LITHIUM

REVIEW : H-N

H

花電車:The Golden Age of Heavy Blood;

The Golden Age Of Heavy Blood

ボアダムスや AOA などで活躍するヒラを中心として活動していたへヴィーロックバンド。(今はどこにいるの?)

ジャーマンへヴィーサイケ風ブラックサバスなんて言葉が頭に浮かんだが、それもちょっと違うかな。
一曲目『Future Deadlock』の重いリフの感覚なんかはジャーマンっぽいと思う。

そして、ヒラの声が良い。こうゆう音楽にもの凄く似合っている。
ミキシングがまた絶妙で、バックの音は良い加減でまとめられていて、その上に少し分離させたような生々しいボーカルがある。
うまく伝わらなさそうで歯がゆい。

花電車はこれと、次作『Hanaden Bless All』までがへヴィロック期。
以降のサイケデリック作品だけという人も結構多いようで、そうゆう人はぜひこれを聴いてみてください。

花電車:Hanaden Bless All;

Hanaden Bless All

花電車の二枚組、2nd アルバム
前作ではギターだったノマが脱退し、ベースのアオヤギがギターを担当している。

その影響か、曲はより重く、粘っこく、複雑な構成となり、サイケデリックに。前作の路線を引き継ぎながら、タイトな印象を与えた前作とは一線を臥している。
より、Black Sabbath に接近した印象。
ヒラの書く歌詞は露骨にエロながら、不思議と下卑た感じはしない。
それどころか美しい詩情すら感じる。 『下着の汚点と匂いを集めて薬箱の中 星に願いを』なんてどう考えたら思い浮かぶんでしょう。

日本のハードロック史に残すべき名作だと思います。

High Rise:High Rise II;

High Rise II

2002年に聴いた CD でベスト 3 には入りますね。
問答無用でカッコイイです。

『うるさくてなにも聞こえない』という言葉そのままというか、
音がグチャグチャに歪みすぎてて、ベースなんだかギターなんだかよくわからないくらいです。ドラムもほとんど聞こえません。
まさに音の塊と言った感じ。

しかし、その音塊の疾走感、重量感はとてつもないです。
リフもめちゃくちゃカッコイイし。
乱暴な言い方をすれば、モーターヘッドの曲を、ブルーチア−とラリーズがやっているような感じです。

結構なベテランで、ベスト盤も出たようですのでぜひ聴いてほしいです。

J

暗黒大陸じゃがたら:南蛮渡来;

南蛮渡来

このアルバムは、僕が知るかぎりじゃがたらの最初のアルバムで、当時、過激なパフォーマンスをするバンド、とだけ思われていたらしいじゃがたらの音楽性を、一部の良識ある人間に知らしめた記念すべき名盤、らしい。
もちろん、現在においてこのアルバムは、日本のロックを語るうえで外せないほど確立した地位を獲得している。

アフロやファンクのリズム、なんて言葉がこのアルバムを語るときに、よく使われる言葉だけれど、僕はそんなふうに聴いていなかったし、今もそうだ。
どちらかと言えばパンクの延長線上として聴いていた(いる)。
強面なアケミの顔から、強烈なダミ声を想像していただけに、わりとまともな整った声が出てきたときは驚いた。

死んだ後だから言えることかもしれないし、僕の勝手に妄想なのだけれど、
気にくわない『あんた』は、きっとリスナーのことだけではなかったのだろうな。

Juan Hidalgo:Tamaran;

Tamaran

ジョンケージにインスパイアされて、イタリアで『ZAJ』を結成した JUAN HIDALGO 。
盟友 Walter Marchetti も本作に名を連ねている。(イタリア語なので何をしたのかはよくわからない。エンジニアかプロデューサーだと思うが)

鈍く響くトイピアノを使った作品で、それに軽くエフェクトをかけて音響を延ばした内容。
抑揚もなく、分厚い錆びた鉄板を叩くような音が延々と流れ続ける。
チルアウトでもなければ、ミニマルでもないのだが、この音響はとても心地良い。
子どもの頃、建築現場など至る所に落ちていた鉄板を叩いては、音を飽きもせずに聴いたころを思い出した。

マッチョな男三人が並ぶ、悪趣味を通りこしてアートかと思ってしまうヘンテコなジャケも良い。
しかしタイトルの『Tamaran』(堪らん?)は謎。

JOJO 広重:生きている価値なし;

生きている価値なし

NICK DRAKE の項で、どうでもいいと言ってくれる音楽に惹かれると書いたが、その「どうでもいいと言ってくれる音楽」の筆頭。
暴れまわって、怒鳴り散らして、泣き喚きたいときに聴く。
そうゆう時以外には聴かない。聴いても意味がないから。

JOJO 広重のソロは歌詞の方ばかりが注目されているが、あまりに強靭な、ロックの残骸のようなインスト曲にも注目したい。

K

King Crimson:Lark's Tongues In Aspic;

Lark's Tongues In Aspic

 結成当初のメンバーが脱退を繰り返し、ついにオリジナルメンバーはロバート・フリップひとりだけとなってしまったキング・クリムゾンは解散します。
しかし、その三ヶ月後、フリップは新しいメンバーを引きつれてクリムゾンを再結成。 発表されたのが、この『太陽と戦慄』です。

 各メンバーの圧倒的演奏の中でも一際異彩を放つ、狂人ジェイミーミューア。
効果的に叩かれるメタルパーカッションや、不気味で出所不明な打撃音が強烈な磁場を作りだし、
この作品における『戦慄』となっていることは間違いないでしょう。

 こんなものが、今からちょうど30年前に発表されているのだから恐れ入る。

L

Leningrad Blues Machine:Fandango;

FANDANGO

ゼニゲバなどで活動するタバタを中心としたヘヴィー・サイケバンド。
結局一枚もスタジオアルバムを残さなかったので、唯一の音源はこれともう一枚のライヴ盤だけだそうだ。
最近はまた活動をしているようなので出る可能性もあるが。

個人的なタバタのイメージに直結する、混沌としつつ、なおかつキレの良い音を聴かせてくる。

音源は客が録音していたものだそうで、確かに『そんなもん』なのだけれど、それがまたバンドの混沌とした音と合っていて悪くない。

そういえば、この CD は曲数が 9 曲となっているが、実際は 10 曲。名曲『Russian Asshole』は 2 テイク収録されている。
個人的には、6曲目に収録されている方が、淡々としていて好き。

M

Magical Power Mako:Jump;

Jump

当時としてはジャーマン・ロック、特に一曲目などはグルグルあたりが近いかとも思うのだけど、聴き進めていくとやはり異質。
ここはマジカル・パワー・マコと言ってしまうのが正解か。

マコの何言ってるんだかわかんねぇボーカルはさながらダモ鈴木。
マコの声にドラムが応答する曲があるのですが、これは衝撃的でした。
そのまんまやっちゃうか!といったところで。
とにかくこの人の音楽は自由そのもの。
いや、自由というのもためらわれます。
マジカル・パワー・マコと言いましょう。

最高にぶっ飛んでる。ジャンプ!

Magma:Live;

Live

マグマをはじめて聴いた。予想通りの音だった、と同時に予想を遥かに上回る音だった。

これほどまでに想像力を喚起する音楽も珍しい。
特に一曲目、30分にも及ぶ超大作『Kohntark』(上手く表記できないので英語)は凄まじい。
自ら描く世界を破壊するかのような壮絶さ。
例えば、よくあるアクションものの映画(音は中世っぽいが)を見ているとする。
導入部から、徐々に展開を広げ、ラヴストーリーなどを挟み、最後に壮絶なアクションシーン、
を見ていたらヒーローがカメラまで攻撃しはじめた。みたいな。
重厚な世界を構築し、彩り、最後には自ら破壊する。

この文章かなり興奮して書いているので、他人が見ると変なこと言ってると思うかもしれない。
だけど、このアルバムには、変なこと書くほど聴き手を興奮させてしまうパワーがある。
マジで凄すぎ。

Mainliner:Mellow out;

Mellow Out

High Rise の南條麻人、AMT の河端一のおなじみの編成に、ドラムは同じく AMT のオリジナルメンバー小泉が叩いています。
今作は 96 年発表ながら、なぜか早々に廃盤となっていた 1st 。2003 年にリイシューされました。

Mainliner は High Rise 直系の疾走感がありますが、今作は重いベースとドラムの上を河端一の正にモーターサイコというべきギターが唸りまくる内容。
『Mellow Out』とは薬でボンヤリとしている時の様子を指す言葉だそうですが、そんなふうに落ち込みながら昂揚していく、とても奇妙な感覚に陥ります。

High Rise 含め、個人的にはこれがベストかもしれない。
とにかくカッコイイです。英 WIRE 誌でも絶賛されたそうな。
Amazon.co.jp では既に品切れですが、RiotseasonAmazon.co.uk、もしくは AMT web の Shopzone で入手可能。

Ministry:Twitch;

Twitch

このころのミニストリーは、実質アルのソロプロジェクト。
この作品以降、ミニストリーはこの手の音楽においては暗黙の禁じ手となっていたギターを取り入れ、更に音圧を増していく。
しかし、この作品でのノイズ、ビートの嵐も負けず劣らず攻撃的だし、個人的にはギターを導入した以後の作品よりも刺激的。
ゲストには ON-U のエイドリアンシャーウッドを迎えていて、過激な音響処理が全篇に施されている。
そのせいか、この作品はダブなどを好む人にも結構ウケが良いように思う。

『JUST LIKE YOU』や『OVER THE SHOULDER』は、エレポップを通過した収穫だろう。
しかし、最大の聴き所は、10分を越える大作『TWITCH(VERSION II)』。
エイドリアンシャーウッドとアルジューゼンセンが作り上げたこの曲は、 EBM の金字塔。

N

Nick Drake:Pink Moon;

Pink Moon

JOJO 広重ではないが、「どーでもいい」と言ってくれる音楽には惹かれる。
別に生きたって死んだって、苦しんでまでこの世にしがみついてなくたって良いと、
全部どーでもいいことだと言ってくれる音楽を聴いていると気が楽になる。

ニック・ドレイクが自殺直前に発表したこのアルバムは、骨と皮のみの、寒々しくて、ストイックで、悲しくて、そして「願い」や「祈り」に満ちていて、本当はどーでもよくなんかないと言い聞かされている気分になる。
どうでもよくないとわかっているから、人に「どーでもいい」と言ってほしいのかもしれない。

ニック・ドレイクのこのアルバムは、自殺直前に出されただけあって、「どーでもいい」という雰囲気があって、それを伝える人も数多いが、 僕にとっては、どうでもよくはないのだと心地良く言ってくれる一枚。

Nirvana:MTV Unplugged;

MTV Unplugged

よく、この歌がカートの遺書だと言う人がいる。
僕はそうは思わない。
この声は誰にも向けられていない。
虚しくて、無意味な歌だ。
だからこそこの歌は、とても悲しくて、心に響くのだと思う。

Nurse with Wound:Thunder Perfect Mind;

Thunder Perfect Mind

80年代より活動を続ける UK 産ノイズの重鎮。
スティーヴ・スタップルトンを中心に、不特定多数の人間が参加するという活動形態のようです。
個人的に DTM の真似事みたいなものをやっていますが、Nurse with Wound の作品には凄く感銘を受けました。
基本的にはコミカルで混沌としたコラージュを多用するのですが、今作は N.W.W の作品の中でもかなり聴きやすいです。
今作は、CURRENT 93 との姉妹作品で、CURRENT 93 にも同タイトルのアルバムが存在し、そこにはスティーブ・スタップルトンが参加しています。

リズミカルに交差する発信音をベースにした、ある意味テクノとも取れる曲。
リズミカルなのに決して踊れない、冷ややかで、聴いてると体調と精神に異常をきたしそうになります。
だけどやめられない。身体ではなく神経を揺らす、麻薬的な中毒性と、なんとも言えぬ快楽性を持った作品です。
しかし、二曲目のあのコラージュは趣味悪すぎ。(笑)

Whitehouse なんかもそうですが、この N.W.W の作品もなぜか定価が高いです。
おまけに、2001年リイシューなのに Amazon.co.jp では品切れです。
通販では Alchemy Music Store にて良心的な値段で販売されているのでそちらで買うのがオススメです。
デジパック仕様で、更に一曲追加されているようです。(旧仕様なので入ってません(涙)

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