☆★Andre Kim_exposition de mode_8 妄想省mayoさん
★ stage9〜10.:*・°☆
♪Disk1-9.Air(G線上のアリア)
左右からステージ入り口に立つシゲッキー&ヨンジュン...
2人は顔を見合わせ両手を絡ませた後..並んでゆっくりとステージを進む..
シゲッキーとヨンジュンのドレスはまた色違いのドレスだ...
シゲッキーのカラーは CornFlowerBlue...ヨンジュンのカラーは mediumslateblue...
ドレスと同じ色と生地の極々薄いシフォンで作られた花が肩から裾へ飾られ..
スカート部分にもたっぷりと花が飾られている..
所々には濃淡の花が配置されている..
鎖骨と肩が露出し腕から肩にかけてドレスと同じ色のシフォンを纏い..
歩くたびにふわふわと薄い布が揺れる...軽く押さえる2人の指先は優雅で美しい..
2人がステージ頂点に立ったとき入り口からソンジュとチョンウォンが歩き出す..
ソンジュは白のタキシード..ボトムの裾はブーツイン#
チョンウォンはジャケットが長めの白のスーツでボトムの裾はブーツイン#
2人のジャケットの襟は少しふくらみを持たせ..後ろ襟に少しボリュームがある..
♪Aria(Jazz)G線上のアリア
ソンジュとチョンウォンはシゲッキーとヨンジュンとステージ中央で出会う..
シゲッキーの手を取ったソンジュが先にステージ頂点へ歩き..
ヨンジュンの手を取ったチョンウォンがそれに続く...
ステージ入り口まで戻るとシゲッキーとヨンジュンは舞台裏へ消える..
入れ違いにのピョートルが入り口に立つ..
ピョートルは黒白の蝶ネクタイに黒いタキシード..ボトムの裾はブーツイン#
やはりジャケットの襟にふくらみがある..
ピョートル・ソンジュ・チョンウォンの3人がステージ頂点まで進み中央へ戻る..
ソンジュとチョンウォンはピョートルを残し入り口まで戻り一旦正面を向き..舞台裏へ消える..
入れ違いにピョートルの”彼”とチャン理事がステージ入り口に立つ..
ピョートルはステージ中央でそれを見ている..
mode style9〜10
♪14.Ave Maria
ステージに現れたピョートルの”彼”はチャン理事と腕を組んでステージ入り口に立った..
ピョートルの”彼”は髪を撫でつけぴったりとウェーブを付け後ろにシニョンの付け毛..
ガラスのdropが幾つも付いたヘッドネックレスを後頭部から額に垂らしている..
真っ白いウェディングドレスは肩がぐっ#っと露出し腕の付け根にリボンが付いている..
長いベールの裾の左右をサンドゥとテスが持つ..
サンドゥとテスの衣装はstage1と同じだがビニールのマントは羽織っていない..
頭に水色の濃淡のあじさいで作られたFlowerCircleを乗せている..
チャン理事は黒のタキシード..襟にゴールドの刺繍が施されている..
”彼”は水色の濃淡のあじさいのブーケを持ち..
チャン理事とステージ中央で待つピョートルにゆっくりと進む..
チャン理事は”彼”と腕を組みゆっくりと進みながら少し震えていた..
”彼”もチャン理事の震えを感じ少し俯く..
理事はもう片方の手で組まれている”彼”の手を優しく握った..
チャン理事は出番前にあんどれから”彼”についての話を聞いた..
”彼”は理事がかつて深く愛した女性の娘..ユリウスだった..
チャン理事はステージ中央で組んだ腕をほどきユリウスをピョートルに託す..
ピョートルはチャン理事と目を合わせお互いに頷く..
ピョートルとユリウスは腕を組み..ステージ頂点までゆっくりと進む..
♪16.Suite de Symphonie
中央に残ったソンジュ・チャン理事・チョンウォンは2人の後ろ姿を見送る..
ソンジュはチャン理事の肩に手を伸ばしぽんぽんと軽く叩いた..
ソンジュはチャン理事の顔をちょっと覗き込んで「んふっ#」っと笑った..
ステージ頂点に来たピョートルはユリウスと向かい合いユリウスの手を取り
手の甲にkissを落とし..額ににそっとkissを落とした..
正面を向いた2人が会場に一礼をする..
観客達は2人の美しさに魅せられあちこちでため息が洩れる..
2人はまたゆっくりとステージを戻る..
中央で待つ3人は美しいカップルの2人の後に続く..
ステージ入り口で横に並び..会場にゆっくりと礼をする5人..
テスとサンドゥは舞台裏へ消え..手にバスケットを抱えて戻ってくる..
★ ending.:*・°☆
♪14.Air(Bossa Nova)(G線上のアリア)
ピョートル&ユリウスが歩き始める..
サンドゥとテスは小さなバスケットを抱え2人の後に続く..
バスケットから薔薇の花びらを左右に散らしながら歩く..
続いてシゲッキーの手を取ったソンジュ..ヨンジュンの手を取ったチョンウォン..
4人に一歩遅れてチャン理事...
パネルの左右から残りの今回のショーのモデル達が順にステージへ出てくる..
刺繍いっぱいのコートのままのチン・ヨソル...トファン・マイケル..
ジョンと腕を組んで離れないワインカラーのドレスのドン..
白のシルクジョーゼットに薄紫の木槿の花の刺繍のジンソク..
濃紺に白い水鳥の刺繍のコートのちぇみ..
皆がそれぞれステージ頂点まで進むと会場へ手を振る..
それぞれはUターンをしてステージ入り口まで戻り横に並んだ..
パネルの影から巨匠アンドレ・キム..登場..(*^_^*)
白いマオカラーの丈の短いジャケット..
ボトムは白のカーゴパンツ...もちろん裾は白のブーツにイン#
巨匠あんどれとモデル達は一緒にステージを進む..
ステージに駆け寄りお目当てのモデル達に花束を渡す観客達..
あんどれの腕も抱えきれないほどの花束でいっぱいになっていた..
巨匠とあんどれとモデル達はステージの入り口に横に並び客席に手を振った..
会場はあんどれとモデル達に拍手を送る..
割れんばかりの拍手にあんどれとモデル達は満面の笑みでパネル裏へ消える..
最後に残ったテスとサンドゥは残った薔薇の花びらを高くステージに散らした..
人気の消えたステージにランダムにスポット…そして暗転..
割れんばかり会場の拍手はまだ続いていた..
Andre Kim_exposition de mode_FIn...。.:*・°☆
あんどれしょー◇舞台裏eight.. 妄想省mayoさん
皆が舞台裏に戻ってきた..
シゲッキーとヨンジュンは大急ぎでドレスを脱いだ..
サンバの先頭に立つ彼らはサンバの衣装に着替える..
ビッカビカだ..今度は...^^;; 気合いが入っている衣装だよ..
ちぇみは重たい衣装をすぐ脱ぎにかかりstage6の上下白の衣装に着替えた..
テスが側にいて手伝う..
ちぇみはゴールドの刺繍のベルトが気に入ったらしい...じっと見てたから..
闇夜が妖怪あんどれにこしょこしょとおねだりしたのはこのベルトらしい..
っていうか...闇夜が気に入ったんでしょ..あれ..と僕は思った..よ?違う?
闇夜は笑いながら..ぅんぅん...と頷いた..
マイケル・トファンは重たい衣装のままサンバを踊る気満々#の様子..
ドンとジョンは衣装のまま例の..あれだ..
チンはstage1の白い衣装に着替えた..サンドゥがチンの重たい衣装の着替えを手伝った..
何だか..仲良くなったみたい...この2人...茶飲み友達になるんだろうな..
ヨソルはまた俯いて沈黙...そのまま重たい衣装でサンバかな..
ジンソクはstage3の濃緑のタブリエ風ジャケットに着替えた..
各人の着替えの時..僕の影に隠れていた闇夜はジンソクの時だけじぃぃ〜っと覗いていた..
ったく..僕の裸は見ないくせにっ##
袖の影にかたまったいた中からピョートルが僕らを手招きした..
僕らが側によるとユリウスが闇夜に抱きついた..女だから..いいや..
闇夜はユリウスの背中をそっと撫でた..
隣にいたチャン理事が僕らに礼を言った..
「良くわかりましたね..ありがとう..」
「いえ...仕事ですから..」
闇夜の口癖が出た...^^;;
チャン理事も闇夜を上から軽くくるんだ..ちょっとぉ〜...ま..いいや..じじぃだから..
ピョートルの顔はもぉ〜デレデレさっ#
「テソン..まよぴー..サンキュ..」
「ん..いや..」
「チャンさんがドイツ人だとは思わなかったな..koreanじゃないとは思ったけど..」
「1998年にkoreanの国籍取得してる..生まれはドイツ..」(←これはホント)
「そうか..僕のテリトリーには入ってなかった..」
「"彼"の名前を聞いたとき..僕が闇夜に言ったんだ..」
「何て..」
「東欧系..ドイツか..オーストリアか..って..それで闇夜がピンときてチャンさんを調べ始めた..」
「さすが覗きカップルだな..ぁはは..」
「いろいろ事情があって..男として育てられた..」
「ぅん..調書読んだ..」
「これからどうする..」
「ぅん..あとは親父に相談するよ..」
「ん...」
僕等は袖口の隅っこに移動した..
「ね..mayo..」
「何...」
「何でさ..こう..君はじじぃ#とか..おやじ#とかに気に入られるんだろ..」
「さぁ...色気ないからじゃない?」
「そうかなぁ...」
闇夜は僕の顔を覗き込んだ..
「テソン..」
「何..」
「サンバ..踊るの?」
「踊らないっ##...絶対..笑うだろ?」
「ぅんっ(^o^)..」
「あのさぁ..そんなことないよ#テソン#...とか言ってくんない?」
「ウソつけないもん..」
僕は闇夜の首根っこを掴んだ..
揺れる心 オリーさん
ミンは僕を許すと言ってくれた
僕のそばにずっといると言ってくれた
そばにいて何もかも見ていてくれると
血を流しても僕のそばにいてくれると…
大切な、かけがえのないミンに
そんなことまで言わせてしまった
それなのに僕は、まだ揺れている
スヒョンの瞳が、腕が、唇が、僕の頭から離れない
スヒョンへの道が僕の前に大きく広がってしまった
霧に隠れて見えなかった道が
今ははっきりと見えてしまった
その道に僕は立っている
ミンに手を握られながら、
ミンの優しい香りに包まれながら
本当に許されるのだろうか
いや、この道は歩くべきではない
この道に立つ事も許されない
見つけてはいけない道だったのに
もし僕が道を歩き出したら
ミンもついてきてくれるのだろうか
血を流しながら、声にならない悲鳴をあげながら
ミンにそんなことをさせてはいけない
させたくない
でも…
それでも歩き出してしまいそうな自分が恐ろしい
それにこの道は平坦ではない
迷いながら苦しみながらたどり着いた先には
スヒョンには別の明るい世界があって
僕は何も得ることができないだろう
それでも行くのか…
行きたいのか
ミンを犠牲にして、僕自身も壊して
不用意に誘ったことを後悔した
二人だけで会うなんて、
二人だけで話すなんて
気がついてしまった今、
何を話せばいいのだろう
それよりも、二人だけですごす事が怖い
スヒョンの空気に触れることで、
僕はどうなってしまうのだろう
ミンの手が僕の手をそっと握りしめた
僕の心の揺れがわかっている
それでも何も言わず、
ただ僕の手を握っていてくれる
いつの間に、そんなに?
いつの間に、そんなに大きくなったの
僕は眩しくて、
ミンを振り返ることさえもできない
こんな僕をミンは…
代わりに投げた視線の先にイナがいた
テジュンさんの腰のあたりに掴みかかっている
どうしてあいつはああやって、
本能のままに動けるのだろう
ある意味うらやましい…でも…
ぶぁか!!
声を出せない僕は
無意識のうちに携帯を投げつけていた…
重厚な挨拶 ぴかろん
一同に会した有名ホ○トクラブのホ○トたちのための祭が終わろうとしている
この何日間かが、何ヶ月にも感じられた
ホ○ト祭に参加して、自分を見失ったものもいれば、自分を発見したもの、取り戻したものもいる
みな感慨深げに祭りと、その準備期間を振り返っている
華やかなファッションショーが終わり、舞台にドラの音が三つ響いた
そしてティンパニーや大太鼓といった打楽器が会場内に一定のリズムを響き渡らせる
そのリズムに乗って、重厚な三人がせりあがってくる
せり…あがって…くるが時間がかかる
三人合わせると360kgはくだらないだろうから…
ようやく無事にせりがあげられた
重厚な三人は前に進み出た
右に特別あつらえの銀糸のスーツを着たスンドン会長
左にはやはり特別あつらえの金糸のチェチェン民族衣装を着たユリキム
そして真ん中には金糸、銀糸の入り混じった韓服を着たオギョモがいる
三人は繋いだ手を高くあげ、場内の拍手に答えている
「今日は楽しかったぞよ」
オギョモが意外にも親しげな口調で会場に呼びかける
「いいもの、見せてもらった。わしも大変運動した」
まだ息切れが残っているのか、ユリキムが肩で息をしながら言った
「素晴らしい才能を見せていただいた。今後ともホ○ト界の発展のために
皆さん、努力、精進を重ね、技を磨いて人々を楽しませてください」
さすがのスンドン会長は、立派な挨拶をした
オギョモが一歩前に出た
「ここで賞を発表する。呼ばれたものは前にでて、賞を受けよ」
会場はざわめいた
『なんのこと?』『聞いてないぞ』『なんの賞だよ…』
戸惑うホ○トたち
「『意表をついたで賞』MUSA、そしてヨソル
意外にも…おっと失礼…美しいステージを見せてくれたMUSAの武士達
そして十もの階段落ちを披露してくれたヨソル君にこの賞を贈ります」
場内に割れんばかりの拍手が起こり、MUSA、ヨソルが舞台にあがった
ユリキムから賞状、スンドンからトロフィー、オギョモから賞品のシャンプー・リンス・くるくるドライヤーのヘアケアセットが贈られた
以下このような賞があった…
『カラーを変えま賞』ミニョン
賞品…皮手袋、黒いシャツ、スリムパンツ
「せっかくの肉体改造、無駄にせんよう、ハードボイルド系に挑戦してください」
『歌唱賞』サンヒョク
賞品…のど飴一年分、加湿器三台
「どんどん歌を歌ってください。先輩だからといって、音程の狂った人とつるまないように」
『努力賞』ドンゴン&ジョン
賞品…リップクリーム、ダブルの寝具一組
「かなりの努力を認めますがいかんせん、色気が今ひとつ足りぬ。今後の努力を期待します」
『素晴らしい人格で賞』ガンホの兄貴
賞品…チョコパイ一年分、ジッポのライター
「命がけで一人の青年を助け、また、大食い大会では盛り上げ役に徹し、脇役ではあったが大変輝いておられた。今後のご活躍を祈ります」
『腹が王で賞』ジンソク
賞品…腹筋マット、腹巻、プロテイン
「贅肉がなくて羨ましい…今後も体型維持に努めてください」
『人に救いを与えるで賞』キム次長
賞品…タロットカード、水晶玉、人相・手相学の本
「地味ではあるが、ブースでの活躍、拝聴しております。今後も人々に光と希望ある言葉を投げかけ、人々を幸せにしてあげてください」
『ショー・ビズの神様で賞』ヤン・ミミ、デラルス・クァルテット(クワトロだっけ(^^;;))
賞品…アンドレ・キムデザインのステージ衣装お仕立て券
「素晴らしいステージでした。今後のご活躍、期待しております」
『楽しかったで賞』『オールイン』
賞品…りんご一年分、お茶一年分、メイク用品各種
「美しくも楽しいステージをありがとう。今後も精進されますように。特に小白雪姫はもっとお肌のお手入れを…」
『期待してるで賞』テス
賞品…ストレッチマシーン、水着、パン焼き器
「体が柔らかくなったと聞きました。水泳も得意だとか…またクリームパンは天下一品とも…全てに期待を込めております。がんばってください」
『ワーストホ○トクラブ』ポラリス
賞品…タートルセーター
「舞台袖で固まっていたおじさんたちは、何も働いてなかったような気がします。もっと頑張ってください」
『ワーストホ○ト』ミニョン
賞品…学生服
「…グッズばかりに頼らないで、演技力を身につけましょう」
『最優秀ホ○トクラブ』BHC
賞品…ビデオプロジェクター、映写機、スゥイートルーム宿泊券10枚
「いや…何も言いますまい…。このまま、突き進んでくだされ…」
そして最後に、審査員たちから最も得票数の多かったホ○トが発表された
「『最優秀ホ○ト』…BHCのチェ・スヒョン君」
ホールの片隅で俯いていたスヒョンにスポットライトがあたる
戸惑うスヒョンをオ支配人が笑顔で誘導する
最前列でなにやら妖しい動きをしていたイナとテジュンの前を、照れくさそうに歩くスヒョンと、テジュンに怖ろしい視線を投げかけるオ支配人
スヒョンはミンチョルたちの前で方向を変え、舞台に向かう
その背中を見つめる六つの目
ミンチョルの目、ギョンビンの目、そしてドンジュンの目
スヒョンは満場の拍手で舞台中央に迎えられる
「審査員の方々が、貴方を最高のホ○トと認めました。今後とも人々に愛を与える素晴らしいホ○トとして頑張ってください」
賞状とトロフィー、そして賞品が贈られた
賞品はロイヤルスゥイート宿泊券10泊分
「どなたとお泊りになりますかな?フッフッフッ」
スンドン会長が腹をゆすって意味ありげに笑うと、つられてユリキム、オ・ギョモも腹をゆすって笑う
舞台が揺れる
スヒョンは口元に笑みを浮かべて賞品を受け取る
その瞳は戸惑っていた
会場にいる全ての人々がスタンディングオベーションでスヒョンの受賞を祝う
客席に笑顔を向けながら、スヒョンは自分がこれからどうすればいいのかを必死で探っていた
「これにて、ホ○ト祭の終了を宣言いたす!」
重厚な三人が手を繋ぎ、その手を上げてまたせりで下に下がっていく
最初と違って数秒しか時間がかからなかったのは言うまでもない…
鏡 ぴかろん
スヒョンの名前が呼ばれた
スヒョンが俺たちの前を照れくさそうに通っていく
ちらっと俺たちを見て一瞬目を見張った
らって俺の体勢がヤバかったから…
俺はさっきてじゅのベルトを外そうとして、ジュンホの空のペットボトルと、狐の携帯電話の攻撃を受けた
ジュンホの攻撃はそれほど痛くなかったが、狐の攻撃はかなり痛かった
目から火花が散って、俺はテジュンの胸に突っ伏した
テジュンはそんな俺をぐいっと押し戻し
「ここがどこだかわかってんの?!」
と叱った
そんな…さっきお前俺に何しようとしてたんだよ、こんなとこで!
って言いたかったけど、後頭部に当たった狐電話のせいでちょっとクラクラしてて言えなかった
「離せよ、手!」
てじゅが冷たく言った
でも俺、動けなかった
「ったく自分勝手なんだから!」
てじゅが俺を非難する
「きっ…」
「なに?!」
「っちゅねのけいたい…」
「は?!」
俺は携帯のブチあたった後頭部のてっぺんをさぐってみた
腫れてる…いてぇ…
ぐしゅっ…
「…いな?」
「おちゅむいたい…」
「はぁ?」
「きちゅねがでんわなげた、あたった、おちゅむいたい…」
「…」
テジュンはじいっと俺の目を覗き込んでから俺の後頭部を見た
「てっ!しゃわんなっ!」
「あー…腫れてる…」
「きちゅね、ひどい…」
「お前が変なことするからだ!」
「おれがわりゅいの?!」
「そうだっ!お前が全部悪い!」
「ひどいっ!」
「そろそろベルトから手を離せ」
「えっえっいたいよぉ…」
「何言ってる!ケンカ三昧してたお前がこれくらいのコブで泣くな!」
「えっえっええっちゅめたいっ…ふいいいん」
俺は本当に…本当にちょっと悲しくなっててじゅに突っ伏した
膝あたりに狙いを定めたつもりだったのに、てじゅがちょっと体勢を変えたので
…俺は…てじゅの●▽◆に突っ伏した形になった…
まじゅい…
目の前にファスナーがあった
いやらっ!じぇったいいやらっ!やっぱれきないっ!
俺は慌てて顔を上げた
その時スヒョンが俺達の前を通っていったのだった…
絶対誤解してる…
俺は涙目でスヒョンを見つめた
スヒョンは戸惑った目をして俺から目を逸らし、その向こうの座席からも目を逸らした
オ支配人が怖い顔でテジュンを睨んでいた
「あっ!この役僕がやるんだっ…た。ああ…しまった…
…まったく!お前が変なことするから僕は仕事を忘れてしまったじゃないかっ!
こうなったら後から今の続きをやって貰うからなっ!」
「いやらっ!」
「…」
「れったいれきないっ!」
「…お前…さっきやる気になってたじゃないか!なんて奴…」
「なんて奴はお前のほうら!いぢわるっ!」
「しずかにしてください!」
またジュンホに怒られた
「ごめん…」
俺は前を向いてテジュンのベルトから手を離した
そして狐の携帯電話を拾って狐の方に投げ返した
狐は舞台のスヒョンを見つめていて俺が携帯電話を投げた事に気づかない
狐の携帯は狐を通り越してギョンビンの膝元に落ちた
壊れたかな…
ギョンビンも舞台のスヒョンを見ていたけれど、さすがは猟犬だ
携帯電話を拾って俺の方を見て…いや…ぎろりと睨んで…それから狐の顔を見た
怖い顔をしていた
不安と戦いながら狐を守っている
狐の後をどこまでも追っていこうとしている…
ギョンビンの顔にはそんな決意が表れているような気がした
俺は正面を向いてスヒョンの顔を見た
口元に笑みをたたえてはいるけど、いつもの慈愛に満ちた瞳じゃない
もう一度狐を見た
親友の瞳は底なし沼みたいに深くて暗い色に見えた
穏やかじゃないな…
俺はなんだかゾクッとして、また不安になった
テジュンの瞳はどうだろう…
いつもと同じだろうか…
テジュンの方を振り返りたかった
けどできなかった…
今、テジュンの瞳を見ちゃいけないような気がした
「どうしたんだよ、変なことしたと思ったら黙り込むし…」
見ちゃいけないテジュンの瞳が俺の瞳を覗き込んだ
「どおしたのさ…お前、ちょっと変だぞ?」
いつもの顔で俺の事を心配するテジュン
いつもの瞳に見えるのにいつもと違うと感じるのは何故だろう
テジュンの瞳が、なんだか不安そうに見えるんだ
「何か隠してるの?お前…。僕に何か隠してない?」
何でそんなこと言い出すんだろう…
テジュンから目を逸らして思った
…鏡なんだ…俺とテジュンは…
お互いの姿をお互いに映して見てるんだ…
『隠してる』のはテジュン
『不安』なのは俺
気づいた瞬間に涙が溢れた…
あの人この人の呟き れいんさん
兄さん、あれほど言ったのに、ダンスの時にタキシード着たんだね
僕は兄さんにタキシード着てもらいたくなかったのに
あのBHCのスヒョンって人と二人で優雅にワルツやタンゴを踊っていたけど
兄さんがあんなに軽やかに踊れるなんて思いもしなかったよ
いつの間にあんなステップ覚えたのさ
アメリカ留学の事をまた僕に自慢したいの?
客席の女性達の溜息としばしの余韻の後の割れるような拍手…
髪もオールバックにしちゃってさ
僕がオールバック似合わないの知っててやったんだろ
わかってるんだよ、兄さんの考えてる事くらい
こうなったら僕は祭の後の打ち上げの時もここに居るよ
兄さんには話しておきたい事がたくさんあるんだ
覚悟しててよ兄さん
あのフラダンスのアジュンマ方はどうして僕に握手やサインを求めて来ないんだろう
僕はマダムの扱いにはちょっとした自信があるんだけど
僕がいる事に気づいていないのかな
ちょっと近づいて咳払いでもしてみよう
そして誰かが振り返ったところで貴公子の微笑み…
僕だとすぐにわかる様にトレードマークのメガネとマフラーはしておこう
さあ、僕を見て!
あなた方も僕の家族の会に今すぐにでも入会して下さい!
会長とマイキーったら近頃私によそよそしいわ
やっぱり、あのイリュージョンでのスタンドプレイを根に持ってるのかしら
でもあれは仕方がなかったのよ
私だって体を張って頑張ったわ
トリオ・ザ・デラルスは解散なんかしないわよね
あのファッションショーでの輝くばかりの二人…
悔しいけど素敵だわ
私もあのファッションショーに出たかったのにアンドレ先生が
「こにょショーは男ちかダメにゃのよっ!あーたの出る幕じゃにゃいわっ!」
って、あの顔で凄んで言うんですもの
さすがの私も迫力負けよ
ああ!会長、マイキー…祭の後はまた3人で語り明かしましょう
デラルスは永遠よ!
素敵なショーだわ
若い男がよりどりみどり
顔は基本的に同じだけど、皆それぞれに個性があって…私好みの男ばかり…
ジュンホのボクシングも久しぶりに堪能できたわ
懐かしいわ…またナデナデしたい…
シャドーボクシングやってた人も気難しそうだけど落とし甲斐ありそうね
テコンドーの子も母性本能くすぐられるわ
あのボタンはずしショーの子達もいいわ
セクシーで、でもまだ未完成な感じがして…そそるわ
あら、ナイフ投げの子…どこかで触った事…いえ、見た事あるわ
あんな若い子と一度でもヤレたら思い残す事はないわ…ってどこかで聞いたセリフだわ
まあ!あの大人の色香漂うタキシードの二人…す・て・き
でも男同士なんてもったいないわ
祭が終わった後がチャンスね
4人姉妹の代表として期待を背負って来てるんですもの
誰か一人くらいお持ち帰りしなくちゃね
室長、いったいどうしてしまったの
殿方と観客の前でダンスを踊るなんて…室長らしくもないわ
オールバックにタキシード…
私達の結婚式を思い出すわね
でも、そんなに安心しきった微笑みをその人に向けないで
チークダンスは私と踊るはずでしょ
肩にもたれたりして…少しやりすぎよ
相手はあの若造じゃないのね
あの人…確か以前目隠しドライブに連れて行ってくれた人…
スマートで素敵だったわ…
いえ、そんな事より室長よ
どういうつもりなのかしら
いえ…きっとそれもお仕事なのね
仕事熱心なあの人が、また完璧な美を追求しているだけなのよ
ヨンス、いつものあなたらしくないわ
室長の事だけを思い続けひたすら信じて待つ…
その健気さがヨンス…あなたなのよ
約束 足バンさん
気を取り直してタイを付けたが
僕はそのまま会場の隅の薄暗がりに佇んでいた
もう1度恋をしよう…
ドンジュンの言葉が胸に広がって
いとおしさに身体中が熱くなった
そしてその熱い感情のひだの中にミンチョルの潤んだ瞳が見え隠れする
左向こうのドアが開きミンチョルがギョンビンと共に
戻ってきたときは正直言ってほっとした
また何か起きたのではと心配だったから
僕には気づかずに前方の席につく
勘のいいギョンビンはきっとミンチョルの気持ちを察しているだろう
ミンチョルを守るように寄り添っている彼
ドンジュンに目を向けると
ファッションショーの素晴らしさにしきりに感心している
隣のテプンたちともなにやら笑い合ったりして
こちらを向きはにかんだような笑顔で手を振る
無理している顔じゃなかった
僕の選択の全てを本当に受け入れる覚悟なの?
ギョンビンとドンジュン…
いつの間にか彼らは大きくなっている
中庭で、遠くにいるふたりを見ながらミンチョルと笑っていた日を思い出す
ミンチョルはギョンビンを、僕はドンジュンを
明るい初夏の陽射しのような気持ちで見ていたんだ
ファッションショーの素晴らしいフィナーレを見ながら
僕はミンチョルとの約束をどうしたものかと考えた
先程までそれは楽しみでもあった
いや、変な意味じゃなくて…
僕は僕の気持ちを隠さず伝えるつもりだった
ミンチョルおまえをずっと好きだったということ
ずっと大切に考えてきたこと
嫉妬とはゆっくり折り合いをつけてきたこと
それはきっとこれからも変わらないということ
ギョンビンとの幸せを願っているということ
そして僕も…幸せの種を見つけたということ
でもそれはすべて…
僕の一方的な愛情を断ち整理するための手段だった
それで自分の気持ちにケリをつけ終わるはずだった
ついさっきまでは
ファッションショーが終わり会場は割れるような拍手につつまれた
ドンジュンが大喜びで手を叩いている
なぜかイナに何かを投げつけていたりしたミンチョルも
ギョンビンとともに拍手している
大御所3人の閉会の挨拶
僕はつい大きなため息をつき最後の進行を見守っていた
賞が贈られている
やっと終る…
長かった…
ぼんやりと俯いているといきなり自分の名が耳に飛び込み
急に向けられたスポットに目が眩む
一斉に会場の視線にさらされて驚いた
オ支配人に促されて事情がのみ込めるまで時間がかかった
なぜ僕なのだかよくわからなかったが
ここで渋るわけにもいかず舞台へと向かった
ちらりとドンジュンを見るとなぜか恥ずかしそうに笑っている
イナの横を通る時”その状況”にぎょっとしたが
そこでどうこう言っている暇はなかった
その向こうのミンチョルからはわざと視線をはずしたような気がする
賞品の宿泊券には
どなたとお泊まりになりますかな?
という今の僕には少々痛い言葉が添えられた
心に反比例するようなまばゆいひかりにつつまれている自分
微笑めば微笑むほど胸が重くなった
下がる時は舞台袖の方に誘導された
サンバの準備に回っていたテソン達に祝いの言葉をかけられた
マジ先生やテッヒョン達も派手な衣装で拍手をくれる
人々の間をくぐり抜けて一番奥の簡易椅子に腰掛け
僕は手元のブロンズ色のトロフィーをぼんやり眺めた
小さなため息は舞台裏の喧噪にかき消された
視界に黒いスラックスがうつり顔を上げると
ミンチョルが立っていた
居心地悪そうに僕を見る視線は定まらなかった
「スヒョン…その…」
「わかってるよ。約束のキャンセルだろう?」
お気に入りは… ぴかろん
んがっ…はっ
いけねぇっ寝ちまった…
うくっよっよだれ垂れちった…
コシコシ
「うきゃあっ!僕のお気に入りのベストでよだれ拭くなあああっ!」
あん?
「お前…誰?」
「きいっ!ベストから手をはなせっきいっ!」
「あん?…ああ…お前…ドンヒとかって奴だ…」
そのドンヒとかって奴は、きいきい言いながらベストをひったくり
…すっげぇ派手な柄だぜ…洗面所の水をジャージャー流して洗濯しだした
変な野郎だ…俺様の『甘い雫』をちょっと拭いただけなのによっ!けっ!
俺はガムを食ってまたテレビを見た
同じ顔した三体の暑苦しそうな着ぐるみが手を上げてなんかやってる
ん?
人間か?
重そうな人間だ…
それも三人も…ひえええ…
まさかあの三体もホ○トなのか?!
「きいっきいっ!人の服で汚いよだれを拭くなんて!全く君って人は!」
「『君』は辞めろよ…むず痒くなるぜ…」
「ああ…ああああ…」
「あんだよ」
「君みたいな人とあさってまで一緒にいるなんて!耐えられない!きいっ」
「きーきーうるせぇなぁ、サルかてめえは」
「なにっ!」
「おっ…タバコだ…おめぇのか?」
「…」
「一本ちょーだい」
「…」
コイツ、睨んでやがる
俺も負けずに睨み返した
それからニコッと笑ってタバコの方に手を伸ばした
タバコに手が届いた瞬間、ヤツの平手が俺の手の甲をパチンと打った
「ってっ!」
「誰がやるって言った」
「ケチ…一本ぐらいいいじゃねぇか」
「君の一本は一箱と同義語だろう!」
「どーぎご?何それ」
言いながら抑えられているのと反対の手でタバコを一本くすねた
「あっ!」
「へへん、隙あり」
「くぅっ…」
「火」
「フンっ」
ヤツはプイっと横を向き、自分も一本とりだしてからタバコを胸ポケットに仕舞いこみ
ズボンのポケットからライターを出して『自分の分だけ』火をつけた
俺はタバコを咥えてヤツの火の近くまで顔を寄せた
「なんだっ!火はつけてやんないからな!」
「…ケツの穴のちぃせぇ男だぜ…」
「む」
「ンなことでここのホ○トやっていけるのかぁ?ココは…アレだぞぉ」
俺はテレビ画面を指さした
ヤツは視線を画面に向けた
そして固まった
隙あり!
俺はヤツが咥えている火のついたタバコの先に俺のタバコの先をくっつけて吸い込んだ
チラッとヤツの顔を見た
なんだよ…画面に面白いもんでも映ったか?
…俺よりも顔は細いな…
俺より…キレイな顔立ちかな…
俺はよく『かわいい』って言われたけど
こいつは『かわいくない』
でも『かっくいー』タイプかな…
髭もきれいに剃ってやがる…けっ
おーおーすっげぇネクタイだ
だっせぇ…
ワカモノは俺みたく小汚ねぇ方がいいんだ!
若々しさが出てるだろ
こいつは中身、ジジイだな…ふん
俺はヤツの顔めがけてふぅーっと煙を吐いてやった
けどヤツは動かねぇ…文句もいわねぇ
なんだよ…
俺はテレビの方に振り返った
画面には、さっきからちゅうちゅうやってた垂れ目優男と馬鹿っぽい『俺達そっくり』の男が怪しい動きをしている
馬鹿っぽい男が優男の下半身に顔を…顔を…
「げーっ!」ぺっ!
俺は思わず噛んでいたガムを床に吐き捨てた
「…」
「おいおいおい…男同士で…しかも公共の電波に乗ってるっつーのに…えっらく節操のねぇヤツだな…。あれ誰だよ」
「…ヤられてる人は知らないけど…ヤってる人は…キム・イナって人だ…」
「えっ?刑務所仲間の?あの『天才ギャンブラー』の?!俺と気が合いそうな?!…『兄貴』って呼びたかったのに…」
「…僕…こんな事しなきゃいけないのかな…」
「…あれじゃ『姉貴』って呼ばなきゃなんねぇ…」
ちゃんと映ってねぇけど、絶対あれはアレだ!アレをしてるんだ!俺もよくスヒョンにしてもらった…へへっ…へへへっ…
でも…男同士…げえええっ!
俺は吸っていたタバコをペッと床に吐き出した
「君!タバコは灰皿に捨てろよ!」
「それどころじゃねぇだろ?おめぇ…アレだぞ!あんな事やれって言われたらどーするよ!」
「…拾えよタバコ」
「…小うるせぇジジイだな…ホイ…拾ったよ」
「…あんな事…できない…」
「だよな…。どーするよ…辞めるなら今のうちだぞ…」
「…でも…ここは普通のホ○トクラブだぞ…。女性客が来るんだ…。僕達は『普通の事しかできません』って頑張るしかないだろ?」
「…おお…」
「それに…キム・イナって人に近づかなきゃいいんだし…」
「…おお…」
「君、さっき吐いたガムもちゃんと拾って!」
「…」
「僕らが働く店だぞ!きれいにしとかなきゃ!」
「…」
小うるせぇジジイ…
仕方ないからタバコの軸でガムを拾って灰皿に捨てた
「これでいいか?」
「よし!ご褒美にもう一本タバコをやるよ」
「…」
ヤツを睨みつけながら俺はタバコを受け取った
ヤツはにっこり笑って今度は火をつけてくれた
そして俺の肩をテーブルごしに掴み、顔を寄せてきた
「やっ辞めろよ!今お前そーゆーことはできねぇって言ったばっかじゃねぇか!」
「馬鹿だな、君なんかに迫るわけないだろ!そうじゃなくて、僕達奇しくも同じ時期にここのホ○トになるわけだ」
「おお」
「だから…助け合っていこうな」
「…」
「君が危ない時は僕が君を…僕が危ない時は君が僕を助ける…特にあのキム・イナって人には注意して…
『男同士のカンケイ』を強要された時には助け合おう!」
「…わーった…」
「よし」
「そんかわり」
「何?」
「タバコくれよな、火もつけてくれよな」
「…自分で買えよ!」
相談がまとまった時にテレビからひときわ大きな拍手が聞こえてきた
『最優秀ホ○ト賞、チェ・スヒョン君…』
俺達は同時にテレビの画面を見た
おお…この人が『スヒョン』…
さっきの馬鹿っぽい『キム・イナ』と違ってカシコそうでかっこよくて…どこかさびしそうじゃねぇか…
「理知的でクールなくせに優しさと男の哀愁を漂わせてる…うーむ…何故彼がナンバーワンじゃないんだろう…うーむ…」
ヤツもスヒョンには興味を持ってるみたいだな…
「手ぇだすなよ、コイツは俺のモンだ」
「は?」
「俺はこの人に教えてもらうんだ!」
「ぼ、僕だってこの方に!」
「スヒョンは俺のモンなんだ!そう決まってるんだ!」
「君…それじゃ『男同士のカンケイ』に走ろうと思ってるの?!」
「ちっ違う!ホ○トの事をこの人に色々教えて貰いたいだけだっ」
気持ち悪い事言うなばか!
「そう言う時は『僕はこの方に指導を受けたいと思っているんだ』ってキッチリ言えよ、誤解されるぞ」
「…ごかい?」
「ああ、この『スヒョンさん』に恋してるみたいな言い方だったぞ」
「スヒョンは好きだったぞ…いや、今でも…」
「…」
俺達は画面に映るスヒョンさんの憂いを帯びた笑顔を食い入るように見つめた
寂しいのか?
天使なのに?
天使だから寂しいのか?
「…早く帰ってこねぇかな…」
「…うん…」
「「お前と二人っきりには耐えられないよ…」」
俺達は顔を見合わせて吹き出した
俺達二人とも『スヒョンさん』が気になって…そんでもって『気に入った』みたいだ…
約束 2 足バンさん
舞台裏の声と物音が飛び交うざわついた環境で
僕とミンチョルのまわりの空気だけがしんと静まり返っていた
「悪い…勝手言って…」
「…」
「ドンジュンに謝っておいてくれ」
ミンチョルは額に手を当てて
僕の手の中のブロンズ色のトロフィーに視線を落としている
決して僕を見ようとしない
僕はその僕を見ないミンチョルの姿で心を決めた
「だめだ」
「…え?」
僕の決然としたひとことがあまりに意外だったのか
ミンチョルは呆気にとられた顔で僕を見つめた
実際は僕もひどく迷っていた
しかし目をそらすミンチョルの
瞳にガラスもはめられずにいるその状態を放っておくことはできないと思った
ここで手放したらまたミンチョルは深い森に沈んでしまう
一度沈んでしまった彼を引っ張り上げるのは何十倍もの時間がかかる
「だめだ。僕は話がある」
「スヒョン…」
「このままこのホテルをあとにして、その先になにがある?」
「…」
「僕から目をそらしてギョンビンを抱けるのか?」
「ス…」
「半端なままじゃ、また同じことの繰り返しだ」
「スヒョン…」
「これまでは僕ひとりの話だったけれど…」
ミンチョル、おまえまであんな苦しい思いをすることないだろう?
その言葉はさすがにのみ込んだ
ミンチョルは今度は僕から視線をはずすことができず
なにか言いたそうな唇がわずかに動いている
僕は座ったまま真っすぐに彼の目を見つづけた
「僕が…怖いの?」
「え?…」
「怖い?」
「いや…僕は…」
俯いたまま心細そうに上目遣いで僕を見る
まったく無防備なミンチョル…
そんなおまえを放っておいたら僕は気持ちを整理するどころか
またおせっかいな心配で疲れ果てちゃうだろう?
僕は持っていたものを片方の手に持ち替え
そして右手を真っすぐミンチョルに差し出した
ミンチョルは一瞬ぎょっとした
目は僕の手と僕の顔の間を漂い、のど仏が幾度も上下している
尚もそのままでいると
ミンチョルがわずかに後方を気にしたように見えた
「ギョンビンを気にしてるの?」
「…」
「ギョンビンとドンジュンが今何を望んでいるかわかる?」
「…ああ…」
「僕は彼らの血を吐くような気持ちを無駄にしたくない」
ミンチョルはしばらく目を閉じていた
ミンチョルの指がぴくりと動き、僕の方に一歩近づく
そして目を開くと
差し出していた僕の手にゆっくりと左手を重ねた
僕は指先を滑らせてその手を強く握る
「だから僕はちゃんと話がしたい」
「…」
「店に戻り日常に戻って尚こんな気持ちを引きずりたくない」
「スヒョン…」
「いいね?」
「ああ」
「帰さないなんてもう言わないから」
「…」
「言ってほしい?」
「ばか言うな」
ミンチョルがおかしそうに微笑んだのを見て少し安心した
舞台の準備でスタッフが近づく騒々しい音を耳にして
僕たちは手を離した
このひととき れいんさん
僕とスハは過ぎた時間を取り戻す様に、唇を重ね合い抱きしめ合っていた
唇は微かに触れたまま僕は言った
「そろそろフィナーレ始まるな…戻らないと…」
「ん…はい…」
スハは唇をゆっくりと離し、少し恥ずかしそうに目を伏せた
僕はスハの肩をふわりと抱きエレベーターを後にした
僕の心の中はスハを取り戻した安堵感と、本心を吐露してしまった後悔とが交錯していた
会場までの細い廊下を僕らはゆっくりと歩いた
会場に戻るとファッションショーが始まっていた
僕とスハは後の方の席に並んで腰掛けた
ショーの音楽にかき消されそうになりながら、スハが僕の耳元で言った
「テジンさん、さっきの僕…嫌いになったでしょう?」
「嫌いになんてならないよ。…でも、ちょっと驚いた」
「ほんとに?」
「うん。スハがあんなに感情的に怒りをぶつけるのを見たのは初めてだったから」
「自分でもびっくりしています。あんなに取り乱したりして…恥ずかしいな」
「ふふ…あんなに怖いんだったら怒らせないようにしないとな」
「ひどいな、テジンさん」
スハは悪戯っぽく僕を睨んで、そして優しく微笑んだ
こいつのこの笑顔を曇らせたくない
僕は正直あの時ああ言ったのが正しかったのか、今でもわからない
もちろん、僕は、今この瞬間、満ち足りている
スハもきっとそうだろう
だが、夢はいつまでも続かない
夜空に上がる花火の様に
そのひとときだけ夜空を彩り、見るものの心を躍らせる
そしてそれが終わってしまえば、また静寂と闇に包まれる
人々が集っていたその場から人影は消え虚しさだけが残る
僕はスハを傷つけたくないと言いながら、僕が傷つくのを怖れていた
それ以上踏み込むのが怖かった
あいつが夢から覚める時…その日が来るのを怖れていた
切り捨てる事ができないと目の前の現実にあいつが気づいた時…
僕は静かにあいつを見送るしかないのだろう
岬に立つ灯台のように
あいつが迷子にならないように
あいつの行く先を照らしてあげよう
それがたとえ僕が立ち入る事を許されない、別の場所だとしても
ステージを見つめているスハの瞳はキラキラと輝いていた
時々僕の方に顔を向け子供の様にはしゃいでいる
あれ見てください、テジンさん
素敵な衣装ですね、テジンさん
これ僕の好きな曲なんです、テジンさん
スハ。おまえの笑顔を覚えておくよ
スハ。おまえのその声を忘れないよ
スハ。おまえの全てを感じておくよ
僕はすっと手を伸ばし、スハの手を握り締めた
スハは少しはにかんで、僕の指の間に自分の指を滑り込ませた
残り少ないかもしれない僕達二人の時間…
それを名残惜しむように僕はその手を離さなかった
★samba#samba☆舞台裏... 妄想省家政婦mayoさん
あんどれしょーのモデル達がそれぞれ着替え終わった頃..
舞台で大御所3人の挨拶が始まった
各賞の発表が始まると袖もざわざわしはじめた
最初にMUSAが呼ばれた
腰に手を当て俯いていたヨソルがクッ#っと上を向いた..
チンがヨソルの側へ行き..2人で舞台へ向かって賞を受けに行く..
戻ったヨソルは皆に拍手で迎えられちょっと恥ずかしそうに照れていた..
賞品のドライヤーを不思議そうに見ている
のろのろと僕らに近づいたヨソルは闇夜の前に「..???@@」っとドライヤーを差し出した..
にっ#っと笑った闇夜はドライヤーを持ちくるくるカールをする仕草をして見せた..
ぅんぅんと頷いたヨソルは満足そうにまたドライヤーを手にした..
デラルスで賞を受けたトファン&マイキーたちも袖に戻り
「ふぉふぉふぉ!もっともっと精進せねば.」
「.新しいイリュージョンも必要じゃな...」
と2人で体を揺らしている
オールインが呼ばれた..
舞台でチョンウォンが賞を受けている..サンドゥも隣でメイク用品一式を受けていた..
袖に戻ったサンドゥは
「闇夜さんよぉ...基礎化粧品がないよな..」
「ぷっ...そうですね....親分もフカヒレ..せっせと食べて下さい..」
「おっ?」
「フカヒレはコラーゲンありますから..お肌つるつるなります」
「ぉぉ..そうか...そうか..」
ちぇみテスとチンがサンドゥの側でぷぷぷと笑っているとテスが呼ばれた..
「えっ?僕?..」
ちぇみに背中を押されテスがトットコ..舞台へ賞を受けに行った..
戻ったテスをちぇみが腕を広げて待っていた..
ちぇみの懐に飛び込むテス...髪をくちゃくちゃにするちぇみ..
テスはちぇみの懐からするりと抜けると今度は闇夜に抱きついた
ちぇみのあんぐり@o@//「またかよ..」
僕は苦笑した..
「よかったよかった^o^」
「mayoッシのおかげだよぉ〜」
「そんなことないよ#がんばったもんね」
「ぅん##....ね、みんなで使おうね..ストレッチマシン」
「ぷっ...そうだね」
「ん〜まず必要な人はぁ…」
テスと闇夜は僕を見た..
僕?僕もストレッチするの??
「ぷっはっは..テソン..頑張れ...ぐはは..」
隣でちぇみは高笑いをし..僕の肩を叩いた
テスが俺の懐に戻ってきた..
俺はまたテスをぎゅぅぅ〜と抱いて..
またくんくんとラベンダーの香りを吸い込んだ.
MVPをもらったスヒョンが袖に戻ってきた..
僕達やちぇみテス..チンやサンドゥ達が次々と肩を叩いたり拍手で迎えた..
袖の人混みをかき分けていくスヒョンの表情を闇夜も僕も見逃さなかった..
隣にいた闇夜は僕を突っつき..頭でスヒョンの歩く先を指す..
こういう時の有無を言わせぬ闇夜は..怖い..ひぃぃ〜(>_<)
僕らは何も言わずにそぉ〜っとスヒョンの後を追い
スヒョンが座った後ろの幕の影に隠れた..
足音が近づいた..僕が首をかしげると..闇夜は僕の手のひらに指で「M」と書いた..
声を出さずに笑った僕を見て闇夜は眉を上げ笑った..チーフの足音はわかるらしい..
闇夜は幕にぴったりと顔をくっつけ..透けて見える2人の姿を確認している..
凄い覗き根性である..^^;; 右に出るの者は..いない
2人に会話が終わると..闇夜と僕は袖の皆の集まっている方へ戻った..
反省… ぴかろん
「また泣く…どうしたんだよ…」
テジュンが涙を拭ってくれた
優しい手
でも心が痛い
なにをかくしてるの?
おれになにをかくしてるの、てじゅん…
俺は不安が消えない
明日の夜、お前と一緒に帰るって解ってるのに
それが本当なのか心配になる
「なぁイナ…どうしてそんなにフラフラしてるのさ」
「ふっ…ふらふらしてにゃいもん…」
「…泣いたりはしゃいだりサービスしようとしたり…」
「…」
「…そんなに僕が信じられないの?」
どきん
どきん
しんじられない…?
しんじてるよ…
しんじてるのに
おまえがよそうもつかないようなことするから…
らぶとなにしたの?
ほんとうにはなししただけなの?
どうしてうわきしたいなんていいだしたの?
なんでつめたくするの?
聞きたい事は山ほどある
けど…全てはぐらかされそうな気がする
「しんじてるよ…でも…こわい」
「…何が?」
「てじゅがどっかいってしまいそうでこわい」
「…」
テジュンが俺を睨む
「どっか行ってほしいのか?」
俺は首を横に振る
「…そのせりふ、そっくりそのままお前に返してやる」
「え?」
「いいか、僕はいつも…いつもいつも…お前がどっかに行ってしまうんじゃないのかって不安でたまらなかったんだ」
「…」
「僕を捨ててソクのところへ行くんじゃないかとか、ギョンジン君を受け入れちゃったらどうしようとか…
ずっとそんな事を思ってた」
「…ごめ…」
「でもな、お前はいつも僕のところに戻ってくる…そうだろ?僕は苦しかった
悔しくて悲しくて苦しくて、何度もお前と別れようと思った。
でもお前は僕のところに戻ってきた。だから…これからも僕はお前を信じてる
誰を気に入ろうと、誰とキスしようと…絶対僕のところに戻ってくるって…。だからお前も僕を信じてよ」
「…うわきしない?」
「…それは…わかんないな…へへ」
「しょんなのっ!」
「だってお前も浮気のキスぐらいするじゃないか!僕だってしたっていいだろ?!」
「らめらっらめらぁぁらめらあああんあああんあんぐっ」
テジュンは俺の口をまた、てのひらで塞いだ
らから…唇でふしゃいでほしいのに…けち…ぐしゅぐしゅ…
ちょっと目線を後ろにずらすと、ジュンホがペットボトルを構えて睨んでた
きっとうるさくしたからペットボトルを俺の口に突っ込むつもりだったんだな…
みんなして酷い…
ジュンホは呟いた
「てぃーぴーおーというものをべんきょうしてほしいものです
さっきのこういは『けいはんざいほういはん・わいせつこうい』にあたるとおもうしな…。まったく…」
しょれはごかいなのら…
突っ伏した場所がたまたま●▽◆だっただけなのであって…まぁその前は焦ってベルトに手をかけたけど
…実際にはその…俺には無理なことだって解ったし…
「泣き止んだ?もう泣かない?」
「…」
「泣いてもいいけど泣き喚くんじゃないよ」
「…ふ…」
テジュンは口から手を離してくれた
それからそっと涙を拭い、優しく微笑んだ
「信じてくれる?」
「…うん…」
たとえ浮気しても俺のとこに帰ってくるってことを…
そんな事を信じればいいの?
釈然としないまま、俺はテジュンに返事をした…
テジュンは…
「うわき」で済ませられる男なんだろうか…
「ほんき」になったら…
その時は俺…
どうしたらいいんだろう…
俯いた俺の唇にテジュンの柔らかい唇が触れる
「こんな事ばかりしてるとまた怒られちゃうよ…んむむ」
満ち足りていた心に、針の先ほどの穴が開いて、そこから僅かずつ空気が漏れている…
温かいくちづけが、漏れ出す空気の分を補ってくれているのに…
漏れ出している空気の方が、はるかに少ないというのに…
俺は俺の心がぺしゃんこになることを怖れている
お前は俺を信じてくれてるんでしょ?
どうして信じられるの?
俺はお前を…信じたいけど…
どうしてこんなに苦しいの?
何がどう変わったの?
どこがどういけなかったの?
…ああ…おれがぜんぶわるいんだ…
おれがぜんぶ…いけないんだ…
しあわせが目の前にあるってのに…
積み重ねてきた俺の罪状が、束になって落っこちてきて
しあわせの前に壁を築く…
俺はテジュンから唇を離し自分で涙を拭った
「もう…テジュン以外…見ない…」
「…」
テジュンは諦めたような笑顔を俺に向けた
★samba#samba#samba# 妄想省mayoさん
〜La etapa pasada(The last stage)〜
♪14.Sambahia - Brazil
ホール全体に陽気なsambaのリズムが流れ始めた…
シゲッキーの雄叫びが響く…
「ヨロブ〜ン!!(みなさ〜ん) last stageよ#おもいっきり弾けてちょうだい##
ホストは全員##ステージに集合##パルリ!パルリ!〜〜」
パネルを外したがあんどれしょーのT型のステージはそのままで
舞台下にsambaのリズムに体を揺さぶりながら男組の群衆が集まってきた
そして数々のショーを見せてくれたホスト達が次々と舞台に上った
舞台の端にマイクを持ったサンヒョクが立つ…
サンヒョクの安定した音程…低音から高音部に移るときのハスキーな声…
そしてたまに裏返る声…sambaに合うと気に入ったシゲッキーは
急遽ボーカルをサンヒョクに依頼した
サンヒョクはメロディは知っていたので歌詞をすぐ憶えた
いつも地味なサンヒョクは白のボトムに白のマオカラーのシャツ…
背負羽を付けろ#とシゲッキーに言われたが..これには激しく抵抗したらしい
なのでラメ入りのレインボーカラーのポンチョを着せられていた…
袖に控えていたあんどれショーのモデル達も次々と袖から飛び出して行く
最後にシゲッキーとヨンジュンが袖から飛び出す…
2人は銀ラメのピタピタのボトムに銀ラメのシャツ…ミラーボールならぬミラーマン##
舞台に出る直前に…2人はレインボーカラーの派手なオーストリッチの背負羽を付けた…
これにはさすがの闇夜も@o@//…目を丸くした…
僕と闇夜は誰もいなくなった舞台の袖で皆のsambaを見ていた…
♪♪.。.:*・°☆.。.:*・°♪.。.:*・°☆.。.:*・°♪♪.。.:*・°☆.。.:*・°♪.。.:*・°☆.。.:*・°♪♪
♪マツケンサンバ イントロが始まった…
袖から飛び出したシゲッキーとヨンジュンはT型の頂点まで進む…
2人の両腕が上がり綺麗な指先がポーズを決める…
♪♪
叩けボンゴ 響けサンバ 踊れこの夜はカルナバル
夢のような 時を過ごす 熱い心で愛の夜♪
サンヒョクの声は時たまヒュン#っと裏返る…それがsambaのリズムに合っていた…
♪♪
甘いkissが からだ溶かし 心ゆくまで踊れば
今日の夜も 明日の夜も いつもいつも燃え上がる
オーレオレ ヨロブンサンバ
オーレオレ ヨロブンサンバ♪♪
BHCのメンバーも思い思いに踊っていた…
ステージでもうるさい踊りのテプン・チョンマン・シチュン…
ドンジュン・スヒョン…ギョンビンとチーフ…互いにちょっと牽制してる?
ウシクとイヌ先生は互いに見つめ合って踊っていた…
スハとテジンはちょっと隅の方で控えめに踊っている…
♪♪
あぁ恋せよアミーゴ 恋い慕えセニョリータ
笑顔を見せて 愛し合おう
samba# viva samba#
ヨ・ロ・ブ・ン サンバ~~~オレっ!♪♪
♪♪sambaの間奏に入った…
ちぇみとテスは中央寄りのステージで向かい合って踊っている…
舞台の袖で闇夜はテスの踊りを見ていた…
「んばんば…クィックィッ…ぅんぅんいい感じ…ね?」
「ぅん…上手くなった…」
テスは袖にいる僕らに手を振った…^o^v…
ちぇみがそんなテスの髪をくちゃ#とする…^_^
♪♪
叩けボンゴ 響けサンバ 踊れこの夜はカルナバル
夢とうつつ 時は過ぎて 熱い心で愛の夜♪
瞳うるむ 頬を包み 愛を囁き踊れば
今日も明日も 愛は輝き 熱く熱く燃え上がる
オーレオレ ヨロブンサンバ
オーレオレ ヨロブンサンバ♪♪
ドン&ジョンはsambaなのかチークなのか…
ラブはギョンジンの隣で踊っている…ラブの体は柔らかく撓っていた…
スヒョクはソクと向かい合い…ソクはスヒョクの頬に手を置いていた…
イナとテジュンさんは互いの腰に手をやり…ちょっとやらしい動き…
トファン&マイキーとミミ&ミヒ達の踊りは…ゴーゴーダンスだ^^;;
チンさんはサンドゥと踊っていた…
ヨソルの踊りは…寡黙…重たい衣装のままユッサユッサと踊っていた…
♪♪
オーレオレ ヨロブンサンバ
オーレオレ ヨロブンサンバ♪♪
ヨ・ロ・ブ・ン サンバ オレ!
ヨ・ロ・ブ・ン サンバ オ・レっ!!♪♪
背負羽のシゲッキーとヨンジュンがステージ頂点で最後のポーズを決めた…
間奏の音楽が流れる…
踊っていたホスト達が袖に戻り…舞台下へ降り…ステージから人が引いた…
♪♪.。.:*・°☆.。.:*・°♪.。.:*・°☆.。.:*・°♪♪.。.:*・°☆.。.:*・°♪.。.:*・°☆.。.:*・°♪♪
様々な夢を見せてくれたステージが終わった…
♪15.Sunset On Ipanema Beach-Latin Vibe()
会場に♪が流れるなか観客達は一日のステージの余韻を味わっていた…
祭のあと… ぴかろん
マツケンサンバを踊った
思いっきり踊った
嫌なこと全部忘れたかった
嫌なことってなんだろう…
ステージでの失敗?
おじさんとイナさんがキスすること?
ギョンビンが俺に突っかかったこと?
おじさんが…イナさんを…好きだってこと?
構わないんじゃなかったの?俺は俺でおじさんを好きだって…そう決めたんじゃなかったの?
そしておじさんにもそう言ったんじゃなかったの?
俺は踊った
踊っているうちに気持ちが明るくなった気がした
おじさんを見ると控え目に手を上げたり下げたりしてる
「おじさん、もっと思いっきりやんなきゃ!」
「恥ずかしいよ」
「そういう気持ち、捨てちゃえば…」
楽になるのに…
おじさんは少しだけ頑張った
少しだけ表情が明るくなった
踊りが終わると大広間に移動した
パーティーが開かれる
おじさんと俺はバイキング形式の食事をほんの少し口にした
「おじさん…イナさんのとこに行きたいんじゃないの?」
「イナはテジュンさんとべったりだろ?」
そう言って手に持ってたサンドゥイッチを俺の口もとに持ってきた
俺は大口を開けてそれを食べた
「指まで食べるなよ」
かぷっ
俺はわざとおじさんの指を噛んだ
おじさんはアッという顔をして、それから俺を軽く睨んだ
俺は俺の持っていたテリーヌを、箸でつまんでおじさんの口元に持っていった
おじさんは首を横に振って俺の手を指さし
「お前の手から食べたい…」
と言った
ずきん
体の芯がうずく
俺は箸と皿を左手に持ち、右手でテリーヌをつまんでおじさんの口元に持っていった
おじさんは俺の目を見ながら口を開ける
半分喰らいついたと思ったら、そのまま全部を口の中に入れた
俺の指ごと…
俺の指を舐めながら色っぽく微笑み、そして
「仕返し…」
と呟いた
どきんどきん
高鳴る心臓を抑えて、俺はわざと言ってやった
「すけべじじい!」
おじさんは吹き出しそうになった
「ね…映画見に行かない?」
おじさんとこんな風に食事をしていると体がざわついてしまう…
俺はまだ見ていなかった映画におじさんを誘ってみた
「映画?」
「ん、ギョンビンとかイナさんとか出てるらしいよ。俺もまだ見てないからさ…」
「…そうだね…なんだか胸が一杯であんまり食べられそうにないし…」
「いこっ」
俺はおじさんの腕を引っ張って小ホールに向かった
おじさんと二人で映画を見た
ビューティフル・ナイト〜DESTINATIONという作品は、ギョンビンとミンチョルさんの愛の物語だった
俺は…恥ずかしかった
あのミンチョルさんが…ミンジちゃんのお兄さんのミンチョルさんが
おじさんの弟の…おじさんとそっくりの顔をしたギョンビンと…あんな風に…
いろんな人が絡んでいる
ドンジュンやスヒョンさんも、今とは全く雰囲気が違っている…
ミンチョルさんやギョンビンだってそうだ…
ギョンビン…
ほんとに
何もしらない子犬だったんだ…
なのに今はどうだろう…
ミンチョルさんを守る猟犬に成長してる…
俺はどきどきした
ミンチョルさんとギョンビンが結ばれるシーンなんてとても見ていられなかった
あまりにも生々しくて…
あの二人の顔を見られない…
というより、隣に居るおじさんの顔をまともに見られない…
だってそっくりなんだもん…
それからテスさんとチェミさんの「蜘蛛の恋」を見た
…すげー…
アクロバティックだなぁテスさん…
あんな怖そうな蜘蛛さんが蕩けちゃった…
すげーや…
背中に傷いっぱいあるし、テスさんも腹に傷あるし…
文字通り傷を舐めあってるし…
でも…
羨ましかった
この二人は揺ぎ無く愛し合ってるって感じがした…
それからスヒョンさんとドンジュンの純愛物語…
俺泣いちゃった…
だってさ…ドンジュンの気持ちを思うとさ…たまんなくて…
なんだか俺と被るんだ…
スヒョンさんはミンチョルさんが好きで…そんなスヒョンさんを見守りながら強がって…
いじらしくて愛おしくてさ…
ほんとに途中まで胸がしめつけられるようだったんだ
だから…
スヒョンさんがドンジュンを見て、ドンジュンを愛したとき
俺、心から嬉しかった…
よかったね、ドンジュンって拍手を送ったよ
でもなんで今あんな顔してるの?
そういえばスヒョンさん、ミンチョルさんとダンスしてたな
ラストのショーのときもさりげなくミンチョルさんに気を遣って…
…ああ…
そうか…
ドンジュンったら…スヒョンさんの想いをなんとかしようとしてる?
スヒョンさんはドンジュンの方を向いてると思うのにな…
俺の場合とは違って、もうスヒョンさんの心はドンジュンさんのものだと思うんだけどな…
違うんだろうか…
あんなに愛されてるのに…それでも不安になるのかな…
もし俺がおじさんとそうなったら
やっぱりずっと不安だろうか…
俺だけを見ててって思うんだろうか…
そのあとはシチュンさんとテプンさんがノーマルな恋の物語を面白おかしく演じてた
テプンさんってほんとに…かっこわるいのに素敵だな…
ストレートでいい人だな…
それにシチュンさんも…こんなにいい人だったんだ…
シチュンさん、よかったね、いい彼女に巡り会えてさ…
今は二人とも、それぞれのパートナーとしっかり幸せそうにしてるんだもん…
羨ましいな…
その後にイナさんとテジュンさんのセクシーコメディを見た
イナさんがガンガン行ってる
現実と全然違うのでほっとする…
けど…
キスシーンはリアルだったな…
あの二人キスにたどり着くまで随分時間がかかってたんだ
今じゃ考えられないけど…
ラストシーン
ホテルのロビーでイナさんにキスするテジュンさんを見て
俺は何故かどきりとした
テジュンさんの唇や長くて綺麗な指を思い出してしまったから…
あの指とあの唇に俺は…包まれたんだった…
うふふ…
秘密って…ちょっと心がズキンとして…それでもって…楽しい…
俺がにやにやしてるとおじさんが俺の肘を小突いた
「何笑ってるの?」
「うふふ…ちょっと…」
「…テジュンさんさ…」
どきん
「なに?」
「この映画と現実と正反対だよね…」
なんだ…その事か…
「うん…」
「…イナが男らしい…」
「イナさんって案外攻めが似合うかもね。おじさん、抱かれてみれば?」
「…」
「なんだよ、黙り込んじゃって…」
「その『攻め』ってなに?」
「…え…」
なに?
おじさんももしかして天然入ってるの?!
「あのね〜…ごにょごにょ…」
「…ふううん…。じゃその…『受ける』ってのは?」
「だから…ごにょ」
「…」
「どしたの?」
「ギョンビンのヤツ…」
「ん?」
「僕に『案外『受ける方』かも』って言ったんだ!」
「…」
「…」
「あははは…そうかも〜あははは…」
俺は思いっきり笑ってやった
おじさんは俯いて唇を指で触ってた
いやらしい仕種…
どきどきする…
「試してみる?…俺が攻めてやろうか?」
そしたらおじさん、さっきのギョンビンみたいな…あんな切ない顔するんだろうか…
おじさんは何も言わずにギロリと俺を睨んだ
…そ…。受ける気はないみたいだね…
「じゃ、やっぱし俺が『受け』か…ふぅん」
「ばか!」
おじさんはちょっとむくれて俺から顔を背けた
どっちでもいいよ…俺
おじさんが望むなら俺…何だってする…
俺はおじさんの肩に頭を乗せた
おじさんの身体が反応する
おじさんの香りがする
いい匂い…
俺…みんなが羨ましい…
自分の気持ちに正直で…
迷いながらも好きな人にぶつかってるじゃん
俺はどう?
こんなに近くに好きな人がいいるのに…
『傍に居て』って言われてるのに…
どうしてこんなに寂しいんだろう…
ねぇドンジュン…お前も今、こんな気持ちなの?
張り詰めてたギョンビンはどうなの?
お前でも不安なの?
二人ともあんなに…愛されてるのに?
「ギョンビン…きれいだった…」
おじさんが呟いた
「うん…そうだね…」
「あいつ、ほんとにあの人が好きなんだな…」
「うん…」
「僕も…」
なあに?
その後に何がいいたいの?
聞きたい
でも聞きたくない
おじさんはそれ以上言わなかった
そして俺にキスをした…
涙が出そうになる
だからわざと身体を離して言った
「ヤりたくなったの?こんなの立て続けに見ちゃうとヤバイよね…」
「ラブ…」
「でもあの衣装着てってのはお断りだよ。もしどうしてもあれを着て欲しいんだったら、お金貰うからね」
「…」
おじさんは俺を少し睨みつけた
俺は男娼みたいんもんかな…
だっておじさんの心にはイナさんがいて
どうしても俺のことなんか後回しになっちゃうんだもん
どんなに近くにいたって
俺はおじさんに近づけないんだもん…
「ラブ…僕は…」
「出ようよ…そろそろ打ち上げじゃない?」
「…ラブ…」
おじさんの言葉を聞きたくなかった
決定的なこと言われたら…俺…どうなるかわかんないもん…
おじさんは俺の後からのろのろとついて来た
ジュンホのラスト れいんさん
いよいよらすとのさんばです
これでまつりもおわります
まじませんせいとよんじゅんさんのせおいばね?
あれはたんが?というのでしょうか
れいんぼーからーのはねかざりとらめらめのいしょう…
うすめのかおとはんぴれいして、ねおんのようにまぶしいです
さんひょくさんはうたがうまいです
はすきーなこえがとてもいいです
さいごにすぽっとらいとをあびてよかったですね
たぶんみんな、いることをわすれていたとおもいます
うたのほうでちーふのおとうとさんにはこえがかからなかったみたいですが…
それでせいかいだとおもいます
BHCのみんなもあつまってたのしそうにおどっています
まつりのあいだにいろんなことがありました
れいの4にんのあいだには、なんともいえないくうきがただよっています
めをそらしたり、ぎこちなくわらったり…
なにかのとりあいのけんかでもないような
ぴりぴりむーどともすこしちがうような
だけど、それぞれのひょうじょうやうごきに、びんかんにあんてなはりめぐらしてるような…
そんなかんじがします
あのちーふがすっかりちっちゃいおこちゃまのようにみえます
がらすのめだまだったり、ぽやんとしたり、おこちゃまになったり…
てんねんなほっとけなさでは、みぎにでるひとはいませんね
すはせんせいとてじんさんは、なかなおりしたみたいですね
これで、おべんきょうのじかんにすはせんせいのためいきをきかなくてすみそうです
でもてじんさんは、すはせんせいのかみがたのことにはまだふれていないみたいですね
あ!またいなさんとてじゅんさんがくっついていやらしくおどっています
けいはんざいすれすれですね
それにてじゅんさん…
あなたはほてるかんけいしゃなのに、そんなところでこしふってていいんですか?
ちゃんとしごとしてくださいね
むこうでみみさんとおどっているおんなのひとはもしかして…
…めをあわせないようにしましょう
あのひとのそばにうすぎのままちかづいたら
なでなでされたり、むねをおしつけられたりします
きをつけなければいけません
ああ、だけど…ほんとにまつりがおわったのですね
そにょんさんやこどもたちにもうすぐあえるのですね
ぼくはこのひをどれだけまっていたか…
…でも、まだぱーていや、うちあげがあるそうです
またそこでいろいろながびくことがおこるのでしょうね
だいたいこのほてるは、せつびもととのっていてかいてきなのに
どこをさがしてもとけいがひとつもみあたりません
どーしてでしょうか
ここではぼくのたいないどけいだけがたよりです
さあ、あともうひとふんばりがんばりましょう…
いつもの4人..two.. 妄想省家政婦mayoさん
samba#samba#が終わって皆が袖に戻ってきた
あんどれしょーの衣装のトファン&マイキー、ヨソル、ジンソク
チンさんやサンドゥが元の服にばたばたと着替え始めパーティー会場へ向かう
ちぇみテスも袖の隅で着替えを済ませ僕らと合流した
ちぇみが闇夜に紙袋を渡した
中身はあんどれからの例のアラビアンのベルトだ
「うひひ…」
闇夜は袋を覗いてご機嫌だ…
シゲッキーとヨンジュンが僕ら4人の側にぴかぴかミラーマンのまま寄ってきた…
2人はミラーマンのままパーティーに出る様子…
「マジ先生…チカチカしますね…」
「うふふ…テソンくん…そう?」
「でも…2人ともスリムだから…凄く似合ってる」
「あら…テス君も着る?」
「えへっ…駄目…僕は似合わないもん」
「先輩あたりいいんじゃいっすか?着てみます?羽も背負ってさぁ〜」
「ぉ..ぉいっ!ヨンジュン!」
僕らとテスは3人で天を仰いでちぇみがミラーマンになった姿を想像した
「ん〜…ストレッチミラーマンか」
「ん〜…クリームパンを焼くミラーマンか」
「ちぇみぃ〜…羽つけてさぁ〜…###しよぉ〜」
「「「ぷっひっひぃぃ〜」」」
「ば、馬鹿者!ったぐー…お前らっ!…」
ちぇみは僕ら3人にぐぅー★を落とした…
「「「痛っ…痛いって…痛いよぉ…」」」
闇夜がシゲッキーの背負羽をしきりに撫でている
「気に入った?まよぴー」
「すっごい…色綺麗ですよね…先生…少し羽…欲しいな…」
「あっはっは〜いいわよ…好きなだけむしっていいわよ…」
「じゃ…お言葉に甘えて…」
闇夜はシゲッキーのレインボーの背負羽を何枚かむしり始めた…
「テソン…闇夜は何に使うんだ?」
「ん?…たぶん…はるみちゃんの洋服かな?」
「はるみちゃん?」
「ちぇみぃ〜mayoシの猫だよ…」
「そうか…はるみだったら…雌か…」
「ぷっ…そう…」
「雌ならみんなで可愛がれるな…ぐふふ…」
「もぉ〜猫にまですけべぇー!」
「テスぅ…」
ちぇみはテスにぐぅー★された..
闇夜がむしった羽は…はるみちゃんのコスチュームになるだろう
羽をむしってる闇夜はすごく嬉しそうで…いつもと違って可愛く見えた
闇夜の携帯が震えた…ミンギからだった
僕と闇夜はパーティ会場に行くちぇみテスと別れてホール2階の監督達の所へ寄った
ジホとウォニとミンギはモニターチャックをし…ソヌは3人の側に立っていた
「ぉ、来たね」
「お疲れ様でした…監督」
「いやいや…楽しかったよ」
「BHCはやっぱりすごかったじぃょぉー」
「皆同じ顔なのに…皆すごかったっス」
「僕らじじぃは何ができるのかなぁ〜…ね、ソヌ君…」
「ホントですね…」
ジホとソヌはふたりで笑っていた…
「大丈夫ですよ…いろいろ…ありますから…店に行けば…」
闇夜が意味ありげに言うとジホとソヌは首をかしげていた…
「編集終わったら店に持っていくよ…ぁ、僕のアトリエに取りに来るぅ?一人で来てよ?」
「監督ぅ〜」
「ぷっ…冗談冗談…」
「ぁ..パーティーと打ち上げもありますから」
「ぅん…そっちは小型で撮るから」
「じゃ…お願いします…」
「ん…わかった…」
2階から降り…廊下を移動中…繋いでいた闇夜の手に力が入った…
「…?」
僕が闇夜の顔を覗くと唇を噛んで前方を凝視していた
恋人は… ぴかろん
イナが
『テジュンしか見ない』
と言い出した
不安げに揺れる瞳がたまらなく色っぽい
嘘つきめ…
僕しか見ないなんて、何度目の嘘だ?
僕は
『またか』
と思ってイナを見つめた
僕の顔を見てイナは泣きそうになった
なんでそんなに不安がる?
そんなにラブ君が気になるの?
馬鹿だな…あの子はギョンジン君のことしか見てないのに…
「イナ…ラブ君が気になるの?」
「…らぶにういんくした…らぶにわらいかけた…おれじゃなくてらぶに…」
「…だめなの?」
「いやだ…」
「はあっ!我儘っ!お前今までにどんだけ他の男に色目使ってた?!色目だけじゃねぇよ!色唇だ!」
「…おれは…おれは…」
「俺は…何だよ!」
「…うわきらもん…ほんきじゃないもん…」
「ほ!…何?…僕は本気だとでも言いたいの?!」
「てじゅ…うわきなんかできない…」
「…」
馬鹿なヤツ
僕は急に切なくなってイナの頭を抱きしめた
「やらっ!やら…」
「やだじゃないよ。ばかだな…お前の方が浮気なんかできない人間じゃないか…」
「…じゃおれ、ソクやギョンジンにほんきだっていうのか?!」
「違うよ…そうじゃない…そうじゃないよ…」
僕はイナの頭を抱きしめながら、これまでのこいつの『ふらつき』を思い出していた
本能のままにフラフラし、好きだとかキスしてだとかソクやギョンジン君に求め
その色っぽい瞳で奴等をモノにしてきたんだよな、お前は…
だけど…いつも僕の元に帰って来る
『ギョンジンを抱く』だの『ソクと入れ替わる』だの馬鹿な事ばかり騒ぎ立てて
結局何もできずに帰って来るんじゃないか…
お前…ソクやギョンジン君に対する気持ちと、僕への気持ちとが違ってるって…自分で気づいてないの?
お前…お前…あいつらにひどいことしてるって自覚ないの?
お前だから許されてるけど…
それだけのモノを無意識にあいつらに与えたから許されてるけど…
「おれ…ソクもギョンジンもすきだもん…でもてじゅがいちばんすきだもん…うわきとほんきのくべつぐらいついてるもん…」
「そういうのは『浮気』なんて言わない…お前のは…」
ただ…獲物にじゃれついてるだけなんだよ…
そして…ひどい時には嬲り殺しにするだけだ…
猫が鼠を弄るように…
とても残酷なことをしてるんだよ、お前は…
あいつらは惑わされ、いっときだけ踊らされる
ソクは早めに気づいたけど、昨日今日で餌食になったギョンジン君は…まだ気づかない
仕方ないか、この野良猫は『いい事もする』野良猫だから…
最初にあんな風に仕留められたら誰だって心を許してしまう…
『いい事をする』時は一生懸命だから…
でも徐々に『わるさ』が混じってくる
とても魅力的な『悪さ』がね…
『好き』だなんて言われてみろ…心をほぐされたヤツラは誤解する…
その『好き』がどんな『好き』なのか…お前は自覚していない…
ただのお気に入りのおもちゃだって…自覚していない…
「お前は浮気なんてできない…お前のやってる事は浮気じゃない…ただの…遊びだ…。いい加減にしろ…」
「あそび?…それをうわきっていうんじゃないの?」
「お前のは違う…もっと…酷い」
「…ごめんてじゅ…だから…もうしない…」
「違うよ!僕じゃない!あいつらに…」
「あいつら?」
無邪気な瞳で僕を見つめるイナ…
お前…なんて奴…
どうしようもない奴…
たまらなく可愛くてたまらなく残酷な…
こんな奴が僕の恋人だなんて…
イナを抱きしめた
離したくない
イナは僕だけを見ている
解っている
どこへ行っても必ず帰って来る
それも解っている
だが僕は
こいつが撒き散らす魔性の色香に惑う人たちに
僕がこいつと愛し合うと、僕がこいつの責任を持つと
そう自信を持って言えないでいる
誰にも渡さないと言いながら
こいつがふらつく事を止められないでいる
止める程の魅力が
僕に備わっていないからなんだろうか
それともこれは
魔性の野良猫の習性なんだろうか…
だから僕は…一途なラブ君に…キスしたくなったのだろうか…
涙の理由 足バンさん
フィナーレのサンバを踊った
マジ先生たちのすごい衣装につい目がいっちゃったけど楽しかった
今日前半走り回ってて見られなかったサンヒョクさんの歌はバツグンだったな
スヒョンが舞台で表彰されたあと袖に入って行って
すぐあとにミンチョルさんが席を立った
どきん…
いや、僕はどきんをやめたんだった
もう覚悟を決めたんだった
本当に僕にとってひどい結果が出たら…
その時のことは今はとても考えられないけど
でも絶対逃げない
邪魔にならないようにちょっと距離をおいて
そして真っすぐスヒョンを見て行く
そしていつか僕を必要としてくれる時を待つ
僕はそういう風に生きてきたんだ
シベリアで1度だけ目的を諦めそうになったけど
あれはみんなの命がかかってたから
でもこれは自分ひとりの問題だからきっとできる
きっとできる…
サンバの舞台が始まると、みんなが舞台に上がる手はずだった
僕はさっさと立って出ていったテプンさん達の後を追い、
そしてまだ席を立たずにいたギョンビンを手招きした
不安の色を滲ませていたギョンビンだけど
彼にもなにか決然としたものを感じた
ようやく席を立った時には少し笑っていた
やっぱり笑ってる方がいいよ、君は
僕たちが舞台の奥にすすんで踊りに混ざると
袖からミンチョルさんとスヒョンが出てきた
タキシードのサンバはちょっと変だったけどそれなりにキマってた
明るい歌にノッていると少し気分が変わったような気がする
全てが終って会場の適当な椅子に座っていると
スヒョンが何か食いに行こうと声をかけてきた
さっさとミンチョルさんとどこかに行くかと思ってたから驚いた
立食パーティの会場はもう人がいっぱいだった
男組やMUSAの連中がすごい勢いで食ってる
ウエイターさんやコックさんたちが青い顔してるけど大丈夫かな
我がBHCのテプンさんたちもやっぱり目立ってる
ギョンビンの兄貴といるラブと目が合った
あんな目をしてたっけ…してたような気もするけど
なにかいつもと違う…
声をかけたかったけどそういうムードでもなかった
ラブが差し出した何かを兄貴が指ごとしゃぶるのを見ちゃって
僕はかなりどきどきした
「なに?どうしたの?」
「あぅ…なんでもないっ」
「ドンジュン…このあと映画観る?」
「え?」
「観ないの?」
「だって…」
約束あるでしょ?って喉まで出かかって言えなかった
それに…映画の内容知ってるから…一緒になんか観たくないし…
「やめようよ」
「なんで?」
「だって…ギョンビンたちのそんなのとか…観たくないもん」
「観せたくないもん、でしょ?」
「わかってるなら聞かないでよばか」
「僕たちのは?」
「いいよそんなの…自分で憶えてるから」
自分で憶えてるから…
あぁ…まずい…また涙が出そうになるじゃないっ!
僕は急いでその辺のものを口に詰め込んだ
「ドンジュン…」
「ふぇ…?」
「僕はあとで修了後の簡単なスタッフミーティングに出る。テジュンさんやミンチョルと」
「ん…」
「その後ミンチョルと話をするつもりだ」
「ん…」
「おまえに禁止事項を2つ…」
「ふぇ?」
「飲み過ぎないことと車で外に出ないこと。いい?」
「ん…」
スヒョンは口いっぱいに頬張った僕を優しい目で見つめている
こんなに深い優しい目をもう一度向けてもらえるんだろうか
食い物が少し喉につっかえてむせたけれど
こぼれそうになった涙の言い訳にできてちょうどよかった
テク オリーさん
「よう、ギョンビン、お前も打ち上げ来いよ」
「打ち上げ?」
「飲みまくろうぜ」
「だめだよ、テプン、こいつチーフと一体だから」
「あ、そっか」
「行きますよ、テプンさん、シチュンさん」
「狐ほっといていいのか?」
「たまにはいいです。でも僕に飲ませていいんですか?」
「お前強いの?」
「お酒は強くないけど、飲むと強いです」
「どういうことだよ?」
「ロシアにいた時、飲んでマフィアのボスの所に殴りこみに行きましたね、一人で」
「「え…」」
「ボディガードめっためたにして、ナイトクラブをメッチャメチャにして
もうちょっとでボスも仕留めるとこだったなあ」
「お、おい、物騒だぞ」
「大丈夫です。僕が暴れたら兄さん呼んでください。あとじゅんほさん。あの二人なら止められるでしょ」
「あぶねえ奴だな」
「冗談です。それより、僕にホストのこと色々教えて下さい」
「ホストのこと?」
「テプンさん、ナンバーワンでしょ?」
「そういうことか、まかせろ!」
「スヒョンさんより売上が多いって凄いですね」
「テプンお前ナンバーワンなの?」
「へへん、知らなかったのか、シチュン。俺を尊敬しろ」
「ミンチョルさんの計算だとそうなるらしいですよ。単価の高いもの食べるとかで」
「単価の高いもの?食べる?」
「へへっ、俺は別にナンバーワンにこだわってるわけじゃねえけど
あの狐、いや、チーフがそういうからよ、ま、そうなんだろうな」
「だから、色々教えてください」
「まかせとけ、まずジャージャー麺の食い方からいくか?」
「テプン、そういうことか?ホストって?」
「うるせえ、シチュン、お前は黙ってろ。お前だって新人なんだから俺の言う事よく聞いいとけよ」
「女扱いなら、僕だと思うけどなあ」
「それより、お前またテク磨いたって?」
「テク?」
「おお、あのち○とか、その、あの、狐とナニして、その、あの…」
「何が聞きたいんですか?」
「だって、狐お前にメロメロらしいじゃん」
「違います。僕が狐にメロメロなんです」
「そのへんが俺には理解不能なんだが、そのテクをよ、ちょっと教えろ」
「何を教えたらいいですか?キスの仕方?ベッドの誘い方?それとも…」
「ば、馬鹿っ!そんなでかい声出すな…恥ずかしいじゃねえか」
「テプンさんの声の方が大きいですよ」
「そうだ、うるさい。それにそういう事なら僕に聞け」
「シチュンのはいい」
「何で?」
「たぶん、お前のは俺でもできる」
「失礼だな。僕のテク知らないのかよ」
「考えてみろ、こいつとあの狐だぞ。絶対、何かあるに違いない」
「そうか、そう言われてみれば。僕にも教えろ」
「見世物じゃありませんから」
「けちくさいこと言わずに、この間もキスの仕方教えてくれたろ。あれのちょっと上くらいでいいからよ」
「あんなの、テクのうちに入りませんよ」
「こいつ、生意気になりやがって。だからとっとと教えろ、狐殺しのテクをよ」
「教えるものじゃないでしょ、そんなの」
「こいつ!先輩の言う事が聞けねえの…あっ…ぐぐ…むむ…はむはむ…」
「テ、テプン…」
「むにゅ…むにゅ…ふにゅ…」
XXX XX XX XXX
「テプンさん、こんなもんでどうです?」
「はふん…」
「おいっ、テプン、しっかりしろ!おい、ギョンビン、今の何?」
「今のはイナさんのテクですよ。この間見ませんでした?」
「イナさんの?」
「イナさんのピンポイント攻撃」
「ピンポイント?」
「相手が怒ったり、話したりしてる時に効果的です。すばやく唇をとらえて後は優しく…ね?テプンさん」
「はひ…ん」
「おい、テプン?」
「唇を1秒以内にとらえる。これがコツ。的は絶対はずさないように。キスが終わったら喧嘩も終わってますよ」
「は…ふ・ん。おい、ギョンビン、お前、上手いな…俺の代わりにチェリムにもやってくれ」
「馬鹿!何言ってるんだ、テプン」
「いや、それくらい、よかった…は…ふ…ん」
「じゃ、打ち上げの時、一緒に飲みましょうね」
「は…ふ…」
「ギョンビン、何やってんの」
「ドンジュンさん、テプンさんがキスの仕方教えろっていうから」
「だからって、ほんとにやることないじゃん」
「ふふっ、そうですよね」
「何かあった?」
「別に…大丈夫ですよ。ドンジュンさんも打ち上げで飲みます?」
「ああ、さっき誘われた」
「じゃ飲みましょ。飲んで飲んで飲みまくりましょ」
「ギョンビン…」
「たまにはいいでしょ。ね?」
「そうだね。飲みまくるか」
「そういうこと。みんな忘れて、ぱーっと」
「そうだね、ふたりでぱーっと行こう!」
「テプン、おい、大丈夫か?」
「俺は…はふん…ちっと狐の気持ちがわかったのら…はふん…」
いつもの4人..three.. 妄想省mayoさん
テソンと廊下を移動中...BSHCの3人が前方に見えた..
奴らはまだ気づいていない..
どうしたものか..迷った..
奴らはテソンの仲を知らない..
テソンは私が睨み勝ちをしたことを知らない..
奴らがおとなしくなったとはいえ..
下手に奴らの前にテソンの存在をさらけだしていいものか..
私はテソンの手を思いっきり引っぱった..
廊下を曲がりずんずん歩き..また角を曲がり..隠れた..
闇夜が凝視していたのは..ソヌ関係の例の3人だった..
僕はあの3人が会場に来ていることを知らなかった..
あの3人がいて..2階にソヌとミンギがいる..
大丈夫なのか?...僕がそう思ったとき..闇夜が僕の手をぐいっ#っと引っぱった..
隠れた廊下の影でテソンは私の両腕を掴んだ..
テソンの尋問が始まった..
「3人が来てたの..知ってたの?」
「ぅん..」
「話したの?」
「ぅん..」
「詳しく話してっ!全部っ!」
私は祭りの前にソヌとミンギの前に立ちはだかり睨み勝ちしたこと..
奴らがBSHCと始めたこと..
会場に来た3人と話をして...折り合いを付けたこと..
ソヌとミンギに手出しをしないことを確認したこと..
テソンに話した..
テソンはふぅぅっとため息をついた..
「さっき...僕の出番前のときだね..君がちょっと僕の側から離れた
あの時..奴らが来た..そうでしょ?」
「ぅん..」
「何故言わないの...祭り前のこともそうだ..何故隠すの」
「ごめん...心配かけると思ったから..」
テソンまたため息をついた..そして強く掴んでいた腕を解いた..
「僕に何かあったら..って思ったんだね..」
「ぅん…」
「mayo..」
「ん?」
「僕..そんなに..頼りない?」
「テソン…」
テソンは俯いている私の顔を両手でそっと上げた..
「僕は..君のためなら何でも出来る..だから..余計な心配しないこと..いいね..」
「ごめ..」
私の言葉はテソンの唇で途切れた..耳元へ唇が移動しテソンは囁いた..
「ふっ..カンのじじぃにさ..気に入られた?」
「馬鹿..」
テソンはくすっっと悪戯に笑ったあと私の手を引っぱって歩き出した
ずんずんと来た道を戻っている..
「駄目だよ..テソン..」
「いいからっ..」
僕は闇夜の腰に手を回し闇夜の手を僕の腰に回しBSHCの3人の前へ進む..
「ぉ...アガッシ〜うひょひょ..」
「むぉ..ほっほ...アガッシィ〜だ..」
むさくるしい2人の隣で@_@...カンが立っていた..
僕と闇夜は彼らの前を通り過ぎるときに軽く挨拶をした..
彼らの前を通り過ぎて何歩か歩いた後..
僕は闇夜の髪に唇を落としながら横目で3人を見る..
3人はあんぐり@o@で見ている...
ふん#闇夜の彼は僕#テ・ソ・ン##...アラッチッ!?
闇夜が僕を不安そうに見上げた..僕は闇夜の頭をそっと撫でた..
テソンが耳元で囁いた..
「大丈夫...」と..
俺は着替えてセットしたマイクから2人の会話を拾っていた..
そして口端で笑った..
グラスを持ってきたテスが俺の顔を覗く..
「どうしたの?」
「ん...なんでもない...」
テスが俺にいつもの笑顔で笑った..
いつもの4人..four... 妄想省家政婦mayoさん
「テス..」
「何.ちぇみ..」
「明日から..2,3日..旅行に行くぞ..」
「えっ?」
テスの手にしたサンドイッチが俺の口元で止まった..
テスはきょとんとした目で俺を見た..
「皆で別宅帰るんじゃないの?」
「ん..」
「ちぇみと2人だけで?」
「ん..…嫌か?」
「嫌なわけないよ..えへっ..うれしい^o^..」
テスがぽちゃぽちゃの片手で俺のほほをナデナデする..
「ちぇみ..何処に行くの?」
「ん.. ..お前に見せたい処がある」
「何処だろう.. ..教えて」
「行ってからのお楽しみだ」
「ぅんっ##..えへっ^_^v 」
俺に髪をくしゃ#っとされたたテスは嬉しそうに笑い俺を見上げた
「ちぇみ?」
「何だ..」
「それって..もしかして..あの2人のためでもある?」
「ふっ..ん..」
「えへへぇ〜..ゆっくり“させ”たいんだね..」
「そういうことだ..」
「わかった..でもさ..」
「ん..何だ..」
「ちゃんと..“する”かなぁ..」
「わからん..」
「ね..テソンさん..今晩キメルと思う?」
「.. ..今晩は..ないな..たぶん..」
「どうして?」
「テス..闇夜の顔色見たか?」
「ぁ、ぅん..かなり疲れてるみたい..」
「ん..」
「テソンさん..優しいからな..今日は..何もしないか」
「たぶんな..」
「テス..店..大丈夫か?..休んでも..」
「いいの..いいの..休んじゃうぅぅ〜##..」
テスはそう言うと俺の口にサンドイッチを突っ込んだ..
私はテソンと歩きながら耳に小型マイクをセットした
ちぇみテスの会話が入ってきた..
ちぇみがテスを連れて行く処は..きっと..あそこだな..
あの場所は..2人にはぴったりかもしれない..
ふっ#っと俯いて笑ったとき..テソンがパーティー会場のドアを開けた..
ちぇみテスは大勢の人を避けるように壁の隅にいた..
テスが僕等を見つけて手招きをする..
僕等が人をかきわけて2人の側によると..
テスは僕の手を取ってバイキングコーナーへ引っ張っていった..
闇夜が俺の隣に来た..闇夜のマイクを目ざとく見つけ言った..
「聞いてたんだな..」
「ぅん..そっちもでしょ..」
「ふっ..ん..カン等3人はどうだった..」
「ん?..あんぐり口あけてた..」
「ぷはは..やるな..テソンも..」
「ぅん..」
「闇夜..」
「ん?」
「腹きめろよ..」
「ぅ..ぅん..」
戻ってきたテソンは闇夜と入れ違いに俺の隣に来た..
テスはあれも食べろこれも食べろと闇夜にしきりに勧めていた..
闇夜もテスの口にあれやこれや突っ込んでいる..
俺は隣のテソンに言った..
「テソン..」
「何..ちぇみ..」
「俺とテスは明日から2.3日留守にする」
「えっ?一緒に帰るんじゃないの?」
「ん..」
「そう..わかった..」
「俺らがいない間..ちゃんと“する”んだぞ..」
「ぁの..」
「何もせんかったら..俺とテスで..切っちまうぞ..お前の..」
「ぁふぁふ..ぁのねっ!!もぉ〜!!」
ぷぷぷ.. ..と目を細めてちぇみは俯いて笑った..
僕は前を向いたまま.俯き加減でちぇみに言った..
「ちぇみ..」
「何だ..」
「..ほんとに..いいの?」
ちぇみは僕の頭の後ろに手を当ててひと撫でした後..僕の肩を叩き..言った
「馬鹿..お前が迷ってどうする..」
富貴鶏 オリーさん
「飲んで、飲んで、飲みまくるって何なの?」
突然後ろから彼の声がした
「打ち上げの話。僕ら、置いてきぼりだから。別にいいでしょ」
「構わないけど、無理するなよ」
彼はちょっと顔をしかめた
「大丈夫だよ」
ドンジュンさんは僕に「後でね」と目配せすると
さり気なく僕達から離れていった
「後で呼びに行くから」
僕が声をかけると、ドンジュンさんは振り返らずに手を上げた
「もう、食べた?」
彼は垂れた前髪の隙間から僕を見つめて言った
「うん、適当にそこらにあるものつまんでる」
「ちょっと来てごらん」
僕の手を引くと、端のテーブルまで連れて行った
恰幅のいいコックがテーブルの前で木槌を持って立っている
「ほんとに僕らが割ってもいいの?」
彼はそのコックに聞いた
コックはにっこりとうなづいた
「ここの料理長だよ」
料理長は彼に木槌を渡した
「これで、割るんだ」
彼は僕に木槌を握らせると、僕の手を上から包み込んだ
僕らは木槌を振りおろし、蓮の葉の上の塊を割った
とたんに豊潤な香りがあたりに広がった
料理長は割れた岩塩を取り除き、器用に肉を切り分け始めた
「すごくいい香りだ」
彼はそう言った僕の口元に切り分けた肉をもってきた
「食べてごらん」
僕は用心しながらゆっくりと口を開けて食べてみた
とたんに口の中が踊った
「美味しい…」
「富貴鶏っていうんだ」
肉にすべての旨みが閉じ込められていて、
噛むごとに豊潤な香りと甘い旨みが口の中に広がる
「たまたま仕込んでるのを見つけてね、狙ってたの
作るのにすごく手間がかかるんだ」
ふふっと彼はいたずらっぽく笑った
「男組に見つかるとすぐなくなるから、隅っこに出したって、
さっき料理長がそっと教えてくれてね。気づかれないうちに、食べよう」
彼はまた一つ蓮の葉の上に切り取られている肉を
指でつまんで僕の口に入れた
そして残ったわずかな肉を自分の口へ持っていった
「何だか幸せな気分になるね」
「だろう。ミンに食べさせたかった」
彼はにっこりと微笑んだ
とても美しい微笑み
でもその顔のまま言った
「これからテジュンさんたちとミーティングして…その後、話に行ってくるから」
僕は下を向いてもう一切れ肉を口に入れた
彼はスヒョンさんの名前を出さない
いいよ、わかってるから
「僕は飲んでる」
「じゃ、そろそろ行くから」
彼は僕の腕を軽くたたいた
「ねえ…」
「何?」
「これ何ていう料理だって?」
「富貴鶏。中国料理だ。なくなる前にドンジュンにも教えてあげたら」
「そうする」
「じゃ。あ、あと…」
「何?」
「テプンとはキスするな」
「見てたの?」
「見えた」
『妬いてくれた?』
僕は心の中で呟いた
「僕…」
「何?」
「一晩中飲んでるから、今日は帰らないかも」
彼はちょっと首をかしげ、ふっと息をすると言った
「いいよ、好きにして。携帯は忘れないで。戻ったら連絡するから」
「わかった」
彼は歩きだした
いいよ、好きにして…か
そっちも好きにする?
いいよ、どこに行っても、何しても
僕は待ってるから
どんなでも戻ってくれば、僕はいいから
気がつくと、料理長は鶏をさらに切り分けている
「すみません、僕、随分食べちゃって」
「気に入っていただけましたか?」
「すごく美味しいです」
「ご存知でしたか。中国では貴重でおめでたい料理なんです」
人のよさそうな料理長はにこにこ笑った
「おめでたい?」
「豪華な結婚式には必ず出されます」
「え…」
「二人でこの包みを割るのがしきたりです」
僕は急いで彼を振り返った
彼の姿はもうどこかへ消えていた