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真実   れいんさん

僕はチーフに無理を言って数日の休暇をもらった
妻と話し合う為と僕がこれから住む家を探す為に
スハも同じ頃休暇をとって家に帰っていた
僕達はその事について何も触れたりしなかったが、お互いに少しずつ前に進もうとしていた

そしてその夜、僕は妻にすべてを話した
出産を控えたその時期に、そんな話をすべきかどうか迷いはあった

生まれてくる子は絶対に男の子よ
名前はホジンと名づけるの

そう話す妻に、僕は心を決めた
この子が生まれてくる前に僕達の事をはっきりさせなければ
偽りのない真実の元で新しい命を迎えよう
穢れのない尊い命の前で、これまでの僕の罪を告白し、贖罪しなければ…
そんな気がした
それが僕なりのけじめのつけ方だった

妻は静かに僕の話を聞いていた
これまでの事
兄への想い
妻への想い
僕が犯してしまった罪とそれゆえの苦悩の日々
そしてスハとの出会い…

妻がおもむろに口を開いた

わかっていたわ、あなたがテジンさんだって事…
聞くのが怖いという気持ちと、話してほしいという気持ち
私も心の中でずっと闘っていたの…
いつかこうなると思っていたわ
話してくれ…ありがとう

その言葉を聞いた途端、なにか堰き止めていたものが取り払われ
僕は溢れる涙を堪える事ができなかった

すまない…本当に…すまない…
すべて…僕のせいだ…
もっと早くに話すべきだった
君にこんな想いをさせる前に…
…こんな事になる前に…

いいえ…これでよかったのよ…
あなた私に再びホジンを与えてくれた…
私の中にはホジンの生まれ変わりがいるわ
これからはこの子と一緒に生きていく
…でもね、これだけは忘れないで
私達は家族である事…
姉弟である事に変わりはないのよ
これからもこの子を見守り続けてほしい
そして私もあなたが困った時には力になるわ
だから‥あなたはあなた自身を取り戻して
あなたの進むべき道を歩んで行って…

そう言った妻の顔は穏やかで聖母の様にさえ見えた
僕は両手を広げてありったけの思いこめて妻を抱擁した
妻も僕を優しく抱擁してくれた
それは姉と弟に戻る前の…男と女としての…最後の抱擁だったのかもしれない

そうしてお互いが
相手に兄の面影を探しながら、兄の幻影に怯えながら
暮らしていた僕達の奇妙な生活は幕を下ろした

最後まで、僕は彼女自身を愛していたのか、彼女は僕自身を愛していたのか
その答えは見つからなかった


凌駕  オリーさん

僕たちは簡単に荷物を片付けた後、買い物に出かけた
僕には前からお揃いで欲しいものがあった
ノース・ウィングのショッピングモールで僕はそれを見つけた
お揃いのパジャマ
彼が黒で、僕が白、シルクだ
彼は渋った
「いいじゃない、ひとつくらいお揃いの物があったって」
「揃いの物ならペンダントがあるじゃないか。あ、テジンに修理頼まないと」
「あれはあれ、これはこれ!」
「わかったよ、でもシルクじゃなくてもいいだろ。洗濯が大変だ」
「この軽いつややかな質感がいいんじゃないか」
僕はどうしても彼にシルクのパジャマを着せたかった
なぜって…
シルクの光沢に包まれた薄明かりの中の彼を想像してみて
わかるでしょ
「洗濯なら僕が手洗いするよ」
店員が笑った
僕たちはケホンと咳払いしてそのパジャマを買って店を出た

夕食の時間になっていた
彼はあるフレンチレストランの前で立ち止まった
「ここで食事しよう」
「高いからだめ」
「美味しいんだ」
「僕がラーメン作る」
「このところ来てないから食べたいんだ。ここのシェフのソースが絶品で…」
「フットランプの電気代心配する人が、どうしてこんなバカ高いレストランで食事しようなんて思えるの?」
彼を黙らせるには理詰めが一番効果がある
「戻って来て最初の夜だから奮発しようと思ったのに」
彼は睫をふせてうつむいた
役者が一枚上だ
「それならそうと、最初から言ってよ。おごりだろうね」
僕は彼の腕を取って中に入った

食事は美味しかった
メニューはすべて彼が決め、ワインも彼が選んだ
こういう場合はすべてまかせておけば間違いないから
そして僕はそれを堪能するだけ
彼の機嫌はすこぶる良かった

僕らは程よく酔って部屋に戻ってきた
まだ彼が見ていないジムとかバスルームとかを彼と一緒に見た
「これでジョギングしなくても済むね。毎日ここで汗を流せる」
彼は返事をしなかった
「一緒にやるからね」
彼は僕の方を見てふうんという目つきをした
憎らしい奴
カラオケセットには彼も驚いていた
「この替え歌集って何?」
「さあ、よくわからない」
「人名別って僕らの名前がある。スヒョンもドンジュンもイナも…」
「時々歌えってことじゃない」
替え歌集の愛の歌特集をパラパラ見ていた彼がにやりと笑った
「僕は18歳の彼がいいな」
「何それ?」
「知らないだろ。今度歌ってやる」
卓球台には彼も首をひねった
「ミンやるの?」
「やれと言われればやるけど…一緒にやってみる?」
「僕はやらない」
「何でもやらないんだね」
「好きなことはやる」
「我儘」

最後に僕は寝室のドアを開いた
先に彼を中に入れた
彼は入口近くで立ち止まってしばらく部屋全体を眺めていた
「この雰囲気、草原のイメージかな」
「ベッドもすごく大きいよ」
僕はそう声をかけた
彼はちょっと離れてパオ全体をしばらく眺めてから、
近づいて薄布をめくってベッドサイドに立った
彼もきっとすごく気に入っているに違いない
彼が僕を振り返って何か言いかけたとき、
僕は彼をそのまま押し倒した
だって、もう限界だったから…


埃にまみれて  ぴかろん

テジュンさんの寮の部屋の片付けは、死ぬほど大変だった
なんでこんなに整理してないんだよ!
なんでゴミをちゃんと捨てないんだよ!


俺は文句を吐き散らしながら物を片付け、ゴミはゴミ袋に入れた


しょうがないだろ?!この一ヶ月、こっちに帰ってないんだからっ!

…昨日食ったラーメン、賞味期限切れてねぇだろうな?!

んなもん大丈夫だっ!細かいな君は!

うわっ!ちょっと!俺の寝たベッド、カビはえてんじゃんかっ!きいっ!

一日ぐらい大丈夫だ!

うわわっこんなとこにっ…ぱんつが…
テジュンさ〜ん…勘弁してよぉ〜

…貸せっ!ゴミだっ!


こんな調子だった…
テジュンさんのイメージが…

冷蔵庫の中には得体の知れない物体が多数あり、即、ごみ箱行きだった…
いや、冷蔵庫自体、もう使えないだろう…
ベッドも捨てるらしい
そりゃそうだろう!カビはえてたもん!
布団も捨てるらしい…
絶対カビだらけだ…

ベッドをどけたらきっともっと『ぱんつ』だの『しゃつ』だのが落ちてるに決まってる…

本棚には小難しい本と一緒に…ああ…エロ本とエロびでおが…ああ…もう…
机の引き出しには…ああ…えろ…
もう何も言いたくない…
祭が始まるまでは、この人も『ふつーのおとこ』だったんだな…

そして飾り棚には香水とCDが一杯…


この本とCDと香水、どーすんの?!

持ってく

どこに入れるの?ダンボール?

うんにゃ、その鞄

そのってどの…

君の足元にあるやつ

…このきったねぇ鞄?スーツケースとかないの?

そっちには服を入れる

ああもうっ!いつこの片付け終わるのさ!

今日の三時までにここを出なきゃいけないんだ

そんなの無理!

無理でもやんなきゃ追い出される!

ひいいいん…


すっごい大変
大変すぎて何も考えられない
…だからテジュンさんは俺に手伝えって言ったのか…

ふとそう思った
けど感傷的になってる暇はもちろんない!
ぐっちゃぐちゃの汚い部屋を、あと数時間でなんとかしなきゃいけない

結構計画性のない人なのかな?
わっかんない、変な人だよテジュンさんって…

俺達は埃まみれになって、ようやくその汚い部屋をなんとかした


どーすんの?ベッドとか捨てるものとかは?

それはオ支配人に頼んである

きっとスッゴク怒るよ…

うん…まあ…いいじゃん、もう会わないし…

テジュンさん!いい加減!

てへへ…いいじゃん



さ、荷物持って、出発しよう

出発?

とにかくさ、銭湯に行って、身体を洗おう

うん…

その後は、君の行きたいとこに行こう。手伝ってくれた御礼だ

ふぅん…

考えといてね


テジュンさんは埃だらけの顔でにっこり笑った
俺達は寮の管理人さんに鍵を返し、挨拶をして、テジュンさんのぼろっちい車に乗った


今日の報告  ぴかろん

『てじゅ〜(;_;)
店に帰ったら野良犬がいた
そこら中にガムくっつけ回っててドアの鍵こわして俺にふられたんだとか待ちぼうけだとか言いやがってくそーっ(;_;)
ええんええええん

ソクのやつ、お前そっくりの男に拉致されたぞ!どういうこと?
気になるんだけどさ、その人が『ソクさんの住まいも僕の家らしいですね』って言ったんだっ
『も』ってどういうこと?!

でも…でも…お前こっちに来るんだって解ったから安心した

けどしゃびしいっ!(;_;)
お前何してんの?!しゃびしいっ!
野良犬にかまれたからしゃびしいっ!
野良犬は座敷ワラシなんだっ!きいっ!きったねぇの!
刑務所仲間だとか言って、俺より年下のくせにタメ口きいてくる!
きいッ!
俺のことヘンタイとか言うし!ええんええん

ところでな…
ギョンジン、俺んちに来た
心配じゃない?
俺達が何してもいい?(^^;;)

しないしない…できない…
俺もあいつもそれどころじゃねぇもん
特にあいつはさ…

家に来て、ラジオつけたらたまたまWait For Meがかかったんだ
あいつ、じいっと聞いててよ
引きつって泣いてた
そのうち突っ伏しておんおん泣き出した
俺、聞いてなかったんだけど、どんな歌詞だったっけな…
どうしたんだよって聞いても何にも言わない
何か言おうと口開いても、すぐにうぉんうぉん泣き出すし…

どんな歌詞だったんだろう…
ラブの事、思い出すような歌詞なのかな…
気になってさ…
お前、知ってる?
知ってたら教えてくれよな…帰ってきたら…

明日、新人歓迎会と研修会だってよ…
お前…まだ帰ってこないんだよな…
お前だって新人じゃねぇのかよ!馬鹿!ばか!

寂しいよ…ばか…
つまんねえ…お前がいないとつまんねぇ…ばか!』


Wait For Meか…
確か僕の持ってたCDにもあったはずだ、ホール&オーツ…
後で捜すか…

銭湯の脱衣所で、イナの泣きメールを読んでくすくす笑った

野良犬ってなんだ?野良犬で座敷ワラシ?
新人のホ○トかな?
どんな子なんだろう…イナを泣かすとは恐れ入る
ソクはヨンナムに連れて行かれたのかハハハ
ざまーみろ!
てめぇだけシアワセになんかさせるか!馬鹿め
僕も新人だろうって?
フ…
僕は…どうしようなぁ…
それは帰ってからヨンナムと相談して決めようと思う


ラブはとっくにフロの中に入っている
どこかのおじさんの背中を擦っている
おじさん受けがいいな…かわいいもん…
さぁてと…
いつになったら帰る気になるかな?あの子は…


◇まうむ..てそまよ..quatre 妄想省mayoさん

「どうした?」
「ん?ぅん…テソン.. 変?」
「ぷっ」
「やっぱ変なんだ..そうならそうって..出掛ける前に言ってくれればいのに..」

忠武路の映画街へ向かう途中..手を繋いでいる闇夜が落ち着かない..
あはっ..何故だか分かる?

闇夜が..スカート履いてんのっ#
トップスは韓服をちょっと今風にアレンジしていて..
ちょっと肩までの小さめのフラットカラーがついている
生地は少し張りのある織り模様の入ったカプサ(古くから伝わる絹地)で 直径6cm程の円模様がほんの数箇所配置してある..
円紋様の中は..雲や鳥草花が一つになって戯れていて
光の照らし具合でその紋様は隠れたり、現れたりする..
メドゥ(韓国の飾り結び)のボタンをあしらっていて..
伝統的でもなく..生活韓服でもない..
ドレッシーでもなく..カジュアルでもない..中間のデザイン
小ぶりのトートバックはトップスと同じ生地で作ってある

ボトムのスカートは織り模様のない濃い目のベージュのカプサ
チョゴリを真似てウエスト部分だけでプリーツを取っている
丈は膝下10cmくらいかな..
おもしろいのはスカートと同じ生地の細身のブーツを履いていた
ヘアスタイルは後ろでひとつにまとめ短いピニョ(簪)を2本差している

「ね..ブーツ熱くない?」
「そうでもない..通気性よくしてあるから..ね..おかしい?この服..」
「すごくいいよ..おかしくなんんかないよ」
「ほんとね#」
「ぅん..^_^ 」

僕は闇夜がスカート履いているのを見たことがない..
いつもの黒服を脱ぎ..ちょっとだけ薄化粧をしている闇夜は
いつもと違って…可愛かった..

映画街のひとつのシネコンでコメディの「マパド」を観た
ふたりで馬鹿みたいに大笑いしたり..ちょっとホロリときたり..
お互いに笑い涙を親指ハンカチで拭いっこする..
映画館を出てから近くのCDショップへ行った
僕が棚からCDを選ぶ..闇夜も棚からCDを選ぶ

「どうする?」と聞かれて顔をしかめて首を横に振ったり..
「こっちは?」と促してぅんぅんと頷いたり..
互いにそんなやり取りで時間をかけてCDを選ぶ. 「どうしたの?」
「ん..今日買ったCDは忘れないなと思っただけ..」
「ぅん..」
僕はショップの中でぎゅぅーっとハグしてち◎うぅぅぅーしたい衝動を押さえた

CDショップを出て新村駅近辺へ車で移動する..
新村駅近辺は日本の観光客が多い..
なぜならチーフの元「ビクトリーレコード」が近くにあるからだ.. 今は「シンナラレコード」に名前が変わっているけど店の作りは一緒だ..
新村駅から伸びている城山路に沿って梨花女子大学があり
城山路を挟んだ向かい側に僕の好きなカフェがある
聞くと闇夜も店の作りが好きでふらっとよく来ていたらしい

[パシフィック]..というそのカフェは1998年の韓国建築文化賞を受け
概観がちょっとモダンで内装はコンクリート打ちっぱなしの無機質な造りだ

夜遅くまで店は開いているが..食事や酒は出さない
静かに過ごすにはいいところだ
僕と闇夜はゆっくりとお茶を楽しんだあと安国駅近くへ移動した


◇まうむ..てそまよ..cing 妄想省mayoさん

「江南は行かなくてもいいの?」
「ん..いい..日本の観光客だらけだもん..」
「はは..」
「それに..金持ちだらけだ..」

確かに江南の..特に狎鴎亭・清潭洞界隈は
有閑マダム御用達の高級ブティック..漢江添いには高級マンションが立ち並ぶ
ここいらはparisやNYの最新の情報が集まる
そしてマダム達はこぞって最新の流行を競い合う

「mayo..嫌いか?金持ちは..」
「テソン..金の嫌いな人はいないよ..」
「はは..ぅん..」
「でも..裏で金が動くのを見てる方が楽しい..裏で動かす方が面白い...わくわくする#」
「たはは..mayo〜」
「何?」
「君はやっぱり..親父さんの血を引いてるのかな..」
「そうかな」
「ぅん..」

「mayo..ソウルの中心部って...paris20区に似てると思わないか?」
「似てる...大きな川を挟んで町並みが違う...人も違う..」
「ソウルは漢江の北..江北は歴史建造物が多い..昔からの人が多い」
「parisの左岸(セーヌ川の南)にあたるよね..
 昔から左岸に住んでるオヤジとかは..俺は右岸なんぞには行かん!...って口癖の様に言ってた」
「あはは右岸(セーヌ川の北)は高級ブティックだらけだもんな...オペラ座も右岸だし」
「ぅん...私は左岸の方が好き...江北のほうが好き」
「僕もだな..」

「parisに住んでたの?テソン..」
「昔勤めていたホテルの研修で3ヶ月いた..mayoは?」
「私..ひとりになってから有金持ってボヘミアンしたんだ..2年くらい..」
「たはは..放浪か..君らしいや..」
「ぅん..最後の7ヶ月くらい住んでた..」
「そっか..じゃ..あの絵の場所行った?」
「教会の裏の路地だよね..サンジェルマン大通りから北に延びるセーヌ通りとぶつかるあたり」
「僕もその場所だと思った...絵と同じ看板があった..」
「やっぱり..ぁぁ..すっきりした」

闇夜は車の中で嬉しそうに笑っていた..
景福宮と昌福宮の間に位置するの安国駅界隈で車を降りる
闇夜は...仁寺洞通りの[Coser]..という店に入った
コセルとはスペイン語で「針仕事をする」という意..
ここは日本の顧客も多く..現代風にアレンジした韓服をデザインしている
闇夜はここでデザインを参考にし同じ生地を残反で捜し...自分で縫うか知り合いに頼む
今日の服もそうらしい..恐れ入る..

少し早い夕食は安国駅から南に延びる三叉路からちょっと入った..[閔家茶軒]..
李朝時代最後の王妃..閔妃の一族の家を改装した店だ
伝統的な韓定食と韓洋折衷の店で..僕はたまにここの料理を参考にする
内装も伝統的な部分と西洋文化を取り入れた時代を感じさせる
撮影にもよく使われる店だ

僕と闇夜はそれぞれ違う料理を注文して分け合う..祭りの間もそうしてきた
その方が色々な料理を少しづつ堪能できるからだ
最後のお茶を飲みながら闇夜が言った

「楽しかった..」
「僕もだ..また時たま出掛けよう..」
「ぅん..」
「帰りに買い出しして帰ろう..冷蔵庫が空っぽだ..」
「わかった..」

テソンとデパートの地下で必要なものを買い出し..
テソンが「もう一軒行くね...」と買い出しに向かった先は..
RRH1階の高級スーパーだった

「ぉ...ここで買うの?」
「買いたい物があるんだ」
「そう...」
「どうかした?」
「ここ」
「ん...」
「ミンミンの住居だ..」
「えっ...こ..此処ぉ?..な..何故知ってる..って聞くだけ無駄か」
「ふっ..」

テソンはここでしか買えない食材をたっぷりと買い込んだ..
別宅に帰るとはるみが駆け寄りるみゃぁ〜とくちゃくちゃの顔をしながら迎えてくれた..


Waiting  ぴかろん

銭湯で埃と汗を流してさっぱりした
この後どこへ行きたいかと言われてもなぁ…

「あ…そうだ、スヒョンさん御用達のあの海辺のリゾートホテルのスウィートルーム!」
「…」
「なによ!俺の好きなとこに連れてってやるって言ったじゃない!」
「…。そんな近くの他のホテルはなぁ…。それにスウィートって…。ホテリア・ホテルのスウィートじゃダメ?あそこなら優待券あるし…」
「…」
「…ダメか…」
「ホテリア・ホテルには戻りたくないっ!」
「…だよなぁ〜…」

テジュンさんは苦笑いしてアクセルを踏み込んだ

「どこ行くの?」
「ん?…お望みの場所…」
「え…ほんとに?!」
「しょうがねぇだろ?」
「…イヤならいいよ…」
「イヤじゃないけど…。ラブ君がきっと窮屈な思いするぞ…」
「…へ?」

テジュンさんは少し目を細めてCDをかけた
流れてきたのはホール&オーツ…
それも…

Wait For Meだ…

「なんだよっ!やめてよこんな曲!」

俺はCDをオフにした

「聞きたいのに…」
「俺は聞きたくない!金輪際聞きたくないっ!」

テジュンさんにもらったセーラムを取り出して口に咥え、イライラと火をつけた

「なんで聞きたくないの?」

俺は一服吸ってから、ふうっとテジュンさんに煙を吐き、テジュンさんを睨んで言った

「なんで?!わかってるじゃん!あいつを思い出すからだよ!」
「なんで?」
「なんでって…テジュンさん見てたろ?俺が祭の舞台でこの曲使って踊ったの!」
「うん。色っぽかったな」
「じゃあ解るじゃん!」
「解んないな。なんでこの曲でギョンジン君を思い出すのさ」
「言わないでよ名前!」
「なんで怒ってるのさ」
「…」
「関係ないだろ?君この曲が好きだからこれで踊ったんじゃないの?」
「…そうだけど…」
「じゃ、ギョ…彼とは関係ないだろ?」
「…でも…」

そうだ
確かにこの曲とおじさんとは関係ない
でも
俺にとっては…この曲は…

テジュンさんはCDをオンにしてWait For Meをかけた
俺は押し黙って煙草をふかした

聞きたくない…
聞きたくないよ…


『真夜中の時が過ぎ去っていく
 恋人たちの魔法の時間は尽きようとしている
 君は一番素敵なものを僕にくれたんだね
 もう一度チャンスがあったなら
 耐えられないことなんてなくなるのに

 どうか僕を待っていて
 そんなのは過ぎた願いだと思うけど
 どうか僕を待っていて
 その灯りが消えかかってるって解っているけれど

 君はどっちにでも行ける
 そこにいる方が楽じゃないか?
 チャンスが巡って来たときに、君はどうするんだろう
 けど解って欲しい、僕がどれほど君に傍にいてほしいか
 僕は怖いんだ、僕がいなくなったら全てがダメになっちゃうんじゃないかって

 どうか僕を待っていて
 そんなのは過ぎた願いだと思うけど
 どうか僕を待っていて
 その灯りが消えかかってるって解っているけれど

 それは愛の仕業、なのに僕達の愛には実りもない
 けど僕等が過ごした時間は何かのためになったはず
 どうか僕がしでかした過ちを許してほしい
 もし僕が君を待っていないと思ってるのなら
 君は知らなきゃならないことがいっぱいあるんだ…』


「…もういい…」
「いい曲だね」
「…」

なんなのさ…
何が言いたいのさ…
この曲がなんだって言うのさ!

俺は噴き出した涙を拭うのも嫌だった…


イナの部屋で偶然聞いたWait For Me
僕の心に突き刺さる歌詞
なんてこと…
お前、解ってたの?
解っててこの曲を選んだの?

まさか…

どうしてこんな…
どうして…
こんなことになってしまったんだろう…

お前はテジュンさんとどこかへ行ってしまった
もうダメなんだろうか…
僕はお前を待っていても無駄なんだろうか…

お前はテジュンさんを選んで、テジュンさんに慰められて、新しい愛を得るの?
僕はこんなにもお前の事を待っているのに…
お前はもう帰ってこないの?

あの時お前は僕のことをずっと待っていてくれたんだ
そして僕に愛を与えてくれたんだ
なのに
なのに僕はそれを…
自分の手で打ち砕いてしまった

なぜ僕はイナの名前を呼んだのだろう…
なぜ僕はお前を疑ったのだろう…
なぜ僕はあの大切な時間を覚えてなかったのだろう…
なぜ僕は

あの時テジュンさんの部屋に入ってしまったのだろう…

僕はWait For Meが終わった後もずっと泣き続けた
ラブの事を思い続けて気が狂いそうなぐらい泣き続けた
イナが何か話しかけてきても何も答えられなかった
夜までずっと…繰り返し泣いていた


少し買い物をしてくると出て行ったイナが戻ってきた
大丈夫か?と僕の顔を覗き込んだイナを押さえつけ
僕は両手を伸ばして首を絞めた

「ギョ…ンジ…ン…何…す…」
「なんで僕を誘った!…なんですぐに帰らせてくれなかった!なんで!なんで…」
「…く…あ…ご…ごめ…う…」

苦しげに目を閉じたイナを見て、僕は両手を離した

「く…はぁはぁはぁ…ごめん…ごめんギョンジン…ごめん…はぁはぁ…」

イナは目を閉じて寝転がったたまま何度も謝った
イナが…イナだけが悪いんじゃない…
ううん…イナが悪いんじゃない…
全て僕が悪いんだ

「…すまない…すまないイナ…ごめん…ごめん…」

イナの胸に縋って泣き続ける僕は、愚かな男だ…
人のせいにしてばかりだ…
何も変わらない…
名前を取り戻したって僕自身は何も変わってない…
ずうっと愚かなまんまで、ずうっと卑怯者で…
そうして大切なものを失くしてしまうんだ…


『どうか僕がしでかした過ちを許してほしい
 もし僕が君を待っていないと思ってるのなら
 君は知らなきゃならないことがいっぱいあるんだ…』


ラブ…ラブ…
帰ってきてラブ…
僕の懺悔を
お願いだから聞いてラブ…ラブ…


【81♪The Rose 】ロージーさん


凌駕 2 オリーさん

ブラウンの柔らかな絨毯の向こうにパオがあった
ミンが後ろからベッドもすごく大きいと言った
僕は近づいてパオの薄布をめくってみた
本当に広いベッドだった
レスリングでもできそうだね、
ミンに言おうとして振り返った途端、
いきなり押し倒された

ミンは僕を抱きすくめたまま、
体を回転させてベッドのまん中まで僕を運んだ
僕たちは互いに服を脱がせ絡み合った
僕がミンのボタンをはずしてシャツを脱がせようと
肩に手をかけると、
ミンはその手を払ってまた僕を押し倒した
そして僕を組み敷いて上になった

上からじっと僕を見つめた後、
僕の両手首をゆっくりと握った
僕は大の字になった格好で、そのまま唇を塞がれた
ミンは僕の唇を激しく求めた
何度かミンを抱きたくて手を動かしたが
そのたび押さえつけられた
僕は性急なミンのキスに息がつけなくなった

ミンは唇を離し、僕の耳を噛んで囁いた
「今日は何もしなくていいよ」
「何?」
「みんな僕がするから」
「え?」
「だから全部見せて」
ミンは僕の首筋へと唇を這わせ、喉をむさぼり
そして胸に吸いついた
僕は思わず顔をのけぞらせた
すかさずミンが僕の顎をとらえ軽く歯をたてた
僕は顔をのけぞらせたまま、首を振った

「舌を…」
「え…」
「舌を出して」
言われたままに舌の先を出すと、
ミンの舌がたちまち絡みつき僕の中へ攻めてきた
その激しさに僕はまた呼吸が苦しくなった
同時に沼の底に引き込まれるような
妖しい快感におそわれた

ミンの唇がまた首筋から胸へ下がり、
今度ははだけたシャツがまとわりついている
脇の下まで這っていった
僕は思わず目を閉じくぐもった喘ぎ声をたてた
押さえつけられている手がもどかしかった。
「ミン…手が…」
返事をするかわりに、
ミンは掴んでいる僕の手首に力を入れた

僕の胸にミンの胸が微妙な間隔で重ねられ、
静かに動きだした
胸と胸がかすかに触れ合う感触に、
僕は鳥肌を立てて震えた
だめだという風に首を振った
「ミン…もう…」
ミンは僕の顎に舌を這わせながら囁いた
「だめだよ、もっと違う顔を見せて」
僕は声にならない声を上げながら、
ずっとミンに翻弄されつづけた

突然ミンが掴んでいた手を離して、僕の顔を両手で包んだ
「こんな顔を見たかったんだ」
ミンは髪をくしゃくしゃにして僕の頭を抱いた
やっと自由になった僕の手は、ミンを抱くことも忘れ、
シーツの上に投げ出されていた

「もういいよね」
ミンはまた僕の手首を掴み、少し体を下へずらした
そして今度こそ本当に僕を攻めてきた
少しまどろんでいた僕はまた震えだした
絶え間なく喘ぎ、首を振り続けた

「僕を呼んで」
ミンの声がまた上から響いた
「僕の名前を呼んで」
僕は言われるまま、
かすれた声でミンの名前を呼びつづけた
「そう、もっと見せて」
目を薄く開けるとミンは僕の顔を見ていた
「全部見せて」
これ以上何を見せればいい?
僕は…もう…
かすんでゆく意識の中でもう一度ミンの名前を呼んだ

彼の顔が切なく歪むのをずっと見ていた
わずかに開かれた唇から僕の名前がほとばしっている
くらくらするほどの快感が僕を包んだ
全部見たいんだ、もっと見せてよ
あんな顔も、こんな顔も
僕だけに…
僕が動くたびに、
彼の顔は歪み、悦び、高みへと昇っていく
彼がいやいやをするように首を振るたび、
僕もどんどん昇っていく

僕だけだよ、僕だけにその顔を見せて
掴んでいる彼の手首に力を入れた
彼の唇の端から僕の名前がこぼれ、体が小刻みに震えた
僕は悦びに震えながら彼を解き放した
彼は大きく体を反らし、
かすかに微笑みを浮かべたまま落ちていった
僕はかろうじて踏みとどまり、
彼が落ちていくさまを見届けてから、
静かに彼の上に倒れこんだ

しばらくの間、彼の胸の上で心臓が波打つ音を聞いていた
彼は目を閉じたままで瞼が少し震えている
僕はそっと彼の顔に手を添えると瞼に唇を当てた
彼は静かに目を開け、焦点の定まらない視線を僕に向けた
ああ、そんな顔もすごくいいよ

僕はゆっくりと、彼の乱れた髪を手で梳いてやった


【82♪ダーリング】(勝手にロージーの愛の世界8) ロージーさん

【83♪エスメラルダ】(勝手にロージーの愛の世界9) ロージーさん

【84♪シルビー・マイラブ】(勝手にロージーの愛の世界10) ロージーさん

【85♪Follow me】(勝手にロージーの愛の世界11) ロージーさん


海辺のホテル  ぴかろん

テジュンさんは俺を海辺のリゾートホテルに連れてきてくれた
俺はさっきの「Wait For Me」のせいで、泣きはらした目をしていた
なのに俺じゃなくてテジュンさんがサングラスをして、なんだか気まずそうな顔をしてフロントへ向かう

「人気のホテルだから飛び込みじゃ泊まれないかもしれないよ」
「…なんでサングラスしてるの?」
「あ、そうだ…君もしなさい」
「…」
「目が腫れてる」
「いいよ」
「して」
「いいよ!」
「お願いだからして!」
「…」

なんか真剣にお願いしてきたから俺はしぶしぶサングラスをかけた

「なんで?!」
「…泣かせたと思われるとさ…ちょっと…まずい」
「泣かせたんじゃん!」
「…ごめん…」

なんなんだよ…

テジュンさんは俺をロビーのソファに座らせると、宿泊の手続きをしにいった
フロントで何やら親しげに話している
知り合い?


あ、そうか…
テジュンさんはホテリア・ホテルの総支配人だったんだ…
このあたりじゃ顔も知られてるってわけだ…
そうか…

連れの若い男が泣いてるなんて噂になったら…
そりゃヤバいかも…
けどもう辞めたんじゃん!いいじゃん別に!

俺はサングラスを外すと、泣き腫らした目で周りを見つめた
ベルボーイが俺の方を見ている

何?
そう、俺、あの人の連れだよ
泣いたの
泣かされたの!
ひどい人なんだよあの人…

「行こうか」

テジュンさんが帰ってきた
俺がサングラスを外しているのを見てちょっと戸惑ってた

「…ツインでいい?」
「ダブルでも構わないよ」
「ばか」
「シングルでもいい」
「…行くぞ!」
「シングルのがいいな。くっついて寝れるもふがっ」

テジュンさんが俺の口を押さえた
そんな事すると余計注目浴びるのに…

案の定フロントの人やベルボーイたちが驚異の目を向けた

「ご…ご案内いたします」
「ああ、すまないね」

案内してくれたのはベルボーイじゃなくて、フロントのマネージャーだ
さすがだな、テジュンさん… もう辞めたんだけどな…総支配人は…

「テジュンさん、視察ですか?」
「いえ。プライベートです」
「こんな近くのホテルにお泊りとは…。我々のホテルに何か参考になるようなところがおありですか?」
「…ご心配なく。僕はもうホテリア・ホテルを退職しましたから…」
「…え…」
「転職したんです。いえ…するんです…だな。今はちょっとリセット中」
「…なぜ…」
「一身上の都合ってやつですよ」
「…貴方ほどのお方が…。ホテリアさんはさぞかし残念がられたでしょう」
「いえ。僕はもう、使い物になりません」
「何をおっしゃいますか!…もし…もしその気がおありでしたら、うちのホテルで…」
「いえ、新しい仕事をやってみたくなったので…」
「…もったいない…」
「これからは客としてホテルライフを楽しめます。手厳しい客になりますよ、僕は。ハハハ」
「…。そうですか…。残念です…。寂しいな…。貴方は私の目標だったのに…」
「あはは。僕みたいな男が目標だなんて、夢が小さすぎますよ。頑張ってください。僕は挫折しました」
「…でも明るいな…」
「いや、前途多難ですよ」
「貴方ならきっと何でも上手くいきますよ…」
「…ありがとう…」

顔見知りなのかな…
二人の会話を聞いてると、テジュンさんがホテルマンとして、いかに有能だったかが解る
こんな人をイナさんは…

「どうぞ。こちらです。カードキーはこちらにおいておきます」
「ありがとう」

通された部屋を見てびっくりした
ツインって…
スウィートルームじゃねぇか!

「こっ…この部屋、高くないの?」
「…」
「…ねえっテジュンさん!」
「僕の顔」
「え?」
「顔がきくの」
「…」
「はあっ…だから窮屈な思いするぞっつったのに…。どうせなら民宿とかのが気楽でよかったのにさ…」
「すっげぇ。すっげぇな、テジュンさん…めちゃくちゃいい部屋じゃん…。あ…テラスに」

ジャグジーだ…

ここに薔薇の花びらを浮かべて…シャンパン飲んで…
スヒョンさんったら女の子とよろしくやってたんだ…

どうせなら目隠しして連れてきて貰えばよかった…

「さぁてと。チェックインは済んだし。どうする?何がしたい?」
「…。飲みたい」
「…え…」
「飲んだくれたい」
「…おいおい…」
「部屋でならいいでしょ?」
「ルームサービスで飲むっての?!」
「いいじゃん」
「君、僕の退職金、食いつぶす気か?!」
「…」
「とにかく…さきに夕食だね」
「…部屋でね」
「え?」
「素敵な部屋だもん!ここで食べたい!」
「…篭るの?…」
「俺の好きなことしていいって言ったじゃんか!」
「…誤解されるかも…」
「いいじゃん!誤解されたら、事実にしちゃおう!」
「また馬鹿な事を…。…なあ。散歩しようか…」
「…デートみたいじゃん。その方が誤解されない?」
「なんで!ただの散歩だぞ?」
「だぁって…夕日の海岸線なんてロマンチックじゃん…。ムードに酔ってキスしちゃいそう」
「してほしいわけね」
「…」
「散歩に行こう」
「…散歩から帰ってきたらさ、部屋でご飯食ってさ…それから…夜の海見ながらあのジャグジーに入ってさ、シャンパンあけてあそこで飲むの
スヒョンさんがやってた!」
「…まるっきり恋人同士じゃん…」
「…」
「してほしいわけ?」
「…」
「別の人としたいんじゃないの?」
「嫌なこと言う…」
「…したいのなら付き合うよ…」
「ほんと?!」
「…僕でいいのか?」
「…」
「フ…。とにかく、散歩に行きましょうか?ラブ君」
「…ラブって呼んでよ…俺もテジュンって呼ぶから…」
「何。擬似恋人?」
「だめ?」
「…。お気の済むように…」
「…イヤならいい!」
「こら、待てよラブ!」
「…」
「こんな感じでいい?」
「…ちぇ。他人行儀…」
「フフ」

俺達は、夕焼けの中、海岸線を散歩した
ロマンチックなシチュエーションだけど、靴に砂は入るわ、潮風が湿っぽいわで、実際はそんなにロマンチックでもないのかもしれない…
けど、薄暗くなった空と、濃紺の海を見て、波の音に心を委ねているのはとても気持ちいい
俺はそばにいたテジュンさんに甘えたくなった

この人って…甘えたくなるんだ…
いつも包み込んでくれるんだ…

少し前を歩いているテジュンさんの手を握ると、テジュンさんははっとして俺を見た
しばらく手を繋いで歩いてくれた
それから俺をもっと近くに引き寄せて、肩を抱いて歩いてくれた
ゆっくりゆっくり
何も言わずに歩いてくれた
俺はテジュンさんの肩に頭を預けて、薄墨色の空気の中で波音を聞いた
テジュンさんが歩みを止めて俺の顎を上げ、軽くキスをした

俺は目を開けてテジュンさんの瞳を見た
あたりの薄暗さの中で、テジュンさんの瞳だけがきらりと輝いていた
吸い込まれそうになる
吸い込まれてしまいたくなる
何もかも忘れてしまいたい…
テジュンさんの顔がぼやけた
熱い涙が一筋、俺の頬を伝って落ちた
テジュンさんは目を固く閉じ、また俺の肩を抱いて歩き出した
俺はテジュンさんの身体に腕を巻きつけて歩いた

また哀しくなってきて、歩きながら嗚咽を漏らしていた俺を
テジュンさんは正面から抱きしめた
俺達はそっと顔を近づけて、触れるだけのキスを、啄ばむようなキスを、何度も交わした
はぁっというため息をついたとき、テジュンさんの舌が俺の舌を捉えて、俺達は深いキスをした
長い間そうしていた
もうこのまま、ここで夜を明かしてもいいと思うぐらい穏やかで優しくて、そして哀しい時間だった

ふいにテジュンさんの携帯が鳴った
またメールが来たみたい

俺は我に返ってテジュンさんから唇を離そうとした
けれどテジュンさんは俺を抱き寄せて、もっと深いキスを与えてくれた…

あ…どうしよう…

テジュンさんのこと、好きになっちゃうかもしれない…
嘘でもいいから
テジュンさんのこと、好きになりたい…

テジュンさんの背中に回した手に、俺は力を込めた
 

◇Bon voyage...two.. 妄想省mayoさん
 
ソウルTG から京釜高速道路に乗った俺等はひたすら南へ向かった..

京釜高速道路はソウルと釜山を結ぶ国道1号線だ..
朴大統領時代に作られ(施工は今の現代自動車の現代G)
建造当時は国自体が貧しい時期だったせいもあり悪評はかなり高かったようだ..ん..
だが今では韓国内の主動脈となっている..

ソウルが属する京畿道を抜け忠清北道、忠清南道を縦断し
全羅北道を抜け.. 全羅南道まで行くのが今日の工程だ..ん..

途中いくつかのJCTを通過し..
論山(湖南高速支線25号線)から東へ方向を変える..

「テス..疲れないか?」
「ぅん?大丈夫..」
「ん..」
「ねぇ..ちぇみぃ~..何処行くの?」
「ん?..いいとこだ..」
「いいとこか..僕はちぇみの懐がいい処だけどなぁ..もっといい処があるの?」
「ん~~...夜がもっと楽しくなるか..そこに行くと..」
「でへへっ〜..なら頑張って走っっちゃぉ〜..^o^」

古西(88オリンピック高速12号線) に乗り換え
潭陽ICで降り..そこから国道に乗り換え..
全羅南道の潭陽郡大田面..星里に到着だ

潭陽郡一体は自然景観が美しく..公園もいくつか配置されている
俺等は車を止め公園内の小さな木の下でランチを摂った
テソンと闇夜があれやこれやホテルの厨房に注文を出したのだろう
長時間の車の疲れが吹き飛ぶほど旨かった
茶を飲みながらテスと木に寄りかかり.1時間ほど休憩をとった..

星里は平地に約1万本の規模で竹が造成されていて
天に届くかのように20m以上もの高さの竹が整然と立ち並ぶ..

星里は映画・ドラマの撮影にもよく使われ..
映画「火山高」ドラマ「茶母」の一部はここで撮影されている
「茶母」の第1話で主人公2人が竹林の中を鳥の如く飛び交いながら..
曲芸のような対決シーンをする..
その場面はここだ
道の両側に竹のカーテンが並ぶその小道を歩く間..テスはずっと上を見ている 俺は整然と並ぶ竹の中から一本の竹の前にテスを呼んだ..

「テス..竹を掴んで背中を反らせてみろ..」
「えっ?..ぅん..」

俺とテスは竹を掴みテスと一緒に背を反らせた..
背を反らせ..向かい側に生える竹を下からぐぐっ# と見上げると
何十本もの竹が自分に向かって枝葉を伸ばして迫ってくる..

「ぅわ...凄っいよ.ちぇみ..凄い..」
「ん..立って見上げるのとは全然違うだろ..」
「ぅん..ぅん..全然違うよぉ..凄いなぁ..」

体制を戻しテスの首の後ろを片手でナデナデ〃する
テスは俺の首の後ろを..両手で..ナデナデ〃だ..俺は面積広いから^^;;

「ちぇみぃ..」
「ん..何だ..」
「ここ凄いけど..時々ちぇみが###のとき見せてくれるのは此処だっけ?」
「ふ..違うってわかったか..」
「分かるよ..そりゃ..」
「そっか..」

ちぇみは僕にそう言うと..ぷはは#..と笑って僕の頭をくしゃくしゃっとした

ちぇみは車に2人で乗り込むと20分くらいの車を走らせた..
広い森のようなテーマパークの中へ車を乗り入れ進んで行く
キャンプ場やサッカーのできるグランドやバンガローも見えた

舗装されていないでこぼこの細い道に進み..小さな小屋の前でちぇみは車を止めた
奥に進んだこのあたりも竹がたくさん生えている
一緒に車を降りたちぇみは「ちょっと待ってろ」と言って小屋の中へ入っていく
小屋からひとりの親父さんと話をしながら出てきた馬顔のちぇみは馬を連れていた

「ぷっ#..」
「何だ..」
「だってぇ..馬が馬連れてるんだもん#..」 「ぁ..ぁのなぁ〜テスぅ..」
「えへへ..ごめ~~ん」

俺はテスを一緒に馬に乗せ..ゆっくりと竹の回廊を進む
此処は全羅南道の潭陽郡の錦城面デナムゴルテーマ公園だ..

竹林の規模は3万本にも及ぶ.. 孟宋竹..胡麻竹..甘竹が大部分を占め..
竹林の先には温泉もある..

ここも大田面星里と同じく撮影によく使われる
「茶母」や「夏の香り」でも登場しているな..
で..察しのとおり..清風明月のロケ地だ...すまん^^;;

山の麓という地理利点もあり..竹林の間を抜ける涼風は絶品だ
枝葉の隙間から零れる光も清々しい..

テスは竹の回廊を進む毎に絶叫し俺の背中にしがみついてくる
「ぅわぁ..凄っいなぁ..ちぇみ..凄っく気持ちがいい..」
「ん..」
「それに竹の香りがする..」
「そうだな..」

回廊を抜けると竹に囲まれた広い場所がある..

「此処..此処..こっこだぁ〜##」
テスは俺が馬から降ろすと駆け出して竹のカーテンをぐるぅ〜っと一回りする
息を切らして俺の懐に駆け寄ってくる..
「はぁはぁ..ちぇみ〜..」
「凄いだろぉ..^_^」
「ぅん#..^o^ 感激ぃ〜」
テスの髪をくちゃくちゃ撫でまわすとテスぽちゃぽちゃで俺の顔を撫で回す..

「あっ!あれも凄いっ!」
「お?何だ?」
テスの指差す方を見ると竹のカーテンの中にたけのこがニョキっと顔を出していた
竹のカーテンの中はしん#と暗く表とは対象的にひんやりしている
俺はテスの捲くっていたシャツの袖を下ろしてやり(蚊が多いからだ)
2人で竹のカーテンの中へ入り..たけのこを見た..

「..@o@//..@o@//..」
「凄いな..」
「ぅん..馬のナニみたいだ..」
「テテテ..テスぅぅ ^^;; ..」
「だって..似てるじゃん..」
「ぅぅん..まぁ..」
「えへへ…」

俺とテスは竹のカーテンを出て..
林の傍で仰向けになりしばらくの間ずぅぅ〜っと竹を眺めていた…


新しい住処 れいんさん

残り少ない休暇の間に、僕にはもう一つやるべき事があった
僕の新しい住処を探す事…
店の近くに寮もあったし、マンションを借り上げるという噂もあったが
今の僕はなんだか静かに暮らしたい心境だった

店に通うのが大変になるだろうが、郊外に感じのいい家を見つけた
庭がとても広い事と庭にある離れをアトリエとして使えそうな事
新しいとは言えないが、その古びた洋館風の外観も気に入った
僕はすぐに契約を済ませその足で新居に向かった
その家を僕の好みに変える為に…
そういう事は得意な僕には苦にもならない作業だった

幸いな事に、庭は充分に手入れが行き届いていた
前の持ち主がガーデニング好きだったとみえる
古びた素焼きのレンガが敷き詰められたアプローチ
黒いアイアンのフェンスに絡まるグリーン
その脇には同素材のレンガで作られた花壇
そこには、オリーブの木がしっかりと根をはっていて、ジャスミンやアイビーのグリーンも目に美しい
その中にムスカリやナムタチウムの花々が可憐に咲いている
風雨に晒されて自然に色褪せたテラスにもグリーンがハンギングされていた そこにガーデンチェアやテーブルを置いて、好きな本でも読みながらテイータイムも悪くない
僕は一目でこの庭が気に入った

家の中に入るとキッチンとリビングが真っ先に目に入る
部屋の中には仕切りがなく一つの広い空間を作り上げていた
キッチンの床に貼られたテラコッタの素焼きタイルもこの家にマッチしている
僕は通りにあったアンテイークマーケットでユーズドの木製テーブルとイスを買ってきてペイントした
イスの下地にブルーグレーを下塗りし、上からアイボリーを重ね塗りする
ところどころにやすりをかけてアンテイーク調に仕上げた

リビングにはその広さにしてはやや大きめのどっしりとしたファブリックソファを置いた
これもちょっと僕のお気に入りの場所になりそうだ
とりあえず生成りのブランケットをざっくりとかけた
そのうちスハが麻やニットでクッションを作ったりキルトカバーを作るだろう
季節に合わせて色を取替え楽しんだりもするのだろう

ソファの横にはアンテイークな感じのスタンド
これは僕がショップで手に入れた帽子掛けをリメイクして作ったものだ
そしてリビングの天井にはアンテイークビーズのランプシェードがそのコーナーを優しく照らし出している
厚手のガラスビンに入れたキャンドルを窓際の小さなスペースに飾り、ブリキ製の小さなジャグにグリーンを挿した
チェストやキャビネットも僕が作ってペイントした
素朴な質感のシンプルな食器は最低限だけを揃えた
壁に取り付けたアイアンフックには籠や麦わら帽子をかけた

二階には寝室と書斎と客間がある
寝室には大きめのベッドとその横にスタンド、そしてクローゼットと、いたってシンプルだ
壁の小ぶりなニッチに闇夜さんからの贈り物の絵を飾った
書斎の僕のデスクには生まれてくる子供の写真を飾ろう
それは僕が決して忘れてはいけない十字架だから…

何かに没頭していると余計な事を考えなくてすむ
僕は作業を終え、僕の作品の出来ばえを見回した
少ない時間ににしては、まあまあの仕上がりなんじゃないかな…

でも…まだ…何かが足りない…
何が足りない…?
足りないのは…そうか…スハか…

…まあ、いいさ…
僕はスハがいない寂しさを感じながら、お気に入りのソファに腰をおろし、あいつの事を思い出していた


離れているとつらい   ぴかろん

『テジュン…
どこにいるの?
なんだかすごく遠くに感じる

ちょっと前にギョンジンに首絞められた
なんで誘ったのか
なんですぐに部屋に帰らせなかったのかって
泣きながら俺の首を絞めた

俺、あいつにちゃんと謝ってなかったからごめんって言ったよ
やっと言った…
でもラブにはまだ言ってない…

首を絞めたあと、あいつは俺に縋って泣いた
自分が悪いんだって泣いてた
何にも変わってないって自分を責めてた

俺、ぼーっとしててさ
あいつの背中、擦ってやったけどさ…
俺の背中…お前に擦ってほしかった…

あいつが落ち着いてから、俺達二人でCDショップでWait For Meの入ったアルバムを買ってきた
あいつは聞きながらまた泣いてた
俺もじっと歌詞を聞いた

聞いてて思った
これ、俺の事じゃないかって…

俺が今、待っているのはお前だけど…
本とはお前が、俺の事…俺がもっと大人になる事をずうっと待っててくれてるんじゃないかって思った

明日、新人歓迎会だよ…
研修会もあるよ…
何をやるんだかしらない
俺、出られるのかな…
出なきゃいけないけど役に立つのかな、こんな気持ちで…

お前を信じてるのに、お前がラブとどうなっても、俺の気持ちは揺るがないって解ってるのに
なんでお前をこんなに遠くに感じるんだろう…

俺…
でも俺さ…
お前でなきゃダメだ…
お前を愛してる…

ごめん
泣き言連ねて引き止めてるわけじゃねぇんだ…
俺の気持ちを伝えたかっただけなんだ…

お前はお前の思うとおりにやってくれよ…
俺は…待つことしかできないから』

送ろうかどうしようかかなり迷った
気持ちに揺らぎがあったわけじゃない
何があってもテジュンが好きだ…
けど…

俺の勘って鋭いんだよ…知ってるだろ?
だから…怖いんだ…
やっぱり怖いんだ…テジュン…


ラブ君と…いや、ラブと過ごす二日めの夜
まるで恋人同士のようなシチュエーション
場所が場所だけに、その気にだってなりやすい

でもそうはいかない
だってここの従業員、全員僕のこと知ってるもん
それが救いだ

砂浜でラブとキスをした
ラブが僕に身体を預けてきた
僕は彼を受け止めた
僕の気持ちが傾いた

でも
ここを選んでよかった…
それ以上の事はしない
しないつもりだ…
一応僕も世間体というものを気にする
だからあんまりなことはしない…

だってさ
あとからオ支配人に告げ口されてみろよ

『あんなにイナさんとちうちうはむはむあへあへやってたのに貴方って人は!』

とかって抗議の電話がかかってきそうだ…

いや…そんなふざけた事じゃなくて…

雰囲気に呑まれて彼とどうこうなってしまったとしたら、また彼が傷つく
だからここでよかったんだ…
僕はしっかりと気持ちを持っていて、彼の心を受け止めて、少しでも癒してあげたいと思っている
彼が雰囲気に呑まれるのは構わない
けど僕まで呑まれてはダメだ

正直に言うと、浜でキスしてたとき、メールが入らなければ、僕は突っ走ってたかもしれない…
迫り来る闇と波の音の中で、ラブははかなくて美しくて、そして僕を求めていた…
ラブ自身は気づいていないかもしれないけれど、僕を見る目がいつもと違っていた

気をつけなくては…

部屋に帰るとラブはシャワーを浴びに行った
夕飯はルームサービスにすると言って聞かない
どうせシャワーのあとにジャグジーに入るというのだろう…
僕はルームサービスも何も頼んでいない
シチュエーションを整えたくなかった

ラブは魅力的だ
可愛くて優しくてはかない

二人でこの部屋に篭っていたら…本当に何かしでかしてしまうかもしれない…

ラブがシャワーをしている間にメールを見た
イナのメールは段々と痛々しくなってきたように思う

遠くに感じたという部分を読んで、離れていても勘のいい奴だと思った
僕の心とあいつの心が…繋がっている証拠なんだろうか…

僕のためにもあいつのためにも、そしてラブのためにも、僕は心を強く持たなくてはならない
解っている

けれど息苦しくも感じる

お前の思うとおりにやってくれだと?
本当にいいのか?

…大丈夫だよ…
そろそろ帰路につきたい…
明日には…そちらに向かいたい…

ラブの心を僕が解すのも、今夜が最後だ…
そうしたい…できればね…

「ジャグジーに入ってくれるよね?」
「…」
「約束したよね」
「したっけ」
「シャワー浴びないの?」
「ん…ああ…ざっと浴びてくる」
「ジャグジーで待ってる…来てよね」
「…なぁ…レストランへ食事に行かないか?部屋に篭ってるとその…」
「シャワー浴びてきて!ご飯なんかいらない!」
「ラブ」
「言うとおりにするって言ったろ!」

ラブが涙を浮かべて僕に抱きつく
湿った髪からいい香りがする
抱いてくれと言われたわけじゃない…
これぐらいの望みは叶えてやってもいいだろ?イナ…

イナ…
遠くへ行かないでくれ…
僕の心の中で根を張っててくれ…
こんな気弱なメールなんかしないでくれ…
僕だって崩れそうで怖いんだ…

僕はラブを押し戻してシャワーを浴びに行った


Love Again  足バンさん

日が暮れはじめた頃
ホテルをあとにして僕とスヒョンは車で帰路についた
珍しく今日はスヒョンが運転だ
残務処理で散々待たされたから”思いっきり楽しいデート”を要求したけど
遅くなりすぎるっていってあっさり断られた

「その代わりに今夜は最高のイタリアンご馳走してやる」

んーまぁそれならいいか
昨日のパーティの食い物はほとんど味わう余裕なかったし
考えたらスヒョンとちゃんとしたディナーに行ったことないしな

僕は運転するスヒョンの横顔を見ていた
窓からの風に吹かれる黒髪が波をうつ
その目は何を見ているんだろう…
これから何を見ていくんだろう…
そして僕はどう映っていくんだろう…

「ん?なに?」
「なんでもない…顔見てただけ」
「あんまり見つめられるとどきどきして運転できない」
「ふんっよく言うよっ!ちゃんと前見てよっ」

僕たちっていつもこの調子

僕の知らない道に入って行くと細い道に路駐した
スヒョンは車を下りてけっこう入り組んだ道をどんどん歩いて行く
こんな所にイタリアンレストランがあんの?
やっと足を止めて入った店は…

「スヒョン…もしかして…」
「ここのポルチーニは最高なんだ。イタリアンの食材は何でも揃う」

げっ!最高のイタリアンってスヒョンが作んのかっ?
料理がうまいなんて聞いたことないっ!
スヒョンは店のイタリア人らしいおじさんと何やら話しながらあれこれ選んでる
オリーブオイルだのパスタだのパルメンジャーノやブラックオリーブ、
果ては地中海の塩だの胡椒まで
うぅ…やっぱり作る気だ…

でもそんな予想が甘かったことはすぐに判明するんだけど

スヒョンの家は郊外にある
BHCまで車で20分
まわりは新しい住宅地で、けっこう独身の金持ちが住んでるとか
あ、スヒョンの映画のあの家じゃないよ
あの家の印象は僕すっごくすっごく悪いんだ
なぜかって…まぁ…その…こほん…よく知ってるわけじゃないけどね
とにかくここはBHCに入ってから移ったらしい

到着すると僕のアクターが鎮座していた
置きっぱなしだったわりには小綺麗だ

「おまえこの車いつまで置いておく気?」
「今日乗って帰りますっ!」
「じゃアルコールは飲めないね、残念」
「むっ」

道に面した車庫から数段の階段を登ってエントランス
コンクリートの打ちっ放しの平屋建て
中に入ると床が全てオーク材なので壁のコンクリートの冷たさを帳消しにしている
壁のいたるところにクレーやミロのリトグラフが掛けてある

家の形は単純。真四角
玄関ドアを開けるとだだっ広いワンルームで
右側の壁にバス洗面、ランドリー、クローゼットと書庫のドアが一列に並び
左側には壁面に沿って大きなステンレスのI型キッチン
天井からの白いブラインドでキッチンと隔てた部屋の左隅には
セミダブルのベッドがどかんと置いてある

部屋のほぼ中央に大きな硝子のダイニングテーブルと白い皮の椅子6脚
その向こうに3seatsの白い皮のソファが庭に向けて置いてある
以前泊まった時にスヒョンはここで寝てたっけな

入口と反対側は天井までの大きな4枚の硝子窓で唯一の開口部
窓の外は3メートルほど先に木製の塀があって
近隣からの視線は完全に遮断されている
その小さな庭には芝が敷かれ2つのガーデンライトがあり
左隅に植えられているたった1本の娑羅の木を下から照らしている

スヒョンは買い物の紙袋を無造作にその辺に置くと
どこからか赤いチェックのエプロンを持って来て僕にポイと投げた

「なに?これ」
「ん?服汚すといけないから」

えええええええっっっ?

抵抗も虚しく結局僕は手伝わされるハメになった
手伝わなきゃメシ作らないって言うし腹は減ってきてるし
僕はしぶしぶ付き合った

「ポルチーニをもどした水は捨てるなよ」
「ニンニクは真ん中の芽を取るんだ」
「ほうれん草は硬めに茹でて」
「お湯はもっとたっぷりね」
「塩が少ないな」
「フィトチーネはいきなり茹で上がるからよく見てて」

「ちょっとスヒョン!動いてるの口ばっかりじゃないさ!」

振り向くとスヒョンは足組んで硝子のテーブルに頬杖をつき
白ワインを飲みながらにこにこと僕を眺めてる

「なに余裕かまして見てるのさっ」
「だってかわいいんだもん、おまえのお料理姿」
「ばっかスヒョン!手伝え!ひどいデキになっても知らないぞ!」

笑っていたスヒョンはパスタが茹で上がる直前に急に立ち上がり
素早く茹で加減を見ると、
ここがポイントって言いながらフライパン上の材料に茹で汁を少し加えて
麺を茹でこぼし、材料全てを和え、クリームと塩胡椒で味を整える
僕はその慣れた鮮やかな手つきに見とれてしまった

テーブルに全てが整った時には僕はすっかり疲れ果てていた
でもそのパスタの味は思いがけず素晴らしいものだったんで驚いた

「うまいだろ?」
「うん最高!こりゃ僕の下ごしらえがよかったんだな!」
「ふふ…」
「なに?」
「ひとと料理作ったのってさ」
「ん?」
「おまえが初めて」

スヒョンは頬杖をついてテーブルの向こうで微笑んでる

僕は返事に困ってパスタをぱかすか口に詰め込んだ


◇まうむ..てそまよ..six 妄想省mayoさん

別宅の冷蔵庫は3つある..
僕の食材用・ちぇみテスと僕等の4人用・ボトル専用...の3つだ
買い出しをした食材を闇夜とふたりでそれぞれの冷蔵庫へ詰め込む

「mayo..」
「ん?何..」
「あのRRHのスーパーってさ..似てないか?」
「LE BON MARCHE の..」

「「LA GRANDE EPICERIE PARIS !!」」

僕と闇夜は同時に言った..
LE BON MARCHEはparis最古のデパートで..
LA GRANDE EPICERIE PARISは細い路地を隔てて隣に隣接している
いわばグルメ館と言っていい

入り口のケーキ・パン..紅茶・コーヒー・ジャムに始まり、チョコ・クッキー等のスイーツ類..
あらゆるフルーツ・肉・魚・野菜の数々
右奥にハム・ソーセージとチーズ売り場..左奥はワイン売り場
ワインとチーズの種類も数多く...置いてある食材がハンパじゃなかった
珍しい食材も多く..そこでしか買えない物も数多くある

僕は初めて行ったとき「すごい...@o@...すごい..」とひとりで呟き..
カートを引っぱって何時間もそこにいた..
研修で滞在した短い期間..僕は時間がちょっとでも空くとそこに通っていた

「mayoも通ってたのか」
「ぅん..毎日行ってた..あそこのワイン売り場におもしろい親父がいてさ..」
「友達になったんだろ?」
「(^_^;)…」
「どこいってもオヤジ好きなんだな..ったく..」

闇夜は聞こえないふりをして屈んではるみにご飯を食べさせた..

「でも...RRHにペックの黒いパルミジャーノ..なかったね..」
「あれは..伊やparisに行かないと買えないな..輸入ルートがないんだ..」
「そっか..」

闇夜は部屋着に着替えると..
僕らの部屋とちぇみテスの部屋..リビングを軽く掃除をして歩く..

「明日でいいのに」
「ん?..私..家政婦だから」
「ねっ..家政婦さん..」
「何..」
「みんなの洗濯もするの?」
「ぅん..するよ..家政婦だから..」
「ぱ○つも洗うの?」
「ぉ..ぉ..ど..どうしよう...ぱ..ぱ○つパンツは各自だ#」
「ぷっ..」
「私のぱ○つ..何処に干そう..」
闇夜の小さな独り言が聞こえた..

「バスルームに干せば?」

僕が答えると闇夜は「ぅぅ〜ん...」と唸っていた..
僕の胸ではるみが”みゃ・みゃ・みゃぁ~”と鳴いた..

「僕..シャワー浴びるね..」
「ぉ..ぅん..」

僕は一旦部屋に入り..入り口の左手にあるドアを開けてバスルームヘ向かった..
はるみはバスルームまでついてきた..

「一緒に入る?」

はるみは”みゃぁ~と鳴いた..


術中に嵌る  ぴかろん

リビング横のドアを開け、バスルームに入る
ベッドルームの奥にもバスルームがあるのだが、とりあえずこちらへ入る

あとでベッドルーム奥の方も入るぞ
他意はない!職業病だ!別にラブとどうこうしてからとか言うのではない!ただどういう作りでどんなアメニティグッズを揃えているのかが気になるだけだ!
退職したからといって、この職業病がすぐに治るわけではない!ケホンコホン・・

僕は洗面台と、その隣のメイクアップスペースにおいてあるグッズをチェックした
高級化粧品が揃えてある
だがホテリア・ホテルのものよりは劣る
この商品はチェック済みだ
ふふん

ああ…僕はもうホテリア・ホテルの人間ではないのに…
贔屓してしまうのは仕方なかろう

しかし…このドライヤーのデザインはなかなかだ
ふうむ。よくこんな品格のあるものを見つけたな…スウィートルームにふさわしいぞ…casa バスタオルやバスローブもなかなかの品質だ

ほお…
コットンも上質の…女性が喜びそうなものを用意してあるな…ふむ
ソープの包み紙のデザインがキレイだ

そういえば祭の最中、あのロイヤルスウィートに泊まっていたミミとかいう女
毎日のようにアメニティグッズの追加を要求していたが…
特にソープがお気に入りだったようだ
一度ハウスクリーニングのアジュンマが

「ソープソーサーにはうちでお出ししているソープではないソープがありましたの
『牛乳石鹸』という文字が読み取れましたわ。歯ブラシも『山中温泉』という文字が刻まれた安物の歯ブラシが転がってて…」

とか言ってた

あの女…自分で石鹸やら歯ブラシやらを持ってきて、それを使い、アメニティグッズを毎日せしめたな?!
全く…
きっとバスローブやタオルなんかも盗まれていることだろう…

ああ…僕はシャワーを浴びるんだったな
どうしてもチェックに時間をかけてしまって…

ザッとシャワーを浴びた
潮風に当たったので髪も洗った
腰にバスタオルを巻いて、テラスに向かう
我儘なかわい子ちゃんがお待ちかねだからだ…
本当に僕と一緒に入るつもりか?

リビングを通った時、さっきまではなかった物を見つけ、僕は仰天した
オープンサンドにカナッペに、野菜のスティックにキス・チョコ、フルーツの盛り合せとなぜか『チーズ鱈』『柿の種』『するめいか』もある…
酒は…ジンとブランデーとテキーラだ…
カットしたライムがたくさん…
炭酸も用意してある
そしてソンブレロ

僕はそれらがとても気になって目が離せなかった

テラスに出るとラブはジャグジーに下半身をつけて、少し怒った顔で待っていた

「来たよ」
「遅〜い。のぼせちゃう!シャンパンがぬるくなっちゃう!」
「…あれ…なに?あのワゴンの…」
「頼んだの。ルームサービス」
「いっ!…その格好で受け取ったの?!」
「うん、中まで運んでくれたよ」
「…」
「テジュンさんはって聞かれたからシャワー中ですって言ってにっこりしてやったら、ボーイさん、真っ赤になってた」
「…スルメやらチーズ鱈も頼んだの?」
「あれはね、ボーイさんたちからの差し入れだって。あ、そのかわりテジュンさんのサインが欲しいって色紙置いてった。あとで書いてあげてね、十枚」
「…」
「スター並みだね」
「まいったな…」
「早く…来てよ…」

…ヤらしい言い方…
いかん…気にするな!とにかく望みを叶えてやんなきゃな…

僕はバスタオルを外してそそくさとジャグジーに入った
入った途端ラブが身を寄せて来た

「こら…」
「いいじゃん…」

ラブは僕の首に腕を回して軽くキスをする
いかんって…もう…

「シャンパンあけよう」

嬉しそうに言う
嬉しいの?こんなことがしたかったの?

「僕でいいの?」
「え?」
「…っていうか…誰でもよかったのか?」

いやな聞き方をしてしまったか?!

「テジュンがいいの!変なこと言うな!」

ああ膨れっ面になっちゃった…
かわいいな

いかん!全く!

ラブはシャンパンを抜こうとしているが全然抜けない

「貸してごらん」

ラブに近づいてシャンパンのボトルを受け取り、派手な音を立てて栓を抜く
シュワシュワと泡になった液体がお湯に滴り落ちる

「ほらほらほら、早く飲めよ」

僕はラブの口元にボトルを持っていってやった
あーんと口を開けて滴り落ちる液体を受けている
なんだかいやらしい…
そんな風に感じては…いかん!全く!

「テジュンの番だよ。俺が注いであげる」

ラブがボトルを持ち、僕の口にシャンパンを注ぐ
そんなにぬるくないな…
旨いし…

ラブはボトルから直接シャンパンを飲んで、僕にボトルを渡した
僕も同じようにして飲む
飲んでいる最中に、ラブが背後から抱きついてきた
だから…いかんと言うのにもう…
こんなことを続けていると、ヤバイのだ!全く!

それで僕はもう一つ気になったもののことを聞いた

「あのソンブレロは何?」

ラブは何も答えず、色っぽくて意味ありげな表情をした

「なんなのさ!気になるじゃんか!」
「後でね…」
「…それにしてもなんであんなにお酒?」
「だってみんながああいうの飲んでたからさ…飲んでみたくて…フォア・ローゼズでしょ?タンカレーでしょ?」
「…打ち上げの時に飲んでたの?みんなが?」
「んと…ドンジュンたちと闇夜さんたちが…」
「シャンパン飲んで、ジン飲んで、バーボン飲んで、それからテキーラも飲むの?」
「うん」
「…飲んだくれたいわけね…。けど明日の10時にチェックアウトだぞ」
「明日も泊まるよ」
「は?!」
「ボーイさんにそう言っといた」
「は???…明日は帰るつもりだったのに!」
「いやだ!帰らないもん!」
「…」
「帰りたきゃテジュン一人で帰ればいい!」

…はあっ…我儘…
なんで僕の周りにはこう我儘な奴ばかり集まってくるの?
僕はラブの手からシャンパンをもぎ取ってごくごく飲んでやった
口の端からだらだらと金の液体があふれ出し、温かいお湯の中に消えた
ラブはあふれ出した液体を舐めて、それから僕の唇に吸いついた
いかんと言うのに…
そう思いながら、僕は僕の口の中に残っていたシャンパンをラブに流し込んでしまった…
いかんと言うのに…ああ…


My Best friend れいんさん

室長が私には目もくれずに帰って行くわ
あんなピカピカの新型ベンツで…しかもあの若造と一緒に…

ひどいわ室長…あんまりよ…
私がここにいる事知っているはずでしょう?
よりによって私の目の前で、涼しい顔してあの男と…
…早く…あの車を追わなきゃ…

「ヨンスさん、お待たせ。さあ、一緒に帰ろう。僕達の家に」
「…ソンジェさん…」
「兄さんからやっと僕の車を取り返したんだ。ハンドルが傷ついているのがかなり気に入らないけどね
まったく、兄さんはいつもこれだもの。でも、心配しないで
修理代は兄さん宛に請求するから。…さあ、何してるの。遠慮しないで、ヨンスさん早く乗りなよ」
「ソンジェさん、ごめんなさい。私はミヒさんと一緒に帰りたいの。せっかくお友達になれたんですもの。二人で寄りたい所があるの」

泣き顔みたいなソンジェさんにそういい残して、私はミヒさんの車に乗ったわ
ソンジェさん…あなたがいい人なのはわかっているけど…女心がわかってないわ
はずすのは音程だけにしてちょうだい

「ミヒさん…ごめんなさい。さっき出たあのベンツを追って下さらないかしら。…室長が乗っているの」

ミヒさんは何も言わずに車を走らせてくれたわ
追跡していると気づかれない様に、2台後ろにぴたりとつけて追いかけたの

着いたところは…ロイヤル・ローズ・ヒルズ…
なんてゴージャスな…
これは何?どういう事?
ここが…あの若造との愛の巣って事?
私は室長のあまりの仕打ちに呆然としていたわ
涙の女王のこの私がショックのあまり涙ひとつ出なかった…

「ねえ、ヨンスさん。…余計なお世話かもしれないけど…あんな男の事はもう忘れたらどうなの?」
「ミヒ…さん…」
「去るものは追わずって言うじゃないの」
「でも…私…」
「私はこう見えても去る者は追わない主義よ。逃げる者は追いかけるけど」
「でもそのうち室長が目を覚まして私の処に戻って来るかもしれないわ」
「あのね…あなたも若いんだから…もっと遊びなさいよ。いい機会じゃないの」
「遊ぶだなんて…そんなはしたない…」
「はしたない?そんな事ないわよ。私みたいにもっと捨て身の色気出したらどう?」
「捨て身の色気って…?」
「要するに…なりふり構わず何にも縛られずに自分に正直に…って事よ」
「そんな事…私にはできそうにもないわ…」
「ヨンスさん、BHCには若くて可愛い男がよりどりみどりなのよ。これから毎日通いましょうよ」
「でも、私…室長でなければ…」
「そんなの、顔は皆同じなんだから…。ちょっとスーツ着せて、前髪垂らして茶髪にしてさ
銀のメッシュ入れてもらって、お腹を少しぷよぷよさせれば、みんな室長じゃないの」
「そんなものかしら…」
「そうよ!そんなにいつまでもうじうじ考えないのっ!通常営業に戻ったら毎日通うわよっ!
いい?あそこは3時間半しか営業してないから、開店と同時に駆け込んで、閉店まで粘るのよ」
「毎日だなんて…そんなにお金が続かないわ…」
「何言ってるの!あなたミューズの株主なんでしょ?
私も次のリサイタルでひと稼ぎしてくるわ
それにヨンスさん、あなたまだ正式に離婚してないんでしょ?だったら家族割引きくんじゃないの?
なんとかなるわよ!私、最後の手段はこの体で払うつもりよ」
「いやだ、ミヒさんったら…。そんな大胆な事…」
「あら、冗談で言ってるんじゃないのよ。私、喜んでかたっぱしから体で払うつもり」

なんだかミヒさんと話していたら元気が出てきたみたい…
祭の間も辛い事がいろいろあったけど、私にとってミヒさんとの出会いはとても貴重な出来事だった
心配性のナレとはまた違う、私に元気をくれるお友達…
ミヒさん…ありがとう…
Dear My Best friend…


おじょうさんをくださいっ1  ぴかろん

俺はチェリムの実家に向かっている
昨日の夜も危なかったが、かなり飲んだくれてたので部屋に着いたらすぐ寝た
誰がって、チェリムだよ!
誰の部屋って、チェリムのだよ!
アイツを寝かせて、俺はファミリールームにもどったさ!
チョンマンが枕を抱いて泣いていた
チニさんチニさんってうるさいの!
シチュンは…帰ってこなかったな、朝まで…
くそう…いいなぁ

朝になってドアをノックする音が聞こえたからあけてやったら、やつれた顔しながらも口元はニヤニヤしててよ…いやらしいったらありゃしない!

「シャツのボタン、一段ずれてんぞ!何してたんだよ」
「決まってるだろ?…ぐふふふ…ふぅ…」
「おいっ、尻に草がついてる!」
「…でへへへへ…」
「まさかおしょとで?!」
「スヒョンさんがいい場所があるって教えてくれたんでさ。ちょっと行ってみた」
「おしょとでしょんなことしたのか?!」
「気持ちよかったぞぉ〜夜景か綺麗でさ」
「おふとんのなかでごにょごにょじゃにゃいのか?!ジュンホ君はそう言ってたぞ!」
「…。ま、テプンさんはそこから始めないとねぇ…ちょっとシャワーしてくる」
「…おしょとで…おしょとでもできるんらな…」

俺はカルチャーショックを受けて、つい『らりるれ』ってしまった…
ジュンホ君の教えを俺はちゃんとできるだろうか…ドキドキ

10時頃、俺の携帯電話が鳴った
チェリムからだった
泣いてたのであいつの部屋にすっ飛んでいった

「どーしたっ!泥棒か?!」
「なんで私一人にするの!なんでここに泊まんないのよっ!」
「あ…いや…その…に…荷物の片付けしなきゃ」
「ばかぁぁ。ここで過ごす最後の夜だったのにぃぃ」

…ああそういやそうだ…

俺は泣きながら抱きついてきたチェリムを撫でてやりながら部屋の中を見回した

「あれ…俺ってお前の部屋に入るの初めてだったか?」
「…そういえばそうね…」
「…そっか…」
「ね、何時に出る?」
「今10時だろ?昼飯食ってからどう?」
「チュッ」
「なに!」
「オッケーの合図。チュッ」

ああんかわいい〜
しかし…挨拶したら…
その後どうなるの?俺
どうすればいいの?ドキドキ…

「テプン…一緒にシャワー浴びよっか…」

いろっぺー声を出して俺の唇に囁きかけるチェリム
どきどき
だめだ!もうじっきこいつの親父さんに会うってのに…

「しょんなことらめらっ!」

あっ
ついらりるれが…

「いやんかわいいっ!ちゅううっ」

はふん…
あっしょーだ
こんな時はミンに教わったあのちゅうを…
と思ったらチェリムはさっと身体を離して着替えの準備を始めた

「お…おい…俺、部屋に戻るぞ」
「なぁんでぇ?シャワー浴びようよぉ一緒にぃ」

んなもん…男同士で浴びてるようなもんだろ!

待てよ

じゃやっぱしアレも…男同士みたいなもんだろうか…

大体チェリムの胸がいかほどのものかっての…ちゃんと確かめてねぇんだよな…
昨日酔ってゴソゴソ触ったけど…どっちかっつーとあのプルンとしたひっつけるブラの感触のがヤらしかったんだよ…うーん…


大丈夫かなぁ…

「どしたのよ黙りこくって」
「あ、いや、早く荷物片付けないとな。じゃ、昼になったらくるから、お前もシャワー浴びたら片付けろよな」


そんなやり取りがあって…今俺は、チェリムの車の助手席にいる
チェリムは運転がうまい
ドンジュンとどっちがうまいだろう…
かっくいーのだ…

俺はずっとチェリムの横顔を見ていた
可愛いのだ
綺麗なのだ
こんなお嬢さんが俺のお嫁さんに?!
こんな綺麗な人が俺と…アレを?!

ひひん…
いかん!
変化がっ!

「もうすぐ着くわ」

あんだって?!
どうしよう!

「どうしたのよ、緊張してるの?黙っちゃって」

チェリムが俺の顔を覗き込む

「前見ろ前!あぶねぇよ」

チェリムは車を急に止めて、まじまじと俺を見る
そして俺の『変化』に手を伸ばした

「やっやめろよっ!真昼間っからっ!」
「なんでこんなになってんの?アンタ緊張するといつもこう?どうすんのよ、パパに前かがみで会うわけ?」
「ちっ…違う…。お前に見とれてたらこうなっちゃって…その…」
「…だ〜から…先に済ませておきたかったのに…」
「…」
「治めてよ!」
「…あ…はい…」


どうにかこうにか治めた俺をチェリムは家に案内した

でっけぇ家…
こんないいところのお嬢さんと俺が結婚?!
考えられねぇ…
俺がこいつの親だったら間違いなく反対する…
俺は真っ青になった

「パパ、厳しいから覚悟してよ」
「…チェリム…」
「なあに?」
「…俺…自信ねぇ…」
「…」

チェリムは俺の首に巻きついてキスした

「パパと結婚するわけじゃないでしょ?あたしとでしょ?」
「…だけど…」
「いざとなったら連れて逃げてくれるんでしょ?!」
「…そうだけどやっぱし、祝福されて結婚した方がいいだろ?」
「そうね。そのために挨拶に来たんだものね」
「…自信ねぇな…俺…」

弱気になった俺を睨むと、チェリムはどすっと俺のボディに一発パンチを食らわせた

「げほ…なにすんだよ…」
「気合いれてよね!」
「…わーったよ…」

腹を押さえながら俺はチェリムの家の中に入った

まうむ..てそまよ..seven.. 妄想省家政婦mayoさん

バスルームのドアを開けるとはるみはするっ#っと中へ入った..
僕はぬるめのシャワーを頭から浴びSAVONをつけて泡立てた..
僕が頭を洗う間はるみはバスタブの縁に前足を立ててお行儀よく待っている..
闇夜は猫足のバスタブにしたかったらしいが..機能性を考えて
普通のジェットバスタイプにした..

はるみのSAVONは何本かあるボトルの中からラベンダーにする..
1本づつ指をさして確認したらラベンダーで“みゃぁ〜”と鳴いたからだ..

僕は両手ではるみの胴体を優しくナデナデしながら泡立てると..
気持ちよさそうに..ふにゃぁ〜..っと鳴いて身体を揺らす..
僕は一瞬その顔が闇夜に見えた..^^;

「はるみぃ〜..君のご主人様は僕とお風呂入るかな..」

はるみは大きな青い目をくりくりさせて僕の顔を覗き込み..
“みゃぁみゃぁみゃぁ”と鳴いて屈んでいる僕の膝に纏わりついた..

はるみもいっしょに洗い流し終わって僕はバスルームを出た
はるみはバスルームと部屋のドアの隙間から部屋へ抜けていった

バスルームのドアの傍にの幅30cmほどのチェストが置かれている..
闇夜専用だ..僕は引出しを開けてみた..
僕の知らなかった闇夜をまた発見した..

5段の大小の引出しはすべて香水とアロマの精油だった..
香水はフルボトルあり..ハーフボトルあり..ミニチュアあり..
かなりの種類が入っていた..メンズ用も何本かある..
アロマの精油は濃いブルーの小さなビンが1つの引き出しに
びっしり入っていた..

闇夜は仕事の時はほとんど香水をつけない..
僕は闇夜のラベンダーの石鹸とシャンプーの香りしか知らなかった..

あっぉぉ〜ん^^;;

僕は仕事柄厨房に立つ時は香りをつけない..
それが習慣になってほとんどつけなくなっていた..

僕はメンズのボトルを何本か見てみた..
ファーレンハイト..フェラガモオム..デューンプールオムはハーフボトルだった
お気に入りかな..

エンヴィ..ハイヤー..ブルガリのブルーノッテプールオム.. アリューリュオム…
..ジルサンダーのサンダーフォーメン..MCMブラックシルバー…

ひゅぅぅ〜@_@..すごいや..

ハーフボトルの3本の香りを嗅いだ..
僕はデューンプールオムをちょっと付けた^^;;..

タオルで髪を拭き拭きしながら部屋に戻ると
闇夜はるみの背中を撫で毛揃いをしていた..
ラグドールのはるみは濡れているときに毛揃いをすると
乾いた時に余計な毛が落ちない..

闇夜は座っていた椅子の上にはるみを寝かせ僕に近づいた..
僕の傍でくんくんするとバスルームへ消えた..


シャワーを浴びてバスローブを羽織った..
私は迷わすデューンつけた

バスルームを出るとCDをセットしていたテソンが振り返る
近づいたテソンは黙って私の手を取り..ついたての向こうへ連れて行った..


おじょうさんをくださいっ 2  ぴかろん

玄関でお手伝いさんに挨拶をし、俺は応接間に通された
そんなとこに座ったことのない俺は、どうしていいかわからなかったので、チェリムのいいなりになっていた
やがてチェリムの親父さんとおふくろさんが出てきた
おふくろさんはチェリムにそっくりの美人で、親父さんは…結構ごつい人だった

…おふくろさんの方が胸がデカい…
と言う事は、体型は親父さんに似たのか?!

「君は…」
「はっ俺…僕…私はソソソ…ソ・テプンといいます。はじめまして」
「たしかソ・ジソク君のお兄さんじゃなかったか?」
「へっ?はっはっ…はい…」
「ジソク君は毎月キチンとお金を返済してくれている」
「はっそそその節はお世話になりなりなりましたっ」
「それで…何かね」
「じじじつはっおぢゃうさ…お嬢さんのチェリムを…あいえ…チェリムさんを…ぼぼぼ…わわ私にっくださいっ」
「…は…」
「あのっ僕とお嬢さんの結婚を認めてくださいっ!」
「…。君とチェリムは付き合っているのか?!…いつから!」
「あのっつい最近…」
「十日ぐらい前からだっけ?」
「十日っ?!」
「でも、お互いに必要だって解ったの」
「そんな短期間で…まままさか貴様チェリムを辱めたり」
「そそそんなことしてませんっ」
「口ではなんとでも言える!」
「パパ、やぁねぇ。テプンはそんなことする人じゃないわよ」
「しし証拠はあるのかっ!傷物になってないという証拠はっ!」
「私がいっくら誘っても手出ししなかったわ。キスだけよ」
「キキきすっ…」
「いまどき珍しくない?キスだけよぉ〜。そこら辺のワカモノなら、もう…アレよぉ」
「…」
「テプンはね、すっごく誠実なの。パパ、お願い。結婚させて」
「チチチェリムっ!」
「テプンと結婚させてくれなきゃ一生独身を通すわ!」

どっちかというと、チェリムの強気に押されて、親父さんはしぶしぶ俺との交際を認めた
ただし結婚はまだだと言う

「いやっ!すぐにでも結婚したい!でなきゃ既成事実つくるわ!」
「は?」
「ヤっちゃう!」
「「チチチチェリム」」

俺と親父さんは同時に声をあげた
暫くの問答の末、親父さんは俺との結婚を許可してくれた
しぶしぶだ…
認めて貰ってから俺は大事なことを言い忘れてたのに気づいた
自分の職業はホ○トで、そして…息子がいるということ…
親父さんは「さっきの許可を却下する」と、早口言葉のようなセリフを吐き、それを聞いたチェリムが逆上して俺の膝にまたがり(@_@;)
この場でヤっちゃう!!などと言い出し、親父さんと俺は必死でチェリムをなだめ…とにかく…最終的に親父さんが折れた

俺は恐縮して頭を下げた
親父さんと二人きりで話をした
テジの母親と俺とが、本当にそういう関係だったかどうか、覚えてもいないことと、俺の育った環境と、それからどうしてテジをひきとったかと言う事

テジには俺しかいない
テジは…たとえ血の繋がりがなかったとしても、俺の息子だと言う事を親父さんに告げた
親父さんは暫く考え込み、それからにやりと笑い

「どうしてチェリムが君を気に入ったかよくわかった」

と言って、俺の肩を叩いた

「頼んだぞ。あれはじゃじゃ馬だ。でも私の大切な娘だ。可愛がってくれよ」
「はい」

そして、親父さんもおふくろさんも、今日は泊まっていけと言っているのに、チェリムが

「今日中に帰らないと仕事がなくなる」

とかなんとかウソを言って俺を引っ張って家を出て、そしてゴージャスなホテルに俺を連れ込んだ

どきどきどきどき…

これって…あいつ…その気だよな…
どどどどうしようっ!

あいつはサッサと宿泊手続きをして、サッサとキーを受け取り、サッサと俺の前を歩き、部屋のドアを開けた
こぎれいな部屋だ
ファミリールームとは大違いだ…
景色が素晴らしい
眼下に広がる街
遠くには海が見える

窓辺で佇んでいた俺に、チェリムは抱きついた
俺はチェリムの顎を上げて言った

「俺と…結婚してくれる?」

うんとあいつは頷いた

「子持ちでホ○トだぞ」

うんとまた頷く

「こんなんだぞ」
「こんなんだからいいの…」

ううっ可愛いっ…

俺はチェリムの可愛らしい唇にそぉっと唇を乗せ、それから、ミンにされたキスを思い出しながらチェリムの唇を攻め立てた
それから俺達は…


とりあえず飯を食いにでかけた…ふうっ…


続・おかえりなさい  れいんさん

長い長い夜が明けた

僕はそろそろ皆が着く頃だろうと身だしなみを整えて待ち構えていた
ホンピョの奴はまだ寝てる…
子供か?あいつは
いったい一日何時間の睡眠を取っているんだろう

ガヤガヤと騒がしい声がしてきた
とりあえず第一印象は大事だろう
僕はもう一度幅広のネクタイを整えた

「おかえりなさい…」

僕が自己紹介をしようとしたら、いいところで邪魔が入った

ダダダダダダ「スヒョン!」

案の定ホンピョの奴だ
何がスヒョンだよ!この大ばかっ!
いつから呼び捨ての仲になったんだ?
まだ会った事もないくせに
それにスヒョンさんは最初っから僕がマークしてるんだからなっ!ったく!

いや、それにしてもこれだけ同じ顔が並ぶと壮観だな…

僕はBHCの皆さんにホンピョと僕とその場にいたヨンナムさんの紹介をした

あれ?ヨンナムさんそっくりのこの人…
ああ、あの衣装を着てたあの人か…
随分誰かさんに骨抜きになってるみたい…
ふうん、ヨンナムさんの処に住むのか…
ヨンナムさんが悪影響受けなきゃいいけど…

早速、ヨンナムさんがソクさんと連れ立って帰ろうとした

「俺も行くあにきっ!」

またホンピョの奴がそんな事言ってる
だから兄弟じゃないって昨夜も言っただろ?
わかんない奴だなっ!

「おい、ホンピョやめないか」

まったくこいつときたら、羨ましいくらい自由に発言してるよな
ほんと放し飼いの野良犬だよ

「ホンピョ、皆さんに挨拶しろよ」
「…スヒョンは?」
「こらっ!」

ったく!さっきから僕のスヒョンさんを呼び捨てに…
おや?イナさんとホンピョがなんかやり合ってるぞ
精神年齢は一緒だな
いい勝負だよ

ぶっ!座敷ワラシだってよ
でも、座敷ワラシがいる処って栄えるという言い伝えがあるんだよな
もしかしたらホンピョが招き猫ならぬ招き犬に…?
まさかそんな馬鹿な…
ありえない…

いい加減、ガキのケンカが続くから僕は止めに入った

「ホンピョ!もうやめろよ。すみません。こいつ、野良犬みたいな奴で」

そう言った途端、イナさんの目がきらりと光った
野良犬に反応したらしい
握手求めてるよ…
親近感湧いたのかな…
んな事で親しみ感じてどーすんだよっ!

だけど、それも一瞬の事で、またガキのケンカが始まった
もう、なんだよ、この二人…
こいつらは半径3メートルは近づけない方がいいぞ

こんな面子で寮に行ったんじゃ、おちおち安眠できやしない
とりあえず、歓迎会までの辛抱だ
その時はスヒョンさんの隣の席をキープしてだな…
そして、そして、お近づきになって…むふふ

あ!ヨンナムさんも来てくれるのかな
来てくれたらいいけどな
あ〜あ…僕もヨンナムさんについていけばよかったよお…
…えっと…ヨンナムさんの連絡先っと…あった、あった
後でこっそり連絡取ってみよう…
ホンピョにだけは内緒でな…
だけど、あっちにもソクさんとかいう妙な男が一人いるんだよな
あ〜あ、これから先が思いやられるよ
パーフェクトなホ○トへの道なんて、程遠いじゃないかよっ!
えーん、えーん…
スヒョンさ〜ん!ヨンナムさ〜ん!


それから…   オリーさん

ミンにやられちったのら…また…
ひいん…ひいん…
れも…しゅごく…くふぅん…ほぉん…へぇぇん…
れもって、くしぇになりしょう…
しばらくぽわんとしていたのら、ベッドの上で
したら、ミンがお風呂に入ろうって、呼びにきてくれたのら…
大きなお風呂なのら
僕の前のお家よりももっと大きいのら
あり?
僕の前のお家にはお風呂あったのかにゃ?
見たことがにゃい!
誰もあの家でお風呂に入ったことがにゃいっ!
奇妙なリヴィングと弾かれないピアノと僕らの部屋以外
あの家にあったのらろうか?
あ、お台所は確かあったにゃ…
れも今しゃら、昔のことはいいのら
今はこのマンションの大きなお風呂、とにかくしゅごいっ!
当然らいりせきなのら
ミンがジャグジーのスイッチ入れたのら
したらシャワシャワ、ブクブクってなったのら
僕はしゅぐお風呂に飛び込んだのら
ぷくぷくぷくぷく…ありっ?
なじぇか、僕はしょのままジャグジーのお風呂で溺れしょうになったのら
「今、ぽわんになっててで三頭身だから、気をつけて」
ミンが助しゅけてくれたのら
ぽわんで三頭身?
ろーいうことらろー?

とにかくミンにしゃしゃえられながら
お風呂にはいったのら
油断しゅると、お口にお湯が入ってしまって
たいへんなのら
三頭身らから…
ぷくぷく、しゃわしゃわ、頭までつかりしょうらったけろ
ミンにしっかりちゅかまってはいったのら
気持ちがよかったのら
ふふううん…

お風呂から出たら、ミンがパジャマを着しぇてくれたのら
さっき買った、てろんてろんの黒いやちゅ
「今日は三頭身だからちょっと余ってるけど、気にしないで」
はい、気にしましぇん
お袖と裾をズリズリしながら、またベッドに行ったのら
もうおねんねの時間らから
みんなのバスはもうホテルを出たかにゃあ…
イナはろうしているらろう
テジュンしゃんと楽しくやってるかにゃ

気がちゅくと、ミンが携帯メールしてるのら
誰にしてるの?と聞くと
「ドンジュンさんにメールしたの」
何て?何て?
「すごい所に住む事になったから、今度遊びに来てね、って」
しょうか!
僕もスヒョンにメールしゅるっ!
「スヒョン、僕ら、しゅごい所に住む事になったのら。しゅごく広いから
お泊りもれんれんOKなのら。いちゅでも泊りに来ていいよ。そんでもって…」

バチっ!!!

ありっ?
何でいきなり暗くなるの?
ミン、ろーして電気消しちゃうの?
スヒョンにメールしてたのに…
「僕がドンジュンさんに遊びに来るように連絡したからいいでしょ。さっ、寝るよ」
はあい…
やっぱ最近強気なのら、こいつ…
れもしかたがない…
らって、あんなこと…こんなこと…ぽっ…

と、とにかくおやしゅみの時間なのら
ミンにひっついたら、抱っこしてくれたのら、ぐふぐふっ
おやしゅみなしゃい…

ところで朝になったら、三頭身は直っているかにゃ…?


奇妙な関係  ぴかろん

ジャグジーで戯れた後、僕達はリビングに戻った
バスローブのままで飲んだり食べたりしながら、くだらない話をした
考えてみれば、僕はイナとこんなことをした事がない
ずっと祭の準備に追われていて、イナといる時といえばキスしたり…
それかあいつを抱くだけだった…

「どうしたの?急に黙り込んで」
「…いや…。僕…どうしてお前とこんな事してるんだろうって…不思議になっちゃって…」
「…」
「イナとはまだ、ちゃんとデートもしてない…。二人で食事したのだって従業員食堂で食ったぐらいだ…」
「…」
「君もそうだろ?ギョンジン君と」
「アイツの話しないでよ!」
「…」
「飲もうよ。次は何飲む?ジン?」
「…」
「…イナさんが恋しくなった?!」

きつい口調でラブが言った

「帰れば?!今から帰ればいいじゃん!」
「ラブ」
「みんなイナさんが好きなんだ!」
「ラブ」
「いいよ!帰ってよ!俺は帰らないからねっ!」
「帰るときは一緒に帰るよ…」
「イナさんにそう約束したから?!」

ラブの目に涙が溢れていた

「なんで泣くの?僕がイナの話をするのは自然でしょ?僕がイナを好きだってこと、君、知ってるだろ?」
「嫌だ!イナさんの話なんかしないでよ!」
「…ギョンジン君の事を思い出すからか?」
「…」

その時また携帯のメール着信音が鳴った
僕は電話の方に向かい、メールを読んだ
イナからだった
今日はよく来るな…
弱ってるのか?

『テジュン…
テジュン…テジュン…
俺はお前の名前ばっかり呟いてる

ギョンジンはラブの名前ばっかり…

繰り返しWait For Meを聞いて、二人で項垂れてる
会いたい
すっごく会いたい

まだ丸二日も経ってないのに
会いたくて堪らない

どうしたらいい?
電話してもいい?
声が聞きたい…
声聞かせてよ…
だめ?』

イナ…

僕は堪らなくなって電話をかけた
ワンコールですぐに出た

『テジュン!』

ああ…
イナの声だ…

「イナ…」

僕の声は震えているだろう…

『てじゅ…てじゅだ…』
「ああ…僕だよ」
『てじゅ…いつ帰って来るの?…まだまだかかる?…俺、どうしたらいい?てじゅ』

イナの顔が浮ぶ
きっとくしゃくしゃの顔をしてる

「ご飯…食べたか?」
『てじゅは?』
「食べてる」
『今ご飯?何食べてるの?』
「ん?オープンサンドと…野菜のスティックと…カナッペと…」
『何それ…。パーティの残りモン食ってんのか?』
「くふっ…違うよ…」
『ラブと一緒なんだろ?』
「ああ。変わろうか?」
『…うん…』

僕はラブに電話を差し出した
ラブはきつい目をして僕を睨みつける
構わずラブの耳に受話器を当てる


『…ラブ…』

耳に押し付けられた電話からアイツの声がした
俺は唾を飲み込み、目を見開いて、こぼれそうになる涙を堪えた

『ごめんね…ラブ…ごめん…。僕が悪かった…。僕が全て…』

俺は何も聞きたくなくて、テジュンさんから電話をもぎ取ってバッテリーを外した

「ラブ!何するんだ!」
「アイツが出たから切った!」
「バッテリー返して!」
「外しておこうよ」
「…返して」
「耳障りだ!気が散る」
「ラブ!」

強い口調で叫んだテジュンさんを睨みつけて、俺はバーボンのボトルに口をつけて飲んだ

「やめろ!」

テジュンさんはボトルをもぎとった
はずみで中の液体が僕の体にかかった

「…あ…すまない…」

バスローブが濡れた
俺は…バスローブを脱ぎ捨てた

「ラブ…」

そしてテジュンさんに抱きついた

「やめなさい…ラブ…」

目が泳いでる…面食らってるの?

「チャンスだよ…どう?」

テジュンさんはまた固く目を閉じた
拒絶するんだ…あんたも…

「キスぐらいしてよ」


震えた声でラブが言う

「バッテリー返せ」
「返したらキスしてくれる?」
「…ああ…」
「うんと凄いのだよ!」
「…ああ…」

ラブはバッテリーをくれた
そして僕の唇に吸いついた
ラブの頬が涙で濡れている

やっぱりギョンジン君の事が好きなんじゃないか…
馬鹿だな…
どうして素直にならないんだ…


◇ Bon voyage...three..◇  妄想省家政婦mayoさん
  
僕はちぇみの腹に頭を乗せ仰向けになりながら
片手をちぇみの頬に置いていた..

竹の枝や葉は風が吹く度にぎやかに会話をしている
ちぇみは目を閉じて枝葉の声を聞いていた...
時々僕の顔を覗き込んで瞬きをして頷く..
僕達は何時間も飽きることなく寝転がっていた

「ちぇみ..」
「ん..何だ..」
「来てよかった..」
「そうか...」
「ぅん..ね..このあたりは人が来ないの?」
「ん..奥のここいらは一般人は入れない..」
「そうなの..デカイ顔パスってやつ?」
「あのなぁ..デカイは余計だっ..」
「えへへ…」
「ここは夜もいい..一部ライトアップもするが月光が当った竹はいいぞ.. 」
「ほんと?」
「ん..朝もやの時間帯もいいんだ...どっちも観るか?」
「うん#. 観る..観る..」

夕焼けのオレンジ色の光が竹に反射したのを見届けた後..
僕達はようやく起き上がった..
また.ちぇみ..じゃなかった^^;馬にまたがって何回か往復した後
さっきの小屋のおじさんと星里の方へ食事に出かけた

竹林田園カフェっていうのがあってさ..
でも普通の食堂みたいなんだけど^^;
たけのこのお刺身..凄く美味しかったよ..
採り立て..剥きたてじゃないと駄目らしい..
たけのこって.こんな味してたんだ..って感激した..
ちぇみはそんな僕を見て嬉しそうに僕の髪をまたくしゃくしゃする..
一緒に行ったおじさんもくしゃくしゃして笑ってた..

夜は歩いて竹林に行った..
ライトアップされた竹は節の部分で陰影を作っていて
昼間見たときより蠢いて見えた..

「ちぇみ.夜の竹は全然違うね.」
「ん..昼間は弱そうで強い..夜はその強い部分が見えるだろ..」
「ぅん..迫ってくる感じ..」
「そうだな..」

僕達は昼間やったように竹を持って背を反らせて見た..
昼間と全然違う竹の怖さを感じた…

ライトアップされていない竹の群生の方へ歩いていくと
そこはまた違う雰囲気だった..
枝葉の緑は月光に反射して時たまキラッ# っと光る
細い枝葉からだんだんと太くなってすぅ〜っ伸びる竹が
月光を浴びると妙に妖しく見えた..

「何か..妖しいね..」
「ふっ..ん..」
「ちょっとぞくっ#っとくる..」
「あはは..そうか..」

月光を浴びて妖しく光る竹の下へ俺はテスを引き寄せた..
テスが俺の首に絡みつく.俺はテスを強く抱き..熱いkissをした..

僕とちぇみはいつものように枝葉の間を浮遊する..
ちぇみが僕を抱え枝を掴んで枝を撓らせ地面を蹴って
空に届くかの如く一気に浮上する..
僕は浮上の瞬間が一番好き..

その夜のテスは今までにない撓りで俺とひとつになった..
俺の名を幾度も呼び..俺を夢中にさせた..

ちぇみ.. ..
ん.. ..
よかった?
ん.. ..

僕とちぇみは深い眠りに落ちた..


Love Again 2   足バンさん

僕もスヒョンもとりとめのない雑談をしながら食事をした
スヒョンがオ支配人と残務処理をしている時
あのフラのご婦人方のチェックアウトに遭遇し
皆さんの手に丁重にキスをしてお送りした話なんかを聞いた
おかげで皆さんお店にも顔出すわって約束してくれたみたい

僕は料理に使った白ワインの残りをちょっともらった
だってアクターで寮に帰るつもりだから

僕はなんとなく居心地が悪かった
大騒ぎしてふたりで作った料理も楽しかったし
パスタや、スヒョンがさっと作ったドレッシングや
チーズやオリーブもすごくおいしかった
すごく楽しかった

でもつい僕の頭の隅のどこかでこれからの不安が芽をだす
目の前で笑っているスヒョンが
このまま僕の側にいてくれるなんて思えなくて
スヒョンは僕が必要だって言ってくれたけど
どんな風に必要なんだかまるきりわからなくて
あのミンチョルさんじゃなくて僕である理由がわからなくて…

「どうした?もう疲れた?」
「うん…そうじゃないんだけど…」
「洗いものは僕がやるから大丈夫だよ」

って言いながらスヒョンは食洗器にどんどん食器を放り込んでる
そういうのって”僕がやる”っていわないと思う…

「キッチンすごくきれいだね…使ってるの?」
「ちゃんと料理はしてるよ。必要ないものは置かない。調味料も最小限」
「今日いっぱい買っちゃったね」
「うん、これちゃんと消費するまで作りに来いよ」
「やなこった!」

スヒョンはあらかたその辺のものを片付けると
ベッドの側においてあるオーディオになにやらCDを入れた
天井の小さなスピーカーから流れてきたのはCARPENTERSのアルバム
舞台でミンチョルさんとこの歌声で踊っていたのを憶えてる

スヒョンはキッチンに戻りミルを取り出して珈琲豆を挽きはじめた

僕はテーブルの上のペリエのグラスをぼんやり見ていた
部屋の間接照明の黄色みがかったひかりが
カットグラスに反射して宝石のように輝いている

曲は”We've only just begun”がかかっている
スヒョンが近づきすぐ横のテーブルに肘をかけてその上に顎を乗せた
僕はスヒョンの視線を避けてグラスの水を一気に空けた

「一緒に住む気ないの?」
「…」
「いやなの?」
「ん…僕…」

あんまり側にいると…離れるのが怖くなりそうで…
それに…
曲が”Superstar”に変わった

僕はいきなり椅子から立ち上がった

「もう遅いから帰るね」
「珈琲は?」
「いい」
「明後日は新人顔合わせだよ、必ず出るように」
「うん」

僕は玄関まで歩いてドアの前でまだエプロンを付けてたことに気づき慌てて取った
まったく!こういう時にちょっとまぬけな僕!
振り向くと案の定スヒョンはおかしそうに見てたからエプロンを思いきり放った

「アクターのキー置きっぱなしだよね、ちょうだい!」

スヒョンはキッチンの引き出しのどこかからキーを取り出し
硝子のテーブルに寄りかかると目の前でキーをぶらぶらさせた
そして自分のシャツのポケットにわざとストンと落とした

「取りにおいで」

「ちょっと!帰るんだから!」
「だから取りにおいでって」
「うぅ…じゃぁいい!歩いて帰るから!えっと…あれ?」
「財布だとか寮のキーは僕の車の中だよ」
「じゃあそっちの車のキー貸せっ!」

スヒョンは今度はジーンズのポケットから自分の車のキーを出し
今度は後ろ向きにそのキーを放り投げた
キーは黒いベッドカバーの上にぽとりと落ちた

「いいかげんにしてよっ」

僕はすぐにスヒョンの横をすり抜けベッドにそのキーを取りに走った
とにかく今日は頭を冷やしたかったんだ

振り向こうとした時、僕はいきなり抱きしめられた


奇妙な関係 2   ぴかろん

僕はラブを押し戻し、瞳を見つめて言った

「戻ろう。な?会いたいんだろ?素直になれよ。正直に、どこがイヤだったか言ってやれよ。あいつに謝らせてやればいい。だろ?」
「…」
「ラブ!」
「少し…考えさせて…」

ラブは濡れたバスローブを拾いあげてまた羽織り、未開封のジンに手を伸ばした

「飲みすぎだよ」
「そんなに飲んでない」
「やめときな」
「ねえ…」
「ん?」
「謝らせて、それからどうするの?…それから…どうしたらいいの?」
「…元通りになればいいじゃないか」
「…なれると思う?」
「…」
「あいつはずっと俺に引け目を感じながら俺と付き合うんだぜ…違う?」
「…引け目?」
「テジュンさんなら解るんじゃないの?!イナさんだってずっとテジュンさんに引け目を感じてるんだよ!きっと!」
「…」

ラブはジンをグラスに注ぎ、一気に飲み干した
そして今度はテキーラに手を伸ばす

「何やってるんだ!」

押さえようとした僕をひらりとかわし、テキーラをテキーラグラスに注ぎ、炭酸を入れ、ソンブレロを僕に被せた

「…ラブ?」

やけになったのか?

「俺を怒らせたバツ!」
「は?」

ラブはニヤっと笑い、ライムとテキーラグラスを持つと、僕の前に立った

「口、開けてごらん」
「は?!」
「もっと大きく開けて」
「…何…」
「いいものあげるからさ」
「…」

戸惑っていると、ラブがライムを僕の口にねじ込んだ
ライムのすっぱさが口いっぱいに広がる
堪らなくなって口をゆがめると、ラブはテキーラグラスを膝に打ち付けて急いで僕の口に流し込んだ
そしてグラスを置き、僕の口を閉じさせ、ソンブレロが吹き飛ぶぐらい、僕の頭を揺さぶった

僕は何がなんだかわからなくなった…

暫く揺らされ、そして顎をぐいっと上にあげられて、僕はテキーラを胃の中に流し込まれた
すぐにラブが僕の唇を塞ぐ
息ができなくなりそうだった…

こんなことをするラブが哀しくて、涙が出た

「泣かないでよ…俺だってどうすればいいのか…必死で考えてるんだから…」

ラブの目を見ると涙が一杯溜まっていた…

考えている?
ギョンジン君が引け目を感じる?
…イナも僕に引け目を…感じている?
そんな事は…そんなはずは…

それなら浮気のキスなんかしないだろう?

どういう意味だ?
どういう…

僕はラブの真意が量り切れず、ラブの瞳を読み取ろうとした
ラブはしばらく突っ立っていたが、また酒の方にいき、色々な酒をちゃんぽんにして飲んでいた

「悪酔いしてもしらないぞ…」
「…酔えない…」

哀しい目をして呟いている

僕はさっき外されたバッテリーを戻し、メールが来ていないかチェックした
あんな切り方をしたので気になっていた

着信音が鳴る
やはり…

『どうしたの?なんかあった?
ギョンジン、ラブに謝ったと思ったら急に泣き出して…電話取ったら切れてたんだけど…
ラブ、やっぱまだ怒ってるのかな…

だったら…今までの俺のメール見せてやってよ…
ギョンジンがどれだけラブの事思ってるか、どれだけすまないと思ってるかわかるはずだよ

Wait For Me聞きながら

『僕の気持ちそのまんまだ…』

って呟いて、大声あげて泣いたんだ

俺もお前に謝んなきゃいけないことばっかしてる…
だからかな…
お前がラブとどうなっても、俺はお前を信じてるし愛してるって思えたのは…
お前が許してくれたように、俺もきっとお前みたいにできるって思った
でも…もしかしたらお前は、そんな事しないかもしれないもんな
そんな事できない男なのかもしれないもんな…

浮気するぐらいなら本気でラブに…

それでもいいよ…
それだけのこと、俺はお前にしてきたんだと思う…

でも…

頭では解ってる

けどさ…やっぱり寂しいんだ…たまんない…
もっと喋りたかった

ラブは荒れてるの?
優しくしてやってる?

ちょっと妬けちゃうけど、俺、我慢する

いい子にしてるからさぁ…早く帰ってきてよ…

俺、ラブにも会いたい
ギョンジンも待ってる

あいつ、ラブがいないと、だめになるよ…
全然ダメだ…
俺なんか傍にいても何にもなんないよ…
そう伝えてやってよ…お願いだから…


テジュンに会いたい
会いたくて堪らない
一緒にいたい』


ラブはぐいぐい飲んでいる



どうしたらいいんだろう…

とにかく…
イナが言うように…メールを見せてやるか…

でも今はダメだな…
今はとことん飲ませてやるしかないか…

まったく…
僕のまわりにはどうしてこう…

「傍迷惑なやつばっかりが…」

声に出して呟いてから、僕は目を閉じて、可愛い野良猫を瞼に描いた


☆ Ti amo * Te quiero..☆  妄想省家政婦mayoさん

僕は闇夜をベットの傍へ誘い闇夜のいつもの様に後腰で手を組む…
闇夜は僕の髪を弄びながら眉を上げ口元でちょっと笑った…

「シェフ…今日のメニューは?」
「ん〜…Lovers Rock…Jazz Round Midnight… Personalidade…いかがですか?アガッシ…」
「チョァ…(0K)…」

♪Jazz Round Midnight

♪Lovers Rock

♪Personalidade


後ろで組んだ手を引き寄せると闇夜は僕の髪に手を差し入れた…
互いに唇を捉えそっと離す…唇が軽く触れあったまま互いに呟く…

「「Bon appetit!」」(どうぞ召し上がれ…)
「「ぷっ…」」

互いに唇を唇でなぞりながら僕は闇夜のローブのベルトを解く…
同時に闇夜も僕のローブのベルトを解いた…
闇夜の鎖骨から手のひらを這わせ両肩からローブを外す…
両腕を下げた闇夜の腕からローブが床に落ちる…
僕は闇夜の手のひらを掴み僕の胸に這わせ肩からローブを外させた…
僕は両腕を下げローブを床に落とした…

しなやかな闇夜の両腕が僕の首に絡む…
僕は両腕で腰を支えゆっくりと闇夜を横たえた…

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

月光の中で浮かび上がる白い肌…僕は一瞬…幻に見えた…
僕は幻ではないことをひとつひとつ確かめるように…すべての感覚で確かめていく…

何度も…何度も…

滑らかな肌に唇を…舌を這わせる…その度に彼女から小さな吐息が洩れる…
ゆるりと手のひらを滑らせ…指先でリズムを奏でる…その度に彼女の小さな叫びが聞こえる…
幻ではない彼女の吐息…叫び…僕は歓喜に震え…彼女の肌に夢中になる…

彼は私の唇を捉え舌を絡ませながら…私のくるぶしに軽く手を添えた…
くるぶしからゆっくりと折り…そして…私の中心を軽く捉えた…
小さな波とともに胸のふくらみに指先でリズムを奏でる…

背中が仰け反るたび…彼の逞しい腕は私の頭に手を添え…広い胸板へ呼び込む…
彼は幾度かの小さな波の後…私の中心を大きな波で捉えに来た…

僕は小さな波を幾度も幾度も繰り返す…僕の背に回した彼女の片手が僕の臀部へ降りる…
彼女は滑らかな動きでボクの臀部を愛撫し僕に大きな波を促す…
僕は大きな波で彼女を捉えに行った…

波を寄せるたびに胸から喉元へ…顎へ…唇を…舌を這わせ…そして彼女と唇を重ねる…
大きな波を繰り返すたびに彼女は大きく撓る…左右の撓り…前後の撓りは僕を翻弄する…
僕は呻きの中で夢中で彼女の名を呼ぶ…
彼女は僕を掻き抱き…僕の名を呼ぶ…幾度も洩れる吐息の中で僕の名を呼ぶ…

  僕は君を…君を待って…待っていてよかった…君を信じ続けてよかった…
  僕の忍耐が報われた…この日を絶対に忘れない…


僕の中心が震え…彼女の中心が震え…互いの痺れが中心から足先へ走り…
互いの足が絡み合う…一気にからだ全体へ伝わる…そして昇天を迎える…


僕と彼女は昇天の瞬間互いに呟いた…

  Ti amo * Te quiero… → ( I love you*I love you…^^;;)

昇天テソン ^^;


☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

僕と闇夜は歓喜の震えが互いに収まるまで互いの指を絡めていた…
僕はゆっくりと仰向けになった…
闇夜は仰向けになった僕の心臓と自分の心臓を合わさるように半身を重ね…
僕の肩に顔を埋めた…僕は闇夜の頭を抱き…髪にkissを落とす…
僕が腰を引き寄せると互いの足がまた絡まる…
闇夜が僕を見上げくすっと笑う…

「どうした…」
「シェフ…デザートは?…」
「もちろんご用意してますよ…マドモアゼル…」

テソンはサイドテーブルに置いたリモコンで♪を替えた…
French Cuisine…テソンがアルバム名が気に入って買ったCDだ…

♪French Cuisine


「mayo…」
「ん…何…」
「僕等もちょっと旅しようか…」
「ぅん…」

僕と闇夜はそのまま目を閉じて夢を見た…


【86♪白い花のサンバ 】(勝手にロージーの愛の世界12) ロージーさん


奇妙な関係 3   ぴかろん

ラブは酔いつぶれて寝てしまった
ベッドルームに運ぶのに苦労した
苦しそうな顔をしている

ギョンジンもイナも引け目を感じるというのはどういう意味だろう…
引け目を感じてて当たり前だろ?
だから謝らせりゃいいじゃないか…
それで解決だ…

そうじゃないのか?
何が言いたいんだよ…ラブ…

「うう…」

ん?

「気持ちが悪い…吐きそう…」

おいおいおいおいおいいいいっ!

僕は慌ててラブをベッドルームに付随したシャワールームの洗面所に連れて行った

ここはまだ入ってなかったな、フム、ここのアメニティーグッズは…

なんて言ってる場合じゃない!
ラブの背中を擦ってやった
苦しそうに吐いている
あんな飲み方をしたら、そりゃ、吐くよ
気持ち的にもめちゃくちゃだったし…
解しかけたと思ったのに、逆戻りかな…
こうなったら強制連行するしかないか?

ラブが落ち着くまで背中を撫で続けた
ベッドに運び寝かせてやると僕の腕を掴む

「一緒に寝て…」
「ラブ」
「お願い…くっついてるだけでいいから…」

ため息をついて言うとおりにしてやった…
可哀相なラブ…可哀相なギョンジン…
可哀相な…僕のイナ…

抱きしめてやると、安心したように寝息を立てた
そういえばろくすっぽ寝てなかったんじゃないかな…

僕も…眠ろう…
朝までぐっすりね…
眠っている間は…シアワセでありますように…

疲れていたからだろう
僕はすぐに意識がなくなった


ホール&オーツの曲が聞こえて僕は目が覚めた
いるはずのラブがいない…
僕は慌ててリビングへと向かった

ジャグジーのあるテラスに立って、ラブは朝の海を見つめていた
僕は彼の近くに歩み寄り、肩を掴んだ

「大丈夫か?」
「ごめんね、迷惑かけちゃって…」
「…なぁラブ…やっぱ、今日、帰ろうよ…」
「…テジュン…。明日にしてくれない?」
「…明日か?明日なら一緒に帰るか?」
「…気持ちの整理がついたらね…」

今日一日かけて気持ちの整理をするってのかな…

「つかなかったら帰らないのか?」
「…」

僕は携帯電話を取りに行き、ラブにイナからのメールを見せた

「何…読んでもいいの?」
「ん…イナからのメール、全部読んでみて」

ラブは時折クスクスと笑ったり、しんみりしたりしながらメールを読んでいた

「ありがとう…」
「な?ギョンジンも反省してるんだよ…」

ラブは答えなかった

「…ね…。今日一日、僕とたっぷり付き合ってよ」
「へ?」
「ショッピングして、レストランでご飯食べて…、テジュンのしたいこともして…。そんで部屋に帰ってきてジャグジー」
「また?」
「今日はね、花びらを浮かべるんだ。それやんなきゃ帰らない」
「…本当に明日、帰るのか?」
「…だから…」

気持ちが固まったらね

とラブは僕から目を逸らして言った
そのままリビングに入り、昨日の残り物のサンドゥイッチやらフルーツやらを食べた
そして僕らはショッピングするために、ホテルのショップに向かった

「何を買うのさ」
「服」
「…服?」
「俺に似合う服、選んで…。テジュン好みのヤツ選んでよ。俺もテジュンに選ぶから」
「…」
「一緒にいた思い出に…さ」
「…ラブ…」
「今日は、それを着て遊ぼうよ。今日一日、テジュンは俺の彼氏。ねっ?」

柔らかい微笑みを見せてラブが言った

「買い物してからどうするの?」
「んーとね。ジム行ってもいいし〜ビリヤードしてもいい。テジュン向けにボウリングでもいいよ」
「ふっ…僕向けなら『卓球』だ!」
「クフッ…」

小さく吹き出してラブは僕の腕に絡みついた

「テジュンといると…楽しい…」

語尾が震えていた
ギョンジンとこんな風に過ごしたいんじゃないのか?
僕じゃなくてギョンジンと…

「相手を間違えてない?」
「間違えてなんかいない」
「僕は…君とじゃなくて、イナとこうして過ごしたい」
「…」
「君も君の本心を言ってくれよ」
「今は…。貴方と過ごしたい。今日一日だけじゃん…。それでもだめ?」
「ラブ」
「あっ…あれなんかどう?テジュン結構似合うかも…」

ラブはショップの中に入っていった

ラブ…。僕も君といて楽しいよ。でもさ、お互いに心の中に大好きな人を隠してるよね?
そんなのって心苦しくないのか?

『イナとこうして過ごしたかった。イナよりも先に、君とこんな、恋人同士のような時間を過ごしてしまった』

君も同じように思ってないか?

「テジュン!来てよ!」

明るい笑顔を見せて僕を手招きするラブ
僕は唾を呑み込み、そちらの方へ進む
哀しい天使が僕の腕を掴む

「心配しないで…。明日には…帰るから…。だから…今日だけ、俺達、恋人になろう」

澄み切ったラブの声に、先ほどの震えはなく、その瞳にもなんの曇りもなかった
ラブの中で何かが変わった
自棄ではなく再生のための芽吹きを微かに感じた
その芽を摘んではいけない
しっかりと葉を広げられるように、僕は力を貸してやらなければ…

「わかった…。僕達、恋人同士だね?」
「俺の前でイナさんの事、今日だけは言わないでくれる?」
「難しいな…言っちゃうかも」
「言ったらぶつよ」
「ぶったら拗ねるぞ」
「拗ねたら…キスしちゃうぞ」
「…なら…拗ねる」

顔を見合わせて笑った
ラブは僕の腕をひっぱり、似合いそうだと言って白地に赤い薔薇の花が描かれた、随分派手なシャツを僕にあてた

これは…ないだろう…


Love Again3 足バンさん

ベッドの上のキーを掴み振り返ったドンジュンをいきなり抱きしめた
僕はキーを握りしめ固まっているその目を覗き込む

「なに苛ついてるの?」
「…」
「そんなに不安?」
「スヒョン…」

曲が”Make Believe It's Your First Time”になった時
不意にドンジュンの携帯がメールの着信を知らせた
僕は彼が取り出した携帯を取り上げベッドに転がした

そして無理矢理ドンジュンをベッドに腰掛けさせその横に座る

「おまえ、僕に隠してる物があるでしょ」
「え?」
「今日テジンが”ドンジュンに渡しました”って言ってたよ」
「…」
「出してごらん」
「でも…」
「いいから。持ってるんだろう?」

ドンジュンは渋々ジャケットの内ポケットから小さな薄紙の包みを出した
包みをほどくと、揃いの銀のペンダントがさらりと音をたてた
鎖の先には小さな小さな銀の円盤が光っている
ドンジュンは目を伏せて罰を待つ子供のように沈んでいた

「なんでこれを隠すの?」
「スヒョン…前にそんなものは要らないって…」
「でもテジンに頼んだんでしょ?」
「ふたつとも…僕が持ってるつもりだった…」

ドンジュンの目からぽろりと涙がこぼれた
僕はひとつを取りそのシンプルな輝きをぷらぷらと揺らしてみた

「どんな形も…思いつかなかった…一番自然な形でいたかったから…スヒョンとは…」

スヒョンは思いがけず優しい目で僕を見た
”こんな物に囚われたくないと言っただろう”って言われると思ったのに

スヒョンは手の中の鎖を持ちかえ僕の首に手を回した
僕の喉元に小さな銀色の円が揺れた
そして黙ったまま
もうひとつの鎖を自分の首につけた

「テジンに礼を言わなきゃいけないな」
「スヒョン…」
「僕たちらしい形だと思うよ」

僕はドンジュンに顔を寄せて
ぽろぽろと涙がこぼれる頬にキスをした

「どんな風におまえが必要だか説明しなきゃだめ?」
「…」
「そんなのって…なぜ人に酸素が必要なのかを解説するようなものだよ」
「…」
「わかる?…必要なものは必要なんだ」
「スヒョ…」

僕はドンジュンが握りしめているキーを取りあげ床に落とした

「帰ってきたらもう一度恋をしようって言ってくれたね」
「ん…」
「じゃあ…」

ドンジュンの首の後ろに手を差し込みゆっくりと顔を近づける

「もう一度好きになってくれる?」

そっと唇が触れた瞬間ドンジュンの閉じた目から涙が溢れた
僕は孤独に震えながら待っていてくれたその魂を
心からいとおしく想った

曲は”I Just Fall In Love Again”に変わった

涙で湿った唇を僕の唇で噛むようになぞる
舌の先と先が触れる度に首筋に鳥肌がたつ
一度唇を離しドンジュンの瞳を覗き込むと
その目が本当に僕でいいの?と語っている
いとしさに胸が苦しくなった
そして僕の中のオスが一気に吹き出した

僕は両腕で力いっぱいドンジュンを抱きしめると
歯がぶつかりあうのもかまわず激しく唇を吸った
そして唇を重ねたままジャケットを脱がせて
そのままベッドに倒れ込む

シャツのボタンを外し首筋から胸に吸いつくと
ドンジュンの口から小さなため息が漏れた

「スヒョン…」

スヒョンの暖かい唇が舌の先が僕の胸を這う
昨日の僕はもうこうされることは二度とないかもしれないと覚悟していた

スヒョンが膝をついたままシャツを脱いでいる時
僕は半身を起こして彼の首にしがみつき唇を奪った
僕たちはバランスを崩してそのまま倒れ込み
ベッドの端からなだれるように床に滑り落ちた

きつく抱き合い唇をむさぼりながら何度も回転し
庭に面する窓にぶつかってようやく静止した
冷たい窓ガラスが肩に触れる
スヒョンはもどかしそうに僕の服を脱がせ
くちづけながら自分の衣服を取り放り投げた

もう僕たちはどうにも止まらなかった

ひんやりした床の感触と身体の中の熱いものに
僕は声にならない声をあげる
スヒョンの胸の銀の鎖がリズムを刻んで揺れる

ゆっくりした動きの波に痺れながらも頭に想いが渦巻く
スヒョンを失うかもしれないと思った自分を
ギョンビンを励ましながら大声で泣きたかった自分を思い出す
あおった酒の苦みだけが蘇る

「もう考えるな…僕はここにいる」

月明かりにほのかにひかるドンジュンの喉を見ながら
僕は責めたてつづけた
ドンジュンの中から流れ込む哀しい思い出を全て追い出し
不安を感じさせるいとまを与えぬように

ドンジュンの肩を掴んだ両腕に汗が光る
ドンジュンの開いた口から漏れる声に
僕の身体の中心も頭の中もすべてが痺れていく

ドンジュンの手が背中に食い込み震えだした時
僕は最後の力で激しく動いた
そして彼の身体が弓のようにしなった時
そのすべてを解放した

身体を重ねたまま僕たちは長いこと動けずにいた

ドンジュンの汗と涙に光る顔を眺めた
彼は震える指で僕の顔をそっとなぞる
その指にキスをして
僕はかすれた声でささやいた

ありがとう…愛してるよ…

ドンジュンはそっと目を閉じて
小さく何度も頷いた

♪これは夢に決まってる
 それとも私の隣にいるのは ほんとうにあなた

 私はあなたの腕の中
 確かに目は覚めているけれど
 夢のよう

 もう一度恋してしまいそう
 触れるたびごとに恋してしまいそう
 どうしようもなく
 あなたに恋してしまったみたい


【87♪新しいラプソディー】(勝手にロージーの愛の世界)13 ロージーさん

【88♪マイ・ラグジュアリー・ナイト】(勝手にロージーの愛の世界)14 ロージーさん


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