ある日のBHC(オリー支配人(新人大抜擢))
「オーナー、てえへんだ!」
「どうした!」
「店がメチャメチャです」
「なんだって?!」
「いやぁ、スヒョクの兄貴が、客が俺の38度線を越えたとか言い出してピストル抜いちまったんでさぁ」
「何?奴はまだそんなもん持ってやがったのか…」
「でもって、イナの兄貴がそれを回しゲリで落としたんですが、そんときはずみで、ちょいっとミンチョル兄貴の前髪に触っちまったんです。
いえ、顔にゃあ当たってないんすけどね」
「それで?」
「ミンチョルの兄貴、喉仏ブルブルさせて怒っちまって、いきなりテーブルひっくり返したんでさぁ」
「なにぃ!あいつまだ社長の息子の癖が…」
「悪い事にそこへ、テプンの兄貴が出てきたんでさぁ」
「あいつまた遅刻か!」
「で何を勘違いしたか、客の連れに喰ってかかっちまったんです」
「ちぃ!」
「そしたら、今まで後ろで見ていたテソンの兄貴がいきなりテプンの兄貴を持ち上げて投げちまったんです」
「うう、また発作か…」
「でもってそのテソンの兄貴を、今度はジュンホの兄貴がパンチでKOしちまいまして」
「ググ、まだボクシングやめてねぇのか。まったくどいつもこいつも!スヒョンは何してたんだ、いねえのか!」
「スヒョンの兄貴は隅っこの方で3人の客をよろしく接待してて」
「ちっ、いくら根っからのホストだって、一番の古株だろうが。で、今はどうなってんだ?」
「へぇ、ウシクの旦那が片付けてます。あと、テジンの兄貴が壊れたテーブル直してます」
「そうか、そりゃごくろうなこった。で、テス、おめぇ、うちのクラブで何してたんだ?」
「あ、そのですね、今夜はイナの兄貴にヘルプ頼まれて出張っす」
「…おめえもとんでもねぇところに出くわしちまったな」
「…へぇ」
開店前
「おはようございます、ミンチョルさん」
「お、ウシクおはよう。何だ、また掃除か」
「ええ、まあ」
「お前ホストなんだから掃除はやめろ。掃除はおばさんにまかせておけ」
「そうなんすけど、今度の掃除のおばちゃん、今ひとつっすよ。ありゃ手抜き主婦の仕事です」
「そうか、オーナーに報告しておこう」
「この部屋も、もう一回掃いたほうがいいっすね」
「おはようございます!」
「おっ、テスおはよう。またヘルプかい」
「ええ、まあ」
「何ニヤニヤしてるんだ」
「ウシクさんに挨拶してもらえて嬉しいです…」
「はあ?」
「テス最近ヘルプ多いな。この間はチョングが来たし」
「ミンチョルさん、実はイナさんこんところ体調悪くて。で、俺にヘルプつかせて代わりに飲めって…」
「こらぁ、テス!よけいな口きくな」
「イ、イナさん!す、すみません」
「イナ、例の胸がキュウンってあれか」
「胸じゃねえ、肺だよ」
「イナさん肺がどうかしたんですか」
「ウシクは知らなかったな。イナはアメリカ時代にまじで撃たれてな。肺に穴あいてるんだ」
「イナさんも留学したんですか!」
「バカやろう!俺はチンピラだ。腐っても留学なんかするかよ」
「そうだよ、イナは密航だ」
「ゲ!そ、そ、それって…」
「おいミンチョルもウシクも黙ってろよ、大した事ねえんだから」
「ああ。それにお前あれで入院したって、彼女に手を握ってもらえばすぐ治るんだろう?」
「ミ、ミンチョルな、な、何でそんなこと…」
「…見たんだドラマ、BSで」
「ちっ!人のドラマ勝手に見るな」
「お話し中すみません、ミンチョルさん、ちょっとだしの味見してくれませんか」
「ひい!テソンさん、今日お休みじゃないんですか!」
「なんだテス、僕はここの従業員だぞ」
「いえ、そ、その、イナさんがテソンさん今日は出ないって」
「テス、そりゃあ店には出ないってことさ。
ほら、この間のスヒョクピストル引き抜き事件のせいでよ、コックがびびって辞めちまってな、代わりにテソンが厨房やってるのさ」
「テソンの料理はうまいからなぁ」
「テ、テプンさん!いつからいるんですか!」
「テソンのだしに引きずられてご出勤よ。今日も遅刻しなかったでしょ、チーフ」
「プロとして当然だ。自慢するような事じゃない」
「ちぇっ、ミンチョルチーフは今日も厳しいねぇ」
「皆さんおはようございます、チーフおはようございます」
「テジンおはよう。お前か、店でゴソゴソしてたのは」
「3番テーブルがガタガタするんで、直してたんです」
「そんなの10円玉でも下に突っ込めばいいじゃねぇか、わざわざヤスリなんかかけなくてもよ」
「テプンさん、どうして知ってるんです?兄さんとあの人しか知らないはずなのに!」
「ゲゲ!く、苦しい、首しめるな。俺はよお、お前のゲホ、映画見たんだよ、ゲ、ゲホ」
「人の映画勝手に見ないでください!」
「ところで、スヒョクさんとジュンホさんは休みですか、ミンチョルさん」
「ああ、スヒョクはあれ以来、38度線の夢にうなされてカウンセリングに通ってる。ジュンホも脳波に乱れが出たとかで医者通いなんだ」
「相変わらずあぶないノリっすね、この店」
「なぁに、おまえんのとこにはかなわねぇよ、テス。うちにはドジョウはいねえからな、カカッ」
「テプンさん!…僕ドジョウだめなのに…グスン」
「テス、冗談だよ、冗談。泣くなよ」
「テソンさん、テプンさんまた投げちゃってください!」
「僕は今ハルクじゃなく料理人なんだ。テジンと違って自分の意志で調節できない。ミンチョルさん、だしの加減は…」
「ああ、すまない。味は完璧だ。ただ、」
「ただ?」
「オーナーが食材に金をかけ過ぎると…」
「僕は料理に合う食材を使ってるんです。妥協はできません」
「妥協じゃなくて計算だ。フルーツ盛り合わせにメロン一個は多い。わかるだろ?」
「…わかりました。メロン半分にします」
「ありがとう、四分の一にしてくれ」
「テソンの料理はほんと!うまいっす。客も喜んでますよ」
「テプン、客の分まで食べてるって噂があるが、まさか…」
「いやだなぁチーフ、だれがそんなデマ流してるんですか」
「イナさんまで…誤解っすよ、ほら俺の客、気前いいから…ね!」
「そういえば、テソン、彼女に体にいいとかいって梅のお茶作ってやってたろう。あれ俺にもくれねぇか。体に良さそうだ」
「イ、イナさん…梅のお茶だって…ピクピク…ちょっと…息苦しい…」
「ほら、弁当作ってやった彼女だよ、いつも鼻クンクンやってる」
「う、う、梅のお茶…頭が痛い…」
「ミンチョルさん、ちょちょっと…」
「何?」
「あ、あれ…」
「イ、イナ!何でお前が知ってるんだあ!!…だけど梅は俺の飲み物だ、あいつには緑茶だ、バコーン!」
「うお!」
「もしかして!」
「どこから見てたイナぁぁ!」
「うわ!もしかしなくてもスイッチオンっすよ!」
「テソン落ち着け、俺はあんまりヒマだったから、ついお前のDVD見ちまって…それだけだ!」
「というと、僕のも見たんですか、イナさん」
「いや、まだだウシク。お前のは今度の連休に見ようかと」
「何をごちゃごちゃと!うるさいぞ、裏切り者!投げてやる!」
「ヒィ!」
「よせ、テソン!イナは体調がイマイチなんだ、手を出すな!」
「どけー!!」
「誤解だって、話せばわかる。テソン落ち着け!」
「イナ、どいてろ!」
「邪魔するとチーフだって許さないぞ…ブルンブルン!」
「テジン!テプン!足を押さえろ!あ、こら、テス待て!」
「ウシク!モップ持って後ろから回れ!」
「人のスペシャルドラマボックスを勝手に見るなぁぁ!」
「しょうがねぇだろ、アマ○ンのお勧めリストに入ってたんだから」
「いいから下がれ、イナ!テス、戻ってこい、おやつあるぞ!」
「どうしてジュンホ休んでるだょォ!」
「バ、バカ!テプン足を離すなぁ」
「イナぁぁ」
「くそっ!前髪にさわったな!」
「モップで俺の顔拭くな!ウシク!」
「テジン!かなづちはしまっておけ、やばいぞ!」
「ウシク振り落とされるなよぉ」
「テス、泣くな!」
ドッシン…バッタン…ムギュー…バッコン…ベリベリ…ドッカン…ブルルン…ガッポン…スーハー…
「あのー…ちょっと失礼します…BHCの控え室はここですか…」
(全員で)「ゼェゼェ…はい??」
訪問
「あのー…ちょっと失礼します…BHCの控え室はここですか…」
「チ、チーフ、誰か来てますよ!」
「わ、わかってる、ウシクちょっと出てくれ」
「はい」(キビキビ)
「おい、イナ無事か」
「なんとかな。ああ、呼吸困難になりそうだ、スーハー」
「また妙な格好で倒れるなよ」
「うるせえ!アイタタ」
「テソンはどうだ、気がついたか」
「ま、まだ失神してます。グスグス」
「テス、もういいから泣くな。大丈夫だ」
「はい…」
「おい、テプン、テスにおやつあげてくれ」
「へーい」
「取るなよ」
「テジン、テソンを起こして仕込みやらせてくれ。さあ!みんな開店準備だ!」
(一同)「はい!」
「ミンチョルさん、ちょっと」
「誰だった、ウシク」
「それが…オールインの御曹司が来てます」
「チョンウォンが?」
「はい。チーフに会いたいそうです」
「ウシク、前髪どうなってる?」
「ちょっと乱れてますが、それなりにワイルドでOKっす」
「よし!」
「お待たせしました。チーフのミンチョルです」(キビキビ)
「初めまして、オールインのチョンウォンです。何かお取り込み中でしたか?」
「いやいやいや、開店前の準備運動ですよ。ハハハハ!」
「?」
「ちょっとここではなんですから、あちらへどうぞ」
<部屋を移動>
「かけて、そこ」
「失礼します」
「改めて、イ・ミンチョルです、よろしく。以前ドファン会長にはご挨拶に伺ったことがありますが、あなたとは初めてですね」
「オールインのチョンウォンです。今日はお願いがあってまいりました」
「ほお。オールインのNo,
1ホストのチョンウォンさんが僕にお願い?」
「はい。実は…」
「ミンチョルさん、ちょっといいっすか」
「テプンどうした。来客中だぞ」
「すんませーん。いやいや、テソンのこの肉まん最高っす」
「肉まん?」
「ええ、さっきのお詫びだって、みんなにくれたんすよ、いやあ、うめぇ」
「僕の分は?」
「さぁ…」
「お前が食べてるそれ、僕の分じゃないだろうね」
「ググッ!」
「きき、君は…」
「は?」
「どど、どうして食べながらそんなに明瞭に発音できるんですか!」
「誰、あんた」
「テプン、こちらはオールインのチョンウォンさんだ、失礼だぞ」
「ああ、テスんとこの。ちわーっす」
「チョチョ、チョンウォンです。いや、実際に見ると圧巻だ…その君の口の中はどうなっているのですか?」
「え?俺の口?あーん」
「ギャー!」
「チョンウォンさん、大丈夫ですか。無作法なやつで申しわけない。テプン用は何だ」
「そうそう、チーフ衣裳貸してくださいよ。さっきの騒ぎでTシャツ破けちゃって、ホラ!」
「だったらテソンに借りたらいいだろ」
「それがテソンもさっき汚しちまって予備がないっていうんす」
「きき、君は…君は店にその、その格好で出ているの?」
「そうすよ、何か?」
「…これは情報にはなかった…芸をする時だけかと思っていたが…」
「チョンウォンさん、うちは服装は自由なんですよ。オーナーもうるさい人ではないし、僕もそれでいいと思っている」
「おれの格好、変すか?」
「あ、いやいや。そういう訳では…」
「あんた、ちょっと顔色悪いょ、どっか悪いの?」
「ベ、別に」
「テプン、わかったからもう行け。僕のロッカーの一番左端のスーツ、それを着てくれ。左だぞ
食べる時は脱げ、今日は汁物はだめだ。
ワイシャツにシミつけるな、ネクタイは頭にまくな」
「わあ、助かります。さんきゅうっす」
「あと無駄なのはわかってるんだが一応言わせてくれ、僕のスーツはみんなアルマーニだ」
「へいへーい!アルちゃんね」
「アルマーニ!」
「ミンチョルさん、よ、よくあの人にアルマーニ貸せますね」
「なに、大したことじゃ。彼は稼いでくれるし、それに固定客も多い」
「ああ、ナンバーワンでしたね、彼」
「ほお、なぜご存知?」
「いや。ちょっと噂で…」
「なるほど。あなたウチの店のことに案外詳しい。というよりかなりお調べになった」
「え?」
「テプンがナンバーワンだということは極秘でね、それをあなたが知っているということは、調べたとしか…どうです?」
「そ、それは、僕も一応経営者ですので、多少の情報は…」
「ハハ、正直な人だ。あなたの興味はこの店?それともテプン?」
「そ、それは…」
「ひとつ、いいことをお教えしましょう。テプンは毎晩ドンペリ2本分、食べます」
「ド、ドンペリ、2本分!」
「しかもロゼ」
「ううー!」
「驚きでしょう?毎晩ドンペリのロゼを2本抜けるホストはそうはいない」
「た、たしかに凄い」
「そこがミソです」
「え?」
「で、店で一番利益の出るのは?」
「そ、それは・酒?」
「そのとおり。彼はドンペリを開けているわけじゃない、その金額分食べてるんです」
「は、はあ」
「つまり、売上は多いが利益は少ない。ナンバーワンではあるが、実際にはそうとも言えない」
「なるほど…」
「チョンウォンさん、数字は大事ですが、数字の裏を読むことはもっと重要です」
「は、はい。おっしゃることはわかります。でも、混乱してしまって。ドンペリのロゼ2本分食べるって…ああ!」
「で、お願いというのは?」
「いえ、もうというか、ま、また出直してきます。大変失礼しました」(ヨロヨロ)
「よろしかったら、うちのテソンの料理味見していきませんか。ドンペリ2本分とはいきませんが」
「いえ、結構です!!お邪魔しました」(ヨロヨロ)
ある日のBHC 開店前のイナとミンチョル
「よう、ミンチョル。この間、チョンウォンが来たんだってな」
「ああ」
「何しに来たんだ?」
「それが意味不明」
「何だ、それ」
「イナまさかとは思うが、お前ウチの情報あっちに流してないだろうな」
「おいおい、何言ってんだょ」
「いや、いいんだ。ただあの御曹司、ウチのこと調べてるんだ」
「何でだ?また買収でも考えてるのか」
「さあ、それにしては甘チャンだった」
「そうか、あいつは育ちがいいからな」
「育ちは…僕もいい、不遇だが」
「そうだった、お前も御曹司だったな」
「ふっ、元御曹司さ。もう会社はない」
「知ってるょ、崩壊だもんな」
「イナ!」
「あ、いやいや、おれもちょっとお前のドラマ見ててよ。なかなかだ」
「それはどうも」
「チョンウォンは苦労を知らない分、がむしゃらだからなぁ。一番が大好きだし」
「それで、ナンバーワンホストにこだわってたのか…まっいいか
いずれにせよ、ウチとあそこでは同じホストクラブでもカラーが違う。そのくらいわかりそうなものなのに
あれが跡取じゃちょっと大変だな、トファン会長も」
「関係ねえよ、あっちは表向きは大企業だ。ほっとけ、ほっとけ」
「ああ、そうだな。ところでイナ…」
「ん?」
「お前まだあの海の近くの家から通ってるのか」
「…え?」
「ほら、お前辺鄙で風がビュービュー吹いてるとこにメルヘンチックな家建ててたじゃないか」
「うう、実はあの家は…もうない」
「ない?ないってどういうことだ?」
「嵐で壊れた…」
「おお!そうか、それは大変だったな。ま、立地条件が悪すぎたよ、あそこは
彼女と相談して、今度はもっと住みやすいとこに建てろよ。便利な所じゃないと女性は嫌がるから」
「うう、お前って涼しい顔してどうしてそういうこと言えるんだ?」
「え?何が?」
「あいつとは…別れた…」
「それは…知らなかった…すまない。放送されてないから」
「いや、いいんだ。…俺も、もう忘れる」
「そうだな、女はいくらでもいるがむずかしい。元気出せ」
「お前はいいよな、ハッピーエンドで」
「うーん、実は僕も…」
「え?お前も別れたのか?」
「いや、僕は弟の手前、簡単に別れられない…それがつらい。ま、とにかく色々と大変だ…」
「そうだなぁ…」
<バッタン!とドアが開く>
「ミンチョルさん!大変です…」
「ウシク、今日はなんだ?またテソンか?」
「いえ、そ、それが、大変です!」
「だから何だっていうんだ、はっきりしろ!」
「ああ、イナさんここにいたんですか。助けてくださいよ」
「だから何?」(イナとミンチョル)
「客です!す、す、すごい客がきちゃったんです」
「店には客が来るモンだろう」
「そうだ、そうだ」
「ふたりとも見てないからそんなこと言って…とにかく派手で、怖くて、強気な客なんです
化粧が濃くて服はピカピカ、でクビにしわがあって…とにかく凄い客なんです。とても一般人の僕の手には負えません…」
「ひとりか?」
「はい。でもすげぇ態度でかくて、もう店満員っていう感じ」
「???」(イナとミンチョル)
客
<扉の影から>
「あれです、ミンチョルさん。すげえでしょ」
「あれは…今、誰がついてる?」
「たぶんテジンとイヌだと。テプンはどうしたか…」
「今日は予約入ってる?」
「いえ」
「よし、貸切の札ぶらさげてこい。業者に連絡とってドンペリありったけ持ってこさせろ」
「はっ?いいんですか」
「今日はあの客一本でいく」
「はい!」
「テソン、今日はじゃんじゃん高いもの作ってくれ。メロンも一個いっちゃっていいぞ」
「いいんですか。腕が鳴るなあ」
「イナおまえは少し待機しててくれ。様子をみる」
「わかった。トランプ占いでもしてようかなっと」
<テーブルにて>
「ねぇねぇ。それでどうやってお兄さんになったの?」
「僕はどうしてもなりたかった…ただそれだけです」
「ああ!こんな愛の形があったなんて…信じられない!…私もそんなに愛されてみたいわ!」
「相手がミヨンさんでしたから…」
『どうしてあたしにはそういう役がこないのかしら、不思議だわ』
「もうレースには出ないの?」
「車はやめました」
「普段に乗ってもいいでしょ、あたし好きな車プレゼントしてもいいわよ。
何がいい?ジャグア?ベンツのSLK今度新しくなるらしいわよ、どう?」
「いや、いいです。ほんとに…」
「遠慮しちゃって、可愛いわあ。で、そっちのあなたは、その後どうしたの?教え子が彼女だったの?」
「ええ、彼が彼女で、僕は彼女を感じたんです」
「愛する魂は不滅なのね!なんて素敵!ゾクゾクしちゃうわ…」『こんなにエキサイトしたのは久しぶりだわ。ウヒウヒ』
「失礼します。お邪魔してもかまいません?」
「あなた!ビクトリーの息子じゃない」
「ビクトリーなんて懐かしいな。そんな時もありましたが、今はBHCのチーフ、ミンチョルです。よろしく」
「ちぃ!騙されないわよ。今にぶっ潰してやる!」
「とっくに会社はありませんよ」
「え?あたしまだ潰してないわよ!1回しか出てないもの」
「あなたは地上波の方でしょう。僕はBSですから、とっくに終わってますよ」
「そうなの?よくわからないけど、そう言われれば、時々あなたのお家でヨンジュンさんと暮らしてるわ
まっいいわ。とにかくここのチーフなのね」
「あなたをお迎えできたので、勝手ですが今日は貸切にさせていただきました。いいでしょ?」
「ホホ!しぼり取ろうって魂胆ね。いいわよ。他の客がいると目障りですものね。さすがミンチョル君、どこに行ってもやり手ね」
「おほめに預かり光栄です。僕も何か頂いてもいいですか」
「ああら、ごめんなさい。ねぇ、ドンペリ2・3本持ってきて!」
「ウシク、ロゼの方を頼むよ」
「はあい」
「テジン君とイヌ君のお話聞いて感動してたのよ。涙がホラ!最近ストレスの多い仕事ばっかりでイライラしてたのよ
こう乾いた砂漠に雨が降り注ぐって感じかしら。癒されるたわぁ。あら、そこの君、もう食べ物なくなっちゃったの?」
「うまかったす。おかわりは?」
「いいわよ、さっ、これも食べて。何が好きなの?」
「テプンはグルメで、ふぐの薄造りが大好物です。ロゼの一気飲みもできます」
「おっす!俺は嫌いなものはありません」
「あなたは野球選手だったんですって」
「ええ、クビになっちまったけど、トレーニングはやってますよ」
「ちょちょっとあなた、どうして食べながらそんなに上手にお話できるの?」
「俺はいつもこうっすけど」
「キャハハハ!もう最高!ここって面白いわ。ホストはこれで全部なの?」
「いえ、病欠が2人、映画のキャンペーンで留守にしてるのが1人います」
「俳優さん?」
「俳優というかホストというか…でもスヒョンがお似合いかもしれません。女性の心を掴む天才ですから」
「ぜひお会いしたいわ」『ズルズル、いけない涎がたれたわ』
「12月には戻ってくると思います。そうだ、イナは来てる?」
「ああ、イナさんいますよ」
「ご挨拶にくるように言ってくれ」
「誰?まだホストいたの?」
「イナはギャンブラーでテコンドーの名人です。アメリカにいた事もあるんですよ」
「あたしも昔いたのよ、アメリカ。ダーリンがアメリカ人だったのホホホ」
「キム・イナです。どうも」
「きりっとしまったいい男じゃない。ささ、ここに!ギャンブラーさん」
「イナの人生は波乱万丈でアメリカ時代に撃たれた事もあるんですよ」
「まっ!撃たれたなんて、どうして?」
「ええ、ちょっとマフィアのボスを助けて…いいじゃないですか。そんな話は」
「昔ダーリンが韓国の人に助けられたって。もしかしてあなたかしら?」
『ゲッ!この女!ファルコ−ネが金づる?まさかな、オールインと美日々がつながっちまう』
「それは人違いでしょう」
「そうよね、アメリカって広いものね。ホホホ。イナ君テコンドーの達人ですって」
「それほどでも」
「回しゲリなんかやっちゃうわけ?」
「はあ」
「見たい、見たい、見たいわ!ちょっとやってみせてよ」
「じゃあ、ウシク、そこのリンゴ頭にのっけて立ってくれ」
「イナ、リンゴじゃ小さくて迫力がない。メロンにしよう」
「あいよ」
くるりん、ひゅん!ばっちん、べっちょん
「素敵!かっこいい!」『次から次へとゾクゾクしちゃうわ、アヘアヘアヘ』
「大丈夫ですか?白目むいちゃって」
「あ、ちょっと妄想はいっちゃって。ミンチョル君あたしったら、ここ買っちゃおうかしら!」
「ハハ、さすがミミさん。スケールが大きい」『この女!』
「あたしが買ったらミンチョル君お給料上がるわよ」
「なるほど、いいお話だ」
「でしょ!毎晩貸切よ、ホホホ」『そうよ、全部買っちまった方が早いわ』
「でもそうなったら、あなたはすぐ僕たちに飽きちゃうんじゃないかなあ」『欲ばりな女だ』
「そんなことないわ。こんなにユニークで楽しいホストばっかりですもの」『こいつ!金が欲しくないのか!』
「で欲しいものを手に入れてしまったら、また別の物が欲しくなって
僕たちのこと捨てたりしません?僕はそれが心配だなあ」『この手の女は苦手だ』
「ミンチョル君たら、案外可愛い事言うのね。仕事人間かと思ってたのに」『なるほど、結構鋭いわね』
「僕はとっても仕事に忠実ですよ。だからあなたとは長くお付き合いしたい、ミミさん」
『女の腕を掴むのは得意だけど、掴まれるのは嫌いだ』
「ミンチョル君たら…ウヒヒじゃなくてオホホ」『ソンジェ君しか見てなかったから気づかなかったけど
この子ったらとってもキュート。もしかしたら買いかも…』
「だから買われるより、週に一度、いやそれが無理ならせめて月に一度でいいから、ここへ遊びにきてもらえる方が
そうしたら、ずうっと長く深くおつきあいできる。そう思いません?」『ほんとに来たらどうする?』
「そうねえ、深〜いおつきあいね。あたしの独占欲、じゃなくて、希望を叶えてくれるならいいわよ」
『そうだ!ソンジェ君と一緒にミューズやらせようかしら』
「じゃ僕たちの長い付き合いに乾杯!」『ソンジェの奴、よくこの女と組めたな』
「そうね、そうね」『来てよかったわ、ウヒヒ』
一同「カンパーイ!」
ここでオーナーへの報告が…
『妄想省家政婦mayoです
只今BHCの厨房洗い場ヘルプに入ってます…
テプンがめいっぱい食べるんで、洗うのが大変。テソンの調理の気合いも怖いくらいなの…
洗い場もこれから戦場だわ。気合い入れねば
オリーさん〜ヤン・ミミはちゃんとお会計してくれますかね…
シンパイです(^_^;)』
<閉店後>
「ふう、今日は客1人の割に疲れたなあ」
「イナさん大丈夫ですか。結構回しゲリやらされてましたよね」
「もう股切れそう!なんちゃって」
「テジン、椅子作る約束なんかしていいのか?」
「あ、ああ…怖くて断われなかった…」
「イヌも一緒にバンジージャンプするなんて言ってたし」
「あ、僕もつい…」
「本気にしたらどうすんだよな、ウシク」
「あ、あの、僕も今度、健康診断付き添うって」
「!!!!」
「あの人、店を買うとか言ってたけど、いいんすか?」
「テプンそれは心配ない。うちのオーナーはカンと妄想で生きてる人だ。金にはころばない」
「あー良かった。毎日あれじゃあ、いくら俺でも腹こわしちまう」
「僕はもう上がるから、ウシクあと頼んだぞ」
「ミンチョルさん、もう帰るんですか」
「ああ、すまない。じゃあ」
「何か怒ってるんですかね、ミンチョルさん」
「さあ、心にもないこと言っちゃったから疲れたのかもなぁ…」
帰り道のミンチョル:
「クソッ。ホストを本気でやると疲れる。月一でもきつい、あの女
今度来たらスヒョンに何とかしてもらおう…そうだ、スヒョクにわざと鉄砲抜かせて…
いやジュンホに殴ってもらった方が手っ取り早いか…ブツブツ」
ヘルプ
「おはよう」
「ミンチョルさん、おはようございます
「おっ、ミンチョル、ちょっと」
「なんだょ、イナ」
「話があるんだ。ちょっとまずいことに」
「何かトラブルか?」(ミンチョルうんざりの図)
「ヘルプの件なんだけど、テスが最近調子悪いじゃねえか」
「ああ、どこか旅行に行ったとか、聞いたが転地療養か?」
「いや、それほどじゃないと思うんだが。で、実は…」
「ミンチョルさん、大変です!」
「ウシク、どうした?」
「いやいや、おはよう。ミンチョル君はおるかね」
「トファン会長!それに、後ろの方は…」(ミンチョル絶句の図)
「マイケルだ、よろしく、ミンチョル君」
「イナ、話ってこのこれか…」
「そういうこと。すまん!」(2人、目で話す)
「いやいや、イナ君が困っているというので、今日から私とマイケルがヘルプにお邪魔することになったよ、ミンチョル君」
「会長!そこまでして頂かなくとも…」
「こちらで息子もたびたび世話になっているそうじゃないか」
「とんでもない、チョンウォンさんは時々いらっしゃいますが、僕らは特に何もしていません(キッパリ)」
「そう言えばアンパン持ってきてくれたりして、いい奴だよな」
「アンパン?」
「テプン、黙ってろ!何でもないんです。こいつが大食いなもんで差し入れを頂きまして…」
「ミンチョルさんももらったよな」
「黙ってろ!いや、なかなか見所のあるご子息ですね。先が楽しみですね」
「ウォホホホ、いやそうかね。私も早くあいつに譲って引退したいんだが、まだまだ半人前でねぇ」
「おっしゃるとおり!じゃなくて、そんなことはないでしょう。研究熱心だし、とても物分りもよさそうにお見受けしましたが」
「ウォホホホ、そうかね。ひとつミンチョル君、色々教えてやってくれたまえ」
「僕に教える事があれば、ですが。ハハ」
「とにかく、今日はわしらはヘルプだから気遣いは無用だ」
「それはやはりご辞退申し上げます。会長をヘルプに使ったりしたら、僕がオーナーに叱られますので」
「いやいや、心配には及ばん。オーナーは好きにしてくれ、とおっしゃってたぞ」
「そうですか…でもマイケルさんまで」『ちっ!イベントで頭がいっぱいか…』
「僕はぜひこの店を見たくてね、ハハハ。だから会長同様気にしないでくれ」
「でもマイケルさん、その衣裳は?」
「イナが地味にしろっていうので、少し押さえてきたんだ。どうかね?やっぱり地味か?」
「とんでもありません。ウチには緑のシャツに赤のネクタイ巻ける奴はひとりもいません、十分です」
「目が痛くなりそうだ」「ミンチョルすまない…」(2人目で話す)
「ハハ、ではそういうことで先に店に出て始めてるか、マイケル」
「そうですね。おい君飲み物持ってきてくれ」
「ミンチョルさん、いいんですか」(ウシクおどおどの図)
「おふたりにシャンパンお出ししろ」『やけくそだ、もう!』
「ミンチョル、すまな…」
「イナ何もいうな。とにかく今日をやり過ごすんだ。いいな!」
「おっす!」(一同)
「イナ、最近何か変じゃないか?」
「何かって?」
「こう、何か目に見えない力でひき回されている、というか…」
「そういえば、変なことが続いてるな。チョンウォンはウロウロするし、テスはどこかへ行っちまう…」
「派手な女は出てくるわ、オーナーはイベント企画で妄想一直線だし・今日は今日でこの始末だ…」
「誰か僕らを落としいれようとしているのか…」
「ミンチョルそれは考えすぎだろう」
「そうか…それにしても」
「ミンチョルさん、大変です!」
「ウシク、いいかげんに…うわっ!」
「ミンチョル君、お・は・よ・う!」
「ミミさん!」
贈り物
「どうしたの?そんなに驚いちゃって」
「驚きますよ、ナイス・サプライズだけど」『くそっ!口が勝手に動く』
「お上手ね!」
「こんなに早く来てくれるなんて思わなかった」『さあ、どうする!ミンチョル』
「がっかりさせて悪いけど、今日はちょっと寄っただけなの」
「えっ、そ、それはうれしぃ…がっかり…」『だめだ、落ち着け!』
「実はみんなにプレゼントを持ってきたの」
「プレゼント?」『不吉だ』
「そう!一昨日ロンドンまで買い物に行ってきたのよ」
「ロンドン?!」
「そう日帰りでね」
「さすがだ、スケールが違うな」『金の使い方を知らない女!』
「え?ロンドンって、どこ?」
「テプンさん、知らないんですか…」
「ウシク、電車でどのくらい?」
「飛行機ですよ、ヨーロッパだから」
「飛行機!まじ?」
「テプン君、相変わらず楽しいわ、ホホ」
「テプン、あんぱんがこぼれたぞ。それにしても強行スケジュールだ」『テプンの天真爛漫さがまぶしい!』
「そうよ、ヒースローからダウンタウンまでタクシー飛ばして、買い物終わったらまたヒースローまで直行よ
疲れたわ」『つい思いついて行っちゃったけど、まじ疲れたわ、首のしわが深くなったみたい…』
「ミミさんならパリの方が似合うのに」『僕は自分の口が信じられない!』
「あたしパリは嫌いなの。何だか肌に合わなくて」『シャネルの店員と大喧嘩してから出入り禁止になったのよ、フン!』
「なるほど」『確かにパリでも浮く化粧だ』
「それより、ほら!ミンチョル君にはこれ。どう?」
「うわっ!ピンクのタートル!」
「絶対似合うわよ、これ」
「これっどこで…」
「あたし男の人にバーバリーあげるのが好きなの」『パリに出入り禁止なんだからロンドン行くしかないじゃない、あとはイタリアか?』
「それはいい趣味だ、でもバーバリーでこんな微妙なのあるんですか?」『絶対ない!』
「ないっていうから、探させたのよ。たぶんイエーガーあたりから持ってきたんじゃない?」『実はどこのでもいいのよ、クク』
「ゲッ!よくバーバリーの店員いうこと聞きましたね…」『絶対関わりたくない!』
「ちゃんとお金はバーバリーに払ったわよ」『もう来るなとか言われたような気がするけど、気のせいよね…』
「僕タートルは似合わないらしいんですよ。オーナーが首回りはすっきりしろって」
「平気よ。タートルの部分がクシュクシュってなってるでしょ。バッチリよ!」
「何だか申しわけないな…」『そうだ!クラブポラリスのミニョン君にあげよう!』
「みんなにもあるのよ。テプン君にはバーバリーのよだれかけ、特注よ。脅かしてじゃなくて、お願いして作らせたの
防水だし食べこぼし防止の袋もついてるの」『早くこれかけて食べるとこ見たいわ、ヒヒ』
「こりゃどうも。でも俺これかけて喰うんすか・チーフ」
「バーバリーチェックのよだれかけ…テプン似合うぞ」『テプンは案外似合う!』
「ちゃんとスペアも買ってきたわよお。イナ君のテコンドー道着もおそろいよ」
「げほっ!!俺の?」『すごくいやな予感』
「ほら見て!お金持の格闘家らしくていいでしょ」
「ほんとだ、チェック柄の道着だ。ちょっとゴワゴワしてるな」『このバカ女!』
「そりゃそうよ。トレンチコートこわして作ったんだもの」『2着もこわしたんだから!』
「ほお!」『コートそのまま買ってこいよ!』
「イナ、イベントの時に着たらどうだ」「やめてくれ!」(2人、目で話す)
「ウシク君にはバーバリのマフラー。今度の健康診断にはそれつけて付き添ってね!」
「わ、わかりました」
「それから、バーバリーを追い出された、じゃなくて別の店に移って、そう、ダンヒルに行ったの
テジン君には道具箱、テソン君には魔法瓶、イヌ君にはライターよ、タバコくらい吸えなきゃだめよ」
「チーフ、ダンヒルに魔法瓶があるとは知りませんでした」
「深く考えるなテソク、きっと特注とかいうヤツだ」
「そうですね…梅のお茶を入れよう」
「好きに使いたまえ。さあ、みんな、ミミさんにお礼を」
「ありがとうございます!」(一同)
「よかったわ、みんな気に入ってくれて」『ソンジェ君にミューズあげたこと考えればタダ同然よ
あら、地上波だからまだあげてない…』
「ミミさん、本当にありがとう。今度はお店の方に」『もう少しだ!』
「じゃあ、今度ゆっくり来るわね。ってあら、お店もうやってるの?誰かいるじゃない?」
「ああ、あれはちょっと…」『まずい!』
「ミンチョル君、また新しいホスト入ったの?」
「いやあ、ただのヘルプです」『とってもまずい!』
「ヘルプにしてはまぶしいわよ、あの光り方…」
「何でもありません!!!」『神様!』
遭遇
「ちょっとあたし、見てくるわ」
「ミミさん待って。まだ開店前です!」
「あら怖い顔、ミンチョル君ハンサムが台無しよ」
「う…」『キツネ顔になってしまった』
<ミミひらーりと店内へ、ミンチョル後を追いかける>
「ああら、今晩は!」
「おお、やっと来たか。さっ、こっちへ。まあ一杯やりなさい」
「あら、よろしいの。じゃお言葉に甘えて」
「すみません会長、ここは銀座のクラブではありません」
「おお、ミンチョル君そうじゃった、今日はわしが酒をつぐんじゃったなワハハ」
「お2人ともヘルプでしたの。とっても貫禄のあるヘルプさんね、うふうふ」
「こちらはオールインのトファン会長で、同じくナンバーワンホストのマイケルさんです」
「ナンバーワンじゃないよ、それはチョンウォン君だよ。ねぇ、会長」
「あいつはまだまだ。一番が好きだからそうしてやってるがね」
「息子さんもホストでらっしゃるの?」
「半人前で修行中だが。ところでこちらの美女はどなたかな、ミンチョル君」
「ヤン・ミミさんです。うちを贔屓にしてもらって…」
「よろしくぅ!ミミです。会長ってオールインの経営者でいらっしゃるのお?」
「何と言うかあれは趣味でね。他にもいくつか会社を持っておるがワハハ」
「あら素敵!」『ケケ、こりゃいいわ』
「ミミさん、今日はお忙しいって…」
「あら!そうだった。ちょっと失礼」
(携帯を取り出す)
「もしもし、ソンジェ君あたしよ。今日そっちに行けないの、お兄さんに引き止められて
明日にでもお土産届けるから、いいわね。じゃ!」
「ソンジェと約束ですか…」『誰が引き止めた!』
「そおよ、ソンジェ君のお土産何だと思う?」
「バーバリのキーボード」『あるわけないだろっ!』
「凄いわ、ミンチョル君どうしてわかるの?」『この子やっぱり頭いいのかしら』
「当たりましたか」『あてずっぽうで言ったのに』
「ソンジェ君がヨンスさんによろしくって、言ってたわよ」
「そうですか」『毎晩、僕の留守に飯作りに来てるくせに』
「さあ、これで今夜は楽しめるわ!」
「そりゃいい。大いにやりましょうワハハ」
「ミミさん、素敵な衣裳ですね」
「マイケルさんこそ。その真っ赤なネクタイとってもお似合い!」
「おい、ミンチョルどうなった?」
「呉越同舟、ちょっと違う、類は友か・僕は怒髪天を衝く・」
「ミンチョルさん、どうするんですか」
「ウシク、今日の予約は?」
「おGさんとAさんですが…実はさっき来て帰っちゃいました。眩しくて目が潰れる、とか言って」
「しまったな。2人に花を贈ってお詫びしてくれ。薔薇がいい」
「わかりました。あと、おTさんは帰国したばかりとかでキャンセルです」
「そうか、それはよかった。今夜は家でDVD見ててもらった方が利口だ」
「そうですね」
「さあ今夜も貸切だ」
「はあ」
「ウシク、mayoさんに連絡とって今夜洗い場頼めるか聞いてくれ
無理は承知だが、何とか助けてもらいたい」
「わかりました」
「ミンチョル、すまん。テスさえいてくれれば…」
「いいんだ。それより今夜はあの3人から搾り取る!」
「え!トファン会長とマイケルさんからもですか」
「当たり前だ、客より先に飲み始めるヘルプがどこにいる
オールインではともかくBHCではそういうことは許さない。3人とも客だ!」
「ミンチョルさん、キツネ顔ですね」「ああ、気をつけろよ」(ウシクとイナ、2人目で話す)
「テソン、派手に作ってくれ、テプン派手に食べてくれ、イナ悪いと思うなら回しゲリがんがんやってくれ
イヌとテジンは3人にはりついて飲ませろ。みんないいな!」
「はい!」(一同)
反撃
「会長は会社をいくつお持ち?」
「買ったり売ったりしてるので、よくわからんのだよハハ」
「まあ派手にやってらっしゃるのね」『キラキラ!目が星』
「会長は派手にやりすぎて、刑務所にも入ったことあるんですよ」
「ま!」『裏社会にも強い!』
「おいおいマイケル、もう済んだ事じゃないか。あれはイナのやんちゃのせいさ」
「俺のやんちゃがどうしました?」
「ああら、ギャンブラーさん、いらっしゃい!」
「会長が捕まったことをミミさんに話していたんだよ」
「あれは僕じゃなくてマイケルさんが刺せって言ったじゃないですか」
「何を言うんだ、お前が勝手にやったことだろう。おまけにそのままとんずらして…」
「まあまあ、いいじゃないか、昔の事だ。おかげでチョンウォンも少し勉強できたしな」
「会長、知らないんですか。あの始末はチニさんがすべて仕切ったんですょ」
「何!そうだったのか、どおりで手際がよかったはずだ…」
「チョンウォンじゃ無理、無理。ところで、買収は結局どっちが勝ったんですか?僕はガーデニングに忙しくて知らないんですよ」
「それが謎でな、イナ。結局どっちになったか、わしにもわからん」
「そうでしたね、僕も覚えがないなぁ。急に終わってしまったようで…でもいいじゃないですか、会長
今ではこうして僕も会長と一緒に仕事ができてるんだし」
「そうだな、もう昔のことはチャラだ、ワハハ」
「マイケルさんも会長と同じお仕事?」
「僕も会社のっとり、いや買収が専門ですがね、アメリカでやってたんですよ」
「ああら、あなたも」
「ミミさんもアメリカに?」
「ええ、ダーリンがアメリカ人だったの」
「マフィアじゃないでしょうね」
「それはイナ君、秘密よ。誰にでも…」
「秘密はある!」
「それそれ、見に行かなくちゃね。スヒョン君。ああ、楽しみだわ、はらたいら」
「会長、お楽しみのところすみません、ちょっと」
「何だ,ミンチョル君」
「今日の請求書は会社の方へ送らせて頂きます」
「ミンチョル君!」
「よろしいですね。経費で落とせるよう書いておきますから、あちらのレディと折半ということで」
「なるほど、わしらは役立たずのヘルプってことか」
「会長はやはり会長だという事です」
「なるほど、噂通りのやり手だな。優れた判断力とそれに肝もすわっている。何しろわしから金を取ろうといんだからな」
「買いかぶりです。雇われチーフとしては一晩でも赤字を出すわけにはいかないもので」
「今度うちの会社にこないか。いいポストをあげよう」
「おたくはチョンウォンさんがいらっしゃる、僕の出番はありません」
「なるほど。来るにはわしの後を、というわけか」
「いや、そういうわけではありません。ご容赦を」『たぶんチョンウォンが潰すだろうな、あんたの会社は』
「ハハ、まあいい。請求書は送っておいてくれ」『チョンウォンにこの度胸の半分もあればなあ』
「ありがとうございます」『一丁あがり!』
「ああ、楽しかったわ。ミンチョル君」
「よかった、楽しんでいただけて」
「ふふ、今度マイケルさんと香港に買い物に行く約束したの。会長とはゴルフよ」『いい金づるが見つかったかも』
「それはお楽しみですね」
(ミンチョルさらりと請求書を渡す)
「ってちょっと、この請求書何?高くない?ミンチョル君!」(キツネ顔に変身)
「聞き違いかな、僕の」
「だって、この前貸しきったときの3倍よ!」
「ミミさんがそんな野暮なこと、似合いませんよ」『お前のカードは限度額ないだろうが!』
「だって、だって、だって!」『もう!パパに叱られるかも!』
(ミンチョル、ミミの肩にやさしくタッチ)
「僕には高いとは思いませんが。今夜あなたはいいコネができた。トファン会長とマイケル・チャン、彼らは資産家で実業家だ、
しかも裏の社会でかなり顔がきく。知り合いになっておいて損はないでしょう」
「ええ、まあ、それはそうだけど」『この子ったら!』
「今夜の代金は3人で平等に割りました。僕としてはサービスしたつもりです、3人のこれからのお付き合いをお祝いして。
それでも高いとおっしゃる?」『とっとと払え!』
「わかったわ、ミンチョル君にはかなわないわね」『やっぱソンジェ君と組ませてミューズやらせようかしら。商売は上手いわ』「ミミさん、今度新人がたくさん入る予定なんですよ。もうすぐスヒョンも戻ってきますし」
「え!ほんと!」
「若いのを揃えましたから、きっと気に入っていただけると思いますょ」
「若いの…」『いけない、また涎がたれた』
「ぜひ、12月になったら来てください。12月ですよ」『明日くんなよ!』
「楽しみにしてるわね」『若い…ってどんなグフグフ』
<閉店後>
「あー疲れた!」
「俺もう食えねえ」
「ハハ、ウシクにテプンお疲れさん。それにみんなもよくやってくれた。おかげで今日は大儲けだ」
「ミンチョル、さすがだな、トファン会長からも取るなんて」
「どうせ、会社の金さ、イナ。あの人の腹が痛むわけじゃない」
「こういうの、毒をもって毒を制すっていうんです」
「イヌさすが元国語の教師、いいことを言うね」
「そんなテジンさん」
「あのー、失礼します」
「テス!!!」(一同振り返る)
「どこ行ってたんだよ!」
「そうだぞ、心配してたんだぞ!」
「梅のお茶作って待ってたのに」
「イナさん、テプンさん。それにテソンさんまで、そんなに僕のこと…」
「テス、ヘルプは君しかいない。今夜全員で体を張ってそれを確認したところだ」
「ミンチョルさん、そんな勿体無い」
「そうだ、寒くなってきたからこれをあげよう」
「ウワ、セーターだ。いいんですか」
「君は小顔だからタートル似合うよ」
「俺も大人用よだれかけやるよ」
「僕もライター」
「俺も道着、模様入りだぜ」
「これもどう?マフラー」
「この道具箱使う?」
「さ、梅のお茶だ。瓶ごとやるよ」
「みなさん、こ、こ、こんなに!僕うれしいです。感激です!」
「みんなも君が帰ってきてくれてうれしいんだよ、テス」
「うう、ミンチョルさーん」
「テス、いいから泣くな。また明日から手伝ってくれ、いいな。
もうどこにも行くなよ」『忘れないで、僕はここにいるから…テスって可愛い…かも』
「ミンチョル、何も抱きしめなくてもいいだろう」
「…」
<帰り道のミンチョル>
「今日も疲れた。ソンジェは今日何を作ったんだろう。どうせ僕の分はないか。
それにしても、どうしてテスを抱きしめたりしたんだろう、それにヨンス用の決めゼリフが浮かんできたんだろう…
おすぎさんが僕を誉めない理由はもしかしてこれか…ラ・イ・バ・ル…」
不審者(イベントの影で)
<イベント期間中、忘れ物を取りにBHCに立ち寄るウシクに…>
「君、BHCの人?」
「そうだけど、今日は店やらないよ」
「定休日?」
「イベントがあって休みなんだよ」
「イベント?」
「そうだよ、何か用?」
「知り合いからここの話聞いてね、ミンチョルさんているでしょ」
「ここのチーフさ」
「どんな人?」
「一言じゃいえないよ、複雑すぎて。何で?」
「御曹司のマナーを教えてもらえってさ」
「誰に言われたの?」
「ユリの母親だよ、ミラさん。生意気だから修行してこい、ってすごい剣幕で怒って。首のシワくっきりですね、って言っただけなのに」
「ああ、ミミさんのことね」
「あの女の言う事聞くつもりはないけど、ちょっと興味があったから来てみたんだ」
「なるほどね。ふーん」
「なんだよ、ニヤニヤして」
「思い出したよ、あんた。どこかで見た顔だと思った。ミンチョルさんに色々教えてもらった方がいいかもねぇ」
「え?」
「ミンチョルさんじゃなくてもわかるけどね」
「何だよ」
「女追いかけて触りまくってちゃまずいでしょ、まず」
「ど、どうして…それを…」
「地下鉄に乗り合わせたら『間』を取らなきゃ、空間的にも時間的にも。強引に隣に腰掛けたらそれだけでアウトなの。痴漢だよ」
「う!何で知ってるんだ…」
「肩に手を回すより、目線を窓越し経由で送るの、地下鉄使う意味わかってるの?」
「く、くわしいな」
「俺ざっとが見ただけでもこれなんだから、ミンチョルさんにかかったらどうなることやら」
「そんなに怖いの?」
「いや、普段はいい人だよ」
「話聞けるかな」
「イベント中だからだめ!最近機嫌悪いしなあ…」
「もったいつけるなら、店ごと買うぞ、いくら?」
「わかってないねぇ。ここの買収はあのミラさんでもできないんだぜ。金さえ出せばいいってもんじゃないの」