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ミソチョルの夢  ぴかろん

僕はぬいぐるみなので身動きできましぇんぐすん
いつになったらミンチョルさんは僕に気づいてくれるのでしょう
ミンとお出かけしてしまっていったいどれぐらいたったのか、しょんなこともわかりましぇん
だって僕の目にはくちゃくちゃのベッドが見えるだけでしゅもん…くしゅん…

仕方ないので僕はお昼寝をしました
お昼かどうかもわかりましぇんが、ミンとミンチョルさんがお出かけしゅるのは朝か昼かなので、まだ外にはお日様があるのかなと思いました

うとうと…
何時間もうとうとしました
いろんな夢を見ました
ミンとミンチョルさんが仲良しな夢で幸せでした

いきなりミンチョルさんが僕よりしゅこしだけ背が高いぐらいの大きさになって僕と仲良くあしょんでくれました
しゅっごく嬉しくて、二人で携帯電話の耳切りをやりました

どちらが早くパン☆ってできるかとか、耳を挟まないで切れるかとか、かっこいいパン☆の仕方とか、パン☆でその時の感情を表す方法とか
そして実際にパン☆をやりあって、『今、どんな気持ちを表したか』をあてっこするとか…いろいろやりました
夢でしゅけども楽しかったでしゅ

しょのうち、背の高いミンがミンチョルさんを呼びに来て、ミンチョルさんは僕をぎゅっと抱きしめて

「だいしゅきらよっちゅっ」

ってお鼻にちゅうしてミンに抱っこされて帰っていきました
夢ですけども…
でも僕はとっても幸せでした
本当にこうやってあしょべたらいいのにな…

でもミンに苛められたりあれこれされたりした後のミンチョルさんは、今夢で見たぐらいの大きさだったと…僕は確かにしょうだったと…思うので
その時だったら、今の夢のようにミンチョルさんと一緒にあしょべるな…と、うとうとしながら思いました
でもしょんな時のミンチョルさんをミンは離さないのであしょべません…
ちょっとぐらい僕にも貸してよぅ…うとうと

うとうとうと
かちゃん…
あ…おかえりなしゃい…ふえ?
僕の身体が浮いたじょ…
あ…ぼくに気づいてくれたんだっ!わあい!
僕は僕のいる、どこかわかんない場所から下ろして貰って、そのお部屋を出ました

ふああい
初めてお部屋から出ました
ふああい
広い道路だなぁ…
なんかいっぱいドアがある
ここはまだあのホテルなのかな?

僕は抱っこされたままいろんなところへ行きました
ドアを一つ一つ開けていろんなお部屋を見ました
しゅごいでしゅ
ホテルでしゅね
ということはまだおうちじゃないんでしゅね
だってミンチョルさんのおうちには怖いフクスケ人形がありましたから…

身体を鍛える機械もありました
お風呂がでっかいでしゅ
トイレもいっぱいありましゅ
しゅごいホテルでしゅ!

おおっこんな豪華なホテルにカラオケがありましゅ
ぱらぱらぱら
本をめくると「替え歌集」というのがありました
端が折ってあるところがありました

『僕だけのミンは』『愛の賛歌』『エメラルドの伝説』

僕にはわからない古い歌のようでしゅ

しょしてここは『ろびい』とかいうところでしょうか?
ホテルのお客しゃんがいましぇんよっ!どうしてでしょうか?

僕は初めて窓の外を見ました

ひええええっ怖いでしゅうううっ
こんな高いところに僕はいるんでしゅかあああっ
なんでしゅかここはっ!しょらの上でしゅかあああっ

僕は目が回りそうになりました

僕は抱っこされて、ごはんをつくるところとごはんをたべるところにもいきました
しゅっごくキレイでしゅ

冷蔵庫には…まだあまり何も入ってましぇんね…
何故でしょう…まあいいや…

しょして僕はまたさっきの『ろびい』のようなところにきました
僕は一番立派な一人がけのソファに座らしぇてもらいました
しゅっごく座り心地がよくって、僕はしゅぐにまた眠たくなってきました
僕はまるでミンチョルさんになったみたいに思いました
だって立派なソファにふんぞり返って、しょして耳には携帯電話でしゅもんあふふ…ふぁぁぁ…眠たいでしゅ…
僕にとってはしゅっごい冒険で探検だったのでしゅ…
れも僕、こんなとこにしゅわってて、誰かに踏んづけられたらどうしよう…ううああ眠たいでしゅ…

もうお目目が閉じそうになった時、僕のお顔を覗き込んで僕の頭をなでなでしてくれた人がいました
僕は閉じそうなお目目でその人を見ました
ああ、いつも見ている顔と同じ顔だ…
僕は安心してお目目を閉じて、またねんねしてしまいましたZZZZ…


Cafe Tango  妄想省家政婦mayoさん

てへへ(^_^)v…俺…シチュン…でれでれシチュン^^;;

新人が入って研修つーのか?あっちこっちでやってる…
テプンがギョンビンに武勇伝くっちゃべってんの横でさっき聞いてたんだ…

ちょっと大袈裟だけどよ##…

俺は祭りの最後の夜…スヒョンさんに教えてもらった場所でな…
んまぁ…ごにょごにょして過ごしたわけ…ひと晩…
朝部屋に帰ったらテプンが「おしょとでもできるのら@o@??」ってな感じよ…
カルチャーショック受けたみたいだ…そん時の顔…みせてやりてぇー

「んなもん…どこでもできるじゃんか…」
「しょんな…しょんなこと…」ってまた@o@←んな顔さ…

もぉー心臓バクバクどっきんどっきん##してたんだろうな…
親父さんとこに挨拶行くって言ってたし…

「んまぁ…親父さんによ…誤魔化さねぇでお前の男気見せればいーんじゃねぇーの?」

と俺は帰る前にあいつに言ってやったさ…
だってよ…テプンにはそれしかねぇだろ…

「お…おう!」

とテプンは威勢はよかったけど…俺とメイはちょいと心配だったな…

それから俺たちはちゃっちゃと俺のバイク…BMW R 1200 classic…で俺の部屋に帰った…
メイとふたりで部屋の掃除やら赤い封筒の絵を飾ったりしてたわけだ…
メイは木の下でのHUGの絵を俺の店に飾ろう!!っと言ってきかない…

「シチュン…この絵…店に飾れば?」
「ぁぁのよ…それはちょっとぉー…^^;;」
「何よ#…シロ?嫌?」
「ぅぅん…こ…こっちにしよう…」
「こっちはアタシの顔がわかんないじゃんか#」
「ぅぅん…ねぇ…メイちゃん…このパフェの絵にしよぉ〜」

俺はchu#chu#chu#…&…お手々を胸に伸ばしモゾモゾ…でお願いした…

「ね…メイちゃん…こっちにしよ…ん…」
「もぉー…ぁん…ぁ…」
「駄目ぇー?メ〜イちゃん#」
「ん…ぁん…んふっ…も…ぉん…わ…わかったってばっ…..」

ってな感じで…パフェの絵は俺の店「cafe Tango」に飾ることにした…ふぅ…(^^;)

夕方一緒に店に顔を出す…マスターはにやにやしながら俺等を迎えた…
俺から絵を受け取るとマスターはいつも俺が座るカウンターの端席の正面に
でっかいパフェを見ている俺の絵を飾った…

満足そうに見ていた隣のメイの携帯が鳴った…チェリムだ…親父さんのOKが取れたようだ…
メイはチェリムの電話を切り…一件電話かけた…

「誰にかけたんだ?」
「ん?まよ…」
「ぉ…そういえば…あいつら…昨日の夜は…ねぇよな…テソン…べろんべろんだったろ…」
「ぷっ…今デートの最中だった…」
「で…デートぉ?」
「いいじゃん…あのふたりらしくて…」
「ん…んまぁな…のろまな奴らだな…ったく…」

俺はテソンとmayoシのナニを想像した…???想像できねぇ〜…
メイに言ったら頭をビタン#と叩かれた…

「何だよぉ〜」
「いいの#余計なこと考えなくて#」
「でもょぉ〜」
「いいからっ#」
「はい…」

昨日は…何ちんたらやってんだか…っと思ったけどよ…さっきテソンの顔見たら…
てへへ…そうか…そうか…すました顔してよーテソンの奴…

それからマスターと俺等と3人でカフェの新メニューを考えたのよ…
『レインボーパフェ』だ…へっへ〜^o^

ラムレーズン(レーズンは必須だからな#)・チョコ・ストロベリー・マンゴーココナッツのアイスに
メロン・グレープ・ダイキュリのシャーベット…のパフェ…
カップル用にでかいグラスで出すのさ…てへへ…不味そうか?…

ま…一度食べてみて…甘くて美味しいから…
でもって…情熱のTangoでも踊ってよ…ぷひひ…俺等みたいにさ…もち.ベットでよ#

おっと…メイに電話しなくちゃ…

cafe Tango…ご贔屓に頼むよ〜…ぷひひ…(*^_^*)


歓迎会会場  足バンさん

歓迎会の会場がミンチョル・ギョンビン宅に決まって
あまりの急なことで食事はテソンさん達だけじゃ大変だということで
ヒルズのケータリングも利用することになったらしい

テソンさんとミンギ君は高級食材店で何やら仕入れに行くことになり
それにはソヌさんもくっついて行った
酒類はmayoさんが手配してくれて
残念ながらテジュンさんがいないのでまたチュニル・スングクコンビが
カクテル作りのヘルプに来てくれるらしい
あ、それからそのまたヘルプでソクさんも来られることになって
本人はひーひー喜んでいた

そういえばテジュンさんとラブ君どうしちゃったんだろう…
イナさんとギョンジン兄貴のショゲ具合からいうと余程のことがあったかな
輪掛けてヨホドのことになってないといいけど

ミンチョルさんとギョンビンはとりあえず先に帰ることになったんだけど
ミンチョルさんが荷物がまだ片付いてないだのごねて
ギョンジンと僕ドンジュンが手伝いに行くことになった

スヒョンは後発でって言ってたのに
ミンチョルさんが会場のセッティングに来てとか言って…
僕とギョンビンはそんなの僕らでやるって言ったのにさ
まぁ結局その5人で先に行き、遅れてみんなが来ることになった

とにかくすんごいとこだった
もう開いた口が閉まらないってやつ
高級ホテル並みのロビーを通り直通エレベーターの40階(ふふ…40カイね)
ドアが開くとそこはいきなり遥か向こうのリビングに通じる広いホワイエ

「すっげー…こういうの映画で観たことあるけど」
「もう家具も入ってるの?」
「家具も電化製品もリネンも、食器も石鹸に至るまで入ってるんだ」
「げーっ!」
「確か全部イギリスの有名デザイナーのトータルプロテュースだよね」
「そうらしいです」
「おい…おまえ…何がどうなってこんな…」
「兄さんあとでちゃんと説明するから」

僕たちはひと回りしようとしてリビングの片側の廊下に入り
ずらりと並んだドアに圧倒される
リビングを挟んで向こう側にも同じような部屋が並んでるらしい
昔仕事の交渉に行ったロスの大邸宅を思い出した

「そうだ…ミン僕の荷物の…」

と言いながらミンチョルさんは何気なくドアのひとつを開けようとした
ギョンビンは「わっ!」と言いながら慌ててそのドアを閉めた
垣間見えたその感じはどうやらメインベッドルームかな
ポカンとしてるミンチョルさんとむっとしてるギョンビン
スヒョンは吹き出した

「ねミンチョルさん、今ちらっと見えちゃったけどあの上にいるのミソチョル君?」
「え?あ…」

ミンチョルさんはさっと部屋の中に入りさっと出てきた
懐かしいミソチョル君を抱えて
ギョンビンは急いでどこかからキーを持ってきてその部屋に鍵をかけた
まぁ…ふふ…賢明な措置かな

「あはは元気だったかミソチョル〜雪山では頑張ったよね〜」
「雪山?前にもそんなこと言ってたね」
「うんギョンビン今度ゆ〜っくり教えてあげるね」

ミンチョルさんとスヒョンは急に変な咳払いをした
ミソチョル君はミンチョルさんの手に乗っかって笑ってる

僕たちはギョンビンの案内でひと通りいろいろ見せてもらった
バス・パウダールーム付ゲストルームがいくつもあり
暫くギョンジンが転がり込むことになりそうだって言ってた

ギョンビンは僕にこっそり「ふたりでいつでも来てね」って笑った
でもなぁ…それぞれ「じゃっ」って寝室に入っていくシーン考えると
なんだかちょっとアレじゃない?

げっ!ジムやカラオケルームや…ん?卓球ルームもある
うーん…テプンさんたちにウケそうなラインナップだなぁ

窓からは街全体が見渡せる
スヒョンとミンチョルさんが「店はあの辺り?」なんて指さして和んでるから
僕はふたりの間にムンムン割り込んで「ほうほう」って話に入った
ギョンビンっ!そこで笑ってる場合じゃないんだからね!

白いキッチンにはスヒョンによるとドイツの最高級のキッチン家具や
電気クックトップ、オーブンが入ってるらしい
食洗器はスヒョンとこのと同じだ
窓際のカウンターバーは本格的でどこかの店ほど大きい
ギョンビンがふざけてでっかい冷蔵庫を開けるとほとんどカラだった

ミンチョルさんはすごく楽しそう
それを見ているギョンビンも満足そう
ふたりはこの空間で静かに歩いていくんだろうね…

ミンチョルさんはミソチョル君をリビングの一番良さそうな椅子に座らせ
それからテソンさんたちに電話したりなんかして
僕たちに片付いてない荷物の移動なんかも指示したりした

スヒョンはポツンと座っているミソチョル君の顔を覗き込んで

「君のご主人は幸せそうだね」

って言いながらかわいい頭をちょんちょんと撫でた
「誰のこと考えたーっ」って首に巻き付いてやろうと思ったけど…やめた
またフグって言われるからじゃなくて
スヒョンがすごく優しい顔してたから

ミンチョルさんのことホントに好きだったんだなって…
そのとき僕は穏やかな気持ちで感じてた

大きな窓の外はもう夕暮れに近く
遥か遠くの空が透き通るような淡いオレンジに染まっていた

【95♪夢ホテル】by テジュンロージーさん


奇妙な関係 恋人の時間  12 ぴかろん

目を覚ました時、外が少し明るくなっているような気がした
僕はラブを起こさぬように身体を起こし、カーテンを開けてみた
空はまだ、薄墨色をしている
夜明けまでにはまだ時間があるようだ

ラブの寝顔を振り返った
ラブは目を開けて僕を見つめていた

「起こしちゃった?」
「貴方が離れるから…」

ラブの傍に寄り、頬を撫でる
僕の手を取って掌にキスをするラブ

「もう少ししたら夜が明ける…」
「そしたら…帰る準備しなきゃね…」
「…どうする?」
「…何が?」
「フフン」
「うふふ」

小さく笑って僕達はまた抱き合う

「信じられない、テジュンって…。なんか飲んだ?」
「何を」
「まむし粉とか…」
「それは飲んでないな…飲んだのはお前の…」

ラブが僕の口を手で押さえた

「エロてじゅ!」
「何も言ってないじゃないか」
「言いそうな事ぐらいわかる」
「そ?」

抱き合ってキスを交わす
軽く何度もキスを交わす
そうしているうちにまた深いキスになり
それを合図に僕達はまた愛し合う

「ラブ…」
「なあに?」
「戻れるかな…」
「…戻るさ…」
「浮かび上がれるかな…」
「うん…」

僕はラブの身体にまたキスをする
ラブも僕の身体にキスをする
ラブは僕の身体に唇を這わせて、僕の中心を捉えようとした

「だめだ!」
「…なんで?」
「そこは…とっとくの。お前もそういう事は…とっとけよ…」

あいつらに…

「くふふ…わかった…。これまで貰っちゃうとマズいか…」
「僕は貰っちゃったけどね〜」
「エロてじゅ!」

僕もラブもお互いの身体を撫でていた
髪も頬も喉も肩も胸も腕も腹も脚も全部…
これがほんとうに最後の時間…
最後の夢の時間
…だから…
僕は彼の中に入った
いつもより早く

小さな呻き声がした
驚いた様子はない
わかってたの?
こうしていたいっていう僕の気持ち…

繋がったまままた髪を撫で、頬を撫でた
ラブは僕の背中を撫でた
お互いに見つめあいながら…

ああ…
溶けそうだ…

俺ももうドロドロだよ…

ラブ…
愛してる…

テジュン
俺も貴方を愛してる…


僕達は、この奇妙な恋人の時間に終止符を打つために、身体を密着させた
僕がラブに、ラブが僕に溶け出すような感覚
一つに溶け合う感覚
混じり合っていく僕達
ラブの悦びが僕の悦びで、僕の悦びがラブの悦び
ラブと今までしてきたどの交わりよりも、深くて優しくて穏やかな…

僕は確かにラブを愛した
ラブも僕を愛してくれた

そっと動く僕
僕を受け入れるラブ

空が明るくなってきた
ラブの頬を伝う涙が光る
僕はまたラブに口付ける
そして動きを早くする
ラブは静かに残りの空気を吸い、僕にそれを与える
僕も穏やかな気持ちでラブを包み、動く
終わらせなければならない、でも
終わりの時間を引き延ばしたい…
それでも容赦なく陽は昇り、時間は過ぎていく
僕の意志とはうらはらに、僕の身体は終わりの時間へと向かう
ラブを攻める静かな波
じわじわと近づくエンドロール
終わりたい
終わりたくない
もう少し
もう少しだけ…

僕は動きを止めてラブを見つめる
ラブも僕を見つめている
空はどんどん白んでいく
僕達はもう一度深く口付けをし、身体を揺らした

僕がラブになり、ラブが僕になる
僕達はゆっくりと浮上する
波がもうすぐ浜辺に到達する
それは僕達の交わった中で、一番穏やかで、一番大きな波だった
僕達は唇を離して、その瞬間、お互いの名前を呼んだ
驚くほど静かな声で…

大きな波がうねった後、僕達は口付けをしながら、浜辺に打ち上げられた
窓の外が明るくなっていた

ぼんやりとラブの胸に顔を埋めていた僕に、ふわふわとしたラブが言った

「日の出、見に行こうよ…」

そしてゆるゆると起き上がり、ベッドから立ち上がって僕に手を差し伸べた
僕はその手を取って、ベッドルームを出た
そして二人でまたテラスに立った
花の浮んだジャグジーに入り、海を見つめていた
水平線が赤く色づき、太陽が顔を覗かせた
燃える大きな赤い陽が、海を焼きながら昇る
太陽の顔の全てが見えるまで、僕達は肩を寄せながらその様子を見ていた
太陽が昇りきったとき、僕達はまたキスをした

ラブは湯船に寝そべり、僕を引っ張って自分の身体に僕を寝かせるように抱いた
肩から僕を抱え込んで、そのまま海を見つめていた
そしてラブは僕の耳に唇をつけて話し始めた

「テジュン…ありがとう。俺の我儘を聞いてくれて…。ありがと…一緒に堕ちてくれて…
ごめんね…。辛い想いさせちゃったよね…。でも俺、すっごく幸せだった…。俺…こんなに幸せだったこと、ないよ…
…あいつとこれからどうなるかわかんないけど…俺、貴方の事絶対に忘れない…。ここで過ごした事、絶対忘れない…
貴方が好きだ…。貴方を愛してる…。貴方が一番…好きだ…愛してる…愛して…た…」

僕は辛くなってラブと反対の方に顔を背けて泣いた
ラブは背けた僕の顔を自分の方に戻し、僕の髪にくちづけた
僕はすすり泣いた
ラブの肩に顔を埋めて泣いた
泣きながら、僕もこの気持ちを伝えなくてはと、口を開いた

「ラブ…愛してるよ…愛してる。僕もとても幸せだった。とても…楽しかった。お前は僕に自信を持たせてくれた…
僕もお前を絶対に忘れない。愛してる…。これからもずっとお前を愛し続ける…」
「テジュン…何言ってるんだよ…イナさんのとこに帰るんだろ?俺への気持ちを整理するために、昨日ここに泊まったんだろ?
ぶち壊して新しい物、作るために…。底から浮き上がるために…」

僕はラブの唇を塞いだ
抵抗した後ラブは僕の首に巻きついた
唇を離して苦しげに言った

「いけないよ…もうだめだよ…」
「ラブ…」
「だめだよ!イナさんの方を見てあげてよ!俺もアイツを見るんだから!そのために俺は貴方と…」
「僕を愛してくれたんだろう?」
「…」
「ラブ…。全部ぶち壊した。瓦礫も粉々の荒れた更地になった。僕等の心は今、そんな状態じゃないか?」
「…そうだよ…」
「僕ね。お前と一つになったと思ってる」
「…なってたじゃん…」
「身体じゃない…心が…」
「…」
「さっき…そう感じた。お前と溶け合ったって感じた。お前に色んなものを貰った。とても綺麗な宝石だったり、雑草みたいな可愛い草花だったり
荒々しい狼だったり、大地を潤す優しい雨だったり…」
「テジュン…」
「僕はお前に貰ったもの全部、荒れた僕の更地に撒き散らす」
「…」
「撒き散らして染み込ませる。僕の心の地表にお前が染み込んで、ずっと一生、僕の土壌にお前が残る…。だから一生お前の事を愛し続けていける…」
「テジュン…」
「それもダメな事かな…」
「俺…俺もそう考えてたの…同じようなこと…。俺もさっきね…貴方が俺の全身に染み込んでくるのが解ったの
だから…あっちに戻って別々の道歩いていっても、俺はいつも貴方を感じていられるって…
俺だけがそう思い込んでるって思ってたから…。でも貴方も…そう感じてくれてたんだ…」
「ラブ…」
「貴方に会えてよかった…。貴方があの時、俺を追いかけて来てくれて、本当によかった…。ありがとう」
「僕を…誘ってくれてありがとう。…イナに向き合うよ…どうなったって…ちゃんと向き合う…」

僕達は、恋人としての最後のキスを交わす

【96♪愛の奴隷 by ラブ】ロージーさん


◇BHC厨房_歓迎会準備編  妄想省家政婦mayoさん

僕はテソンさんとソヌ先輩と一緒にRRHのマーケットに来た…

先輩は商売柄何回かここに来たことがある…
僕はワインコーナーにしか来たことがなかったから食材の方は見たことないものばっかりだった…

テソンさんはカートを引っぱって…ずんずん進んでいく…
先輩とテソンさんがチーズコーナーでぶつぶつ言いながら何種類かのチーズを選んでいた…

「テソンさん…このまだら模様のチーズ…何て言うの?食えんの?」
「はは…ミンギ…これは…ポーターって名前…」
「チェダータイプのチーズに英の黒ビール『ポーター』をミックスしてる…だよね…テソン君…」
「そうです…そうです…」
「ミンギ…見た目はインパクトあるけど…まろやかで食べやすい…」
「ふ〜〜ん…」

「テソン君…ブルーはどれにする?…」
「やっぱり…高貴なブルー…フルム・ダンベール…でしょ…」
「そうだね…」

先輩がカビの生えたようなフルムなんちゃらのチーズをカートに入れた
テソンさんは丸い木箱に入ったチーズやら…やわらかい山羊のチーズ等々…カートに入れた

「テソン君…僕ワイン選んでくるから…」
「あ…お願いします…」

テソンさんはチーズのあとにハムやソーセージのとこを廻って野菜と魚の方へ廻る…
途中ヌナに電話を掛けていた…

「mayo…何処?」
「奥のワイン売場にいる…」
「ん…ソヌさんがそっちに行ったから…」
「わかった…」

テソンから電話が来てまもなくソヌがワインコーナーに来た…
私が選んだ仏ワインを覗くと…伊のワインの棚から2本を選んだ…
Luce…Bosco Chardonnay…

「ぉ…」

棚の一番上を見ていたソヌが2本のボトルを選び…手招きした…
Sassicaia1995だ…

「うわ…めずらしい…」
「どうする?…これは…プライベート用だね…」
「はい#…もちろん…」
「ぷっ…」

ソヌと互いに1本づつ会計を済ませたところにテソンとミンギが来た…
テソンがぶら下げている袋を目ざとく見つけた…

「mayo…なぁに買った#…」
「ん?…これ…」
「どれ…おぉ…明日帰ってくるよね…4人で飲もう…」
「ぅん…」

先輩は僕に袋のボトルを見せた…
「僕等は3人で飲もう…ウォニは撮影でいないからさ…」
「えー…僕は…オヤジ2人とぉ〜」
「ミンギぃ〜」
「へっへ〜いいよっ…」


僕たち4人はカートの会計を済ませミンミン宅へ行った…

ミンギはエレベーターを降りると「すんげぇ〜〜〜@@」を連発する…
ソヌと闇夜は冷静…^^;;…おそらく内装がどんなもんか把握してるんだろう…

4人で先に来ていたミンミンとスヒョン・ドンジュンに挨拶をして…
僕と闇夜はキッチンに入った…


奇妙な関係 恋人の時間 ジ・エンド  ぴかろん

「もう恋人としてキスをすることはないね…」
「でも…寂しいな…」
「ん?」
「…キスもしちゃだめかな…」
「すけべじじい!」
「例えばイナの事で悩んだ時さ…慰めてくれないかな…」
「えっち抜きだよ!」
「え…じゃ、キスはいいの?!」
「…秘密にできる?」

眉をぴくんとあげて言ったラブの言葉に、僕はどきんとした

「しょ…しょれはおくのしぇりふらろに…」
「ふふん。かわいこぶっちゃって!…いつかイナさんにぜ〜んぶばらしてやろっと」
「らっらめらっ!しょんな事したらあいちゅ…僕をころしゅ…」
「くふふふ〜」
「しょんな事言うなら僕らってギョンジンにいっちゃる!ろんなにお前が…」
「なにさ!」
「…すげぇかって…」

ちゅっ

あ…もう恋人のキスはしないって言ったのに…

「いきなり他人のふりすると…変な反動でちゃいそうだもん…」
「しょか…じゃ、帰るまではうひひ」
「…軽くね…」
「かるくぅ?」
「またすけべじじい!」
「らってぇん」
「…ちゅ…」
「ん…」
「しょーゆーとこ、しゅきだよ、テジュン」
「んちくしょうっ!」

恋人じゃなくてこれは何?
何も変わってないんじゃないか?
まじゅいかもしんない…ひひん…

「テジュン!くれぐれも言っとくけどさ、これは『余韻』なんだからね!わかってる?」
「う…」
「『余韻』ってもんは、徐々に消えていくモンなんだよ」
「…れも帰ってからも時々はきしゅしてもいいんらろ?」
「…もうっ!」

ラブは僕を突き飛ばしてジャグジーから出て、バスタオルを腰にまき、そしてどこからか網を持ってきた

「あにしょえ…」
「らりるれってないで、早く出なよ!ジャクジーの花びら回収するんだからっ!」
「…何急に現実的…」
「テジュンはリビングの不具合チェックしてよ!元ホテルマンなんだから、おかしいと思うとこわかるでしょ?」
「…おかしいって?」
「…言わせるの?」
「…」
「変なしみとかっゴミに変なものがまざってないかとかっ…」
「ああ…いっぱいあるよね…」
「ベッドルームのシーツとかっ!もうっ!」
「ああ…えへへへへん…」
「チェックしとかなきゃ、オ支配人に告げ口されても知らないよっ!」
「あひひ…ふああい」
「ほらっスケベ顔してないで早くそこ出てよ!じゃまっ!」

酷い…
ラブは僕を網で小突いた
僕はしぶしぶジャグジーを出てリビングに行った
そして…
ラブに言われたそこかしこを見て蒼白になった…
酒池肉林とかハーレムとか痴態とか、そういったあらゆるへんたい系の言葉が僕の上に落ちてきて、僕はタオルや石鹸を使ってカーペットその他をゴシゴシ拭きまくった…
なんとか誤魔化せそうな状態になった時にはもう9時前だった
大急ぎで荷物を詰め込む
みやげの服とストラップは、ラブが持ってた紙袋にそっと丸める
そして服を着る

僕はおととい着ていたパーカーとカーゴパンツを…
ラブはくすんだピンクのシャツを着た
顔を見合わせてにこっと笑い、もう一度部屋を点検する
シーツは剥がしてちょっとだけ水洗いしといた…
酒をこぼしたとでも言うのだ!ふんっ
ああっ!ゴミ箱をっ!

慌ててカバンの中からビニール袋を取り出し、ぎゅうぎゅうと…その…詰め込み…
こんな袋の中を開けて確かめはしないだろうってことでへへへ…しっかり口を縛ってそのままそこに置いておいた

「完璧だろ」
「…まあね…」
「取り繕っちゃったな…」
「一応ね…」
「「ずるい男」」

顔を見合わせ唇を寄せ、僕達は羽根のようなキスをした
この部屋での出来事が、二人っきりで過ごした四日間が、走馬灯のように脳裏を掠める
決して忘れない…辛くてそして幸せだった時を…
僕達のキスは、やっぱり深いキスになってしまった

愛してる
これからもずっと…
でももう一つの愛のもとへ
帰らなきゃね…

僕達は唇を離して見つめあい、くすくす笑った
笑いがだんだんと大きくなっていく

ふはは…あははははは

片手をあげてハイタッチ
パァンといい音が響く

「サンキュー相棒」
「相棒?」
「そ。お前は僕の相棒だよ」
「…アバンチュールの?」
「ん。これからもずーっと…むほほほほ」
「ばーか!」

くはははは、あはははは

僕等は大笑いしながら部屋を出た
パタンとドアが閉まった


僕等の「恋人の時間」は本当に終わった…


テプン襲来  オリーさん

テプンさんはさっきから僕の肩を叩きっぱなしだ
「お前、これどうなってんだよ、え?」
バンバンバン!
「部屋がいくつあるんだ、え?」
バンバンバン!
「お、でかい風呂じゃねえか!ジャグジーつきかよ、へへっ」
バンバンバン!
「あの、肩ぶつのやめてもらえませんか」
「細かいこと言うな。あっ、卓球台だ。俺うまいぞ。球技はお手の物だ」
バンバンバン!
「お前がこんなに金持とは知らなかった。いやあ、知り合いでよかったぜ」
「僕は金持じゃありません」
「細かいこと言うな。あっ、カラオケもあるなんて気が利いてるぞ」

僕たちより少し遅れてテプンさんとドンヒさんとホンピョさんが来たのだった
3人は入口でもめて、僕が迎えに下まで降りて行った
ドンヒさんはキョロキョロしていて挙動不審
ホンピョさんはガムを壁につけようとして警備員に取り押さえられた
そしてテプンさんはエレベーターホールのドアが開かないと言って体当たりして、同じく警備員に取り押さえられた
「お前、エレベーターに勝手に乗れねえとはどういう事だよっ」
「受付でBHCって言って下さい、って言ったでしょう。ここは厳しいんですよ」
「俺達危うく追い出されるところだったぜ」
「いきなりエレベーターホールの扉に体当たりなんかするからですよ。勘弁してください」

そんなこんなで40階に着いたら、いきなりあちこち見学が始まってしまったのだ
「おい、ここ、鍵かかってるぞ」
「そこはだめです。書斎ですから」
「ふううん、狐の仕事部屋か…おい、ここも鍵かかってるぞ」
「そこもだめです。ケホンっ。その寝室ですから」
「お前達の…ケホン…その寝室か…」
「そうです」
「ちっとくらい見せろよ」
「だめ」
「ちっとだけ」
「だめ」
「けち」
「何言ってもだめ」

合間にホンピョさんが唾を吐いたり、ガムをつけようとするのを止めた
「今度、唾吐こうとしたら、僕蹴りますよ。回し蹴り得意なんで」
「習慣なんだよ、俺が唾吐いてガムつけるのはよ」
「じゃ、蹴りますから」
「ちっ。うっせー奴だな。かたい事言うなよ」

ドンヒさんは3人の中では比較的大人しい
ただ、細いネクタイをしきりといじっては首を振っている
「どうも、この紐のようなネクタイだと落ち着かないな。ネクタイ締めた気にならない
それにしても、君のとこすごいね。今度追いかけられたら、ここに逃げよう」

「おいおい、ちょっと待てよ。ここは何だよ」
またテプンさんに呼ばれた
「クローゼットです」
「このどでかい部屋が全部か?」
「そうみたいです」
「なるほど、ふんふん。十分だな」
「何がなるほどで、何が十分なんですか?」
「いや、新婚にはもってこいの作り」
「は?」
バンバンバン!
「俺とチェリムだよ。新居にちょうどいいや」
「何考えてるんですか!」
「このダブルベッドの部屋が俺とチェリムでだな、隣のシングルをテジにやろう」
「やろうって、ここは僕達のマンションですけど」
バンバンバン!
「チェリムの親父もここが新居ならうるさい事言わねえだろう。店からも近いしな」
「勝手に決めないでください!」
バンバンバン!
「ケチくさいこと言うなよ。お前と狐の二人だけじゃスッカスッカだろうが
もったいねえから、俺とチェリムが住んでやるって言ってんだよ」
「いえ、結構です」
「この広い廊下でさ、テジとキャッチボールなんかできるぞ」
「やらないでください!」
「キッチンとりビングは共有にしようぜ。食事当番は交代制にするか?
何なら俺が作ってやってもいいぞ」
「だからっ!」
「テジには机買ってやらねえとな。それくらいは親として準備してやろう」
「あのっ!」
「あんだよ?」
「新婚の人は自分たちでちゃんと住まいを選んだ方がいいですよ」
「俺が選べば、チェリムもテジも文句ねえよ」
「だから!ここはダメです!」
「テジはジャグジーつきの風呂なんか入ったら大喜びだぜ」
「ダメだってばっ!」
「チェリムと3人で、あ、いや、やっぱり風呂はふたりでだな。悪いがテジとはお前が入ってやってくれ」
「何の話ですかっ!」
「ケチくさい事言ってると、早く年とるぞ。おっ、このベッドふかふかだな。けけっ」
「何考えてるんです?」
「部屋にもシャワーがついてるしな、うん」
「だから何考えてるんです?」
「いや、チェリムとここで…ウヒ…ウヒャ…アハ…ハヒャ…」

スパコーーーン!!

「いい加減にしてください!」
僕はとうとう先輩に手を上げてしまった


Dear Tejun  足バンさん

行くんですね

命より大切にしてくれた
なにより慈しんでくれた
愛してくれた
わたしのあなた

見つけたんですね

命より大切な
なによりも育みたい
あなたを愛する
あなたのだれかを

心配しないで
だいじょうぶ

あなたの残した
あなたのすべては
あなたの姿を記憶している

この床も
この壁も
この階段も
この窓も
小さなリネンの片隅さえも
けっしてあなたを忘れない

あなたが触れたその指を
あなたが歩いたその足音を
けっしてけっして
忘れない

あたえてくれた愛情を
ずっと抱きしめ
こころにとどめ
あなたの息吹をつなぐから
かならず忘れずつなぐから

だからこんどは
自分のために
その暖かい手で
抱きしめて

大切なひとを
大切なときを

だからこんどは
自分のために
その美しい目で
ゆめを語って

大切なひとの
大切な手をとって

あなたが選ぶそのみちを
ずっとずっと
見守っている

この空のしたのどこか
あなたの鼓動を感じながら

ありがとう
わがこころの
総支配人


◇BHC厨房_歓迎会準備編 2   妄想省家政婦mayoさん

早速キッチンに入ったテソンさんとヌナは仕事を始めていた…
2人はああだこうだと無駄な話をすることなくテキパキと調理をしていく…
僕は2人の流れるような動作を見ていた…

ヌナはいくつかの材料を同じ大きさにしていった…
サラミ…アボガド…マリネ&グリルした鶏肉…豚のヒレ…白身の魚…ボイルしたエビ・タコ・イカ…
何種類かのハード系チーズ…グリーン&ブラックオリーブ…プチトマト…
フルーツも同じ大きさに小さめに切った…

ヌナは材料を前にカラフルな細い串やピックを大量に出した..長さも短いのと長いのがある…
ちらっと覗きに来た先輩がヌナに話しかけた

「mayoさん…ピンチョスだね…」
「はい…」
「先輩…ピンチョスって?」
「串=楊枝のことをスペイン語で『ピンチョ』って言うんだ…」
「ぅん…」
「新鮮な素材や料理した素材を組み合わせて串に刺す小さな料理…それがピンチョスさ…」
「へぇ…」
「材料を縦に垂直に刺したり…横に刺したり…串やピックも色々種類があるからね…..」
「じゃ…いろんな組み合わせができるんだ…」
「そう…それにグラス片手につまめる…」
「そっか…」

ヌナは僕と先輩の話を聞きながら材料を組み合わせ何種類かのピンチョスを大量に作っていった…
フルーツは3種類を重ねて垂直に串を刺し..他の材料は横に串を刺す…
それをBHCから持ってきた何枚かの大皿に出来たピンチョスを彩りよく並べた…
ヌナがテソンさんをツンツン突っついて無言で「いいかな…」とチェックを促す…
テソンさんは「ぅんぅん…」と無言で頷いてソヌ先輩を見た…
僕の隣で見ていた先輩も無言でそれに答えて「ぅんぅん…」頷いて…

「綺麗…綺麗…」と言って僕の側からふらっっといなくなった…

テソンさんは3種類のマグロをさいの目に切った…
生のまま…真ん中が赤く残るくらいのレア…すっかり火の通した状態の3種…
台形の型に交互に詰めてダシにとろみをつけたのを流し込んだ…
でもってそれを冷蔵庫に入れた…固めるのか…

「テソンさん…それ…テリーヌみたいなもん?」
「はは…そう…和風にアレンジ…」
「ソースは?」
「わさび風味…かな…」
「旨そう…」
「今日初めて作った…でも旨いと思う…あはは…」
「たはは^^;;…(大丈夫かな…)」


ヌナがひと口サイズの生春巻きを作ってまたテソンさんをツンツン突っつく…
テソンさんの無言の頷き「ぅんぅん」を合図にヌナは盛りつけを始める…
また先輩がふらっと僕の側に来て…タレを付けた生春巻きをいきなり僕の口に突っ込んだ…

「んぐっ##…せん…ぱ…ぃ〜>o<…」
「ミンギはお喋りだからな…」
「はふ…^^;;…」
「どう?味は…」
「う…旨いっス…」
「それはよかった…ミンギ…」と言ってまた僕の側からふらっっといなくなった…もぉー#


その後2人で包丁ショーみたいにいろんな野菜の千切りを始め皿に薄く敷いた…
テソンさんの切った白身の薄造りをその上にのせる..ラップをかけて冷蔵庫…

「テソンさん…魚…何?」
「平目…鰈…鯛…ソースはイタリアンで…あとで混ぜ混ぜして食べるの…」
「くはっ…旨そう…」
「旨いよ…きっと…」

ヌナが何種類かのチーズを切って盛りつけ始めた…
またまた先輩が僕の側へ覗きに来た…

「もぉー先輩〜ずっといればいいじゃんか…ふらふらって〜」
「何っ#」
「ごめんなさい…m_m…」

ヌナはくすくす笑ってスライスしたまだら模様のチーズ…ポーターを僕と先輩によこした…

「どう?ミンギ…」
「くどくないっスね…」
「だろ?…黒ビールの味がちょっとピリッと来る…」
「先輩の好きなGUINNESSにも合うんじゃない…これ…」
「そう…合うね…」
「だからさっき自分の分..GUINNESS買ったんスか?」
「そういうこと…」と言ってまたまた僕の側からふらっっといなくなった…きぃ#

他に冷たいスープが2種類や魚の香草焼き…等々…テソンさんとヌナは短時間に作った…
息が合ってるのかな…やっぱり…
僕はテソンさんとヌナを見ててそう思った…

僕…結局何にも手伝ってない…みたい…かな?あはは^^;;
ま…いいっか…2人の邪魔しちゃ悪いから…てへへ^^;;


恋のかけひき れいんさん

僕はバーカウンターの中でカクテル作りの練習をしていた
チュニルさんに教わっておおまかな要領は掴めた
もともと指が長くて器用な方だと思うから、後はカクテルの種類を覚えていけばいい
チュニルさんにも「覚えが早い」と誉められた

少し余裕が出てきた僕はスヒョクがどこにいるか目で追った
スヒョクはグラスやお皿を運んでいた

ふと僕は店でスヒョンさんに言われた事を思い出していた
『恋愛に於いてはあまり好きにならない事が好きにさせる確実な方法』…
そうかもしれない
確かに以前の僕はこうじゃなかった

いつの頃からか、スヒョクに心を開き、スヒョクも僕に心を開き
そしてスヒョクを救い僕も救われた
だが…スヒョクを少し束縛しすぎていたのかもしれない
焦りすぎていたのかもしれない
もう少し余裕を持って…一呼吸おいて…
そんな接し方をしてみた方がいいのかもな…
そんな事をとりとめもなく考えていたら、テジンさんが僕の前に座った

「ソクさん、どうですか?調子は」
「やあ、テジンさん。結構難しいものなんですね。…如何です?ちょっと味見していきませんか?」
「いいですね。じゃあご馳走になろうかな」

僕はチュニルさんに教わった様にシェーカーを振ってみた
そしてグラスに注ぎすっとテジンさんの前に差し出した

「へえ…教わったばかりとは思えない鮮やかな手つきでしたよ。これならきっとチーフからもOKが出ますよ」

テジンさんはそう言ってグラスに口をつけ、何度か頷いてみせ、僕ににこりと微笑みかけた

「テジンさん…このところ随分表情が穏やかになられましたね」
「そうですか?…ソクさんこそ…その優しい雰囲気は…誰かさんのおかげかな?」

僕達は顔を見合わせふっと笑いあった
丁度そこへ例の新入り君が慌しくやってきた

「す、すみませんっ1僕にも何か一杯下さいっ」
「やあ、ドンヒ。どうしたの?汗かいてるじゃないか」
「あ…テ、テジンさんっ。さ、先程はどうも…。ぼ、僕、新人なものですから、どこ行ってもこき使われちゃって…
なんでだか、皆ホンピョじゃなくて僕にあれこれ頼むんですよ。だからもう喉が渇いちゃって。ちょっとここに非難させて下さい」
「ふふ。君の方が頼りになるって事なのかな。…あれ?そういえば僕があげたネクタイ…気に入らなかったの?」
「あわわわ…えっと…いえ…あれは…せっかく頂いたので大事にしまっておこうかと…」
「ふうん…そう…」
「えっと…あ、あの…その…テジンさんはあのスハさんって方と凄く親しそうですね」
「え?ああ…うん。スハはね…僕の一番大切な人なんだ」
「ええっ??た、大切な人って…つ、つまり…し、親友って事ですか?」
「親友ねえ…それ以上かな。親友にはいくら親しくてもあんな事はしないだろうしね…」
「えええっ??あ、あんな事っ?」
「ぷっ。ねえ、これで汗拭いたら?」

テジンさんは笑いを堪えながらドンヒにハンカチを差し出した
ドンヒは目を白黒させながらそのハンカチで汗を拭いていた

「と、ところで…ソクさんも…その…さっきお店でスヒョクさんと…その…」
「え?スヒョクと何?」
「そ、その、キ・キ・キ…」
「キス?」
「そっそっそっ」
「恋人同士だったらそれくらい普通の事だろ?」
「こ、恋人っ?…あ、あの…こちらの方達って皆さん…そのそうなんですか?」
「そうだなあ・テプン達とかジュンホ君あたりはノーマルだけど、ノーマルじゃないカップルの方が多いかな…
ある意味そっちの方が当たり前というか…抵抗が少ないというか…ねえ、ソクさん」
「そうですね。ノーマルの方がノンフィクションって感じがして妙に恥ずかしかったりしますよね」
「そ、そんなもんなんですか…」

ようやくドンヒの汗も引いてきて、少し落ち着いてきたようだった
と、そこへ今度はスヒョクがやってきた

「ソクさん、なかなかさまになってるじゃないですか」
「へへっ。そお?」
「ねえ、ソクさん。早速僕に何か作って」
「え?ああ、ちょっと待ってて。先にドンヒ君に飲み物作ってから…」
「あ、いえ、僕、後でいいですから先にスヒョクさんに…」
「ごめんね。ドンヒ君。僕またすぐ向こうに戻らないといけないから…」
「だめだ。ドンヒ君が先に待ってたんだから。スヒョク、少しの間くらい待てるだろ?」
「ソクさん…どうしちゃったの?いつものソクさんなら…」
「…とにかく、ドンヒ君が先だ。スヒョク待ってて」
「むっ!…もういいっ!飲み物なんかいらないっ!」
「あっ、おい、スヒョク」

スヒョクは急に聞き分けのない子供みたいにむくれて向こうに行ってしまった

「あっ、ど、どうしましょうかっ。す、すみませんっ!怒らせてしまったみたいで…」
「いや、君のせいじゃないから、気にしないで…ほら、できたよ。これ飲んで」
「あ、ありがとうございますっ」
「ソクさん、スヒョクいいの?」
「テジンさん…どうやら僕はスヒョクを随分甘やかしすぎたみたいですね。スヒョンさんからも接し方のアドバイスを頂きましたよ」
「…惚れるより惚れさせろ…って事?」
「ええ、まあ、そんなところです」
「…スヒョクと恋のかけひきをするんですか?」
「え…?恋のかけひき?」
「以前のスヒョクはいつも何かに怯えてる様だった。今みたいに屈託なく笑ったり、子供みたいにむくれたり…。そんな風になったのはなぜでしょうね」
「…テジンさん…」
「じゃ、ご馳走様でした。さあ、ドンヒ行くぞ」

テジンさんはひいっと悲鳴を上げてるドンヒの肩にぐいっと腕を回して連れて行った

僕はテジンさんの言葉を考えていた
そうだな…
スヒョクとはかけひきなんて必要ない…
あいつが素直に自分を見せられるようになったのは僕がいたから…
いつも両手を広げている僕がいたから…
あいつを暗闇から引きずりだしたのは僕…
だから…あいつの笑顔が見られるのなら、僕はピエロになってもいいんだ
僕は道化の格好をしてスヒョクの回りを踊っている自分を想像してふっと笑った
そして、ピエロの僕は、手を止め、僕のスヒョクを探しに行った


ホンピョの新しい友達  ぴかろん

あんだここは…
ここには絶対王様が居るはずだ!

俺はチーフが居候でミンとかいうかっくいー奴が持ち主らしい豪華なマンションに来たんだ

入り口…入り口なのか?
俺ならあそこに住める!
あの外人のおっちゃんは外人でもちゃんと韓国語を喋れるし俺にも親切だった
俺がまたついガムを擦りつけようとしたら

「紳士はそんな事するものではありませんよ」ニコ

おいおい聞いたかよ!紳士だぜ!

「誰が紳士だよ」
「貴方様です」

おいおい『貴方様』だぞ

「んじゃぁガムどうすりゃいいのさ」
「ガムというものは普通包み紙に包んでございましょう?」
「おう」
「そこに返してあげればよろしかろうと思います」
「返す?」
「はい。ガムは貴方様に爽やかさと好ましい噛み心地を与え、役目を終えました
役目を終えた後は、もとの衣に包んであげて、ありがとうと感謝してゴミ箱へ捨てる…。これがガムの望む人生でございましょう…」
「…ガムの人生…」
「もしも貴方様が人生を終えられた時…」
「ぶっそうな話すんなよ!」
「もしもでございます」
「はい…」
「その時、貴方様が路上にうち捨てられ、他人様に踏みつけられたらどうでしょう…。こんな哀しいことはございません」
「…は…はい…」

俺は兄貴の死に様を思い出してしまった…もし俺とサン兄貴がいなかったら…兄貴の亡骸はあのまんま…ううっうううっ

「わーった…わーったよ。アンタの言うとおりにする!でも俺、これ、習慣になってるからもしかしてまた無意識でやっちまうかもしれない…」
「大丈夫。貴方様の瞳には強い意志の光が輝いておいででございます。必ずや、やり遂げることができましょう」
「…そ…そうかな…」
「はい。それができましたら今度は唾を吐くのとタバコをポイ捨てするのをおやめになる事に挑戦なさいませ」
「…そ…そんないっぺんに」
「徐々にで構いません。亀の如き歩みであっても、進歩には違いないのです。そうすれば貴方様はどこへ行っても今日のように止められて、ボディチェックされまくる…などと言う事はなくなるでしょう」
「…亀…」
「はい」
「ありがとよ、おっさん…いや。なんて呼んだらいいんだ?」
「そうですね。とりあえずコンシェルジェと…」
「こ…こん?」
「…コンシェルジェ」
「コンシェルジェ」
「おお!おできになりましたな!」

俺はそのコン…さんに頭を撫でられた
なんか親父に撫でてもらってるみたいで嬉しかった…

ま、そんなやりとりがあって、俺はそのコン…さんと仲良しになったんだ
んで、ミンの部屋についたんだけどよ

玄関ないのか?
玄関どこよ…これなによ…
宮殿か?!

俺はパニくった
ドンヒの奴も緊張してたけど、なんだかんだ用事頼まれてバタバタしてた
俺はぼーっとして部屋…部屋か?!の真ん中まで進んだ
ソファっていうのか?!ベッドじゃねぇのか?!
そこまで進んでって、座るのを躊躇ってたら、おいおいおいなんだよぅ…
キツネが座ってんじゃんか!
なんだこいつ…
携帯電話持ってる…
前髪が垂れてる…

誰かに似てるな…

でも可愛い…

おっす
こんちは
俺、ホンピョ
お前は?

『ミソチョルでしゅ』

ミソチョルってのか?お前可愛らしいなぁ
『あうあう…ありがとごじゃいましゅ。貴方は僕の喋ってることわかりゅのでしゅか?』
あん?ああ…わかるぞ
『僕、ぬいぐるみでしゅけど…』
見たら解る
『しょ…しょうれしゅか』
ここに王様がすんでるのか?…それともお前がここの王様か?
『ととととんでもない!僕はミンチョルさんのぬいぐるみでしゅ』
げっ…チーフの?!なんでチーフがぬいぐるみを?!
『しょしょれは…ミンチョルさんがひどく弱ってたときに僕が来て…しょれで僕はミンチョルさんをお慰めしたのでしゅ』
…へぇぇん…
チーフって弱いの?
『内緒でしゅよ。とっても…弱いんでしゅ。強そうに見えるでしょ?めちゃくちゃ弱いんでしゅ!昨日もミンにメロメロのデロデロでシュルシュルでらりるれで…』
は?
『あっ…とにかく…。弱いんでしゅひひ』
ふうん…
『でもね。僕、ココに来てからかくかくしかじかで、さっきまで天井の近くにいて…』
天井の近く?
『はい。シーツがくちゃくちゃで…薄い布があって…』
は?なんだそれ…
『あうあう…内緒れしゅよホンピョさん』
わかった。内緒にしといてやる。よくわかんねぇしよ
『あの…僕、チーフとミンとスヒョンさんとドンジュンさん以外の方とはまだあんまり仲良しじゃないんでしゅ…』
俺もスヒョン以外はまだ仲良しじゃねぇぞ
『スヒョンさんと仲良しでしゅか?!』
おう!あんな事した仲だ…くひひ…
『あんな事?』
まあいいじゃん…
『あの…ホンピョしゃん』
何?
『僕と話ができるのって、貴方しかいないんでしゅ』
へぇ?なんで?
『わかりましぇん』
そうか。お前寂しいんだな?
『…あの…ミンチョルさんもミンも僕を大事にしてくれるんでしゅ!でもあの…こうやってお喋りなんてできないから…しょの…』
そっか…気の毒だな。よしよし
『あのっ…時々…あしょびに来てくだしゃいっ!』
えっ?!
『だめ…れしゅか?』
いや、俺はいつでもオッケーだけど…チーフとミンの野郎がなんて言うか…
『あうあうあう〜』
な…泣くなよ…ぬいぐるみが泣いたときってどうすりゃいいんだよ
『らっこしてくれれば泣き止みましゅ』
抱っこ?赤ん坊みたいだな…。そらよっ
…お前…俺の子供みたい…
『子供いるんでしゅか?』
おう…写真みるか?これだ
女の子だ
『かわいいれしゅ…貴方もしゃびしいんでしゅね(;_;)』
…ば…ばか!俺にはもう、スヒョンがいるからよっ!
それに…お前とも友達になれたし…
『あうあうあう!お友達ならあしょびにきてくだしゃいっ!』
あ…おお…でもよ…チーフが怖そうでよ…
『僕がなんとかしましゅからっ!』
なんとかって…お前…ぬいぐるみだろーが…
『はいっ!れもっ!なんとかしましゅっ!』
ん…まぁなんとかなったら…な…はは…

「僕の…けほこほ…我が家のマスコットに何してる?!」

おっと…チーフだ…

「あいや、可愛いぬいぐるみだなって思ってさ…。ミソチョルっていうんだ」
「…」
「あれ?違った?」
「誰に名前を聞いた?!」
「え?本人に…」
「ほん…にん?」
「アイウ…あえと…誰だったっけへへんへへん」
「悪いがこの子は大切な子だからあんまりいじくらないでくれないか!」

お…怒ってる…怒ってるぞミソチョル…
『だいじょぶでしゅ。でもしょっとソファに戻してくだしゃい』
わかった…。じゃ、またチーフの目ぇ盗んで来るから…喋ろうな…
『あい…ばいばいホンピョしゃん』

「バイバイミソチョル」
「前髪に触らないで!」
「へっ?」
「セットが乱れる!」
「あ…おお…すまねぇ…」

ミソチョルをソファに戻した途端、チーフはミソチョルを手にとって、異常がないか確かめだした
ふんっやな奴!
前髪に触るな?
…俺も前髪とか頭には敏感だ…
そか…これか

俺は自分の頭を何度も撫で降ろした

『あーい。ホンピョしゃんが頭撫でると僕、よく聞こえましゅ!』

やっぱり、俺のここんとこってきっと『妖しげなもの』をキャッチする何かがあるんだ!

うん。よし…
ミソチョル、またあとでな
『あい〜』

俺はここに来て、二人も友達をめっけたのだった


Holiday ロージーさん

昼に近い朝の光がカーテン越しに射しこんでいる
ソファーでコーヒーを飲みながら…僕は二人を眺めている…
彼が僕のほうに何か持ってきた

「ろうじょめしあがれ」
「これはなーに?」
「あにょね、いちごとばにゃにゃとぱいらっぷる」
「そう?…ありがとう、いただきます…あむあむごっくん」
「おいちい?」
「うん!おいしかったよ、ごちそうさま」
「ろういたちまちて」

そう…彼は今あの子と「おままごと」の最中なんだ…
このあいだ「マダム」からみそちょる宛てに「おままごとセット」が送られてきた

おままごとせっと

もちろん僕気付けだったけど…。メッセージは
『いつもお留守番のみそちょる君に』Rosyより

何か文句を言うかと思った彼は、以外にも目を輝かせて…
とたんに「しゅるしゅる」した…
このごろは自由自在に「しゅるしゅる」伸びたり縮んだりできるみたい…
…なかなか戻れない時もあるけど…

それ以来…「おままごと」は三頭身の彼のお気に入り
カップもお茶碗も3個づつあるから僕も付き合わされる…
…可愛い…とっても可愛い!…可愛いよ…

「みん おなかがしゅいた」
僕のひざに手をかけた彼が言う…
「なにがたべたい?」
「おいなりしゃん!」
「そうだね…まだあったね」
「おみしょしるもね」
「わかったよ…よういができるまで…ちゃんと『オカタ』してもとのさいずにもどっててね…」
「ふぁーい」
「それからきょうはおそうじのひとがきてるからおへやをでないようにね」
「ふぁーい」
「いいこだ」

冷凍庫から「いなりずし」をとりだしてレンジにかける
その間に、茄子とオクラと茗荷の味噌汁をつくった

「いなりずし」もこのあいだ冷凍便で「マダム」から送られてきたものだ
ずいぶんたくさんあったけれど、これでもうおしまい。僕も「きちゅね」もお気に入り…
お抱えのシェフにでもつくらせたのかな…ちょうどいい甘辛さが懐かしいような美味しさだ…
なんとなく彼女自身の手作りのような気がした…きっとそうですね…「マダム」…

彼女の僕達への気持ちは何なんだろう?…お子さんがいない…とか…「カラの巣症候群」…とか…そんなお年には見えなかったけれど…
もしかして…僕らのどちらかが…初恋の人に似てるとか…だとしたら…たぶんルックスは彼のほうだ…性格は…僕…かな…
どちらにしても…「とびっきりの思い出」なんでしょうね…「マダム」…

メッセージは

『お口に合うかしら…少し心配…よろしければ…お兄様にも召し上がっていただいて…』Rosy

作り方とレシピも添えられていたから…こんどきちゅねと二人で作ってみよう…

…もうサイズ…戻ったころかな…

【97♪セクシャル・ヴァイオレット No1 by ミン】ロージーさん


男前のチェリム  ぴかろん

「ん?は?今から?!え?!どこへ?お前んち?お前んちって親父さんちってことか?え?違う?なんでっ!俺もまだお前んち行った事ねぇのになんであいつが先に…へ?がたがた言うなだと?!お前、誰に向かってしょんなこ…
 あ…。はい…。はい…。いえ。しょおしてくらはい…はい。わかりばじだ…。は。いえ…なにも言う事はごじゃいましぇんから…はい…。よどじぐ…ぐしゅ」

テプンさんが涙目で電話を切った

「どうしたんですか?」

僕は思わず声をかけた

「おうおう!キメたハズなのにようっ!」
「はい?」
「チェリムの奴がようっ勝手にテジを自分の部屋に連れ込むってよう…」
「はい?」
「そんな俺も入ったことのねぇチェリムの部屋になんでテジが先にようっ!ぐすっ」
「はあ…」
「んでなんか、結婚式までに仲良くなりたいとかいいやがってよ…今日連れに行く…っつーかもう連れてきたとかいいやがって…んな勝手なことしやがってって怒ったら…『そう言う事は1ラウンドでもKO勝ちしてから言ってよね』って…
その後もひどいこと言いやがってよ、あの胸なし女…・ぐしゅっ」
「ふうん…いいじゃないですか。チェリムさん素敵だな」
「何!チェリムに惚れたんじゃねぇだろうな!お前には狐がいるだろう!」
「惚れてないですよ。いいじゃないですか。テジ君とチェリムさんが仲良くなってくれれば」
「でもなんで今日なんだよ。俺が居ない時にわざわざよう…。テジが気を遣うじゃねぇか…」
「大丈夫ですよ。そりゃ最初は気を遣うでしょうけどテジ君ですからね…」
「あいつぁ苦労してんだ、小さいけどよぉ…ぐしっ」
「大丈夫ですって」
「心配だよううう」

そんなテプンの心配をよそに、チェリムのマンションではテジがけっこうくつろいでいた

「あの…チェリムさん…」
「なんでお母さんって呼ばないの!」
「…でででも…チェリムさん若いしきれいだし…お母さんって言われたくないでしょう?」
「ぐしゅっ…アンタって本当に気ィ遣ってばっかしでぇぇっうわぁぁぁん」
「げっ…泣かないでくださいチェリムさん」
「らから、お母さんって言ってごらん」
「いいです」
「なんで?!頑固ねっ!いいのよ気を遣わないで」
「あの…気は遣ってないです」
「じゃなんで?」
「ごめんなさい。僕のお母さんは…やっぱり一人だけです…」
「お…」
「だからってチェリムさんとお父さんが結婚することに反対なんかしません。チェリムさんがお母さんになってくれるのもすっごく嬉しいんです。でも…お母さんって呼ぶのには僕ちょっとまだ…抵抗が…」
「わかった!アンタの気持ちはよっく解った!よっしゃ。アンタの好きな呼び方で呼んでいいわ!まかしときっ!」
「は…」
「なんて呼ぶ?ヌナ?てっへっへぇ…ヌナにしちゃあ年が離れすぎよねぇ。アジュンマでもいいわよ。チェリムさんでも…。でも『チェリムさん』だと他人行儀よね。うーん。あ、それか『マミー』とかってのは?」
「…はあ…」『チェリムさんってこんなキャラだったっけ?僕なんかお父さんと話してるみたいな気分になってきた…』
「チェリムって呼び捨てにする?」
「そそそんな…」
「まあいいわ。考えといて。んじゃ、買い物に行こう。私、ご飯作る」
「えっ…チェリムさん、作れるんですか?」
「ん…あ…まあ…適当に…へへ」
「じゃ、僕、手伝います…」
「ほんとぉぉぉぉっ!助かるうゥ。実は…あんまりできないのよぉ。前にテプンが『テジは小さいのに料理がうまい』っていってたから…教えてもらおうと思って〜」
「…はあ…」

そして買い物に行ったテジとチェリム
何も考えずにぼこぼこインスタント物を放り込むチェリムにいちいち注意を与え、食品を選ぶテジ

「すごいね、テジ」
「…いえ…これぐらい普通の女の人はできると思います…」
「何よう、アタシが普通の女じゃないっての?!」
「はい」
「あんだとぉっ!」
「らってぇっ…お父さんと結婚したいって言うぐらいだもんっ普通じゃないよっ!」
「あはっ…あはははっ…あは〜んいや〜ん」
「何急にシナ作ってるんですか・・行きますよ」

テジはでっかいカートを押そうとして一生懸命だ

「あっそういうことは得意!まかせなって」

細いくせに力のあるチェリムは鼻歌交じりにカートを押す

帰りの車の中で、運転しているチェリムをまじまじ見つめるテジ

「あによ。テジもテプンと一緒でアタシに見とれてる?」
「あ…いえ…あの…・呼び方を考えたんですけど…」
「なになに?言ってみて!」
「でも…怒るかな…」
「怒んない!絶対!」
「…でもやっぱり失礼かな…」
「いい!親子なんだから失礼じゃないって。言ってみなよ!」
「…イヤだったら…やめますから」
「イヤじゃないわよ、テジが考えてくれたアタシにぴったりの呼び名でしょ?なに?」
「…ヒョン…」
「…」
「…やめます」
「…ヒョン?」
「…はい」
「…兄貴って事?」
「…へい…」
「…」
「ごめんなさいっ僕やっぱり伯母さんちに帰ります」
「テジいいいっ」

チェリム、いきなりテジを抱きしめる

「アタシはつまり、あんたの兄貴ってぐらい親しみを持てるって存在なのねっくううっ泣かせるじゃんかコイツゥ」
「あうあういやならっ」
「いいわ。ヒョンってよんで!チェリムヒョンねっひひっ」
「…」
「ちょうどいいわ、料理も下手だし家事もできないから」
「はい…あの…料理も家事も上手になったら…ヌナになってぇ…んで・・あの…僕が自然にそう呼べるようになったら…オンマって…」
「ぐふっ…ううっうえええんうえええん」
「あっヒョン!運転しながら泣かないでくださいっ!」
「テジぃぃぃっお前ってなんて可愛いんだよぉぉぉ」

すっかりテジのヒョンになりきったチェリムは、ますます男前になっていくのであった


◇BHC厨房_歓迎会準備編3 妄想省家政婦mayoさん
 
準備が整った頃にケータリングしたオープンサンドと手まり寿司が届いた…
ミンギは運びながらがデカイ口に1個手まり寿司を放り込む…
鼻の穴を広げてもぐもぐしているミンギを見て…ソヌも口に放り込んだ…
ソヌはもぐもぐしながら親指を立てて僕に頷いた…

隣の闇夜が僕をつんつん突っつく…
「どうした?…」
「マーケットでマカロン買ってきていい?…」
「あはは…いいよ…一人で平気?」
「ぅん…行ってくる…」
「ん…」

闇夜がEVに乗って閉じる瞬間僕もEVに乗りこみ…
ドアが閉じてから1Fまで降りる間…僕は闇夜の頬を包みずっと唇を重ねた…
1Fで止まると闇夜は僕の背中をとんとん叩き僕は唇を離した…
闇夜はくすっ#っと笑ってEVを降り…僕は折り返し40階へ戻った…
40階でEVが開くと左右からミンギとソヌが顔を出した…

「ハコん中で…なぁ〜にしてたのさ…」
「別に…送ってきただけだよ…」
「テソン君…顔が赤い…唇も赤い…」
「えっ#…」
「「ぷっ…」」
「ちょ…ちょっとぉー##」
「「あはは…」」

「ヌナ…何処行ったの?」
「ん…マカロン買いに行った…」
「そういえば…マーケットには…La maison du chocolat のマカロンがあったね…」
「そうです…」
「先輩…旨いの…そこの…」
「ぅん…カフェ…キャラメル…シトロン(レモン)…バニラ…フランポワース…゙ショコラ(チョコ)の6種類あるんだ…」
「先輩はもち…チョコ味?」
「そう…ショコラティエだけあって特にショコラ味はビターで美味しい…だよね…テソン君…」

ソヌはニコニコと僕の顔を見た…よっぽどのチョコ好きと見える…

「はは…そうですね…他のマカロンと比べて…クリームが多くて…生地とのバランスが絶妙です…」
「ぅん…そうそう…」
「彼女は…Laduree よりもLa maison du chocolat がお気に入りなんですよ…」
「ショコラ好きには堪えられない…」
「はい…かなり値段張りますけどね…」
「そうなんだよぉ…」
「もぉー先輩..チョコの話になると鼻の穴広がるんだからぁ…」
「ミンギっ##」
「…^^;;」


マーケットでパーティー用のマカロンと別宅用のマカロンを買った後…
リカーコーナーで別宅用にTANQUERAY NO.10を2本購入する…
ブラブラと店内を歩いていると…
カメラを下げたジホがいた…そぉーっと後ろをついて回った…

ジホはチーズコーナーで店員とああでもないこうでもないと喋っている…

「イゴ… イゴ…(これ…これ…)」

っと指さすと店員はお試し用のチーズを薄くスライスしジホに提供する…
ジホはモグモグして…「ぅ〜む…」と唸る…そしてまた…

「イゴ…イゴ…(これ…これ…)」

またジホは店員が差し出したチーズをモグモグして…「ぅ〜む…」と首を傾げて唸る…
で…店員に手を振ってその場を去る…何も購入せず…^^;;

次にジホはハム・サラミコーナーへで止まった…また…

「イゴ…イゴ…イゴ…(これ…これ…これ)」

っと指さす…店員はお試し用のプロシェートや腸詰め…生ハム等々…ジホに差し出す…
ジホはモグモグ食べる…「ぅ〜む…」と唸る…
で…また店員に手を振ってその場を去る…ここでも何も購入せず…^^;;おい!

私は笑いをこらえて後を付いていく…
次にジホが向かったのはフルーツコーナーだ…
丁度マスクメロンが店頭にカットされ置いてある…
ぱくっ#っと一切れ口に入れたジホ…もう一切れ…また一切れ…もぐもぐ…
「ぅ〜む…」と唸る…で…その場を去る…

たはは^^;;…また買わねぇーよ…このオヤジ…

ワインコーナーで試飲をしたジホは…うん#…っと頷いた…

お!買いか?

っと思ったら…くるりと振り返ってフルーツコーナーへ戻りメロンを2個購入した…
で…ハムコーナーで生ハムを購入した…やっと!買ったよ!

そこで私はジホの後ろから声をかけた

「か・ん・と・く##…」
「ぁぉ…な…なんだ…まよ君…び…びっくりするなぁ…」
「監督…お腹いっぱいなりました?」
「ぁふ…見てたの?ちょっとーぉ##」
「はい…楽しませてもらいました…ぷふふ…」
「人が悪いなぁーったく…」
「すいません…^^;;」
「まよ君…」
「はい?」
「これ…領収書…よろしくね…」
「たはは…わかりました…」
「さっ…御殿にお出ましと行こうかな…」
「はい…」

ジホと私はEVで40階へ戻った…


◇BHC厨房_歓迎会準備編4  妄想省家政婦mayoさん
 
闇夜がジホと戻ってきた…
ジホはソヌとミンギに手を上げて合図をし…チーフやスヒョンに挨拶をした後…
早速カメラを操作して準備を始めた…
闇夜はジホが調達してきたマスクメロンを切りながらにやにやしている…

「マーケットで会ったのか?」
「ぅん…あのね…(こそこそ…こそこそ…)…」
「…ぷはは…やりそうだな…」
「ね…テソンも見たかった?監督…」
「いや…僕は監督の後をそろそろ〜と付けてる君を見たかったね…たはは#」
「テソン〜^^;;…」

切り分けたメロンに生ハムを乗せ…冷蔵庫で冷やしておく…
粗熱の取れたスモークサーモンのキッシュをつまんで食べやすい様に細く切り分け盛りつけた…
キッシュは来てすぐ闇夜が準備した…

 パイシートを底の抜けるタルト型にはめ…ホイルを敷き重しを乗せる…
 一度200℃で15分焼き…重しを取って薄く焼き色がつくまで焼き上げる…
 タマネギのみじん切りをエシレのバターで炒め…
 少し冷めたところに生クリーム・牛乳・卵黄・を混ぜ白胡椒と塩で味を整える…
 そこにスモークサーモンと堅めに湯がいたほうれん草を細かく切ったものを混ぜる…
 タルト型に材料を流しグリエールチーズを乗せ…200℃で約20分…

 暖かくても冷めてもどちらでも食べれる料理だ…冷めたものはレンジでチンしてもいい…

冷製スープ2種はパンプキンとヴィシソワーズ…
本当はそれぞれかぼちゃとじゃがいもを使いタマネギと炒めブイヨンで煮込み…
フードプロセッサーにかけて冷やすけれど…
今日は時間がないので日本の北海道産のフレークを使いペックのブイヨンで溶かし冷やした…

冷やしておいたマグロのテリーヌを切って皿に盛りつけ…
生わさびをみじん切りにしたものを盛りつけた上にパラパラちらす…
鮫の皮のおろしで生わさびをすり…だし+薄口醤油に混ぜタレを作る…
タレをテリーヌの周りにすぅーっと流し…残りを上からさっとかける…

「mayo…これ…味見してないけど…旨いかな…」
「材料いいもん…まずくはないっしょ…それに…」
「それに?」
「テソンが作ったから…美味しいよ…」
「…^_^…(でれでれ)」

闇夜は買ってきたマカロンを紙ナプキンを敷いた皿に彩りよく並べる…
闇夜がショコラのマカロンを1個…つまみ食いしようとしているとき…
匂いを嗅ぎつけ…ソヌが覗きに来た…

「あっ!ずるいっ…」
「…^^;;…」

闇夜はソヌの手のひらにショコラのマカロンを置いた…
側に来たミンギがソヌの手のひらから…さっ#っとマカロンを取って口にくわえた…

「このやろう…ミンギ…返せっ…」
「ん…ぐぐ…」

ソヌはミンギがくわえたとこからマカロンを取り上げ…
半分になったマカロンをソヌは口に入れた…満足そうにもぐもぐするソヌ…

やれやれ…

闇夜はもう1個のショコラのマカロンを半分こにして自分の口と僕の口に入れた…
闇夜は何個かのショコラのマカロンを皿から外し…マカロンはチョコラ無しの5種類になった^^;;
よけたショコラのマカロンは闇夜とソヌ用になったのよ##

「そろそろ挨拶始まる?」
「みたい…」
「暖かいのは始まってから出そう…」
「ぅん…」

とはいえ…つまみ食いされるので…料理は運ばずにキッチンに置いていた…
goの合図でテーブルに皆に運んでもらおう…


ヒョンと僕  ぴかろん

ヒョンのマンションに戻った僕は、さっそく簡単な料理をヒョンに教えてあげた
ヒョンにニンジンを洗ってと言ったら…洗剤で洗おうとした
止めさせた
お米を研いでって言ったら…今度はちゃんと水でやったけど「白いとぎ汁がでなくなるまで」って言っておいたらしばらくすると泣き出した

「ヒョン、どーしたの?!」
「てじぃぃこのお米、いつまで白い水がでるのぉぉぉ」
「…もういいです…」

結局僕がやった
ヒョンは涙を拭きながら僕の手際を見学していた

一応炊飯器はあるらしい…

「でも使ったことなくてへへへっ…へへ…はぁ…」

あきらかにヒョンは落ち込んでいる

「ヒョン、大丈夫だよ。こういうのは慣れだから…」

僕はかける言葉がなかなか見つからなくて困ったけど、一応励ました

「ヒョン…次は…」

僕はかぼちゃを5ミリぐらいにスライスしてと頼んでみた
大変心配だった
かぼちゃは丸ごと買ってきたからな…
大丈夫かな…

ヒョンは包丁を上段に構え、まな板上のかぼちゃめがけて「きええ〜い!」という掛け声とともに振り下ろした

怖いよヒョン…

ばすっ!

包丁はかぼちゃに突き刺さった
的を捉える手腕は見事です、ヒョン…
でも、『突き刺す』んじゃなくて『切る』んです、ヒョン…

「あれ?抜けない…んしょんしょっくえええっ!」

ヒョンは力は強いので、かぼちゃに突き刺さった包丁を力任せに引き抜いた

僕は危うく首を斬られるところだった…
怖いよヒョン…

「これ…切れるの?」

ヒョンが困った顔をしていたので切り方のコツを教えた

「そうそう、ヒョン、うまいよ」

僕が誉めると途端にデレデレ顔になる
ますますお父さんと話しているような気がしてきた…

お父さん…男同士で結婚するの?

なぁんて思っちゃった
だって…ヒョン…本とは女だと思うけど…スハ先生より胸がないような気がする…けほんこほん…

お父さん…本当にキメたのかな?何のことか詳しくは知らないけど…

ヒョンはかぼちゃを2つに割った
『切った』というより『割った』が正しい

「テジぃぃ…切れたよぉぉぉ」
「ヒョン…泣かないで…」
「だって初めて成功した…」
「…よかったね…」

それからヒョンはかぼちゃの種を見てギャアギャア叫んだ

「かぼちゃって子沢山なんだ!」

…ヒョン…

「この種、どおすんの?」
「取って捨ててください」
「捨てるの?もったいない…」
「洗って乾かして炒れば食べられるけど…」
「…捨てよう…」

ヒョンはめんどくさがりのようだ…

種を取るだけでもうるさいうるさい
やれぬるぬるするだのこんなに沢山の種つけてアンタだのこのまま埋めればかぼちゃ畑ねだの…

僕はつい

「お父さん、馬鹿なこと言ってないで早くスライスしてよ!」

とぞんざいな口調で言ってしまった

ヒョンの包丁が止まった

「あ…ごめんなさい。お父さんと喋ってるような気になっちゃって…」
「…テジぃぃぃぃ!」
「あわわっヒョン!包丁っ包丁っ!」
「…あ…ごめん、アンタがあんまり可愛らしい事言うからツイ…」

ああ…僕に家族ができるのは嬉しいけど…『あの』お父さんが『二人』になるようなもんだ…
ヒョンは確かに見た目女の人でとっても綺麗で、確かにお父さんよりは『できる』と思うけど…ああ…

ヒョンがぎったぎたに切ったかぼちゃを牛乳とバターと砂糖で柔らかく煮る
ヒョンは、魔術でも見るかのような顔で鍋を覗き込む

…料理に関してはお父さんの方が上手そうだな…

「竹串で刺してみて、柔らかくなってたら火を止めて」
「あい…」

ズブズブ刺している

「あの、テジ…皮は堅いけど…」
「刺せる?」
「あい」
「じゃ、止めて」
「あい」

ヒョンは火を止めようとして間違えて大きくした

「うわわわわっ」
「ヒョン!」

僕は慌てて火を消した

「ヒョン!火傷しなかった?」
「大丈夫…」
「ビックリした〜。嫁入り前なんだから、気をつけてね」
「…」
「ヒョン?」
「テジィィィぐしゅっ」

…また泣く…

僕はすぐに泣くヒョンの肩をぽんぽんして、柔らかくなったかぼちゃをグラタン皿にならべた
そして上から蕩けるチーズを一杯乗せた
僕、チーズ好きだから…

ヒョンは目を丸くして僕の手つきを見ている
尊敬してるのかなぁ…困るなぁ…ヒョンは大人なのに…しかも本当は女なのに…

そして僕はオーブンレンジにそれを入れて『グラタン』ってとこにダイヤルを合わせた

「これで待ってれば出来上がり」
「テジすっごい!」
「…これはチョー簡単料理です…」
「ふううん…」

後はもう、豚肉のソテーとインスタントのコーンスープ、それからサラダで誤魔化した
手の込んだものなんて作れないしさ…
それに…豚肉炒めるのも大騒ぎだし…
サラダだって…きゅうり切るのが大変だった…
洗うときから大変だった

「ヒョン、野菜は水で丁寧に洗えばいいからね」
「あい」
「きゅうり洗って」
「あ…」

ヒョンの手が止まった
ヒョンを見るとなんだかニヤニヤしている…

ああお父さんそっくり…
どうせ変なこと考えてるか思い出してるか…

ああ…僕やっぱし伯母さんちに帰ろうかなぁ…

きゅうりを切る段階になって、ヒョンは「痛そう」だの「かわいそう」だの言い出した
何を考えてるんだか!
ホントにお父さんのお嫁さんにピッタシだ!

「ヒョン、お父さんにヒョンが『きゅうりみてニヤニヤした上に切るときになって痛そうとか可哀相とか言ってた』って報告するけど、いい?」
「だめっ!そんな事言ったらアイツ、つけあがるからっ!」
「は?」
「…けほんけほん…いや、まじめにやるわ…」

ヒョンといいお父さんといい、僕の教育上よろしくない事を考えたり言ったりするので、僕自身で気をつけなくてはならない…
同じタイプの人同士が結婚し、僕の家族になるので、僕の苦労は倍になるということか…ふうっ…

何とかご飯ができあがり、ヒョンにご飯をよそってあげた
メインは豚肉のソテーとかぼちゃのチーズ焼き
ヒョンは目をキラキラさせながら美味しい美味しいと言って喜んで食べた

子供みたいだ…
ヒョンっていうより…弟?…
それはいくらなんでもまずいよな…

食べ終わった後の片付けは

「私がする!」

とヒョンが言い張るので、してもらった
皿が三枚死んだ…

前途多難だけど…
すっごく楽しい…えへへ


スヒョクのお願い  れいんさん

スヒョクは窓辺のソファに方膝立てて座っていた
眼下に広がる景色を眺めているその横顔は無表情にも見えた

「スヒョク…」
「…」
「なあ、スヒョク、怒ってるのか?」
「…別に…」

あ〜あ…完全に怒ってるよ

「スヒョクってば、そんなに怒る程の事じゃないだろ?子供みたいに…」
「どーせ僕は子供ですよっ!」

あちゃ!しまった…
もう…スヒョクってば…
戦場で銃撃戦もやってた程の男が、なんでこんなに乙女ちっくなんだよ

「なあ…さっきのは…あの場はああするのが普通だろ?僕が情けないとこばっかり見せてたら、BHCにいられないじゃないか」
「ふん!ドンヒ君の前でいいかっこしたかったんですね」
「違うってば!」

もう…こうなったら強行作戦…

「なあ、スヒョク…」

僕はプイと横を向いているスヒョクの唇にそっと顔を近づけた

バチン☆

「痛っ!」
「ソクさんはいつもそうだ!キスして誤魔化そうとする!イナさんの処でもドンヒの処でも行っちゃえばいいんだっ!」
「なんだよスヒョク…どうしてそこでイナやドンヒ君が出てくるんだ?」
「だって、ソクさんは元々イナさんが好きだったでしょ?イナさんにはテジュンさんがいたから…だから僕の方を向いたんでしょ?」

はあ…これってまるで、男と女の痴話ゲンカだよな…

「なあ、スヒョク、僕がどんなにスヒョクの事を好きだかわかってないの?おまえと一緒にいられる様に…BHCにいられる様に頑張っているのがわからないの?」
「だって…」
「僕がイナとダメだったからスヒョクと…っておまえそんな風に思ってたの?」
「ソクさん…」
「僕はイナじゃなくて、スヒョク…おまえが好きなんだ。僕の心の中はいつもスヒョクでいっぱいなんだよ」
「ソクさん…」

おっいい感じ!
あと一押しだな…

「なあ…だからさ…ショーのパフォーマンス一緒にやってくれよ。おまえがあの衣装着てやらしく踊っているとこ想像しちゃうと、もう…僕の時限爆弾もそりゃ大喜びでさ…」

バチーンっ☆

「痛えっっ!」
「もう!ソクさんの馬鹿っ!」
「痛いよ〜スヒョク〜」

僕は強烈ビンタを受けた頬を押さえて座り込んだ

「スヒョク、ひどいよっ!なん…ん…」

そして僕はスヒョクに強烈ビンタの後の強烈ちゅうをもらった

「ん…スヒョク…」

スヒョクは頬を押さえていた僕の手の上に手を重ね、もう一方の手を僕の顎に添え、激しいキスで僕の唇を塞いだ
電撃ちゅうの異名を取る僕の指導の賜物なのか。近頃のスヒョクのキスにはこの僕も痺れてしまう

こんなキスをするくせに、いざとなったら乙女になるんだからな…
ひどいよな…

そう思いつつ、僕はスヒョクにリードされたままではいけないと
僕もスヒョクの下唇を噛んだり、吸ったりと攻めの体勢に入った
僕の唇がスヒョクの唇を分け入り、そのままスヒョクの舌に刺激を与える

「あ…ソクさん…」

いいよなあ…スヒョクのこの声…この表情…
きいっ!たまらんっ!

「ねえ…ソクさん…お願い…」

どき!
お願い?
えっ?いいの?
それは…ずっと…僕のお願いでもあるんだ…

「ソクさん…僕のお願い聞いてくれる?」

なになに?
聞く聞く、何でも聞くよっ

「ソクさんの…部屋に遊びに行きたい…」

「げっ!!!」

お願いって…それかよ…


宴のはじまり   オリーさん

監督が、買い物に出ていたmayoさんと一緒にやって来た
メロンと生ハムがおみやげみたい
領収書もらってる?なるほど、しっかり者だ
メンバーが全員集まり、料理も準備できたようだ
彼の合図で、テソンさんとミンギさんが順番にテーブルに運び始めた
みんながそれに吸い寄せられるように集まってくる
同時にその料理に歓声がわあっと上がった
彼が、ちょっといいかな、と声を上げた
「そろそろ始めたい。これ以上待ってると、試食で料理が終わってしまうから」
キッチンテーブルの下でテプンさんとホンピョさんが、ごほごほっと咳き込んだ

彼はまず、短時間で素晴らしい料理を揃えてくれたテソンさんとmayoさんにお礼を言った
全員二人に向かって拍手した
唇が赤くなっていたテソンさんが、今度は顔を赤くして照れていた
小柄で色白のMayoさんはその隣で静かに笑っている
二人合作の料理に満足しているようだ
唇の端にちょっと茶色いものがついているのは何?

彼は新人がたくさん入ったので早く店に馴染むように、そして、新人に負けないよう前からのスタッフも頑張ろう、というような事を小難しい言葉で簡潔に述べた
「新人がこんなにたくさん入るのは店でも初めてなので、どんな風になるのかとても楽しみだ
今回は祭の慰労も兼ねてし、珍しくオーナーのおごりなので、遠慮なく楽しもう。スヒョン、乾杯の音頭をとってくれ」
スングクさんとチュニルさんがモエ・エ・シャンドンのドンペリを注いで回った
ソクさんが二人の後ろについて回っている
最後にスングクさん達にもシャンパンが注がれた
スヒョンさんは、祭の時はごくろうさま、新人のみんなはどうかよろしく
とこれまた簡単に挨拶して、みなで乾杯した
僕は彼のちょっとななめ後ろに立ってグラスを上げた
場が一気になごみ、みな料理に突撃しようとしていた

彼が振り向いて、僕を呼んだ
もう一つ聞いてほしい、と彼がみんなにまた声をかけた
彼の方に視線が集まった
彼は僕の肩を抱きながら話し始めた
「みんなは知ってると思うけど、このマンションはミンの物だ
僕とミンはここで新しい暮らしを始めた」
「ミンチョルはホストの鑑だ。こんなマンションでヒモ生活だからなっ」
イナさんが茶々を入れ、みんながどっと笑った
彼は僕の髪の毛をくしゃくしゃしながら言った
「みんなも上手にいいパトロン見つけてくれ。とにかく僕とミンはそういう関係なので、ひとつよろしく。もちろん店では一応チーフと新人だけどね」
僕は顔が赤くなるのがわかって下を向いた

「お前、奥さんとはどうなってるんだよ」
またイナさんが突っ込んだ
「手続きが進んでいないので、色々あると思う。店にまた弟やら元奥さんやらが
出入りするかもしれない。その時はフォローをよろしく。これは個人的なお願いだ」
彼はグラスを上げて左の眉をピクリと上げた
「兄さん!どうなってるのっ!」
テプンさんがソンジェさんの真似をした
またみんなどっと笑った

スヒョンさんがじゃあ僕も、と声を上げた
みんなの視線が今度はスヒョンさんの方へ移った
スヒョンさんは隣に立っていたドンジュンさんの首に腕をからみつけた
「僕もドンジュンとステディな関係だから、ひとつよろしく」
特にホンピョさんとドンヒさんの方を向いてウインクした
「僕たちはミンチョル達のように、まだ同居しないけどね。ドンジュンがウンって言わなくてさ」
ドンジュンさんはフグの顔になっていた
「そんな事までみんなに言うなってのっ!」
その様子が可愛くて、またみんな笑った

「ハイハイハイハイっ!俺もあるのよっ!」
すでに口のまわりが汚れているテプンさんが手を上げた

「俺も、ついにやった!じゃなくて、結婚するっ!俺はノーマルだぞ」
ノーマルという言葉にみんな大笑いだ
「チェリムの親父さんにもOK貰ったんだ。後はここに新居を移すだけだ」
後ろからイナさんにぶたれた
「新居くらい自分で探せ!」
「イナさんとこみたいに家建てても吹っ飛んじゃたらやばいっしょ」
「うっさい!よけいな事言うな!」
イナさんがテプンさんの首を絞めた
「く、苦しいよっ!イナさんの反省を活かそうと思ってんじゃねえか。ゲホッ!」

「他に誰かみんなに報告しておきたいことは?」
彼がみんなに聞いた
イヌ先生とウシクさんはちょっと後ろの方で肩を寄せ合った
「ウシクとイヌ先生は休暇を取って、旅行に出る。ウシクは今まで店の細かいことを
色々やってくれたので、オーナーからのご褒美だ。その間、イナがヘルプだ」
「俺も色々忙しいよ。へんっ!」
「ということなので、イナに頼む」
「こらっ!」

「テジンは?何かある?」
「いや、今はいいよ。もう少し…後で」
テジンさんはスハ先生と寄り沿ったまま答えた

「最後になったけど、チョンマンが留学する」
みんなチョンマンさんを振り返った
チョンマンさんは密かにマカロンを一個口に入れたところだった
「ぐっ!」
「オーナーから許可が下りたそうだ」
みんなチョンマンさんに拍手を送った
「オーナーに仕事を色々言いつけられて、たぶん行ったり来たりの生活になるだろう
あまりこき使われないように気をつけて」
「チ、チニさんに会いに行くのら…」
口をモゴモゴさせたそうまま言って、みんなに頭をこづかれた

そんなこんなで、もう一度乾杯をして、やっとみんな念願の料理を口にした
テプンさんはもう十分だろう、と隅っこに追いやられ泣き出した

彼はマカロンを口にほおりこむと僕を振り返った
「これで公認のヒモだ。よろしく」


友情を深める  ぴかろん

「なあなあ、mayoさんとか…」
「はひっ?!」
「俺、ホンピョってんだけどさ」
「ああ…唯一オーナーが直接スカウトした…」
「ん…あのさ、あんた料理上手いな」
「ありがと。相棒が上手いから」
「相棒ってあの唇赤い人か?」
「げほっ」
「すげぇな。俺これからこんなうめぇもん食えるんだ!」
「…うん…でも食べる前に手を洗ってね。それとBHCの厨房は入っちゃだめ!」
「ええっなんでだよぉ」
「相棒のテソンはとっても神経質なの。だから他人に厨房に入られるともうお料理できなくなっちゃう」
「え」
「そうするとこんな美味しい料理もできなくなる」
「そりゃだめだ!解った。入らねぇ!」
「ん」
「んでよ、相談なんだけどよ…ごにょごにょ…とごにょごにょ」
「ん?…解った。あんたいい子だね」
「え?そうか?てへっ…なんか母さんに言われたみたいだ」
「母さん?!」
「あ…いや…違う…ヌナ…」
「…まあいい…用意するからちょっと待って」

俺はヌ…ヌ…ヌナ…うーん…ヌナなmayoさんに頼んでこのうめぇ料理をちっと弁当箱みたいなモンに詰めてもらった
それとちいちゃいお皿に少しずつ取り分けて貰った

まずその皿を俺はアイツんとこに持っていった
アイツはまだソファにふんぞり返ってた

おう、どうだ?
『ホンピョしゃん』
これ、食え
『ほっホンピョしゃんっ!』
ここにおいといてやるから、チーフに食わせて貰えよな
『あうあうっほほほホンピョしゃああんぐしゅっ』
だから泣くなって…俺ちっと用事あるから、また後でな…
『ホンピョしゃああんありがとぉぉ』

俺は皿をミソチョルんとこに置いてエレベーターに向かった

エレベーターを降りてさっきのコン…コン…さんとこに来た
幸い誰もいなかったんでコン…さんに声をかけた

「あのぅ…コン…」
「おや、先ほどの…」
「あ、俺ホンピョってんだ。よろしく」
「はい、ホンピョ様」
「これさ、上でパーチーやってんだけどよ、めっちゃくちゃうめぇからアンタも食ってよ」
「…ほ…」
「あんだよ、感激したかよってへっ」
「…ありがとうございますホンピョ様…。休憩時間に有難く頂戴いたします…」
「そんかわりよ」
「はい」
「俺にその…紳士になる方法を…ちょろっとずつ教えてくれよ」
「…私のようなものがご指導してもよろしいのでしょうか」
「そんな堅い口の聞き方すんなよ、タメ口でいこうぜ」
「それは…致しかねます…」
「あんだよう…ま、いいや。んでよ、ガムのことは解ったから他に、すぐできるようなことねぇか?」
「…食事の前、外から帰った時などには手洗いうがいを忘れずに…」
「…手洗いうがい…だな。サンキュ…コン…えっと」
「私も名前を申し上げましょう…。トンプソンです」
「トン…トンプソンさん?」
「はい。コンシェルジェのトンプソンでございます」
「コン…のトン…さん…。ちっとなんか紙に書いてくんない?」
「…よろしいですよ」

コンのトンさんはすらすらと名前を書いてくれた

「ありがとよ。んじゃ、それ、ほんっとうめぇから、バイバイ」
「バイバ…ごきげんよう…」

ちぃっ『ごきげんよう』っつーのかよっ

書いてもらった紙を見た



読めねぇ!

らって…横文字だっ!
わかんねえっ!きいっ!

まぁいいわ、あとでミソチョルにでも聞こう…

俺は人知れず40階に戻ったのら…


◇BHC厨房_歓迎会準備編5  妄想省家政婦mayoさん

僕たちはチーフの挨拶が終わりまたキッチンに戻った..
僕は闇夜の口の端についたマカロンの残骸を親指で拭い..舐めた..
闇夜も僕の口を親指で拭い..舐めた..

「…^^;;…^^;;…」

僕はカチョカヴァッロチーズを切り..EVオリーブ油でソテーする..
カチョカヴァッロチーズはフレッシュタイプのチーズで…
熟成が進むと塩気を感じられるようになり噛めば噛むほど美味しさが広がる..
おいしさを引き出すにはシンプルにきつね色になるまで両面焼くだけ…
そのまま食べても..薄くスライスしたバケットにのせて食べてもいい..

もう一つのフライパンでは油とにんにくを弱火でじっくり炒め香りを移した後
酢水にさらして水気を切ったれんこんを並べて両面きつね色にソテーして取り出す
練りウニを生クリームと牛乳で伸ばし蓮根の上に乗せてオーブンで焼き色を付ける
生ウニを最後に乗せて..バルサミコ酢を煮詰め..醤油を加えたソースをかけた..

闇夜は冷蔵庫からせん切りの野菜&白身の刺身の皿を取り出す..
高いところから胡椒と塩(ゲランド海の果実)を振った...高めからふったほうが全体に行き渡る…
塩は多いかな..と思うくらいのほうが食べたとき美味しい..
レモン汁をかけ..EVオリーブオイルをかけ…魚の表面をペタペタとして魚に味をなじませた..
闇夜が僕を突っついて.. 僕は一切れつまんだ..ちょっと塩胡椒を足してOK...
最後に闇夜はアサツキの小口切りをパラパラちらした..

闇夜が冷やしておいたマチェドニアにマラスキーノ酒を少量かけてボールを揺らす..
マチェドニアはイタリア風フルーツポンチ…ただドボドボとスプマンテやソーダを入れない..
東欧のバルカン半島中央部の地域で様々な民族が住んでるマケドニアから名付けられた..
マラスキーノ酒はチェリー・ブランデーと違って無色透明でじっくり抽出する濃厚なお酒だ…
フルーツの甘みと相まってフルーツポンチよりもお洒落で美味しい…
闇夜はいくつかの器にマチェドニアを分け…それらの器をトレイにまとめた..

また覗きに来たソヌがマチェドニアの苺をつまんで口に入れた..

「mayoさん..マラスキーノ酒使ったね…」
「はい…ホワイトキャラソーやコアントローでは普通ですし..ラムでは匂いがキツイ…」
「はは…そうだよね…はちみつ入れた?」
「はい…砂糖では舌にざらつきが残るから..」
「さすがだ…」

ソヌはそう言うと僕に向かって笑ったあと…
リビングのミンギを見つけ…人差し指をくいっ#くいっ#っと動かしてミンギを呼んだ..

「なんスか..」
「運んで#…ミンギ#」
「もぉー…先輩〜まぁだマカロン食ったの根に持ってんスかぁ?」
「あのね#…」
「えっへっへ〜」

ソヌとミンギはお互い顔を見合わせて笑い..4つの料理をテーブルに運んだ..

キッチンの入り口にあのホンピョが来た..
僕をちらちら見て..もじもじしながら闇夜と話していた...闇夜はくすくす笑いながら頷いて..
キッチンに別に寄せておいた料理を小さな皿に盛り..ふた付きの器にも料理を詰めた..
ホンピョはそれを持って…ミソチョルの処へ行き…EVに乗った..
EVに乗る前にホンピョは闇夜にデッキブラシみたいな歯をむき出しにして笑った..
てさぁ…僕もデッキブラシ…って事だよね…^^;;…ふい〜ん^^;;…

「あいつ…何だって?」
「ん?…これこれこういうこと…」
「あはは..そう..こ汚いけど..いい奴じゃん…」
「でしょ…でもさぁ…」
「何?」
「母さんだってよ…」
「ぷぷ…ぷっはっは…」
「んなに..笑わなくても…」
「ごめんごめん…でもさ…」
「何?」
「胸…触られるなよ…あいつ..むんずと掴むよな..」
「んなこと言うなら守ってよ..もぉー」
「わかった…っていうより..mayoが蹴飛ばすだろうな..」
「ぅぅ..む…」

入れ違いにシチュンが覗きに来た…

「相変わらず手際がいいな..テソン..」
「ふっ..そうか?」
「助手がいいからか?」
「そうさ…^_^…(でれでれ)」
「おーぉー…ダラけた顔しやがって…」

僕の隣で闇夜は料理済みの鍋や下がってきた皿をテキパキ洗い片づける..
闇夜の手が休まるのは側のコーヒーを飲みながらパクッとマカロンを口に入れる時くらいだ..

「あ…シチュン…お前に頼みたいことがあるんだ..」
「テソンの頼みは聞けねぇなぁ〜…mayoシならいいよ^_^…」
「あのなぁー…」
「冗談だって…何よ..頼みって..」
「シチュンさんとこのカフェって..パンメニューいまいちよね…」
「たはは…お調べ済みかよ…mayoシ〜…」
「…^^;;..ごめん…」
「確かにあんまし重き置いてねぇな…それがどうした…」
「パン屋始めたら…シチュンさんのカフェで使ってくれる?..」
「おぉ..いいよ…って..テソン..お前が作るのか?」
「いや…テックヒョン…」
「お?…って…いつもテスと一緒の..あの.おやっさんかぁ?ほんとか?mayoシ…」
「ぷっ…ぅん..評判のいいパン屋やってたのよ…」
「うそっ…信じらんねぇー..人は見かけによらねぇな…」
「僕も最初ビックリした..」
「で?いつからやるんだ…」
「ちょっと先だけど…たぶんやると思うからさ..そん時は頼むよ」
「おぅ..OKOK〜…」
「サンキュ..」
「いいってことよ…相乗効果でカフェも売り上げ上がるしよ..」
「メニューの相談僕ものるからさ…」
「ん..頼むぜ..」

闇夜は僕を見て笑った..僕も頷きながら笑った..


その頃のアタクシ達  ぴかろん

お久しぶり。アタクシの事、忘れてない?!
ちょっと、困るわね、忘れてもらっちゃ!
ア・タ・ク・シ…ヤン・ミミよぉん

アタクシ今、デラルス+αでニホンのお姉さまのショーを見に来てるの…
お姉さまのショーは素晴らしいわ
歌唱力もお色気もダンスもおしゃべりも抜群!
+αのソンジェ君も、目を…目を…
ちいっ、目が開いてるのかどうか解らないわっ!
とにかく目を輝かせて(ると思うわ)お姉さまのショーを見入ってるの
かなり熱心よ
どうしてそんなに熱心なのって聞いたら

「僕ニホンでデビューしてるんだ。写真集や料理本も出したしねフフフン」

って…
んまぁっ!アタクシにお呼びがかからないのはなぜかしらっ!
アタクシなら、『ユキサオリ・ピーターおねぇさま・そしてアタクシ』のグラデーショントリオで素敵な舞台でもトークショーでもなんでもお見せできるっていうのにっ!きいっ!
大体「美日々コンサート」のゲストがあいつよ!あのイ・ソンチュンだったのよ!きいっ!
なぜアタクシを呼ばなかったのかしらっ!きいっ!

あらっ無駄話してるうちにお姉さまのショーが終わっちゃったわ

「僕に足りないものがわかった」

え?何言ってるのかしらソンジェ君…
あ、おねぇさまだわ

「ちょっとミミ!」
「あらぁんお姉さま、素敵な舞台でしたわん」
「ばかっ!なんでソンジェ君なのよ!アタシはシウォン君の本物を連れてきてって言ったでしょうがっ!」
「あ…あらぁんだってぇん…そう変わりはないでしょぉ?」
「だめっ!第一髪型がこうじゃ…。それに…この子、音程がホラ…」
「あら、お姉さまっ、それは本家本元もダメじゃないの!」
「しいっ!そんな事言わないの!シウォン様はいいの!許されるの!でもソンジェ君はダメ!」
「どぉぉぉしてぇぇぇっ」
「さっさと連れて帰って頂戴!ご馳走なんかしないわよっ!」
「お…おねえさまぁっ」

お姉さまはプンスカ怒って帰っていかれたの…
どぉしてよ…いいじゃない。同じ顔してるんだから…
ダメ?
そりゃ下膨れに見えないこともないし…しつこい喋り方だし、何か勘違いしてるみたいだし、それに…泣くともう…ハニワだし…

でもホラ
分け目を変えたら少しは…少しは…。ぶーっ
やだアタクシちょっと吹き出してしまったわ…オホホホホ

ドラマの時にはとっても可愛く見えたのに…アタクシも今じゃBHC系のお顔の方が…コホン…こ・の・み…おーっほっほっほっ…
でもアタクシの永遠の恋人は、イ・ヨンジュン先生よ!

え?あのマジちゃんとつるんでたイ・ヨンジュン君?
あの子も中々のモノだったんだけどぉ、マジちゃんが
「彼はアタシのもの!ミミちゃん手出しちゃだめっ!」
って涙目で訴えてきたから仕方ないのよ…
ふうっ
アタクシの狙った獲物ったらみぃんなかっ攫われちゃったの…
リマリオ君も白夜クラブのあのジャバザハットとC-3PO親子に持っていかれたし…いいキャラだったのに…

でもかっ攫われたとたん、マイキーがイキイキしだしたのよ…ちいっ…

会長?会長はね、近頃髪型を変えたの…七三分けか真ん中分けか、それかあのBHCにいた、前髪揃えたあの子?
あの子みたいな髪にしてるのよ…

言ってもいいかしら…
あたくしめったにグチは言わないんだけど…

「トホホ…」

ほんとにトホホよ…
会長ったら似合わないわ…トホホ

「僕に足りないもの…」

あらやだ、忘れてたわ、この子ったら口角上げて目を見開いてどうしちゃったのかしら…

「ミミさん、解りましたよ。僕、ニホンでデビューしたのにどうしてサンヒョクより売れないか…
いや、売れているのにどうしてコンサートのお声がかからないか…。それは…それは…ダンスの実力が足らないからですっ!」



何言ってるのかしらっ!
ちょっとこの子、捨てて帰ろうかしらっ!
アタクシどうしてこんな子にミューズをあげちゃったのかしらっ!
それにお金もあげちゃったし!
あの時はどうかしてたのね…
今なら決して無駄金は使わないのにっちいっ!

ああ…会長ったら…髪が少しずれてらっしゃるのに…
太っ腹だわ…

あら、マイキーったら裏地に竜をあしらった素敵なスーツね…

おほほほ、それじゃデラルスそろそろニホンから脱出しましょうよ!

バンバラバンバラバンバラバンバラ…

ほらっ!アタクシたちのヘリが来たわっ!いくわよ会長、マイキー!
いいの!あのフクスケはほっといて!

…ショーの会場から去るデラルスの三人…そして取り残されたことにも気づかぬソンジェであった…


◇ Bon voyage...six....◇ 妄想省家政婦mayoさん

@o@//…「あぉぉ〜ん…」

テスは部屋を見て固まった..

岸壁にそびえ立つホテル最上階のこの部屋は一部が海側に少しせり出し…
前方と両側面の三方がガラス張りで..ベットが海に向かって真正面に配置されている

「う..うっわぁ##…」

テスは早速ベットに寝転がった..
枕に肘をついて顎を乗せ..目の前に広がる海を眺めている..
夜の海は月光が波の行く先を蒼白く照らし..空は満点の星が瞬いている..

俺はベット端に腰掛けサイドテーブルにあるスイッチで部屋の電気をすべて消した..
テスの隣に仰向けに寝転がるとテスも仰向けになった…
俺は手にしたリモコンで天井をかざす..

「何すんの?」
「ん…見てろ…」

可動式の天井が静かにスライドを始める..
迫り出した部分の天井が全開になると頭上に夜空が現れ..無数の星がベットに降り注ぐ..

「ひょっ…ぇぇ〜〜@o@」
「すごいだろ..」
「ぅん#..ぅん#..」
「もっと夜が更けると空気が澄んでくる…」
「星がもっと輝いて見えるんだね…」
「ん…」

テスは起きあがって俺のシャツのボタンを外し始め..自分もシャツを脱いだ..

「ぉ…ぉぃ…ちょ…ちょっと早くないか?…テス…」
「違うってばぁー…ちゃっちゃとシャワー浴びてゆっくり星を観るの##」
「ぁ…ぁっそ…そっか…ん…^^;;..」

俺はバスルームにズンズン引っぱって行かれた…
でもって…

「…ぁぁ…ぁん…ぁっ…はふ.」

俺はシャワーを浴びながら…ちょっとだけ…テスを…溶ろかした..


☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆


「ちぇみ…あれ…白くもやぁ〜っとしてる雲みたいなのってさ…」
「ん…天の川だ…」
「そっか…やっぱり..」

天の川はギリシャ神話の天の大神ゼウスの妻ヘラが子供のヘラクレスに乳を与えたところ..
あまりに強く吸ったので乳がほとばしり..天に流れ出したと伝えられている…ん…
それで天の川のことをギリシャ語で『ガラクシアル(ミルクの道)』英語で『Milky Way』と呼ぶ…
実際は淡い星たちの光が幾重にも重なり合って白い帯となって見えるんだがな…

「ミルクの道かぁ…ね…川を挟んだ2つの星は…」
「あそこと..あれだ…ひときわ明るい星が見えるだろ..」
「ぅん..」

夏の最輝星のベガ(織姫星)は天の川の西…こと座の右端に..
パートナーのアルタイル(彦星..中国では牽牛星)は天の川の西…わし座の真ん中に位置している…
アラビア語でベガは『落ちる鷲』アルタイルは『飛ぶ鷲』と呼ばれている

「ホントはどのくらい離れてんの?」
「んー…光の速さで言えば..14.8年だ..」
「そんなに…じゃぁさ…15年かけて会いに行って…15年かけて戻るわけ?」
「あはは…そういうことになるか…」
「ひゅぅ〜…」

「どれか..わかる星座あるか?」
「んっとぉー北斗七星はわかるよ..柄杓の端結んで5倍すると…北極星..」
「ん…そうだな..あとは?」
「北斗七星と北極星の間にある..竜座…ほら..僕..竜の頭になるって意気込んでたからさっ#..覚えた..」
「ぷはは…そうだったな…竜の頭になれんかったか..」
「鶏の鶏冠(とさか)くらいじゃない?首根っこ押さえられたけど…」
「だはは…あとは?」
「あれ…ほら…人が足曲げて手曲げてベタっとしてるみたいなやつ..ヘラクレス座..でしょ..」
「知ってるじゃないか..」
「あれは形がおもしろいから覚えた…殴られて倒れた時みたいじゃんか…」
「ぷっはっは…そっか…」


テスには黙ってるが…
猟犬座と子狐座というものある…
猟犬座は北斗七星の南に..子狐座はこと座の東側にあり..2つの星座はかなり距離が離れてる…
片道50年はかかるんじゃないか?…行ったら引き返さない方がいいな..つーか..戻れんか…ん…


「ね…ちぇみ..」
「ん…なんだ…」
「ちぇみは..いろんなとこで星を見てきたでしょ.」
「そうだな…北極星さえ見つければ何処にどの星があるかわかるし…」
「どこで見たのが一番良かった?」
「ん〜…北欧は空気が澄んで良かった..アフリカは凄かったな…」
「そっかぁー」

「テス..」
「ぅん?」

俺は隣のテスを引き寄せた..テスは俺の上に重なった..
テスの髪を掻き上げ..頬を両手で包んだ..

「いくら綺麗な星を見てもな…俺はいつもひとりだった…」
「ちぇみ…」
「俺は…お前と見る星を一番にしたいぞ…」
「ぅん#…僕も#^_^」

テスは俺にいつものように小鳥のようにkissを浴びせる..
俺はテスの額にkissを落としまた髪を掻き上げた..

「祭りの日..俺はお前に..寂しい思いをさせた..」
「ちぇみ…」
「…すまなかった..」

テスは何度も何度も首を横に振った..

「ちぇみ…謝らなくていい..」
「テス…」
「僕んとこに戻ってくるもん..絶対戻ってくるもん…」
「ん…」
「僕..誰も責めたくないんだ…凄く辛いのが解るから…」
「お前…」
「僕も泣いたらちぇみは哀しいでしょ..だから僕は泣かない…」
「お前ってやつは…」

俺は涙も流さずかすかに震えたテスを頭から強く抱いた…
抱いたままテスを下に敷いた..くまなくkissを浴びせた..
捉えに行くとテスは溶ろけ始め..吐息と叫びを繰り返す…
ちぇみは僕を捉えたまま半身を起こし抱えた…
僕はちぇみの首に手を回し..ちぇみに腰を支えられ大きく撓る…
僕が撓るたびにちぇみはもっと奥深く僕を捉えて離さない..
呻きの中で僕が名前を呼ぶたびに..繰り返すたびにちぇみは熱い吐息をくれる…
背中が大きく仰け反り..僕はそのまま目を開けた..
僕の頬に..瞼に..肩に..胸に..


星のシャワーが僕に降りかかる..止めどなく降りかかる..

テスは撓りを返し俺を見た..俺とテスは一緒に空を見上げた..

最後の瞬間……☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆……俺とテスに星の雨が降り注いだ..

きらきら煌めく星の雨でずぶ濡れの俺たちは光に包まれ..空に..宇宙に吸い込まれていった..

ちぇみ…☆.。.:*
ん?…。.:*・°
好きだよ…☆.。.:*
それだけか?俺はもっとだぞ…。.:*・°
僕も…☆.。.:*
ん…。.:*・°

横たえたテスは俺の胸ですぅ〜と眠りに入った…

空を見上げた..
ひときわ明るいベガ☆が俺にきらりん#と煌めいた..俺はふっ#と笑う…

俺は眠りに入る時..天井を閉じた..


ゲストルーム  れいんさん

新人の歓迎会のはずなのに、なんで僕ってこんなにこき使われてるんだ?
はあ〜…疲れた…
ホンピョはといったら…コンシェルジェの方と話し込んだり
チーフそっくりのぬいぐるみ相手に話しかけたり…
呑気な奴だぜ
ちょっと僕もここらでどこかにふけよう…

僕はゲストルームのドアを開けこっそりその中に入った
そして目についたソファにどっかと身体を投げ出した

ふうっと一息ついたところで背後に誰かの視線を感じた
僕は振り返った
窓から射す光で浮かび上がったシルエットのその人は、ベッドに腰掛け足を組んでいた

「ス、スヒョンさんっ!」
「やあ、ドンヒ君、だいぶお疲れの様だね」
「す、すみませんっ!すぐ向こうに戻りますのでっ!」
「いいから気にしないで。少し休んでいったら?」
「あ…あ…」

スヒョンさんと二人きり…
ど、どうしよう…
スヒョンさんと話すチャンスだけど…
ああ…でもスヒョンさん、ベッドに腰掛けてるし…
ここの人達はほとんどノーマルじゃないらしいし…
と、とにかく落ち着けっ

「あ、あのスヒョンさんはここで何を?」
「ん?…ドンジュンがテプンに連れ去られて手持ち無沙汰でね。ちょっとここでくつろいでいたところ」
「そ、そうですか。えっと…こちらは豪華なお住まいですね」
「そうだね。君は寮なの?」
「は、はいっ」
「そう。じゃドンジュンと一緒だね。でもあいつは僕と一緒にいる事が多いから寮にはほとんど帰らないと思うけど」
「そ、そうですか。な、仲がよろしくて何よりですっ」

僕は息抜きに来たはずなのに緊張でコチンコチンになっていた
と、そこへトントンとノックの音がしてドアが開いた

「おっ!先客がいたか」
「やあ、テジン、おまえも逃げ出してきたの?」
「まあね。キッチン手伝おうかと思ったけど、テソンが闇夜といい感じだから、邪魔しちゃ悪いと思ってね。スハもテプンに卓球に誘われて連れて行かれたよ」
「お前もなの?テプンはまるでピクニックにでも来たみたいだな」
「はははっ、気持ちはわかるけど。ところで、スヒョン、こんなところでドンヒと二人で何してるのかな?」
「て、テジンさんっ!ぼ、僕は今来たばかりでっ」
「テジン、せっかく今からいいコトしようと思っていたのに…」
「ス、スヒョンさんっ!」
「へえ〜じゃ、僕お邪魔しちゃったのかな?」
「お、お邪魔だなんてそんなっ!」
「まあ、いいさ。じゃ、テジンも来た事だし…三人で楽しむ?」
「た、楽しむってっ?」
「ふうん…いいの?じゃ何する?」
「ひいっ!な、何するって…」
「ん…ドンヒ君をあれこれいじって遊ぼうかな」
「ひいっ!」
「こっちに来客用のクローゼットがあるんだ。お前どれにする?僕はこれね」
「あ、ほんとだ。いろいろ揃ってるな。…僕はこっち」
「さあ、ドンヒ君、僕が選んだこのネクタイどう?」
「ス・スヒョンさん!」
「だめだめ、ドンヒ。こっちの方が似合うって」
「あう…テジンさん」
「テジン、センスないなあ…こっちの方がいいって」
しゅるしゅるしゅる…

「今着ているのに似合うのは絶対こっちだって」
しゅるしゅるしゅる…

あうう…僕はベッドの上で二人に挟まれ、しゅるしゅるとネクタイを締めたり外されたりした

こ、この場合…僕はどうしたら
幸せな状況かもしれないけど、かなり辛い状況ともいえる…

「「「あっ!」」」

ポタポタっ…

オーバーヒートしてしまった僕はとうとう鼻血が出てしまった

「「大丈夫?」」
「ら、らいりょうるれす…」

僕は急いで持っていたハンカチで鼻を押さえたが間に合わず、新品のベッドカバーには赤い染みがついた

「…まずいな、これ…」
「うん…ギョンビンに怒られるな…」
「あいつ、怒ると怖いからな…」
「ミンチョルも怒るかな…」
「ん…目つりあげてな…」
「それにさ…ドンジュンやスハに変な誤解されるかも…」
「…ん…とりあえず…こうしとこう」

スヒョンさんとテジンさんはそこらにあったクッションを置いてその染みを隠した

「さて、後は誰にも見つからない様に、この部屋から抜け出そう」

と、いうわけで、テイッシュを鼻に詰めた僕は
スヒョンさんとテジンさんと三人でコソコソとこの部屋から抜け出した
どうか、ギョンビンさん達に見つかりませんように…


ドンヒの観察  足バンさん

ノンヒいやドンヒえす!
さっきはスヒョンさんとテリンさんにオモヒャにはれてヒロい目にあいまひた
あ、今鼻にティッシュをふめてるのえ、こんなえす

ぽくは気をとりあおして
あのスヒョンさんが”ステリィ”と言い切ったノンジュンさんが
いったいろういう人間らおか観察及びレータ収集中えす

ええい!鼻ティッシュうざったい!ぺちん!
むはっすっきり!

ドンジュンさんはテプンさん達のところから脱出成功したようで
ひとり静かに座っているソヌさんの隣にぱふんと座った
僕には絶対話しかけらえないムードのソヌさんなんだけど
ちゃっかりと嬉しそうに握手を求めてる

「ドンジュンです!よろしく」
「よろしく」
「新人っていっても大先輩ですよね」
「新人は新人だよ」
「でもすごい存在感かましてますよ」
「そう?話しかけにくい?」
「うん…睨まれそう」

げっ!何てことをいきなり…メモメモ

「そうじゃないってわかったでしょ?」
「…」
「ん?言いたいことある?」
「うん…あなたすっごくセクシーですね」

ぎょええ!そそそんな展開ってあるのか?…メ、メモメモ

「悪いけど僕は…」
「あ、心配しないで。僕にはスヒョンがいるから」
「ふふ…大胆だね君って」
「最初はこんなキャラじゃなかったんだけどね。今じゃ本編とは別人になっちゃって
 あそこにいるソクさんなんて”ダビデ”だったんだから。あなたも気をつけてね」
「ありがとう憶えておくよ」

ソヌさんは頬に手を当てカッコよく苦笑した…ちょ、ちょっとこれもメモメモ
彼らの前にカメラを抱えたジホさんが立った

「君はドンジュン君だったね…舞台なかなかセクシーで良かったよ」
「ありがとうございます。監督はピンク専門ですか?」
「ぷっ」
「笑うなソヌ君。コホン…なんでそう思うのかな?」

「いや、なんだかそんな波動がユラユラ出てるみたいで」
「だから笑うなソヌ君…ピンクも何も…僕はひとの本心をえぐり出すようなものを撮りたいの」
「ふうん…たとえば?」
「そうね…ここにいるソヌ君の弱味は何だと思う?」
「はえぎわ」
「…」
「…」
「なに?何で沈黙なの?」

しょへえっっ…大胆さMAX…ううむ…メモメモ

「いやいいの。まぁ君みたいな本音タイプは撮影対象じゃないんだ」
「ちょっと監督!」
「ええ〜そんなぁ撮ってよ少しくらい〜」
「ひとに言えないようなことができたらいらっしゃい」
「言えない?あはは!やだっ監督!やっぱそういうの専門じゃん」バシバシッ
「い痛いよドンジュン君」
「あ、ギョンジンさんだ…すみません…じゃまたあとでね!」
「うんまたね」
「ひとに言えないこと溜まったら行くね!」

ドンジュンさんはふたりに投げキスをしながら向こうに行った
監督とソヌさんはおかしそうに手をあげた
ううむ…軽いのか?怖いもの知らずなのか?それとも全部計算済みか?

ドンジュンさんはポツンと壁際にいるギョンジンさんのところに行った
何気に近づいて観察観察

「どこ行ってたの?捜しちゃった」
「ちょっとテラスで沈思黙考」
「ね、考えたんだけど、ラブ君もここに住ませてもらったら?」
「…」
「いや?」
「今はそんなことまで考えられないよ」
「やだな…僕をコマそうとしたあの時の自信はどうしちゃったのよ」
「その節はどうも…」
「ドウモじゃなくてもっとシャキッと自信もって!あのキスはもう最高にすごかったんだから!」

キキキキス?そういう乱れた行動ありなのか?
複数自由交際及び交際重複または乱○ありということか?…メモメモ

「ギョンビンはね、あなたにかっこいい兄貴でいてほしいんだよ」
「ドンジュン…」
「そんな顔してちゃスーツが泣くよ、ね!」
「うん…みんなにバレバレで心配かけて悪いな」
「こうやってみんな助け合ってるのBHCのみんなって」
「そうか…ありがとう」

うぅぅ…いい話じゃないか…ぐすんメモメモ…
いじめたり癒したり…いったいどういうひとなんだろう…混乱してきたな
そういえば”悪魔”だの”天使”だのって書いてあったな
えっと…どこかにメモした憶えが…
ううむスヒョンさんはなんであの…あ…

「うあ”ーっ!」

「何やってんのさっきから…ドンヒ君」
「ドドドドンジュンさん!やっやっなななんでもにゃいです!」
「ずっと僕のこと張ってたでしょ」
「やっやっ”ドンジュンさんの魅力を探る”っていう研究してまして」
「で何で鼻血出してんの?」
「えっまだ出てますかっ」
「で何でネクタイ2本しめてんの?」
「えっ?!ぎゃーっっ!こっこっこれはっ」

ドンジュンさんは色っぽいキラキラした目で見て近づき
僕の耳元でささやいた

「言えないことができたらジホ監督のとこに行くといいよ」
「ひゃひゃぁぁ〜ん」

僕は情けない声を発してしまった
だだってドンジュンさんが耳をカプってしたんだもの
かかか感じちゃった
それにしても霊感でもあるのかっこのひとはっ!

「ふふ…かわいい…さっ飲みに行こう」
「あ、ちょちょっと」

僕はドンジュンさんに引きずられて行った
ネクタイを2本して
ポケットに他に2本のネクタイを突っ込んで

なんだかすごい職場に来ちゃったかも…ひぃん…


Holiday 2 ロージーさん

昼下がり…パオで彼とじゃれていたら…電話が鳴った

「もしもし…」
『#$%#$%#$%』

「スーツが出来たみたい…一時間後に届けたい…って…いいかな?」
「…僕は構わないよ…」

「はい…それではお待ちしてます」
『#$%#$%』

…まだ少し…時間があるね…
…パオのなかで…きちゅねが僕を待っていた…可愛い!

きっかり一時間後、テイラーの人が二人…キャリィに箱をたくさん載せてやって来た
これで会うのは三度目…前はオーダーの時と、仮縫いの時、その時の職人さんと、見習いの若い人…
衣裳部屋の大きな鏡の前で…僕と彼はスーツの細かい具合を見てもらった…
…ピッタリだ…程よいゆとりも申し分ない…彼を見たら…鏡の中の自分に陶然となっている、ヤバイ!
「ケホン…」
「とてもいいですね…ちょうどいい…ね?」
「…ああそうだね…すばらしい…ありがとう…」
「いいえ…私どものほうこそ、ありがとう存じます…こちら様のようにお似合いになられるお客様も、そうはおいでになられませんです
…職人冥利に尽きるとはこういう事でございましょうか…他の職人も皆喜んでおります…」

それからかなりの時間をかけてすべてのスーツをチェックした…なにしろ…スーツがそれぞれ五着…スラックスは二本ずつ…
ジャケットが二着ずつに、それぞれにスラックス…シャツが合わせて二十枚…
…選んだ覚えのないネクタイが十本…ああ…さすがにシャツはそのまま受け取ったけど…

もちろん「マダム」からのプレゼント…「就職祝い」だって…この他に「引っ越し祝い」にって、時計ももらったんだ…
パティックフィリップの「Ref.5117」彼はゴールドで僕はホワイトゴールド…ああ…

お店の人が帰った後で彼がうれしそうに言った

「このジャケット、着て出かけよう!」
「…はい…」
「今日は外で食事だ、いいね?」
「…はい…」
「いいこだ!」

それから僕たちは出かけた…少し買い物をしたあと…いつかのフレンチレストランで食事をした
彼はとっても機嫌がよかった…『よかった…』

…こうしてふたりの休日は終わった…


広がる交友関係 オリーさん

パーティです
チーフの、いいえ、ギョンビンさんのマンションはすごいです
おとうさんのおうちよりひろいです
チーフたちふたりですむなんてしんじられません、ソニョンさん
テソンさんとmayoさんが、すごいおりょうりをつくっています
ソニョンさんやジュンたちにもたべさせてあげたいです
マカロンというおいしいおかしがありました
ぼくはおみやげに4こだけいただいて、ナプキンにつつみポケットにいれました
こどもたちに2こづつです
ソニョンさんはさいきんあまいものはだめ、とこわいかおをするのでソニョンさんのぶんはありません
わたしもたべたかったなんて…いいませんよね、ソニョンさん

ソファのところにぬいぐるみがちょこんとのっていました
チーフがわがやのマスコットといっていました
かわいらしいですね
そばにいってみると、ちいさなおさらにたべものがのせてありました
こんにちは、かわいいぬいぐるみさん

☆こんにちは
え…
☆ぼくはミソチョルでしゅ
おはなしできるのですか
☆はい
ぼくはジュンホです。よろしく
☆きょうはおはなしできるひとがたくさんいてうれしいでしゅ
いつもはおはなししないのですか
☆ミンチョルさんもギョンビンさんもかわいがってくれるけど、おはなしはできないのでしゅ
そうなんですか。ぼくとおはなししますか
☆あのう、おねがいがあるんでしゅけど…
なんですか?
☆ごちそうをたべさせてくれましぇんか
いいですよ。このかわいいおさらですね
☆さっきからたべたかったんでしゅ
わかりました

ぼくはミソチョルさんにごちそうをたべさせてあげました

☆ ハムハムハム…モコモコモコ…オックン…

おいしいかった?
☆とってもおいしかったでしゅ。ありがとうでしゅ
どういたしまして。ところですごいおうちですね

☆そうなんでしゅ。ぼくもさっきみてびっくりしたのでしゅ
さっきって?しらなかったんですか
☆たかいところにいたものでしゅから
たかいところ?
☆はい
たかいところは、ここもそうですけど、ながめがいいですね
☆そうなんでしゅ。ながめがよしゅぎてこまりましゅ
ながめがよくてこまる?
☆はい…ちゅまり、しょの…ベッドのうえのほうだったのでしゅ
ベッドのうえ?
☆ちゅまり…しゅごいというか…せきめんでしゅ
チーフとギョンビンさんがなかよししてたんですか
☆しょうなんでしゅ。なかよししゅぎて…せきめんでしゅ
ぼくもソニョンさんとなかよしです
☆ソニョンさんてだれでしゅか?
ぼくのおくさんです。とってもびじんであたまもいいんです
☆しょうでしゅか。したら、ジュンホしゃんは…しょのどうでしゅか?
なかよしするかっていうことですか?
☆はい
ぼくにはかわいいこどもたちもいます。こどもたちもいっぱいあいしています
☆はい
なのでいっしょにねるのはかまわないんですけど…
☆けろ?
やっぱりソニョンさんとなかよしするときはふたりがいいです
☆そうでしゅか
こどもたちがぼくたちのベッドでねてしまってこまることもあります
☆なかよしできないんでしゅね
このあいだはソニョンさんがめをつりあげてこどもたちをしんしつからおいだしました
☆しょうでしゅか。ぼくはおいだしゃれたことはありましぇん
ミソチョルさんもいっしょなのですか?
☆いちどらけ3にんでとかいわれて…ひいん…せきめんでしゅ…
3にんでなかよしできたのですか。それはいいことです
☆れも、とってもグルグルで、もうジェットコースターにのってるみたいでした
すごいですね。ゆうえんちみたい
☆れも、くるしいというか、めがまわるというか…せきめんでしゅ
きっとチーフもギョンビンさんもミソチョルさんのことだいすきなんですよ
☆しょうでしょうか
なかよしのなかまになれるんだから
☆しょうか…
よかったですね
☆じゃあジュンホさんもこどもたちをなかよしのなかまにいれてあげてください
え…
☆だめでしゅか?
ソニョンさんがなんていうかな。でもなかよしだったらなかまにいれたほうがいいのかな。どうしましょう?
☆しょんなになやまないで…
どうしましょう…
☆ぼくはぬいぐるみだからなかまになれるんだとおもいましゅ
そうか。こどもたちはぬいぐるみじゃないですからね。ありがとう
☆どういたしまして
これからもチーフとギョンビンさんとなかよししてあげてくださいね
☆わかりました。はじゅかしいけど、がんばりましゅ

ケホンコホン…
「ジュンホ君、その我が家のマスコットと何してるの?」
「あ、チーフ、今ミソチョルさんとお話してました」
「何で名前を知ってる?」
「ミソチョルさんにおしえてもらいました」
「まじ?」
「ミソチョルさんはチーフとギョンビンさんのなかよしなかまでよかったっていってます」
「ケホンコホン、ジュンホ君、ほんとにミソチョルと話ができるの?」
「ジェットコースターのはなしをききました」
「???」
「3人でなかよししたはなしです。よかったですね、チーフ」
「ケホンコホン…な、何?」
「またなかよしなかまにいれてやってださいね、ミソチョルさんのこと」
「ケホンコホン…なかよしなかま?」
「じゃあ、ミソチョルさん、またね。バイバイ」
☆ジュンホさん、またきてくだしゃいね

「ミソチョル、君はお話できるの?」
☆ほんとはできましゅ
「何で僕とお話できないの?」
☆らってミンチョルしゃんとだとドキドキしちゃうもの
「僕もミソチョルと話してみたい」
☆らっててれくしゃいもの
「ミソチョルは僕のことみんな知ってるよね」
☆らからはじゅかしいもの
「今度は僕と話しようね」
☆したら、ミンチョルさんがはじゅかしいかも。ぼく、ジュンホさんにおはなししすぎちゃったかも…

…ろーしよう…

☆あっ!ジュンホさんがもろってきました。なんでしょう?
ミソチョルさん、おねがいがあります
☆なんでしゅか?
さっきいったことひみつにしてくださいね
☆なんでしゅか?
ほら、ソニョンさんがこわいかおしてこどもたちをおいだしたとか…
☆しょんなことでしゅか。だいじょうぶれす
ああ、よかった
☆あの、ぼくも…
え?
☆ミンチョルさんとギョンビンさんのなかよしなかまのこと、ひみつにしてくらさい
わかりました。だれにもいいませんよ。それにふたりのなかよしはゆうめいですから
☆え?ゆうめいなのでしゅか。しょうでしゅか
じゃあ、またあとでね
☆はい!
ミンチョルさんのおともらちはみんなやさしいひとばかりで、ぼくはとてもうれしいでしゅ…


不満と不安  ぴかろん

僕は今日から弟のマンションに転がり込む
その事をイナに告げなくてはと、やたらテンションをあげて頑張っているヤツのところへ行った

「だ〜か〜らっ!あいつらはもうすんげぇ仲なんだってば」
「すんげぇ仲ってなんなんだよ」
「お前如きがどんなに頑張っても揺るがねぇの!わかったか野良犬」
「野良猫んとこは揺らぐのか?」
「…」

あ…涙目だ…助けてやるか…
この野良犬、人の弱点を突きすぎるからな

「イナ…ちょっと」
「ギョンジン!」
「あ…もう泣き止んだのか?かっくいー兄ちゃんの兄貴」
「…もうちょっと人の気持ちに気を遣えよ、君」
「へ?何の事?」
「…いいよもう、イナを借りるよ。ちょっと話があるんだけど」
「…」
「来いよ」
「あ…うん…」

僕はぽっかりと口を開けている野良犬ホンピョを置き去りにして、イナを窓辺に連れてきた

「あのさ…僕…今日からここに住まわせてもらうことになった」
「…へ…」
「…悪いけどお前とずっと一緒にいるとさ…煮詰まるから…。お前もそうだろ?」
「…」
「しゃびしいとか言うなよ」
「しゃびしいっ!」
「…言うなって言ってるのに…」
「それに…なんでお前がここに…」
「だってさ、僕の弟のマンションだぜ。僕達はたった二人っきりの兄弟だし、弟が弱ってる僕のために一部屋提供してくれたんだ…」
「じゅるいっ!こんな豪華なとこにお前だけじゅるいっ!」
「…いつまでもお前んちに居候してるわけにいかないしさ…。もちろんここにだってずっとやっかいになるわけじゃないよ」
「…じゃあおれもとまる…」
「…」
「キツネに言ってくる!」
「ちょっと待てよ。僕は暫くお前と離れたいんだよ。一人になって考えたいんだ、ラブとのこと。お前だってそうだろ?テジュンさんのことゆっくり考える必要があるだろ?」
「…しゃびしいっ…」
「…僕だって寂しいよ…」
「ふんっ嘘つき!」
「そりゃ僕だって気心の知れたお前との方が、チーフといるよりは…。それに…あのその…もしもあいつらの寝室からその…いろいろと不都合な音が聞こえたりしたらさ…イヤだけど…」
「お前祭の前日にあいつらの部屋の前でドアに耳くっつけてナニの音、聴こうとしてたくせにっ!」
「…そ…そう言えばそんな記憶が…。でもでもでもさ…弟ばっかしこんな豪華ないいとこに住んでてさ、僕も少しぐらい豪勢な生活したっていいじゃないか。そう思わない?」
「しょんなら俺だって!親友のキツネがなんでこんな豪邸で放し飼いにされるんだよ!俺だっていい暮らししてみてぇよ!」
「…・落ち着いたら遊びにくりゃいいでしょ?」
「誰んとこに?狐か?それともお前?」
「…だから…ゲストルームに泊まらせてもらえるだろ?」
「じゅるい!ひどいっ!ちゅめたい!お前なんかきらいだっ!」
「…イナ…」
「…解ってるよ。俺もちゃんと考えなきゃいけないって事ぐらいさ…。ごめん…。ちっと寂しかっただけだよ…」
「…ごめん…」
「はぁん!いいよ!それよりごちそう食おうぜ!」

イナはまたハイテンションになって美味しそうなご馳走のそばに行き、次から次へと口に運んだ
動揺してるってすぐに解るな…
ごめん…
でも…離れて考えようよ…僕達

ご馳走を口に運んでいた手を急に止め、イナはだらりと手を下げた

どうした?食いすぎて喉になんか詰まったのか?

イナに近づくと、口いっぱいに食べ物を頬張ったまま、ぼんやりしている

「どうしたんだイナ…」

イナの目に見る見る涙が溢れ出した

「どどどどうしたんだよ…僕が出て行くの、そんなに寂しいの?」

イナは僕の話なんか聞いてない…
ポロポロと涙が流れ落ちている
イナ…どうしたんだよ…

僕はイナの肩に手をかけた

「…だめだもう…」
「え?」
「…遠くに行った…」
「…イナ?」
「…帰ってこないかもしれない…ほんとに…」
「…何言ってるのさ…ラブとテジュンさんの事か?」

イナはこっくりと頷き床にポタポタと涙を落とした

「何で急にそんな事いいだすの!お前信じてるんだろ?テジュンさんを!」
「ギョンジン…」
「ん?なんだ?どうしたんだよ…」
「…あいつら…ヤってる…」
「…は…」
「感じる…ヤッてる…今…」
「…は…。な…」

何を…と聞こうとして、やめた…
イナの言う事が解ったから…

そう…
とうとう…ラブとテジュンさんは…

そう…

イナはその場にへたり込んだ…
僕は動悸を抑えながら、イナを立たせて窓際の椅子に座らせた

イナは静かに泣いた
僕は、窓から見える夜景に目をやった
街の明かりが滲んでいて、とても…美しかった…

【98♪ふるえて眠れ by ギョンジン 】ロージーさん


◇BHC厨房_歓迎会準備編6 妄想省家政婦mayoさん

「出来た?」
「ぅん..」

テソンはオーブンから天板を取り出した..ふわ〜んとガーリックと唐辛子の香りが鼻腔をくすぐる…

天板に乗っているのは..鯛の頭のディアボラ…ディアボラとは悪魔風..もともと鶏肉料理の1つだ..
丸ごとの鶏肉を開き..焼いた形がちょうど悪魔の羽が広がった様に見えるところから名付けられた
薄造りで使った鯛の頭が2尾分あった..

「天然のいい真鯛だからさ..余すところなく使わなくちゃね..」

テソンはそう言って鯛の頭を使ってディアボラを作った..
鯛の歯の真ん中に包丁を入れ..頭を2つに切り開く..
塩(ゲランド海の果実)と胡椒でしっかりなじませてからヒレの部分は焦げない様にアルミで覆う..
レモン汁…にんにく..赤・青唐辛子のみじん切り..EVオリーブ油を混ぜ合わせたソースをかけ..
天板に鯛の頭を皮を下にして並べ180℃のオーブンでふっくらするまで焼く..

オーブンにディアボラをセットしてからテソンは網で鯛の皮を焼いた..
皮目を下にして焦がさない様にカリッっと焼く..1尾から2枚しか取れない皮も結構なごちそうだ..
平目..鰈..鯛の骨で取ったスープに細かく刻んだ野菜を入れ塩胡椒でシンプルに味付けする..

ディアボラと皮のパリパリ焼きを小皿に分け..バーコーナーのチュニルとスングクに持っていった

「お…いいんですか?」
「酒の肴にはぴったりでは?」
「「わぁ..うれしいな…」」

「君たちは飲まないの?何か作ろうか?」
「刃物使ってますから..まだ..」
「そう..またあの飲みっぷり見せてくれるかと思ったけど?」
「ぁは…^^;;..」

キッチンに戻り..テソンと並んでスツールに座った..
テソンはディアボラを食べやすい様に裂いて私によこす..

「どう?…」
「ぅん..最高#..身が甘くて美味しい#」
「はは…材料もいいからな…ん?…mayo..」
「何..」

テソンが顎でキッチンの入り口を指した…ホンピョがもじもじ立っていた..

「どうしたの…野良犬君…」
「ぁ..ぅ…ぅん…」
「ぷっ..ちょっと待ってね…」

母さん..じゃなかった..ヌナなmayoさんは魚の料理と小さなカップがのった皿を持ってきた..
折りたたみの椅子を広げて俺を座らせた..

「モゴ#(食べな..)」
「ぉ..ぅん……うめぇ…うめぇな..これ..」
「なかなか食べられないよ..これ..」
「え?そうか?」
「ん..料理人しか食べれない..」
「ふ〜ん…うめぇ..」

俺は食べながら中にいる相棒のテソンを見た..
俺を見てにこにこ笑ってくれた…俺がにぃ〜〜#っと笑うとブフッっと吹き出していた..

「ギョンジンさんに何か言われた?」
「俺よ…」
「ん…」
「人の気持ちわかんねぇーかな…」
「んなことないさ..ちょっと荒っぽいけどさ..」
「口悪ぃーのはしょうがねー…」
「ぷっ..ん…でもあんた友達思いだしさ..そのうち皆わかるって..ん?…」
「ぉぅ…」

ホンピョは食べ終わると椅子から立ち上がり皿をキッチンのテーブルに置いた
闇夜が濡れたタオルを渡すと..にぃ〜〜#と笑って両手を拭いて口の周りを拭いた..
僕にペコリと頭を下げ..今度は両手で頭を前に撫で..リビングに戻っていった..

闇夜はタオルを広げて..ぷ..ぷはは#と笑った…

「見て…」

ホンピョが手を拭いたタオルは真っ黒になっていた^^;;

「たはは…まいったな…」
「んでも素直に手拭いたじゃん..進歩進歩…」

闇夜はタオルを小さくたたみ隅っこに置いて手を洗うとまた僕の隣に座った…


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