つかの間の栄光(イベント終了後)
イベント終了後BHCの控え室にて
「やっと終わったなぁ」
「ほんと、疲れたっす」
「イナはつれて帰って来たか」
「大丈夫です。テソンがおぶってきました、ほらそこ」
「少しは顔色良くなってるな」
「気まぐれなオーナーにつきあうのは大変す」
「テプンお前が一番オーナーと馬が合ってる」
「そうすかあ?」
「ラブ、そろそろ服を着ろ」
「え?まずいですか?」
「回りが迷惑だ。誰か何か貸してやれ」『僕のカシミアのコートは貸さない』
「僕のジャンパー貸すよ」
「ありがとう、ウシクさん」
「皆さん、残り物ですいとん作りました、どうぞ」
「さすがテソン!」
「こぼすなよ」
「あれ、僕の分が…」(涙目のテス)
「おかしいな、数は数えたはず。メンバー+テス君でしょ」
「おい、チョンウォンお前ついてきたのかよ」
「え?いけなかったですか」
「いけなかったかじゃないよ、テスの分のすいとん…」
「いいですよ。持ってきます。テス君ちょっと待ってね」
「はい」『テソンさん!』
「チョンウォン君も色々手伝ってくれてありがとう」
「ハハ、大した事じゃないです、ミンチョルさん」『今日は気分がいい!』
「途中姿を消した日もあったけどな」
「う…」『テプンなぜそれを…』
「大丈夫です、バンジーで気絶したことは誰にも言ってませんから」
「イヌ君!」『なんていい人だ!』
「気絶してたって有名らしいぞ」
「ぐ!」『テプン、なぜ!でもでも今日の僕はいつもと違う!!』
「野球は頑張ったでしょ」
「おお、いい球投げてたよ、ひとりだけにな」
「ふふ、ミンチョルさん。残念でしたね、野球」
「え?野球?何のこと?」
「代打で出たじゃないですか」
「ああ、そうだっけ…」『覚えてないぞ…』
「3振したじゃないですか」『僕に負けたことを認めたくないんだな、ふっ』
「ああ、あれね」『ぼんやりと記憶にある…』
「3振して倒れこんだ姿もさすがミンチョルさん、決まってましたよ」『どうしてもトボケル気か!この負けず嫌いが!』
「そうかい、僕なりに気は使ったつもりだ」『間を取りすぎた事は覚えてる…』
「でも野球は勝負が大事ですからね、いくらカッコよくても3振してはねぇ…」『ふふ、どうだ、ミンチョル!』
「そうだ、勝たなきゃ意味がない!チョンウォンが油断したおかげで負けたじゃないか」
「え?負けた?」『いきなり何の話だ?』
「甘い球とフォアボールで逆転負けだぞ!」
「負け?」『そ、そんな、覚えてない、泣いてたから…』
「いい球投げてたのに、それは残念だったね。では僕らお客さんチームが勝ったのか」
「でも、僕ミンチョルさんを打ち取って…」『花形を打ち取ったのは僕だ!』
「そうなんすよ。9割方勝てた試合なのに。ちぇっ!」
「ミンチョルさんに勝った…」『星飛雄馬だぞ、僕は!』
「チョンウォン君は野球得意なの?」
「ええ、プロになろうかと思ったくらいです」『だから僕が!』
「それはすごい、テプンのチームに入れてもらったらどう?」
「今はもうそんなにはやってないし」『なんか話が変な方向に…』
「入れてやってもいいぞ。日曜日に河川敷に来いよ」
「僕はミンチョルさんを打ち取っただけで満足です」
「ハハ、僕を打ち取ってもあまり自慢にならないよ」『もしかして、こいつ僕と勝負したつもりになってた?』
「え?」『なんだ、この流れは…』
「僕のプロフィール読んでないの?」
「はあ?」『ミンチョルのプロフィールって何だ?』
「僕は球技はやらないんだ。格闘技とかスノボー、水泳が好きでね」
「うう…」『スノボーと水泳…格闘技?』
「子供の頃から野球はあまりやったことがない」
「その割にはチーフ、いいスイングしてましたよ」
「形はなんとかしたんだが、時間がなくてそこまでだったな」
「あとは球が見れれば当たりますよ、筋はいいから。な、チョンウォン」
「どうしたの、すいとんこぼれてるよ」『涙ぐんでるぞ、やっぱり変な奴』
「く、く、くそー!」『し、し、素人相手に投げたのか!』
「ああ、きたねぇ、俺のとこにこぼすなよ。おい、チョンウォン!ちょっと待てよ!」
<チョンウォン、泣きながら駆け出す>
「すみません、僕ふきますから」
「テス君があやまることじゃない、気にしないで。彼はちょっと変だ」
「ミンチョルさん…」
「そうだ、お前は悪くない。あいつ、どうしても投げるって駄々こねやがって。あげくあいつのせいで負けたんだ。つきあいきれねぇよ」
「いいから食べよう、冷めてしまう。あ、イナ、気がついたか」
「うん?」
「すいとん食べろ。うまいぞ。お前今日何も食べてないだろ」
「うまそうだな。やっと少し楽になったよ」
「しばらくゆっくり休んだらどうだ」
「そうだな、ミンチョル1週間休みもらったんだろ」
「そう言われたけど、オーナー本気だと思うか」
「いいんじゃないか。温泉行けとか言われてたろ」
「うーん、そうなんだが…」『そ、そうだ!いい事思いついた!』「お前も一緒に行くか?」
「温泉かあ…」
「ぼ、僕らだけじゃなんだから、テス君に一緒についてきてもらって、3人で行こうか」『くう!これだ!』
「それもいいかもなあ…」
「お互い少し休もう。ここのところオーナーにつられて飛ばしすぎた」『イナの療養という名目があれば、ヨンスも説得しやすいし、ソンジェにも顔が立つ!』
「え?温泉?僕も…」(テス狼狽す)
「じゃ、そういうことで」『決まった!』
<帰り道のチョンウォン>
『何て無礼な人達なんだ!僕は勝った!たしかにミンチョルに勝ったー!認めろー!』
チーフ代理
「おはようございまーす」
「おはようっす」
「テプン早いな、今日は」
「そりゃウシク、チーフ代理の俺としては今週は頑張らないとな」
「え?誰が?」
「俺だよ、俺!ミンチョルさんの代理は俺しかないだろ!」
「はあ…まあ…」『ちなみに僕はチーフ代理の監督役だからね』
「テプンさん、お客さんです!」
「えっ、もう?早いな」
「それが、その…」
「イヌ、はっきりしろ!」
「こんにちは…」
「チーフの奥さん!」
「今日はお客で来てみたんですけど…」
「え?」
「一度室長の、いえあの人の職場を見ておきたくて…」
「チーフは知ってんですか?」
「もちろん内緒よ、仕事とプライベートきっちり分ける人ですもの」
「ですよねぇ」『まずいじゃねえかよ!』
「だから室長の、いえあの人のいない時に来たの」
「職場って言ってもホストクラブっすよ」『何するとこだか知ってんだろ!』
「そうですよ、特殊な職場だから、あまり参考にはならないかと…」『勘弁してくれ!』
「そこを何とかお願いしたいの…妹もお友達に会いたがってるし…」
「そう!お兄ちゃんうるさいから、いない時に来たのよ」
「うわ!ミンジさんまで!」
「もちろん、お金はお支払いするわ。タダはいや!だから…」
「そこまでおっしゃるなら、まぁ」『何だ、この得体の知れないあつかましさは…』
「イヌご案内して」
「ちょっとテプン、いいのか?ミンチョルさんに叱られるぞ」
「しょうがねぇだろ、いいか、ウシク黙ってろよ」
「もちろんだよ。ばれたらやばい!」
「テプンさん、大変です。また変なのが…」
「へ?」
「こんにちは、BHCはこちらでよろしいんですね」
『うわ!でかい外人!』「ど、どちらさま?」
「ふふ、僕の有能な秘書、チャン理事ですよ」
「あんたは!」
「君、また会ったね」
「ウシク知り合いか?」
「いえ、全然!」
「約束どおり僕は戻ってきた!今日こそ、ミンチョルさんとやらに会わせてもらうよ」
「チーフは今週休みだよ」『誰も約束してねぇよ!』
「え?」
「出直してきて。ここはホストクラブだから」
「営業妨害するなよ」
「君、そんな、失礼じゃないか…」
「でかい外人とむさい男が店先に立ってちゃ、客が来ない、さっ帰って、帰って」
「むさいだって?僕は御曹司だぞって…おや、あれは?おお!」
「え?」
「チョンソじゃないか!!」
「ちょっと、勝手に店に入るな!」
「うるさい!チョンソ!僕を5年も待たせたチョンソ!」
「こら!チーフの奥さんに何するんだ!肩に手をかけるな!」
「イヌさん、こちらどなた?」
「知りません!」
「チョンソ、またそんな事言って僕を悩ませる気か…」
「人違いなさってるんじゃありません?」
「いや!君はチョンソだ!」
「こんにちは!」
「ありゃ!ソンジェさん!」
「ヨンスさんここに来ませんでしたか、って、あ!お前!僕の…じゃなくて兄さんの奥さんのヨンスさんに何してるの!手を放せ!」
「何だ、後から来て失礼な!」
「君こそ何だ!ヨンスさんになれなれしいぞ!」
「ソンジェさん、こちらカン違いなさってて。でもソンジェさんどうしてここへ?」
「兄さんがいないから、外で食事でもと思って誘いに行ったんだよ。ヨンスさん、夜出歩いちゃいけない、体にさわる」
「ごめんなさい、でもどうしても室長の、いえあの人の職場が見たくて。ホストクラブってどんなところかしらって…」
「ヨンスさん、それなら僕のクラブシウォンに来ればいいよ。とにかくこんなとこにいちゃいけない」
「こんなとこ?そりゃ、どういう意味だよ!」
「テプンよせ、話がややこしくなる」
「お前こそチョンソから離れろ!僕はこれから失われた5年間を取り戻すんだ」
「ねぇ、ウシクさん、ラブ君いないの?」
「ミンジさん、ラブなら今控え室で服着てるからもうすぐ来ます」
「そう!私ラブくんご指名ね、ウフ!」
「わかりましたから、ちょっと下がっててください」
「ちょっと、皆さん!悪いけすど、ここホストクラブなもんで、客以外は出て行ってもらいますよ!」
「うるさい!文句言うと店ごと買うぞ!チャン理事!この店を買ってくれ!」
「ヨンスさんを守るためなら僕だって何でもする!僕も買う!」
「まったく手がつけられねぇ。ウシクどうするよ」
「また例の手ですか?」
「あれか?」
「そう!」
「でもほら、今夜は例の3人組予約入ってるんだろ、おと○さん、足○ンさん、○銀さん。またキャンセル出したら怒るぞ〜」
「薔薇の花は飽きたって言ってましたよね、確か…」
「テジン特製愛の花模様入りロッキングチェアなんてのはどうだ?イベントの残りにちょっと手を加えて」
「そうですね、それで手を打ってみます」
「頼んだぞ」
「ああ、でもmayoさんは頼めませんよ、洗い場」
「何で?」
「ちょっと不気味なのでしばらく休ませてくれって」
「不気味?テソンと何かあったのか?」
「僕は何もしてませんよ!お土産だって、ちゃんと調べ上げて持たせてるのに」
「調べた?」
「そうですよ。プレゼントするにはその人の生活を調査しないと」
「テソン、ほどほどにしておけよ、頼むぞ」
「ああ、しょっぱなから、この騒ぎだ…ウシクどうしよう…」
「どうしようって、仕方ないよ、あれっ、今何か通ったぞ。ちょっと、君!」
「ソンジェ!やっぱりここにいたのね!」
「セナ!」
「私の歌のレッスンより、お姉ちゃんが大事?まだそうなのね!」
「違うよ、今は兄さんが留守だからヨンスさんの面倒を見てあげないと」
「何よ!毎晩通ってるくせに!」
「そ、それは…」
「お姉ちゃんが結婚したらあきらめると思ってたのに!」
「違うよ。ヨンスさんはまだまだ側にいてくれる人が必要なんだ」
「そんなの室長にまかせておけばいいのよ。大騒ぎして一緒になったんだから」
「その兄さんが側にいられないから、僕が代わりをしてるんじゃないか、セナ。いいかげんにしてくれよ」
「セナ、お姉ちゃんと話そう」
「もうやめて!聞き飽きたわ!」
「あんた、うるさいわよ!いい加減にしたら」
「あら、ミンジ、相変わらず辛気臭い絵を描いてるの、フン!」
「おあいにく様、あたしは今映画で大忙しよ!あんたこそ、歌手で成功したからって大きな顔しないでよ!」
「何だって!あんたの兄さんがしっかりしないから、こんなことになるのよ!」
「お兄ちゃんの事悪く言うと承知しないわよ!」
「何よ、隣のにやけた若い男は!は!いい気なもんだわ!」
「男がいないからってひがまないでよね。ラブ君はね、お兄ちゃんの若い頃にそっくりなんだから!」
「いやらしい!いつまでのお兄ちゃんって!」
「あんたこそいつまでもソンジェ、ソンジェって!あたしはね、映画でだって、お兄ちゃんをもっと渋くした人と共演してるのよ、どう羨ましいでしょ?」
「映画に出たからってデカイ顔しないでよ!」
「ちょ、ちょっと、ミンジさんとラブは隅っこのテーブルに行ってて。ラブ、デッサンしてもらう時以外は脱ぐな!」
「わかりました。行こう、ミンジ」
「そうね、フン!」
「ベー!さあソンジェ!はっきりしてよ!」
「セナ、僕は自分の気持ちをうまく説明できないよ。でもそんなに怒るなんてひどいよ」
「おやおや、こちらは大変そうだ。じゃ僕はチョンソとゆっくりこちらで」
「あ!待て!ヨンスさんを返せ!」
「ソンジェ!」
「ちょっとあんた、でかい人」
「私はチャン理事です」
「おかげで今日は店開けられない。きっちり落とし前はつけてもらうからな」
「それは社長に言って下さい」
「んじゃ、店の前に立ってもう人を寄せ付けるなよ。特に3人組には注意してくれ。男2人女1人のド派手な奴らだ。絶対に!入れるなよ」
「わかりました。鉄壁の守りは私の信条です」
「っておい、今誰か通らなかったか…」
「ソンジュ!」
「ユリ!」
「やっぱり、こんなところへ!」
「どうしてここがわかったんだ!」
「チャン理事のスケジュールボードにBHCって書いてあったのよ!」
「チャン理事、これは極秘事項だぞ!」
「有能な私としたことが申しわけありません」
「どうして濡れてるんだ、ユリ」
「あなたが来る頃を見計らって海に入ったのに、いつまでも来ないなんてひどいわ!」
「自殺のマネはもうやめろ」
「そんな言い方ひどいわ!」
「ついでに目をグリグリさせるのもやめろ、僕は忙しいんだ、帰ってくれ」
「なぜ私を見てくれないの?ここで何してるのよ!あっ!チョンソお姉ちゃん!」
「そうだ、とうとう見つけたんだ、チョンソ!!」
「嘘よ、お姉ちゃんならテファお兄ちゃんといるはずだわ」
「何だって?」
「いや、その何でもないの。ええと他人の空似よ!」
「そっちだって大変そうじゃないか。じゃ僕とヨンスさんはこれで失礼するよ」
「あ!待て!こいつ!」
「おはよう!みんな遅れてごめんよ」
「スヒョン!遅かったじゃないか」
「映画の取材が思いのほか立て込んじゃって、大変だったよ。で、これは何の騒ぎ?」
「スヒョンさん…」
「おや、チーフの奥さん、今晩は。お元気でしたか」
「ええ、とても!」
「じゃ、また僕と話しましょうか。そうだ、また素敵な詩を見つけたんですょ」
「ぜひ読んでみたいわ!」
「ちょちょっと、ヨンスさん!」
「チョンソ!どこ行くんだ!」
「何だい、君達。彼女は今日は僕に会いに来たんだと思うよ。そうだよね」
「スヒョンさんたら…」
「彼女はもう涙には飽きてるんだ。別の生き方を教えてあげなくちゃ。じゃ!」
「そ、そんな!ヨンスさん!僕はどうなるの?僕は君のためにどれだけ顔をハニワにしたと思うの?」
「チョンソ、僕だってどれだけ待ってたと思うんだ!やっと会えたんじゃないか!」
「ソンジェ、やっぱりあなた!ひどいわ!」
「ソンジュさん!人違いよ!あたしはお姉ちゃんを轢いてない!」
「ウシク、俺生まれて初めて頭が痛いぞ…」
「テプン、ほらバファリン飲め、しっかりしろ!」
「なあ、やっぱりお前チーフやれよ」
「いや、それは断わる!」
かくしてBHCの夜はふけてゆく…
不在
「おはようさん」
「おはよう!」
「なんか静かだねぇ」
「ウシクさん、チーフとイナさんに加えてテプンさんもいないんですよ。誰が口きくんですか」
「そうか、僕だけか、気持ち饒舌なのは…」
「店開けるんですか」
「やるよ、オーナーああ見えてもきっちりしてるから、勝手に休んだら怒られる」
「大丈夫ですかねえ。この間みたいになっちゃったら…」
「イヌ、何とかなるさ。困った時にはアーメンだよ」
「こんにちは」
「ほら、来た!」
「いらっしゃいませ!」
「あの〜、室長じゃなくてミンチョルさんいらっしゃいます?」
「すみません、今日チーフはお休みなんです」
「あら、そうなの。残念!」
「チーフご指名ですか。よかったら他にもいい面子いるから遊んでいってくださいよ」
「そうねえ」
「どなたかの紹介ですか?」
「ヨンスに聞いたのよ。楽しいお店があるって
あの室長がホストやってるっていうじゃない、もうびっくりして飛んできたのよ」
「チーフの奥さんの」
「あたしはナレ。ヨンスの親友なの」
「奥さんとキャラちがいますね」
「はは!そりゃそうよ。向かう所敵なしのナレですからね」
「僕はウシクです、よろしく。こういう所初めてですか」
「もちろんよ!こんなとこ知らなかったわ。セナを誘ったんだけど、紅白が入ったから忙しいって断わられちゃって」
「ああ、セナさん…1人でよかったですよ」
「え?どういう意味?」
「別に深い意味はないんですけど。そう、セナさん紅白出るんですか。日本の番組ですよね。すごいな」
「そうなのよ、マネージャーとしてあたしも連れてってもらいたいわ」
「最近日本で活躍する人増えてますよね。ソンジェさんもCD出すとか言ってましたし」
「そうなのよねぇ、あたしも日本語習おうかしら」
「日本がどうしたって?」
「あ!あなたは!」
(一同あわてる)
「よう、久しぶり!みんな元気だった?」
「ビョン○ンさん!いやあ、びっくりしたなあ」
「ちょっと近くまで来たもんだから。連れがいるんだ」
「こんにちは!」
「あれ!室長とヨンスじゃない?」
「ウシクこちらどなた?」
「ヨンスさんのお友達です」
「ああ、美日々系列ね」
「あれ?室長と似てるけど違うの?こっちもヨンスみたいだけど…」
「私はチェ・ジ○です。どうぞよろしく」
「へえ、随分似た人がいるもんだわ」
「ええとね、奥で椅子いじってるのがテジン、同じく奥でレコード聞いてるのがスハ、
あっちでピストルの手入れしてるのがスヒョクで、ジュンホはまだだめ?ふうん
で孝行息子のウシクと料理人のテソン、他にミンチョルとイナとテプン、それとスヒョンね」
「最近ラブ入りました」
「さすがビョン○ンシね。噂には聞いてたけどこうしてみると迫力あるわ」
「ジ○シもそろそろこういう店出したら?」
「私はだめよ、知ってるくせに。泣いてる役しかないんだもの、陰気な店になっちゃう」
「でも今回イメチェンしたじゃないか」
「うーん、それでもきついわ。もうちょっと経験積まないとね」
「そうだな、僕も30歳前後がひとつの転機だったかな、君もそろそろだね」
「そうねえ」
「ところで、ここ一緒にいいかな?」
「どうぞどうぞ。私デカイけど1人だからちょうどよかった。ヨンスと室長といるみたいで楽しそうだわ」
「ありがとう。じゃちょっと失礼」
「お邪魔しまーす」
「この間日本に行ってきたんだよ、ジ○シと。でついテソンの料理が食べたくなってね」
「日本で食べなかったんですか?」
「僕が丼物が好きだって言っちゃったもんだから、どこへ行ってもどんぶり!バラエティでも鰻丼食べさせられてさ。まいっちゃったよ」
「へぇ!ビョン○ンさんがバラエティですか」
「人前で食べるの苦手だから一口6噛みしかできなくて…いや、あれはストレスたまったな」
「ビョン○ンシは真面目すぎるのよ。私はチーズケーキほとんど食べたわよ」
「すごいよな、ジ○シは」
「私おいしい反応が上手いみたい、フフ」
「でかいカエルとか平気で撫でるんだよ、彼女」
「だって、あれはあの番組のキャラだもの、反応しなくちゃ」
「そうなの?あのカエル、僕に喧嘩売ってるのかと思ったよ」
「もう!資料読んでないの?あれ有名らしいわよ、一部で」
「そんな時間ないよ、撮影、インタビューの繰り返しでさ」
「そうだけど、私おもしろそうなのはちゃんと読んだわよ、ス○スマとか」
「ジ○シはバラエティ向いてるかもしれないね」
「ビョンホンシったら記者会見で子供みたいに、椅子コキコキしてるのよ
おまけに居眠りしそうになったし。私がせっかくほめてあげてたのに」
「疲れてたんだよ、撮影も押しててほとんど寝てなかったんだから。でも居眠りはしてないよ
ちょっと間があいたけど答えたじゃないか。質問は聞いてたさ」
「いつにもまして間の取りすぎよ、あれは」
「まったく、ジウシにはかなわないよ」
「ねえ、一部で姉弟みたいって言われてたの知ってる?」
「え?姉弟?兄妹じゃなくて?」
「そうよ、私がお姉さんよ!空港の時から行く先間違えそうになってるんだもの
つい手を出してあげたら、姉に引っ張られる弟ですって、おかしいわよね」
「そうかなあ。でもジ○シ情け容赦なく高いヒール履いてくれたよね」
「だってえ、ドレスに合わせるとああなっちゃうのよ、ごめんね」
「いいよ、別に。君がでかい女だっていうのはわかってるから」
「ほら、ね!弟みたいにすねるでしょ」
「何だか2人仲いいですね。ほんとに室長とヨンスみたい」
「あら、そう?」
「今日も一緒の仕事があってね、その帰りなんだ」
「衛星中継っていうのかしら、日本の劇場のファンに挨拶したのよ」
「すごいですねぇ」
「そしたら、やっぱりビョン○ンシ、手を振るの一呼吸遅れるのよ。まったくう!」
「だってさあ、横見たらジ○シ勝手に手をふってるんだもの、焦ったよ。でも最後に両手で投げキスしてカバーしただろ」
「はい、よくできました!」
「ヨンスに似てるけど、やっぱ違うわ。ヨンスこんなにしゃきしゃきしてないもの」
「そうでしょ、あの人、ぐずぐずしすぎよね、そのくせちょっと図々しいし」
「そりゃ、言い過ぎだろう」
「何でビョン○ンシがかばうのよ?」
「あ、つい習慣で」
「やっぱり室長なんですかあ?」
(一同無視)
「ところで映画はどうなんですか?」
「前売りは結構売れたらしいよ。まあこれからだな。スヒョンに聞くといい」
「明日あたり戻れるって言ってました」
「スヒョンにも会いたかったな」
「来るタイミング悪いですよ。チーフ絶対会いたがってますよ」
「僕も会いたかったんだ。なんだか最近ストレスためこんでるような気がして」
「そうですね、休み取るなんて初めてかもしれません。よっぽど疲れてたんだと思います」
「またオーナーにこき使われてるんじゃないのか。あの人もほんと妄想きついからなあ
ミンチョルにはもう美日々は済んだ事だから気楽に生きろって言ってやりたかったのに」
「ビョン○ンさん、そりゃ無理です。今地上波で繰り返しですからね」
「そうか…まだ引きずってるか」
「おまけに年内は11話で切れちゃってブリザード状態で年越しだそうですよ」
「そりゃ、きつい」
「ウチの掃除のおばちゃんまで9話が山だと思ってたのに、とか言って悶絶してました」
「怪しいな、それ。でイナはどう?」
「イナさんもちょっとね。すぐ倒れこんじゃうし」
「やっぱ、スヨンさんのことが尾をひいてるのかな」
「みんなしょうがないなあ、昔の事引きずって」
「ビョン○ンさんは大丈夫なんですか?」
「ああ、僕は全然大丈夫。今映画でミンジいや、ミ○君と共演してるんだ」
「気をつけてくださいよ、年下に弱いんだから」
「わ、わかってるよ、気をつける(つもり)さ。ウシク、随分言ってくれるじゃないか」
「未確認情報なんですけど、僕もしかしたら正月にN○Kで放送されるらしいんですよ」
「え、そうなの?」
「まだ確かじゃないんですけど」
「それはおめでとう!乾杯しよう」
「そしたら僕もちょっとはメジャーになれるかもしれないな、アーメン。でも平目の塩辛はもう食いたくないなぁ」
「僕の映画も来年どこかで公開されるらしいんです」
「え?イヌも?」
「あの映画は僕も気に入ってるんだよ。それはいいね」
「それもこれもみんなビョン○ンさんのおかげですよ」
「僕は今年ちょっとがむしゃらに働きすぎたかな、さすがに疲れたよ」
「体には気をつけてくださいね」
「私みたいに、ちゃんとたくさん食べなきゃだめよ」
「わかったよ、ジ○シ」
「ねぇ、ちょっとこの空間って不思議なんですけど」
「何が?」
「だって、ビョン○ンさんて、みんなに似てるような似てないような不思議な感じがして、何かちょっと臭うわ
ジ○さんもやっぱりヨンスっぽいし」
「さすがセナのマネージャーさんだね。鋭いな、ヨンスとは違う」
「でしょ!私こうみえてもカンはいい方なんです」
「ま、細かい話は抜きにして、とにかくテソンの手料理食べよう」
「そうですね。実はわたしおなかペコペコ!残業してたもんだから夕飯食べ損なっちゃって」
「ほんとにおいしそう!ス○ップより凄いわ!」
「これはふぐの薄作りといってすごく高級なんだよ。いつもみたいにひと口で食べちゃだめだよ、ジ○シ」
「まあ、失礼な弟!私だっていつも大口で食べてるわけじゃないわ」
「はは、ごめんごめん。ナレさん、今日僕のおごりだから、遠慮しないでどんどんやって」
「ほんとですか!助かります。わあ、うれしい!やっぱり無理してでもセナを連れてくればよかった」
「いえ、それはやめてください!」(一同)
「????」
「あの〜お楽しみのところ大変申しわけないんですけど…」
「やあ、mayoさん、どうしました?」
「あの〜無理は重々承知しているんですが、ビョン○ンさんのサイン頂けないでしょうか
私洗い場担当の者で、常連さん3人分と掃除の人と私の分と5枚なんですけど…
あ、あとオーナーにばれたらきっと取られちゃうからやっぱり6枚で…無理でしょうか?」
「…」
「やっぱり無理ですよね。失礼しまし…」
「いや、いいですよ。お安い御用」『間を取りすぎた!』
「ビョン○ンシ、また間を取ってたでしょ。紛らわしいわよ」
「あ、わかっちゃった?ごめん、ごめん。つい癖で、アハハ」
衛星生中継
「よし!準備できた!テソン回線をつなげ」
「これって何ですか?テプンさん」
「いいからつなげ。おお、よし来るぞ、来るぞ」
「テプン、随分でかいスクリーンだな」
「ウシク、今いいもの見せてやる、待ってろ。そら来た!」
「????うわ!」
「あ!」
「え?」
「おお!」
「みなさーん、これは衛星生中継でーす」
「生中継ってことはお前じゃない…ってことは…」
「そうよ、ヒヒ」
「チーフ!!!!!」(一同驚愕)
「うわ、体硬そう」(ウシク)
「胸の板が邪魔してる」(テソン)
「リズム感がない」(ラブ)
「ころんだ!」(イヌ)
「重心が上にありすぎるのがまずいんじゃないな」(テジン)
「おい、テプン何でチーフがあんなことしてる?」(ウシク)
「ヒヒ、いや実は俺と間違えられて連れて行かれた。ほら、服代えただろ。あ、また転んだ、下手!」
「ああ…しかし、いや、ちょっとこれは」
「これはひどいですね」
「おやテス、お前いつ来た?」
「今です。これってミンチョルさんですよね。あ!尻もち、プッ!」
「なっ、下手だろ。クク」
「年寄りにこの踊りは無理です」
「ラブ、一緒に踊ってるのはもっと年寄りだぞ」
「あっ、そうか。じゃ年齢は関係ないですね、としたら…ぷっ」
「やめろ!」
「スヒョク、何だよ」
「嫌な気分だ。胸がザワザワする!」
「おい、何の騒ぎだ」
「あ、イナさん」
「どうした、あ、あれ?」
「どうです?チーフのタコ踊り、クク」
「あれがミンチョルだって?」
「そうですよ、あの人にも苦手なことがあるんですよ。フフ」
「あいつらと…あんなこと…うっ、胸が…」
「イナさん、大丈夫っすか?」
「う、うるさい!あれを止めろ!」
「これ生中継だから止まらないっすよ」
「うるさい、止めろ!こんなもの見ておもしろいのか!おまえら!」
「で、でも、オーナーが…」
「テプン、お前か、こいつぅ!早く止めろったら止めろ!蹴るぞ!」
「おい!落ち着け、イナ」
「あ!ビョン○ンさん!」
「久しぶりだな、元気か」
「そんなことより、早くあれやめさせてください、ミンチョルが…」
「深呼吸しろ、落ち着け。ちょっとこっち来い」
「止めないんですか、ビョン○ンさんは平気なんですか。俺は胸が痛む…」
「仕方ないだろ。もうみんな見ちゃってる。それよりお前大丈夫か?お前とミンチョルのことがちょっと気にかかってたんで寄ってみたんだ」
「俺もミンチョルも相変わらずですよ、こういう事がなければですけど」
「お前とミンチョルは僕の中でも思い入れの深いキャラだから、何かと気にかかる」
「だったら何とかしてくださいよ、あれ」
「あれは一過性のものだ、気にするな。それより立ち直れたのか?」
「大丈夫ですよ、ちょっといい事もあったし…」
「ほお、お前にも?」
「お前にもってビョンホンさんもまた見つけたんですか?」
「い、いや、別にそういうわけじゃないけど…」
「ビョン○ンシ、帰りましょうよ」
「ああ、ジ○シ。今行く」
「あれですか?新しいの。何だか全然目新しくないですよ」
「今は映画で目一杯だからとりあえず手近で…ってそんな事はどうでもいい
それよりお前たちふたりは僕の中では表裏一体なんだ、お前がまずい時にはミンチョルが助ける、ミンチョルがまずい時にはお前が助けろ、いいな」
「わかってますよ。あいつはキザだけど、いい奴だし」
「頼んだぞ。映画が一段落したら食事でもしよう。あまり根を詰めるなよ、いいな」
「わかりました。近いうちミンチョルにも会ってやって下さい」
「わかってる。さて、ジ○シお待たせ。帰ろう」
「ねぇ、あのスクリーンの人、私昔たくさん手を掴まれたような気がするわ」
「そおなの?こんな風に?」
「もうビョンホンシったら、ふふ」
「ナレさんも送りましょうか、あの坂の下まで」
「いいんですか。じゃあ遠慮なく。最後にスクリーンで室長の姿見れてよかったわあ。踊りが下手なんで幻滅したけど」
「あいつは踊りではデビューできないでしょ」
「ダメね。セナより下手だわ」
「じゃあ、みんな、また。楽しかったよ」
「ビョンホンさん、また来てくださいね」
「お疲れ様でしたあ」
「みんなもがんばれよ、じゃあ。あ、スヒョク、ピストルおろして。危ないよ」
(ビョンホンシご一行帰る)
「あー、帰っちゃった。ってミンチョルさんまだ踊ってるし」
「テプン、早く止めろ!マジで切れるぞ俺は!」
「おい、イヌどうした?何で泣いてる?」
「ウシクさん、昔学生の頃彼女と踊ったこと思い出しちゃって…」
「おいおい、あの海辺のシーンをか?」
「どこか似てませんか?僕あの時うまく踊れなくて、でも彼女と踊れて嬉しかった…」
「わかった、わかった。泣くな」
「げ!スヒョクも泣いてるのか?」
「テプン、お前に地雷踏んだ時の気持ちわかるか?え?あの踊り見たらなぜかあの感触が…」
「僕は雨の中、駅まで彼女を迎えに行ったことを思い出した…」
「テジン!」
(一同沈黙)
「あ!可愛い!」
「え?テスお前何言ってんの」
「ほら子キツネが踊ってる!」
「ほんとだ、キツネだ…」
(全員で)「可愛い!!」
閉店後
「テプン、ミンチョルはいつ帰ってくるんだ」
「さあ?」
「知らないのか、連絡して聞いてみろ」
「でも、チーフの携帯このポケットに入ったままで連絡取れないっす」
「じゃ、あいつらに連絡してみろ。デルなんとかの」
「電波届かないっすよ。よっぽど離れた所に行っちゃったのかなあ」
「場所もわからないのか!」
「ええ、まあ…」
「迎えにも行けないってことか!ちっ!」
「でも連絡とれないだけであの3人と一緒だから心配ないですよ」
「馬鹿野郎!だから心配してるんだ!ミンチョルに何かあったらお前の責任だからな!」
「え?マジ?…」
「テプン、ちょっとこっち来て。イナさん相当怒ってるぞ。まあもっともだけどな。少しやりすぎだよ。ちょっとテンション下げろ」
「ウシク、テンション下げろって言われても、俺下げ方わからねぇ」
「こんばんはあ!」「夜分に失礼するよ」
「ミミさん!会長もマイケルさんも!」
「帰ってきたんすね、いやあよかった、よかった」
「ねぇ、どうだった?私達の踊り?」
「最高でしたよ、皆さん。すごい盛り上がりましたよ」
『ミンチョルさんにびっくりして誰も見てなかったな、そう言えば』
「やっぱり!そうだと思ったわ、ふふ。ね、会長言ったとおりでしょ」
「さすがミミさんじゃ。わしらも頑張った甲斐があった」
「ミンチョル君もだいぶ上達しただろう」
「そうそう、そのミンチョルさんはどこですか?一緒なんでしょ!」
「それがねぇ…」
「その…」
「実はね…」
「何かあったんですか…」
落下
「ミンチョルはどうした!」
「イナ君、そんなに興奮しないで、あのね…」
「実はなぁ、その…」
「会長、はっきり言えよ!」
「いないのよ」
「それはわかった、で、どこだ!」
『イナさん、落ち着いて』『ウシク、俺は切れそうだ』『後は僕から聞きます』『わ、わかった』
「それがね、ミンチョル君練習の後、ぐったり、いえぐっすり寝ちゃって。起きないのよね」
「そうそう、ぐったり、いやぐっすり寝ちゃって」
「仕方ないからミンチョル君のお家のところにきたらパラシュートで落とそう、いえ、降ろそうと思って、あたしのトランクに入れたの」
「トランク!ですか?」
「ヴィトンの特注よ、あたしの衣裳を入れる立派なトランク。高かったんだから」
「それで?」
「それにミンチョル君を詰め、いえ、入れてお家の近くまで飛んできたから落とそう、いえ降ろそうと思って貨物室に行ったの、そしたら、ね!」
「ね!ミミさん!」
「ね!って何ですか!」
「なかったのよ、トランクが」
「!!!!!」
「よおく見たら、貨物室のドアがちょっと開いてたのよ、ね!マイキー!」
「ね!ミミさん!」
「マ、マイキー?!」
「マイケルさんのニックネームよ!」
「ミンチョルさんの入ったトランクは…」
「どおりでちょっと機体が安定してなかったわけよ、ね!会長!」
「ね!ミミさん!」
「てことは…」
「ミンチョル君どこかに落ちちゃったみたい、ホホ」
「ホホって、何で貨物室のドアが開いてるんです?!」
「なぜかしらあ?」
「ミミさん、ほら違った角度から下が見たいとか言って、マイケルに開けさせたでしょ」
「そうだったわ。すごい迫力だったわよね、顔にもろ風受けちゃって!おかげでセットが乱れて…」
「そうでしたなぁ、あれはすごかった。呼吸困難になりましたからなあ、ハハ」
「ハハって、その後誰も閉めなかったんですか!」
「さあ、マイキー閉めたでしょ」
「いや、僕は先に上に上がりましたよ」
「じゃ、会長が閉めたはず」
「いや、ミミさんあなたが最後でしたぞ」
「あらそうだったかしら?ま、過ぎたことは忘れましょ」
「忘れましょって、命ないですよ、ミンチョルさん!」
「大丈夫よ、ちゃんと自動で開くパラシュートつけてあるから、ね!会長!」
「ね!ミミさん!」
「ど、どの辺で落としたんですか!」
「さあ?」
「さあって…」
「飛び立ってすぐ詰めた、いや、入れて貨物室に持ってったでしょ、気がついたのはミンチョル君の家の近くだから…わからないの、ね!会長!」
「ね!ミミさん!」
「お前ら!!!」
「イ、イナさん、落ち着いて!」
「きゃああ…痛いわん、もうイナ君たら乱暴ねぇ」
「ミミさん大丈夫?イナ、暴力はやめたまえ」
「マイケル、俺が乱暴だと!お前らミンチョル落としたんだぞ、ジェットから!よく平気でいられるな!」
「だから早くお知らせしなくちゃ、と思って疲れてたのに急いでここに来たのよ、ね!会長!」
「ね!ミミさん!」
「じゃ、明日は朝から舞台稽古だからそろそろ失礼するわね」
「おお、わしとマイケルも早朝ゴルフじゃった」
「そうでした、会長、寝坊してはいけませんなハハ」
「こらあ!お前ら!」
「大丈夫よ、ヴィトンのトランクは丈夫だし、パラシュートついてるんだから。あんな大きなものが落ちてくれば誰かが気がつくわ、ね!会長!」
「ね!ミミさん!」
「じゃ、僕らはこれで」
「みなさんおやすみなさぁい!」
「…」
「ミンチョル君見つかったらよろしくね!あ、トランクはちゃんと返してね」
「…」
「イ、イナさん…どうしましょう…」
「…」『あいつら、許せねえ!』
「探しに行かなくちゃ…」
「…」『マイケルの野郎!トファンのクソ野郎!それにあのヘビ女!』
「でもどこを探せば…」
「…」『トファンの野郎、許すんじゃなかった、くそっ!』
「イナさん!」
「あ、ああ。そうだな、まず警察だ。でかいトランクが落ちてくりゃ、誰かが届けるだろ。ルートにある警察に片っ端から電話して聞くんだ」
「でも、もしパラシュートが開いてなかったら…」
「馬鹿野郎!変なこと考えるんじゃねぇ!」
「は、はい!」
「俺、どうしよう、もしかして俺のせいなの?これ?ねえ?」
「黙ってろ!」
「ううう…ふぁい、イナしゃん…」
「後は、そうだな、長距離トラックの運転手に連絡を取るにはどうしたらいいかな」
「ラジオですかね」
「ラジオか…」
「イナさん!店に、店に電話です!」
「何!早く出ろ…いや、俺が出る!」
「はい、BHC!はい、そうです。俺です。は?…あ…あの時の…はい…え?はい…はい…わかりました。#$%&ですね
はい、俺のは%&$#です。はい、すぐ出ます!」
「イナさん!誰から…」
「ミンチョルが見つかった。今から行ってくる」
「俺も行くっす。イナさん」
「いや、俺1人で行く」
「でも…」
「ウシク、ミンチョルの奥さんに電話して2・3日帰れないと言え」
「はあ…」
「奥さんは鈍感だから大丈夫だが、義弟がうるさい。適当に理由をつけてごまかせ」
「わかりました」
「ミンチョルさんはどこに?」
「詳しい事はわからない」
「イナさん1人で大丈夫ですか。僕ついて行きます」
「いや、いい。それよりテソン留守を頼む。ミンチョルの様子がはっきりしたら連絡する。わかったな。じゃ」
「はい…」
「イナさん、やっぱ俺一緒に…」
「テプン、やめとけ」
「だってテジン、心配じゃないか、また胸痛くなったらどうするんだよ」
「イナさんはひとりで行きたいんだ」
「何か俺のせいみたいで」
「お前のせいだろうが!」
「あ!ウシクやっぱそう思ってる?ほんとに?みんなも?」
「お前のせいだ!」(一同)
「ひぃぃぃぃん!俺食欲なくしたぁ!」(村八分状態)
「でもウシクさん今日のイナさん、カッコよかったです。なんかこう男!っていう感じで」
「そうだな、テス…久々のオールインばりばりって感じだったな」
<To Heavenのノリでぶっとばすイナ>
「ミンチョル…」
『BHCですか。そちらにキム・イナさんいらっしゃいますか
私ハン・テジュンと言います、覚えておいでですか、ホテルの支配人です
実はお連れ様のイ・ミンチョルさんをなんと言うか、拾ったというか、保護したというか、見つけました
場所は、ちょうど私どものホテルとBHCの中間くらいになります。至急こちらに来ていただけないでしょうか
念のため私の携帯番号を。%&$#です。イナさんの携帯は…#$%&ですね。よろしくお願いします。お待ちしています。どうかお気をつけて』
「チニさんの上司…ハン・テジュン…」
LBGH
引き続き車をぶっ飛ばすイナ、突然鳴る携帯…
「イナです」
「イナさん、テジュンです。あの後ミンチョルさんを病院に運びました」
「病院?怪我?」
「外傷はなかったのですが、意識がないので心配になりまして」
「意識が…」
「LBGHという病院です。18号線と7号線の交差点を右折して10キロほど走ってください
右手にあります。大きな病院なのですぐわかるでしょう」
「LBGH?」『LBHじゃないのか…』
「最近できた病院です。設備は最新でとても評判の良い病院です」
「わかりました、何かあったら叉連絡を」『ちっ、だいぶ行き過ぎた!ミンチョル!』
イナ急ハンドルでUターンして戻る。その際、後続の車とぶつかりそうになる。後続の車の運転手、泣く
「テジュンさん!」
「イナさん、早かったですね」
「すっ飛ばしました。でミンチョルは?」
「診察中です。ドクターからはまだ何も」
「そうですか」
「どうして空から降ってきたんでしょうか、あ、立ち入って申しわけありません
状況があまりに非日常的だったものですから」
「俺も驚きです。まさか落とされるとは…あいつら…」
「落とされた…のですか…犯罪に巻き込まれたとか?」
「巻き込まれたというか、やくざな人間と行動する羽目になってしまって」
「そうですか…」
「見つけた時はどんな状況でした?」
「私は車を運転していましたが、前方の空から白いヒラヒラするものが落ちてくるのが見えたので車を止めました
ヒラヒラはどんどん落ちてきて、道路脇の大きな木に引っかかりました。その時初めてそのヒラヒラするものに何かついていることに気づいたんです
近づいてみると、どうやらパラシュートのようで、ついていた物は大破していました。
さらに近づくと、何かき物体が、いやそれがミンチョルさんだったわけですが、大破した木片の真中で倒れていたのです」
「トランクが壊れた…へび女、何が丈夫だ!」
「トランクだったんですか、あれは。暗くてわかりませんでしたが、大きなみかん箱のような感じでとても華奢な作りでした」
「ヴィ何とかいうブランド品だそうで、絶対壊れないと落とした本人は言ってましたよ、はっ!」
「ルイ・ヴィトンですか?だとしたらあれは本物の偽物です。私は商売柄ヴィトンの物はよく扱いますが、全然違います」
「そんなことだろうと思ったぜ、ちっ!」
「であなたにお電話したわけなんですが、その後いくらお名前をお呼びしても気がつかれないので、ここまでお連れしたわけです」
「ほんとに何とお礼を言っていいか…」
「当然のことをしたまでです。でも運がよかった。もし木にかからなければ地面に直撃でしたから、大変なことになっていたでしょう」
「不幸中の幸いだ…」
「よく俺に連絡してくれました、家族ではなく」
「名刺交換していたのが役に立ちましたね」
「奴の奥さんは体が弱いのであいつがジェットから落とされて病院に入ったなんて聞いたら倒れちまう」
「そうだったんですか」
「でもどうしてこんな夜遅く?」
「実はふと思い立って休暇をとりました。少しあちこち放浪してみようと思いまして」
「そういえばチニさんも休暇で里帰りしたもんな」『え?何!』
「ちょうどお預かりしたぬいぐるみがクリーニング仕上がりまして、ついでにお届けしようかと思ってそちらに向かうところだったんです」
「ミンチョルのあの変なぬいぐるみですか?」
「そうです、ほら。休みの間にホストクラブに行って違う業界の研究もしてみたかったんです
接客という点では同じなので、なぜBHCがあんなに人気があるのか知りたい…」
「根っからの仕事人間だな。休みとってまで勉強ですか」『チニさんとは関係ない?』
「私の取り柄は仕事しかありませんから。ホストクラブのリサーチをしました
オール・イン、クラブポラリス、クラブシウォン、ブラザー・フッド・男組、ビバ!オールド・ボーイ、
新しいとこではどこかの御曹司が趣味で始めたStairway to Heavenなんていうのもありました」
「Stairway to Heaven?それは俺も知らないな」『やっぱ関係ない!この人仕事の虫だ、あーよかった!』
「でもやはりBHCがダントツです。どういう調べ方をしてもトップでした
ですからちょっと勉強させてもらいたくて…あ、いやそのコソコソ探ろうとかいう事ではなくてあくまで参考にしたくて」
「わかってますよ。でもウチがトップだなんて知らなかったな」
「なかなか立派です。赤字はないし、従業員が多いせいか集客率が高い。
その割には人件費がかかってない等、興味深いデータが出てるんです」
「へえ、あんたの調べ方はさすがにチョンウォンとは違うな。
うちはオーナーとミンチョルが仕切ってるけどノルマもないし、適当な店ですよ、実際は」
「ノルマもない?ますます興味が湧いてきました。あ、すみません、こんな時に仕事の話ばかりで」
「気が紛れていいです。それよりテジュンさん、もう行って下さい。後は俺が。ほんとに世話になりました。
ミンチョルが落ちたと聞いたときには正直最悪の事を考えました。でもあなたのような人に拾っ…捕獲さ…いえ見つけてもらえてほんとによかった。助かりました、ありがとう」
「いえ私は構いません。休暇といってもやっぱり仕事が頭から離れませんし、これも何かのご縁でしょう。
ご迷惑でなければもう少し。後でBHCに行ける口実ができたら私もうれしいです」
「そうですか、実を言うと俺も1人だとちょっと心細くて。じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」
『ウーン、いい人だ、こんな人が上司でよかったね、チニさん』
「まだですかね、運び込んで2時間ほどにもなります」
「ハー…ところでこの病院LBGHって?」
「ああ、それはLeg Bang General Hospitalの略です。」
「Leg Bang?変わった名前だな」」『何だ、Lee Byung Hunじゃないのか』
「確かに。何でも院長は女医さんで、究極の医療を目指して究極の病院を趣味で作ったという評判です」
「究極の病院?」
「設備・医師・看護体制どれをとっても最高水準だそうですよ」
「へええ…何だかすごそうな病院だなあ。そんな病院ならミンチョルも大丈夫だな、ですよね、テジュンさん…」
「大丈夫ですよ、イナさん、きっと!」
「あ、終わった…」