はなれていくもの 2 ぴかろん
「なん…だよ…ヘンだぞギョンジン…」
「…」
「ギョンジン…」
何も言わずに俺の耳を噛むギョンジン
ギョンジンの唇が耳からうなじに這う…
ギョンジンの手が俺のシャツのボタンを外し始める
俺の呼吸は荒くなる
シャツをずらして背中に口付けるギョンジン…
なにをされているのかわかってるのか?
どういう状況なのかわかってるのか?
はあはあはあ…
俺は手すりに頭を乗せてギョンジンの唇を背中で感じていた
ギョンジンの唇がまた俺の首筋に戻ってきた
そして俺をもう一度背中から抱きすくめる
こいつが俺に言おうとしている言葉が俺にはわかる
俺も…同じ気持ちだから…
「イナ…僕はお前が…」
「俺も…」
「…」
ギョンジンは言葉を呑み込んだ
「テジュンさんに怒られちゃう…フフ…ごめん…」
そう言って俺のシャツを直し始めた
「ごめんな…こっち向いて」
さわやかな笑顔でそういうと。ギョンジンは俺の顔を見ずにボタンを止めはじめた…
俺は…ギョンジンのネクタイを外してやった
「イナ…」
ギョンジンのシャツのボタンも外してやった…
「イナ…こら…」
俺からギョンジンの鎖骨にキスしてやった
「やめろ…僕が悪かった…こんな事しても…なんにもならないよ…イナ…」
俺はうそつきの口を塞いだ
うそつきの体に触れた
うそつきを抱きしめた
「だめだ…イナ…やっぱりダメだ…」
「…」
「テジュンさんが悲しむ…」
「俺…今、本気で…お前が欲しいと思った…俺って…ダメだな」
「…僕もだよ…」
「…」
俺たちはそっとキスをした
「でもやめておこう…お互いのために…ね?」
冷静なうそつき男は、俺にそう言った
「なあ…」
「ん?」
「お前今、俺を抱こうとしてた?それとも俺に抱かれようとしてた?」
「…」
「答えろよ」
「抱こうと思ってた…」
「なんだよっ!俺がお前を抱くって事になってただろ?!」
「そんな取り決めはしなかったぞ」
「だってこないだの10分キスのとき、俺がお前を…」
「あれはお前が一方的に呟いただけだぞ、僕のキスにのぼせあがって」
「…うそつきっ。『いいよ』って言っただろ?!」
「言わない」
「言ったよ!」
「言ってないよ馬鹿」
「じゃあ…もし…今の…辞めてなかったら…」
「もちろん僕がお前を抱いて…」
「ずっるううう!なんでだよっ!なんでいっつも俺はっ…」
「しょうがないじゃん、お前感じやすそうだもん…」
「むきーっ!俺だってやる時はやるんだかんなっ!」
「すぐ逆転されるだろ?」
「なんでっ!」
「だって見たもん、こないだテジュンさんとの…。お前がいっくらテジュンさんに挑んでも、すぐにヘロヘロにされてたもん…」
「むきーっむきーっばかやろうっ!もうホールに戻る!お前なんかしらないっ!きいっ」
ギョンジンがクスクス笑ってる
俺は松葉杖をついてエレベーターに向かい、先に乗った
ヤツはおかしそうに笑いながら、俺を見つめてた
「乗らないのか?」
「ん、もうちょっとここにいる」
「先に行くぞ」
「ああ…」
エレベーターを閉めて、俺は下に向かった
『イナ…さよなら…僕は…もう行くよ…これ以上ここにいても、お前に迷惑かけるだけだ…
ありがとう…弟の事、よろしくな…さよなら…』
部屋の荷物をまとめると、僕はフロントに手紙をことづけて、僕の鎧をはいでくれたホテルを後にした…
さよなら…イナ…
また…会えるかな…
生きていたら…またきっと…会えるかな…
今度会えたら…そのときはきっと…
僕は、流れる涙を拭いてロータリーに向かう
さっき命がけで止めたタクシーが端のほうに止まっている
僕はそちらに向かいながら大きく深呼吸をした
決めたんだ…もう…
彼にはテジュンさんがいて
弟にはミンチョルさんがいて
そして僕にはアナスターシャとチフンがいる…
居るべき場所へ帰る
それが一番の幸せなんだから…
タクシーに向かって歩いていると、また別のタクシーが僕の少し前に止まった
ドアを開けて降りてきた二人の男
きな臭いにおいがする
左手に包帯を巻き、帽子を目深に被った男の顔は、ついさっきまで目の前にあったイナの顔に似ていた
BHCの新人?…
僕にはもう関係がない…
イナの足、大丈夫かな?
舞台で型を披露するとか言ってたけど、あいつ、あんな甘えたで、そんな事できるのかな…
僕は一体イナの事をどれぐらい知っているのだろう
何も知らないじゃないか…イナがテジュンさんを愛しているという事と、とても温かい人間だという事以外…
どこでどんな風に生きてきたのか…
僕は何も知らない…
だからもう…さよならして…
胸が苦しくて一歩も歩けなくなった
僕はまた自分に嘘をついている…
首を横に振って、僕の決心を鈍らせないように、僕はもう一度フロントに戻って国際電話をかけた
「アナスターシャ、僕だ…ギョンジン…ギョンビンだ…」
『…貴方…』
「今からそちらに向かう…これからはチフンと君と、三人で暮らそうと思ってる…」
『…』
「アナスターシャ…」
『…生きてたの?…』
「…え…」
なんの音信もないから死んだと思ってたわ
私、結婚したの。チフンも夫に懐いているわ
貴方が姿を見せなくなって暫くして、彼と出逢った
彼はチフンと仲良くなった
チフンは彼を本当の父親だと思ってるわ
私達は幸せよ
もう…姿を見せないで…
貴方は…チフンを…捨てたのでしょう?私と一緒に…
何も言えなかった
捨てた…
そうだな…
捨てたんだ…
自分の子供を…
耐え切れなくて捨てたんだ…
僕は…そんなこともしていたんだ…
目の前が真っ暗になった
進むべき道が地割れを起こして、これ以上進めない
ここにも居られない…
どこへ行けばいいのだろう…
僕は知らぬ間に流れ出ていた涙にも気づかず
フラフラとホテルの庭を彷徨っていた
マイキーの心 ぴかろん
ミミさんが吊るされたワイヤー
切れそうになった時、私は、申し訳ない「チャンス」と思ってしまった…
ミミさんは「早く幕を引いて〜」と叫んでおられたが、大音響にかき消されて聞こえなかったふりをし
私とヅラを被りなおしたトファン会長は、ミミさんを、新人リマリオに任せて、中央に設けられた丸いステージに躍り出た
だって我々、あまり活躍してないんだもん…
会長と私は、ここぞとばかり、我々のワードローブの中から一番きらびやかなものを纏い、満面の笑みで得意のダンスを披露した
会長はヒップホップ
私はコサックダンス
会長…さすがでございます…
くねくねと曲がる手足はまるでタコのよう…
私、なぜ会長がこのように体が柔らかいのか、ずっと疑問に感じておりました
しかし今日のイリュージョンで披露された自らのおぐし…おぐしというよりは…光物…くうっ…
それを拝見し「会長はお蛸殿であらせられたのか…」と愕然といたしました
私はコサックダンス
これは以前ロシアで学んだものでございます
笑顔を絶やさず、低い姿勢で足を入れ替える、筋トレにはもってこいのダンスでございます
私、当初は一回もできませんでしたが、日々の努力、会長のハゲまし…コホンケホン…により、どれだけでも続けられるようになりました!
おかげで少しプヨプヨ気味だったわき腹も、しっかりと締まりました
くふん…ミンチョル君に教えてあげても差し支えない…くふ…
ミンチョル君は不器用だから、コサックダンスは「無理」かもね
クフン
私と会長は、スポットライトの中で存分に踊りました
後ろからミミさんの「裏切り者」という声がしましたが、それは貴方のほうでしょう…と心の中で思いました
おっといけない
我々デラルスの友情にヒビが入ってしまう…
あとでゴージャスなドレスなどプレゼントして、ミミさんのお心をお慰めしなくては…
きっと解って下さるはず
「ショービズでは何があってもショーマストゴーオン!とコーイチドーモトが言っていた」のですから…
視線 足バンさん
会場に戻りドンジュンを元の席に送ってから
僕は薄暗がりの入口でギョンビンの帰りを待っていた
静かにドアを開け入ってきた彼に内心ほっとした
その表情にはどこか決然としたものが漂っていた
「話しはできた?」
「はい」
「それで?」
「僕は僕の思うまま進みます。兄さんのことは兄さんに任せます」
「そう…ごくろうだったね」
そしてそのまま静かに彼を抱きしめた
まだ実行するつもりはなかった
しかしその時を選んだのは
ミンチョルが何かの都合で席を立ち不意にこちらを見たからだ
僕はギョンビンの顔を包み込むように抱きしめた
ねぎらいの気持をこめてかわいそうなギョンビンを優しく包む
ギョンビンは戸惑いながらも静かにその場に佇んでいた
疲れている、そして怒りのような波を発している
遠くのミンチョルの動きが不自然に止まりこちらを凝視しているのがわかる
僕は腕に少し力をこめて抱き寄せた
ギョンビンの背中がしなる
この暗さで、そのシルエットはさぞエロティックな香りを放っていることだろう
「スヒョンさん…」
「ミンチョルが見てる。悪いがもう少しこうさせてくれ」
「え…?」
振り返ろうとするギョンビンの頭を片手で押さえた
ミンチョルの不信と不快の視線が刃物のように突き刺さるのがわかる
「でもドンジュンが…」
「大丈夫、心配しないで」
階段でドンジュンにキスをした後ー
僕が今奔走しているのはおまえのためだ
僕だってそう思おうと努力してる…
おまえのその努力を無駄にしないから
スヒョン…
そしてこらから僕のすること…僕を信じて
…
いいね?
ん…
ミンチョルの肩が少し動いた時、ギョンビンの耳元にキスするように囁いた
「ミンチョルを頼むよ」
「スヒョンさん…」
ミンチョルが額に手を当ててきびすを返し幕の間から出て行った
それを確認して僕はようやくギョンビンを離した
またため息をついてしまった僕をギョンビンは微笑んで覗いた
「ミンチョルさんが好きなんですね」
「過ぎた話しだよ」
ギョンビンは僕の腕を静かに掴んで、
そしてもう一度微笑んで席の方に歩いて行った
もう一歩
僕はミンチョルの消えた幕から彼を追った
ミンチョルは舞台袖に続く通路でスタッフの慌ただしい動きの中にいた
彩色された動画の中でミンチョルだけがモノクロームのように見える
僕は息を吸い込んでから声をかけた
なにごともなかったように
「ミンチョル!BHCの連中のスタンバイはいつ頃だった?」
ミンチョルは行き交う人の向こうで冷たい視線を投げる
そのまま立ち去ってしまうのではないかと思った
しかし意外にもこちらに向かって来た
そして意外にも単刀直入に口を開いた
「ミンを癒してやってたのか」
少し苛ついている。その手応えに僕が驚いた
「そんなところだ」
「スヒョン…」
「もうギョンビンのことは放っておけと言っただろう」
「スヒョンおまえ…」
「もうおまえにどうこう言える問題じゃないはずだ。兄貴とも話しはついた。ギョンビンはギョンビンの考えで行動する」
「…」
「心配するな。ギョンビンはおまえのことをきっと乗り越えられる」
僕はもう一度息を吸って、
そしてミンチョルの目を見て言った
「いい子だな…惹かれるよ」
ミンチョルの目に激しい動揺と警戒の色が走った
「で?BHCのスタンバイは?」
「…確認してあとで…伝える…」
「了解」
僕はミンチョルを残してその場を去った
背中に視線を感じる
僕にとっては辛い視線だった
お母さんからただのコマシに逆戻りだ…
◇ほろ苦い来訪者1 妄想省家政婦mayoさん
ホールの入り口で僕らはソヌ、ミンギと軽く挨拶を交わした
ミンギは闇夜が近づくと顔をクシャ#とした
闇夜がミンギの腕を軽く叩いた
「ミンギ、来るって言ってなかったじゃない」
「ぅん...でも先輩がBHCのショーだけ見ようかって」
「そう、見ていって..」
「ぅん。あ、先輩がヌナにって」
ミンギは持っていた袋を闇夜に差し出した
「うわっ..*.ビジュアルブック!^o^//」
「まだ発売になってないから...まだ持ってないでしょ?」
「はい..すいません^o^」
「いや...」
ミンギの隣のキム・ソヌは闇夜にそう言うとくすっと笑った
ソヌはこの前と同じように帽子を被っていた
ジーンズ素材のカーゴパンツに黒のブルゾン羽織っている
顔の傷もこの間訪ねてきた時よりずっと目立たなくなっている
ただ左手に包帯をしていた
僕は左手に視線を落としたあとソヌに聞いた
「プロモの方は忙しくないんですか?」
「理事に任せてあるからね...僕の出番はないんだ..」
「そうですか..手は...痛むんですか..この間は大丈夫だったけど...」
「たまにね..ちょっと調子が悪くなる..」
「テソンさん、あのね..先輩の左手ね...」
「ん?..」
「マネージャーの頃の..格好いい時の自分を思い出してさー」
「ぅん...」
「夜に自宅の窓に自分の姿写してシャドーボクシングしたとき...」
「どうしたの...ガラス割ったの?」
「違う違う...力入りすぎてさ、治りかけた筋を痛めたの..」
「ミンギっ!」
「あっ..すいません..」
僕と闇夜がくすくすっ#と笑って帽子のソヌの覗くと
ソヌは照れくさそうに笑って帽子のつばをちょっと下げた..
その時のソヌの横顔は悪さして見つかったときの少年のようだった..
「ソヌさん、ここで観ますか?」
「ん〜テソン君...なるべく目立ちたくないんだ..」
「そうですか..mayoシどうする?」
僕が闇夜に振ると闇夜は指で↑を指した.
僕らはジホがカメラを据えているホールの2階部分にソヌ達を案内した
ジホは仕事柄いち早くソヌの映画は観ている..
ソヌも自作の監督がジホと昵懇なのでジホの映画も観ているだろう..
そしてジホとソヌはいずれBHCに来る..
その辺の事情を察した闇夜が2階にソヌ達を案内したのだった..
闇夜はジホとウォニにソヌ達を紹介した..
ジホとソヌは軽く挨拶を交わした..
ウォニは嬉しそうにソヌ達の前で唄いながらダンスを始めた..
♪総てがウソだ〜 すべてが偽善だぁ〜〜♪
♪僕らは僕らの言葉で語らうぅ〜僕らの真実を作り出すぅぅ〜♪
ジホの名作「踊る工場」のポップでバレエを合わせたような
奇妙なあのダンスだ..作詞はジホだ...
ミンギは口をぽかぁーん#と開けてそれを見ている..
ソヌはくすくすと肩を震わせて笑い、
ジホはそんな2人の様子を興味深そうに眺めている...
ダンスの決めポーズが終わるとソヌとミンギは拍手をしていた..
「どう?ソヌ君...ウォニの踊り...」
「監督..実物はかなり強烈ですね...」
「だろ?ミンギ君、どう?」
「あ、あの...身体すごく柔らかいですね..」
「ははは...そうだね...」
「監督、お願いしていいですか..」
「ぅん。いいよ」
僕たちはジホにソヌ達を任せて2階から降りた..
「テソン..これ部屋に置いてくるから..」
「僕は席に戻ってる..」
「わかった..」
「mayo...」
「ん?....ぁ..」
デコxxx...みみxxx...僕は当たりを見回して..ち◎う..
闇夜はオーナー達の分も含めた写真集の袋を一旦部屋に置きに行った
僕はホールの席に戻った..
イン・ザ・ベッドルーム オリーさん
僕はスヒョンさんと別れて席に戻ると目を閉じて考えた
さっき洗面所で見た彼の顔
あれは兄さんと会った後だったんだ
あんな顔してるワケがわかった
馬鹿!
節水しなきゃダメだろうが
さっきのスヒョンさんのハグをちゃんと見ただろうか
でももっときついお灸を据えないと
こともあろうに僕を捨てようとしたんだからね
スヒョンさんにもっと強烈なハグしてもらう?
ドンジュンさんに悪いよね
そうでなくても今日はずっと世話になってる
どうしようかな…
ところで席に戻ってこない
きっと目が泳ぎまくりでどこかでウロウロしてるんだ
僕の顔を見られないに違いない
ほんとに馬鹿!
僕は席を立った
「どこ行くの?」
ドンジュンさんに聞かれた
「ちょっとミンチョルさんを探しに」
「会うの?」
「はい」
「大丈夫?」
「一発決めてやります。きついの」
そう言うとドンジュンさんは笑った
「どんな風に?」
「ひ・み・つ」
僕はそう言って彼に手を振った
ざっと見回した会場にはいない
ロビーにもいない
じゃあ…部屋かな…
部屋ならうってつけだ
僕はエレベーターに乗った
部屋のドアをそっと開けて中に滑り込んだ
見当たらない
奥の寝室をそっと覗いた
彼はベッドに仰向けに横たわっていた
額に手をあて、悩めるポーズ
ああ、もう!
でも、今回はちょっとやそっとじゃ許してあげないよ
「そんなとこで何やってるの?」
僕は彼に声をかけた
彼はビクっとして起きた
「人の部屋で…何してる…」
「ちょっと報告しておこうと思って」
そう言いながら僕はベッドに近づいた
「何を?」
さりげなく僕はベッドに腰掛けた
「僕、ここに残ることにしました」
「何だって?」
「スヒョンさんが、僕いいホストになれるって。魅力があるって言ってくれた」
「何言ってるんだ、そんな…」
「一応お知らせしときますね、チーフだから」
「兄さんと帰れ」
「命令しないで。もう関係ないんだから」
「兄さんと元の仕事に戻れ」
「僕がここにいちゃまずいの?もしかして未練でもある?」
「そんなんじゃない」
「じゃ、何?」
「そんなことのために別れたんじゃない…」
「そんなことって何?僕捨てられたんでしょ。違うの?」
僕はゆっくりと彼の目を覗き込んだ
彼も僕の視線をとらえた
かなりの時間僕らは黙って視線をぶつけ合った
ため息をついて彼が口を開いた
「いいから兄さんと帰るんだ…彼は悪い人じゃない」
この強情っぱり
「嫌だ」
僕はそう言うとすばやくベッドの上に飛び乗り、彼を押し倒した
「僕はやられてそのまま引っ込むタイプじゃないんだ。知らなかった?」
そう言って彼の両手を押さえ込んだ
「落とし前はちゃんとつけさせてもらう」
彼の唇に軽くキスした
彼が小さく震えたのを感じた
いい兆候
「ひどい事してくれたよね。僕すごく傷ついた」
「お互い楽しかったからいいじゃな…」
「まだそんなこと言ってるの?」
僕はまた彼にキスした、今度はちょっと本格的なやつ
彼はまだくずれない
「兄さんとは片がついたし、僕はここに残ると決めた。後は白状してくれればOKなんだけど」
「何だって?」
「正直に言えばいいんだ」
「何を?」
「さっき妬けた?スヒョンさんに抱かれたの見て」
「関係ないんだろ、もう」
「ふうん、じゃ寝てもいいよね、スヒョンさんと」
彼の目が揺れた
「いいんだね?」
「何でスヒョンなんだ」
「ドンジュンさんでもいいよ」
「何考えてるんだ」
「僕が誰かに抱かれでも平気?」
「…」
「どうなの?答えて」
「好きにすればいいだろ」
「じゃ、イナさんにしよう」
「馬鹿な事言うな…」
「できないと思う?僕が別れたって知れば相手にしてくれると思うけどな」
僕はまた彼の唇に触れた
さっきよりちょっと震えが大きくなったみたい
あともうちょっとかな
「そんなことさせたくないでしょ?どう?」
彼はもう目を閉じて僕を見ない
「意地を張ってるとほんとに僕をなくすよ。いいの?」
僕は片手で彼のワイシャツのボタンをはずした
朝、首を絞めた跡がかすかに残っている
僕はそこにも唇をあてた
「言ってよ。朝はひどい事言ってごめんなさい、嘘だから戻って来て下さいって」
彼はやっと目を開けて僕を見た
「どうして元に戻らない…ミンのためだと思ったのに…」
言い終わると同時に彼の目が潤んだ
「自分の人生は自分で決める。誰も僕に命令できない。文句ある?」
彼はゆっくり首を横に振った
「よし、じゃ言って」
「何を?」
「朝のことあやまって。さっき言ったでしょ」
「…」
「早く!」
「ミン、朝はひどい事言ってすまなかった」
「次!」
「戻って…来てください…」
「ふーっ、いい子だ、やっと言えたね。じゃ僕の条件を言うから」
「条件?」
「そう。今お願いされたでしょ、戻ってもいいけど条件がある」
「…」
「これからは二人の事は僕が決める。ミンチョルさんにまかせとくとこういうろくでもない事になるから
一人で決めないで何でも僕に相談すること。わかった?」
「…」
「返事は?」
「あ…はい」
「あと奥さんとはきっぱり別れてもらう、もちろん正式に。いいね?」
「は…い」
「その調子。あとね、ひとつきっちり覚えておいてもらいたいな」
「何を?」
「僕を逃がすと損をするのはそっちだからね。靴磨きしなくていいし、毎朝美味いコーヒーが飲める
これだけでも随分いい条件なのに、こんなこともしてもらえるんだ」
僕は両手で彼の頭を抱きしめ、キスをした
唇だけじゃなく、ちょっと腫れてる彼の目や、長い睫や、鼻のあたまとか…とにかく全部
途中でまた彼の目から涙がほろほろと落ちてきた
僕はそれを唇ですくい取ってもっと言ってやった
「後は何をして欲しい?思いのままだよ。ただし、さっき言った条件を忘れない事」
彼は僕の肩を掴んで僕の名前を何度も呼んだ
「ねえ、泣くとまた目が腫れるよ。いいかげんにしたら」
彼は僕の下で唇をかんだ
立場が強いと気分がいい…かな…
ようし、その調子で当分言う事を聞いてもらいますからね
僕らはBHCのスタンバイにかろうじて間に合った
【26♪スヒョンのブルース】ロージーさん
【27♪ミンに捧ぐ】ロージーさん
スングクです… れいんさん
♪〜♪(ヒロシのテーマ曲)
スングクです
オールインに出とるとです
ドラマの中じゃあんなに
会長のパシリをしていたとに
こっちの世界じゃ完全にシカトです…
スングクです
オールインにも白夜にも
出とるとです
キャラは全然違うとですが
どちらにしても
笑顔はなかとです…
スングクです
隠し子騒動がにわかに
あったとですが
チョンウオン坊ちゃんの子役の子とは
なんの血の繋がりもなかとです…
スングクです
デラルスのミミさんに
横浜銀蠅の格好を
させられたとです
リーゼントにポマードまるまる
使い切ったとです
結構…イケとったとです…
スングクです
よく誰かに似てるー
喉元まで出掛かかってるけど
誰だか思い出せないー
って言われるとです
くりいむしちゅーの有田って
はっきり言うてよかとですっ
スングクです…
スングクです…
スングクです…
◇秘め事1 妄想省家政婦mayoさん
「ちぇみ..あの人..mayoさんがスカウトしたお気に入りの人?」
「ぷっ...そうだ..」
「テソンさん大丈夫かなぁ...」
「ん...もう大丈夫だろ..」
俺とテスはテソン達の様子をずっと眺めていた
テソンは2階にソヌ達を案内した後ひとりでホールに戻ってきた
そろそろBHCも準備を始める頃だろう..
テスはオールインのショーのため俺の懐を離れた
俺はホールを離れ建物の裏手にある木陰に行った
その木陰はほとんど人が来ない
建物の何処からも見えない死角になっている
俺が唯一ひとりになれる場所だ..
ところがいつもは誰もいない俺の場所に人の気配だ..
ったく...あいつか...
木に寄りかかっているその影は遠目で見ても察しがついた..
俺はマイクの通信を切った..
「何故お前がここにいる...」
「何よ...そっちこそ...」
「俺の場所だ...」
「私の場所よ...」
「「..^^; ったくぅーもぉー! ^^;」」
俺と闇夜は顔を見合わせ互いに吹き出した..
「よく来るのか此処に..」
「此処は...風がよく通るんだ..」
「ぷっ...そうだな..」
「ぅん....」
そう言った闇夜は目を閉じて風を感じている
俺はその横顔を見ていた..
風が闇夜の髪を撫で白い頬に髪がまとわりつく...
俺がその髪に手を伸ばしそうになった時
闇夜が目を開け俺を見た
「ぁはっ...^^;;..」
俺は手を引っ込め..笑ってごまかした
「闇夜...ソヌふらふら病はどうなんだ..」
「ぷっ..何んじゃ..それ...」
「スカ対にしてはふらふらしてないか?」
「んなことないよ...皆と一緒..ま、確かにお気に入りだけどさ..」
「ならいいが...」
「テソンもいつもと変わりないよ..」
「また観に行くのか..」
「ぅん...」
「テソンは?」
「もう付き合いきれないからひとりで行けって..」
「ぷっはっは..そうだろうな..」
そう笑ったちぇみは腕を組んで目を閉じた
私はその横顔を見ていた...
一度は消したはずの想いはすっかり消えず埋み火のように残っていた..
心の中の熱い思いを燃やせないとき、諦めるとき灰をかぶせる
心を見透かされそうなときにもっともっと灰をかぶせていた
すっかり消してしまうと心が冷え冷えする...
「闇夜...」
「ぉ、お?なに...」
「背中話...俺にも見せろ..」
「寝話で聞けばいいじゃんか...」
「お前から見たいんだ...」
「わかった..」
私はちぇみの大きな背中にぴたっ#とくっつき前で手を組んだ
テスに見せたのと同じ妖精と風の話を見せた...おまけを付けて..
「風は..俺か...」
「ぅん...」
「風がちょっと渦巻いてたぞ...」
「それは..もう一つの風が混じったんだ...」
「...お前だな...」
「...たぶんね..」
「...俺にしか見えんだろ..」
「...そう...」
ちぇみは小さなため息をついてから
組んだ手をほどき片手を握ったまま振り返り私を見た...
俺が振り返ると闇夜も俺を見ていた..
「お前も..なのか?...」
「しょうがない...似てるから..」
闇夜はそう言うとちょっと笑った..
ミンチョルさん…。 足バンさん
ミソチョルでしゅ
ミンが帰ってきた!
ミンが、ミンが、ミンが帰ってきた!
ミンチョルさんはしゅごく恐い顔して
部屋に戻ってきたんでしゅ
いつもみたいにおでこに手をあてて
部屋の真ん中でに立っていたんでしゅ
そしてベッドに乱暴に寝っころがって
動かなかったんでしゅ
僕はデスクから見てることしかできませんでした
でもドアが勢いよく開いたんでしゅ
風のようにミンが入ってきたんでしゅ
お部屋の空気がぱぁって変わったんでしゅ
ミンはミンチョルさんに何かをたくさん話しかけました
ミンはとても強い感じでした
今までのミンとは違って見えましゅ
でも、でもね、そのミンの背中がね
言ってるのがわかるんでしゅ
あいしてる、あいしてる、あいしてる…って
僕にはわかるんでしゅ
ミンがたっぷりきしゅしてあげました
最初硬く握られていたミンチョルさんの指が
我慢できなくなって
そしてミンの肩を掴んでミンの名を呼びつづけました
僕はそこで目を閉じました
僕の役目が終わったことがわかったんでしゅ
ミン…ありがとうでしゅ
あなたの勇気でミンチョルさんを変えてあげてね
僕はまたミンチョルさんの心のすみっこで
ふたりを見守りましゅ
ミンチョルさん…。
ミンチョルさん…。
だいしゅきだよ…。
あいつ ぴかろん
俺はギョンジンと別れて、ホールに戻った
テジュンがチラッと俺を見て、少し顔を歪めてこっちに来た
なんか…バレてる?
「お前…」
「…はい…」
「なんかあった?」
「…え…」
それは…えっと…背中にその…耳もその…
「ギョンジン君どうした?なんで一緒じゃない?」
「…あ…もうじき来ると思うけど…」
「…なんで涙目?」
「…え?」
あ…そっちの方か…
そっちの…事のが…大問題だったよな…
「…あのね…」
俺はテジュンにギョンジンの事を話した
今夜、祭が終わったら、その恋人と息子のとこへ行ってしまうという事も…
話してるうちに涙が一筋流れてしまった…
テジュンは親指で涙を拭ってくれた
「それで…何したの?」
「…へ?…」
「キスしたのは解ってるけど、ほかには?」
「…へ…」
「お前の事だからなぁ…鎖骨にペロペロぐらいしたんだろ」
「…」
「したんだ…」
「えと…でも…」
「ああ、その前にあっちが耳でも噛んだ?」
「…」
「んで?シャツ脱がされて背中にキスでもされたか」
「…」
見てたのか?
「そおなんだぁぁぁへぇぇふぅぅん…」
「あの…テジュン…」
ペチン☆
テジュンが軽く俺の頬を叩いた
「で…ギョンジン君がブレーキかけたんだな」
「…」
「ったく…」
「…」
「謝らないの?開き直るつもり?」
「…ごめん…」
「…なあ…」
「…はい…」
「…何やってもいいからさ…僕に悟られるような事するなよ…」
「…」
「…って言っても…無理か…」
「…ごめん…」
「デコだせ!」
「え?」
「デコ!」
「…」
俺は髪をかき上げてテジュンの前にデコを出した
ビシィィィッ☆
「うっ…くッ…てぇぇっ」
「フン!」
「…テジュン…」
「はあっ…」
「…ごめんなさい…」
「戻ってきたらあの野郎…デコピン十連発だ!」
「…テジュン…」
「いいか、僕以外の男と寝たら、今度こそほんとに…」
『別れる』
その言葉をテジュンは呑み込んだ
そして俺を頭から抱きしめた
「…イナ…」
「テジュン…テジュン俺…」
「イナ…。何があっても…僕はお前が好きだ…」
「テ…」
「…まだ帰ってこないのか?あの野郎…」
「そういえば…遅い…」
遅い…
「…イナ…ちょっと見ておいで…」
「テジュン…」
いやな予感がする…
まさか…まさか…
いや…
あいつ…
そのまま…
俺はホールを出ると屋上ではなくフロントへと向かった
ミン・ギョンビンかミン・ギョンジンか、どっちの名前かわかんないけど、その人、チェックアウトしてませんか?
はい。先ほど…
先ほどって、いつ!
40分ほど前でしたでしょうか…あ…、BHCのキム・イナさんですよね?
…
キム・イナさんが訪ねてくるはずだから、これをお渡しするようにと…
手紙…
短い手紙…
やっぱり…
やっぱりだ…
俺はその手紙をくしゃくしゃにして、松葉杖でエントランスに向かった
居るはずもないのに…
ホテルの外に出たとたん、俺はこみ上げてくる叫びを抑え切れずに大声で泣いた
馬鹿野郎…別れの挨拶もなしかよ…酷いよ…
今どこにいるんだよ…もう空港?それとも車の中?
どこにいるんだよ!
電話しようとして電話番号さえ知らないことに気づいた
どこにいるんだよ…
せめて最後に声ぐらい聞かせろよ…
こんなの
あんまりだ…ギョンジン…
あいつ 2 ぴかろん
俺はテジュンに電話した
ギョンジンが既にチェックアウトしてたことを
泣きながらだったのでテジュンに伝わったかどうだか解らない
戻るように言われたので、俺は嗚咽を漏らしながらホールに行った
テジュンはホールの外で俺を待っていた
泣き崩れる俺を抱きかかえてくれるテジュン
「電話したのか?」
「しらない…ばんごうしらない…」
「…ギョンビン君なら知ってるんじゃないのか?」
「…」
そうだ…あいつなら
「どこ?ギョンビンどこ?」
俺はホールに駆け込んでギョンビンを捜した
いない
いないよ
スヒョンを捕まえてギョンビンの居所を聞いた
「ミンチョルの部屋で話し合ってる…どうしたんだ」
「ギョンジンが…出てった…」
「…え?…」
「電話番号しりたい…声が聞きたい…一声かけてやりたいんだ…俺…別れの挨拶してない…」
「…もう少し…待てないか?」
「待てない!もしかしたらもう飛行機に乗ってるかもしれないのに!待てるかよ!」
「…イナ…」
「ミンチョルの部屋に行く」
「だめだ」
「どうして!」
「やっとほぐれそうなんだ…解ってやってよ」
「…じゃあギョンジンは…ギョンジンはどうなるのさ!」
「…彼が下した決断だろ?お前も受け入れてやればいい…」
「…」
「イナ…お前の気持ちはわかるけど」
「もういい!もういいよ!お前らはギョンジンの事なんかどうだっていいんだもんな!」
「…イナ…」
感情が昂ぶっていた
俺はホールを出て、待っていてくれたテジュンの胸に飛び込んだ
泣きすぎて気持ち悪くなるほど、俺は激しく泣いた
もう会えない…もう二度と会えない…
寂しすぎるよギョンジン…
「イナさん…テジュンさん…どうしたんですか?」
「ミンさん、ミンチョルさん…」
ギョンビンとミンチョル?
…仲直りできたのか?
「…よかったですね…ミンチョルさん…」
「…ご心配をおかけしまして…」
石頭が割られたミンチョルは、やっと幸せを掴んだ子供のように、隣にいるミンによりそっている
テジュンを振り払い、俺はギョンビンに縋りついた
「イナっ…」
「イナさん、どうしたんですか?」
「お前…ギョンジンの電話番号知ってるだろ?教えてよ…教えろよ早く!」
「…どうしたんですか…」
「恋人と息子のとこに…行っちまった…」
「…え…」
「祭が終わってからって言ってたのに…もう…行っちゃったんだ!」
「…うそ…うそだ…」
ギョンビンは驚いて電話を取り出し、ギョンジンに電話をした
俺はその電話に耳を寄せた
出ない
メッセージを残すように促すアナウンスが聞こえる
ギョンビンが口を開く
「にいさん!今どこ?僕、アナスターシャとチフンの事で、まだ伝えてない事がある!祭が終わるまで、ここにいるって言ったじゃないか!
だから…後から言おうと思ってたのに…アナスターシャは結婚したんだ。チフンを可愛がってくれる人と…
兄さんがそっちに行っても…受け入れてもらえない…ごめん兄さん…僕…ごめ」
気づいたら俺はギョンビンを殴っていた
「何をするんだイナ!」
「イナ…落ち着け…イナ…」
ギョンビンを庇うミンチョル
俺を後ろから抱きかかえるテジュン
俺はギョンビンを睨みつけ怒鳴った
「わざとなんだろう!わざと言わなかったんだろう!今までの復讐のつもりかよ!なんで最初っからちゃんと話してやらなかったんだよ!」
「…少しぐらい…苦しめばいいと思った…」
「この野郎!」
「…そんなすぐに行動に出ると思わなかった…」
「…何も知らずに会いに行かせて傷つけるつもりだったのか?」
「違う!…祭が終わるまでには伝えるつもりだったんだ…だって兄さん…ちゃんと見ていくって言ってたから…」
「…電話…貸せよ…ギョンジンの番号…教えろよ…」
俺はギョンビンから電話を奪ってギョンジンをコールした
留守番電話になっても、何度も何度もコールした
「…うるさいなぁ…ほっといてくれよ…」
鳴り続ける携帯電話を捨ててしまおうと、僕はポケットに手をつっこんだ
電話を取り出して番号を見てみた
見慣れない番号だな…
いつもなら無視する
でも
出なきゃいけない気がして僕は電話に出た
「ヨボセヨ」
『ギョンジン』
「…」
イナ…どうして…
『ギョンジン!どこだ…今どこにいるんだ…』
きみの…近くに…いるよ…イナ…
『帰って来い!お前の恋人、結婚してるって…。息子も本当の家族だと思って幸せに暮らしてるって…
お前が出て行ってもどうしょうもないって…なあっ…なあっ…返事してくれよ。酷いよ…何も言わずに出てくなんて…あんまりだよ…』
「…どうしてそれを…お前が知ってるんだ…」
『え?』
「…アナスターシャに電話したんだ…僕の行き場所…なくなっちゃった…ふふ…」
『ギョンジン…』
「ねぇ…なんでイナがその事知ってるのさ…」
『…』
「…まさか…ギョンビン…知ってたの?…知ってて僕に会いに行けって…」
『ギョンジン…』
「…ふうん…なんだ…やっぱり許してくれてなかったんだ…」
『ギョンジン…ギョンジン…どこにいるんだよギョンジン!』
「…そうだよな…僕が今までギョンビンにしてきた事考えたら…これぐらい…」
『ギョンジン!』
「…大丈夫だよ…イナ…さよなら…黙って出てきてごめんな…」
『ギョンジン!』
プツン…
電話が切れた…
ギョンジン
ギョンジン…ギョンジン…
「兄さん、なんて?」
問いかけるギョンビンを、俺はもう一度殴りつけた…
つかの間 足バンさん
ギョンビンがミンチョルさんのところへ行くと言って席を立った
僕は戻ったスヒョンにそれを伝えた
スヒョンは「そうか」と言って椅子に座り込んだ
椅子にずるりと腰掛けて足を投げ出し目を閉じている
いろんな人ハグして歩いて…
こんなにくたくたになって…
なんのためにそこまでするの?
「ギョンビンたち…うまくいくといいね」
「ああ」
「ギョンビンがここに残ったら嬉しい?」
スヒョンは椅子の背に頭をもたれたまま横目で僕を見た
「そのために走り回ったんだろう」
「でも…」
でもギョンビンが戻ると
またミンチョルさんは遠くなっちゃうんだよ
僕らしくもなく言葉を呑み込んだ
スヒョンは横目のままじっと僕を見ている
尚も僕が俯いていると
スヒョンはそのまま身体をずらして僕の肩に頭を乗せた
「ミンチョルのこと言いたいんだろう」
「…」
「何万回言ってもわからないんだね、おまえは」
「人をばかみたいに言わないでよ」
「ばかだよ、手に負えない」
僕がふくれてると、スヒョンは僕の首すじに顔をうずめて目を閉じた
「ドンジュン…今日頑張ってるんだから少しは優しくしろよ」
「だって…」
「いいから…肩くらい抱けよ」
ちょっと悔しかったけど言われるまま肩に腕を回した
スヒョンはそのまま目を閉じている
こんなことで落ち着くの?
こんなことくらいで乱れた気持が小さくなるの?
こんなのでミンチョルさんの替わりになるの?
だから…替わりなんかじゃないって言ってるのに…
スヒョンの心がそう言ってる
舞台は階段落ちの準備が進められていた
まわりのざわめきは聞こえない
スヒョンの気持を理解しようとして僕はぽっかりと空いた暗い穴の中にいる
どこを頼りに這い出して行けばいいんだろう…
静寂はイナさんに突然破られた
腕を掴まれたスヒョンは驚いて身を起こした
ギョンビンの居所を聞いている
ギョンジン?兄貴のこと?
そのギョンジンが出て行ったと言ってる
スヒョンはミンチョルさんの部屋に行くと言ったイナさんを止めている
「もういい!もういいよ!おまえらはギョンジンのことなんかどうでもいいんだもんな!」
「…イナ…」
イナさんは僕たちを睨みつけて行ってしまった
スヒョンはぐったりと椅子にもたれ顔を手で覆った
そしてまた腰を上げようとした
「今度はなに?またスヒョンが行くの?」
「放って座ってるわけにはいかないでしょう?」
「みんな勝手じゃない」
「おまえは携帯ONにしてここにいて」
「なんで僕が…」
「みんないないんじゃ会場のことわかんなくなるでしょ」
「過労で死んでもしらないからね!」
「保険金はおまえにやるよ」
そういうとスヒョンは僕の髪にキスをして席を立って行った
僕は椅子にずるずるとだらしなく座り
仕方なく携帯をONにした
ため息はMUSAのパフォーマンスのイントロにかき消された
呼び出し オリーさん
殴られて呆然としているミンの肩に手をかけた
「ミン、ミンの携帯から兄さんに電話してくれないか」
「どうして?」
「僕が話があるんだ」
ミンは携帯をもう一度取り出した
何度もコールを繰り返してもうだめだろうか、と思った瞬間つながった
間髪をいれずに話した
「ミンチョルです。お話があります」
相手は何も言わなかった
「ミンが戻って来てくれました。それであなたとの約束が守れなくなってしまって
申しわけない」
相手はまだ黙ってる
「それでもう一度あなたとお話したいのですが」
「もう話はない。結局弟は僕を許してないんだ」
「あなたも甘い人だな。一度謝ったくらいで許してもらえると思ったんですか?もし僕がミンだったら一生許さないけど」
「だったら許すなんて言わなければいい。とにかくもうほおっておいてくれ」
「よかったじゃないですか。これであなたも少し気が楽になったでしょう。今までミンにしてきた事がどんな事だったかわかったわけだし
ミンはあなたがしてきた事をやるとどんな気持ちになるかわかったわけだから」
「よけいなお世話ですよ。あなたに何がわかるんです」
「でも僕が話したいのはそのことじゃなくて、ミンと僕との事です。会ってくれませんか?」
「弟と好きにすればいいだろう。僕には関係ない」
「ひどいな。僕はあなたの告白を我慢して聞いてあげたのに、こっちの話は聞いてくれないなんて
やっぱり勝手な人なんですね」
「…」
「でも僕はあなたとした約束を破ったから、あなたに釈明したいんです。僕、こう見えても律儀な性格でね。気がすまないんです
僕の顔を立てて会ってください。時間は取らせません。それとももう随分遠くまで行ってしまったんですか?」
「いや…」
「だったら、お願いします。僕の話を聞いてもらえれば、僕も気が済んでミンと心置きなくやっていけるし
あなたは僕に貸しができてちょっといい気分になれますよ」
「…」
「お願いします」
「いいでしょう」
「ありがとう」
場所と時間を決めて僕は携帯をパンと切った
ミンと目が合ったので、そっと手を握った
殺気立ってるイナに向かって言った
「イナ、15分後に中庭だ。まだここらへんにいるみたいだ」
「お前が呼び出したんだろう」
「ああ、でも僕、話ないから」
「何だって?だって釈明するとか何とか」
「う…ん、嘘ついちゃった。僕あの兄さん苦手なんだ」
「何だって!」
「だってミンとそっくりで、性格違うから紛らわしくて」
「僕、チフンのこと謝らないと…」
「ミン、必要ないよ。さっき兄さんにも言ったけど、お互いどういう気持ちになるかわかったんだからいいじゃないか。これでもういいだろう」
「15分後に中庭だな」
イナが自分に言い聞かせるように呟いた
「そうだ。嘘ついてすみませんって兄さんに言ってくれ」
「わかった」
「あ、ちょっと待てよ」
走り出そうとしたイナの肩を引き戻すと僕は一発イナに張り手を食らわせた
「何すんだよ、ミンチョル!」
「兄さんとミンの間のことで何でお前がミンを殴るんだ。二度とするな」
イナはちらっとテジュンさんを見た
そこへスヒョンが風のように滑り込んできた
「イナ、ひとりで行って大丈夫か?」
僕とスヒョンとテジュンさんとイナ、そしてミンがそれぞれの表情を浮かべた
テジュンです ぴかろん
テジュンです
イナの恋人やっとるとです
最初の頃は可愛かったと〜
僕のキスに酔いしれて、何度も何度も求めてきたとです
あの頃が懐かしか…
テジュンです
ソクのせいでイナはあないになったと!
大体なしてソクと僕とを間違えるとですか!
僕がイナとミンチョルさんを間違えた事があると?
なかと!
ミンチョルさんは誰も間違えんとですけども、イナと他のBHCの人達と、間違えることはなかとです!
その証拠に、イナを装ったスヒョク君など、一発で見抜いたとです!
その事を威張ったら『ホテルマンなんだから当たり前だろ』と言われたとです…
悔しか〜!自分の事は棚にあげて、僕の揚げ足ばかりとりよるとです!
そこがかわいかとですが…
テジュンです
ソク熱がおさまったら今度はミン兄です
ミン兄の心をほぐしたことはよぉくわかると…
偉いと思うです
しかしだからといって、心をほぐすためにそんなに濃いキスを何百回もせんでもよかと!
僕に『別れ』を意識させるぐらいの濃さでしたばい!
テジュンです
結局僕の気になっていたトイレでの%&4#で、僕らは仲直りしたとです
なんだかんだ言っても、イナは僕に惚れとるとぉ〜♪
その事に自信はあるとです
でも僕自身がイナのあの…浮気に耐えられるかどうか…自信なかとです…
テジュンです
今イナはミン兄に夢中です
屋上でヤる気になったらしいと…
屋上…僕ともまだヤってなかですのに…
そのミン兄が黙って出てって、僕はほっとするかと思うたです…違いました
僕は可哀相になってきて、イナに捜しに行かせたとです…
ミン兄、見つかったらしか…
これからイナが会いにいくらしかです…
テジュンです
イナがまた濃いキスをかますと思うので、中庭には近づきましぇん…
でも、イナがミン兄を説得して、BHCに連れて帰ることには賛成するつもりです
優しかでしょ?僕…
テジュンです
この頃ようやく気づいたと…
僕は究極の『えむ』やッちゅうこと…
イナが浮気すると腹が立つけど、後から色々と美味しいことも待ってるので、実はイナの浮気を楽しみにしてるとです…
イナが知らないところでどんな事してるのか、想像すると気持ちが昂ぶると…
大体僕の予想通りの事ばしてるとです!
許せんです!
でも許しちゃうと…
『えむ』ですけん…
テジュンです…
ミン兄がBHCについていくと、そういうわけで僕的には愉しみが増えるとです…
でも…いつまでもやられっぱなしでは、つまらんとです
祭が終わったら、僕もイナに一泡吹かせてやりたかです!
そのためにも…ミン兄BHC捕獲作戦に…協力を惜しまないつもりです!
◇秘め事2 妄想省家政婦mayoさん
☆あいつは一度離すと二度と戻ってこない...忘れるな...
俺がいつもテソンに言ってる言葉だ...
これは...俺にも言える言葉か.....
闇夜は俺の心を見透かすようにくすくすっ#と笑い
俺の心臓を人差し指でグイッ#っと押した...
「何だ..」
「さっき..ちぇみの埋み火が見えた...」
「ぁ...ぁぅ...」
「ちゃんと灰をたくさんかけないと..また言われるよ..」
「ぅ..ぅ〜ん..」
「また、強烈なやつ...ガツン#とくるよっ....テスシから...」
「や、闇夜ぉ..」
「それに..」
「何だっ」
「ちょいと..沸々してるね...今...」
「ぁ...ぁ...ぁふ......」
「ほんでちょいと...すけべぇ火だ...あはは」
「っんのぉ...」
「ふふ..」
「悪いかっ..どうせ俺はすけべぇーだっ」
俺をおちょくってくすくす#笑う闇夜を黙らせるため
俺は闇夜をぐいっ#と懐に引き入れた...
冗談交じりに抱くには強い力だった...
頭からすっぽり包まれ身動きができない...
身を任せ大きな背中に手を回した...
「な、闇夜..」
「何...」
「風同志がくっついても駄目ってことだな...」
「ぅん...帰る処がなくなるよ...」
「そうだな..俺にはテスが大事だ...お前にはテソンがいる..」
「機会を失って後悔しても遅いんだよ...」
「ん....わかってる...だが...お前は気になる...」
「似てるからね...どうしても惹き付けられる...」
「ん....それに..放浪するタイミングがいつも合いすぎる...」
「ぷっ...そう...」
ちぇみはそっと懐から身体を離し私の肩に手を置いた..
ちょっと眉を上げて悪戯な顔で覗き込む..
「ん〜...たまには渦巻くのも..悪くないんだが...」
「...すけべ...」
「また...そう言うな...ただのえろいおやぢみたいじゃないかっ..」
「ごめん...」
私の頬に大きな手のひらが触れた...
指先が私の瞼に触れ..睫に触れ...鼻をなぞる
..親指が唇をなぞる..顎に触れ...首筋をなぞる...
俺は手のひらと指先で闇夜の顔に触れた..
俺の手はなめらかな闇夜の顔を行き来する..
それらに唇を落とすわけにはいかない..
まだこのとき俺は我慢できた..
俺の頬に華奢な白い手のひらが触れた...
俺はその手のひらに唇を落とした...
闇夜の指先が俺の瞼に触れ...睫に触れ..鼻をなぞる..
唇をそっとなぞり...顎に触れ...首筋をなぞる...
闇夜の小指が俺の唇にふと触れた瞬間...
俺は小指を唇に取り込み舌で絡め取った
同時に闇夜は俺の小指を唇に取り込んでいた..
闇夜が俺の小指に舌を絡めた瞬間..
俺の小指が..つん..と痺れた..
痺れは手のひらにじわっと広がっていく...
俺はすぐ手を引っこめた..
同時に闇夜も手を引っ込めた..
俺の我慢が限界だった...
俺はもう片方の手で闇夜の頬に触れた...
【28♪ちぇみと闇夜のLove Affair】ロージーさん
中庭へ ぴかろん
ミンチョルがギョンジンに話をつけて、15分後にギョンジンが中庭に来ることになった…
俺はギョンビンを殴った事とミンチョルに平手を食わされた事で、かなり興奮しているようだ
テジュンの顔を見て少しだけ気持ちが落ち着いた…
スヒョンが一人で大丈夫かと声をかけてくれた
…スヒョン…お前の方が大丈夫なのか?そんな疲れた顔して…
俺はスヒョンに近づいてその頬に触ってみた
前にお前、俺の事慰めてくれたよな…
テジュンとチニさんの間で自分を決めかねてたあの時…
あの頃のお前と違ってなんて慈悲深い瞳をしてるんだよ…
あの真っ直ぐ馬鹿がお前をこんな風にしたのか?
「そうかもね…」
スヒョンが俺を見てそう呟く
「…なにがそうかもなのさ…」
「ん?真っ直ぐ馬鹿のせいかもって事…」
…あ…俺が触ったから読まれた?…油断も隙もないやつだな…ったく…
「スヒョン、お前は真っ直ぐ馬鹿の隣に座ってゆっくり休んでろ…働きすぎだよ…」
「…お前だって…」
「いいから…『八面六臂の大活躍』…って…使い方あってるか?…それじゃん…」
「…くふ…」
「さんきゅ…」
「一人で大丈夫なのか?」
「…行けよ…。テジュンも…ホールに戻って…。ごめんな、迷惑ばっかしかけちゃって…」
「イナ…僕は…」
「最後の仕事だろ?」
「…イナ…」
「おい、イナ。一人でほんとに大丈夫なのか?」
「フフ…」
俺はスヒョンの肩を押しテジュンに顎をしゃくって『行け』と合図した
二人はホールの扉に向かって歩きだした
少し先をミンチョルとミンが行く
「ミンチョル、ギョンビン。待てよ」
俺は二人を呼び止めた
ミンチョルが振り返る
「なんだ」
「お前らに来てもらう」
ギョンビンが驚いたように振り返った
「何で僕達が?ミンのお兄さんに話なんかないぞ」
「俺にはある」
「…?…僕に話か?…だったら今してくれ」
「いや、ギョンジンの前で話がある。ギョンビン、お前も来てくれ」
「イナ…何を企んでる…殴った事を怒ってるのか?」
「そんな小せぇ男だと思ってんの?!」
「…」
「ミンチョルさん、僕、行きます」
「ミン!」
「チフンの事、謝りたいから…」
「だよな。すっきりしたいよな、ギョンビン」
「イナ!…ミン…もういいじゃないか。会う必要なんかない!」
「僕はちゃんと謝りたいんですミンチョルさん」
「…ミン…」
「ほら、聞き分けがいいぞ、お前の恋人はさぁ」
「…イナ…」
「来てくれ」
「待て。何の意味がある」
「意味?意味がなきゃダメか?」
「僕が行く必要性がどこにある?お前のわがままなら聞かないぞ」
「わがまま…どこのどいつが一番わがままなんだよ」
「…」
「勝手な理由でみんなをかき回してるのどこのどいつだよ!」
「…お前だってそうじゃないか」
「俺は今、ギョンジンを助けてやりたいんだよ!」
「…じゃあお前一人でやれ。僕にもミンにも関係ない」
「僕には関係ありますミンチョルさん。僕の兄さんだ…」
「ほら!頭いいよギョンビンは…。ああギョンビン、お前の兄貴の名前な…」
「わかってます。ギョンジンでしょ?」
「…うん…」
「兄さん…教えてくれなかったな…」
「…バカだもんあいつ…」
ギョンビンはクスっと笑った
ミンチョルはまだ強張った顔をしている
「なんだよミンチョル、怖いのか?」
「…え…」
「お前そっくりな男に会うのが怖いのか?またギョンビンを取られるとでも思ってんの?」
「…そっくり…」
「そ〜っくり!でもギョンジンのがずっといいけど!」
「…」
「来てくれよミンチョル」
「嫌だ」
この石頭狐!くそうっ!
俺は持っていた松葉杖を床に叩きつけてへし折った
「何やってるんだ!」
「へへ…折れちゃった。俺、中庭までなんて歩いていけねぇもん、おんぶしてってくれよミンチョル」
「…貴様…」
「じゃギョンビンでもいいよ。おんぶしてくれ」
ギョンビンが無言で俺の方に向かってきた
それを止める石頭狐
「どうしてですか。僕は兄さんと話がしたい」
「そうじゃなくて…僕がおぶる」
「は?」
「ミンにおぶわせたくない、この男絶対お前にちょっかい出すに決まってる」
「…は?…」
なんだよっ!信用ねぇな!
「おいミンチョル!言っとくけど俺は別にコイツの事好きでもなんでもないからなっ!俺が好きなのは」
ギョンジンだ…と言おうとして俺はドキンとした
好き?
俺が好きなのは…テジュンだよな…
んでも…俺…ギョンジンも…
好き?
「なに黙りこくってる」
「…あ…とにかく…おんぶしてくれよな」
「…仕方ないな」
「へへん」
「…僕だって壊すの我慢したのに、お前、その松葉杖、テジュンさんのホテルの備品じゃないのか?!」
「…あ…」
「だから馬鹿だって言うんだお前は、ほらっおぶされよ!」
「…ふん…」
俺はミンチョルの背中に乗った
くっそう、うなじキスしてやろうかこの石頭狐め!
「イナさん、ミンチョルさんにキスしないでくださいよ!」
「あん?こんなヤツにするかよっ!」
「したら振り落とすからな」
「へん、落とせるもんなら落としてみろよ!」
「僕が引きずりおろします」
「つべこべ言ってないで中庭まで連れてってくれよ馬鹿!」
「馬鹿って言うな!物凄く腹が立つ!」
「じゃあ虚勢張りのいばりんぼ」
「…ミン…こいつの頭を三発殴ってくれ!」
「…」
「ミン!」
「イナさんに賛成します」
「ミン!」
「へっざまあみろ」
「この浮気男!テジュンさんに言ってやる、イナはミンの兄貴の事好きって言いましたって」
「言ってません〜」
「言ってた!心の中でな」
「…」
「…黙り込むな!生々しい」
「…」
「イナ!」
「…」
図星をさされて何も言えない
ギョンビンは俺たちの言い合いを聞きながら、クスクス笑っていた
こんなに和んでていいのか?
ギョンジンにどんな顔して会えばいいんだろう…
泣いてしまうかもしれない…
テジュン…ごめん…お前が好きだよ…お前を愛してる
けど俺…ギョンジンの事も…好きになっちゃったみたいだ…
BHCに連れて行きたいんだ…
だからこの石頭狐にそれを認めてもらいたいんだ…
ダメかな…お前…怒るかな…
俺たちは、中庭に出て、白いベンチに座った
【29♪テジュンの涙】ロージーさん
中庭にて ぴかろん
中庭のベンチに腰掛けたミンチョルと俺
ミンは立ち上がって周りの様子を見渡している
そして俺の腕を引っ張って立ち上がらせた
「ミン…そいつに触るな!バイキンが移る!」
「ミンチョルさん」
「なんだよ…何すんだよ…」
「イナさんと僕はこっちの木陰に隠れます」
「ミン!そんな危険なこと!」
「ミンチョルさん…大丈夫ですよ」
「そだよ、こんな奴襲わねぇよ!…でもなんで隠れるの?」
「…僕達が三人揃ってたら…兄は顔を出さないかもしれない…」
「…」
「ミンチョルさんに会うって事でしぶしぶ承諾したんでしょ?」
「…そうか…」
「中庭に入る前にUターンしてどっか行っちゃうかもしれない…兄さんの事だから…」
「…そういう奴?」
「…そういうところもある…」
「ミン…お前に似ている…」
ミンチョルが潤んだ目でギョンビンを見てそう呟くと、ギョンビンはふっと笑った
俺は立ち上がって木陰に隠れた
なるほどな、中庭に面したガラス張りの窓から、ここは死角になるってわけか…
「あと何分ある?」
「四分ぐらいかな…こういう時…兄は…少々遅れてくると思う…」
「…ふうん…」
「ミン!大丈夫か?」
「大丈夫だよ!2m離れてる!…たくあの馬鹿狐…」
「ふふ…なんだかんだ言ってイナさんとミンチョルさんは仲がいいんだな…」
柔らかい笑顔のギョンビンを見ながら俺はギョンジンの話をした
「あのな…あいつ…お前の事…」
「ん?なんですか?」
「…お前を抱いて…お前に殺して貰おうとしてたんだ…」
「…」
「昨日の夜からずっと…その事ばかり考えてたみたいだ…」
「僕を…抱くって…」
「…でもできないんだよ…あいつ…」
「兄さんはノーマルですよ、基本的に」
「へ」
「僕の彼女、7人も盗ったんです。全員と行くとこまで行ってますし、自分の彼女も結構いっぱいいたし…」
「…」
「それに、イナさん知ってますか?兄は陰で『エロミン』って呼ばれてたんです」
「えろみ…」
だからあんなエロキス…
「手が早いんで有名だったんです」
「ああ…それであんな素早い…」
「え?」
「あ…いや…」
「だから…僕を抱くなんて…兄にはできっこないですよ…『男を相手にする』なんて選択肢、今までの兄にはなかったはずです」
「…」
じゃああれは何さ…。屋上で俺に…あれは…どういう事さ…
「イナさん、兄に何かされました?」
「…」
「されたんですか?!」
「…」
「あの…黙り込まないでください、ほんとに生々しいです…」
「…男を好きになるっていう選択肢、あいつにはないの?」
「…今までは…ね」
「…今は?」
「…それは直接兄に聞いてくださいよ…」
「…でも思いつめてた…お前の事めちゃくちゃにして自分を殺してもらうって…。お前の事愛してるって…そう言ってたんだ…」
「それは…僕を父やチフンと見立てて…そう言ってるだけですよ…」
「…そうかな…。俺…そうとは思えない…」
「は?じゃ、ほんとに僕を…」
「いや…あいつが抱きたかったのは…多分…自分なんだ…。抱いて壊してしまいたかったのは自分なんだ…。自分そっくりのお前を抱いて壊したかった…」
「…はあっ…」
「お前にしたら迷惑な話だよな…」
「冗談じゃないよ、兄さんの道連れにされるなんて!」
「怒るなよ、実行できるわけねぇじゃん、あんな小心者に…」
「…小心者?…」
「自分を出せずに生きてきた奴なんだからさ…」
「…ふ…どうかな…」
ほんと…どうかな…わかんねぇけど…でも…
女好きなんだな、ギョンジンって…
だから…あの時も、さっきも…止めたのかな…
…はぁ〜…
「イナさん…来た…」
「…」
ギョンジンが来た
ミンチョルの方に歩いてくる
強張った顔してる…
また心を閉じかけてる?
せっかく…お前自身が出てきたってのに…
こいつがちゃんと話してやんないから…
俺はそおっとギョンビンの腕をつねってやった
ギョンビンは俺を睨みつけた
ふん!
「…釈明とやら、聞きましょう」
「…ミンは…貴方とは帰らない」
「弟から直接聞きました」
「約束を守れず申し訳ない」
「…いいえ…。…その方が…僕の心も軽くなる…」
「僕はミンとずっと一緒にいたい…。いいですか?」
「…何故僕に?弟に誓えばいいことでしょう?僕には…関係ないと思うけど…」
「お兄さんの許しを得たい」
「…許し…そんなの…必要ないでしょう?…好きなようにしてください…。弟はもう大人なんだもの…」
「貴方は…どこへ行くつもりですか?」
「…」
「元の仕事に戻るのですか?」
「…いや…」
「行き先ぐらい教えてやってくださいよ、ミンのたった一人のお兄さんなんだから…」
「…落ち着いたら連絡すると伝えてください…」
「…僕もかつて、その言葉を言ったことがあるな…」
「ふうん…そうですか…。…そういえば…ある人に…僕は貴方とそっくりだと言われました…貴方もさきほど話したとき、そのような事を言いましたね…」
「…ええ…」
「だから弟が貴方に惹かれたと…。それは…弟が僕を好きだったという事?」
「そうです」
「…僕も弟が好きでしたよ。今朝まで僕は弟を犯すつもりだった」
「…」
「犯して壊して狂わせて、僕を殺してほしかった」
「…」
「馬鹿げてるな…。そんな事思ってるから弟にしてやられるんだな…フフ…」
「…」
「ねぇ…ガラスが取れた目玉って知ってますか?」
「は?」
「体の中から黒いモンが出てくってわかりますか?」
「黒い…モン?」
「真っ白なシャツに20数年こびりついた泥汚れは、時間かけなきゃ落ちないんですって…」
「…はあ…」
「しかもその泥汚れには…泥だけじゃなくてうん○が混じってるらしいです…」
「…あの…」
「臭くて汚くても捨てちゃうより洗うだろっていいながら、シャツなら捨てるか…って」
「…」
「だから僕は言ってやったんです…たとえたいなら『お気に入りのシャツ』ってした方が説得力あったなって…」
「…なんの話ですか?」
「僕とギョンビンの話です」
「…」
「わかりにくいですか?」
「…」
「さっきギョンビンと話したとき、超高速クリーニングでかなりキレイにしたつもりだったんだけど…
やっぱりうん○が混じってるから…完全に汚れが落ちてなかったんだな…」
「…あの…」
「だから…ギョンビンは…」
「何の話なんですか!あれ…」
「…」
怖い顔で睨みつけるギョンビン
俺は俯いてた
俺の『幼稚なたとえ話』を持ち出したギョンジン
涙が出そうになった…
やっぱ一人にしておけない…
「ねぇイナさん!うん○ってなんの事でしょうねぇ」
「…っせぇな馬鹿」
「…あ…イナさんがそんな話、兄さんにしたんでしょう!」
「…」
「誰かほかに人がいるようですね…」
「は…いえ…あの、その…シャツがなんなんでしょうか…」
「…ギョンビンが僕の事を許してくれるまでには、相当時間がかかるんでしょうね…。でももういいです…許してくれなくても…
僕は今までそれだけの事をしてきたんだ…」
「…もう一度ミンと話してみますか?」
「…」
「どうです?」
「…またいずれ…」
「チャンスを逃すと一生巡ってこないかもしれませんよ…」
「…わかってます…。じゃあこれで」
「あ…ギョンジンさん!」
「失礼します…」
中庭にて 2 ぴかろん
立ち上がったギョンジンを見て、ギョンビンが飛び出した
「兄さん!」
「…」
「ごめん…チフンの事…」
「…」
「ごめんなさい。後で言うつもりだったんだ。兄さん、祭が終わるまでここにいるって言ったから…意地悪したんだ僕…」
ギョンジンは寂しそうに笑うと、ギョンビンの頬に触れた
「聞いてたの?今の話…」
「ごめん…」
「じゃ、お前を抱こうと思ってたことも聞こえた?」
「…そんな事できないくせに…」
「ああ…できないくせにね…。すまないな…そんな事考えて…」
「兄さん…」
「幸せにな…」
「待ってよ!」
「もう話す事なんかないだろ?…元気でな…」
ミンチョルたちに背を向けたギョンジンを、俺は追いかけた
ズルズルドタドタはあはあ
俺の出す不快音に反応したギョンジンは、ゆっくりと振り返る
俺はギョンジンに抱きついた
「イ…ナ…」
「ウウ…うああんああんうあああん…」
「イナ…」
言葉が出てこない
ただガキのように泣きじゃくるだけで、俺は馬鹿みたいだった
「イナ…ごめん…」
「ひでぇよっ!ひでぇよっ!俺になんにも言わずに…ばかっばかっ!」
「…だって…」
「だってなんだよっ!ひっくひっく…寂しいじゃねぇかよぉっ!」
「…お前の顔見たら…決心が崩れそうで…」
「もうどっこも行かないでくれっ」
「…イナ…」
「祭終わったら俺たちと一緒に行こう!なっ」
「…イナ…」
「ミンチョル!いいだろ?ギョンジンもBHCに入れてくれ!」
「…イナ…お前…そのために僕を…」
「いいだろ?ギョンジンはギョンビンの兄貴なんだぜ!」
「…」
「な、ギョンジン、俺たちと一緒にいこ?な?」
「…イナ…」
「行くとこないくせに!ギョンビンだっているんだからさ、俺たちと一緒に…な?な?」
「…イナ…そんな…」
「兄さん…僕も…兄さんが来たいなら一緒にくればいいと思う…」
「ギョンビン…」
「ミンチョルさんもいいよね?」
「…」
「ミンチョル、いいだろ?いいよな?こいつ女の扱いは天下一品らしいぞ!なっギョンビン」
「そうだね、僕よりホ○ト向きかもしれないよ、ミンチョルさん…」
「キスがうまいの、お前も知ってるよな?ミンチョル」
「ケホンケホン」
「いいよなっ!なっ!」
「ギョンジンさんのしたいようにすればいい」
「やった!石頭が認めたぞ!な?な?」
「…そんな…」
「じゃ、僕達はそろそろ失礼する」
「あっ…待てよミンチョル」
「ギョンジンさんを説得できるのはお前しかいないだろ?僕達はお邪魔だから…ねっミン」
「…あ…うん…。イナさん、お願いします…ねっ」
「おうよっ!ミンチョルの同意さえ得られれば鬼に金棒だもん!」
「じゃ、いこう、ミン」
「はい、ミンチョルさん」
ミンチョルとギョンビンは、嬉しそうに中庭を後にした
きっとホールに戻る途中で…はむはむするんだろうな…絶対…
二人を見送っているとギョンジンが背中から俺に抱きついてきた
胸がキュンとなる…
「ごめん…イナ…」
「…何がごめん?」
「黙って出てってごめん…」
「…ん…」
「僕を…誘ってくれて…ごめん…」
「…ありがとうでしょ?…」
「…お前を…好きになって…ごめん…」
「…ギョンジン…」
「だから…だめだよ、僕、お前のそばにいたら、お前に何するかわかんない…」
そう言いながらギョンジンの手は、無意識に俺のシャツのボタンを外しにかかっている…
これかよ…。手が早いってのは…
文字通り「手が」早いよ…
「…お前…何やってんの?」
「え?…あっ…ごめんついいつもの癖でっ…」
「…いいよ…続けても…」
「…イ…イナ…」
「ただし、BHCに来るって約束してくれたら…。いいよ…俺…どうなっても…」
「…どうなっても?」
「…ああ…。BHCに来るか?」
「…」
奴は答えないで俺のうなじにキスを落とす
「返事…しろよ…来る?」
「…」
俺のシャツをはだけさせるギョンジン…ちょっと…外なのにっ!
「答えろよ!一緒に来るのかよっ!」
「…」
芝生に俺を押し倒すギョンジン…
芝の刺激が俺の感覚を鋭くさせる
鎖骨に落とされるギョンジンの唇
胸を這うギョンジンの指…
「あ…くっ…来るのかよっ…あっああっ…」
ギョンジンの唇が首筋を這い、顎に登り、俺の唇を包み込む
ギョンジンの舌が俺の舌を攻め立てる
息ができなくなりそうだ…
卑怯者…返事もせずにこれかよ…
気が遠くなるよギョンジン…
「好きだ…イナ…好きだ」
「…俺も…好きだよ…ギョンジン…」
「お前を抱いても…いいのか…」
「…」
「…テジュンさんはどうなるんだ」
「…テジュン…」
「はやく止めないと僕はお前を…」
「BHCに来る?」
「…」
「来てくれる?」
「行ったら抱いてもいいのか?」
「…」
「馬鹿!」
ギョンジンは突然俺から離れた
「ギョンジン…」
「馬鹿!」
「…」
「テジュンさんとこに帰れ!」
「…」
「捨て身で体当たりってのいい加減にしろ!もっと自分を大事にしろよ!」
「…お前だって…自分を大事にしろよな…」
「…」
「俺…テジュンの事愛してる…。テジュンがいなきゃもうなんにもできない…。けどお前の事も好きだ…。お前にもそばにいてほしい…」
「そばにいて、お前がテジュンさんと仲良くしてるのを指咥えて見てろっていうわけ?」
「お前を一人にしたくないんだ…」
「…」
「俺、カレーは甘口も辛口も好きなんだ」
「…はあ?…」
「どっちも好きなんだ。どっちも必要なんだ!」
「…」
「チョコレートも酒も好きなんだ!」
「…」
「そういうの…だめ?」
「…僕は何?お前のおもちゃ?おもちゃになれっての?」
「…違う…そうじゃないけ…」
ギョンジンはまた俺にキスをした
「いいのか…ついていっても…。そばにいたらいつかお前を…僕のモノにしてしまうかもしれないのに…」
「んも…キスしながら喋…んな…ん…」
「好きなんだろう?」
「…ん…」
「僕も好きなんだ…これ…」
ギョンジンが一緒に来ることになった♪
テジュンの事を考えるとちょっと心苦しいんだけど…俺は嬉しい(色々と嬉しい)
ダメかと思ったけどギョンジンは結構嬉しそうな顔をしていた
テジュン、%$’#はお前とだけしか…しない…つもり…だから…怒るなよ…んむむむ
【30♪Just lover by Gyonjin】ロージーさん
緩やかな時間 れいんさん
それから僕らは言葉もないままベンチに並んで座っていた
急に何やら人の気配がしはじめた
中庭に誰かが来るようだ
「ひとまずその荷物、どうにかしようか。それじゃ祭も見れやしない」
テジンさんに促され、テジンさんの部屋に戻った
以前並んで歩いた時は、二人の間に距離があった
あの時より確実に僕らの距離は近づいた
ついさっき別れを告げたはずの部屋…
僕はまたここに戻ってきてしまった
嬉しさと気恥ずかしさと…そして後ろめたさと
祭に戻ろうと言っていたのに
テジンさんは口も聞かず、窓の外をぼんやり眺めてる
彼の横顔…
額にかかる無造作な前髪
鼻から口にかけてのなめらかなライン
少し捲れあがった薄い唇…
僕は見とれながらも、彼が何を考えているのかわかっていた
「…今、何を考えていますか?」
「…何から考えたらいいのかな…今日はおまえに振り回されてさすがに疲れたよ。あはは」
おどけたように笑う彼
無理に笑顔を作らないで
僕はますます辛くなるから
「テジンさん…僕の事で苦しまないで下さい」
静かに彼が振り向いた
悲しい顔に戻っていた
そしてゆっくり言葉を続けた
「スハ…。これからどうしたい?」
「…」
「僕達には避けては通れない事がある。わかっているだろ?…さっきはおまえが愛しくて、離したくなくて…感情だけが先走った」
「…僕にはそれが…嬉しかった」
「おまえはそんなに器用な奴じゃない。だから僕は…ずっと気持ちを抑えてた。なのに僕は…」
テジンさんの目が潤んでる
僕は彼を苦しめてる
苦しめたくなんかないのに
彼の幸せを願っているのに
「テジンさん、僕はどうにかしたいなんて考えていません。ただ、あなたの支えになりたい。傍にいて力になりたい
あなたが幸せになるのを見ていたい。ただそれだけです」
「僕の幸せ…?じゃおまえの幸せはどうする…」
「僕は…妻にちゃんと話すつもりです…今までの僕の気持ちを嘘偽りなく打ち明けたい…」
「そんな事…!」
「身勝手なのはわかっています。許されるはずもないでしょう。だけど僕の心をありのままぶつけたい。…今までそんな事した事ないから…」
「君はそれで…いいのか?」
「僕はこんなに誰かを…その…自分を見失う程想った事はなかったから…なんだか今は、こんな自分が自分でちょっと好きなんです」
「だったら…」
「テジンさんはダメです!」
「スハ…」
「まだ自分の事もわかってないんでしょう?まずは逃げずにちゃんと自分の気持ちを見つめて下さい
焦らないで、時間をかけて。それに今、余計な事を話して奥さんの体に障るといけない」
「スハ…おまえ…」
「もうこの話はやめましょう。そろそろ祭に戻らなきゃ。…でも、その前に…そのシャツのボタン、取れかかってますよ
貸してください。僕が繕いますから」
テジンさんは取れかかったボタンを見て苦笑いした
「いつの間に…気づかなかったな…でも、僕の方が手早そうだけど」
「いいから僕にやらせて下さい」
彼はシャツを脱いで僕に渡した
そして傍にあった椅子に跨り、背もたれに腕と顔を乗せて僕の手元をじっと見てる
彼の視線にドキドキして僕は顔を上げた
彼と視線が絡み合う
口の端だけちょっと上げて彼が微笑む
つられて僕も微笑んだ
僕はわざとゆっくりボタンを縫った
緩やかに流れるこのひととき
ほんのつかの間の、僕にとってはたまらなく幸せな時間
このまま時が止まればいいのに
僕はそう願わずにはいられなかった
えむあんどえす ぴかろん
イナがギョンジン君と一緒に戻ってきた
横目で確認する僕
手を繋いでいない
おかしい…
中庭で何をした?
…
ぞくぞくぞくっ
…
ああ…いけない…コホンケホン
「テジュン…ただいま…」
「おうっ早かったな…うまくいったか?」
いかん…ちょっとハイテンションだ…
「…ん…。ギョンジンBHCに来る事になった…いい?」
「そうかぁ!よかったなぁイナ!」
いかんっ物凄く不自然だっ!
「喜んでくれるの?」
「ああっ!色々と楽しいだろう?」
物凄くいかんッ!止まらないハイテンションだっ!どーしよう…
「てじゅ…しゅきっ」
「…」
ぐふふーがわ゛い゛い゛〜
こーやって甘えっこしてくる時って…
なんかしたって時だよな…僕のハイテンションぶりにも反応しないってことは相当…ううう…
れもかわいいし…うう…
んちゅ
「やん…みられる…」
んそっ見せつけてんの…あいつに…ゾクゾクッ…
はむっはむはむはむ
「そーしはいにんっ!場所をわきまえてくださいっ!」
「あはむはいはいはむっ」
「んもっ…ん…」
ばきっ☆
何かを殴るような音がした
それはギョンジン君の座っている方から聞こえた…ふふん…はむはむはむううっ
げげん☆
何かを蹴飛ばしたようだ…ふふん…妬かせてやる!
「てじゅ…みんなみてゆ…」
きゅううんっ。でれれれぇん…
「いいじゃないか…もう…」
「あとでゆっくりしよおよ…ね?」
「ぐふっ…ぐひひっ…チュチュチュチュ…」
だんだんだん☆
ああ、あの野郎が地団駄踏む音がするふふふん
ああ、楽しいなっ
『えむ』で耐えた後の『えす』って気持ちいいっ!ふふん
「てじゅ…オしはいにん、にらんでるからせきにもどる」
「おお…そか…じゃ後でゆうううっくり…なっ」
「…ん…」
イナは席に戻っていった
隣にギョンジン君がいる
ふんっ気取ってんじゃねぇよ!
「ただいま…」
「…」
「どしたの?ギョンジン」
「…テジュンさん、わざとだよな」
「ん?何が?」
「あんなとこでお前にあんなしつこくキス…」
「…何…妬いてるの?」
「…僕…こんなの耐えられない!」
「…でへ…」
「でへじゃないよ。わかる?僕がどういう気持ちか」
「わかんない」
「…」
「でもテジュンならわかると思うよ」
「…はあっ…。テジュンさん…凄い人なんだな…」
「うん」
「…お前…僕の前でそういう事言う?」
「…だってさ…テジュンは…ほんとに凄いんだもん」
「…こんなの初めてだ…僕…なんでお前なんか好きになっちゃったんだろ…」
「ギョンジン」
「…何?」
「BHC来るの辞める?」
「…」
「テジュンは喜んでたよ、お前が来るって言ったら…」
「なんで?!」
「…うーん…知らないけど…」
「…ほんっと凄い人だな…」
「うん」
「…ほんっと…お前あの人に惚れてるんだな…」
「うん」
「…僕は…何?」
「だからしゅきだってば…」
「…ずーっと…こうなわけ?逆転できないわけ?」
「ぎゃくてん?」
「うん逆転」
「逆転してくれるの?!」
「…してくれるって…してもいいのか?」
「…」
「イナ?いいのか?」
「…ギョンジンこそいいのか?」
「へ?」
「ギョンジンがいいならいいぞ…でもテジュンには内緒な…」
「…へ…」
「楽しみにしてる…ちゅ」
「あ…こら…人が見てるのに…」
「てじゅんはへいきだよ」
「テジュンさんと比べるなよ…」
「…ん…」
あいつ…僕が見てないと思って…今チュッしたな?!
ああ…くそう…一体中庭でナニをどうしたんだっ!
ギョンジン君の目つきが違うもぉん…
ああ…どうしよう…イナを盗られたら…
くうっ…スリリング…そしてエキサイティング!
ああ…どうしよう…僕って変?…くうっ
逆転してもいいのかな、テジュンさんと僕とが…
イナはそれを望んでるのかな?よく解らない…
僕、ほんとにBHCに行っていいのかな…
ああ…隣に座ってこっそり指を絡ませてくるイナに…僕はドロドロに溶けそうだ…どうしよう…
イン・ザ・ベッド オリーさん
頭に激しい衝撃が走った
その衝撃がじわじわと甘い波となって全身に広がる
僕は枕に顔をうずめ、両手でシーツをきつく掴む
僕の体はもう僕のものではない
ミンの思うようにしなり、ミンの思うように震え、ミンの思うように喘ぐ
ミンはわざと体を離し、そんな僕を見ている
僕が乱れるのを見て、またミンが昂ぶり猛々しく僕を攻める
僕にできるのは喘ぎながらミンの名前を呼ぶことだけ
突然耳元でミンが囁く
「感じる?」
「もっと乱れて…」
「僕の事愛してる?」
「もっと欲しい?」
返事をする事もできず僕は枕の中で喘ぎ声をもらす
ミンの舌が僕の背筋をなぞり、
僕はまた違う波に飲み込まれ、かすかに頭を振る
その時
目の端に何かを感じ、枕の中からぼやけた視線を泳がせる
ベッドの端にあの子がいる
あの子が僕の方をまっすぐに見ている
シーツを掴んだ指を広げ、そろそろとあの子に伸ばす
震える指の先があの子の足に届いたところで
ミンがまた大きく動いて僕を支配する
僕は大きな波に揉まれながらやっと指を動かし
あの子の足から胴体へと指を這わせる
ミンの舌が僕の首すじに吸いつき、
僕はめまいを感じ目を閉じる
やっとのことで指に力をこめ、あの子を掴む
ミンがふいに僕の指の先を振り返る
僕の手の中のあの子を見て、ふっと顔をゆるませる
「お気に入りだね」
そう呟くと体を起こし
さらに大きく動いて僕を翻弄する
僕はあの子を握りしめたまま
絶え間なく全身に染み渡る甘い波に揺られる
あの子を掴む指の先がまた細かく震える
ミンの胸が僕の背中に吸いつき、
ミンの手があの子を握る僕の手に重なる
「3人で…」
ミンが小さく耳元で囁く
次の瞬間僕は激しいうねりの中へ放り込まれる
目の奥で白い光が無数に飛び散り
喘ぎ声をもらした唇がミンの唇で塞がれる
あの子を握りしめたまま、僕はミンと果てる
静かで穏やかな波に揺られる
目を閉じたままミンの汗を背中に感じる
「こんな風に抱いてみたかった」
ミンが僕の肩に唇をあてる
僕はやっとミンから解放されため息をついた
「どうだった?」
ミンが心配そうに僕を覗き込む
僕はあの子の顔をミンに押しつけ、クスクス笑う
ミンはあの子の鼻に自分の鼻を押しつけあの子に聞いた
「どうだった?」
【31♪ある愛の詩 byミン】ロージーさん
イン・ザ・ハンド 足バンさん
ミソチョルでしゅ
大変なことになっていましゅ
ミンはいきなりミンチョルさんのシャツをはぎ取りました
ボタンがぶちぶちって2こ飛びました
ミンチョルさんは腕の力を抜いちゃって動きません
ミンはとても強い目で見おろしゅと
とても乱暴にミンチョルさんの服を脱がしました
僕は目のやり場に困りました
だってそんな裸んぼうのミンチョルさんを見たの始めてだもの
それにそんな強いミンを見たのも始めてだったんだもの
ミンはしゅごい目でそのミンチョルさんの身体を見渡しゅと
服のままミンチョルさんの上に乗っかりました
「僕のしたいようにするよ」
ミンはいろんな所にきしゅをしました
ミンチョルさんは目をつぶって
ミン、ミン、ミンってずっとミンの名前を呼びました
ミンは途中で自分の服をはぎ取り回りに散らかしました
シャツが僕の頭に引っかかった時はむっとしたけど
すぐにはずれたので、お咎めはナシにしましゅ。ぷんっ
ミンチョルさんがずっとやっつけられてましゅ
僕は頑張れミンチョルさんって思ってました
目の前のミンチョルさんの歪んだ顔は始めて見た顔だったでしゅ
前髪が汗で張り付いていましゅ
ちょっと開いた唇は紅く染まって花びらのようでしゅ
だいしゅきなミンにだけ見せる顔なんでしゅね
ミンがミンチョルさんの背中を舐めていた時
ミンチョルさんが朦朧としながら
シーツに埋めていた顔をちょっと持ち上げました
がーんっ!目が合っちゃいました
僕は心の目をぎゅってつむりました
見てません。見てませんって
どうしましょう。どうしましょう
ミンチョルさんの手が伸びてきましゅ。ひーん
僕の足に、身体に、汗ばんだ手が這いましゅ
そしてとうとう僕はミンチョルさんに掴まったでしゅ
「お気に入りだね」
ミンはそう言うと急にぐんぐんって動き出しました
僕はミンチョルさんに強く握られたままシーツに顔を突っ込んでいましゅ
くるしい…
でもミンチョルさんの手は小さく震えていましゅ
ミンがだいしゅきで嬉しいんだって伝わりましゅ
掴まれている力が倍になりました
ミンチョルさんの手の上からミンが握っているんでしゅ
く…くるしい…
「3人で…」
ミンがそう言うとふたりは
僕が脳しんとうを起こすかと思うほど激しく動きました
ミンチョルさんの喘ぎ声がすぐ耳元でしましゅ
ミンの低い声もリズミカルに聞こえましゅ
ひときわ僕を握った手に力が入ると
ふたりは声にならない音を喉から漏らして
そしてばったり力を抜くと急に静かになりました
ミンチョルさんもミンも肩で息をしていましゅ
僕はやっと力に解放されました
「どうだった?」
そう言ったミンに、ミンチョルさんは僕をミンの顔に押しつけました
僕はくらくら目が回っていましたがミンを真っすぐ見たでしゅ
ミンは鼻に僕の鼻をちゅんって押しつけて聞きました
「どうだった?」
どうだったって…くるしかったでしゅ…
ミンは僕をミンチョルさんにちゅってさせてくれました
ミンがミンチョルさんを抱きしめると
僕はふたりの胸の間にすっぽりと挟まってしまいました
ふたりの鼓動がきこえましゅ
どきん、どきん…
おんなじリズムで刻まれていましゅ
僕はそっと目をとじました
ミンチョルさんの幸せが伝わってきて…
僕の心も満たされました
ミンチョルさん…