LITHIUM

REVIEW:A-G

A

Aerosmith:Rocks;

Rocks

初めて買ったロックのアルバム。

最初は誰でもハードなものを求める。と思うのですが、違うかな?
まぁ、とにかく、なんというか「ハードでラウドでスピーディーな音楽」が聴きたくて買ったのこれ。
正直言うと、最初はそんなに気に入りませんでした。
だって、求めてた音と違うもんな。どこが「ハードロックやねん」と思いました。
セックス・ピストルズ聴いてたら、今ごろは田舎のパンク小僧だったかもしれない。
あるいはアイアン・メイデン。

でも、今聴くと凄く良いアルバムですよ。
捨て曲なしだとは思わないけど、次々に曲が出てくるような気がするほど、アルバムの進行が早い。
全曲に渡って、ドライヴ感があるからだと思う。
ブルージーで泥臭いハードロックと、ドライヴ感があって荒っぽいロックンロールを融合させた音。
こうゆうアルバムは、後にも先にもない。

この頃のエアロスミスは、ドラッグ塗れで、とにかくダーティーだった。
今ではでっかいアリーナでヒット・ソングを歌っているが、
このアルバムで聴ける音は暗い、暗いと言っても「鬱」とは全然縁がなくて、さしずめ夜の住人と言ったところ。

Aerosmith:Live Bootleg;

Live Bootleg

これを聴くと、やっぱりこのころのエアロスミスはスタジオの方が良いと思います。
どう聴いてもヘタクソなだけですよ。
でも、一番聴いてるアルバムはこれ。
エアロスミスは基本的に曲の出来不出来が激しいバンドだと思うので、ベストに近い選曲をしているこのアルバムの方がスタジオ盤よりすんなり通して聴けます。

このアルバムで、ビートルズの『Come Together』をカヴァーしていて、僕がはじめて聴いた『Come Together』がこれだったんで今でもビートルズの方がしっくりこなかったりします。
一番好きな曲はジェームスブラウンのカヴァー曲『Mother Popcorn』。凄くタイトで良い。

ちなみに、僕が持っているのは CD ですが、ジャケットの遊びがなくなっているらしいので、これから買ってみようかと思う人は LP の方が良いかもしれません。雰囲気出るだろうしね。

Alvin Lucier:Bird and Person Dyning;

Brid and Person Dyning

Cramps レーベルの nova musicha n. シリーズは損したと思う物と、退屈ギリギリの良さを持った物が入り乱れていて面白い

鳥の鳴き声がフィードバックして壮絶なパルスノイズを吐き出す。

ヘッドフォンで聴いたら歯が痛くなったぞ。

B

Beach Boys:Pet Sounds;

Pet Sounds

いつ聴いても良いアルバムがこの『ペットサウンズ』だ。

音楽を一生聴き続けるかはわからない。
だが『ペットサウンズ』を一生聴きつづける自信ならある。
実際、長い間聴き続けているアルバムだったりする。
このアルバムに出会えて本当に良かった。
音楽を聴く楽しみは、こうゆうアルバムとの出会いだと思う。

Blue Cheer:Vincebus Eruptum;

Vincebus Eruptum

元祖ストーナーであり、元祖轟音サイケバンドであるブルー・チアーとは、LSD とスピードの混合物をバンド名に掲げた轟音中毒者集団である。

一曲目、フーもカヴァーした『サマータイムズ・ブルース』からして、VU の 2nd アルバムを越える轟音フィードバックギター!
元曲を聴いた後なら間違いなく「どこがやねん」とつっこんでしまうこと請け合いの偏屈カヴァー。
言葉は不用の、全てを吹き飛ばす轟音ロックの真髄。

Brutal Truth:Extreme Conditions Demand...;

Extreme Conditions Demand Extreme Responses

これ以上はないんじゃないかってぐらいのグラインドぶりで燃え尽きていった暴虐サウンドの王。

獣のようなボーカル、人間業とは思えないブラスト、グルーヴを越えて音の塊と化したサウンドは壮絶の一言。
このアルバムは、中心人物の Dan Lilker が Anthrax や、Nuclear Assault に在籍していただけあって、後のアルバムよりもスラッシーで聴き易い。

『WALKING CORPSE』のムチャクチャカッコイイイントロからの爆発はとんでもない壮絶さ。

C

Captain Beefheart:Trout Mask Replica;

Trout Mask Replica

言わずと知れたフランク・ザッパの友人。音の彫刻家。牛心隊長。
スパルタ教育で有名らしいが、あまりこの人の周りのことは知らない。

このアルバムはキャプテン・ビーフハートの代表作。

で、内容はというと、デルタ・ブルースとフリー・ジャズの融合と例えられるような、一聴してムチャクチャなリズムの上を隊長の荒々しい声がブルージーに暴れまわるといった内容。
予備知識を持たなければ1曲目で腰を抜かすことウケアイ。

しかし、このアルバムは不思議だ。
すごくムチャクチャやってるように聞こえるときもあれば、丁寧に整備された演奏に聴こえるときもある。
そして、隊長の声は野太くて、まさしく牛のように力強くて素敵だ。

この人の声と、ジム・フィータスの声はすごく似てるような気がする。
フィータス自身も『Hot Horse』という、インダストリアル・キャプテン・ビーフハートな曲を作っているのでわかってるんだろうな。

そんなことはともかく、まぁ、聴いたことない人はぜひ聴いてみて。な一枚。
ついでにジャケットも大傑作。やっぱり良いアルバムが、ジャケットまで良いと嬉しい。

Charles Manson:Lie;

Lie

『ファミリー』の教祖として世界的に有名なチャールズ・マンソンのアルバム。
ビートルズマニアとしても有名だがビートルズっぽさはなく、時代を反映したいかにもカルトなサイケ・フォーク。見事にヘロヘロな演奏。
録音は盤起こしらしく、針のプチッという音も録音されている。
先入観があるせいか、なんとも不気味。
特にファミリーのものと思われるコーラスが突然笑い出したりで怖い。

ビーチ・ボーイズに曲提供をしたり、音楽とも深く関わり続けたマンソンだが、個人的にはその凄さがよくわからない。
まぁ、いろんな意味でマストアイテムであることは間違いない。

Chrome:Half Machine Lip Moves/Alien Soundtracks;

Half Machine Lip Moves/Alien Soundtracks

アメリカ西海岸のアンダーグラウンドは NY などの東海岸と比べると、どうもメディアに取り上げられる機会が少ないようだ。
おかげで僕もクロームなんて、名前も聞くことはなかった。
その存在の知ったのは、JOJO 広重のコラムを読んでからだ。
基本的にパンクが嫌いらしい JOJO 広重が文句なくカッコイイなどと書いており、興味を持った。

結構普通のパンクなのかと思っていると、唐突に展開が変わったり、ひきつったように音が混ざり合いノイズと化したと思うとミニマルな展開へと突き進んだりで、一癖も二癖もある展開をつきつけてくる。
正統派パンクとアヴァンギャルドな歪み具合のバランスで、結果としてとても奇妙な印象を受ける。

このバンドによって、僕も少しだけアメリカ西海岸に興味を持つようになった。
しかし知れば知るほど、アメリカ西海岸は奇妙なところに思える。僕は行きたくないや。

D

David Tudor:Three Works for Live Electronics;

Three works for live electronics

機銃の如きパルス音をエフェクトで崩したり、変質させていく『PULSERS』が強烈な印象を残す。
小杉武久がヴァイオリンのノイズを控えめに塗していくあたりも、かなりストイックでカッコイイ。
小杉武久の変なヴォーカルをフィーチャーした爛れた電子ノイズ作品『UNTITLED』もイケてます。

本来はこれだけで一枚の LP ですが、CD 化にともなって 30 分にわたる『Phonemes』もボーナスで追加。これはあまり好きじゃないですけど。
気になるのはネットで見たオリジナルジャケットは凄くカッコイイ代物だったのに(内容すら想像がつきそうな)なぜこんなにカッコ悪いジャケットにしてしまったのか。

David Tudor の作品は、ストイックで無機質な鉄の如き美しさがあって魅力的です。

F

Faust:Two Classic Albums FROM Faust;

Two Classic Albums FROM Faust

ファウストは聴けば聴くほど不思議なバンドで、ジャーマンロックの中でも、その異才は際立っている。

VU を彷彿とさせる曲、ファズの効いたヘヴィロック、お祭りの楽団のようなパレード、チープなテクノの原型の残骸、コラージュ。

「パパ、バナナをちょうだい。明日は日曜日」なんて、意味不明な詩だけど、そのフリーキーでテンションの高い叫び声は心地良い。
その意味不明さ、が心地良いのかもしれない。

今日も ファウストは僕の中でわけのわからないバンドという地位に君臨している。
でも、ときどきアルバムを出して聴いてみたりもする。

Fishmans:Neo Yankees' Holiday;

Neo Yankees' Holday

これほどまでにダブというスタイルが似合うバンドはいない。と思う。
FISHMANS の音楽を聴いてると、日常がエコーにかけられて響いてくるような気がする。
瞬間の美しさを捉える佐藤 の詩は秀逸だ。声も良い。
重ね重ね言うけれど、これほどまでに音にハマったバンドはない。
ダブでなければ、ここまで感動しなかったと思う。
『エヴリデイ・エヴリナイト』が特に好きだ。

この曲は、よくここまで音を削る勇気が持てるものだと感心する。
これに比べれば『音響派』なんて、なんてケツの穴の小さいやつかと思う。
この曲は、隙間が多くて昼の歌なのか、夜の歌なのかわからない。

Foetus:Hole;

HOLE

ジムフィータスが、インダストリアル(ロックよりの、Not TG)を代表するアーティスト達と違う点は、根幹を成してるもの、だと思う。
それはよく言われるジャズとか、ブルースとか、映画音楽だとかの影響じゃなくて、なんというか、ロックが根幹にあるのだと思う。
いや、もちろんミニストリーも NIN も、グラヴィティキルズ の根幹にもロックがあるのだろう。
だから言いなおそう。ロックが本来持っていた過激さが根幹にあるのだ、と。

僕は今だに、僕にとってこれ以上過剰なアルバムを聴いたことがない。
それは、決してフィータスがどのアーティスト達よりも過激な表現をしている、と断言するわけではない。
僕にとって、僕の持つレコードの中で、最も突き抜けた位置に存在しているということ。

過剰に連打されるドラム、過剰に歪められた音、過剰に言葉を吐き出すヴォーカル。
悪意、狂気、憎悪、ありとあらゆる負が氾濫している。
彼自身の言葉を借りるなら『POSITIVE NEGATIVISM』とでも例えれようか。

これからもフィータスは、これ以上に何かに取り憑かれたようなレコードは作れない気がする。
フィータスはこれ以後も『NAIL』や『THAW』、更に近年にも『FLOW』という傑作を発表しているが、のアルバムとは何かが違う。
それは僕が知る限り、他のどのインダストリアル(勘違い承知で)アーティストたちも持っていない(あるいは表現できない)ものだ。
本当に奇跡的な瞬間の記録だと思う。彼にとっても、僕にとっても。

G

Gang Of Four:Entertainment!;

Entertainment!

最初に聴いたときはピンとこなかったんだけど、どこか引っかかるところがあってはまっていった。
最近は、同じアルバムを、繰り返し、繰り返し、聴くことがなくなってきていて、通して聴いていないアルバムも結構あります。
俗に言う『大人聴き』(どれほど浸透している言葉かは知らない)ってやつですね。
でも、やっぱり良いアルバムというのはどこかひっかかるものがあります。それぐらいが調度良い。たぶん。

アンディギルのギターは、スティーヴアルビニに影響を云々とか語られるからギリギリした音だと思っていたら、結構パーカッション的というかリズムを刻む感じで驚いた。
いや、たしかにノコギリって感じだけどさ。
アルビニのギターが電ノコで、アンディギルのギターはノコギリですね。僕はどっちも好きです。
バンド全体がスウィングしてる感じがするな。
だから、アンスラックスのサイケなギターや気のなさそうなボーカルやコーラスは違和感ありました。
それも良いんです。

Grateful Dead:Live/Dead;

Live Dead

ジェリーガルシアのギターが大好きだ。いつまでも続いていくかのような流麗さ。
ただの垂れ流しとはまったく違う、階段を駆け登るかのように『ハイ』に持っていってくれる。
ジェリーの声は、それほど魅力とは思っていないが、このアルバムの一曲目で『Dark star crashes』と歌い出す瞬間だけはなぜだかドキッとする。

ライヴは何十時間を越えて、延々と演奏していたというが、それもわかる。
スタジオ盤も良質なロックンロールアルバムだが、ちょっとライヴは特別なものがある。
会場を一周すれば全てのドラッグが手に入ったという逸話があるが、ドラッグなしでも十分に意識を連れ去ってくれる。

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