるく、練習を重ねて身体で覚えてください。
  墨の塗布が終わったら、すぐに拓さないで、必要以上についた墨や水を取り除きます。墨のぬり忘れにも注意してください。
  魚体全体をながめて、異常に光りを反射している部分は、墨や水が多く、ニジミの原因にもなります。ティシュペーパーなどを丸めたもので吸い取ります。
  また鼻孔や吻部、肛門やヒレの付け根は水がたまりやすいので、コヨリなどを挿入して吸い取ります。

4.拓し方

(1)その手順
  次に、拓紙(拓布の場合もあります)をかぶせて拓すわけですが、今一度、墨のぬり忘れがないか確かめます。
  乾燥のきびしい時は勿論、紙質にもよりますが、事前に拓紙にスプレーで霧を吹いておくこともときには必要です。拓紙の表裏を確かめて、表を下にして魚体にかぶせるのですが、その拓紙のどの部分に拓すのか、この決定は美術魚拓にとって最も重要です。事前によく検討しておく必要があります。例えば、上ものの魚、底ものの魚、群泳している魚など、それぞれ異なった魚の習性を反映させたり、作者の想いをその魚たちに託して、どう表現するのか等々これらのことを考慮して構図を決めておきましょう。「5.美術魚拓と構図」の項で詳しく記します。しかし先ずは「いかに拓すことができたか」で進めてください。
 拓紙をかぶせるとき、魚体の尾部の方から静かにのせ、手で軽く圧するように拓します。各部とも同じ強さで圧するのですが、強調したい部位は、圧する時間を長く、淡くしたいときは短くします。
 拓す順序は、右の図に示した番号順を目安にして(これは少しでも拓紙の「しわ」を少なく、できても「しわ」が見にくくとのおもいから考えられた一つの方法)、同じ部位は二度押ししないこと、頭が二つあったり、口が三っもということにならないように留意します。
各部位の拓し方は、魚種によっても異なりますが、一般的に、吻部から第一背ビレに沿った線は、強く鮮明に拓し、反対に腹部は、全体に淡く、また尾ビレにかけては、薄く拓した方がいいでしょう。
また、魚体に忠実に拓しすぎた結果、拓した魚の幅が視野より幅広になって、魚名の表記がなければ、魚種不明になりかねない作品も、ときにはあったりします。
(2)目の描き入れ
  魚拓は、当然のことながら加筆修正は厳禁ですが、目だけは描き入れることができます。描き入れる前にもう一度、じっくり目を観察しましょう。魚種により、形や色も異なり、同一魚種でも同じとはかぎりません。
なお、魚拓された用紙が十分乾いてから作業に入ります。また、目の色調は、魚拓に使われた墨色をこえない色調を、いたずらに強調して不調和にならないようにします。魚拓は目によって生きたり死んだりするとさえ言われています。

初めて魚拓に挑戦される方は、先ずここまでを、じっくり、くり返し実践していただくことをお薦めします。記録魚拓でしたら一応の完了とみていいでしょう。当ホームページ掲載の魚拓作品も参考に十二分にご活用ください。補足になりますが、魚種もなるべく平たなそして20cm前後のものが扱いやすいでしょう。

魚拓入門 「直接法魚拓」2/2は右のトムをクリックしてください。



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