特集:太陽電池とハイブリッド車

太陽電池
最近のようすから(その4)でご紹介したように、バッテリー上がりを起こした私の自家用車がハイブリッド車であったこともあり、この機会に電池のことを調べてみたので、少し蘊蓄を傾けてみたい。
最近の話題として「ペロブスカイト太陽電池」を取り上げる。
ペロブスカイト結晶を太陽電池に応用したのがペロブスカイト型太陽電池である。
発明者は、右側の写真の宮坂力氏で2009年に発明された。
氏の研究室に入った研究生の小島氏がペロブスカイト結晶を太陽電池に使うという発想をもたらしたそうである。
そして、様々な研究者が改良を重ね、エネルギー変換効率は3.9%→全固体化→10%→15.1%になり、近い将来に20%を超えることが期待されている。
固体化電池、プリンター印刷、変形自由、エネルギー変換効率大などさまざまな可能性があるが、デメリットとしては性能が不安定、鉛使用、更なる変換効率の向上など今後の課題も残されている。
これは日本発の太陽電池で、現在主流のシリコン型太陽電池に代わる新しい太陽電池として注目を集めているものである。
ぺロブスカイト太陽電池とはペロブスカイト結晶を用いた色素増感太陽電池で、材料としてCH3NH3PbI3などを用いてプリンターで印刷できる手軽さがあり、低コスト化が注目されている。
欠点は、シリコン型に比べて変換効率が悪いことであったが、2021年には日本の企業が変換効率15.1%とシリコン型と同程度の変換効率を実現し、にわかに注目を集めだした。この企業は2025年までに効率を20%以上に、そして、受光面積を9m2への実現を目指している。
これが実現すると、発電コストは20円/kWh以下になると目算されている(現在の電気料金は、1kWh平均で31円)。
電力業界では環境配慮型でコストの安い電力供給が喫緊の課題となっているが、このペロブスカイト型太陽電池は薄く軽量で柔軟性があり、ビルの壁や曲面にも利用できるメリットもあり、変換効率や製造技術が改善されれば、ペロブスカイト型太陽電池が電力事情を大きく変える可能性が期待されている。

太陽電池とハイブリッド車
さて、このぺロブスカイト型太陽電池が自動車に搭載される可能性が模索されている。
左側のLightyear Oneはオランダ発のリーフとボンネットに太陽光発電装置を装備したEVである。四輪にそれぞれモーターが装備されていて、駆動力を発揮するようになっている。また、空力抵抗係数Cd値も0.175という値を記録している。
右側は日本のトヨタプリウス第五世代でルーフに太陽光発電装置を装備しているハイブリッド車である。
両方ともかなり野心的な自動車に仕上げられている。
値段はLightyear Oneが25万ユーロ(2022年12月時点で約3500万円)、プリウス第五世代車は約300万円である。Lightyear Oneは高すぎますね。それも失敗の一因です。
そもそも電気自動車開発の初期段階から太陽電池とのマッチングは模索されている。私が、太陽電池を搭載した電気自動車のことを知ったのは、オランダ発のLightyear Oneという電気自動車からである。
たまたまオンライン講座を探していると、オランダのデルフト大学の講座が目に留まり「電気自動車」の講座を受講してからである。Lightyear Oneは、オランダのアイントホーフェン工科大学のWorld Solar Challengeに優勝したメンバーの卒業生が立ち上げた企業の開発した電気自動車である。
結果的に、この取り組みは失敗に終わったが、そのノウハウは今後生かされる可能性がある。
Lightyear社の今後は、Lightyear2という後継車に引き継がれて生産される予定があるとか、また、別の情報では、Lightyear社は経営者が交代し、太陽電池部品で貢献する方向にシフトする、などいくつかの情報があり、今後、どう展開するか楽しみもある。
写真のように、日本でも各自動車会社からさまざまなハイブリッド車が発売されている。セダンからスポーツカータイプ、最近流行りのSUVなどである。
一口にハイブリッドといっても、様々なタイプがある。
一つは、駆動力としてエンジンを主体にモーターを補助的に使用するタイプ。
二つ目にエンジンの動力を駆動力と発電両方に振り分けるタイプ。
そして、三つめは、エンジンは発電のみに使用し、駆動力はモーターのみを使用するタイプである。
ハイブリッド車一覧
ハイブリッド車やEV車の特徴としてモーターを併用するが、モーターはブレーキ使用時に充電するという回生ブレーキシステムがある。
次にハイブリッド自動車のことを見てみてみたい。ハイブリッド自動車には二種類のバッテリーが搭載されている。一つは駆動用バッテリー、もう一つは補機用バッテリーである。駆動用バッテリーとは、文字通り、車を駆動させるための電気を貯蔵するバッテリーで、これには主に大容量のリチウムイオン電池が使われている。もう一つの補機用バッテリーとは、いわゆる自動車のガソリンエンジン近くにおかれている鉛電池で、12Vの直流電流を供給して、ライトの点灯、オーディオ機器やパワーウィンドウを動かしたりするのに使われている。
この二種類のバッテリーの連携プレイは、ハイブリッド車と電気自動車(EV)で異なる。ハイブリッド車は補機バッテリーに発電機を装備しているが、EV車は車を運転中に駆動用バッテリーを充電し、必要に応じて起動用バッテリーから補機用バッテリーに電気を補充するようになっている。すなわち、EV車では、駆動用バッテリーオンリーで駆動しているが、駆動用バッテリーは数百Vと高圧であるので、これを12Vに変圧して補器用バッテリーに必要に応じて電気を送っているのである。
この駆動用バッテリーの充電のためにだけガソリンエンジンや水素エンジンを回して充電するようになっているEV車もあり、一種のハイブリッドである。私は、若いころはロータリーエンジンが好きで、いつかロータリーエンジン車に乗ってみたいと思っていたが、現在、その夢が形を変えて再度実現しそうになっている。世界で唯一のロータリーエンジン車を生産していたマツダが、ロータリーエンジンを様々な燃料を使い得る特性を生かして駆動用バッテリー発電機として使う仕様が考えられている。
これらはニューロータリーエンジンの試作車である。新しいロータリーエンジンの使用として、さまざまな燃料を使えるというロータリーエンジンの特徴を生かして、CO2排出の少ない燃料を使用してロータリーエンジンを発電用に使用し、これに、モーターを組み合わせたハイブリッド車である。
最近の環境にやさしい車づくりの一環として取り組まれている。マツダは、トヨタ・マツダ・スバルの「トヨタ連合」の電動化に適合する新時代エンジンとして披露されている。
自動車業界再編成の動きも相まって、新エンジン、新コンセプト車の登場が待たれる。
駆動用バッテリーは、最近はチリウムイオン電池が使われることが多いが、古いタイプはニッケル水素電池を使用しているものもある。私の乗っているハイブリッド車は旧式でもありニッケル水素電池を搭載しているが、最近の同じ車種はリチウム電池を使っているようである。専門的な電池の仕組みは別に譲るとして、これらのバッテリーは、二次電池と呼ばれ充放電をして繰り返し使えることが特徴であり、金属(リチウムやニッケル)化合物材料を極に使用している。
この駆動用バッテリーとして太陽光発電をルーフに設置して利用する環境にやさしいEV車が研究開発されつつあり、自動車が形を変えて登場する可能性もあり楽しみである。
その先駆けが上に紹介したLightyear oneや最近のプリウス第五世代PHVで試験的に開発された太陽光発電で走る自動車である。自動車メーカーは膨大な自動車開発のノウハウを持っており、それに、太陽電池が組み合わされれば、近い将来、太陽電池車が公道を走る日もそう遠くないかもしれない。ともかく、今後の自動車業界がどうなっていくか楽しみである。
Lightyear Oneや日本でも慶応義塾大学発のエリーカ(Eliica)(特集:エリーカの落ち込んだ谷)への教訓がある。これを反面教師とすれば、自動車の明るい未来につながる大きな可能性があるとも考えられる。

<追加>上に書いた自動車業界において、成功しかけている日本のベンチャー自動車会社があるので、紹介したいと思います。読者の中には、ご存じの方もみえると思いますが、それは、日本で10番目の「光岡自動車」という自動車会社である。


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