魚拓ミニミニ図鑑


魚拓入門 (1)「直接法魚拓」 2/2
5.美術魚拓と構図

美術魚拓とは何か
  あらためて美術魚拓とは何か、再度考えてみましょう。
◎ 作者の持つイメージが、魚拓を介して作品として表現されたもの
◎ 何かを語りかけているもの
◎ 自然の姿を再現したもの
       これらの目的のために、美術作品としての魚拓には、一つには構図が必要になってきます。とくに制約するのではなく、まずは魚たちの自然の形態や習性に逆らわないものにしましょう。
構図の決め方
(1) 紙面のどの部位に拓すかを決めます。それは対象魚の習性により異なり、例えばハゼは紙面の下方 にセイゴはどらかと言えば上方に、それぞれ中心線を外した方が自然でしょう。
(2) 魚の頭部を上向きにするか、下向きにするかは、魚の習性、特にその行動を考慮して決めます。
(3) 複数の魚を拓す場合、遠近法による表現方法が必要になるし、重ねどりの手法(重ね拓)も採り入 れます。(後述)
              (4) また構図の決め方の一つの方法として、水槽などで泳ぐ魚の姿を観察するのも良いでしょう。
(5) なお構図上避けたいことを2〜3あげてみれば
◎整いすぎない ◎不安定にならない ◎詰まらない(余白の美)等々

重ね拓........魚が重なって見える場合の拓し方です。下の作品を参照してください。

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6.避けたい色調の乱用

彩色魚拓
(1)近頃 絵の具を用いた魚拓が多いのですが、色調について、ときに、対象魚の色にこだわり過ぎてはいないでしょうか。魚はもともと保護色であり、住む環境により大きく変わるものです。作者が見たまま、感じたままの色を再現するように心掛けたいものです。
(2)魚拓は、墨色と用紙の白の調和からかもしだされる水墨画調に、とも言えます。拓されぬ余白の部分が、魚拓の奥行きを感じさせ、余白の美にも繋がると思われます。
(3)いたずらに多くの色調を用いた結果、美術魚拓本来の味わいを失ってしまう、留意したいことです。

7.裏打ちと落款

裏打ち
拓し終って目に筆を入れ、数日陰干しして完全に乾いてから、裏打ちに入ります。
(1)一般的に魚拓は、比較的薄い和紙に拓すので、そのままでの観賞は無理です。必ず裏打ちをします。裏打ちをすることにより、紙面の小じわも消え、墨色もさえてきます。
(2)苦心のすえ出来上がった魚拓が、裏打ちによって失敗することは、許されません。表具師に依頼するのが安全で完全な方法と言えます。しかし自ら裏打ちに挑戦することも、それが度々の失敗の積み重ねであったとしても、完成への歓びを増幅させることになるとも言えます。
色紙に裏打ち
(1)この方法が最も簡便な裏打ちです。魚のサイズが制約されますが、色紙は厚紙ですし、拓紙が小さくて(拓紙は初めから色紙より少し大きめに切っておきます)すむので扱いが楽です。
(2)先ず拓紙のシワを伸ばします。拓紙を新聞紙の上に置いて、全面に霧を吹きます。乾き気味になったところで、台(デコラ板..コタツの上板などや机の上など、色のつかない、デコボコしていないもの)の上に表を下にして置き、刷毛でシワを伸ばします。シワの状態によっては、布きれで押さえるだけでもかまいません。ただし濡れた拓紙は破れやすいので要注意です。
(3)こんどは色紙に糊をつけます。ヤマト糊でけっこうです。水で薄めてください。水加減はその内におのずと体得できます。
(4)この糊のついた色紙を先ほどの拓紙の上に置くわけですが、その位置はあらかじめ準備しておいてください。置いたら上からつまり色紙の裏からよく手でこすります。貼りついたら表を上にして、もう一度その上に和紙(ある程度水気を吸い取る紙で、ピンとしたものならなんでもよろしい)をあててシワが残っていないか確認しながら、手のひらで強くこすって貼りつけます。
(5)その上にティシュペーパーを数枚置き、更に新聞紙を数枚重ね、更に重し(本など)を置いて一昼夜陰干しにします。
(6)完全に乾いたら、カッターナイフで拓紙の耳を切り落としますが、色紙には金紙のフチがあるので、そのフチの内側を切ります。
落款
(1)署名、押印します。署名には魚拓の色調を超えた墨色は好ましくなく、やや薄めに署名した方がいいでしょう。印は不つり合いの大きさにならないように。また、署名、押印の部位は、拓された作品の進行方向には、厳に避けるべきです。

これで終了しました。ご苦労さまでした。もし想いが残りましたら、ぜひ実践と工夫にお進みください。なお、絵手紙風に作った魚拓紙を、「はがき」に貼ると云う方法も簡便で実用的で面白いですね。



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