面倒見のよいイナ  ぴかろん

俺は袖の奥の椅子に座ってラブの服を持っていた
青いシャツ…ギョンジンの好きそうな感じ…
でもラブにはあんまり似合ってねぇ…

暇だったのでちょっと袖を通してみた

…ジャージの上から着るもんじゃねえな…
でも結構似合うじゃん
俺、青って結構似合うじゃ〜ん…

あ…囚人服の色も青だっけ…

俺はそのシャツを脱いで大人しく座った
どしたんだろギョンジン…
なんか血相変えて裏に飛んでったけど…

暫くしてやっと二人が帰ってきた
ラブは泣き崩れてるしギョンジンはそのラブの肩を抱いて、オマケに頭にキスして、その上自分も泣いてる

何があったんだ!クソッ!知りたい〜!

でも奴らは俺とは反対方向の、二人掛けの椅子の方に行って、そのまんま髪にキスしたり顔を覗き込んだりしてる…
面白くねぇ!
けどしかたねぇ
ラブに落ち着いて貰わなきゃショーが台無しになるわ…

俺は『B息ショー進行確認表』を見た

ん?

『ラブ…服を脱ぎ脱ぎしながら腰フリダンスをし、上半身裸になってナイフジャグリング』

ミンチョルの丁寧な字で書かれている
あれ?なんでアイツ裸でいるの?
腰フリダンスの練習なんかしてなかったよな?
暇だからミンチョルに確かめに行こう

俺は裏に回った

スヒョンとミンチョルが抱き合い、ドンジュンとギョンビンがいやらしく腰を振っている

なんなんだ!こいつら!スワッピングしてんのか!

俺は四人の痴態を目の当たりにして固まった

「どうしたイナ?」

狐が聞いた

「あの…大変なところへお邪魔したようで…」
「大変なんだ、チークダンスなんだ!」
「へ?…チークダンス?」
「急遽スヒョンと僕とが踊る事になって、その練習中」
「…あ…そうなのか…。で…こちらのお若いお二人は…一体全体何を…」
「「僕らはボタン外しショーの踊りをアレンジして練習してるんだよ」」

だからユニゾンやめろっつの!

「あ…練習なんだ…」
「何か用か?」
「ん…あのこのラブのとこなんだけど…」

俺は狐が書いた進行表の確認をした

「あ…ほんとだ…裸じゃないんだ…。じゃ、適当に衣装捜してラブに着せてやってよ」
「オッケー」
「あ、イナ、ちょっと聞きたいんだが…」
「ん?」
「ラブとミンの兄貴は…そういう仲だったのか?いつからだ?どこまで行ってるんだ?ミンジと重なってなかったのか?」
「…」
「どうなんだ!教えてくれ」
「…ギョンジンとはえーっと2時間ぐらい前からだっけな…そういう仲で…ミンジちゃんとは重なってない
どこまでの仲かって言うと…お前らみたいな仲じゃない。以上」
「あっ…イナっ」

俺はぐだぐだ言う狐を見捨ててラブの衣装を捜した
俺ってなんて面倒見がいいんだろう
というか、今すぐ戻ったってあいつら…いちゃいちゃしてるもん…面白くねぇもん!
だから袖にぶら下がってる衣装を適当に見繕ってラブにもってってやろうと思った

「イナ!」

あっ。ソクだっ

「ソクぅぅぅ」
「しっ!静かにしろ!…いいか、さっきのキスの事、スヒョクに絶対言うなよ!」
「…」
「言うなよ!」
「もいっかいきすしてくれたらいわないよっ」

ソクは俺を睨んでチュッとキスをした

「これじゃあ…」
「ええい、やらしいヤツめ!」

そういうとちょっと濃い目のキスをしてくれた
物足りないけどまあいいや…

「ソク…衣装余ってない?」
「衣装?」

俺はソクともう少しいたかったのであまり衣装には関係のないソクに理由を話した

「ちょっと待ってて…」

そう言うと、妖怪のところへ行き、戻ってきた

「これ、あげるって」
「あ?」
「これ、僕着た後ちょっと破れちゃってさ、先生がもういらないからって。だめ?どうせ脱ぐんでしょ?」
「あ…うん…じゃあ貰ってく」

俺は紙袋に入れられた衣装を貰った

「じゃあな」
「…」
「…じゃあな…早く行けよ」
「…」
「…ほんっとどうしょうもない奴だなっお前って!」

ちょっと怒った顔をして、ソクは電撃ちゅうをしてくれた
はへへん…あへへん…もっとぉぉぉ

どすん☆
ソクに突き飛ばされた

「今行くよぉぉ…早く帰れバカ!」

…スヒョクに呼ばれたらしい…くそっ…
俺はソクにばいばいしてラブたちのところに行った

相変わらず二人だけの世界にいる…くそっ!
俺はラブの膝に衣装の袋を置いた

「…あ…イナさん…腕…腕大丈夫ですか?!」
「うん…平気…。それよりな…」

俺はラブに衣装の説明をした

「そんなっ!脱ぎ脱ぎしながら腰フリダンスだなんて!」
「最初それで練習してたじゃんか。んで、お前はストリッ○やったからダンスの方は練習しなくていいってことで
ナイフジャグリングばっかりやってたじゃないか」
「しいいいっ!」
「何?今イナなんて言ったの?ラブが何やったって?」
「ああこいつBHCのイベントでな、ストうぐぐぐ」

ラブが俺の口を押さえた

「やめてください!言わないで!言ったら足踏みますよ!」

俺は首を縦に振った
ラブが手を離した

深呼吸する俺

「こいつBHCのイベントでストリッうぐぐぐ」

今度は鼻と口を押さえ込むラブ
息ができねぇっ!苦しいっ
ラブの腕をバンバン叩いてギブする俺

「言わない?」

ブンブンと首を振る俺

「絶対?」

ブンブン振る俺

ラブがようやく手を離したその瞬間

「ストリッ○したんだこいつ!」

とギョンジンに叫んでやった

「ふうん」

…あれ…
反応薄い…

「見たいな、ラブのストリッ○…今度…ごにょごにょ」

なんか耳打ちしてるし…

「いやだ…おじさん…すけべじじいじゃんか!」
「んふふ」

…ばか!

「とにかくこれ着て出てって脱ぎ脱ぎしながらダンス!わかった?」

「…うん…」

「ラブ、着てみなよ」
「うん…」

いちゃいちゃしててつまんない…
あーあ
テジュンがいたらいいのにな…

そだ、まだ時間があるからテジュンとこいこっと…すぐ近くにいるはずだしな

俺は袖の階段を降りた
客席に向かう通路の端にテジュンがいた

「てじゅ〜」

呼ぶと振り返る満面の笑顔
抱きつく俺
ああテジュン…
やっぱお前が一番好き〜

俺を抱きしめながらテジュンは囁く

「誰と何回キスした!」
「…」
「ソクと五回か!うち電撃キスは二回か!…そしてギョンジン君とは一回ないし二回…ほぉぉ…
いずれも彼らの若い恋人に邪魔され断念か!そうか!」
「…」

なんで知ってるのさ…見てたのかよ…

俺は涙を浮かべた目でテジュンを見つめる

「しょんなこといわないれよ…うえっうえっ」
「…まあいい、許してやる…そのかわり…」

ごにょごにょごにょ…

「いやだっ!ぜったいいやだっ!そんなことするぐらいなら舌かんで死ぬかんな!」
「なんでだよぉぉぉぉ、いいじゃんかぁぁぁぁ、ちっとは僕にサービスしろよぉぉぉぉ」
「きらいっ!」

え?
テジュンがなんて言ったかって?
そんなこと!言えるかよ!へんたいっ!


衣装…  ぴかろん

イナさんが持ってきた衣装を見て、俺とおじさんは絶句した

『なんだよこれ…スケスケじゃん!』

俺はおじさんの顔を、そのスケスケのシャツを通して観察した

…口元が微妙に歪んでいる
目が…いやらしい…

「やだっ!こんなの!」
「…そう言わずに…着てごらんよ…」
「おじさん変なこと想像してない?!」
「…なにが?…」
「例えば…」

さっきおじさんが耳打ちしたのが
『今度僕と二人っきりのとき、ストリッ○してね…』
だったから
『これを着てストリッ○してね』
だとか
『いつもこれを着ていなさい。いいね?!』
だとか…

「言えない」
「…とにかく…イナが調達してくれたんだから…着るべきだろ?イナに悪いよ…」

微妙な口元を真一文字に結んで、おじさんは言った
どうしても着せたいらしい…
俺はおじさんにこっちに来るな!と言いおいて、幕にくるまって…着てみた…
幕の前にある鏡に、俺にだけ見えるように自分の姿を映してみた

えぐっ!
いやらしいっ!
これ何だよ!
どっからこんなもん持ってきたんだよ!

他の人、見てないだろうな…
こんなの脱ごう!いやだ!恥ずかしい
これなら裸の方がましだ!

もう一度幕に包まって、このスケスケシャツを脱ごうとしたら、後ろから俺を抱きしめる腕に捕まえられた

おじさんだ…

「脱ぐなよ…」

ああもうっ!すけべじじいっ!

「こんなの、はずかしいっ!裸のほうがまし…あ…」

やだっ…すけべじじいの指が、スケスケシャツの上から俺の体を這い回る
すけべじじいの唇が…俺の背中を…ああ…

「声出しちゃだめ…みんなにみつかっちゃうよ…」
「…そんな…やめてよ…おじさ…」
「…だめ…やめない…」

おじさんはそういうと、得意の『後ろからキス』で俺を蕩かす…
俺は幕を掴み、必死で踏ん張っている
誰かが来たらどうしよう…ああ…頭の中がぐちゃぐちゃだよ…
唇を離しておじさんは耳に囁き掛ける

「すんげぇセクシー…たまんない…」
「…ふぁ…」
「我慢できない…ラブが欲しい…」
「…だ…だめ…」
「…わかってる…今は我慢する…でも…後で…」

これを着て、#%$#しようとおじさんは、ハッキリ言った…

クラクラする…
これを着て?
こんなものを着て?!

「ヘンタイジジイっ!」

俺は声を荒げておじさんに言ってやった
おじさんは驚いた顔をして見せたけど、その指は止めない

「もうっ!出番が近いんだからやめて…あは…よ…っくっ…」

おじさんは嬉しそうな顔をして
やめてもいいの?とか一回イッとく?とか、いやらしい事を呟いた
もんのすごいスケベな顔だ…

ああもう

「ち○びが…」
「いいじゃないか、これ着てるんだもの…」
「だって…脱ぐんだよっ…あ…」
「…ラブ…」
「やめて!ほんとに…。これ以上したらおじさんの事嫌いになる!」
「…嫌いに?」
「…ああ…ン…き…らい…」
「好き?」
「…きら…い…」
「好き?」
「…」
「好き?」
「…す…き…」

おじさんは突然手を止めて、俺にキスをした
濃いのされたら本とにイッちゃうよ…どうしよう…

でもおじさんは普通のキスをした
そして幕を翻して出て行った
どきどきどき
火照ってる…
俺は落ち着こうと努力した


映画鑑賞2 れいんさん

は〜〜〜〜っ…
ふ〜〜〜〜っ…

映画が…終わった…

息をするのも忘れるくらい僕はスクリーンを見つめていた
ホール内が明るくなっても僕は立ち上がれずにいた

「いや〜ん!過激だったわあ〜!あれ…ほんとにスタント?やけにリアルで生々しかったけど…」
「そ…そうですわね。監督さんはどなたかしら。素晴らしい演出でしたわ
後ほどぜひ花束と賛辞の言葉をお贈りさせて頂きたいですわ」
(きいいー!悔しいっ!室長ったら…あんな事を…あんな事を…あの若造にっ!
私には今まで、はむなちうしかしてくれなかったくせにっ!今に見てなさいっ!)

「いや…これはこれで…男と男のぶつかり合い…裸の付き合い…というものが描かれているのだろう
その世界へ一歩足を踏み入れた若者達の勇気に男たる私も拍手を送らねばならんだろう…
…ああ、茶を切らしてしまった…今度は玉露茶にしてみるか…」

他の人達の話声がどこからか聞こえてきた
僕は軽い眩暈を感じた
腰も抜けてしまったようだ
チーフとギョンビンさんが…あんな事を…
あんな風に…

…いや、その映像に衝撃を受けたというより…
むしろ僕はそれを美しいとさえ感じてしまったのだ
そして…スクリーンに映し出される二人に、僕とテジンさんの姿を重ねてしまったのだ
そんな事を考えてしまった自分に驚いて僕はしばし呆然とした…
体が次第に火照るのを感じた
息が荒くなってる自分に気づいた

「僕も…テジンさんに…あんな風に…抱かれてみたい…」

僕はそんないやらしい事を考えている自分を必死になって否定した
いや!ダメだ!
そんな事考えちゃいけない!
そんな事考える資格は僕にはない!

何度打ち消しても浮かんでくるテジンさんの顔…
額にかかる前髪
憂いを帯びた瞳
何度も口づけを交わしたあの唇
僕の頬を撫でてくれた優しい指先…

ああ…!この映画をテジンさんと二人で観ていたら…!
テジンさんを思い浮かべ、僕の唇からは吐息が洩れた

テジンさんはすごく素敵だ
僕にはない大人の色香がある
なんのとりえもない僕はきっとテジンさんには 不釣合いだろう
周りの人はきっと、あんなカタブツ男がとち狂って…
なんて笑っているんじゃないかな…

だけど、テジンさんは僕に優しい
微笑みかけてくれたり
そっと抱きしめてくれたりする
唇でなぞったり、激しく掬い取るような口づけ…
舌を軽く噛んだり、吸ったり、絡め取ったりするような…
そんな口づけを僕にしてくれる

その時のその感触が思い出された
僕は、僕の体が勝手に反応するのを抑える事ができなかった
僕は一人、僕の心と身体が静まるまで、そこに座っているほかなかった


衣装…2 ぴかろん

たまんない
どうしよう
すっかりすけべじじいになってしまった
あれ以上キスしてたら、こっちがヤバかった…

僕は平静を装って、幕から出て、さっきの椅子のところへ行った

イナがいる
膨れっ面してる

「イナ…」
「ギョンジン…どうしたんだよ」
「え?」

どき、どっか乱れてるか?

「鼻血でてるぞ」

え…

「のぼせたの?」
「あ…ああ…」

そんなに興奮してしまったのか…ヤバい…
相当ヤられてしまった!

「どんな衣装だった?」
「…衣装の話はやめてくれ…」
「なんで?」
「刺激が強すぎる…あれ、どっから持ってきたのさ」
「しげき?」
「スケスケだ!」
「ふうん」

ふうんって…反応薄いな、イナ…
まあ目の当たりにしてないからな…

「あれ、ソクがセツブンショーで着たんだって、ちょっとワキの下が破けたらしい」

なにっ!ワキが破けてただと?!
しまった!そこから指を入れてこしょこしょと…

ベチン☆

イナにデコを叩かれた

「な…なんだよ」
「今もんのすごくヤらしい顔になった!」
「…そ…」

それにしてもソクさん…よくあんな服を…

「なあなあ、ちょっと聞いてもいい?」
「…ん?」

ごにょごにょごにょ

「…」
「するもんなの?」
「…」
「俺絶対いやなんだよな」
「…」
「なんでそんな事する必要があるわけ?!」
「…気持ちいいから…」
「…」
「…」
「じゃ、お前、もし俺と%$%するとしたら…俺にそれ、してほしいわけ?」
「…お前には…いいわ」
「…?」
「…嫌がってる人にはさせられないよ、そんな事…」

っていうか、イナ、絶対下手だと思う…

「だよなぁ!テジュンったらさぁ…あーでこーでこんなこと言ってどーのこーので…」

ラブなら上手そうだな…
さっきの衣装を着せて…まず…それをしてもらって…
そしてそのあと僕がラブを…

「ギョンジン、どっか悪いんじゃねぇか?また鼻血が…」

いかんっ!どうしよう!かんぜんにすけべじじいだっ!
このままでは身が破滅してしまうっ!

「兄さんどうしたの?」

いかんっ!弟まで来たっ!

「…にいさん…」

いかんっ!弟は僕の表情に敏感なんだっ!

「…またすけべな事考えてたね…そりゃそうだね、ここへ来てからぜんっぜん…だもんね。そろそろ我慢の限界だよね」

余計なことをイナの前で言うな!

「なにが我慢の限界なの?」
「…えと…」
「なんか我慢してんの?それで鼻血出したの?」
「…そ…そうです…ねっ、にいさん」
「…うるさい…あっちいけ…」
「クフ…」
「ねえねえ、ギョンビン、なにが?なにが?」
「イナさんはまず最初に『テク』がなんなのか、調べてください。じゃ…」
「あっギョンビ〜ン…わっけわかんねぇの!…なあなあ、ところでラブどこよ」
「うっ…」
「お前…大丈夫か?鼻血とまんねぇじゃん…」
「らぶはあっちのまくのほうに…」
「ん、衣装見てくる」
「やっ…やめたほうが…」
「なんで?興味あるじゃんかぁ。じゃっ」

イナは明るく幕の方に行ってしまった
僕の鼻血はドクドク流れ出ている


恥ずかしがってちゃいけないよな…これ着て舞台やんなきゃいけないんだもん…
俺は自分に言い聞かせて鏡の前に立った

「おおっ、すんげぇ衣装」
「うわぁっイナさん!」
「かっくいーなぁそれ…」
「…え…」
「涼しそうじゃん」
「…」

さわやかだ…
イナさんったらさわやかだ…
この衣装の異常さをあまり理解してないらしい…

「ソク、これ着て舞台に出たんだって」
「…ソクさんが?…」
「んでな、ちょっと左腕あげてみ」
「え?はい」
「ここ」

こしょっ

「はへんっ」
「ここ、破けちゃったってさ。だからもういらないんだって」
「…」
「お前舞台終わったら、もらっとけば?似合うぜ」
「…似合う?!こんなの似合うってヘンですよっ!」
「なに怒ってんのさ…。それよりさぁ…ギョンジンってどっか悪いのか?」
「は?」
「さっきから鼻血ばっかり出してるんだよ、それになんか顔つきがヤらしいし…」
「…」

ぶーっ

俺は思いっきり吹き出してしまった
だって…あんなスケベなことしたおじさんが…鼻血…

くふふくふふ…

「なに笑ってんのさ、どいつもこいつも変な奴!」
「あは…ごめんなさい…くふふ…」
「ふんっ!もういいよ!」
「…イナさんって…かわいい…」

っていうか…コドモ?…

「なにっ!」
「なんか…かわいい…」
「おめーにンな事言われたくねぇっ!どーせならギョンジンに言われたい!」
「くはは…あはははは」
「…」
「あはあは…ごめんなしゃいひーひー」

イナさんは大笑いしてる俺の顔に触れた

「ばかな御曹司がな、よくこう言ってたけど、その言葉、お前に贈るよ…『その笑顔だ!』…お前さ、笑ってろよな…」

俺はイナさんを見つめて静かに微笑み、そして初めてイナさんに抱きついた
イナさんも俺をそっと抱きしめてくれた…


【47♪おまえが美しすぎて by ギョンジン】ロージーさん


オリーさんちのことわざ辞典  オリーさん

ギョンビン:君子は豹変す 切磋琢磨
ドンジュン:乾坤一擲
イナ、ミンチョル、スヒョン、その他多数:好きこそものの上手なれ
テジン&スハ:寝ている子を起こす
チョンウォン:馬鹿に苦労なし 馬鹿の高笑い

ドンジュン&ギョンビン:破竹の勢い
スヒョン&ミンチョル:負うた子に教えられ浅瀬を渡る
ミンチョル:家の乱れは女から 飼い犬に手を噛まれる

イナ編
口づけ足りて礼節を知る
キス好きは淫乱の始まり
いつまでもあると思うなテジュンとソク


◇あたらしいなかま3  妄想省家政婦mayoさん

ホールの2階では正面の撮影カメラはジホ、ウォニとミンギはモニターを覗いている
時たまジホはミンギにカメラの操作を教えウォニはミンギに編集の際の注意などを教えていた
ソヌはジホの近くへ座り2杯目のエスプレッソを飲んでいる

「監督..ジウン監督と昵懇なんですよね..」
「ぅん..そう..奴は結構アウトローでね」
「あ、聞きました..」
「そう?..大学をやめて5ヶ月間の無銭ヨーロッパ旅行に出た」
「パリに2ヶ月滞在してたって」
「ぅん..その時100本あまりの仏映画を鑑賞したんだ」
「そんなに..」
「だから少なからず作品に影響してるし..意識しているようだね..
 ジウンの仲間で香港ノワール、アクションに心酔したのがリュ・スンワン..」
「拳が泣く..の監督ですよね..」
「そう..ソヌ君の映画と興行競ったね..」
「はい...負けましたけど..」
「でもジウンはソヌ君に惚れ込んだね..」
「監督〜ジウン監督ね..ソヌ先輩の背中や足..じぃぃ〜と見てたよぉー..」
「ぷっ#そう..彼はじぃぃっと観察するのが得意だから..」
「先輩や監督は肌がつるっつるですよね..」
「ミンギ君..」
「はい..」
「理事がつっるつるってことはBHCのメンバーもつるっつる..」
「そっかぁ..ソヌ先輩もすね毛..全然ないもん...ね、先輩!」

ソヌがふっ#っと笑い..ミンギに頷き..ジホへ視線を向けた..
ジホはソヌと目が合うと眉を上げて笑った..

「ミンギ君..」
「はい?」
「理事はね..最近フカヒレをせっせと食べてる..」
「フカヒレですかぁ?..何故?」
「ミンギ君...僕やソヌ君はもう”じじい”って呼ばれる」
「俺もだじぃょぉぉー」
「お、そうだそうだ...ウォニも理事と同じ歳だったな」
「ふぃーん...>o<」
「えっ...ウォニさん..そうなんだ...そういえば..先輩も..」
「アジョッシ#と言われた..」
「ぷはは..ソヌ君..そうだったね...おじさんだ..」
「ふん!嫌な思い出だ..この僕にアジョッシなんて..」

[[[^o^ ぷっはっはぁー ^o^]]]

ジホ・ウォニ・ミンギの3人はソヌが口を曲げて毒づくのを見て高々と笑った

「でもその..”じじい”がフカヒレと何か関係あるんですか?監督..」
「ミンギ君..フカヒレの成分はコンドロイチン硫酸..」
「はぁ..」
「たっぷりのコラーゲンとタンパク質が含まれてるんだ..老化防止..そしてお肌つるつるを保つ..」
「理事がジウン監督に..フカヒレ勧めてた..」
「ぷはは...ソヌ君...奴は僕らより6つも”じじい”だからさ..」
「でも..体質もありますけどね..」

ジホとソヌはジウン監督がお肌つるつる#..を思い浮かべて笑った..
ミンギが2人の顔を見てふともらした..

「僕...この間フカヒレの姿煮食べた..姿煮ラーメンも食べた..」

[[[@o@ なにぃぃー## @o@!!]]] 
ソヌ・ジホ・ウォニのじじい3人は叫んだ..

「ミンギ!いつ!!」

ソヌの詰問にミンギはおどおどと答えた..

「ぉ..ぁ..ぁの..ヌナにもらった..」
「へっ?..睨み勝ちの..あの彼女?..ミンギ君」
「ぅん...ヌナの知り合いが世界有数のフカヒレの産地にいるって..」
「ミンギ君..それって...日本?」
「はい..ヌナはしょっちゅう食べてるよ..安く手に入るから..」
「ミンギ!何故僕に黙って食べた!」
「だって..先輩理事と一緒にプロモ行って帰ってこないから..」
「だから一人で食べたのかっ!」
「ぅん..ごめんなさい..」

『ふふん..それで肌が滑らかな訳か..』

ジホは闇夜の蝋燭のように白い手を思い出してほくそ笑んだ..

「ミンギ君...彼女に僕ら”じじい”の為にフカヒレ手配するように言っといて..いいね」
「あ...はい…」

ミンギはジホの有無を言わせない口調とソヌの眼力とウォニの迫力に圧倒され
歳はとりたくないなぁ..とちょっと思っていた..

「また..ヌナに怒られるぅ..」

ミンギは自分のちょっとおしゃべりな口を恨めしく思っっていた..


チア・ボーイズ  足バンさん

私だ。ヨソルだ
喋るのは苦手だが独白ならばけっこう”お話上手”だ

いよいよMUSAと男組のチアボーイズが始まる
私は今回は袖にてサポートに回る
チン殿は「疲れたわい、ちょいと抜ける」と言ってサウナに行ってしまった

舞台裏のずっと奥では出番を待つドンジュン兄さんが同じ服装の男と
何やらいちゃいちゃと舞の練習をしている
何を考えてるやらさっぱりわからんが、思ったことはとことんやり抜くやつだ
きっとそれなりの成果を出すんだろう
見るのが恐いが

袖には上手下手に別れて既にMUSAと男組の連中が控えている
残りは別の場所に待機しているはずだ

MUSAは全員白の、男組は黒の、膝丈のスパッツというもの1枚で裸足だ

僕の横にはジョン将軍が立っている
階段落ちではさっぱり姿を見せなかったが今度は間に合ったようだ
彼は白いぴったりしたズボンに白い布製ブーツ
肩が三角に張り出た純白の上着を裸の上に直接はおり、赤いはちまきを巻いている
大将という感じだ

舞台の反対側では同じいでたちの黒バージョンのドンゴン殿が立っている
こうして立っておればなかなかの2人なのだが…やっていることは…

「はーい!隊長〜!がんばろーねぇ」
「ジョンもがんば〜!」

アホか…
まぁもう何も言うまい…祭はひと時の夢…
いつもと違う自分に酔うのもまた明日への糧となろう

ドンゴン殿の横ではその弟殿が裸足の白短パンいっちょで腕を組んで兄を睨んでいる
弟はどこも苦労することになっているんだな。ふふん

さて
いよいよだ
黒い舞台に何本ものピンスポットが落ちている
中央前部には50~60センチほどの長方形の物体が幾枚か重ねられて置いてある

両袖から男たちが音もなく進み3列に整列する
客席から見れば真ん中で白と黒に別れている
ひとりの掛け声で、男たちは一斉に裸足の足を踏みならす
タップの要領だが、鍛えられた男たちの力強い音は会場全体に低く響き渡る
そう、この出し物には一切音楽がないのだ

どんっどどんっどんっどどんっ

男たちは少しずつ移動しながらフォーメィションを変えていく
そのうちに動きを早めるとMUSAと男組が交わり
スポットの下には白と黒が鮮やかに交差する

どどどどど、どどんっ

ひとりを先頭にして三角形のフォーメィションが組まれると
両側から大将が出る
私は将軍に太刀を渡した

「よしっ!行ってくるぞ!ヨソル!」

本番にしてやっと正気を取り戻したかな?
白黒のふたりの大将は舞台の両サイドに仁王立ちになり
大太刀を器用に頭の上で八の字に振り回す
まぁ同じリズムであの太刀を回し続けるのは力だけでは無理だろう
なんだかんだ言っても大将同士、迫力だ

どんどんどんどんっ どんどんどんどんっ

ここで後ろの男たちが隠し持っていた発光するヨーヨーを取り出す
当初はボンボンの予定だったが、いきなりアメリカンに過ぎるということでこれになった
やつらもこの扱いには苦労したようだが
練習の末のその手さばきは素晴らしいリズムを奏でている

舞台上に小さな高速のひかりと大将ふたりの太刀の鈍いひかりとが舞う

足音がひときわ大きくなると舞台最後列中央あたりの天井から
幾本かの縄が降りてきて1本にひとりずつ男がするりとつたい降り、
お互いの高さを意識して空中に静止する

同時に向こうの袖からウォンビンがバク転で出てきて
中央の四角い物体の手前でぴたりと止まる
なんとおいしい役だ

男たちの足音が突然やみ、すべてのひかりが静止する
そして大将ふたりは太刀の両端を持ちかかげ、また仁王立ちとなる

ウォンビンはその四角いものを一枚ずつ手にして
先ほど降りてきた男たちにびゅんと投げる
9枚の四角辺をを見る見る間に正確な場所に投げて行く
投げ終わりその場にウォンビンが片膝をついた瞬間、
9人の男はその四角辺を空中で前に差し出し、1枚の大きな四角辺に組み立てる

合わされたものは巨大な太極旗となった

あれはドンゴン殿がうちの兄貴にコマされた勢いで編んだものだとか
それを聞いた時は具合が悪くなったが
きっかけがどうであろうとその根性は恐れ入る

「「 やあっっっ! 」」

大きな掛け声とともに舞台上の男たちが巨大な人間ピラミッドを作り上げる
白と黒のその山の頂はちょうど太極旗の底辺辺りに位置する

「「 はあっっっ! 」」

大将ふたりの大きな掛け声がかかると
ウォンビンは後ろに向き、筋肉をしならせてそのピラミッドを駆け上る

「「 やあっっっ! 」」

全員の掛け声とともにウォンビンがその頂でポーズを決める
彼は太極旗の真ん中で顔を上げ未来を見据える
完結っ!
そして暗転

会場から大きな歓声と割れんばかりの拍手がわき起こった
ふぅ…終わった
再び舞台が明るくなり、すでに隊列を作っていた男たちは一斉に頭を下げ左右にはける
最後に残った隊長殿、ウォンビン,将軍がお辞儀をしこちらに…
え?隊長は向こうにはけるんじゃなかったか?

袖にもつれるように入ってきた隊長殿と将軍はすぐにヒシと抱き合った

「ひーん!やったよぉドン〜」
「がんばったねー!ジョン〜」
「ちょっと兄さん!また何やってるんだ!離れろよ!」
「だって頑張ったんだもん〜」
「まったく!みっともない!」

私はウォンビンの肩をぽんと叩きまぁまぁ堪えてという意味の視線を送った
が、彼は裸の腰に手を当てて言った

「君にこんな情けない僕の気持がわかるもんかっ!」

しかし次の瞬間私の左腕にぶら下がったドンジュン兄貴を見て顔を引きつらせた

「すっごくよかったよ!ね、ちょっとそのお腹触ってみていい?」
「やっ!やめてくださいよっ!」
「いいじゃん!新作の映画も観にいくからぁ」
「やっ!だめ!やめて!きゃー」

だから…兄貴というものに何言っても無駄だと言ってるのに…


セツブンショー8  ぴかろん

この衣装は二番目に恥ずかしいものだ
スヒョクが僕の電撃で失神してくれて助かった…

白いタイツ…キンキラの上着、パフスリーブ、ヒラヒラの襟元、かぼちゃのぱんつ、王冠…
はっずかしい!
まともな男が着る服ではない!
この服の着付けをしていたら、どこぞの御曹司だと名乗るヘンな男が

「あっそれ僕のだぁぁ」

と叫んで、背の高い西洋人にしか見えない男に連れて行かれた
お前とかわってやりたい!連れて行くなよ!

「早くしなしゃいよ!アタクチの一番しゅきな衣装なんじゃからねっ!」
「…あの…先生、今回はナレーションは…」
「馬鹿野郎!甘えてんじゃねぇよ!」
「…」

というわけで、また今度も僕のパフォーマンスで乗り切らねばならなくなった…
どうしましょうか…
こんなふざけた衣装で…
かぼちゃのぱんつでは動きが見えにくい…
ならばいっそのこと…

「ソクさん、出番です!」

ああ!スヒョクにキスしたいのにっ!君は眠りの森の美女のように失神している…
この回が終わったら僕の甘い口付けで、君を眠りから呼び覚まそう…

え?白雪姫でもいいじゃないかって?!

ばかな!

あんなTゾーンの化粧の崩れた「親指姫だろう?!」と思えるような「小白雪姫」を見た後に
僕のかわいいスヒョクを「白雪姫」に譬えるなんて…できっこないだろう?!ええっ?!
発言を取り消したまえ!

「ソクさ〜ん!」
「あいあ〜い」

…さっきからきっちりと袖のあたりを仕切っているオールインのチュニルという男が指示を出す…

スヒョク、行ってくるよ…

僕は音楽に乗って舞台に出た
この衣装にふさわしからぬ音楽
それはムーディなジャズだった

サキソフォンの音が官能に呼びかける
なにをどうやってパフォーマれというのかあの妖怪め!
僕はやけになった
うんと色っぽくしてやる
かぼちゃぱんつとは無縁のお色気踊りをしてやる!

舞台中央で僕は客席に背を向け、右手を高く上げ、手首の先をゆっくりと回した
と同時に左足を右足後ろにクロスさせ、ゆっくりと客席に向けてターン
客席を上目づかいで嘗め回すように見る
そして頭を回転させながら、客に向かって顎を突き出し、見下ろすような角度に保つ

高く上げていた右手を顔をなでながら降ろし、同時に左手はわき腹から脇下を弄りながら、顔をなで上げる
目は瞑って恍惚の表情

ああ…スヒョクが失神していてくれてよかった…

そのまま左手で髪をかきあげ、右手は首、胸、腹を通って…邪魔なかぼちゃぱんつの中央に置く
股間に手をあてたら顔を左腕側に寄せ、口は半開き、目は閉じたまま、そうして腰を、前に突き出す

ああいやらしい…自分でやっててもいやらしい… だがかぼちゃぱんつでそのいやらしさは半減しているはずだ…フフン

眉根を寄せて、サックス(「サ」だ!「サ」)の音に合わせながら腰の突きを繰り返す
半開きの口から、色っぽく「あ…あ…」などと声を出し、その気になって突きまくる
僕の脳裏にはスヒョクの喘ぐ顔が浮かんでいる
この時もし、僕の股間に異変が起ころうとも、かぼちゃぱんつがカバーしてくれるのでありがたい
だがスヒョクが失神してくれていて本当によかった…
とても見せられない
見たらまた失神するだろうけれど…

このまんま「突き」だけで終わろうとしていたら、無理矢理付けられたインカムに妖怪の声が響いた

「豆は!」

はっ…豆を撒かなくてはいけなかったんだ…

「もうすぐ曲が変わるからその時撒くんだ!いいな!スケベ男!」



サキソフォンの音がクライマックスを迎えようとしていたので、僕の「突き」もクライマックスの動きに変える
大きく腰をグラインド
そのグラインドを段々早くする
サキソフォンが高音を長く伸ばし、そして素早い音階を切り刻むのに合わせて、僕はグラインドからまた「突き」へと動きを変えて
腰がどうにかなりそうなぐらい前後に振った

ああもう…今夜あたりスヒョクとと思っていたのに、こんなに腰を酷使しては…今夜は無理だろう…
それにしてもスヒョクが失神していてくれてほんとうに、ほんとうによかった

僕の「突き」とサキソフォンの音が同時に止み、僕は頭に乗せていた左手をがっくり下に落とした

ドラムがビートを刻み、曲調ががらりと変わる
ディスコサウンドだ…
懐かしいなぁ…昔流行ってたなぁ…

音楽にあわせ、自然に体が動く
客席に左肩を向け、顔も添える
左腕を真っ直ぐ上げて客席の一点を指差す

右手は腰に当て、腰を揺らしながら舞台の前に進み出る
顔は顰めて口は半開き…

「…あぁ…あぁ…」

と自分でリズムを取りながら、僕はステップを踏む
ある程度前まで来たら両腕を顔の辺りにあげ、グルグルと腕を回してさらに高くあげる
そして頭上に手を伸ばし、その場でクルクル回る

「豆撒けよ馬鹿野郎!」

妖怪の声にハッとし、僕は床においてあった豆の枡を取る
そして今度は右肩を客席に向け、右手を伸ばすと同時に豆を撒いた

その動きを繰り返し、僕は豆を撒き終え、もう一度頭上で腕をクルクルさせて、リズムを取りながら自分もクルクル回った
音楽の終わりと同時に、空になった豆の枡を高く突き上げ、顔も天井に向ける
決まった
暗転…

すぐさま舞台をはけ、失神しているスヒョクを捜す

いない…
スヒョク!王子様が来たのにどこよ!

「ソクさん…あんまりです…」

えっ!

「あんな…あんな…まるで…ごにょごにょ…。恥ずかしいです…」
「ひっ姫!起きてたのかっ!なんで僕のキスを待たずに起きたのかっ!」

僕は気が動転して訳のわからないことを喚いた

「ソクさん…一体なにを考えてあんな動きを…」
「…お前の事…」
「…え…」
「…お前の顔が…頭に浮かんで…その…激しくなっちゃってその…」
「…」
「あっ…スヒョク!」
「早くその服脱いでくださいよっ!」
「あっ待ってよスヒョク!」

僕は袖の奥の幕辺りに行こうとしていたスヒョクを捕まえて口付けした
そこら辺にBHCの人たちが同じ顔で集まっていた…
口付けをするとスヒョクはいくらか落ち着きを取り戻した
小さな声で「好きだよ」というと「俺も…」という声が返ってきた…ああ…シアワセ…

「スヒョク、あの衣装持ってきてヒーヒー」
「はい…待っててね…」
「あ、待って」
「ん?何?ソクさ…」

へへ…も一度キスしちゃったへへ
スヒョクは頬を染めて次の衣装を取りに行った
この隙に衣装を脱ごう

BHCの人たちが僕に注目している

「ん?…何見てんの…」
「凄い衣装ですね…恥ずかしくないですか?」
「一番恥ずかしいの、終わったから…」

そう答えた僕の目に、イナの顔が飛び込んできた

「お…イナ…なんだか久しぶりだな…元気か?」

イナは答えない
俯いている
どうしたんだろう
僕はイナに声をかけた
するとイナはいきなり僕の首に巻きつき、キスをした

たいへんっ
スヒョクに見つかるっ!

僕はイナを押し戻そうとしたのだが、衣装を脱ぎかけていたので身動きが取れない

ミンチョル君が前髪を乱しながら歯を食いしばってイナを引き剥がそうと、頑張ってくれている
ほかの連中も僕とイナを引き離そうと必死だ

突然イナの首に誰かの腕が巻きついた

「やめてください!何するんですか!俺のソクさんに何するんですかっいい加減にしてください!唇に地雷しかけますよっ!」

スヒョクが怒り狂ってイナに殴りかかろうとしていたので僕はスヒョクを抱きしめて、犬に噛まれただけだから…となだめた
イナは寂しげな目線を送ってきたが、直後にミンチョル君に頭を三発殴られていた
僕は『自業自得』という言葉を思い浮かべながら、泣きじゃくるスヒョクの背中を擦り、顎を掴んでキスしまくった

ああ
可愛い…
『俺のソクさん』だって…でへへへ…
ああ
今夜にでも決めたかったのに…
腰が…痛いよ…くそっ…

「そくっさんっひっくひっく…」
「なぁに?」
「いつもっあんなにっはげしいんですかっ?」
「…え…」
「おれっ…自信がっありましぇんっぐすっぐすっ」

えっと…な、なんの自信かな?

「おれっ…辞退しますっ…」

えっと…なにを辞退?!

「俺はっ、爆弾処理班にしてくださいっ!」
「は?!」
「大砲はっいやですっ!」
「…スヒョク…意味が…意味がわかんないっ…え?爆弾処理班って?大砲って?」
「ひっくひっく…ソクさんの爆弾処理はできますけどっ…ソクさんの弾を込める大砲にはっなれませんっ」
「…おいっ!」
「絶対無理ですうウウわぁぁんわぁぁん」

…スヒョク…大丈夫だよ…そんなに激しくないからさぁ…

僕は天を仰いで大きなため息をついた…


◇bittersweet-guest  妄想省家政婦mayoさん

俺は懐も寒いし手も寂しかった..
テスはアシストで懐にいない..ぽちゃぽちゃの暖かい手がない..つまらん..
闇夜も隣にいない..手をにぎにぎ出来ない..足もすりすりしてくれない..つまらん..
いない..いない..ない..ない..でちと寒かった..
ホールのドアを開け入ってきた3人組を見て俺は背筋が寒くなった..

「何故あいつ等が?何故こんな所まで?..」

俺はとにかく闇夜に通信した..
舞台袖のテソンのそばにいる闇夜のマイクに初めにモールス信号を叩いた..
すぐに低音の簡潔な闇夜の声がマイクに聞こえてきた..

「何..」
「大変な客が来た..」
「誰..」
「例の3人組だ..」
「3人..?」
「la dolce vita…」
「ぉ、オモ..」
「どうする..」
「すぐ戻る..」

ちぇみから最初モールスで信号が来た..
丁度包丁ショーの衣装のチャックをして周りに人はいなかった..
袖から少し離れマイクに返事をした..
大変な客がきた..3人組..…la dolce vita…繋がる人物は奴らしかいない..
テソンにすぐ戻るから..と言い韋駄天のごとく戻った..
ホールに戻る前に2階のミンギを入り口に呼んだ..

「何..ヌナ..」
「3人組が来た..」
「えっ!?何故..」
「わからない..とにかく身を乗り出さないこと」
「ぅん..ぁ..ヌナ..ぁの..」
「何..また何か..べちゃくったの?!」
「フカヒレ..」
「ぁぃぅー>_<…で?..」
「ぅん..ここのじじい3人が..」
「ったく...アラッソ..」
「あ、ヌナ」
「何..」
「気をつけてね^_^」

ミンギにぐー#のフリだけして2階から降りた..

闇夜はホールの別のドアから入り俺のそばに戻ってきた..
息も切らさずに戻ってきた闇夜の顔はまた真っ青になっていた..
俺は隣の闇夜の手をぎゅっ#ぎゅっ#っと握った..
氷のような手が少し温かくなると闇夜は俺の手を握り返した..凄い力だ..
俺がビックリして顔を覗くと闇夜は3人組を凝視している..
そして闇夜はボソッ..っとつぶやいた..

「オットケ…あいつら…何しに来た..」

俺は闇夜の声を聞いてしまった...怖ぇーよ..
闇夜が3人のいる方へ歩き出した..
俺は闇夜の腕を強く引っぱった..

「ぉぃ!何するつもりだっ!」
「何しに来たか..聞いてくる..」
「馬鹿っ!...やめろ...危険だ..」
「大丈夫..奴らには睨み勝ちしてるっ!」
「へっ?@o@」

俺があんぐりしていると闇夜はくすっと笑った..

「どういう事だ?」
「いちいち説明してる暇ない..行ってくる..」
「ぉ..ぉぉ...ぉぃ~~~~って..」

闇夜はずんずん歩いて3人組の前に立った..
俺は背を向けたままなるべく闇夜に近づいた..
ったく…怖い奴だ..3人組ではないっ!..闇夜だっ!

闇夜が la dorce vita...厳密に言えば..
bittersweet life の3人組..
カン社長、ペク・デシク、ムン・ソクの正面に立った..

俺は前を向いたまま..すりぃ~すりぃ~と闇夜の背中に近づく..
闇夜の後ろ腰にあるヒップバックが俺の腰下にあたった..
はっきり言って..闇夜のこのバック..邪魔なわけさ..
んまぁ..腰を抱くには造作もないからいいんだが..^^;;

闇夜は俺が後ろに来たのがわかったのか
ちょいと腰をくぃっ#とひねった..
ヒップバックがぽんっ#っと軽く俺の腰に当たった
ぁぅっ*...ちょっとやらしいぞ...その腰..
ぉぃっ*...つい手が伸びちまうぢゃないかっ#
俺はちと..いや...かなりにやけた...むふふ..
いかんいかん..
俺は片手で自分の顔を撫でカリスマの顔に戻った..

んなことより...3人組だ..
闇夜が言った..睨み勝ち..って何のことだ?
こやつら3人をお前は睨み付けたってことか?
ったく..お前に怖いものはないのかっ!

闇夜は影のある硬派な奴...口数の少ない奴..に弱い..
おまけに..好みが渋いオヤジ☆ときてる..
ソヌだろ..それに..ほれ..もうひとり..いるだろ..
俺だっ##...コホンケホン..

ペクとムンソクは...容姿が圏外だろう..
まさか...カンはないだろな..じじい過ぎる..
ん...待て...カンのじじいの好みは..
…誰が何と言っても物怖じしない女...若い女..

闇夜と3人組の沈黙の間..
俺の頭ん中は状況が解らないためか思考がごちゃごちゃしていた..
闇夜が口を開くより先にカンが口を開いた..

正面に立ったとき3人の印象が前と違ってちょっと拍子抜けした..
カン社長は相変わらず眼光鋭く光っているが口元が笑っている..
ペクは口を横ににぃーっとしてにたにた笑い..
引っ込んだ目が妙にかわいく見える..
ちょっと前屈みで首をひょい#っと前に出す..
ソクはいつものむさ苦しいラーメン頭に黒いコート..
ラーメン頭が所々メッシュになっていた..
むほほ...と鼻にシワを寄せて笑っている..

私がちょっと首をかしげたときカン社長が口を開いた

「その節は..ふふ..みごとな睨みだった」
「あ、いえ..」
「アガッシ..アガッシぃ〜(お嬢さん)」

ペクが私に握手の手を差し出した時、カン社長がその手をぴしっ#と叩いた..
ペクは下唇を”ん”と出し..亀のように首を引っ込めた..
ソクがそんなペクに向かって「お?お?っ」と2・3発パンチを出す..
カン社長はちょっと斜め後ろを振り返り無言でソクを威嚇する..
手を引っ込め腕を脇に下げコートの前を合わせおとなしくなるソク..

私は笑いをこらえるのに必死だったがカン社長に話しかけた..

「今日は何か…まさかあの2人を連れ戻しに来ましたか?」
「ん..いや..あの2人は...あきらめる」
「ふっ..そうですか..」
「アガッシが必死で守った2人だからね..もう手出しはせん..」
「さすが社長ですね..懸命な選択..感謝します..」

カン社長はふふん#と笑い私を見た..
私が目の端でちょっと笑うとカン社長は目を逸らす..
結構可愛いとこあるじゃん..このオヤジ..あっはは..

「うちの店もいろいろ勉強しようと思ってね..」
「BSHCですか..」
「そう...実際ソヌとミンギがいないと非常に厳しい..」
「そうですか?」
「??…」
「結構イケルと思いますよ..BSHCは..」
「そう?」
「はい..実に個性的なのばかり揃ってます..歌手もいる..」
「ふっほほ..俺、俺..アガッシィ〜コマプタ〜」

ペクは自分を指さして嬉しそうに肩を震わせた..
カン社長は苦笑した..

「ん..まぁ..ペクは唄えるし...テグも歌手だから..」
「渋さの中のかわいらしさで勝負しては?」
「んー..そういう手もあるか..」
「で、たまに硬派なショーをする...どうです?」
「おぉ..そうか..」

カン社長はちょっと嬉しそうに顔をくしゃくしゃにした..
ちょろいオヤジだ..

「そろそろBHCのショー始まりますから..観ていってください..」
「ん...ぁ...アガッシの名前聞いてなかったんだが..」
「オモ...調べてなかったんですか..」
「ん..まぁ...部下がこいつ等だから..」
「ぷっ...まよです..」
「「ぉ、ぉ...おまよっと..」」

ペクとソクはぶつぶつ繰り返していた
私は3人に挨拶をしてその場を離れ、隅の壁に移動した
隣に戻ってきたちぇみは@@の顔で私を見た..

俺はホントにテソンが気の毒になってきた..
大丈夫なのか?んな闇夜で..


◇悪魔と小悪魔6  妄想省家政婦mayoさん

bittersweet guest の3人組と話した後ちぇみが隣に並んだ
後ろからぐぅー★が3発きた..

「痛っ..3つかよぉ..」
「ちゃんと報告しろっ..睨み勝ちのこと..」
「ごめん..」
「今まで無事だからよかったものの..」
「はい..」
「何かあったらテソンが哀しむ..」
「ぅぅーん...ちぇみは?」
「大馬鹿者..聞くまでもないっ..」
「ぁぅ..」

「闇夜..」
「ん..?」
「奴らの倶楽部はBSHCなのか?」
「ぅん..そう..」
「ぷっ..お前..店に出入りしてカンをコマすなよ..」
「ぷひ..」
「お前ならやりかねん..」
「わかります?」
「俺もコマされたクチだからな..」
「ぷひひ..そうでした..」
「ったぐ..」
「ちょっと可愛いとこあるじゃん..3人とも..」
「あのな..カンぐらいの歳になると忍耐力が落ちる..」
「ぷっ..確かに..」
「ほどほどにしておけ..テソンが危険だ..」
「怖いこと言わないでよぉー」
「最悪の場合だっ..」
「いいもん...彼氏は蜘蛛ですって言うから..」
「ぉ...ぉぉ〜〜っと!」
「んー...ちぇみは負けないっしょ?ん?..」
「ぅぅ〜ん....お前なぁ..」
「テソンも守れる..」
「おいっ!」
「でもな..テスシが可哀想だ..」
「そうだっ!」
「やっぱ…やめよ..」
「ぉぉ!そうしてくれぃっ!」
「ぷひひ..」

闇夜がおちゃらけて来ると妙にホロリとくる
急に黙りこくった闇夜の手をぎゅっ#と握る..
まただ...手は氷のようだ..
またぎゅっ#ぎゅっ#と握ってから
俺は眉を寄せて闇夜の肩を回して聞いた..

「お前...ほんとに大丈夫なのか..」

闇夜は俺の目をじっと見た..

「ん?どうなんだ..」
「…大丈夫..」
「ほんとだな..」

俺は念を押した...闇夜は黙って頷いた..

「そろそろ舞台袖に戻るね..」
「ん..」
「ちぇみ..」
「何だ..」
「頷き顔..して」
「ん..」

俺はいつものように目元口元に笑みを浮かべゆっくり瞬きをしながら頷く..
闇夜は満足そうに笑ってから歩き出し...すぐ戻ってきた..
俺に足スリスリをして...ぷぷっ#っと笑うと舞台袖に戻った..


セツブンショー9  ぴかろん

さっき腰を振りすぎた
疲れた
その上スヒョクに拒絶されそうになった
しつこくちゅうをしたらようやく反応してくれるようになった
もうダメかと思ったが、諦めないでよかった
今度は普通(に近い)の『服装』なのでで、パフォーマンスも大人しくする
大人しくするんだよ!
大人しくするんだ!
僕は自分の脳に命令を下した
そうしないと無意識に動き出すかもしれないからだ…

スヒョクはまだ疑いの目で僕を見ている
ニッと笑っても俯いてしまう
もう一度キスをする
キスには…応えるフフ

今度の衣装はスポーティーカジュアルなもの…と聞いたのだが…パンツの裾はブーツイン
まるで田舎のおっさんだ…
上はポロシャツなのだ
珍しいだろう
アンドレしぇんしぇのデザインしたポロシャツだぞ!
ボーダーだぞ!
普通だろ!

でもな、色がすごいぞ
上から解説するとだな

蛍光黄緑
真紫
蛍光黄色
アクアブルー
蛍光ピンク

蛍光オレンジ
深緑…

どういうセンスだ
どういうコンセプトだ
そしてどこがスポーティーなんだ…

ちなみにパンツは白と黒のギンガムチェックだ
着ていて目がチカチカする
しかも、このポロシャツ、背中の部分はデザインが違う
前のボーダーで使った色を、パッチワーク風に配置している

なんだかエイリアンになった気分である
酔いそうだ…

スヒョク、キスしてくれぇっ

「俺、近寄れません…頭がクラクラしてきます…」
「じゃあ目を瞑ってて」
「はい…」

ああ…素直だ…

ちゅ…ちゅむちゅむちゅちゅちゅうううむぅぅぅ…

ああ…おいしい…

「行ってくるね」
「…はい」

目を閉じているスヒョクをその場に残し、袖に立つ僕に、またあのチュニルという男が指示を出す

「貴方に言い忘れたことがあります」
「何ですか?」
「二つ前のショーのとき、最後に盃を蹴飛ばしたでしょう…」
「はい…」
「おかげで舞台はびしょ濡れ…我々オールインのメンバーの円舞が失敗するところでした」
「…すみません…」
「でもあの赤い魔女の赤いドレスがぞうきん代わりになり、事なきを得たのです」
「…ご迷惑を…おかけしました…」
「一応ご報告しなくてはと思いましてね」
「今後気をつけます」
「さ、出て」
「…は・はい…」

僕は舞台に出た
思いっきり気持ち悪い配色のスポーティーカジュアルルックでどうパフォーマンスしようか…

さっきのように色っぽいのはもうダメだ…
今度はさわやか路線で行くのだ!

僕は舞台中央に立つ
左手の豆の枡を腰にあて、右手を口元にあて、足を肩幅に開いて、体を前傾させながら

「お〜い!豆まきの時間だよぉ〜!」

と叫ぶ
そして右手でおいでおいでをしながら、舞台で円を描くように走り回る
だんだんとスキップに変え、豆を撒き散らしながら動く
真ん中に戻って右耳に手をあてて、人の声を聞くまね
左耳に手をあて、おなじポーズ
もう一度スキップしながらさっきとぎゃく周りにまわり、右手を高く上げて豆をさぁぁっ
その繰り返し…
笑顔を絶やさない
まるで体操のお兄さんになったように楽しげに…

そして舞台中央で客に背を向け豆の枡を下におき、客席に向かってバク転三回!
決まったところでターンして片膝ついて両手を広げてポーズ

拍手喝采ニコニコニコ

大きく両手をふりながら、右へサイドステップ
右端に来て右方のお客にお辞儀
大きくターンを繰り返しながら左端まで進み、左方のお客にお辞儀
そして、側転バク転バク宙を決めながら舞台中央に戻りそこでタップ少々…
タップを決めたらモデル歩きで舞台の前の端まで来てお客にお辞儀
ついでに投げキッスいっぱい、笑顔もいっぱい

豆の枡を取って、残りの豆を客に向かって撒く
そして大きく両手を振りながら袖に引っ込む

はあはあはあ…
さわやかだったろう?

「早く脱いでください!」

ん?
スヒョクがなんとなくよそよそしい

「どした?面白くなかった?」
「いえ…」
「じゃどしてそんな冷たいの?キスは?」
「…色気なかったもん…」

スヒョクが呟くように言った

何?お色気かましたほうがよかったの?!

「キスしたくならないもん…」

そっそんな…スヒョク…

「…なぁんちゃって…うそですよ…ちゅ」

はへはへ〜ん

こんな軽いチュウでも、スヒョクからのチュウだとへへん…蕩けちゃう〜…

「着替えよう、着付が大変だしへへん」

蕩けながら僕はスヒョクに言った
スヒョクはシャツを脱いだ
それを見て僕も慌てて衣装を脱いだ
スヒョクが着付を始める前に!

僕はスヒョクを抱きしめた
間に合ったぁへへん
そして言った

「今度はお前と二人で舞台だよ。僕に何もかも任せて…僕が全部リードするからね」
「…はい…」
「怖がらなくていいからね…」
「…はい…」
「いま言ったセリフ、近いうちにもう一度言うからね」
「…へ?」

ベッドで

「きひひひ〜ん」
べちん☆

スヒョクの平手が頬に当たる
でも痛くはない
だってゆっくりだったもん

スヒョクの腕をとり、手のひらに口付けするとスヒョクの顔が歪む
手のひらから手首、それから肘、二の腕、脇の近く、肩、首筋、耳の下、耳、目尻、瞼、眉毛、おでこ、鼻筋
そして顎に行って喉仏に行って鎖骨に行ってスヒョクの顔を見上げるヒヒヒ

顔を顰めて吐息を堪えている
ああ色っぽい〜

もっと下に下がりたいけど、今はマズいので我慢して唇に吸い付く
ゆっくりと粘っこく吸い付く
スヒョクの吐息が漏れる
僕の背中に回した指に力が入る

ああ…スヒョク…愛してる…

「ちょぉっとぉ用意できたのぉぉ?」

遠くから妖怪のうなり声が聞こえてきたので僕は音を立てながらスヒョクの唇をねっとりと離した
震えるスヒョクの唇がセクシーだ

「後でね…」
「…ぜったいですよ…」

おうっそんな答えがでるなんてっ
僕は緩みそうな口元を、咳払いで誤魔化して衣装を身につけ始めた…


ハン・テジュン取扱責任者資格認定試験(追試) ぴかろん

ハン・テジュン取扱責任者資格試験(追試)

締切り後に受験希望者1名が出たため追試

問題1 ハン・テジュンとともにトイレに入るとどうなりますか?

受験者B その時は僕以外にもう一人いると思うので、三人でそれぞれの出方を見ながら攻撃及び防御、場所の確保
Iの唇の確保に努め、三者とも満足できる状態に持っていくよう努力します

問題2 ハン・テジュンが貴方の過ちを問い詰めた時、どのように対処しますか?

受験者B 即、謝る。でも許してくれないと思うので「Iのためだ」「Iを失ってもいいのか」「Iは貴方を愛している」と説得し続け
ハン・テジュンの心を解きほぐし、僕の過ちからIの過ちへと目先を変えさせます

問題3 ハン・テジュンが貴方以外の人と何かをしていたらどうしますか?

受験者B 観察します。(実際に経験済み)そのハン・テジュンの方法と僕の方法のどちらが効果的かを確かめるべく、行動を起こしますが
僕は『最後まで』(対・雄)の経験は皆無なので、よく考えて行動したいと思います(過去の場合…断念?危険回避?しました)

  問題4 ハン・テジュンを慕う貴方より若い人がいて、ハン・テジュンもまんざらではなさそうです。貴方はどうしますか?

受験者B たまにはハン・テジュンも浮気をしてみるべきだと思うので、大いに煽ります。ハン・テジュンをその気にさせ、コトに至るように仕向け
その間にIを慰めて自分をアピールします。ちょっと卑怯でしょうか?
でも、ハン・テジュンにとっても気分転換、ストレス解消となる事は火を見るよりも明らかです。そして僕にとっても、またとない、二度とないチャンスとなりますので
両者とも利益を得る事ができ、有効な手段といえましょう

問題5 「問題4」の若者が貴方より強い場合はどうしますか?または、若者がハン・テジュンの望む事を何でも叶えられる人ならばどうしますか?

受験者B 僕より強い?(フフン)なかなかそういう御仁はいらっしゃらないと存じますが、もし仮におられるならば
ぜひハン・テジュンをお姫様抱っこして寝所に連れて行ってはいかがでしょうか
望みを叶えて差し上げればそりゃもう夢心地ではないでしょうか…。氏はIの嫌悪する(ピピー)をご希望ですから…。是非…。

え?僕がその若者に勝ったら?勝負しないもん、なんで勝負する必要が…え?例えば?…『Iを見返すのに有効な方法を考えればすぐわかる』?

(計算中)

失礼しました。僕が勝ちます。そして僕がハン・テジュン氏の望みを全て丁寧にタップリと時間をかけて叶えて差し上げます。…
これでいいの?!本気にしたらどうするんだよ!僕イヤだからな、ジジイは!

問題6 ハン・テジュンとの理想の未来を自由に述べてください

受験者B 好きなときに好きな場所でIを借りて、Iと●●●できるような関係を築きたいです
もちろんIはお返ししますよ。僕にはIの管理は到底無理なので…

問題7 ハン・テジュンに望む事があればお書きください

受験者B どうぞ、『ウルトラマン』でいてください。Iの不満を募らせてください。僕が解消に努めますから…
なお、僕にIを貸してくだされば、僕の『愛人L』(ほんとは恋人っていいたいんだけど)を『観賞用限定(お手を触れないでください。壊れやすくなっております)』
としてお貸しいたします。損のない取引だと思いますが…いかがでしょうか


合否の結果は後日送付されます


BHC) T3☆Kitchen knife-Vegetable show  妄想省家政婦mayoさん

包丁ショーの衣装は大したことはない..
テプン_真っ白のTシャツ(すぐ汚れると思う)+白チノパン
テジン_真っ白のポロシャツ+白チノパン+茶のエプロン
テソン_真っ白のシャツ+白チノパン+黒のギャルソンエプロン(腰から下だけ)

3人は衣装に着替えた..
テプンには衣装のTシャツを着ると飲み食い禁止例がテジンから出された..
テプンは出番前までチェリムとち◎う~ち◎う~..口寂しいか..

テジンは壁の隅でスハとそっと抱き合った後スハを小ホールへ促したが
本番前にスハはテジンに見つからない様にそっと隅に来ていた..
出番前にテジンを動揺させたくないのと先程見た映画でスハ自身も動揺していたからだ..
テジンは俯いて今度はポロシャツのボタンを外し〜止め〜している...指寂しいか..

テソンはギャルソンエプロンを腰の前できりりと結んだ..
「僕は何故これなの?」
「3人の中で一番ウエスト細いから..似合うと思った..」
そう答えると嬉しそうに笑い自分の腰に私の手を回し頬と頬を合わせた..温もり寂しいか..

★☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆★

暗転の中
♪1.Don't Let Me Be Misunderstood


♪フラメンコの手拍子が流れる♪
ステージ中央に降りてきたミラーボールに幾重にもスポットが当たる..

テジンーテプンーテソンがテーブルの前に並んで立っている..
3人の前には何個かのキャベツ、大根、にんじん他色とりどりの野菜..
彼ら3人がそれらをリズミカルに刻み始める..

♪手拍子のリズムに♪フラメンコギターのメロディーが重なる..
♪包丁のリズムが手拍子のリズムと同じになり..
♪手拍子〜フラメンコギター〜包丁のリズム〜エレキギターのリズムが合体する

ボーカル部が始まり
真ん中のテプンにピンスポ☆
テプンは得意の両手上げ&頭フリフリ&腰フリで踊る..
テプンは両手に持っているペットボトルを上に上げたまま激しく振る..
ペットボトルの液体がテジン&テソンのリズミカルな包丁の音と共にマラカスの様に音を出す..

シャカシャカシャカシャカ#

テジン&テソンにスポット☆
テプンは2本のペットボトルのうち量の多いボトルをテジンに放る..
テジンはキャッチしペットボトルを横にしたまま左右に振る..
テジンのボトルの液体はテプン&テソンの包丁の音と共に

ジャッジャッジャッジャッジャッ#

テソンにスポット☆
テプンが量の少ないペットボトルをテソンに放る..
テソンはキャッチし手首を返しながらボトルを下から頭の上まで振る..
テソンのボトルの液体はテプン・テジンの包丁の音と共に

ジャワジャワジャワジャワジャワ#

テジンとテソンがテプンにボトルを放る
テプンは右、左と交互に受け取るとまた上に上げ..ボトル振り始める..

♪と共に絶え間なく続くリズミカルな包丁さばきで千切りの野菜が
 テーブルに置かれた何枚かのプレートをいっぱいにする..

テプンがテソンの傍による..
テソンはかつらむきの最中..
むき終わった大根をぱらりと広げ顔の前に掲げる..
テソンの顔が透けて見えるほど薄い...思わす会場から拍手###
テソンはその大根をクルクルっと素早く丸め..早い速度で切る..
みるみるうちに糸の様なツマができた..
テソンはそれを上からパラパラとまな板に落とす..
まな板に大根の雪が降った...会場から拍手###

<<< アッサァー (やった!) >>>
テソンと目を合わせテプンは両手に持っているボトルを上下に激しく振る..

テプンがテジンの傍による..
テジンは花人参を細工中...
間隔を置いて切れ目を入れ上下ひっくり返してまた切れ目を入れる
ぱらっ#と広げると薄い人参の梅の花が連なっている...会場から拍手###

<<< オッケェー >>>
テジンと目を合わせたテプンは両手のボトルを左右に激しく振る..
テジンは何個かの連なった人参の梅の花をプレートの刻んだ野菜の上に乗せた

テプンが中央に戻りながらテジンとテプンにボトルをそれぞれ放る
テプンは深呼吸し、もの凄い速さで一気にタマネギの早切り..
一個…二個…三個…四個…五個.…〜〜会場から大拍手###

テプンの包丁が止まる..
テプンが顔を上げるとアヒルの口で両目からだらだらと涙を流している..

テジンはテプンの左目を...テソンはテプンの右目を...親指ハンカチで拭う..
テプンは鼻水を自分のTシャツの上腕部で拭う..

テジンとテソンがテプンにボトルを放る..
テプンがボトルを頭の上で激しく振る...泣きながら振る#
テジンとテプンがラストの野菜を切り終え♪がクライマックスにさしかかる..

テプンはボトルのキャップを開け..
刻まれた色とりどりの野菜の上に<<<###どぁぁー###>>>っとかけた..
ボトルの中身はテソン特製のドレッシングだった..

3人はテーブルの前へ移動しプレートをそれぞれ2枚づつ持ち
真ん中のテプンが膝をついてプレートを前に差し出してフィニッシュ..
両側のテジン・テソンは立ったままプレートを前に差し出してフィニッシュ..

ミラーボールにまた幾重にもスポットが当たる..
会場から大拍手の渦..
3人は顔を見合わせ満面の笑みを湛えていた..

★☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆★

袖に戻ってきたテプンは真っ先にチェリムの所へ駆け込み
涙をちゅうちゅうしてもらっている..

テジンはスハを捜している様子...私があっち#と指で差した方へ向かう..
スハを見つけ今度はぎゅぅー#と抱きしめていた..

テソンは歩きながら片手を広げ私を呼び私の肩に手を置いた..
私はテソンの背中をポンポン#叩いた..
テソンは袖を離れ人気のない廊下の壁に私の目線の高さに合わせ
ちょっと低く寄りかかり私の腰に両手を回した..
何も言わずそっと唇を重ねた..


かくれんぼ  足バンさん

僕とギョンビンは袖の奥で適当に練習を繰り返していた
僕は店で何度もショゥをやってるけれど
ギョンビンはとにかく初めてだしそれなりに魅せないとな、なんてふたりで考えて

「お!かっこいいじゃないっすか!」
「なに怖い顔してるんですか!笑って笑って!」

ギョンビンが手洗いに行っている時だった
テプンさんたちの騒がしい声に振り向くと
ずっと向こうにミンチョルさんとスヒョンが立っていた
揃いの黒いタキシード姿で

どきんとした
タキシード姿にじゃなくて、
ふたりの空気がとても和んでいたから

舞台の音で聞こえにくいのだろうか、
スヒョンがミンチョルさんの耳元近くで何かを話しかけている
ミンチョルさんはおかしそうに笑い下を向いた

僕にはその空間が止まって見えた
それとも僕の心臓が止まってるんだろうか

スヒョン…
僕ここにいるよ
僕が見える?

なのにスヒョンがこっちを向きそうになると僕は側の幕の影に隠れた
なんで隠れることがあるんだろう
僕は悪いことでもしてるの?
自分を抑えてるから?
でも自分に嘘はついてないでしょ?

僕は幕に包まれた小さな空間でじっとしていた
小さな頃のかくれんぼを思い出す
入り組んだところに隠れて弟を困らせて満足して…
でも寂しくて本当は早く見つけてほしかった僕…

幕が小さく揺れて隙間からひょっこりスヒョンの顔が覗いた

「おまえ、なにやってるの?」
「あ…う…ちょっと瞑想…」
「ふぅん…ね、この衣装どぉ?」

似合う…

「だっさー」
「ミンチョルと踊るんだけど」
「聞いたよ、ふたりともダンスなんてできんの?」
「三曲とも知ってるしひと通り経験してる。ミンチョルもアメリカで手ほどき受けたことあるってさ」
「そ…せいぜい頑張れば」
「おまえも頑張んなさいよ」
「僕らは大丈夫だよ、ジジイのエッサッサと一緒にしな…」

いきなりスヒョンは右手で僕の顎を掴んでキスをした
僕はその手をパシと叩いて逃げようとしたが
今度は左手で顎を掴まれそのまままたキスされた

スヒョンは柔らかくその唇を離すと意外に優しい目をしてた

「なに考えてるんだろうね、おまえって…」
「読めば?」
「だめ。読むともう仕事にならなくなる」

…ばかスヒョン

「あぁ〜ん!スッヒョンちゃん!ここにいたのにぇ〜!こっちこっち!」

スヒョンがデジャイナー先生に腕を引っ張られて僕らのひと時は突然終わった
先生はスヒョンを無理矢理連れて行くと隅の椅子に座らせた
隣の椅子には既にミンチョルさんが座らされてる

「もう、ふたりともその格好でその髪はにゃいでしょぉん!…おい!ヘアメイク急げよっ!」

ふたりは目を合わせて苦笑した

メイクさんはふたりの髪をバックに流し丁寧に整えている
舞台側から漏れる強いライトに、大人のシルエットが浮かび上がる

「あぁ〜ん!セクスィ〜!わかってたら最高に刺激的なお衣装用意したのにんっ」

並んで足を組み、いたずらっぽく笑いながら顔を見合わせているふたり
僕には十分刺激的だ。いろんな意味で

ギョンビンが戻ってその同じ光景を目にし、僕を見た
僕は微笑んだつもりだけど、笑えてただろうか

ギョンビンはそっと僕の肩を手を掛けてくれた

「も1回練習しよう」
「ん?」
「濃いステージやろう」
「うん、濃厚なのね」


準備と気合  ぴかろん

着替えをしている僕の頭を掴んで上を向かせ、そして唇を奪う奴がいる
誰だ!…スヒョクじゃない!

「何やってんですか!イナさんっ離れてよっ俺のソクさんから離れてよっ!」
「うっせぇな、いいじゃんちょっとぐらい…」
「なんだよイナ!邪魔するな!僕達は最後のセツブンショーの着付を」
「あのさー、今からB息のショーなんだよ馬鹿!」
「「あ…忘れてた…」」
「だからスヒョク、あっち行って衣装着てスタンバイしないと間に合わねぇからよ!」
「はっはいっ」
「もう包丁ショー始まってるから急げ!」
「はっはいっじゃ、ソクさん…後で…ぜったいね…」

ああ、駆けて行くスヒョクがかわいい…んぐっ

またイナが僕の髪をわしづかみにして荒々しいキスをする
イナを押し戻して睨みつけて言ってやった

「何お前!何イライラしてんの!」
「っせーな…いいだろ?!ドキドキしてんだよ!」
「…なんだ、お前でも上がるのか?」

フフンと笑ってそう言った僕の唇に噛みつくイナ
しょうがない奴だよ…

僕はイナを引き寄せて抱きしめながらキスしてやった…
スヒョクと違って野良猫の匂いのするキスだ…
まったく、この唇どこの誰と遊んでるんだかな…
好きな男を大切にしているのかしていないのかわからない…

あ…
僕代用品ってこと?!

この野郎…
テジュンの代わりに僕を…

キスしながらイナの顔を見る
堅く瞑られた瞼の裏に浮かんでいるのは誰の顔だよ!
誰とキスしてるつもりなんだよ馬鹿野郎め…

「僕は誰?」

唇をつけたまま囁く

「…ん…ソク…」

わかってんのか?

「なんで僕のキス?」
「っせぇな…」
「なんでか言ってよ…」
「…しゅきらから…」

ひっぱたいてやろうかコイツ!

「おまえのきしゅがしゅきらから…」
「ぶぁか」

唇をつけたまま「ばか」と言うと、ミンチョル君の言う「ぶぁか」と同じ発音になる
ほんとにばか者…でも可愛いな…

「僕はスヒョクが好きなんだけど…」
「俺もテジュンが好きだよ」
「お前、他にも好きな男いるだろ」
「ソク」
「も一人」
「ギョンジン…」
「…どーしようもないな…」
「濃いの…して…」
「着替えなきゃいけないのに…」
「して…」

野良猫の色気には弱い…
どうしても弱い…

スヒョク、ごめんな…
ちょっとだけ…

本気でキスを落とす
イナの体が小刻みに震え、甘い声を出す

やっぱたまんないよ、こいつ…
心のどこかでこいつ、好きだという声がする…
でもそろそろお開きにしないとな、野良猫ちゃん♪

唇を離してイナを見つめる
イナは潤んだ瞳で僕を見つめる

「おれのことかんがえてた?」
「…ああ…」
「おれはてじゅのことかんがえてた…」

…そういう奴だよ!

「行けよ。頑張れな」
「…うん…さんきゅ…きあいはいった…」

気合?!
…まーったく!

「足、大丈夫か?」
「なんとかね。じゃあな」

手を振るイナを見送る
もしかするとイナとキスするのはこれで最後になるかもしれないな…なんて思いながら…

でも…イナの事だから…

「ふふふ…」

僕はイナの浮気な唇を思い出し、自分の懲りない唇を触った


羽根 オリーさん

控え室に戻った瞬間、僕は目の端に眩しいものを感じた
振り返って息が止まった
スヒョンさんの背中に大きな羽根がはえていて、
その羽根が彼を優しく包んでいた
きらきらと輝くとても美しい真っ白い羽根
そしてそれに包まれる彼…

僕は頭を振ってもう一度見直した
羽根は消えていた
スヒョンさんと彼がただ椅子に腰かけているだけだった
タキシードに身を包んだ男がふたり
でもふたりの間には不思議な空気が流れている
静かで落ち着いいて満ち足りた空気…
僕が感じた事のない何か…何?

僕といる時、彼はあんな風にゆったりと笑うだろうか
僕といる時、彼はあんな風に静かに笑うだろうか
彼が僕といる時はどんな風に見えるのだろうか…
今までそんな事を考えた事はなかった
僕といる時、あんな風に満ち足りた顔をしているだろうか
僕といる時、あんな風に穏やかな顔をしているだろうか
胸の底から小さな波がさわさわと沸き立つ

その時、ドンジュンさんと目が合った
僕は無理して笑ったつもり
たぶん彼もあの顔で笑ったつもり
お互い同じ顔をしているのだろう
僕は大きく息をしてドンジュンさんに近づいた
肩に手をかけて言った
「も一回練習しよう」
彼は答えた
「うん、濃厚なのね」

ドンジュンさんにはあの羽根が見えたろうか…
眩いばかりのあの美しい羽根が…


【48♪僕だけの…ミンは… byミンチョル】ロージーさん


BHC) A Song For You ぴかろん

暗幕で仕切られた舞台前部
暗い舞台にもの悲しいメロディーが流れる
ヴォーカルのかすれた声が心地よい

♪1. A Song For You

♪I've been so many places, in my life and times…

一筋のスポットライトに照らし出されるブラックグリーンと真紅のシルクのシャツ

♪I've sung a lot of songs I've made some bad rhyme

背中を向けている二人の男
真紅のシャツの男の腰に、ブラックグリーンのシャツの男が、頭を垂れて抱きついている
まるで一輪の真紅の薔薇

♪I've acted out my love in stages
 With ten thousand people watching

真紅のシャツの男がゆっくりと頭を動かし腕を伸ばし始める
手には真紅の薔薇の花一輪
腕を広げて腰に抱きついている男の肩に両手をかけ、仰け反る

♪But we're alone now and I'm singing this song for you

肩に手をかけられたブラックグリーンの男は、徐々に上へと移動し、真紅のシャツを包み込む

♪I know your image of me is what I hope to be

真紅のシャツの男はもう一度腕を広げ、そして頭上高くに突き上げて、ブラックグリーンのシャツの男に向き直る だが客席からは真紅のシャツの腕しか見えていない

♪I've treated you unkindly but darlin' can't you see

真紅のシャツのその腕がブラックグリーンのシャツの男の首に巻きつき、そして背中へと下る

♪There's no one more important to me

真紅の腕がブラックグリーンの背中を抱きしめる
その手には真紅の薔薇一輪

♪Darlin' can't you please see through me

やがてブラックグリーンの男は、また体を徐々に下げていく
真紅のシャツの男とブラックグリーンのシャツの男は見つめあっている

♪Cause we're alone now and I'm singing this song for you

ブラックグリーンの男が、真紅の男を崇めるように跪くと、真紅の男は愛しげにブラックグリーンのシャツの背中を一輪の薔薇で愛撫する
そして客席にその薔薇を投げる…

♪You tought me precious secrets of the truth withholding nothing

背中に回っていたブラックグリーンの男の手が真紅のシャツの胸元へと移動する
一輪の真紅の薔薇を持って…

♪You came out in front and I was hiding

その薔薇の花で真紅の男の唇を愛撫すると、そのまま自分の後ろの客席へすうっと投げる…

♪But now I'm so much better and if my words don't come together

真紅の男は、ブラックグリーンの男を見つめながら斜め横へ移動し、どこから取り出したのかもう一輪の薔薇の花を、彼を見つめながら投げる

♪Listen to the melody cause my love is in there hiding

真紅の男の方へ伸ばした左手の方に体を向けたブラックグリーンの男は、右手に薔薇一輪を持っている
すうっと左肩にその薔薇を寄せ、そのまま右回りにターンして薔薇を投げ、舞台向かって右へと進む

♪I love you in a place where there's no space or time

ゆっくりと追いかける真紅の男
顔を背けるブラックグリーン

♪I love you for in my life you are a friend of mine

背中に取りすがる真紅の男
顔を覆うブラックグリーン

♪And when my life is over remember when we were together

背中から徐々に下がりながら顔を伏せ、床に倒れこむ真紅の男
背中を向けたままのブラックグリーン

♪We were alone and I was singing this song for you

数歩離れて振り返り、倒れている真紅の男を手に持った一輪の薔薇で撫でる

♪You tought me precious secrets of the truth withholding nothing
真紅の男を抱き起こすブラックグリーン
顔を上げると同時にまた薔薇を投げる真紅

♪You came out in front and I was hiding

真紅から再び顔を背け、舞台後方に進み、後ろ向きのまま、天を仰ぐブラックグリーン

♪But now I'm so much better and if my words don't come together

客席に狂おしく片手を伸ばし、切なげな表情を浮かべ、もう片方の手で捕まえにいく真紅
舞台後方のブラックグリーンは、天に向かって片手を伸ばし、もう片方の手でそれを捕まえにいく
真紅とブラックグリーンの手が同時に組み合わさる

♪Listen to the melody

二人の腕が同時に自分達の体に引き寄せられ、そして同時に天を仰ぐ

♪cause my love is in there hiding

引き寄せられた腕を大きく広げると同時に、二本の薔薇が、両者の腕から投げられる

♪I love you in a place where there's no space or time

ゆっくりと振り向くブラックグリーン
同時にゆっくりと立ち上がる真紅

♪I love you for in my life you are a friend of mine

真紅がブラックグリーンに向き直り、ブラックグリーンは真紅に歩み寄る

♪And when my life is over remember when we were together

二人は片手を伸ばしあい、そっと指先を触れ合わせ、もう片方の手で、お互いの手を包みあう

♪We were alone and I was singing this song for you

ゆっくりと向きあい、ブラックグリーンは真紅を崇めながら姿勢を低くし、真紅の腰のあたりをそっと抱きしめる

♪We were alone and I was singing this song for you

もう一度顔を見合わせ、どこからか出してきた薔薇を一輪ずつ客席に投げる

♪We were alone and I was singing this song for you

目を閉じて真紅の腰を抱きしめるブラックグリーンのシャツ
その頭を包み込む真紅のシャツ
一輪の薔薇に戻りスポットライトがフェイドアウトしていく…


二人はそのまま口付けを交わした
暗い舞台の上で

そして袖へと歩いていく
真紅のシャツの男はウシク
ずっと我慢していた涙を流し
ブラックグリーンのシャツの男はイヌ
ウシクの肩をそっと抱いて真っ直ぐ前を見た

祭が終わったとき一つの試練が待っている
それは薔薇の花に必ずある棘

「僕がそばにいるから…棘が君を傷つけないように僕が守るから…」

真っ直ぐ前を見つめてイヌは呟いた


BHC) パフォーマンスエキシビジョン〜シャドーボクシング れいんさん

舞台袖のパイプ椅子にシュンホ君が座っている
黒いトランクス、黒のローブ、首に赤いタオル
普段穏やかなジュンホ君の表情が険しい
その一角だけ何か張りつめた空気が漂う
僕は少しためらいがちにジュンホ君に声をかけた

「ジュンホ君、もうすぐ出番だね。緊張してない?」
「あ、すはせんせい…」
「エキシビジョンといってもショーの一部だから気楽にね」
「はい。でも、ぼく…ぜったいかちたいです」
「そう…。僕も応援しているから頑張って」
「はい。ありがとうございます」
「もう、計量はすんだみたいだね。僕がバンテージ巻いてあげるよ」

ジュンホ君の拳にバンテージを巻きつける
これから、ショーのパフォーマンスとしてステージ上でエキシビジョン(練習試合)が行われる
1Rで勝敗を決める
対戦相手の情報は現時点では明かされていない
ステージ中央にリングが設置されている
本物のリングより狭い。5メートル四方といったところか
スパーリングと違い、ヘッドギアは装着されない
防具といえばマウスピースとトランクスの下につけるノーファウルカップのみ
バンテージを巻き終わりグローブをはめる

「ジュンホ君、いいかい?無茶はしないと約束してくれるね」
「はい。でも、ぼく、まっていてくれるかぞくのためにも、なかまのためにも、ぜったいにまけたくない、かちにいきます」

僕は祈るような気持ちで最後にジュンホ君の口の中にマウスピースを装着した
真っ暗な闇に包まれている会場
ステージも客席も静まり返っている
音も光もない世界…

突然、ステージ下からアップライトが照らされる
赤・青・緑・黄、さまざまな色のライトの数が増えていき、ランダムに光を発しながら
さながらレーザー光線の様にリングに無数に交錯する
ステージ上部に吊るされたミラーボールがキラキラと妖しい光を乱反射する
リング中央にレフリーの姿が浮かび上がる
ミスターチュニルだ
白いシャツに赤いタイ、黒のスラックスといういでたちだ
続いて、ステージのせりから上ってくる男
2メートルもあろうかと思う程の巨体
赤いトランクスをはいている
頬に傷があるのがわかる
その男は…謎のボクサーマサオだ!
会場からやじや怒号が湧き起こる

そして、薄暗い客席通路にライトが当たり、一筋の道を作る
その光る道を、小刻みに体を揺らしガードの体勢をとりながら軽い足取りで近づいてくる一人の男…
ファン・ジュンホだ!
やじや怒号が拍手と歓声に変わる
マサオとジュンホ…それぞれがロープをくぐりリング上で睨み合う

「青コーナー!マサオーエガワー!!」
「赤コーナー!ファンー!ジュンホーー!!」

レフリーの絶叫
試合前のあいさつにジュンホがグローブを差し出すがマサオはそれを跳ね除け挑発する
客席からブーイングの嵐。会場は熱気と興奮に包まれる
無常にも1R目のゴングが鳴った

ジュンホがデトロイトスタイルでマサオをアグレッシブに攻める
左ジャブ、右フックのコンビネーションでマサオの出方を見ている
対するマサオはアップライトスタイルでジュンホとの距離をとる
パンチを打たせない作戦だ
ジュンホがシフトウエートしながら巧妙にマサオをコーナーへと追い詰める
マサオは決定打を避ける為クリンチに出る。戦いにくい相手だ
レフリーの目をかすめ、マサオがシュンホの肩甲骨あたりにエルボーした
小さく呻くジュンホ
ガードが甘くなった瞬間を狙い、マサオはジュンホの顔めがけジャブ、ジャブ…
よろけながらもシュンホはガードする
ガードをはねのけマサオのアッパーが決まる
ジュンホの口から血が滴り落ちる
ジュンホはグローブで口を拭い、息を整え、再び距離を縮める
コーナーへと追い詰めたジュンホのストレートがマサオの顔面にヒットする
マサオはロープにもたれた反動で前のめりになりジュンホの額めがけてバッテイングした
計算づくの作戦だ
ジュンホの瞼がざっくり切れる
もう次のラウンドはない。このラウンドで勝敗は決まる
シュンホは瞼の出血のせいで片目が見えていないようだ
ジュンホのパンチが空を切る
飛び散る汗…荒い息遣い…
マサオは容赦なくジュンホのボデイーや顔面にパンチを繰り出す
ジュンホはまるでサンドバックのように打たれる…打たれる…
肉を打つ鈍い音が聞こえてくる
今度はジュンホがコーナーへと追い詰められる
右フック、左フック、右ストレート、アッパー
ジュンホがまだ立っていられるのが不思議なくらいだ
客席のあちこちから悲鳴が聞こえる。目を覆う者さえいる

誰もがジュンホの勝利を諦めかけたその時
ジュンホが渾身の力を込めてパンチを打った
マサオの顔面にストレートがヒットした
ひるんだマサオに間髪いれずにパンチを浴びせるジュンホ
これがラストチャンスかもしれない
マサオが長いリーチを生かしてやみくもにパンチを繰り出す
ジュンホは見えていない目で巧みにそれをかわす
左ジャブ、左フック、右ストレート、そしてカウンター!
2メートルの巨体がリングに崩れ落ちた!
レフリーが駆け寄り、シュンホを制し、ダウンしたマサオにカウントする

「ワン、ツー、スリー…テン!!」

リングの音が鳴り響く!
レフリーがジュンホの右手を高く掲げる
ジュンホは誇らしげに胸を張り右手を上げた
会場全体が大歓声で埋め尽くされた

僕はジュンホ君を抱きかかえながら控え室へと歩いた
今ステージは一転して、幕が下ろされ、幕の中央にスクリーンが吊り下げられ、ジュンホ君のスライドが映し出されているはずだ
子供達と砂浜で戯れるシュンホ、家族との記念写真
東洋選手権や世界チャンピョンタイトルマッチでの栄光の数々…
客席は感慨深い思いでそれを見つめているだろう
そして、それが終わると最後はジュンホ君のシャドーボクシングでしめくくる

だが、この状態ではジュンホがステージに立つなど無理だ
顔は腫れ、口の中は切れ、瞼からはまだ鮮血が噴出している
椅子に腰掛けているのがやっとの状態だ
僕はチュニルさんを呼んでわけを話した

「そうですね。続行するのは無理のようです。プログラム変更した方がいいですな」

僕はチーフに伝えに行こうと立ち上がった

「すはせんせい!…ぼく、さいごまでやります!」
「…ダメだよ。無理はしないと約束しただろ?」
「だけど…」

シュンホ君は僕の腕をつかんで離さない

「…失礼ですが…どうかしましたか?」
「あ…あなたは…!」


スクリーンに映し出される栄光のスライドは終わった
スルスルとスクリーンは吊り上げられ、幕も上がった
ステージにあったはずのリングは跡形もない
白いパーテーションがただ一つ置かれ、そこに浮かび上がる一人の男のシルエット
その影は黙々とシャドーボクシングをしている
BGMにフラメンコギターの曲が流れる
パーテーションが左右に開き、中から男が現れる
ブラックスーツに身を包み、ホワイトシャツに黒のネクタイ
その男は…
…キム・ソヌだ…!
足は肩幅程度に開き、右足の踵を床から浮かしている
右拳は顎の横につけ、左肘は腹の横につけガードの体勢
左肘を90度に曲げ、拳を目の高さに上げる
シュッシュッシュシュシュ…
身のこなしに隙がない
時々動きを止め、息を整え、スーツの乱れを直し、ニヤリと笑みをこぼす
そしてまたシャドーボクシングを続ける…
会場にはソヌの拳が空を切る音だけが響く…

そしてステージは暗転…。幕が下りた
会場からは溜息と割れんばかりの拍手が湧き起こった


【2♪ジュンホに贈る詩】れいんさん


ブース  足バンさん

わしはサウナでひと汗かいてさっぱりした後
会場とは別の部屋で開催されておる「ブース」に寄った
客はそこそこ入ってはおるがどうもスルーしておるな…
いったい何をやっておるのだ?

「イナのカジノルーム」

ポーカーコーナーはチニ嬢とかいう背の高いおなごが取り仕切っておった
”デラルス”に出ておった髪テカテカの男が張り付いておる
”香水をつけた者は近づくな”と怒っておる
そんなことくらいで気が散るとは…まだまだ青いのぅ

「ポラリスグッズ販売」

なんでこんな季節に冬物を売っておるのじゃ
売り子のホテルスタッフが虚しい表情をしておるわい
それにしてもあれはなんじゃ
マフラーを巻きコートを着た”ひと形の板”
顔のところが丸く切り取られ穴が空いておる
ここに顔突っ込んで記念撮影2万ウォン?
…悪魔じゃな

「シウォングッズ販売」

ん?ここはDVDとCDばかりじゃな
あとは料理本と車の本。つまらん
で、なんでこんなところにエリザベス女王のブロマイドがあるんじゃ?

「ソクホグループグッズ販売」

グループとは言ってもなにやら”スンホン”と”ウォンビン”グッズしかないぞ
うむ。人間とは手の届かぬものほど欲しくなるのだな

「ウォン画伯・極彩色男色絵巻」

何も無いではないか。ん?
”研究のため小ホールにて映画鑑賞中”?
今頃何をやっておるのだ、あの男は

「男組有志・鍋の炊き出し&キムチ」

おお、これはなかなかじゃ
…と思ったが…
なんで男組の連中は自分達で夢中になって食っとるんじゃ?
これはただの”自炊”ではござらんか?

「マジの振り付け講座」

またここも誰もおらぬわ。なに?
” fell in love”とな?
うむなるほど。そういうことなら仕方あるまい
わしってそういうことには理解あるおぢさまじゃ。ふぉふぉふぉ

「アンドレセンセのオートクチュール」

限定10着500万ウォンじゃと?たわけ!
自分でこしらえるわ!

「ミニョンの肉体改造講座」

ここも本が置いてあるだけじゃ…
何でも売ればいいというものではなかろうが
本といっても”写真集”ではござらんかっ!たわけっ!たわけっ!

「テジンの銀細工・木工製品注文受付」

おぉこれはこれは…ちょっと注文してみるかの
 氏名…わしじゃ
 商品…ぶろーち
 デザイン画…「重鎮」の2文字のみじゃ
 希望…シルバー割引利用

「キムの館」

占いかのう?キムさんとやらはどこかの?
まぁ今日は皆さん掛け持ちで忙しいからのう
どれひとつわしが座って客を占ってやるか
「チンの館」じゃ。ふぉふぉふぉ


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