LITHIUM

REVIEW:O-U

P

Pink Floyd:Piper at the Gates of Dawn;

Piper at the Gates of Dawn

シド・バレットのソロの良さに気づきはじめてからか、ピンク・フロイドを聴く機会が増えた。
例えば、『狂気』を聴いたときは確か 14 歳だったと思うが、まったく印象を覚えていない。
そこからたまには聴いてみるようなこともあったが、昔はよく聴いていたメタルを聴き返すような気まぐれに近いかった。
やたら大げさなわりに、なんだか見え透いた仕掛けのような音が気に入らなかったので、ピンク・フロイドは、僕の中でかなり地位が低かった。

しかし、シド・バレットの存在が僕のピンク・フロイドの評価をひっくり返した。
シド・バレットのソロ作品は、いつか何か書きたい、客観的に見たらきっと飽きれるくらいに聴きこんだ作品なのだ。

不思議なもので、シド・バレットが在籍したバンドというと、妙に自分の中でも重要な気がしてしまう。
そしてこれまた不思議なことに、なんだかそのバンドの音楽までも理解できたような気になる。
まぁ、とにかく。以前より各段におもしろく聴けるようになったのは確か。
サイケにハマったというのも大きいだろうね。

ピンク・フロイドと言えば、やはりシド・バレットの色が圧倒的に濃い 1st が個人的なベスト。
今の耳にも十分に新鮮なアイデアと、今の耳にも十分ヘヴィな音に驚かされる。
しかも、決して前衛的な作品ではなく、ムチャクチャポップ。
『前衛的』なロックとは、このような作品ではないか。

しかし、このジャケットはダサい。いくらなんでもこれはいただけない。

Public Image.Ltd:Metal Box;

Metal Box

SEX PISTOLS 解散後、ジョニーロットンがジョンライドンと改名して作ったバンド。
このバンドのドラマー、マーティンアトキンスの活動はそのまま EBM の歴史のようなものだ。

ダブ(と言っても、リーペリーとか聴いてないし、よくわからないのだけど)の影響を色濃く残した(らしい)、重く響きわたるベース音が心地良い。
人を食ったようなジョンライドンのボーカル、金属を叩くようなパーカッシヴなギター、へヴィなリズム感覚を持つドラムなど、オルタナティヴを連想させるような部分は多い。
このバンドが後のロックに与えた影響は絶大だ。

R

Rapeman:Two Nuns and a Pack Mule;

Two Nuns and a Pack Mule

アルビニの音象を切り裂くカッティングが良い。
Big Black、Shellac も悪くないが、この頃の張り詰めた緊張感と無闇な攻撃性がベスト。
Jon Spencer より五年早かったブルース・エクスプロージョン。

アルビニと言えばゼニゲバとのユニット『Super Unit』が非常に良かった。
個人的なアルビニのベストワークです。
『All Right,You Little Bastards』をどうぞ。

Richard Chartier:Series;

Series

『for quiet amplification / headphone use』と書いてあるが(この人の作品って全部そうなんだろうね)、僕はそれほど良い再生環境ではないので殆どの音が再生されていないと思う。
しかし、聞こえてくる音だけでもほとんどが可聴域ギリギリの物凄い高周波です。
これは耳で聴いている気がしない。頭の奥で鳴っているような音です。
無音も多くて静かな作品ですが、透徹した佇まいは、アンビエントとは正反対の耳を否応なく惹きつけるような凄みがあります。

深夜の神経が尖ってるときによく聴きます。

Robert Wyatt:Rock Bottom;

Rock Bottom

車椅子のドラマー、ロバート・ワイアット。
なんて言われてますけど、どっちかというとシンガーですよね?

ワイアットの弾くキーボードの音がまるでドラムを叩いているかのように力強い。
逆に言うと、ワイアットのドラムはメロディを奏でているようでもあります。
この人の資質はシンガーであり、ドラムであろうとピアノであろうと、なんであろうと変わらないのではないかと。

非常に力強く、彼の精神力がそのまま音楽に反映されているようです。
なにか落ちこむことがあったなら、泣く前にこのアルバムを聴いてみればいいんじゃないかと。

Ryoji Ikeda:+/-;

+-

衝撃的登場だったと佐々木敦などはよく書いているが、それも当然かなという気がする。
こんな音が出てきたら、そりゃあみんなビックリするだろう。
とにかく音の純度が半端じゃない。

特にこの 2nd アルバムは傑作で、全編を研ぎ澄まされたパルスとホワイトノイズが覆い尽くす。
最小限の素材が鉱物のように結晶化されていく様は、コンピューターが可能にした錬金術のよう。

発表から既に九年が経過しているが、今だにその新鮮さ衰えていないと思う。
これが古くなるときが来るのだろうか、信じられない。

S

Saint Vitus:Born too Late;

Born to Late

モロにブラックサバス直系のドゥームサウンド。
メタル勢からは無視されていたようだが、逆にその清々しいといえるほどのサバス風サウンドがオルタナティヴなシーンから評価されたのか、SST からリリースされる。
SST との契約によって、影響下にはヘヴィメタルバンドではなく、ストーナーやドゥームなどの神経を直撃するハッパ好きなヘヴィロックバンドが並ぶこととなった。

今作は、これまたドゥームバンドとして現在でも高評価を得る THE OBSESSED からシンガーのワイノを迎えて製作されたアルバム。 低音を強調した音質に、粘つくようなリフが延々と繰り返される、ドゥームのパブリックイメージを体言するかのような音。
タイトルも『Born too Late』とカッコイイ。

現在、彼らの作品はほとんどが廃盤という状態だが 1st と、このアルバムは間違いなく買いだろう。
Queens of the Stone Age も人気なわけだし、再発されてもいいんじゃないの?

S.P.K:box;

box

S.P.K のボックスセット。

SPK の初期の名作を二枚、後期の佳作が一枚収録されています。
ジャケットなども収録されていて安心。
オリジナルなものかどうかはわかりませんが。

『Zamialhemanni』は名義だけで、グレアムのソロ作品でしょう。
初期の二枚と比べると、まるで別物ですが、これが中々の傑作。
コラージュを多用したアンビエントな作品。
『涅槃』と言った感じで、実に落ち着いて聴ける一枚。

初期の二作品は、ジャーマン・エレクトロニクスなどに影響を受けたと語られる暴力的で殺伐とした作品。
荒れ狂うハーシュノイズから、プリミティヴなメタルパーカッションや打ちこみ、怒号のようなボーカルに、不気味なうめき声や物音のサンプリング。
同時期のインダストリアルバンド達のなかでも傑出して狂暴で、かつ知的。
『Leichenschrei』は、メタルパーカッションの使用頻度が更に増し、より構成的になっている。

脅迫的なボイスやノイズなどが頻繁に使用されており、エクスペリメンタルな音楽に聴こえますが、80 年代の実験的なノイズ・インダストリアルな作品群と比べて、SPK は遥かに曲らしい曲を作っています。
パワー・エレクトロニクス、ハーシュ、コラージュ、インダストリアル、現在のノイズに SPK が及ぼした影響はとてつもないものではないでしょうか?

Steve Reich:Drumming;

Drumming

四つに区切られているが、実質的にはノンストップ演奏だろう。
CDになったことで、途中で途切れることなくこの演奏が続くことの意味は大きい。

作曲前に勉強していたというガムランの影響も濃厚な、極上の脳みそ蕩けそうなミニマル。

この一矢乱れぬ音の波を人間が演奏しているのだから凄い。
真似して似たようなループを作ってみたが、ライヒが言うとおりなんだか機械にやらせると不自然になる。人間がやる方が遥かに柔軟。
元々、音をズラしたり、遅らせたりすることで不思議な効果を狙ったライヒの音楽でもあるから、多少乱れてもそれが味になっているのかもしれない。

ミニマルテクノなんぞ軽く一蹴するトリップ感。
第二部のマリンバと声が重なりあうパートが特に良い。

Subvert Blaze:Subvert Art II;

Subvert Art II

今はなき『大阪の奇跡』サバート・ブレイズの 2nd 。

『Led Zeppelin II』のパロディな部分が多々見受けられおもしろい。
60、70 年代の古き良きハード・ロックの影響を強く感じさせながら、オリジナリティを確立している。

岡野太の異常なまでの手数の多さで叩きまくるドラムは圧巻で、
『Moby Dick』のパロディ『Wild Gose Chase』では、ボンゾを凌ぐ手数。

現在、サバート・ブレイズのアルバムは廃盤状態だが、
12 月下旬予定で再発が決定した。
ぜひとも多くの人に耳にしてほしいバンドだ。

Swans:Cop/Young God/Greed/Holy Money;

Cop/Young God/Greed/Holy Money

例えば、砂漠のような渇き、廃工場のような重苦しさ、死のような暗さ。
重量級バンドによくある、マグマのようなうねりはこのバンドに存在しない。
ひたすら、暗く、重く、硬い。
他の『重さ』をウリにしているバンドが、マグマに飲み込まれるような音とするなら、このバンドは鋼鉄にゆっくりと押しつぶされるような音だ。

決定的に違うのは、その硬さ。

T

THE THE:Dusk;

Dusk

ザ・ザの最高傑作は『マインドボム』だということを前提にしても、僕はこのアルバムが一番好きだ。
このアルバムは、比較的アコースティックで内省的な仕上がりになっている。
そして、アコースティックで内省的になったことで、よりマットジョンソンの持つパワーが前面に押し出されたと思う。

イギリスで最もソウルフルなバンド、であるザ・ザの音は、
派手なギターのディストーションはなく、攻撃的なサンプリングもなく、轟音サウンドでもないが、
『THE THE』、そして『Matt Johnson』の持つ、パワー、強烈なアジテーションは、同時代を活きたアーティスト達に勝るとも劣らないものだ。

THIRD EAR BAND:Third Ear Band;

Third Ear Band

70年代の音源はどれもこれも怪しくて、胡散臭い雰囲気の充満する傑作揃いではあるが、 長釈な曲揃いで延々と聴けるこのアルバムがお気に入り。
西洋とも東洋ともつかない不思議な旋律をミニマルに繰り返し、ポコポコとパーカッションがなり響く音を延々と聴いていると、まるで呪いをかけられているようです。

タイトルが『AIR』、『EARTH』、『FIRE』、『WATER』と万物の四元素でこれまた胡散臭い。

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