Last night れいんさん
打ち上げもお開きになり皆それぞれ部屋に戻り始めた
テジンさんが
「僕達も部屋に戻ろう」
そう言ったけど、僕は彼に先に部屋に戻っててもらう様に言った
だって…一緒に部屋に戻るのが、何か気恥ずかしかったから…
それに僕を誘ってくれたテプンさんにも挨拶しておきたかったし…
「本でも読んで待ってるよ」
テジンさんはそう言ってラウンジを出た
僕はひととおり挨拶をすませ、片付けも少し手伝い
バーテンダーの人達にもお礼を言ってから彼の部屋に向かった
調子に乗って少し飲みすぎたみたい…
しばらく時間がかかったから、彼が起きて待っててくれているか心配になった
僕は少しおぼつかない足取りで彼のいる部屋に急いだ
部屋の前に立ち軽くノックをすると、扉が開いてそこには彼が立っていた
「おかえり」
彼は優しい笑顔で僕を迎え入れてくれた
彼が僕を待っていてくれた事が嬉しかった
本当は…早くあなたの顔が見たかったんです
「ちゃんと起きててくれたんですね」
僕の声は少し弾んでいたかもしれない
足元が少しふらついてる僕を見て
「酔ってるのか?しょうがないな…」
彼はそう言うと僕の腕を取りベッドに腰掛けさせた
そして僕のシャツのボタンを二つほどはずした
「どう?少し楽になった?…ほら冷たい水…」
彼に渡されたグラスの水は冷たくて少しレモンの味がした
僕はそれを一息に飲みほした
口元からこぼれた水が僕の喉元を伝い落ちる
「僕は本の続きでも読んでるから、横になって少し眠るといい」
そのまま目を閉じてしまったら深い眠りに誘われそうで
僕は二・三回、頭を振って立ち上がった
「僕…シャワーを浴びてきます」
「大丈夫なのか?」
「ええ…大丈夫。少し酔いを醒ましたいから…」
僕はそう言って浴室に入った
白いシャツを床に落とし、身につけていたものは全部脱ぎ捨て生まれたままの姿になった
シャワーをひねり熱いしぶきを顔に受けた
今日一日はいろんな事がありすぎて…
さすがにけだるさを感じた
熱いシャワーのしずくが僕の背中や胸をころがり落ちていく
少し頭がすっきりしてきた
白いローブをまとって鏡に映る僕を見た
鏡の中の僕は少し不安気な顔をしていた
なんて顔してるんだ…
頬を軽く叩いて僕は浴室の扉を開いた
浴室のドアが開いた
僕は本から視線をはずし顔を上げた
白いローブをはおり肩からタオルを垂らしたスハがいた
濡れた髪からポタポタと雫が落ちている
「…こっちにおいで」
スハは少し緊張した面持ちでおずおずと僕に近づいた
「ほら…髪が濡れている。風邪ひくぞ」
僕はタオルでゴシゴシとスハの髪を拭いてやった
そして手ぐしを通してまだ濡れているスハの髪をかきあげた
「前髪あげると感じ違うな…」
僕はいつもと違うあいつの額にそっとキスした
「気分はどう?」
スハは目を伏せたまま軽くうなづいた
僕はそんなあいつの瞼にもう一度キスを落とした
「今から…僕達二人だけの時間だ…」
僕はあいつの鼻すじを唇でそっとなぞりながら囁いた
スハは身を固くしたままじっとしていた
「…キスしてもいい…?」
スハの返事を待ちきれずに僕はその柔らかい唇を捉えにいった
そっと触れた後に下唇をゆっくりと味わい、それから深く口づけた
しんとした部屋にはスハが洩らす吐息と淫らな口づけの音だけが聞こえた
やっと唇を離すとスハは立っていられないとでもいう様にベッドに座り込んだ
僕も照れくさくなってきてちょっと頭を掻いて言った
「ごめん…。いつもと違うおまえを見て…つい…
…また、そっちで本でも読んでるよ…」
そう言って僕は背を向けようとした
「…待って…テジンさん…」
「え…?」
「…ここにいて下さい」
「……」
「あの…テジンさん…僕を…その…欲しいと思ってくれますか?」
「スハ…」
「テジンさんが…僕を欲しいなら…その…抱いて下さい…」
「…だって…おまえ…それは…」
「僕はこの日の事を覚えておきたい…。だから…」
「スハ…。欲しいよ…。欲しくてたまらないさ…。わかってるだろ?」
「テジンさん…」
僕は隣に腰を下ろしスハの肩に手をまわしてそっとベッドに横たえた
「いいのか…?後悔しない…?」
僕は不安気なスハの瞳を覗き込んで言った
「僕は…あなたと…」
スハはそう言って僕の首に手を回し目を閉じた
僕はもう一度スハに口づけした
それからスハの首すじにゆっくりと唇を這わせ
白いローブの紐をほどき、スハの肌を露わにした
僕も着ていたシャツを脱ぎ去り、スハのはだけた胸に口づけた
僕の肌とスハの肌とが合わさる
スハの胸の鼓動が僕に伝わる
僕が手や唇で丹念に愛撫をするたびに、あいつの唇から溜息が洩れ聞こえる
僕達は一糸まとわぬ姿になって互いの体を繰り返し愛撫した
いつもと違うスハの表情…
こんな顔は僕しか知らない
感じているの?
恥ずかしがらないで…
僕におまえの全てを見せて…
僕だけの…スハ…
互いの温もりを十分に確かめ合ったところで僕はスハに囁いた
「好きだよ…スハ…」
「僕も…」
消え入りそうな声でスハが言った
「優しくするから…」
そして僕はスハに体を重ねた
「あっ…」
スハの顔が切なげに歪む
スハの小さな呻き声に昂ぶりをおぼえながら、僕はゆっくりと動いた
僕が動くたびにスハの体が波打つ
僕が動くたびにスハの濡れた髪が揺れ動く
僕が動くたびにスハの唇から悩ましい声が洩れる
僕はその声を塞ぐ様に何度も何度も唇を重ねた
僕の背中にまわしたスハの指が爪を立てる
僕達は少しずつ高いとところにのぼっていく
そしてスハの体が大きく波打った時
僕達は互いの名前を呼び合いながらのぼりつめ、そして一つに溶け合った
僕達はしばらく言葉もないまま、互いの胸の鼓動と荒い息遣いを聞いていた
胸の鼓動がしずまってから僕は体を離し、スハの隣に横たわった
僕の腕にスハが頭をのせかけた
スハは汗ばんだ僕の頬を優しく撫でた
僕は大切なものを慈しむようにまたキスを落とした
僕達は見つめあい、そして微笑み合った
スハの満ち足りた笑顔に愛しさがこみあげてきた
朝、目が覚めた時、隣にはおまえがいるんだな…
それが僕にはたまらなく嬉しかった
そして僕達はいつしかその安堵感と甘い疲労で深い眠りへといざなわれた
【77♪君だけを My Love】ロージーさん
叱責 ぴかろん
野良猫…
愚かな野良猫…
何をしでかした?
それもこれも僕がいけないのか…
ラブ君、すまない…
僕があいつを
ほんの数時間だと思ってほったらかしにしたから
だから…
僕は僕の部屋のドアをノックした
野良猫がドアを開ける
思ったとおり赤い目をしている
僕の顔を見た途端、泣きじゃくり僕にしがみつく
ラブ君に会っていなければ僕はお前の望み通りその場でお前を抱いただろう…
僕の唇を貪る野良猫を、僕は冷静に見下ろしていた
酒臭い野良猫
一体どれだけ飲んだんだ?
泣きながらくちづけをし、震えながら唇を離し、僕の胸にしなだれかかる可愛くて残酷なその野良猫を
僕はベッドに投げ捨て、腕を押さえつけて見渡した
野良猫は妖艶な泣き顔で僕の瞳を覗き込み
そして何か感じ取ったようだ
「怒ってるの?」
「…」
「なんで怒ってるの?」
「僕がいない間、お前どんな悪さした?」
できるだけ優しく僕は声をかけた
「悪さ?…」
「誰とキスした?」
「…」
「ソクとギョンジン?」
「…」
「他にもいるの?」
野良猫の喉が動く
他にも…誰と…
「いっぱい飲んだの?」
「…」
「僕がいなくて寂しかったからか?」
「…寂しかった…」
「それで?…あのグラスは何?なんで2つあるの?誰を引っ張り込んだ?」
「…部屋に…ギョンジンが…送ってきてくれたから…一杯だけつきあってもらって…」
「一杯だけ?」
「…二杯…」
「それだけ?飲んで帰ったのか?」
ラブ君が待っていた部屋に…
「…」
「何したの?言ってごらん」
「…」
「言って」
「…」
「言えよ!」
「寂しかったんだ!」
「…何した!」
「…キス…」
「…」
「キスしたらギョンジンがシャツを…」
ああ…引きちぎられた後がある…
「ギョンジンが?…お前が誘ったんじゃないのか?」
「…キスしただけだもん…はずみで倒れこんだけどキスしたかっただけだもん…」
「じゃなんでギョンジンがシャツを破く!」
「…知らない…知らない…」
「シャツを破いて、それから?」
「…からだを触られた…胸にキスもした…」
「…それから?」
「…やめた…」
「やめた?」
「俺が欲しいのはテジュンだろって…あいつが欲しいのはラブだって言って…やめた…
帰ってった…。ごめんって俺…あいつに…言った…」
「お前が誘ったのか?」
「違うもん!…倒れこんだのは、弾みだったんだもん…キスしてたら急に…」
「襲ったってのか?」
「急に香りがどうのこうのって…。クッションに染み付いてるてじゅの…あの時の香りがどうのって…」
…
香りにかき乱された?
「はぁっ…」
僕は額に手を当てて大きくため息をついた
あいつも僕と似たところがある?
「てじゅ…女の子と抱き合った?」
「…え…」
「あまい匂いがする…」
「…ああ…。送別会だからな…。無礼講だ。お前だってギョンジンとそんな事してたんだ。おあいこだろう?」
「…責めてないよ、俺…。なんでそんな言い訳みたいな事言うの?」
「…」
ラブ君の香りだ…
「言い訳なんかじゃない…」
「…てじゅ…ごめん…」
「僕じゃなくてラブ君に謝れ」
「…」
「お前のせいで…いや、お前と僕のせいで…ラブ君は傷ついてる」
「なんでラブが出てくるの?…ラブと会ってたの?」
「…お前がギョンジンを連れ込んで酒なんか飲ませるから、あいつは…」
「なんでラブが傷つくのさ!なんでそんな事言うのさ!」
「会ったんだよ、さっきラブ君に!」
「…」
「勘違いするな、偶然だ」
「…偶然会ってどういう話してんの?!」
「…お前…もし僕が泥酔して帰ってきて、お前の事抱いて…イク時にラブ君の名前呼んだらどう思う?」
「…何言ってんの…何言い出すのさ!…ラブが好きだってこと?!テジュン、ラブの事が好きになったって事?!」
「質問に答えろ!もし僕がお前を抱きながら、無意識にラブ君の名前を呼んだらお前、どう感じる!」
「…そんなの…そんな事…イヤだ…死んじゃう…お前を殺して俺も死んじゃう!」
「…ギョンジンはラブ君を抱きながら、お前の名前を呼んだそうだよ…」
「…え…」
「…ラブ君の気持ちがどんなだか解るか…」
「…うそだ…うそ…。だってギョンジンは…ギョンジンはラブの事が好きだって…もう迷わないって…
何度も『ラブが待ってるから』って言ったんだ…だから俺、ホントに好きになったんだって思ったから…
だから…引き止めたことをごめんってあいつに…」
「…それは本当か?」
「…ほんとだよ…。あいつがハッキリそう言ったから俺も…俺もテジュンの事だけが好きなんだって解ったし…」
「お前の事はいい!ギョンジンはラブ君が好きだと、そう言ったんだな?」
「…」
「来い」
僕はイナの腕を引っ張った
顔を歪めるイナを乱暴に立たせた
まだ足を引きずっているイナを歩かせ、ギョンジン君の部屋まで連れて行く事にした
「どこ行くのさ…」
「謝れ」
「誰に…」
「ラブ君とギョンジン君だ」
「なんで…」
「なんで?…お前…あの二人にどれだけ迷惑かけてるか解ってるのか?!」
「…」
「あの最中にラブ君の名前呼んでやろうか!」
「…」
「全く!」
「なんで俺のせい?…呼んだのはギョンジンじゃないか…なんで…」
「ラブ君を抱く前にお前と会ってたんだ。その上危うくお前を抱きそうになってたんだ」
「でも…でもあいつ、俺から離れたもん!違うって言って離れたもんっ!」
「…じゃあなんでお前の名前を呼んだんだよ」
「そんなの…あいつに聞けばいいじゃねぇか!ラブが直接聞けばいいじゃねぇか!」
「…ギョンジンはラブ君を抱いたこと、覚えてないんだってよ、泥酔してて…」
「…」
「お前が飲ませたからだ…」
「…」
「…初めての夜に僕がそんなだったら、お前どう思う?ん?」
「…」
「また『死んじゃう』か?」
イナはポロポロと涙をこぼして泣きじゃくった
「解ったら…とにかく謝れ…」
「…ごめん…ごめんなさい…」
「僕じゃない!ラブとギョンジンに謝れ!」
僕だってイナと同罪なんだ…
こんな野良猫を放し飼いにしてたから…
泣きじゃくる野良猫の肩を抱いて僕はギョンジン君の部屋に向かった…
予定外 足バンさん
まぶたを撫でる陽射しで目を覚ました
カーテンを閉め忘れたんだ
横ではドンジュンがうつ伏せになって寝息をたてている
僕はその幸せそうな寝顔に満足してそっとベッドを抜けた
ジーンズをはきながらデスクの上を見ると見慣れない封筒があった
中には僕とドンジュンが向かい合っている幸せそうな絵と、
そしてドンジュン上半身の絵が入っていた
サインをみて一度挨拶をした憶えのある人の作だとわかった
そして手配したのはmayoさんだろうと察しがつく
他のメンバーにも届けられているんだろう
僕はベッドに腰掛けてその絵の端でドンジュンの頬を何度もくすぐった
迷惑そうに薄目を開けたドンジュンは
目の前の自分の絵に顔を輝かせて飛び起きた
「なに?なに?これ」
「メンバーへのプレゼントじゃない?」
「もう1枚は?どんな絵?」
「これはR指定だ。おまえには見せられないな」
「なんだよ!見せてよ!」
「じゃ僕の提案聞く?」
「なによ」
「聞く?」
「なに?」
「帰ったら一緒に住まない?」
「…」
「どう?」
「やだ」
「なんでだよ」
「絶対やだ!」
「じゃ見せてやらない」
「ぎゃーっなにそれ!大人げない!見せろ!」
まとわりつくドンジュンをかわしてベッドの上を逃げ回っていると
ベッドサイドの電話が鳴った
その音に気をとられた隙にドンジュンに絵を取られた
「もしもし?はい…」
「なんだよこれ!なにがR指定だよ!ばかスヒョン!」
「は?…はい」
「ふん…でもいい絵じゃん…へへ…」
「はい…わかりました」
「いつの僕たちだろうねこれ…」
「はい…では後ほど」
「…なに?」
「オ支配人から。ちょっと仕事に行ってくる」
「へ?」
僕はオ支配人と共に祭の後始末に奔走した
もちろん予定されていた仕事ではない
アクシデントに近いだろう
うちのメンバーが何かをしでかしたわけでもない
ホ○トたちが帰る頃になってちょこちょこ問題が起こったらしく
祭の主催側にいたBHCとして
最後にホテルとの交渉、合意確認をしなくちゃいけないらしい
チョ・ウォンさんが部屋の壁いっぱいに描いてしまった春画の
処理及び賠償交渉
ミンチョルの弟のマイク破損(調子がおかしいと10本ほど分解)賠償交渉
男組が裏庭の一部に密かに掘っていた地下通路の処理
これについては隊長の居所確認に手間をくった
結局唇が腫れて将軍と近くの皮膚科にいた
トファン会長のカツラ(5つの中の1つ)紛失の捜査、紛失届け
これはリネン室から発見された
チョンウォンが部屋の備品全てに書いた”EXECUTIVE SWEET”という文字の
賠償請求、交渉
ミミさんの部屋の浴槽排水口の植物(薔薇)除去処理及び賠償交渉
へヴンのソンジュ君の「海岸でピアノ演奏中継できなかったことへの抗議」
その沈静化の助力(なだめたってことだ)
クラブポラリスの”グッズの売れ残りをホテルで販売せよ”という
わけのわからない要求の取り下げ交渉
ふぅ…
これをなんで僕がやるはめになったかって?
ミ、ン、チョ、ル、が、さっ、さ、と、帰っ、た、か、ら、だっ!
まったく…本当に罪な男だ…
おかげで僕のチェックアウト時刻は大幅に遅れ
待ちくたびれたドンジュンに”思いきり嬉しいデート”を
要求されたのは言うまでもない
チェックアウト2 オリーさん
その車が来た時、僕は彼から少し離れたところにいた
考え事をしていたので、何も気づかなかった
どういう風に切り出そうか、そればかり気にしていた
車が違う、という彼の言葉で僕は我に返った
彼から渡された手紙を見て、僕は思わず声を上げた
「どうなってる?」
彼は僕の顔を見た
厳しい顔だった
僕は答えられず、ただ手紙に記された
マダムRのイニシャルをみつめていた
車は戻され、僕らはロビーのカフェに戻った
「どういう事か説明してくれないか」
そういうと彼はテーブルの上に手紙を投げ出した
彼の目はとても険しく苛立っていた
僕は言葉を選びながら、昨日のことを彼に話した
フラダンスのショーに出ていたご婦人に呼び止められたこと
マンションのキーをもらったこと
なぜか僕はそれを断われなかったこと
ショーが終わって、ハグした時に言われたこと
彼は僕の話を黙って聞いていた
「で、車はいつもらったの?」
「車はもらってない。知らなかった」
「そういうことなんだよ」
「え…」
「だから、一度受け取るときりがない。どんどん深みにはまる」
「そんな風じゃないと思うけど」
「僕がパトロンを持たない理由を言ったろう。忘れた?」
「いや…」
「だったらなぜ?」
「あのご婦人はそんな人じゃないと思う」
「相手が誰かなんて関係ない。いわれのない援助は受けない。返すんだ」
「…」
「どうした?返せないのか?」
「…」
「なぜ黙ってる?返すのが惜しいの?」
「違うよ」
「じゃあ、返すんだ。ミン、僕達のことは僕達でしなくちゃ意味がない
人から手助けしてもらっちゃだめなんだ。わかるだろ?」
「わかるよ、でも返せない」
「どうして?」
「だって…」
「だって?」
「その人のこと…何も知らないんだ…名前しかわからない…」
僕は自分の迂闊さに泣きそうになった
彼は背もたれに体を倒して宙を見上げた
「ショーに出てたって言ったね?」
「うん」
彼は携帯を取り出すと誰かに電話して何かを話していた
でも僕はその話も耳に入らないくらい動揺していた
何で受け取ってしまったんだろう
あの祭の浮き立った雰囲気のせい?
あのご婦人の優しい立ち振る舞いのせい?
あの人は誰?
僕らの何を応援してるって?
ああ、どうしよう…
彼がテーブルの向こうでため息をついた
「テジュンさんもわからないそうだ。あの人達はまったくの飛び入りで、
ホテルも一切タッチしてないらしい。mayoさんにはつながらない…」
二人とも押し黙ったまま気まずい時が流れた
目の前のコーヒーはとっくに冷めている
「で、マンションはどこ?」
「え?」
「もらったマンションはどこ?」
「よく知らない。地図と鍵だけもらっただけ」
「見せて」
僕はポケットからあの白い封筒を出して彼の方へ置いた
彼は封筒から地図を取り出した
彼の顔色が変わった
「ミン、このマンションのことわかってるのか?」
「え?」
彼はその地図を睨んで、顎に手をあてた
「とりあえず、そこに行ってみよう」
彼は立ち上がると僕の腕を取った
僕らはカフェを出てまた車寄せに向かった
「兄さん」
後ろから呼び止められた
「今帰るの?」
「ああ、お前もか」
「うん、僕今度ミミさんの招待で日本に行くんだ」
「ほお、何しに?」
「日本のショービズのすっごく有名な人が僕に会いたいって
デビューしろとか言われたら、どうしようかな」
「どうでもいいけど、歌だけはすこし練習しろよ」
「必要ないって。音程がずれるのは音響のせいなんだから」
「声量も足りないぞ」
「それは音響でごまかしてもらうから」
「好きにしたらいい」
「日本に行ったらショップも出そうと思ってるんだ」
「あんまり露骨に金儲けすると嫌われるぞ」
「大丈夫だよ。僕、実力あるから」
「どうでもいい。わかったから、もう行ってくれ」
「じゃあ兄さんの車で帰るからね」
「え?」
「あの車元々僕のだから、返してもらうよ」
「何言ってるんだ。あの車は僕が買ったんじゃないか」
「でもその前の僕の車、散々乗り回したじゃないか」
「お前、あの頃はバイクがいいって」
「好きで乗ってたわけじゃないよ。仕方なかったんだ
あの忌々しいPDのおかげさ」
「いずれにせよ、お前の車は倒産した時になくしてる
今の車は僕が買った。返す理由はない。」『ローンも残ってるっ!』
「でも、フロントでキーも貰ったし。いいでしょ」
「じゃあ僕たちはどうするんだ」
「BHCはバスで帰るんでしょ」
彼は喉仏をフルフルさせている
ひどく怒っている
まずい
「バスは夜出発なんだっ!」
「あ、そうなの。じゃまだたっぷり時間はあるね。ゆっくり食事でもしてけば」
そう言って弟さんは
いつのまにか車寄席に止めたあった彼のベンツに歩いていった
彼はひどく目を吊り上げている
頬まで痙攣してきた
僕はどうしていいかわからなかったけど、
とりあえず、暴れないようにそっと腕を掴んでみた
弟さんがすーっと僕らの前に車をつけた
「兄さん、このハンドルどうしたの?ボコボコじゃないか
後で修理代請求するからね」
「直さなくていい!ボコボコだって運転はできるっ!
何のためにプロのライセンス持ってるんだ!ただの飾りか!?」
とうとう切れた…
どなられた弟さんは黙って窓を閉めると、さっさと行ってしまった
それでまた僕らは車寄せでしばらく立っていた
突然彼はふーっと息を吐いて前髪を揺らした
「マンションに比べたら車なんかタダみたいなもんだな」
彼は呟くとドアマンに合図した
「あれで行くの??」
僕は思わず聞いた
「いずれにせよ、返す時はセットだから」
彼はそう言って僕にキーを投げてよこした
「ミンが運転して」
僕はピカピカのベンツのシートに滑り込んだ
彼も乗った
「場所は僕が知ってる。行こう」
僕はアクセルを踏み込んだ
車はとても調子がいいけど、彼の機嫌は最悪だった…
凄惨な部屋 ぴかろん
おじさんの部屋の前に来た
俺が出てってから二、三時間過ぎてると思う…
もう起きただろうか…
キーは持って出なかった
帰って来るつもりはなかったから…
ドアのベルを押そうとしたら突然ドアが開いた
歯ブラシを口に突っ込み、バスローブを羽織って、タオルを頭から被っているおじさんがビックリ顔で俺を見た
俺も驚いた…
言葉が出なかった
おじさんは歯ブラシを咥えたまんま、にっこり笑ってドアを全開にし、俺を中に迎えてくれた
おじさんは洗面所に向かい、俺は、俺の心と肉体が引き裂かれたその凄惨な場所へ、恐る恐る足を踏み入れた
耳鳴りがする…
耳鳴りが小さくなると同時に勢いよく流れる水の音が聞こえてきた
俺はベッドを見下ろして突っ立っていた
何から聞けばいい?テジュンさん…
どうすればいい?
「散歩、気持ちよかった?」
くったくのない笑顔で聞くおじさん
「ご飯食べたの?」
俺は首を横に振った
「じゃあ一緒に食べよう…ルームサービス頼もうか」
笑顔が突き刺さる
本当に覚えてないの?
「…昨日はごめんな…。眠って、シャワー浴びたら断片的に思い出したんだ…」
タオルで頭を拭きながらおじさんが話し出した
「どうやってここまでたどり着いたのかわかんないんだけどさ、僕、お前に会いたくて必死だったんだな…
ドアが開いてお前を見たとき、僕…息が止まりそうだった…」
視線を落として嬉しそうに喋っている…
それは…本当なの?
「お前が僕を待っててくれたこと。お前があんまり綺麗で僕、震えてたんだ…。…夢中でキスしたのは覚えてる…
その次の記憶はもう…ベッドの中だった…。お前が僕を…その…。あは…」
ああ…。咥えてやったこと?
それが?
それが嬉しかったの?
「…それから…お前が僕の名前を呼んでくれた事も覚えてる…。嬉しかった…」
その後は?
覚えてる?
「僕達、一つになれたんだね」
無理矢理ね
「…もっと…ちゃんと…お前を愛してあげたかったのに…ごめんな…」
おじさんはそう言って俺の頬を撫で、慈しむようにキスをした
俺は…この人が好き…
どうしてもこの人が好き…
だから…聞かなくちゃ…
おじさんが本当に求めているのは誰なのか…
おじさんは唇を離し、俺の髪に顔を埋めた
「おじさん…あのさ…」
おじさんは不意に俺を引っ張った
そしてベッドに腰掛けると俺のからだに顔を埋めた
「おじさんは…俺の事…」
おじさんが顔を上げて唐突に言った
「脱げよ」
「…え…」
「脱げよ、服」
まるで吐き捨てるかの様に冷たい口調だった
…なに?
…もしかして…こういう癖の人?
「脱げって…何よ…」
俺が反発するとおじさんは俺のシャツを捲り上げ、いきなり胸にキスしだした
「…やめてっ…何すんだよ!」
抵抗するとキスをやめ、俺をじっと見上げた
なんだか俺を責めるような顔をして
「…なんだよいきなり…」
「…セックスはしなかったんだな…」
「…え?」
「キスして抱きしめて貰ったのか」
「…は?」
「出て行って三時間近く、どこで何してたんだよ!」
なに?なに言ってるの?
俺が戸惑っているとおじさんは俺をベッドに引き倒し、肩を押さえて言った
「テジュンさんと逢引か…。僕の抱き方が不満だった?!…いつからテジュンさんとそういう仲なんだ」
「なに言ってんの?!どうかしてる…」
「しらばっくれんなよ!誤魔化しても無駄だ」
「…なにが…ごまかし…」
「テジュンさんの香りがする」
「…」
「お前の唇と髪と服からお前の香りと混じってテジュンさんの匂いがするんだ!キスしたんだろ?
キスして抱きしめてもらって…それだけか?!僕じゃ満足できなくてあの人に抱いてもらいにいったのか?!」
「…テジュンさんに会ったのは会ったよ…でも偶然で…」
「偶然会ってキスするような仲なのか!」
「…それは…」
「僕の事好きだって言ったの、嘘なのか!」
「…」
それは…それはこっちのセリフだよおじさん…
なんでアンタがそんな風に俺に言えるの?!
肝心な事思い出してないの?!
アンタがどれだけ俺を傷つけたか…
テジュンさんに慰めて貰うことのどこがいけないのさ!
涙も出なかった
「ひどいよ…こんなに好きなのに…」
それも俺のセリフだよ…
おじさんは俺の胸に突っ伏した
俺はむっくりと起き上がっておじさんを横に押した
そしておじさんに向き直って言ってやった
「…『セックスはしなかったんだな』だって?…は…
馬鹿じゃねぇの?!服着たまんまでもえっちはできるよ!」
おじさんの目から涙が溢れた
泣きたいのはこっちだよ…
「僕の気持ちを…弄んでるのか?」
次から次へと俺が言いたい言葉を俺に浴びせるおじさん…
あんた、何考えてんの?
「抱きたかったんだろ?あんなに泥酔してたのに俺を抱いた…。ああ凄いよ、あんたはホントに『えろみん』だよ!
あんな自分勝手なやり方で、自分だけ満足して寝ちまって!最低!今度からは金くれよな!そしたらもっとサービスしてやるよ!」
「…なんで…そんな…」
「…あんたがどんな風に俺を抱くか、興味があっただけだよ。凄かったよ。あんなにどろどろなのに役に立った男はあんたが初めてだよ!」
言い終わらないうちに平手が飛んできた
馬鹿…
馬鹿野郎…
おじさんの馬鹿…
馬鹿な俺…
あんたが…初めてだったんだ…初めての…
もうだめだ…何も聞けやしない…何も言えない…
テジュンさんごめん…だめだ俺…もう…
「待てよ!僕を…僕をなんだと思ってるんだ!」
掴まれた腕を振り払いながら俺は言った
「アンタ、昨日、イク時に、誰の名前呼んだか…それ覚えてねぇの?!」
「…え?」
「…最低…」
もうどうしようもないよ…ごめんねテジュンさん…
ドアを開けて外に出ようとしたら、テジュンさんが立っていた…
俺は…彼にしか縋りつけなくて、テジュンさんに口付けした…
テジュンさんは驚いていたけれど、俺の様子を察してそして…抱きしめて…キスに応えてくれた…
背中でおじさんが凍りつくのを感じる…
「てじゅ…」
耳に届いたのは子猫の小さな震える声…
イナさんがいたなんて…
俺はテジュンさんから唇を離し、震えるイナさんの瞳を見てしまった…
ああ…なんて事を俺は…
もう…だめだ…もういやだ…この人に縋りついちゃいけなかったんだ…
俺はテジュンさんを突き飛ばして走り出した…
【78♪ひとり咲き byラブ】ロージーさん
失われた時間 ぴかろん
あの子にあげた花の香りと、包み込むようなあの人の香りが僕の鼻腔に突き刺さった時
僕はあの子にひどい事を言った
僕はあの子を責めた
あの子は開き直って僕にひどい事を言った
僕達は言い争った
僕はあの子を打った
そしてあの子は真剣な目をして僕に言った
「イク時に誰の名前呼んだか覚えてねぇの?」
そして震えた唇から搾り出すように最後の一言を吐いた
最低…
あの子はドアを開け、包み込んでくれるあの人と口付けをし、脇にいる野良猫を見てそして
風に吹き散らされる木の葉のように、どこかへ消えて行った
僕は…やっとみつけた大切なものを…知らぬ間に投げ捨てたんだ…
気がつくとテジュンさんがラブの後を追って走り去った
後に残されたのは馬鹿な僕と、虚ろな野良猫だった
野良猫は呆けていてしばらくぼんやりとその場に突っ立っていた
突然へたりこんで涙を流しながらテジュンさんの名前を呼んでいた
僕はその野良猫をぼんやりと見ていた
僕の目の前でバタンとドアが閉まった
ふと我に返り一体何が起こったのかを反芻した
部屋を目だけで見回し、もう一度ドアを見てそれを開ける
もう帰ってくるころかな?
そう思ってちょっとドアを開けたんだ
そうしたら僕の大切なあの子がびっくりした顔で突っ立っていた
僕が突然ドアを開けたから引きつった顔してるんだな?かわいい…
少し前の事が花火のように頭の中に映し出される
開けたドアの外には、呆けて座り込んでいるイナがいた
「…イ…ナ…」
「てじゅは?てじゅ…どこ行った?…」
「立って…。入って…」
「てじゅいる?中にいる?」
混乱している…
お前はテジュンさんがいなくなるといつもこうだね…
僕は野良猫を立たせて部屋に入れ、椅子に座らせた
ラブはどこへ行ったんだろう…
捜しに行かなくちゃ…
服を出し、着替える
座っている野良猫に近づき、外へ行こうと言おうとした時、デスクの上にある封筒に気づいた
なんだろう…これ…
「闇夜」のサインのある封筒…
中を見てみた
…
僕の…大切なあの子の絵が…
もう一枚の絵は…
僕とあの子の…
大切なあの子との…
視界がぼやけた
僕は絵の中のあの子の顔に触れた
あの子の唇やあの子の睫毛が生々しく僕の指に甦る
「てじゅ…ラブを追っかけてった…。てじゅ…ラブとキスしてた…」
野良猫の呟きが僕の耳に届く
「…いやだ…いやだいやだ…いやだ!いやだっ!テジュンいやだっ!俺を置いていかないでよっ!
ずっと待ってたのに…テジュン…テジュン」
そうだ…テジュンさんがラブを追いかけていったんだ…
僕の出る幕じゃない…
僕は…
「僕は誰の名前を呼んだんだ…」
「…お前…俺の名前呼んだって本当か?」
呆けていたイナがはっきりと言った
イナの方を見ると、イナはまだ呆けた瞳をしていた
「俺が飲ませたから…お前…ベロンベロンになって、覚えてなかったって本当か?」
僕は頷いた
「それで…お前…ラブを抱きながら俺の名前を呼んだって…」
「お前の名前を?!…嘘だ!」
「そう聞いたって…テジュンがラブから…。ラブから…」
「…嘘だ!僕はお前に言ったよな?ラブが好きだって言ったよな?」
「うん…」
「じゃあなんで…」
ラブと一つになった事は思い出した
でもイッた時の事はまだ思い出せない…
情けない…
本当に?
頭を抱えてずっと考えていた
ああ…
なんとなく…
あの時僕はラブを感じながら、イナにさようならと告げたような気がする…
それを言葉に出した?
まさか…
はっきりしない…
「これ…なに?」
イナはデスクにあったラブの絵をみつけた
「触らないでくれ!」
「…ラブの絵…」
「…デスクに置いてあった…。闇夜さんが持ってきたみたいだ…」
「闇夜…闇…夜…」
イナはぼんやりと考え込んでいる
「なあ…なあ僕は一体ラブに何をしたんだろう…。どんな抱き方したんだろう…。大切にしたかったのに…あの子があんな事言うなんて…
あんなの…あんなの嘘に決まってる…。なあイナ。僕は…僕は一体何を言ったんだろう…知らないか?お前、知らないか?!」
そんな事イナが知ってるわけないのに…僕は誰かに縋りたかったんだ…
「…どんな…抱き方って…」
「…ああ…僕は…馬鹿だ…」
「…闇…夜…。…もしかして…」
イナは突然電話を取り出してどこかに電話をし始めた
電話を切ると言った
「録画してあるって…。ミンギが持ってきてくれる…」
「ろ…録画?」
「闇夜がこの部屋に入ったんだろ?ただで帰るわけねぇよ…」
「…盗撮?」
「…」
やがてミンギ君がテープを届けてくれて、僕は急いでそれを見た
画面に映る僕は、みっともないぐらいに酔っ払っていて、ラブが僕を…そんな僕を愛おしそうに扱っている
僕のむちゃくちゃな愛撫、乱暴な扱い方…
あの子はなんと思っただろう…
そして…自分勝手な結合…
こんなに…苦しそうだったなんて…
ラブ…
ごめん…
それでもラブは、快感を見つけ出そうと一生懸命だった
健気なラブ、可愛いラブ、僕の事を一途に思ってくれていたラブ…
僕の名前を狂おしげに呼ぶラブ
ああ…幸せそうな顔をしている…
僕にしがみついてその時を待っている…
僕の体が大きく揺れ、僕は誰かの名前を呼ぶ
もう一度巻き戻してその部分を見る
見て聞く
イナと…イナと言っている
確かにそう…言っている…
ああ…僕は…
最低
ラブの声が甦り、僕を打ちのめす
ひどい男だ…なんて男だ…最低…さいってい…
【79♪苦しいだけの恋歌 byギョンジン】ロージーさん
逃避行 ぴかろん
ラブ君を追いかけた
放っておけなかった
ギョンジン君の部屋の前に立ったとき、中から誰かの怒声が聞こえた
すぐにドアが開き、絶望した瞳のラブ君が僕を見てそして口付けてきた
僕に口付けてやっと息ができたような、そんなラブ君のキスに、僕は応えた
隣の野良猫よりもラブ君がボロボロだったから…
野良猫が鳴いた
ラブ君は唇を離し、野良猫を見て、顔を歪めて走り出した
エレベーターに逃げ込んだラブ君に追いつき、僕はその箱の中で彼を抱きしめた
興奮して泣き続ける彼を抱きしめて落ち着かせた
彼は苦しげな声で呟き続けた
だめだった、だめだったと…
聞けなかった、疑われたと…
僕はただ、彼を抱きしめていた
やがて箱は一階に着き、僕は彼の肩を抱いて僕の部屋に連れてきた
ドアを開け、入るように言うと、彼は僕に見せた事のない顔をして僕を見つめた
僕ははっきりと彼の声を聞いたような気がした
あんたも俺を抱きたいの?
僕は彼の背中を押して僕の部屋に入らせた
そんな顔をしていたにも拘らず、彼は簡単に動いた
そんなつもりはないよ…
僕は心で答えた
彼は僕の部屋を見回し、おもむろにベッドに座った
そんなつもりはないんだ、ラブ君…
僕は笑顔で彼に言った
「荷物をまとめる手伝いをしてくれないか」
「…え?」
「今日中にこの部屋をでなくちゃいけない。僕一人では無理だから手伝ってくれないか」
「…そんならイナさんとやれば?」
「イナは使い物にならない」
「俺だって…」
赤い目をして彼はそっぽを向いた
「本棚の本をこのダンボールに詰め込んで。それが終わったら食器類を新聞紙でくるんでこの箱。それから衣類はこの箱」
構わず僕は彼に指示を出した
彼は立ち上がって僕の部屋を見回し、デスクサイドにある煙草をみつけた
「テジュンさん煙草吸った?」
「時々ね」
「一本もらってもいい?」
「いいよ」
僕のセーラムを取り出すと口に咥えて僕の方に先を出す
僕はライターの火を灯す
彼はまた少し顔を寄せて煙草に火を点ける
僕の目を覗き込みながら…
僕は彼の肩を叩いて
「一服したら作業開始だ」
と言って、先に片付け始めた
彼はデスク周りを眺めながら煙草をふかしていた
「あ…」
彼が小さく声を出した
「何?」
「これ…中…見てもいい?」
彼は赤い封筒をかざしている
「何?そんなものあった?気づかなかった…」
「絵だよ…」
「絵?」
「闇夜のサインがあるだろ?…ヘブンの画家さんが描いたスケッチだよ…」
「ふうん」
「…見てもいい?」
「いいよ」
スケッチ?
誰の?
「俺が先に見てもいいの?きっとイナさんのスケッチだよ…」
「…構わないよ…」
僕がそう言うと彼は顔を歪めて僕の腕を引いた
「一緒に見よう…」
「…ん…」
彼は…。優しい子だ…。
僕達はその赤い封筒を開けて中のスケッチ画を見た
イナが野良猫のようにしなだれている
思わず笑ってしまった
そして胸が痛んだ
「…やっぱりこの人、かわいいね…」
煙草の灰を落とさぬように気を配りながら彼は言った
もう一枚の絵を見た
息を呑んだ
こんなところ…
「ヤバいな…」
そう言って微笑んだけど、涙が出そうになった
僕は片付けに戻るふりをして彼から顔を背けた
彼はじっとその絵を見て封筒にしまい、また煙草をふぅっとふかした
「行ってやんなくていいの?」
「いい」
「…俺なんかに構うなよ…」
「僕が構わなきゃ誰が構う」
「…」
「ほっとけない」
「…なんで…」
「こんなボロボロの人見たの、初めてだから…」
「…ほっといてよ…もう…どうでもいいんだから…」
「よくない。確かめてないだろ?」
「もういいよ!もう十分だよ…」
「答えを聞いたの?」
「あの人の前に立ちたくない…もう…会いたくない」
「…」
「…片付けは手伝うよ…世話になってるから…貴方には…」
そんな寂しい言葉を吐くな
僕はたまらなくなって彼をもう一度抱きしめた
彼は腕に力を入れて僕を押し戻そうとした
僕は彼を離さなかった
彼は…泣き出した
僕は話を聞いた
辛かっただろう…
また僕のせいか…
でも…やはりギョンジン君はラブ君の事を想っている…
なんとかしてやりたい…
そうでなければ彼はダメになってしまう…
「…ごめん…手伝う…早くしなきゃ10時に間に合わないね」
「間に合わないよ」
「え?」
「ここが終わったら寮の荷物まとめなきゃなんない。今日中には無理だ」
「…え…。バスに乗らないの?」
「乗らない」
「…イナさんと一緒に店に行くんじゃなかったの?あの人それを楽しみにして…」
「乗らないよ」
「…テジュンさん…」
「君はどうするの?」
「…乗らない。店にも帰らない…」
やっぱり。そう言うと思ったよ…。
「…じゃあ…僕と一緒にいよう」
「え…」
「僕と一緒にいればいい」
「何…」
僕は彼の言い分を聞かずに電話を取り出し、イナにかけた
『テジュン!どこにいるの?!』
「イナ…。僕は今日バスに乗らない」
『え…』
「お前、僕の事、信じるか?」
『…てじゅ…どう言う事?何?』
「僕は今ラブ君と一緒にいる」
『て…』
「僕を信じられるか?」
『…てじゅん…』
「僕は今日、バスに乗らない。こちらの事を整理してからそっちに向かう。ラブ君も一緒に連れて帰る
何日かかるか解らない。…僕を信じられるか?」
『…どういう…こと?…』
「信じるか信じないか、どっちだ?…今から10数える。その間に答えを言ってくれ。10数え終わったら電話を切る
その後僕に電話しても出ないから…いくぞ…1…」
『待ってよ!何言って』
「2」
『テジュン!テジュン!』
「3」
『ちょっと…何…ラブと』
「4」
『一緒って…連れて帰るって』
「5」
『…待って…俺…頭が…』
「6」
『頭がぐちゃぐちゃで…』
「7」
『テジュン!テジュン!』
「8」
『あ…ああ…』
「9」
『テ…』
「10」
『信じ』パン…
「あんのばか…」
「なんだって?」
「『信じ』しか聞こえなかった」
「…馬鹿正直に10で切るからだよ…」
「…どっちかわかんねぇ…」
「…ふ…」
「…ラブ君、どっちだと思う?イナは『信じる』って言ったか、『信じない』って言ったか…」
「…俺だったら…『信じない』」
「…どうして?」
「誰も信じないから…。俺自身も…。貴方の事もね…」
「…そう…。じゃあ僕は『信じる』にする。…僕も信じてる…あいつを…」
「…」
「あいつはギョンジン君と一緒だろう…。僕はあいつを信じる」
「…テジュンさん…」
「君の事も信じてる」
「俺は信じないよ!信じない!」
「僕は…信じるよ…」
僕は彼を見つめてそう言って、また作業に取り掛かった
◇4人のまうむ..nine.. 妄想省mayoさん
テソンは寝言を呟いた後..胸に顔を埋めたまま幾度か身体を震わせ堅くする..
顔を覗くと苦痛で歪んだような顔..その度にそっと背中を撫でた..
~~~~~
僕の隣で闇夜は僕が人格が変わることの不安を取り除いてくれた..
あの暗い夢..ずぅぅぅ〜と底のない暗闇にただ落ち行くだけの僕...
手を差しのべてくれたのも闇夜..
僕のわかってくれるのはやっぱり..ひとりしかいないんだ
でも闇夜の心はなかなか捕まえられなかった..
僕の忍耐力は母さん譲りかもしれない..
幼子のぼくが消え..一枚のリトグラフの前で僕と母さんが立っている..
parisの町並みを描いているその版画は母さんのお気に入りだった...
僕はその版画を母さんに贈ろうと学生の時ホテルの厨房でアルバイトをした..
2年間頑張って貯めたお金を持って画廊に行った時..
もう既にその版画は売れていた..
「母さん..でも僕は闇夜の”一番”じゃないんだ..」
「テソン...いつもすぐ側にいられるonly oneにはなれるじゃないの..」
「そうかな..」
「それに..さっき..僕が君を幸せにする..してみせるよ..って言ってたじゃない..」
「ぁ..」
「母さんちゃぁんと観てたわよっ」
母さんは僕を見上げて..僕の額を人差し指でぐっ#っと押した..
それは母さんの癖だ..
「テソン...お花がまだ足りないわね..もっともっと咲かせてあげるの
そうすればテソンの心にもお花がいっぱい咲くわ..きっと......」
僕にそう言ったあと母さんの姿がすぅぅ〜と消えた..
「かあさん..」
~~~~~
テソンはもう一度寝言を呟いたあと...ふっと私を見上げた
首をかしげ「ん?」っと顔を覗き込むと..テソンがアヒルの口になった
ふっ#っと笑ってテソンの額に人差し指を当て..軽くぐ〜りぐ〜りする
^_^ っと笑ったテソンはまた胸に顔を埋め..すぅすぅと寝息を立て始めた
眠れないままずっと窓から見える月光で反射する雲を眺めていた
空が蒼白くなり..雲が濃いグレーから薄いグレーに変わっていく..
薄いグレーの雲の切れ間から..うっすらと煉瓦色の雲が現れて始めていた
もう少しで夜が明ける...
サイドテーブルに置いた携帯が震えた
メールに短い返事を出す
携帯をサイドテーブルに戻すと睡魔に襲われた..
~~~~~
ヘロヘロで部屋に戻ったのは何となくわかっていた..
テスに無理くり飲まされた濃い緑茶のせいか?..何回もトイレに起きた..
そのおかげか酒はだいぶ抜けた..こめかみの痛みも少しは楽になってきた..
俺も絶対酔えない方だと思っていた..だが闇夜の方が上手だった..
あいつはおそらく一度も酔ったことはないだろう..
カチン#とグラスと合わせる視線は終始変わらなかった..
俺には闇夜が無理に自分を追い込んでいる様にも見えた..
…考え過ぎか...
俺はコートから携帯を取りだし短いメールを送った..
『...酔えないのはわかる..だが..無茶をするな....PS:早く寝ろ#』
返信のメールがすぐ届いた..
『アラッソ!..PS:酔った姿はめんこいぞ#オヤジ#』
ったく...やはり起きてたか...携帯を閉じてベットへ戻る..
トイレに起きてベットに戻る度にテスは俺の顔をぽちゃぽちゃで包み
「大丈夫?」と聞いてくる..「ん...」と頷くと..^_^..と笑い..俺の懐に入る..
「テス..」
「なに..」
「俺....ヘロヘロで..何か変なこと言ったか?」
「変な事って?」
「ん...つまり..そのぉ..あれだ..ぅぅんっとぉ..」
「ぷっ#...僕以外の誰か呼んだかってこと?..酔っぱらうと本音出るもんね#」
「意地悪言うな...テス..」
「てぇしゅぅぅ〜てぇしゅぅぅ〜って..寝るまでずぅーと言ってた..」
「ぁぅ(^^;).....しょ..しょうでしゅか..」
「えへへ...」
テスは嬉しそうに笑った..俺はテスの髪をくしゃ#とする
「一眠りしたら起きるぞ..」
「ぅん..わかった..」
窓の外はうっすらと煉瓦色の雲が現れていた..
~~~~~
僕は闇夜の胸の中で目が覚めた...僕の好きな♪bossaが耳に入ってくる..
闇夜は僕を胸に抱いてまま眠っていた..♪は一晩中かかってたのか...
闇夜の寝顔は血の気のない疲れた顔をしている...
…無理ばっかりするからだよ..
額にそっとkissをして..ベットから出てシャワーを浴びる..
不思議と頭はすっきりしていた..
バスローブを羽織り♪を軽めのpopsに替える
ベットサイドの闇夜の携帯が鳴った
短い会話で電話を切ったあとに闇夜はどこかへまた電話をかけていた
「テソン...」
ベットから闇夜が僕を呼んだ..ベットの方へ近づいて腰を下ろした
闇夜は横になったまま携帯を握りその手は額の上にあった
僕は手から携帯を取り上げサイドテーブルに置いた
「どうした?..電話..誰」
「ん..イナさん..」
「イナ?..何でまた..何かあった?」
「ぅん..テソン..3番のテープ取り出してミンギに渡して..」
「ミンギ?」
「...今取りに来るから..」
「わかった」
僕はテープを取り出し..新しいのをセットする..すぐミンギがテープを取りに来た
バスローブのままの僕を見てミンギが笑った
「ぉ...テソンさん..うっへぇ〜..邪魔した?」
「ミンギ!」
「これから..また?する?何回目?」
「ったく..いいから早く持って行け#」
「ひひひ...ヌナによろしく〜(^o^)」
ミンギはひゅぅ〜っと走って行った
ベットへ戻って腰を下ろすと闇夜は僕の頬に手を伸ばす..
「頭痛い?」
「僕は大丈夫..もう少し眠った方がいい..」
「ぅん..」
髪を撫でると闇夜は素直に目を閉じた..
サウスウィング オリーさん
彼はウィンドウに肩肘をついて、拳を噛んでいる
行き先を言ったきり口をきかない
僕は時々彼を盗み見しているだけで声もかけられない
もっと胸の高鳴るような新しい旅立ちをしたかったのに、
僕は自分の軽率さを責めていた
「店の近くなんだ」
彼がポツリと言った
「え?」
「そのマンションは店の近くだ。歩いて10分もかからない」
それだけ言うと彼はまた黙った
車が市内に入り、
以前一度来た事のある店の近くの交差点にさしかかった時
「そこ左に曲がって」と彼が言った
ホテルのような真新しいビルが忽然と現れた
僕は心臓が飛び出しそうだった
そのビルは正面から見ると、
鳥が翼を広げたように緩やかに美しいカーブを描いて建っていた
正面玄関に車を停めると、ドアマンが近づいてきた
「レジデンスの方にちょっと用があるんだが」
「ではゲスト用の駐車場にお停めしておきます」
ドアマンはにこやかに笑った
僕はさっさと降りた彼の後についていった
玄関脇に立っていたドアマンにまた彼が言った
「レジデンスに用があるんだが」
「左手奥のコンシェルジェのカウンターでお尋ねください」
僕らは奥に進んだ
「どなたかをお尋ねですか?」
カウンターのコンシェルジェが丁寧に聞いた
外人だった
「いや、ちょっとこのキーのことで聞きたくて。これは部屋のキーだろうか?」
コンシエルジェはキーを手にとると、
「こちらは、貸し金庫の鍵でございます」
「なるほど。じゃ中を見せてもらえる?」
「立会いますか、それともこちらでお待ちになりますか」
「ここで待つよ」
「ではロビーの方でお待ちください」
コンシエルジェの奥の窓際がゆったりとした空間のロビーになっていた
籐のテーブルと背もたれの大きい椅子が置いてある
まるでホテルだ。それもとびきり上等の
僕はちらと彼を見た
彼は無表情で椅子に腰掛けるとしばらく窓の外を見ていた
けれど突然僕を振り返った
「このビルは鳥が羽根を広げたように左右対称に建っている
それぞれサウスウイングとノースウイングと呼ばれてるんだ
サウスは住居用マンションでノースは商業スペースだ」
さっきから彼がレジデンスと言っている意味がわかった
「昨年このビルが建った時、ソウル中でかなり話題になった
ノースウイングに入れるのは資格審査を通った優良企業、サウスのレジデンスも
セキュリティ万全で設備は最高。だからこれまた審査を通った金持しか入れない
どの会社が入れて、どの会社が入れなかったとか、有名人の誰が入れて、
誰が落とされたとか噂になったほどだ」
話を聞くうちに、僕はますます滅入ってきた
「さっきのコンシェルジェ、外人だったろう。入居者の一部は海外の金持だ」
もし本当にこのマンションをもらったとしたら、とんでもない話だ
冗談だったらどんなにいいか
でもさっきの鍵は?
あの人はすぐわかったみたいだ…
僕はきっと情けない顔になっていたに違いない
彼はそんな僕をゆっくりと見つめ、そして唇の端を上げてにやっと笑った
「ミンがこのマンションを本当にもらったのか、ちょっと興味があるだろ?」
彼の笑顔を見て僕は少しほっとした
「店に近いって言ったけど、来た事あるの?」
「ノースウイングの1階に、高級スーパーが入ってる
時々テソンがわけのわからない高級食材を買いに来てた
2階から5階まではブランド品の店だ。そこに2・3度買い物に来た」
コンシェルジェが銀のトレイに何かのせて持ってきた
「こちらが金庫の中身でございます」
そう言うと彼はテーブルの上にトレイを置いた
トレイの上にはちょっと厚みのある大きな封筒がひとつと、カードが2枚があった
「こちらの封筒が必要書類、このカードがエレベーターホールと
エレベーター共通のキーでございます」
「ありがとう」
彼はそれを受け取ると、立ち上がりながら聞いた
「部屋は何階の何号室だろう?」
「最上階でございます」
彼の動きが止まった
「最上階?」
「はい。何かご用がございましたら遠慮なくお申し付けください
お世話するように承っております」
彼とコンシェルジェがすこしの間見つめあった
「ありがとう」
彼はそのまま立ち上がった
「ミン、行こう」
僕はまた彼の後についていった
ロビーの反対側にエレベーターホールがあった
その手前のガラス張りのドアを開けるのにカードキーが必要だった
キーを持っていなければエレベーターホールに入れないしくみだ
エレベーターに乗ると彼は扉脇の階数のボタンの上のセンサーにまたカードキーをかざした
「部屋のキーもそれ?」
「実際は部屋のキーは必要ない」
「どうして?」
「すぐわかる」
音もなくエレベーターは登りつめ最上階についた
扉が開いて一歩踏み出した途端、僕は驚いて足を止めた
目の先にいきなり広いスペースのリビングが広がっていたのだ
振り返った僕の肩をたたくと、彼はどんどん中へ進んでいった
◇ Bon voyage..one.. 妄想省mayoさん
いつもより早めに起きた俺等はいつもの様に一緒にシャワーを浴びる
まだちょっと二日酔いの俺に合わせてかなりぬるめの温度にする
こんな朝は熱い温度は禁物だ..血管が一気に開いてよけい頭がガンガンする..
テスはいつも俺を頭からモッコモコの泡だらけにし..
樹氷のモンスターだ#とケラケラ笑う
モンスターがテスを襲い..テスはモッコモコの泡だらけになってピグモンになる
モンスターとピグモンは少々じゃれ合って一気に洗い流す...
バスルームを出てvolvicを飲む..もやもやの頭がすっきりしてきた..
「どう?...お酒抜けた?..ちぇみぃ~」
「ん...大丈夫だ..」
「回復早いね..」
「ん...鍛え方が違う..」
テスは「ふぅぅ〜ん」っと鼻で笑うと首に抱き付いてきた..
で...ちょっと...軽く..じゃれた..
xxx.....はふん....ぁ.....xxx......
「鍛え方が違うだろ?..ん?」
「..えへっ..そうみたい..」
ルームサービルで極々軽い朝食を摂ったあと荷物をまとめ1Fへ降りる
フロントに鍵を返すと15分程お待ち下さいと言われた
ラウンジにソヌのケーキを持ってきたあの従業員だ
名札を見るとヨ・ヒョンスと確認できた
「ちぇみ..何だろう」
「ん...」(ソヌと同じケーキは食わんぞ..俺は#)
「僕たち..備品何も壊してないよね..ミンチョルさんみたいにさぁ..」
「ぷっはは!!..ん..」
「強いて言えば..アメニティ使いすぎて毎日追加したことくらい?」
「ぷっ..ん..」
「あっ..シーツ毎日汚したから?..さっきもちょっと..僕..」
「テ..テ..テスっ##」
「あはっ...ごめん^^;;」
きっちり15分後ヒョンスはロビーのソファに座っていた俺等に近づき紙袋を差し出した
「「…??」」
「BHCのテソン様とmayo様からお帰りの時にこちらをお渡しする様にと..」
「テソンと闇夜?」
「何だろう..@_@..@_@..ん..」
紙袋の中身はポットが2つと2人分のランチ..テソンと闇夜のメモが入っていた
★Buono viaggio !! (*^_^*)
メニューは僕が考えて2人で料理長に急遽お願いしたんだ^_^
運転は無理をしないこと#お茶ちゃんと飲むんだよ#_byテソン
★Buen viaje !! (*^_^*)
土産忘れんなよ#忘れたら帰っても家に入れてやんないからな#_by闇夜
ったぐ...俺とテスは顔を見合わせて苦笑した..
ヒョンスはニコニコして俺等を見..エントランスまで見送りに来た
「お気をつけて..いってらっしゃいませ」
「「お世話になりました..」」
ピョートルの手配したCherokee sportsに乗り込む
テスの髪をくしゃくしゃ#とする
テスが俺の顔をぽちゃぽちゃで撫でる
「出発だ..ソウルTGから京釜線に乗って南へ向かうぞ#」
「ぅん!(*^_^*)わかった」
俺等の車は南へ向かって走り出した…
◇まうむ..てそまよ..une 妄想省mayoさん
闇夜が寝ている間..僕は着替えてテーブルの上にあるスケッチブックを広げた..
何枚かの絵が挟んであった..
僕らのデコち◎う寸前の絵..2枚目の4人の絵..
1枚目は僕らの部屋に..2枚目はリビングに飾ろう..
ソヌ・ジホ等の絵はたぶん監督がアトリエ兼スタジオに飾るだろう
他のメンバーの絵がない...ひとりで配ったのか..ったく..
スケッチブックの下に門外不出のメモが貼ってある赤い封筒..
中の絵を見た..ぁぅ..これか..
これを店に飾ったらどうだろう..
題名...★天使と狐...その日★..ってつけてさ..ぁはは..
オークションに出すのもいいな..高い値で売れるな..なんちゃって
部屋の整理をして荷物をまとめる..
僕らが持ってきた機材は最後にミンギが搬出する..
「ほら、メンバーが全員帰るまで何があるかわからないからさっ#」
すっかりミンギは闇夜の舎弟..ていうか..兄弟みたいなんだ
泥の様にぐっすり眠っていた闇夜がシャワーを浴びて着替えた..
一緒に闇夜の髪を乾かす...闇夜が唯一おとなしい時間..
朝には遅く..昼にはちょっと早い時間..
僕たちはカフェのテラスの方でブランチを摂った
2杯目のコーヒーに手を付けたとき闇夜が僕に聞いた..
「テソン..」
「ぅん?」
「...お母さんの夢見てた?」
「ぁ..僕..寝言言った?」
「ぅん..何回か..」
「そっか..」
「テソンのお母さんは存命なの?」
「ぃや..逝ってからだいぶ経つよ..」
「そう..」
「僕の母さんはね....」
テソンはそれから両親の話を続けた..
父親の折檻..両親の離婚..母親との生活..
母親が逝ってひとり残されてからのこと..
私に出会ってからのこと..
時折苦渋の表情になったり時に笑いながら話してくれた..
「...僕は君の胸に抱かれて母さんを感じたんだと思う...」
「テソン...」
「君は僕の心を穏やかにしてくれた..」
「こんなやっかいな奴でも穏やかになるの?」
「ぅん..僕には君が必要だから..」
テソンは私の頬を手のひらですぅ〜っと撫でた..
「君の両親は?...生きてるの?」
「...ふたりとも☆になった..」
「じゃぁ...」
「...ひとりだよ..私も..」
「mayo..」
闇夜は僕にふっと力無く笑った
考えてみれば僕は闇夜の傍にいても闇夜の事情は知らないことだらけだ
「どんな人だったの?...mayoの父さんと母さん..よかったら聞かせて..」
闇夜はちょっと俯いていた後..顔を上げ..前を向いたまま話し始めた
僕は闇夜の横顔を見ながら闇夜の話を聞いた..
~~~~~
私の親父は普通の不動産を扱う会社の会社員だった
でも元来好奇心が強く仲間も多くて顔も広く
会社勤めをしながら仲間とプランニングの仕事をしたり..
M&Aの調査に携わっていた..成功報酬に何%かのマージンをもらう..
あっちこっち調査をして廻るのことが好きなじっとしてられない親父だった..
金が入ると仲間と飲んで歩く..次の調査に使う..金は残らない..
おふくろは明るくてのんびり屋だったが..たまにしか帰らない親父に
「莫迦!阿呆!..じじい!...ハゲ#...」と文句をタレる..
親父は「ふん!!」と言いながら..また調査で家を空ける
洒落者の親父は若いときからスーツや靴はオーダーだった..
私がまだほんの小さい時に玄関でおふくろがごそごそしてた..
おふくろの肩越しに覗くと親父の靴全部に鋏を入れていた..
「だはは...凄いお母さんだ..」
「怒ると怖いんだ..私は親父よりおふくろに良く叩かれた..」
「闇夜みたいだ..でも何で爆発したの.. お母さん..」
「決まってるしょ..オンナだよ」
「だはは..闇夜の父さんもか..」
「ぅん..」
思春期になると親父は仲間と独立した..でも相変わらす調査には金を惜しまない..
飲みに行っては娘と変わらない年かさの苦労している若いねーちゃんに援助する..
後でわかったがそういう若いねーちゃんとはえっちなことはしなかったらしい..
思春期の私はそんなわけで親父が嫌いになった..家でもほとんど喋らなくなった..
時たま私が何日か家出をして帰ってくると親父と喧嘩になる..
留守がちな親父に替わって私はお袋を守るために小さいときから武術を習っていた..
一度捻挫をした親父は私に手出しをしなくなった..
その頃一緒にいたのが私の代わりに単車の破片を身体に受けた☆彼だ..
彼は幼なじみだったせいかおふくろは安心して何も言わなかった
彼はテソンと同じように黙って見守ってくれるそんな奴だった..
一度だけ彼は私を抱いた...それが事故の前の晩だった..(これはテソンには言わなかった)
☆彼は最後に私の手を握った
「自分を大切にしろ..」
それを聞き取るのが精一杯だった..その日を境に私は家出をやめた..
持病の糖尿病が悪化し血圧が高かった親父は私が学生のときに倒れた..
入院中すっかり弱くなった親父は私に言った..
「金を残すのも大事だが..人を残すんだ..
人の信用を得ること..それがきっとお前の役に立つ..
お前が息子だったらよかったな..」
入院してまもなく親父はあっけなく逝った..
火葬場の煙を見て初めて親父の為に泣いた..
おふくろは喧嘩の相手がいなくなって..すっかり弱くなってしまい..
入退院を繰り返して親父の2年後に逝った..
~~~~~
闇夜はそこまで僕に話すと奥歯を噛んで僕と反対側に横を向いた..
僕は闇夜の肩を引き寄せ頭を僕の肩に乗せた..
「テソン..」
「何..」
「私..親父と一回も酒飲んだことないんだ..」
「ぅん..」
「一緒に酒飲んでさ..ふたりでベロンベロンになってみたかった..
ばぁーか親父〜とかいってさぁ...もう出来ないけどさ...」
「mayo..」
僕は闇夜の話を聞いて何故闇夜がオヤジ受けするのか..解ったような気がした..
そして闇夜がちぇみに惹かれた理由も理解したいと思った..
闇夜は親父の顔の広さが今自分に役立ってると言った..
「何でだと思う?」
「ん〜...わかんない..」
「昔世話した当時のねーちゃん達がせっせと情報くれるんだ..」
「くはは...そう..」
「ぁ....テソン..」
闇夜は急に思い出した様に僕の肩から顔を上げ僕の顔を覗いた..
「何..」
「テソンのお母さんが好きだった版画って..誰の?」
「ん...yukio kodama..」
「ぉ..」
「あれは何枚かのシリーズの中の一枚で市場の様子が描かれてる..それがどうかした?」
「ぁ..ぃゃ..そうか..ぁはは..」
「…???」
闇夜は一人で不気味は含み笑いをして僕の肩をバンバン叩いた..
信じること ぴかろん
「信じ」
電話を持ったままそう叫んでイナは黙り込んで、それから顔をくしゃくしゃにして泣き出した
イナの言葉を聞いていて、内容は大体わかった
ラブはテジュンさんと一緒だということ
テジュンさんがラブを連れて帰る?…ということ
ということはつまり…今日一緒にBHCに向かうのではないらしいこと
つまり…ラブとテジュンさんは…早くても明日…遅かったら何日かを一緒に過ごすという…そういうこと…
イナは嗚咽をもらして泣きじゃくっている
僕はイナの腕を掴み、もっと詳しいことを聞き出そうとした
「ラブ、テジュンさんと一緒だって?バスに乗らないって?どういうことだ?」
「ううっうっうっ」
「泣いてないではっきり言えよ!何言われたんだよ!テジュンさんお前と別れてラブと一緒になるとでも言ったのか?」
「そ…」
「なあっ!なあって!イナ!」
ラブが心配だった
イナの気持ちなど考えてもいなかった…
「…お前…」
「テジュンさんとラブ、前からこんな付き合いだったのか?!なあっ!」
「…俺がどんな気持ちか解るか?」
「…」
「…テジュンは…『僕を信じるか?』って聞いてきた…ラブと一緒にいて、何日かかってもラブを連れて帰るって言った…信じるかって…」
「…何を信じるっていうの…」
「…」
「ラブと一緒に何日もいてさ、ラブと何にもないと思うかってこと?!」
「…」
「ラブを必ず連れて帰るっていうこと?何を信じろっていうのさ、テジュンさんは!」
「…テジュンを信じるかって言う事だよ」
「テジュンさんの何を信じるの!」
「テジュンを信じるっていうことだよわかんねぇのか!」
イナは涙を一杯ためた目で僕を批難するように見つめた
「お前、お前はラブを信じるか?ラブを信じて待つことができるのか?!」
「…僕は…ラブは…きっと…やけになってテジュンさんと寝ると思う…」
そう答えた僕の頬を、イナはピシャッと叩いた
「…なんだよ…だって…だってそうだろ?!よくある話だ!僕は…僕はラブをあんな風に傷つけた…。テジュンさんはラブを慰めてくれる
…慰めついでに…ぬくもりを求めることなんて…よくある…よく聞く話だ…」
「ンなことじゃねぇよ…」
「じゃあなんなのさ!何を信じるとか信じないとかいうのさ!」
「…お前…ラブのどこが好きなんだ?」
「…え…」
「ラブのどこに惚れたの?」
「それは…僕を真っ直ぐに見つめてくれて、僕を僕よりも愛してくれて…僕以外を見たりなんかしないと…
でもラブは…テジュンさんの方を向いちゃったんだね…」
ピシャン…
またイナが僕を叩いた
「…信じてねえんだな…ラブの事…」
「…」
「俺は…俺は…テジュンを信じる」
「…」
「信じてる…。たとえ…ラブと…寝たとしても…。それでも俺はテジュンを信じてる…」
「…どういう…こと?」
「テジュンの心は俺を向いてるってこと!」
「…」
「初めてわかったよ…テジュンの気持ちが…。なんでこんな俺を何度も許してくれてるのか…」
「…」
「俺、お前やソクにちょっかいかけて迷惑かけまくってさ、テジュンにいつも嫌な想いさせてさ…馬鹿などうしようもない男なのにさ…。
テジュンは…怒るけど…許してくれるんだよ…。なんでかわかんなかった…。そんなに俺の事が好きなのかなって…俺のどこがいいんだろうって…
俺、そんな大した人間じゃねぇのにさ…」
「…お前は魅力的だもん…。思ったことはハッキリ言うし、やりたい事やるし、かわいいし…色っぽいし…」
「そんなんじゃねぇよ!そんなことで俺を許してくれてるんじゃねぇんだテジュンは…」
「じゃあ…なにさ…」
「…俺さ…。俺の心にはさ…。テジュンしかいねぇんだ…。俺が何やっても、俺の心がテジュンを見てるって事、あいつ…解ってるから…
だから俺が悪いことしても…許してくれてたんだ…」
「…」
「お前はどう?…俺、お前もラブの方を向いてると思う。違うか?」
「…」
「俺達だってさ、俺が浮気するたんびにテジュンはきっと悩んだと思う…。俺には言わなかったけどもっともっと俺の事責めたかったんだと思う…
でも…責めなかった…」
「僕は…」
「…なぁ…俺、信じるよ…テジュンの事…」
「僕はラブのこと、信じてなかったんだな…」
「ん」
「…じゃあ…どうすればいいんだ?」
「そんなの、自分で決めろよ…お前がどうしたいかだよ…」
「…」
「信じるか信じないか…どっちだって構わない…お前の好きにしろよ…。俺は…信じてる…あいつら二人とも信じてる…」
僕は…イナを見つめた
泣きじゃくって抜け殻のようだったイナが、内側に何かを蓄えたように輝いて見えた…
イナ…やっぱりお前は…強くてしなやかで…いい男だな…
僕は…そんな風になれるのかな…
ラブが帰って来ることを…また僕の元に帰って来ることを祈りながら、待つしかないんだろうか…
「ク…うううっ…」
イナがまた泣いている…
信じると言ったくせに泣いている
不安なの?お前でも不安?
そうか…決意したからって…そう簡単に強くなれるわけじゃないのか…そうなんだ…イナ…
僕は震えて泣くイナのからだを包み込んで、一緒に涙を流した
今から僕達、ラブとテジュンさんを…二人が帰って来るときまで支えあいながら「信じる」ことにする…そうする…ラブ…
To Love byA 足バンさん
あなたの目から涙がおちる
あなたの目から夢がおちる
あなたの髪の先からも
あなたの指の先からも
なにかがみんなおちていく
すべてを無くすことを恐れ
あなたは平気な顔をする
すべてに見放されるその前に
自分をどこかに捨てにいく
でもあなたはきっと気づいてる
傷ついた臓器のその奥に
それでもつらいうずきが残る
切り裂き貫いたそのナイフを
捨ててしまえぬ自分がいる
もうすこし
もうすこし
傷を隠さずその目をあけて
自分の流した血の跡が
どこに辿りつくか見ていてごらん
投げ捨てられた心臓が
ゆっくりゆっくり鼓動する
ゆっくりゆっくり命をのばす
愛するひとの背中につけた
傷に密かに根をおろす
それはからだをつつみこみ
ぎりぎりこころを締めつける
あなたの匂いに狂うほど
乾いて飢える時がくる
血が流れたら吸えばいい
足が折れたら這えばいい
それでも自分を捨てないで
それでもその手を伸ばしていて
あなた
あなたが祈ったすべてのことばに
かならず空が手をさしのべる
かならず海が歌ってくれる
かならず大地が抱いてくれる
あなたはけっしてひとりじゃない
二人でいる時間 ぴかろん
僕達は部屋でぼんやりとしていた
しばらくそうやって時間を過ごしていた
バスの出発時刻まで、まだまだたっぷり時間がある
メシも食ってなかったけど、何も食う気になれなかった…
荷物をまとめるって言ったって、洋服をスーツケースに放り込むだけだ…
後は…デスクの上に残されたあの子へのプレゼントと…そしてあの子のスケッチだけ…
僕がこの手で持っていく
穏やかな気持ちであの子に渡せるといいな…
イナに荷物はどうしたのか聞いた
「全部テジュンの部屋にある…」
「…どうするの?」
「…テジュンに任せる…」
まだ涙が残る目をしてイナは答えた
「今からどうする?」
「…さあ…」
「…映画…見ないか?」
「映画?」
「今日もやってるらしいぞ…お前、見てないだろ?」
「…」
「イヤ?」
僕は、昨日ラブと二人で見た映画を見ようと思った
もう一度、みんなの愛の形を見ておきたいと思った
それに…
ここにいても、信じるという気持ちを持っていても、不安が膨れ上がるばかりで堪らなかったから…
イナは無言で立ち上がり、ドアの方に向かった
そうして僕達は映画を見ることにした
二人で並んで座る
昨日はラブと並んで座った
ずきんと心が痛んだ
昨日はあの子と、早く一つになりたくて堪らなかった
今隣にいるこの野良猫と関わらなければ、僕は今頃あの子と一緒に甘い時を過ごせていただろうか…
あの子を傷つけることなく、幸せになれていただろうか…
僕達は、一つ一つの愛の物語を、とても真剣に見ていた
イナは…ずっと泣いていた
ミンチョルさんがギョンビンと…
蜘蛛さんがテスさんと…
スヒョンさんがドンジュンさんと…
それぞれ結ばれた時…また顔をくしゃくしゃにして泣いていた
シチュンさんとテプンさんの物語を見て、二人の友情に泣いていた
そして…テジュンさんの顔がスクリーンに映った時、嗚咽漏らすまいと指を噛んで耐えていた
その横顔が壮絶なまでに艶っぽくて、僕は少し俯いてフッと笑ってしまった…
こんな奴をほったらかして…テジュンさん…
ほったらかしといてテジュンさん…信じてるんだ…
まいったな…かなわない…
もしかしたら本当に…ラブはテジュンさんと寝てしまうかもしれない…
そうなったら…どうしよう…
そうなったとしたら…それは…僕のせいだ…
僕は考えるのをやめてスクリーンを見た
イナとテジュンさんのやりとりがコメディになっているけれど、二人の瞳はお互いを求めていた…
イナはしゃくり上げていた…
映画が終わった後、僕達はラウンジでコーヒーを飲んだ
イナは赤い目をしたまま僕に呟いた
「俺、あの映画のときさ、チニさんと付き合ってたんだ…」
「え?」
「…俺…忘れてた…」
イナは電話を取り出してどこかにかけた
何事か話をした後、僕に言った
「チニさんに会う。お前も来る?」
「…いいの?僕、行っても…」
「うん…」
イナについて行った
チニさんとチョンマン君が一緒にやって来た
「どうしたの?イナさん…。…総支配人は?」
イナは俯いて眉毛を少し動かし、微笑んだ
「チニさん…俺…貴方に迷惑かけた。貴方を傷つけた…。その事をまだちゃんと謝ってなかったね。ごめんなさい…」
「…イナさん…」
「今更って思うかもしんないけど…。俺、貴方に会えて、貴方と過ごした時間…楽しかったんだ。本当に…
ずっと落ち込んでたから、花が咲いたみたいに楽しくて…。ありがとう…」
「…イナさん…。私も楽しかった。貴方が総支配人を選んだこと、なんとも思ってないわ
そりゃあの時は辛かったけど…でも…今私…チョンマン君と一緒にいられて、とても…幸せよ
貴方といるより…って言ったら悪いんだけど…でも…ほんとに…幸せよ…」
「…よかった…」
「ね。総支配人のこと、頼んだわよ。あの方、本当に、本当に、ホテルの仕事が好きだったの…
それを辞めて、貴方と一緒に行くっていうんだから…その事、しっかりと覚えておいてね」
イナはウンウンと何度も頷いた
イナとチニさんは握手をして、笑顔で別れた
ほっとした顔をしてイナは僕を見た
そして僕の肩に頭を乗せた
「ごめん…こんな事しちゃいけないよな…」
「いいよ…」
「ちょっとだけ…泣かせてくれるか?」
「…ああ…」
「俺って…ほんとに…馬鹿だよな…」
「…イナ…」
僕は泣いているイナを抱きしめた
僕の中では、イナはもう、『大切な友達』という肩書きになっていた…
きっとイナもそうなんだろう…
「友達…キスつきの…」
僕が呟いた言葉を、イナはクスッと笑って聞いていた
クスッと笑いながら、でも泣きながら…
「んじゃ、後することねぇから…キスでもすっか?」
イナが泣き笑いの顔で言う
「いいよ」
「いいの?揺るがない?自信あるか?」
「ああ」
「ほんとか?」
「…すっごいキスしてやろうか…」
「お前のキスなんか凄くねぇよ…」
「フン。本気のキスをしらないからそういう事言うんだよ!」
「え?じゃあ俺にしたキスは本気出してなかったの?」
「フフン…」
僕らは軽口を叩き合って、それからホントにキスをした…
お互いの愛する人を思い描きながら…
ラブもこんな風に、テジュンさんとキスしているのかもしれない…
そうだったら…どうしよう…
最上階 オリーさん
彼はホワイエを通り越し、中へ進んでいくと
広いリヴィングをつっきって窓際に立った
「来てごらん。いい眺めだ」
彼の隣に並ぶと、市内の風景が一望に見渡せた
僕はため息が出た
しばらくふたりでその風景に見とれた後、彼は言った
「僕はこの書類に目を通すから、その間見学してくればいい」
彼は僕の背中を押しすと、
自分は革張りのソファに座り書類の入った封筒を開いた
僕は仕方なく、とてつもないこのフロアーを探険しに出かけた
リヴィングが中央に当たり、その両サイドに廊下があって部屋が続いている
僕はまず左手の廊下を進んだ
リヴィングのすぐ隣がメインベッドルームでその隣が書斎
天井まで届く大きなウォルナッツの本棚と
それとセットのデスクが壁際に据え付けてある
どの部屋もとても規格が大きい
その隣に音響ルームがあり、なぜかカラオケセットがおいてある
備え付けてある替え歌集っていうのは何?
替え歌集1-GS特集、
替え歌集2-愛の歌特集、
替え歌集3-人名別検索、等等…
その隣にゲストルームが2つ続いている
これがリヴィング側でその対面に
何と、ジムがある
ランニングマシン、ベンチ、レッグプレスマシンなどが置いてある
誰かのおなかの肉を落とすにはいいかもしれない
次がシャワールームで隣のバスルームと中で続いている
バスルームは当然大理石のバスタブでとてもゆったりしている
ジャグジーつき
窓は前面ガラス張りでたぶん夕方には夕陽が見えるだろう
次が洗面所とトイレでその隣がドレッシングルームだ
僕と彼の服を合わせても、そのクロゼットはほとんどあまる
そして、やっとホワイエに戻った
彼はまだ真剣な顔つきで書類を見ている
今度は右手に進んだ
リヴィングに続いて、オープンキッチンとダイニング
窓側にカウンターバーがついてる
隣にまたゲストルームが3つ
対面はプレイルームと収納部屋らしきもの
プレイルームには、ビリヤードではなく、なぜか卓球台
さっきのカラオケといい、時々ミスマッチがあるのは気のせいだろうか
でもとにかく凄い
このワンフロアが彼女の言ったマンションなのだ
どれも素晴らしいのだけれど、
僕が一番気に入ったのはメインベッドルームだ
ドアを開いたとたん、見とれてしまった
落ち着いたブラウンのカーペトとそれに合った板材の壁、
そしてまん中に無造作に置かれた感じのベッドにパオが取り付けられている
高原に佇むゲルを連想させた
近づいてみると、ベッドは思いのほか広かった
キングサイズだ、それも外国製
僕はパオの薄布を捲り上げ、ベッドの端にそっと腰かけてみた
ちょっとだけ寝転んでみた
そして目を閉じて、
シーツの冷たい感触と、薄布の柔らかい感触を味わった
パオのついたこのベッドの空間が僕はとても気に入った…
部屋を全部見終わった僕は心を決めた
彼のところに戻ると、彼は腕を回して座ってと言った
ガラスの大きなテーブルをはさんで僕は彼の前に座った
彼はテーブルの上の書類を僕の方に向けた
「マンション関連の書類一式。ミンの名義になってる」
「え?」
彼は両手を開いてソファの背もたれにもたれ、足を組んだ
「全部ミンの物になってるよ、ちゃんと。さあ、どうする?」
彼の目が僕を捉えた
甘い余韻 れいんさん
このホテルを去る時が来た
随分長い事いたような気がする
まるで嵐のように瞬く間に過ぎ去った気もする
長い夢から覚めた時みたいな寂しさや名残惜しさがあった
でもこれは夢じゃない
僕の隣の座席には夢じゃないという証がいた
この数日間で僕は大切なものを手に入れた
これから向き合うべき事も、スハと二人でならなんとかやれる…そう思った
今朝まどろみながら目覚めた時、僕の横にはスハがいた
スハの寝顔はかわいくて、僕は頬杖をついたまましばらくじっと見つめていた
昨夜の事を思い出して、恥ずかしい様な、くすぐったい様な
でもとても満ち足りた気持ちになった
僕の口元は自然にほころんでいたかもしれない
ねぼすけのスハがようやく目を覚まし、僕がいる事に気づいた途端、なんともいえない表情になった
驚いた顔をした後、くるくると瞳が揺れ、そして枕に突っ伏した
昨夜の事を思い出したんだね
そんなスハが愛しくて、僕は
「寝ぐせがひどいぞ」
そう言ってからかった
スハは慌てて自分の髪を押さえていた
僕はすかさず無防備なその頬におはようのキスをした
スハは枕にうずめた顔を少しだけ僕の方に向けて照れくさそうに微笑んだ
そんな風にベッドの中でふざけあったりしていたのはほんの数時間前のでき事
今はこうしてバスに揺られながら、窓から見える景色を眺めている
スハの腕の中にはデスクに置いてあった闇夜さんからの贈り物の絵がしっかりと抱きしめられていた
ふとスハが思いついたように言った
「テジンさん、僕…お店に戻ってから…ちゃんと仕事できるでしょうか…」
昨夜の事があった後でもスハはそんな風に僕に丁寧な話し方をする
…そういうところが好きなんだけど…
「どうしてそう思うの?」
「だって僕…まるでホ○ト向きじゃないでしょう?
テプンさんみたいにおもしろくもないし、チーフみたいにセクシーでもないし
スヒョンさんみたいにかっこよくもない…」
「…誰か忘れてない?」
「あははっ。テジンさんみたいに素敵じゃないし…他の皆もすごく魅力的でしょう?」
「ふふ…スハはスハのままでいいんだよ」
「……?」
スハはよくわからないといった顔をした
そう、スハはスハのままでいいんだ
自分ではちっとも気づいてないみたいだけど、おまえはとっても魅力的だよ
心の奥がくすぐられる様なかわいらしさと凛とした強さがあるって事、知っているかい?
僕は昨夜のスハを思い浮かべた
いつもと違う顔を見せたあの時のスハ…
いけないと判っていても自分を抑える事ができなかった僕
僕はおまえの顔を見て、おまえの声を聞いて、何度も何度も昂ぶった
心も身体も甘く痺れ、思わずおまえの名前を呼んでいた
野に咲く花の様な、穢れのないおまえを抱いた時、えもいわれぬ悦びを僕は感じた
何度愛し合ったとしても、その気持ちは変わらないだろう
だけど、そんなおまえを知っているのは僕一人だけ…
誰にも教えてあげないし、おまえにだって教えてあげない
僕だけの秘密にしておくよ
あれこれと心配顔のスハを横目に、僕はくすりと笑って、窓の外の走り去る景色を眺めた
ゆめのあと 足バンさん
スヒョンが臨時の変な残務処理に奔走してる間
僕はホテルのあちらこちらを探索して歩いた
中庭の白いテーブルや椅子に触れてみた
ぶらぶらとあのテニスコートまで歩いた
あのあずまやにも座ってみた
中庭のベンチでぼんやりとまわりを見渡した
僕の思い出が溶け込んでいるこのホテル…
ここを離れたらみんな夢だったなんて…そんなことはないだろうか…
スヒョンは帰ってきてくれたのかな…
自分の深い想いをすべてぶつけて
震えるほど自分を抑えて
それがいちばんいい道だと信じて
あのひとへの想いを苦悩から思い出にかえて
でも怖い
あのスヒョンをずっと惹き付けておくなんて
僕にそんな自信はない
僕がスヒョンを好きなほどスヒョンは僕を好きじゃない
そう思えて仕方ないから…だから怖い
夕べだって…僕が側にいてよかったのかって…
本当はひとりでいたかったんじゃないかって
「ドンジュンさん、やっとみつけましたよ!」
振り向くとジュンホ君がにこにこして立っていた
「おへやのにもつまだありますよ、ちゃんとせいりしてくださいね」
「うんすぐやる…たいした量じゃないし」
ジュンホ君はなんだかとても嬉しそうに僕の隣に座った
「やっと帰れるね」
「はい。ながかったです。ほんとに」
「待ってるね…ソニョンさんやお子さん」
「はい」
「すっごくいい顔だなぁ…愛してるんだね」
「はい。あいしています」
「ねぇ…不安になったことない?自分とか相手の気持ちに」
「ありますよ」
「あっさり言うね」
「へへ…りこんをかんがえたこともあります」
「ほんと?」
「ええ。でもむりでした…だってあいしてるんですから」
「じゃなんで別れようって思ったの?」
「ぼくはソニョンさんにふさわしいひとじゃないっておもいました」
ジュンホ君は照れくさそうににっこりして言った
「ふふ…でもまちがってました…ふさわしいかどうかなんて…そんなことじぶんできめちゃだめですよね」
「ん…」
「あいてのためをおもってなんて…ぎまんですね…あ、これこのあいだおぼえたことばです」
「ふふ」
「みんなかみさまにまかせて、あとはにこにこしてればいいんですよね…」
僕は木漏れ日の中で笑ってるジュンホ君に見とれた
本当に強い人なんだな…
「スヒョンの車で一緒に帰らない?少し早く帰れるよ」
「ありがとう。でもばすにします。イナさんもしんぱいだし」
「イナさん?」
「さっきギョンジンさんとゆうれいみたいなかおであるいてました」
「ふぅん…またなんかあったのかな」
「あのひとってなんだかほっておけません」
「ふふ…そうね」
「ぼくはビーエッチシーのみんながだいすきです」
「うん…僕も」
「ドンジュンさんのこともだいすきですよ!そうだ!こんどうちにごはんたべにきませんか?」
「うん…」
「どうしたんですか?」
「ありがと…こんな奴なのに…」
「ドンジュンさんはすてきなひとです。スヒョンさんだってドンジュンさんのことだいすきでしょ?」
「ん…」
「ゆうべいってましたよ”ドンジュンはこんやはかえらない。そばにいてもらいたいんだ”って」
「え?」
「きっとドンジュンさんにこうさんしてるんですよ」
「おまえたち何ひとの悪口言ってるんだ!」
「「ぎゃっ」」
いきなり僕とジュンホ君は背後からスヒョンの左右の腕に抱え込まれた
「わ、わるぐちじゃないですよっ」
「ぐぇ!苦しいって!」
「ジュンホ君ご苦労様だったね、長い間」
「は、はいっ」
「で?なんの話してたんだ?正直に言いなさいっ!」
僕たちはスヒョンに抱きすくめられ思いきりくすぐられてベンチの上で大笑いした
涼やかな風は木々たちを優しく揺らし
流れた時は静かに目を閉じる
祭はおわった
気持ち ぴかろん
信じるだの信じないだのなんだってんだよ…
それに…俺を連れて帰る?
どこへ?
何言ってんだよこのおっさん…
俺はテジュンさんの部屋の片付けを手伝わされていた
なんで?なんで俺がこんなことしなきゃいけないの?
わっけわかんねえ…
俺はテジュンさんに反発を覚えながらも、身体を動かしていた
とにかく、早く片付けてこのおっさんをバスに放り込むんだ…
そしたら俺は…俺は…自由の身だ…
そっから先は俺が…どうしようと、どうなろうと…
誰にも何にも言わせない…
「なんかすっごく早くに片付いちゃった…。ラブ君手際がいいね」
「…そ?じゃバスに間に合いそうだね?」
「間に合わない。乗らないし」
「なんで?!片付いたじゃん!」
「寮の片付けが残ってるって言ったでしょ?あそこは明日まで居ていいことになってるから、そっちに移ろう」
「…ちっ…じゃ、今から行ってすぐに始めよう!」
「すぐには片付かないよ」
「なんで!」
「ぐっちゃぐちゃだから…」
「…」
「それと、これ、フロントに運んで送る手続きしなきゃな…」
「…」
「手伝ってよね」
「…ああ…」
俺はふてくされた声を出した
このおっさん、どうしてもバスに乗らないつもりだな…
「ねえテジュンさん、どうして俺に手伝わせるの?」
「こういうボロボロの人ほっとくと、ろくな事考えないからね」
「…」
「あ、それ、台車に載せて」
「…俺の事…狙ってる?」
「へ?」
「…傷だらけの俺を慰めるふりして…抱く?」
「…ラブ君…」
「別に…いいよ。そんな手の込んだことしなくても…。テジュンさんには世話になったからタダで」
ピシャン
テジュンさんが柔らかく俺の頬を打った
そんなに強くなかったのに
とても痛かった
「手伝って…」
「…」
なんだよ…なんだよ…
こみ上げてくる涙を抑えながら、俺は荷物を台車に積んだ
部屋の荷物を台車に載せて、テジュンさんはフロントに向かった
もうすっかり暗くなってしまった
やっぱりどうしてもバスに乗る気はないみたいだ…
変なおやじ…
なんで俺に構うんだよ…
本とは欲しいんだろ?
かっこつけてるだけだろ?
どうせもうどうなったっていいからさ、今夜、楽しもうか?
あんたなら、イナさんを毎日抱いてるんだ
俺にも優しくしてくれるだろ?
あんな…勝手な…
俺は首を振ってその想いをかき消した
フロントの片隅で荷物の手配をしているテジュンさんの傍に行った
あて先を覗き込んだ
「ん?BHCの寮じゃないの?なに?誰これ」
「僕のイトコ。近くに住んでるんだ」
「…キム・ヨンナム?…ミネラルウォーター?何?」
「…帰ったらわかるよ」
「…」
帰らないもん、俺…
何枚もの送付書に住所やらなにやらを書き付けているテジュンさんの肩に、そっと顎を乗せてやった
きっとびくついて…その気になるんじゃない?
あんたもやりたいんだろ?違う?
でもテジュンさんはびくつきもしない…
普段からイナさんがこんなことしょっちゅうやってるのか?
それで俺は腕をテジュンさんの胸に絡みつかせてみた
下半身も密着させてやった…
「書きにくいんだけど、ラブ君」
「いいじゃん…甘えたいんだもん…」
そう言ってから俺はほんとにテジュンさんに甘えたくなって、テジュンさんの背中に頭を押し付けた
安らかな気持ちになる
一生懸命片付けをしたから、身体がいい具合に疲れているみたい…
薄目を開けてロビーをぼんやり眺めていたら
一番見たくないものが目に飛び込んできた…
イナさんと…おじさんが…キスしていた…
はあ…はあはあ…
息苦しい…
俺は目を瞑ってテジュンさんの背中に顔を埋め、テジュンさんの胸にまわした腕に力を入れた
「ん?どうした?」
振り返ったテジュンさんは、ロビーの二人を見ただろうか?…
手続きを終えたテジュンさんは、俺の手をひいて寮に連れて行った
部屋に通されて驚いた
なるほど、ホテルの部屋より随分散らかっている
「メシ食ったらフロ入って、今日は寝よう」
「…」
「ラーメンでいいか?」
「俺…要らない」
「朝からなんにも食べてないだろ?僕のラーメンは美味しいよ」
「…」
「イナにも食べさせたことないんだぜ。それに、ここに入るのは君が初めて」
「…へぇ…」
やっぱ…そういう目的があるの?
じゃ、やりやすいようにとどめを刺してやろうか?
「テジュンさん、さっきロビーでさ…見た?」
「ん?何?」
「あの二人…イナさんと…あいつ…」
「ん?」
「キス…してた…濃厚なの…。見た?」
「ああ、見たよ」
見たの?!なんでそんな平気な顔してるの?!
「それが?」
「…それでもイナさんを信じるって言うの?」
「うん、あれぐらいいつもの事だからね」
「…何それ…信じられない…おかしいよテジュンさん!」
「そう?あいつら寂しいんでしょ?僕らがいないから」
「…」
テジュンさんは本当になんでもないような顔をしてラーメンをつくり、俺に無理矢理食べさせ、自分も美味しそうに食べていた
フロに入れと勧められ、仕方なく入った
ベッドで寝ろと言われ、俺はベッドに横になった
その後テジュンさんがフロに入り、パジャマを着て出てきた
抱く気は…本当に…ないの?
俺はテジュンさんの傍に立ち、テジュンさんの首に腕を巻きつけて誘った
テジュンさんの顔色は変わらない
「キスして…」
そう言うと、テジュンさんは俺にそっとキスしてくれた
でもすぐに唇を離した
「俺を欲しくない?」
「…」
「抱いてよ!」
俺は自分からテジュンさんの唇にむしゃぶりついた
テジュンさんは俺を押し戻して言った
「違うだろ?君が欲しいのは僕じゃないはずだ」
「誰だっていいんだよ!どうだっていいんだ!ただ寂しくなきゃいいんだ!」
11時だ…
バスは出発した
あの二人はきっと並んで座ってる
時々キスしながら
きっと
抱き合う…
俺はTシャツを脱ぎ捨ててテジュンさんに絡みつき、テジュンさんの唇を奪った
そしてテジュンさんのパジャマのボタンを一つずつ外し、それを脱がせてやった
テジュンさんの肌に触れる俺の肌…
頭の中で何かが切り裂かれる
抱きしめられる俺
胸と胸が合わさる
また何かが切り裂かれる
テジュンさんに腕を絡ませる俺
テジュンさんの背中を這う俺の指
ちいさな悲鳴が聞こえる
密着する肌と肌
風呂上りで汗ばんでいるテジュンさんの胸
俺は…泣いていた
違うと言って泣いていた
違う違う違うと叫んで泣いていた
テジュンさんは俺をベッドに横たえてそっと離れた
「わかっただろ?」
「…」
「君も自分には嘘つけないんだよ…だから…信じていいよ、自分の事」
え?
俺のことを…信じていい?
誰が?
俺がか?
「安売りすんな。大事な身体をさ…」
顔を覆って俺は泣いた
「だって!俺が好きだったとしても…あいつは…あいつは…俺の事信じてくれてないもん!あんな酷い事…」
「だからってどうして君が自分を傷つけなきゃいけないんだ!どうして自分を貶めようとするんだ!
悪いのはあいつだろ?君じゃない!堂々としてればいいんだ!
どうして自分ばかり責めるの!もっと自分を可愛がってあげなよ!」
「…」
「な?」
「どうすればいいのさ…」
「今、見つけただろ?自分の気持ちがどこ向いてるのか…。それを大事にしなよ」
「…」
「抱いてほしけりゃ抱いてやる。いつだって抱いてやるよ。でも、僕に気持ちがないのに抱かれても仕方ないだろ?君が傷つくばかりだ…
少しでも僕を好きで、僕に抱かれたいと思うなら、その時は抱いてやるよ…。そんな時はこないと思うけど…」
俺は何も言えなかった
ただ涙を流しているだけだった
「おやすみ、明日はハードだからね」
テジュンさんはそう言って灯りを消すと、床に敷いた布団に寝転がった
暫くしてテジュンさんの携帯電話の着信音が鳴った
短かったからメールだろう…
俺はテジュンさんに言われた言葉を思い返しながら、自分を大切にするってどう言う事なのか考えていた
◇まうむ..てそまよ..deux 妄想省mayoさん
闇夜は僕の肩をバンバンと叩いたあと手を置いたまま僕をじっと見つめた
何か言いかけたが..肩をすくめてにっ#っと笑って言葉を引っ込めた..
「何だよ..薄気味悪いなぁ...」
「ぷっ...そういえば..BHCに来たばかりの時テソンに言われたっけ..薄気味悪いなぁって..」
「あはは...テソンさんに言われたくありませ〜ん#....とか言ってたよな..あの頃..」
僕の脳裏にその時の情景が浮かんだ..闇夜もそうだろう..
僕が言った後に.お互い顔見合わせてくすっ#っと笑ったから..
「僕は..最初は無意識に..でもそのうち君から目が離せなくなった..」
「ぅん...なるべくしてこうなった..って後でわかるよ」
「もぉ〜だから..何#」
「へへぇ〜(*^_^*)」
僕は悪戯っぽく笑う闇夜を胸に引き寄せぎゅっ#と一度抱いてからそっと離した
「僕は..母さんのこと..今まで人に話したことないんだ..」
「聞いて良かった..テソンのこともっと理解できる..」
「僕も同じだ..mayoのこと..今まで以上に好きになった..それに..」
「…??」
「mayoが..ちぇみに惹きつけられるの..今は理解できる..」
「テソン..ごめん..」
「ぅぅん..いいんだ..ちぇみは君を幸せにしてほしいと僕に託した..
僕は君にできることは何でもする..僕でいいんだね?」
闇夜は僕の頬に手のひらを置いて頷いた..
僕はその手のひらにkissを落とし闇夜を真っ直ぐに見て言った..
「僕は..今日..思いっきり君を抱く..覚悟して..」
「...ぁ...」
一瞬ぽかん#となった闇夜は僕の耳元で言った..
「テソンも..覚悟して..」
「ぇっ.....@o@」
今度はぽかん#と口を開ける僕..
僕の脳裏に一瞬..闇夜に翻弄される僕の姿が映った..
僕の顔を覗き込んだ闇夜はふふ#っと笑って人差し指で僕の額をぐっ#っと押した..
カフェを出た僕らは厨房へ寄り料理長のゲナムさんに挨拶をしてから部屋へ戻った
帰り支度を整えてフロントのヒョンスに挨拶をする..
僕達は駐車場からホテルを一旦見渡してからホテルを後にした
~~~~~
別宅へ帰る途中..江南のインテリアショップに立ち寄る..
闇夜はずんずんと店の奥に進む..奥の事務所に入ると一人の男がPCの前に座っていた..
男の肩には一匹の白い猫が鎮座している..
「はるみ#」
白猫は男の肩からするするする@と降りてきて闇夜の前に走ってきた..
闇夜が抱きかかえると前足をバタバタ動かし..
顔をスリスリすると最後に”みゃ〜”っと鳴いた..
猫は鳴いた後に僕の顔をじぃぃーと見ている..深い青色の目をしたラグドールだ..
「はるみちゃんだよね..可愛いな..」
「ぅん..はるみ..ご挨拶しなくちゃね..」
はるみを一旦床に座らせた闇夜は僕に韓式の挨拶の仕草をしてみせる..そういうことか..
僕は頭の脇に手を持ってきてそのまま屈み..礼をして..立ち上がる...
はるみは上→下→上と顔を動かし..挨拶の終わった僕に”みゃ〜”っと鳴いた..
僕が抱き上げ顔をツンツンすると..はるみはまた”みゃ〜”っと鳴いた..
PCの前にいた男が僕らに近づいた..
「俺はミンジュン..こいつの昔の単車仲間..誤解しないで..何もないから..」
「イ・テソンです..」
「はるみはね..人見知りするんだ...テソン君は気に入られたね...よかった..」
「ぁ...そうでしたか...」
「はは...君はこのじゃじゃ馬を落としたんだろ?」
「ぁ..はい..って..ぁの..」
「あはは..頑張って..」
彼は笑いながら僕の肩を叩いた..3人でちょっと話をした後ショップを出る..
別宅に着くと今度は中庭にむさくるしい男達が5.6人いる..
「mayo..こ..この人達..何?」
「ん?..防音工事の連中..」
「ぁふ..」
男達の中からでっぷり太ったオヤジが近づいてきて闇夜にがっつり抱きついた..
あのマフラーのドラマの現場監督にそっくりだ..
「まよっぺ..毎度毎度.無理難題だな..一晩でやれとは..ったぐ#..終わったからな#」
「ごめんごめん...頼めるのおやっさんしかいないじゃん」
「だはは...そうかそうか...んまっ..またポジャンマジャで奢れ#」
「わかった」
おやっさんとやらは僕の顔を穴の開くほど見..
僕の肩をトントン叩いて他の連中と帰っていった..
「ふぅ..」
「あはは..次から次でびっくりした?」
「ぅん..ちょっと..」
「さっきのおやっさんは親父の知り合い..」
「そうか..」
「で..おやっさんが今入ってる現場の建築会社の御曹司が..今度のスカウト対象さ」
「えっ..ス..スカウトってBHCの?」
「そっ..しかも..同時に2人..もう一人は医者の卵だ..」
「あひゅ〜@o@」
闇夜に驚かされたのはこれだけではなかった..
僕は別宅の僕たちの部屋のドアを開けて一瞬息が止まった..
僕が振り向くと..はるみを抱いた闇夜は瞬きをしながら頷いた..
僕はのろのろと部屋へ入っていった..
最上階2 オリーさん
僕はしばらくその書類の束を見た後で、
「やっぱりもらえないよ。返そう」
さっきこのフロアを見学しながら考えたことを言った
「あの人がどんなお金持かわからないけど、やっぱり無理だ
さっきここを見て回って思ったんだ。桁が違いすぎる」
「どうやって返す?彼女のこと知らないんだろ」
「昔のツテを使えば調べられる。大丈夫だよ」
「やっとミンの頭が現実的になってきたね」
「どうかしてた。知らない人からこんな高価な、いやどんな物でも貰うべきじゃなかった…」
「例えがあまりよくないけど、僕はさっきからこの書類を見てて、ある言葉を思い出した」
「ある言葉?」
「ああ」
「どんな?」
「大衆は小さな嘘には騙されないが、大きな嘘には騙される」
「ヒトラーだ。つまり、このマンションは大きな嘘ってこと?」
「もちろん彼女は独裁者じゃないから、そのままじゃない。ミンが彼女をハグした時、何て言われた?」
僕は彼女をハグした時感じたそのはかない感触と
耳元で囁かれた彼女のビロードのような柔らかい声を思い出した
「僕のハグでプレゼントのお返しになった。貸し借りはなしだって」
彼は満足したという笑みを浮かべた
「ミンのハグはすごいな。それでこれだよ」
「嫌な言い方しないで」
「さっきの言葉、嘘を夢に置き換えて考えてみるとね、ちょっとわかる気がするんだ」
「夢?」
「彼女にとってたぶんこれは大きな夢。ハグだけで交換できるとてつもない夢
そのために彼女はこの書類を完璧に仕上げた。それが手に取るようにわかったよ
ミンの名義にするため、彼女は随分苦労してる」
僕はテーブルの上の書類を手に取ってみた
「それで彼女の本気が伝わってきた。彼女はこれで、僕らと一緒に夢を見てくれと言ってる」
何冊も難しそうな書類がある。僕は不動産のことはよくわからない
「とにかくハグと引き換えるなんて論外だよ」
「そうだね、とんでもない。僕なら絶対しない、ミンのハグとなんて」
「だろうね。僕のハグはフリーだと思ってるもんね」
「ひがむな、ミンのハグがタダだなんて思ってないよ」
「そう?」
「そうさ。ただ僕には引き換えるものがない、あまりに大事すぎて」
「…」
「だから僕もハグで答えるしかない」
僕はハッとした
「そういうこと…」
「ミンが彼女のことを突き止めて返しに行ってごらん。彼女の苦労は台無し
そして彼女の夢は消える」
彼はそう言って、テーブルの上の書類を指差した
「僕はね、彼女の夢に乗ってもいいと思った。もちろん、僕らにとって破格なオファーだし
でも決めるのはミンだよ」
僕はあの小柄な女性の笑顔を思い出していた
こう見えてもダンスを習ってるの
応援してるわ
そして、彼のこと気難しい方って…
彼は気難しいだけでもないみたいですよ
あの人は、僕のことを好きなんじゃない
僕らのことが好きなんだ、きっと…
「そうだね。ちょっと大きすぎる夢だけど…いいのかな」
「じゃ決まりだ」
彼はふーっとため息をついた
僕はそれを合図に彼の隣に席を移した
「さっきまですごく怒ってたから、どきどきした」
「怒ってたんじゃないよ、考えてたんだ。色々とね」
「そうかな」
「実を言うと、あのベンツ、すごく欲しかったヤツなんだ」
彼は僕の肩を抱いて下から僕を見上げた
「しょうがない人だな。あの車は誰の名義?」
「あれだけは僕だ。そうだ、ミンにも車があるよ」
彼はそう言って封筒の中からキーを取り出した
「車?」
「レンジローバーだそうだ」
「…」
「なんて顔してる」
「これはどっちの夢?小さい方、大きい方?」
「全部まとめて大きい方だ。そういえば、このビルの名前知ってるの?」
「知らない」
「ロイヤル・ローズ・ヒルズだ」
「え?もしかして…このビル…」
「さっきのコンシェルジェ、彼女とつながってる気がする。探さなくても、そのうち会えるかもしれない」
「もし会えたら、ちゃんとお礼が言えるね」
「ミンは礼儀正しくてとても良い子だ」
「子供扱いしないで」
僕らはその後、駐車場に降りて車を見た
ローバーの隣に彼のベンツが置いてあった
「荷物運ぶ時は、ミンの車を使おう」
「僕の車なんだから勝手に決めないでよ」
「いいだろ、僕のはたくさん荷物つめないんだから」
「それはそっちの都合でしょ」
僕らはそんな話をしながら彼の車から荷物を出すとまた部屋に戻った
途中エレベーターの中で彼が言った
「ひとつ気をつけなくちゃいけない」
「何?」
「電話と電気代と水道代は僕らが払わないといけない」
「電話は携帯があるからともかく、電気と水道はどれくらいかかるだろう?」
「さあね、普通のマンションの家賃くらいかな」
「そのくらいは払わないとね」
「たぶん、彼女の心遣いだ。まるっきりタダだと良い子のミンが気兼ねするからね」
「管理費は?」
「問題ない。すべて前払いされてる」
「すごいね」
「いいかい、使ってる部屋以外は電気をつけないこと、必要ないフットランプは消しておこう。それから…」
くどくどと小姑みたいな注意を彼は始めた
でも僕は違う事を考えていた
さっき見たメインベッドルーム、あの薄布が揺れるパオのベッド…
【80♪マイ・クラシック】(勝手にロージーの愛の世界7) ロージーさん
さらば 足バンさん
チュニルだ
祭が終わった
わたしはロビーのソファに腰掛け去ってゆく皆を見送った
ポラリスの面々はそれぞれ大きな荷物を抱えて出て行った
キム次長が”こんなに売れ残ってどーすんですかっまだ店に在庫満杯ですよっ”
サンヒョク君が”絶対独立だなこれは”
父上たちが”やっぱり目立たなかったね”とつぶやいていた
男たちの悲哀または過ぎ去った夢とでも言おうか、そんなものを感じる
ともあれご苦労だった
男組の連中がオ支配人やチニさんを囲んで挨拶をしていた
ずいぶん迷惑をかけたようだが皆男泣きしていた
自分たちには過分の待遇だったと言っている
掘った塹壕の数だけ思い出があるのだろう
持ち込んだスコップその他一式はホテルに寄贈されるようだ
チョ・ウォン氏が静かにフロントで交渉をしていた
ロビーに壁画を描かせてほしいと
スタッフが丁重に断っているが”遠慮はいらない”とねばっている
さて。彼は祭で何をしていたのか思い出せないが…
最後まであのコスチュームで通した王朝魂には敬服する
白夜グループはロビーで少々混乱していた
ヨンジュン氏がいないという声が上がり
あのダンスの先生が日本行きの手配をしているのいないの
全員で日本に乗り込むの乗り込まないのと
うむ。あの闇夜さんがいないと混乱してよくわからないな
デラルスの3人がかなり目立ちながらチェックアウトをしていった
彼らの持ち物は驚くほどの量だ
通常この状態を”引っ越し”と呼んで差し支えないだろう
ホテル中のポーターを総動員しても足りないようだ
ミミさんは目ざとくわたしを見つけ挨拶に寄って来た
わたしはその差し出された手にキスをしたが
一瞬”躊躇”してしまったことは大変失礼だったように思う
まだまだ修行が足りないようだ
ヘヴンの連中もなにやらもめている
ソンジュ氏が海に置いて来たピアノを取りに行けとチャン理事に言っているが
理事は”あのピアノは不法投棄容疑で警察から連絡がありその処理で大変だ”と嘆いている
うむ。ものには限度というものがある
身体を鍛える前に心を鍛えよ。いや、いらぬお世話か
MUSAの面々はそれぞれなにやら長いものを持ち
おとなしくロビーの隅に正座している
チン殿が睨みをきかせているせいだろう
ヨソル氏はショーの髪飾りが気に入って髪を美しく結い上げている
兄のBHCドンジュン氏が心配で今後近くに住むつもりだそうだ
すぐ側で腕を組んでいる将軍と男組隊長はもう黙認(諦め)の仲だそうだが
皮膚科の医師の指導でしばらく接吻は禁止だということだ
不愉快そうな隊長の弟の顔が印象的だ
うむ。まだまだだな
これからもあらゆる”弟役”を存分に極めることだ
ミンチョル氏の奥方は義弟の車で帰ることを断固拒否し
ミヒさんと帰ることになったらしい
あのお二人は今回ずいぶん気が合ったようで
BHCに毎晩顔を出すということで盛り上がっていた
人ごとながら対象となる男性諸君の今後が心配だ
オールインの皆は仕立てた小型バスに乗るべく賑やかに待っている
サンドゥは来た時よりも荷物が増えている
全て化粧品だということだ
チョンウォンはBHCのミンチョル氏がサラのベンツで帰ったと聞いて
自分もリムジンで帰ると騒いでいたようだが
親父さんに喝を入れられ思いとどまった
さて、チョングやスングクがわたしを呼んでいる
テジュンやシボンたちも手招きしている
皆わたしの大切な友人だ
最後の茶を飲み干しわたしもそろそろ行くとしよう
乙女の階段 ぴかろん
僕達は今、バスに乗ってBHCに向かっている
報告しておこう
未遂だ!
ちいっ!
いいところまでは行ったんだ!ちいっ!
だがどうしてもスヒョクが拒む
なぜだっ!
これだから乙女は…ちいっ!
僕は昨日の夜、いけるトコまでいって一応満足して眠った
こんなに解れたならもう朝になったら目覚めの一発もオッケーしてくれるものと思っていた
起きたらスヒョクが居なかった
機先を制すというのか!
ちいっ!
僕は部屋を見回した
バスルームからシャワーの音がする
チャンス!
僕は昨日の朝(昨日の朝だよ!すごい時間が経っているように思うが)、スヒョクにしてもらった事をフフフ思い出しフフフ
そんならこんどは僕が丁寧にお返しをして、そしてそのまんまベッドに戻ってゆっくりと、たっぷりと…夜までフフフと少々すけべな事を考え
着ていたものを脱ぎ捨ててバスルームに入っていった
スヒョクは僕を見て、大して驚きもせずおはようと言った
「おはようはないだろう?」
スヒョクを後ろから抱きすくめて耳にキスしたフフ
すると…するとスヒョクは身を翻して僕の首に腕を絡め
それは予定外の行動だった
そして僕のくちびるに情熱的なキスをしてきたのだっ!きいっ!
昨日の夜、ラウンジの手前の踊り場で、夜景を見ていたときのような…そんなキスを僕にっ
僕は一気にヘロヘロになった
なんでこの子急にこう?
夢中でキスをした
滴り落ちるシャワーの水しぶきを浴びながら僕はスヒョクを抱きしめた
「欲しいの?」
「あうん。ほしいっ」
つい間の抜けた返事をしてしまう
「ふぅん。俺の言う事聞いてくれる?」
「ななな何?」
「…もうちょっと待って」
え?
もうちょっとって何が?
「今日はダメ」
「え?ききき今日ダメなのっ?!どーしてっ?」
「どーしても!」
「…そんな」
「今日でなくてもいいでしょ?」
「…」
「今日はぁ…普通のデートがしたい」
「…へ?」
「だって…ソクさんと知り合ってまだ二日ぐらいしか経ってないんじゃなかったっけ?信じられないけど」
「…う…うん」
「それなのにもうそんな関係になるのは俺、イヤなの」
「…」
なんだよっ!若いくせにじじむさいこと言って!きいっ!僕はもう我慢ができないのにっ
「もう一回処理してあげようか?」
「きいっ!いいっ!きいっ!そんな事で誤魔化されたくな…ああン」
そんな訳で僕は「爆弾処理班」に処理されてしまったのだ…きいっ!
でも今日は昨日よりはフフ
フフフ
一応…満足した…
進歩があったからいいフフ
というのも、昨夜「いくところまでいってみよう」といって、僕が色々と…まあその…ホホホ…アレだ…
教えてあげたのだホホ
それをだなホホホ
今朝はこの…僕にこの…ホホホヒヒヒッ
あんまり嬉しかったのでテジュンにメールしてやった
返事がこない
悔しがっているのだろうフフン
まあそういうわけで、段階を経ながら乙女を崩しにかかっているのだが、いったいいつになったら…できるのだろう
夜バスに乗っていたらテジュンからメールの返事が来た
『僕は今、そんなに暇じゃない。その程度で喜んでメールすんな馬鹿!
悔しかったら早くヤっちまえ馬鹿!』
ふんっ
羨ましがっているのだろう馬鹿め…
とにかく僕は、隣で僕に凭れ掛かって眠っているアドニスとフフ…幸せの道をひた走るのみ…なのだ…フフン
ヘヘン…
◇まうむ..てそまよ..trois 妄想省mayoさん
僕らの部屋は仕切のないワンルーム
ベットの端にベットと同じ幅の低いチェストが置かれそこにリネン類が入っている
ベットサイドの両側に小さめのチェストを配し…PAO T2のスタンドが置かれ
ベットの近くに5枚仕立てのスクリーンが立っている
大きめのシンプルなデスク…デスクの傍に天井までの本棚
対極の壁に2脚づつチェアが置かれている
家具類はダークブラウン…リネン類はCATHERINE MEMMIの白で統一している
照明は僕らの部屋…ちぇみテス部屋…リビング…いずれもFLOS社かArtemide社のものだ
闇夜は照明には拘り..僕らの部屋は天井から下に落ちる照明がない
敢えて付けなかったと闇夜は言った..僕もそれに賛成した
アップライトのフロアスタンドや壁に当てる間接照明にしている
だから僕らの部屋だけで照明器具は僕のデスクライトも含めて大小8つはある
~~~~~
僕はのろのろと部屋に入りドアの正面にあるコンソールの前に立った…
僕は下を向きCATHERINE MEMMIのコンソールの上を眺めた
L'occitane…Fragonard…Emillio Robba…Chistian Tortu…maison de famille…
いくつかのアロマキャンドルが置かれている
そして目線を上げ..一瞬息の止まった壁に掛かっている絵を見た
母さんのお気に入りだった
サンジェルマン大通りから入った路地にある市場の絵
タッチはアバウトな感じだけれど暖かみがある絵だ
僕がバイトでお金を貯め..買いに行ったときに既に売れていたあの絵だった
「どうして..どうして此処にある?mayo…」
「私の両親の形見…」
「えっ?どういうこと?」
動揺している僕に闇夜は胸にはるみを抱かせた
僕ははるみの背中を撫でながら闇夜の話を聞いた
「私のおふくろも絵を見るのは好きだったんだ..
親父に内緒でよく買ってた..高くない版画ばかりだけどね..」
「そうなの…」
「普段からさ..馬鹿!じじい!..ハゲ!...ふん#うるさい#..とかいって喧嘩ばかりしてた両親が
珍しく2人で出掛けたんだ..親父が逝く3ヶ月前くらいかな…」
「ぅん..」
「おふくろは何度か見たこの絵を親父からプレゼントして欲しかったみたい
親父は..こんな絵のどこがいいんだ…買うなら高いのにして上がったら売れ!って感じだったみたいだけどさ…」
「ぷっ..でも買ってあげたんだね」
「ぅん..帰ってきておふくろはその絵を手元に置いて嬉しそうに眺めてる..
そんなおふくろの顔を親父はそっぽむきながらも横目でまんざらでもない顔で見てた..」
「可愛いとこあるじゃん」
「でも..2人とも逝ってさ..ひとりになって..家とか絵とか処分したんだ…金がいるからさ..」
「ぅん」
「でも..この絵だけは売れなかった..
少しだけでも仲良しの時間を過ごしたふたりが買った絵だからさ..
さっきテソンの話聞いて..もしかして..って思って構図を聞いたの..
マルシェ(市場)の絵はkodamaのシリーズの中でも何枚かあるよね?」
「でもこの絵だ…って思ったんだ…mayoは..」
「この絵は一番色数が多いよね…確か..」
「ぅん..そぅ..だから母さんもこの絵が好きだった..」
「じゃないかな…と思った..」
「ありがとう..凄く..凄く..嬉しいよ..」
「エディション50だから他にも持ってる人はいるけどね…」
「でもこんな巡り合わせでここにあるんだよ?」
「ぅん..びっくりだよね」
「僕とはやっぱりずぅぅーっと一緒にいなくちゃ..ね!」
「絵半分にできないから?」
「それもある..」
「ぷっ..」
僕ははるみを抱えていない方の手で闇夜を引き寄せた
はるみはするっ@..っと僕の腕から抜け床にトンと降りた
僕は両手で闇夜の頬を包み..長い長いkissをした
唇を離すとはるみが”みゃぁ〜”と鳴いて僕と闇夜を交互に見た..
闇夜ははるみを抱き上げた
「はるみ..これからテソンとデートだからさ..留守番できる?」
はるみは"みゃぉん..>_<..と哀しく鳴いた..
僕が頭を撫でるとはるみは僕に"みゃぁ〜(^^)”..っと鳴いた
「OKなの?」
「ぅん」
「じゃ..出掛けよう」
僕は着替えを済ませた闇夜と街へ初めてのデートに出かけた
~~~~~
☆ちぇみテス・てそまよ宅詳細
凹の住居部分と中庭の北側に3部屋横並びの部屋が配置
凹型...てそまよ部屋--4人リビング--ちぇみテス部屋の並び..各部屋北にバスルーム設置
4人のリビングは誰かいれば入れます…リビング約30平米(20帖)
*リビングテーブル&チェア:テジン作…お花のモチーフが差し込み式で替えられるタイプ
*リビングソファ&テーブル:大きめの3シーター&一人用ソファ2個…カッシーナ
*照明:FLOS&Artemide
*キッチン:独Miele…モダンタイプのオールステンレス
*中庭:アイアン製テーブル&椅子&座面の広いベンチ配置
*南側ベランダ:アイアン製テーブル&椅子&ベンチ配置..屋上への階段あり
*凹部分:ぐるりと渡り廊下付き..中庭から渡り廊下はガラス張り
3カ所出入り可能..1Fのベーカリーへの階段あり
*随所にグリーン配置
ジュンホの長い夜 れいんさん
やっとやっといえにかえってきました
ゆめにまでみたぼくのいえ…ぼくのかぞく…
みんながぼくをあたたかくでむかえてくれました
ぼくのにもつをはこんでくれるさんみんせんせい
ぼくのかたをたたきながらよろこんでくれるおとうさん
すごいいきおいでしゃべりつづけるおかあさん
ぼくのりょううでにぶらさがりあまえるこどもたち
そして‥すこしうるんだひとみでほほえんでいるそにょんさん
ただいま…
ぼく、いまかえりました
あいたかったです、みなさん
あいたかったです、そにょんさん
てーぶるにはたくさんのごちそう
みんながぼくのためにじゅんびしてくれました
のんだりたべたりしながらたくさんはなしました
まつりのようす
しょーがどんなにすごかったか
ぼくしんぐのしあいでがんばったこともはなしました
おべんきょうをがんばったことも、しょうをもらったこともはなしました
しばらくそうしてにぎやかにやっていたけど
ぼくもだんだんとつかれてきました
そろそろへやでやすみたいな…
だけどみんな、なかなかぼくをはなしてくれません
おとうさんはどんどんおさけをついでくるし
こどもたちはひざにのったり、せなかにだきついたりして、ふたりでぼくのとりあいっこです
もう、ねるじかんじゃないのかな…
ほかのみんなも‥こほんけほん‥きをきかせてくれないかなあ…
たべものにほんのすこし、すいみんやくでもまぜておけばよかったかな…
なんて、わるいことをちょっとだけかんがえてしまいました
そにょんさん、はやくふたりきりになりたいです
みんながつかれてねてしまってから…ぼく…きょうこそは…
ずいぶんじかんがたってから、やっとみんなねてくれました
ふう〜〜
おとうさんにもとことんつきあいました
でも、そにょんさん、ぼくだいじょうぶですよ
ちゃんと…げんきです
ぼくはつかれてねてしまったこどもたちを、だきかかえてへやにつれていきました
それから、よいつぶれてねてしまったおとうさんに、ぶらんけっとをかけました
さんみんせんせいやおかあさんには、おやすみなさいとあいさつをしてみおくりました
そしていよいよそにょんさんがまっている、ぼくたちのへやにいきました
ああ、そにょんさん、おきていますよね?
ぼくをまっててくれてますよね?
ぼくはいそいでどあをあけました
そにょんさんっ!
ぼくはへやにとびこんでそにょんさんをはぐしました
あいたかったですっ!
ずっとあいたかったんですっ!
すきです、そにょんさんっ!
あいしていますっ!
はぐっはぐはぐはぐ〜〜
(※以下音声のみでお楽しみ下さい)
ちゅっぶちゅぶちゅぶちゅうう〜〜
ガツッ
「痛っ!歯が…ジュンホさんったらそんなに焦らないで…」
さわさわさわさわ〜〜
「あ!そにょんさんっ、だめです、そんなところを…」
「あ!ジュンホさん、そんないきなり…」
ぎしっぎしっぎしっぎしっ(←ベッドの音)
「ジュンホさん、もっと優しく…」
はっはっはっはっ
「そにょんさん、そんなにうごくと…」
あっあっあっあっ
「ジュンホさん、凄いわ…」
「そにょんさんっ」「ジュンホさんっ」
うう〜〜っ!
はああ〜〜
そにょんさん、ぼく、がんばりました
それからそにょんさんはすやすやとねむってしまいました
ぼくはしあいでかったようなほこらしいきもちになりました
3らうんどけーおーがち…といったところでしょうか
てぷんさん、どうですか?
ぼくってすごいでしょ?
まいりましたか?
ぼくはちょっとだけおもいだしてしまったてぷんさんのかおをいそいでうちけして
それからいつものように、れいぞうこにのみものをとりにいきました
想い ぴかろん
俺達はバスに乗ってBHCに向かっている
隣にはギョンジンがいて、俺達は自然と手を握りあっていた
ロビーでキスした時に、俺は、目の端にテジュンとラブを捉えた
テジュンの背中に抱きついているラブ
甘えているようなラブ
どきんとした
どきんとしたけど
何があっても俺、テジュンを信じてるから…
ラブと何しても俺…
俺の隣にいるはずだったテジュン
俺はやっぱり寂しかった
隣にテジュンがいないのがとても寂しかった
けど
気が狂いそうになるいつもの寂しさじゃなかった
それはきっと俺が俺の気持ちに自信を持てたからなのかもしれない
俺は思いついてテジュンにメールを送った
読んでも読まなくてもいい
俺は俺の今の気持ちを、テジュンに伝えたくて、暗いバスの中で、車酔いしそうになりながら、キーを打った
気持ちをまとめてテジュンに送った後、ほっとして俺はギョンジンに笑いかけた
夜中にメールが来た
携帯なんか見ている暇がなかったから、僕は寝床でそれを見た
一つはソクからの…
『むほほ。いいだろう。スヒョクにアレをしてもらったぞ。スッゲー気持ちよくてシアワセだホホホ』
…
馬鹿
そんなことより早くヤッちまえ!
そう返事しておいた
あいつもかなり変わったな…
幸せそうで羨ましいよ…
もう一つはイナからだった
あいつがメールなんて…
また誰かと間違えてやしないか?
僕はあの誤解メールの事を思い出して少し笑ってしまった
『テジュン
ちゃんとお前にメールすんのって、初めてだな
照れくさいな
今バスの中だ
隣にギョンジンがいる
あいつ、ラブの事ばかり考えてる
俺も…お前の事ばかり考えてるよ…
今日あったこと、報告するね
電話もらってから、俺とギョンジンは二人でいろいろと考えてた
信じるってことを考えた
俺、やっとわかった
お前がどうしていつも俺を許してくれるのか…
俺がお前を愛してるってこと、信じてくれてるからなんだよな…違う?
お前って凄いな…
ほんとに凄いよ…
だから俺もお前が何やっても、信じることにしたんだ
ラブとキスしても、寝ても
お前は俺の事、愛してくれてるって、信じてる
…ラブを選んで俺から去っていったとしても、それでも、俺の事、愛してくれてたんだって、信じる
その事に気づいたら、気持ちが少しだけ軽くなった
ギョンジンにも説明したけど、あいつはまだよく解ってないみたい
ラブは元気?
そういや、ロビーでお前の背中に張り付いてるラブをみたぞ
どきっとしたよ
どきっとしたけど、あいつ…甘えたいのかなって思った
甘えさせてやってね…
俺もさ、その前にギョンジンとキスしてたんだ
寂しくて…びょーきだな…ごめん
何回かキスしたよ…ごめんな
お前また怒るかな
それともこんなことぐらいもう平気?
やきもちもやかない?
寂しいな、テジュンがいないと…
けど俺、前より落ち着いてる
お前を信じて待ってるから…
きっと帰ってきてくれるって信じてるからさ…
だから…
ラブと何してもいいよ…
けど…寝たとかキスしたとか報告しないでくれよな…俺には…
やっぱし俺、妬けちゃうから…
また明日メールするね…
返事はいらない
どうせ返事書く気ないんだろうから…
愛してる… イナ』
なんだよ…随分りっぱな野良になっちまって…
涙が滲んだ
返事を書きたかった
でもやめた
ラブ君を連れて帰るよ
ギョンジン君のもとへ…
必ず帰るよ、
お前のところへ
もうちょっとだけ待っててね
おかえりなさい ぴかろん
「ただいまぁっ」
「おいなんだこのゴミ」
「なんか靴の裏にくっついた!」
「「へぇここがBHCかぁ」」
「なんで鍵が壊れてるんだっ!狐に怒られるっ!」
「僕のアトリエ見る?」
「はい…」
「今からお義父さんとこに行く?それとも二、三日してからにする?」
「…少し休んでから…二、三日してから…」
「誰だよ、床にタバコ捨てたのは!…まさか泥棒が入ったのか?!」
騒がしいなぁ…なんだよ…
ドンヒの野郎どこ行ったんだよ…
…ん?
朝?
…騒がしい?!
あっ!もしかしてっ
ダダダダダダ「スヒョン!」
俺は店のホ○トたちが帰ってきたと悟り、戸口までスヒョンを迎えに出た
同じ顔がいっせいにこっちをみた
「あれは新人ホ○トのホンピョです。僕はドンヒ。んでこちらは昨夜からちょっといろいろお話聞いていたヨンナムさんです」
「ああ、貴方がキム・ヨンナムさんですか?僕はユン・ソクといいまして…もしかしたら僕も貴方と親戚かもしれないですねハハハ」
「テジュンから聞いてます。そっくりさんがいるって…。貴方の当分の住まいも僕の家らしいですね」
「へっ?…い・いや僕はスヒョクと…」
「ソクさん、住むとこがあってよかったね」
「いや、スヒョク!僕はお前と…」
「さ、荷物を持って、早速行きましょう」
「いや僕はここで仕事の段取りを」
「それは明日チーフが教えてくれるから、まずはヨンナムさんとこに荷物を置きにいったら?俺も寮に帰ってすることあるし…」
「そそそそんなスヒョク…」
「じゃあ僕はソクさんといったん家に帰ります。あ、僕の連絡先はドンヒさんが知ってますので」
なんだ?なんだよ…兄貴が兄貴そっくりの…こいつはえっと…あの凄い衣装を着てたキス魔の男だな?ソクってのか?…こいつを連れて家に帰る?
「俺も行くあにきっ!」
「…君は僕の弟じゃないから」
「でも兄貴みたいだもんっ!」
「おいホンピョ、やめないか」
「っせぇなっ!あにきっあにきいいっあああっ…素早い…もう行っちゃった…」
「ホンピョ、みなさんに挨拶しろよ」
「…スヒョンは?」
「こらっ!」
「スヒョンは別口だ」
「別口って?」
「自分の車で帰って来る」
「…じゃチーフってのは?」
「どっかにシケこんだ」
「へ?」
「俺達が留守の間に泥棒が入ったのか?」
「あんた…たしか…キム・イナ」
「…そうだけど…」
「テレビであんたが%&$してるの見た!変態っ!」
「…」
「キスしまくってるのも見た!そうそう、こいつと」
「…キスはしてたけど%&$はしてねぇよ!馬鹿!」
「嘘つけ!」
「…ちょっと聞くけど、お前って『新人』だよな?」
「ああ」
「じゃ、口の聞き方に気をつけろ!」
「お前にはタメ口でいいだろ?刑務所仲間だしよ」
「…おい…。お前っていったい幾つ?」
「年か?22ぐらいだ」
「…じゃ、俺のが上だ」
「ジジイか」
「…この…。この…」
「へーん」
「この座敷ワラシっ!」
「…」
「「ぎゃはははぎゃはは。何かに似てると思ってたけどそーだよっ座敷ワラシだよっ」」
「「イナ、ナイスだっぎゃはははは」」
俺のあだ名が一発で決まった…
座敷ワラシだ…
ちきしょー!
俺は頭のてっぺんを撫で付けてキム・イナを睨んでやった
キム・イナも俺を睨んでいた
「キム・イナ!お前が纏わりついてた、兄貴そっくりのあの垂れ目の男は?」
「…テジュンか?」
「あいつ、いねぇじゃねぇか!ふられたのか?」
「…」
おっ。黙りこくって涙目になってやがる
「図星か!ひひーんふられてやんのぉひひーん」
ばこっ☆
キム・イナの隣にいたかっくいー兄ちゃんが俺の頭を殴った
「あんだよっ!…おめぇ…くせぇ」
「なにっ!」
「くせっ…なんか変においする」
「…こっ…これは…香水だっ!」
「げげーっへーんなにおいっ!」
「きっきさまっ」
「ホンピョ!もう辞めろよ。すみません。こいつ、野良犬みたいな奴で…」
「野良犬?」
キム・イナの目が光った
そして俺に握手を求めてきた
「あんだよ」
「俺、テジュンに野良猫って言われるんだ…」
「…」
「よく見ると可愛らしいな。小汚いけど」
「あんだと?!」
「と…とにかく…皆さんお疲れでしょうし、中へ…」
ドンヒがペコペコ頭を下げてみんなを中に入れた
なあんだよ
スヒョンいねぇのか…
ちっ…面白くねぇ…
「うわっまた靴の底に何かがっ!」
「お前よく踏むなぁ…。それにしても汚ねぇ泥棒だなぁ。そっこらへんにガムなすりつけてやが…」
俺が口からガムを出して、壁に擦り付ける瞬間を、キム・イナが見た
「お…まえ…座敷ワラシ…。これはお前の仕業かよっ!」
「あん?」
「ガムは紙に包んで捨てろっ!そんな事もしらねぇのかっ!」
「あんだよぉ、刑務所でこうやれって教わらなかったか?」
「俺は模範囚だったんだっ!お前…お前よく採用されたなっ!」
「ああ、オーナーじきじきに電話があってよ」
「なにぃっ?!…何考えてるんだよっあの人は!…ミンチョルは知ってるのか?って誰に聞きゃいいんだよっ!」
「お前あの垂れ目にふられたからイライラしてんのか?」
「くっ!ふられてないもんっ!…待ってるとこだもん…」
「待ちぼうけだな」
「「…」」
あり?変な匂いのかっくいー兄ちゃんまで物凄く暗くなっちったぞ…
しーらないっと…へへん
「なあ、スヒョンにはいつ会えるのさ」
「…」
「キム・イナ!答えろよ」
「くそガキ!もう我慢できねぇっ」
「おっ?やるか?」
「やめろよホンピョ!」
「イナ!まだ足が本調子じゃないだろ?…座敷ワラシ君、イナは捻挫してるから勝負したいなら足が完治してからにしろ!」
「…けっ。弱っちい野郎!」
「むむむうううっ」
「イナ…どうどうどう…」
けっ
スヒョンがいねぇなんてよ…
最初に会いたかったのによ…
つまんねぇの…
こんなに似たようなヤツラが寄ってきてどーすんだよっちいっ!
俺は唾を吐いた
みんながいっせいに俺を怒鳴りつけた
っるせーヤツラ…ちっ!