特集:エリーカの落ち込んだ谷

エリーカ
皆さんは、日本発のすごい性能を持つエリーカ(Eliica)という電気自動車をご存じだろうか。
これは、慶応義塾大学発の電気自動車でElectric Lithium-Ion Battery Carの略称で、頭文字をつないでEliicaと名付けられている。
この開発には、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスをはじめ38の企業が携わっている。

東京モーターショー2

エリーカは、前輪4輪、後輪4輪の計8輪駆動車で、8輪にそれぞれインホイールモーターが組み込まれ、各モーターが直接8輪を駆動し、強大なパワーを発揮する。各モーターはインバータ制御され、1モーター当たり約80kWを発生し、合計出力約640kWを誇る。0.7355kW=1馬力(PS)なので、約870馬力となる。
この大出力を持つ各車輪にはブレーキ、変速ギアが搭載され運動性能向上を図っている。
2004年に製作され、2007年から市販化計画も検討されたが、自動車メーカーの参加がなかったため、2009年には、SIM-Driveという企業を設立し量産に向け開発が進められた。試作車の最高速度は370km/hを記録し、また、ポルシェとの高加速性能競争に勝利し時速100マイル(160km/h)に到達するのに7.0秒であった。ちなみに、ポルシェは9.2秒かかった。
この最高速度挑戦車と高加速性能挑戦車は別の車両で二種類のエリーカがあった。
また、燃費も回生ブレーキの働きにより、ガソリン車よりも4倍強効率が良いと言われた。
しかし、SIM-Driveを設立して後継車の開発を目指したものの、信頼性、耐久性、安全性が必須とされる市販目標は達成できず、2017年にSIM-Driveは解散することになり、この市販計画は失敗に終わったのであった。
SIM-Driveは株式会社タジマモーターコーポレーションに吸収される形になり、タジマからエリーカ後継者が市販される可能性は低くなった。
この状況は、Lightyear Oneにも当てはまり(Lightyear Oneも4輪ながらインホイールモーターを採用している)、結局、市販化に必要な信頼性、耐久性、安全性を証明し担保するのに多額の経費が必要であり、それを調達できなかったのが大きな原因であると考えられている。したがって、今後、同じようなベンチャーが市販化に至るには、自動車メーカーの合意を取り付け、経費を捻出し市販化につなげることが必須となる。
今後の自動車ベンチャ―の取り組みに期待したい。


戻る   HPのスタートページへ