じゅんほのちょうさ に  ぴかろん

もうひとつのことをちょうさした
「じぶんをひとことであらわすとなんですか?」
ちょっとかんじのべんきょうにるいじしています
『るいじ』というのは、にているということだとおしえてもらいました
おしえてもらったことは、つかわないとわすれます
そのしょうこに、おしえてもらったかんじを、れんしゅうしてないので、おぼえていません
だめですね…

すひょんさん「癒し系…だよね?」
どんじゅんさん「弾丸。まっすぐとんでくから」
ちょんまんさん「ラジオかな?喋り続けるでしょ?」
しちゅんさん「○○○○マシーンなんちってぇへっへっ」
てぷんさん「台風…名前がそうだもん」
らぶさん「裸舞…名前がそうだもん」
すひょくさん「…うそつき…そうだもん…ううっ」
そくさん「誕生秘話…知りたいんだ…」
ちぇみさん「七変化…知りたいだろう?」
てすさん「…怖くないって…ぐすん…」
さんどぅさん「豹(大きさ10分の1)…すばしっこくて攻撃的だろ?へへん」
すんどんかいちょう「おきあがりこぼし…かわいい顔だろ?」
とふぁんかいちょう「獅子舞…しかたないわい…」
ちょんうぉんさん「忍者ハットリ君…目が似てるのかな?」
そんじぇさん「…言わせるの?…はにわだよ」
そんじゅさん「吉本新喜劇だって…なにそれ?ンフ」
みんちょるさん「ガラス細工…のキツネ…わかるだろ?」
ぎょんびんさん「繊細な猟犬…照れるな、猟犬だなんて…」
てじゅんさん「えーっ…そおだなぁ…んふ…攻撃型えむ嗜好および嗜虐的傾向あり…イヒヒ…イヒヒヒ」
いなさん「甘えっこ…」

いなさんはかわいこぶってます
てじゅんさんのいうことは、いみがわかりません
このごろとくにわかりませんし、だんだんへんなわらいかたをするようになりました
きけんだな…
まるをつけておこう…あかまる…


ひかるもの 足バンさん

僕はミソチョルでしゅ
とうとうお祭りがはじまりました

お部屋はとても静かでしゅ
廊下もとても静かでしゅ

僕は今日はデスクの上に座っていましゅ
ミンが出ていってしまったあと、
ミンチョルさんがここにおいてくれたんでしゅ

お部屋が見渡せませしゅ
春の柔らかい日が入ってきましゅ
少しだけ開けられた窓から風が入りましゅ

僕はとてもどきどきしていました
ベッドメイクの人が入って来るといやでした
窓際のそれをクリーナーでとってしまわないかと思ったのでしゅ

それは外の光をあびて時々きらきらとひかっていましゅ
綺麗に哀しそうにひかっていましゅ

ドアが開きました
僕は身を硬くしました

ほぅ…ミンチョルさんでした

ミンチョルさんは普通の顔でデスクの上の書類をとりました
ミンチョルさんミンチョルさん!
そこを見て。窓の下を見て!

僕の声が聞こえたのかもしれません
ミンチョルさんは立ち止まり足元を見ました
そして色のめがねをとりました

落ちていたペンダントをそっと拾いあげました
じっと見つめるその睫毛はしゅこし震えていました

ミンチョルさんはいきなり窓を開けてそれを投げようとしました

僕は思わず叫びそうになったでしゅ
だめ。だめっ だめっ だめでしゅっ!
心で大きな声を出しました

ミンチョルさんは振り上げた手を止めました
そして手で目を覆い小さな小さな声で泣きました
そして目を閉じてしばらく黙っていました

ミンチョルさんはそのペンダントを持ってきて
僕の足の間にそっと置き、そして静かにお部屋を出ていきました

ミンチョルさん…
僕はこのペンダントを守りましゅ
ミンが戻ってまたつけてくれる時まで守りましゅ

ペンダントは持ち主を待って…優しくひかっていましゅ


進む道3  オリーさん

最初にミン・ギョンジンと名乗ったその男は少し青ざめた顔で話し出した
その声は低く話し振りは淡々としていたが、不思議と僕の胸に入ってきた
弟が生まれて嬉しかったこと、
あまりに嬉しくて弟と同じ名前にかえたこと、
そしてそこから始まる愛憎の毎日
父親との確執、それに付随して屈折していく弟への愛
嫉妬、羨望、憎悪、嫌悪、
そしてそれらの根底に常にある愛情
しばらく話を聞いているうちに僕は不思議な感覚に陥った
この男の話はよくわかる
なぜならまるで僕がそこで話をしているようだったから
ミンの顔がミンジとだぶり、会った事のないこの男の父親と自分の父親の像が重なった

「もう結構です。わかりました」
僕がそう言うと男はとまどったように僕を見た
「あなたの言いたい事はよくわかったつもりです」
少し丁寧に言い方をかえた
「ミンにはこの話はしたんですか」
「いや、まだ。でもこれからするつもりです。遅いかもしれないけど」
そういう彼には以前の人を威圧する尊大さはどこにも見受けられなかった
「なぜミンが僕とそうなったか、わかったような気がします」
「え?」
「たぶん、僕の中にあなたを見ていたんでしょう。僕とあなたはよく似ている」
「似てる?」
「僕は父親をずっと憎んで生きてきた。その父親から大事な妹を守る事、それがついこの間までの僕の人生のすべてでした」
男は僕の顔をまじまじと見つめた
「たぶんミンはわかってますよ。あなたの苦しみを」
「僕は憎まれています」
「あなたを苦しめたくないからミンは離れていったんでしょう。そんな気がする」
「僕が弟にしてきたことは許されない」
「話し合えば仲直りできるでしょう。ミンは頭がよくて、それにとても優しいから…」
そう言った途端、涙が湧いてきたので思わず下を向いた

「早く仲直りしてください。そうしたら僕も救われます」
「僕が弟にすべて話したら…また弟と一緒にいてやって下さい」
男が兄の顔になって僕をみつめた
そうだ、ここは正念場だ
「その事だけは、ミンに話すのはやめた方がいい」
「どういう意味ですか?」
嘘はつけない
でも間違ってはいけない
「僕にとってミンは初めての相手でした。自分の気持ちだけで誰かを求めた…」
「……」
「だから相手の、ミンの事をあまり考えてやれなかった。ただ好きだからそばにいて欲しい、そんな気持ちばかりが大きくなってしまった」
「それは…」
「もし僕があなたの立場だったら同じ事をして同じ事を言ったでしょう」
「でも僕の動機は不純だった。ただ妬ましくてミンとあなたを引き離したかった、それだけです」
「僕にも妹がいます。だからあなたの気持ちがわかります。僕が本当にミンにふさわしい相手だったらどうです?それでもあんな風にしましたか」
「それは…」
「たぶんしなかったでしょう。あなたはそこまで悪い人じゃない。それにあなたの言った事は正しい。僕はそれを認めるのに随分苦労しましたけど」
「でも弟は、弟の気持ちは…」
「あなたが今までミンにしてきた事と僕らの事をごっちゃにしない方がいい。弟への贖罪はすべきです。でも僕とミンの事はこのままの方がいい」
男は真っ直ぐに僕を見つめた
「それでいいんですか?」
「今のあなたの所へミンが戻るなら僕は安心です。ミンはきっとすぐ立ち直りますよ」
「でも…」
「もう話は終わりにしましょう。僕はこれでもやっとあなたと話をしてるんです。ミンと話してなるべく早くここを発ってくれませんか。お願いします」
僕は一気にそれを言うと席を立った
限界だった
でももう一度振り返った
「スヒョンの言う通り、あなたの話が聞けてよかった。ありがとう」
ミンの兄さん、ミン・ギョンジンの左の目から一筋の涙が伝わるのが見えた

ドアの外で約束どおりスヒョンが待っていた
僕の目を見たスヒョンは黙って近づいてきて僕の肩を抱いた
「話が聞けて…よかったよ…」
僕がつまりながら言うとスヒョンはわざと明るい声で言った
「こんなことじゃないかと思ってたんだ。ほんとにこの子はほっとけないわ」
僕はしばらくの間またスヒョンに抱いてもらった


セツブンショー2  ぴかろん

二着目の服、それは赤紫のラメスーツ…
派手だ…
恥ずかしい…
これを着たとき、スヒョクは後ろを向いて肩を震わせていた
だってズポンの裾をブーツの中に入れるんだぜっ
どうよこのセンス…
笑うなよスヒョク

「似合う?」

と一応聞いてみる

「にあ…にあ…くくっ…」

この野郎、こうしてやる

僕は笑っているスヒョクを抱き寄せてキスする
スヒョクは段々大胆になってきている
抱き寄せた瞬間に口を半開きにしている
ゆっくりキスしたいのに時間がない

「あーたたちったりゃまたっ!ほりゃっソクしゃん、出てちょーでゃいっ!」

妖怪が邪魔をする
離れがたいけど僕はステージに出る
ステージ中央まで行って気づいた
豆がない!


「先生、ソクさん、豆忘れました…」
「あーたとのちゅうに夢中になってりゅからよっ!ぶぁかっ!」

耳のいい僕に聞こえる怖ろしい妖怪の声…

「くそったれ、ちゃんと動けよキス魔!舞台ぶち壊したら承知しねえぞ!シベリアに送ってやる!」

怖ろしい目が光っている
僕は舞台中央でBGMに合わせてダンスを踊った
…でもフラメンコ…
大体ダンスだって踊れるわけではない…
しかしやらなくては妖怪にシベリアに送られてしまう
あの妖怪ならやりかねない…
そんな事になったらスヒョクと離れ離れになってしまう…
僕は必死で踊った
でも豆がない
セツブンショーなのに…


「ありゃ、やるじゃない、彼」
「…かっこいい…」

俺はソクさんに渡すはずだった豆の入った枡を持ったまま、舞台袖でソクさんのフラメンコもどきの踊りを見ていた
うまいんだ…習った事あるのかな…
ソクさん…どういう人生を…
ぼーっと考えていたらデジャイナー先生が僕に布を被せた

「おめぇこれ被ってその枡持ってあいつんとこ行け」

凄みのある声で先生は言った

「は?」
「『は』じゃねぇ、馬鹿野郎!いいか、すっぽりこの布を被ってヤツのとこまで進んでって、ヤツに布被せて豆の枡を渡し
そりからヤツの上着を脱がせておめぇがまたすっぽり被って帰ってくる。いいな。ヤツには布をうまく使いながら豆を撒けと伝えるんだ、いいな!」
「へっ…へい…」

怖くて口が開かなかった…
俺は布を頭から被って、フラメンコを踊っているソクさんのところへ行った
ソクさんは目を丸くして俺を見つめながら、フラメンコらしき踊りを踊り続けた
ソクさんにすっぽり布を被せて上着を脱がしにかかると、ソクさんはちょっとニヤけてこう言った

「脱がせてくれるの?」

ちょっとスケベオヤジに見える…
俺は少しむくれて上着を剥ぎ取った

「はい、これ」

と豆の枡を渡すと、ソクさんは素早く俺を引き寄せてまたキスした
舞台の上なのに…舌を絡める…
痺れそうになる…酔いしれたくなる…
意識が遠のきそうになった時、ソクさんは俺の肩をトンとついた

「サンキュ」

そして顎をしゃくって『行け』と合図した
俺はそんなソクさんにぽーっとなりながらも、先生の怖ろしげな表情が見えたので、必死で走って舞台袖に戻った

「ちっ、あんなとこでまでキスしやがって、シベリアに送ってやろうか!」

怖い…

布を被ってたソクさんは、その布を片手に持ってムチを打つ様に舞台に打ち付けた
マタドールのようだ…
かっこいい…
でも左手には豆の枡…
布を操りながら豆を撒く
「内、内、外、外、内、内、外っ」
リズミカルに言いながら布と豆を操る
おかしいけどカッコイイ…
ソクさんは豆の枡を床に置いた

「あの野郎!何しやがる!」

デジャイナー先生は、ますます怖ろしい形相になった
ソクさんはその後、持っていた布をハラリと床に落とした
そして…
落ちた布めがけて体を伸ばしたまま、すうっと倒れこんだ
体が床に着く寸前に両手で体を支え、布を口で咥えて立ち上がった
俺はその一連の動きに…ノックダウンされた…
布を口に咥えて立ち上がったソクさんは…壮絶なまでにセクシーだった…

また布を片手に持ち、ムチを打つように床を打つ
足はフラメンコのステップを踏みながら、顔は少し伏せながら…
長い睫毛が影を落としている
やがて布を肩にかけ、落ちないように端を咥え、両手を顔の横に持ってきてリズムを取りながら打ち鳴らす
足で床を打つリズムと、微妙に違えた手を打つリズム…
伏せた目、布を咥えた口
俺は夢中でソクさんを見ていた
体中の血液が逆流していた

ソクさんが欲しい…

一瞬そう思ったことを、俺は打ち消そうとした
でもできなかった
あまりにもソクさんが情熱的だったから…
ソクさんは、曲の終わりを見極めて、打ち鳴らしていた足を、豆の枡に向けて蹴り上げた
豆は宙を舞って客席に落ちていった

「ヨシ、今回はナレーションの出番はにゃかったわん」

デジャイナー先生は、どうやら満足してくれたらしい…
ソクさんが舞台袖に戻ってきた

「ふへー、ヤバかったぁ…先生、すみませんでした、豆、忘れちゃって」
「ありゃぁんいいのよぉん、結果オーライでゃったわぁん」

俺はソクさんの顔をまともに見ることができなかった

「どした?スヒョク」
「…いえ…素敵でした…」
「めちゃくちゃ踊ったけど、変じゃなかった?」
「すごく…かっこよくて…俺…」

ソクさんは、俺を抱きしめた
キスしてくれるのかな…

「次の着替えしなきゃ…」

ソクさんは俺から離れた…
俺は…自分からソクさんの唇に吸い付いた…
恥ずかしいけど…欲しかったから…


◇愛しいお前3 妖精と風 妄想省家政婦mayoさん

僕は後ろからガシッ#と押さえられた...
ちぇみの腕でもテソンさんの腕でもなかった...
僕よりも小さくて小柄な人...mayoさんだった...
必死に振り解こうとしても僕は動く事が出来なかった..

「は、離してってばっ!」
「離さないっ!!」

テスの体は心と同じくらいずっしりと重く強張っていた..
まるで自ら針の筵を頭から纏っているようだった...
テスの興奮が収まるまで力を緩めなかった..

「テスシ....ちぇみはホントにテスシが好きなのよ?」
「おとこの僕でもっ?」
「....初めてのち◎う..憶えてる?」
「....ぅん...ちぇみは凄く迷ってた..」
「ドキドキしてたでしょ?」
「ぅん...凄く...心臓ばくばくしてた..」
「それだけ大事に想ってるんだよ?」
「……」

少し力の抜けたテスの背中をもう一度抱き直した

「テスシ...目をつぶって....」
「...ぅん...」
「何処にいるのが見える?」
「......森にいる.....」

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.

僕は鬱蒼とした森の中にいた..森の奥には小さくてもきらきら光る緑色の湖があった..
妖精になっていた僕は湖の淵で水と戯れていた..
僕はちょっと悪戯に手のひらに乗せた湖の水を一滴...えいっ#..と光の中に振りまいた..
太陽の光を受けたその水は森の緑を封じ込め大地に落ち..
森も湖も緑のない世界になった..

湖の聖は僕に言った..
「今落ちた一滴の水を探して湖に戻しなさい....見つかるまで空を飛んではいけない..」
飛べなくなった妖精の僕は灰色一色の森の世界を一滴の水を探して回る..
探して...探して...探しても何処にも見つからない..
疲れ果てて..泣きながら眠ってしまった僕は眩しくて目を覚ました..
....光る水だ!!
僕はその一滴の水をそぉっとすくって泉の聖の所に持っていった..

泉の聖は「手の中をみてごらん?」と言った..
僕は片手を被せていた手のひらを開けた..
手のひらにあった一滴の水はエメラルドになっていた..
目を丸くしている僕に泉の聖は「湖に戻してごらん?」と優しく言った..

僕は灰色の湖に手のひらにある小さなエメラルドをそぉっと湖に沈めた..
たちまち湖は眩しい光を放ちエメラルド色に変わり湖面はきらきらと輝き始めた..
森は緑を取り戻し太陽の陽射しが幾重にも入り込み、枝葉は息を吹きかえす..

僕は風に誘われて枝から枝へ舞っていく..
僕が枝から落ちそうになると、ふわっと風が押し上げ枝に座らせてくれる..
僕の頬を風が撫でる...僕の髪をくしゃくしゃするように風が撫でる..
僕の周りで風が踊る..追いかける僕を包んで僕は風と天を舞う..

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.

僕は瞼の奥に浮かんだ物語に涙がとまらなかった..
ふわっと僕を包んでいる風から声が聞こえてきたんだ..

『テス…』と..

それはいつも聞いてる低く響く優しい声..

僕は胸のペンダントを握っていた..
僕のペンダントの石はエメラルド...ちぇみの誕生石だ..

mayoさんは僕の背中から体を離し僕を振り返らせた
振り返って見たmayoさんは目にいっぱい涙を溜めていた..

「テスシ...エメラルドと人間に傷のないものはないの..」
「安らぎのある優しさをくれる..」
「愛の証しもね..」
「ぅん..」
「ふたりには幸せになって欲しいの..」
「僕はちぇみをしあわせにしてると思う?」
「初めてひとつになったとき..」
「ぅん..」
「帰ってきてからね、こっそりテソンと私に言ったの..」
「何て?」
「穏やかな気持ちで波の音を聞いたのは初めてだ...って...今でもドキドキしてるって...」
「mayoさん...」
「おとこもおんなも関係ない深いところで愛してくれてるよ?」
「ぅん...ぅんぅん.」

テスは何度も頷き、目から涙が溢れ出た...
振り返るとすぐ傍までちぇみとテソンが来ていた...
テスが真っすぐに見つめたときちぇみはテスを懐に呼んだ...
テスはちぇみの懐で嗚咽を漏らしわぁーっ#と思いっきり泣いた..
ちぇみは何度も何度も手のひらで涙を拭ってから
ふたりはさっきの木の下へ歩きだした..

木の下のちぇみテスの2人は何度も何度ち◎うをしている...
「ちぇみ...ごめん....怒ってる?」
「ん....もういい....ちょっと強烈だったが...」
「ちぇみ...」
「気にするな...それより...」
「◎ほにょほにょ◎だった...」
「だろ?」
「ぅん...ちょっと気持ちよかった」
「俺のこと言えるか、このっ!」
「ごめん...」
「ったく...」

xxxXXxxx.....ぁん.....xxxXX.....ぅん.....xxxxXxx

森  足バンさん

僕は廊下でミンチョルが出てくるのを待っていた
壁に寄りかかり天井の隅を見つめた

ミンチョルの言いそうなことは予想がついた
悪いな、ミンチョル…
ギョンジンと会わせたのはおまえのためじゃない
ギョンジンのためなんだ…
とにかくどんな形でも一歩を踏み出さなきゃだめだろう?
似た者同士のおまえたちなんだから…

目を閉じるとドンジュンの顔が浮かんだ

『わかったよ。ミンチョルさんへの思い入れがね』

思わずため息が漏れた

不意にドアが開いた
ミンチョルは蜃気楼のようにぼんやりと立っている
僕は近づいてそっと肩を抱いた

「話を聞けて…よかったよ…」

精一杯真っすぐ立っていたんだろう
そして尚自分を突き放すことに全ての力を使ったのだろう

「こんなことじゃないかと思ってたんだ。ほんとにこの子はほっとけないわ」

僕は抱きながらその頬に自分の頬をそっと重ねた
母親がするように
泣いて崩れそうになるのを必死に堪えているのが伝わる
ああ…おまえってやつは

しばらくしてミンチョルは顔を離した

「ありがとう…行くよ」

僕は努めて何気ない表情で言ってみた

「もう終わりにしよう。ギョンビンのことは」
「え?」

ミンチョルは僕から出たその言葉が意外だったのか驚いて顔をあげた

「兄貴もああして落ち着いたしもう心配はないだろう」
「…ああ…」
「じゃぁ後はもう何も言うな。いつ発とうが何をしようが本人達に任せてもう口出しするな」
「スヒョン…」
「わかってる。見てると辛いんだろう?でももう心が決まったなら堂々と構えてろ」
「…」
「それともそんなことで揺らぐようなチャチな決心なのか?」

僕はいきなりまたサングラスを取りあげその目を覗き込んだ

「そんな程度の決心なのか?」
「いや…」
「そうか…じゃぁそうしよう」
「ああ…」
「大丈夫だ。知らん顔してろ。向こうだって祭を楽しんで帰るよ」
「…」

僕はもう一度ミンチョルを抱きしめ、小さく深呼吸してから言った

「おまえが諦められるってことは、それだけの相手だったってことだからな」

ミンチョルの身体がぴくりとしたが、気づかないふりをした
彼は唐突に身体を離した

「もう行くよ」
「このサングラスは預かっておく。もう用はないだろう」

サングラスをかけて微笑みかけた

「どう?お母さんに似合う?」
「…ああ…」

ミンチョルは何かを言おうとして呑み込み
そしてきびすを返した

その後姿を見ながらまた壁に寄りかかった

ごめんなミンチョル

すっかり方角がわからなくなった森の中にいるみたいだ
でもどうにか出口を捜さなけりゃ…

僕は重い身体を引き起こしてギョンジンのいる部屋のドアを少し開けた
ギョンジンは椅子に座ってぼんやりと窓の外を見ている
彼もまたありたけの力を使ったのだろう

廊下の奥まで走ってメイさんを見つけ
イナにギョンジンのところへ行ってやるようにと伝言した


雑念    オリーさん

確かにそうだ
こんなことで揺らぐ決心ならしない方がいい
わかってる、わかってるけど…
「おまえが諦められるってことは、それだけの相手だったってことだからな」
スヒョンの言葉が頭の中でぐるぐる回る
違う!それだけは違う
あきらめるのは、本当に愛してるから、ミンのことが大事だから
決してそれだけの相手なんかじゃない
ミンは僕が初めて自分のために選んだたった一人の相手
だから、あきらめるんだ…
いや、あきらめなくちゃいけない

僕は洗面所へ入ると、鏡の中を覗き込んだ
幸い目はもうあまり目立たない
ネクタイを取ってワイシャツのボタンをはずした
水を思い切り流して顔を洗った
僕の雑念も一緒に洗い落とせるだろう…
しばらく流れていく水を見ていた
流れた水は戻ってはこない
当たり前のことだ
僕はハンカチで顔をふくともう一度鏡を見た
ボタンをはめ、ネクタイを締めなおした
ミンチョル、あと少し踏ん張れ…

会場に戻ると、大食い選手権をやっていた
やはりガンホさんがトップなのか
いやテプンも頑張ってる
いいぞ、その調子だ
それにしてもテプン
お前の早食いは知ってたけど
ラーメンまであんなに早く食べれるなんて
僕は熱いものはふーふーしてもらわないと…
ああ…ばかだな、僕は…
まだ雑念が消えてない

僕はもう一度大きく深呼吸して席に戻った


◇ひととき  妄想省家政婦mayoさん

僕と闇夜は木の下でちぇみの懐にまたテスが入ったのを遠目で確認し
近くの芝生に並んで腰を下ろした
僕は闇夜の頬を包み目に溜まっている涙を唇で受けた...

「大丈夫?」
「ぅん...ちょっと疲れた」
「ん...」

僕はそぉーっと闇夜の上半身を倒し僕の膝上にのせた
闇夜の髪に指を差し入れ何度も漉いた...

「mayo…メイの方…さっき何かあったのか?」
「ぅん…ミンがちょっと逃げ出してミン兄が止めたって」
「さっきちぇみに聞いたけど…」
「ぅん…」
「ミン兄..かなり変わったみたいだ…イナのおかげで」
「そう…葛藤してるね…今ごろ」
「チーフか?」
「ぅん…とことん自分を追い込むから」
「そうだな…」

「なぁ…あと何人来るんだ?ソヌ、ジホは決定だろ」
「ぅん…ドンヒ、ジョンドゥはスカウト済…オーナー面接中…」
「あとは?」
「オーナーが引っ張って来たホンピョ…」
「あのやさぐれてる奴か?」
「チンピラから更正していく…」
「イナ2かよ…」
「ふふ..」

「そろそろ戻るか..」
「ぅん…」

僕等がホールに戻ると大食い選手権の始まる前だった
僕はテジンの隣に座った…

「長いトイレだな…テソン..」
「ちょっとトラブったんだって」
「ふっ…そう」
「それより…スハ、大丈夫なのか?」
「あぁ…」
「心細いんじゃないかな?いいのか?」
「ん…まだ…いい…」

ホールの隅にいるとちぇみテスが戻ってきた..
テスがテソンの隣に座り、ちぇみが隅にいるワタシの隣に来た…

「闇夜…」
「なに?」
「背中でテスに何を見せた…」
「お?…聞いてないの?」
「ぉぉ…」
「ん〜寝話で聞かせてもらうといいよ…」
「そっか…..闇夜…」
「ん?」
「…すまなかったな…」
「…いいよ…」

深みのあるちぇみの言葉に
ちょっと下を向いてしまったワタシを
ちぇみはテソンとテスの視界に入らない隅っこで
懐に引き寄せ、軽くハグしてくれた…

「内緒だぞ..あいつら..すぐ妬くから…」
「ふっ…ぅん…」

背中をとんとん#..してくれた後、肩を回し向きを変えた
ちぇみは眉毛をちょっと上げて笑っていた..
ちょっと嬉しかった…内緒内緒…


木漏れ日  足バンさん

タクシーが去った後、
スヒョンがギョンビンの兄貴のところへ歩いて行った
気になったけど、今ギョンビンをひとりにすることはできない

僕はホテルの入口まで来ると一緒にいたメイさんに
もう大丈夫だからと言って先に行ってもらった

ギョンビンは自分の足元を凝視している

「兄さんが出て来るとは思わなかった…」
「参ったのはこっちだよ」
「君には悪かったと思ってる…」
「ほんとに行くつもりだったの?」

ギョンビンは僕の顔を見て頷いた

僕たちは会場に戻るのをなんとなくためらっていた
そのままいつもの木陰まで歩いて腰を下ろした
なにも言葉を交わさず木漏れ日が揺れるのを見ていた

向こうをスヒョンとギョンビンの兄貴が通って行った
僕たちはそれをぼんやり見ていた

ギョンビンは疲れた顔で
でも僕と目が合うとにっこり笑ってくれた

「ギョンビンってこういう気持のいい日が似合うね」
「え?なんです?いきなり」
「一般的には爽やかっていうんだよ」
「え?なに?」

僕はギョンビンの頬に片手を伸ばしそっと触れた

「もう逃げないでよ。僕から」
「…」
「逃げるときはひとこと言って」
「それって逃げるって言うんですか?」

僕たちはちょっとおかしくなって笑った

また心配かけるといけないって、僕たちは立ち上がった

会場に戻りギョンビンに元の席に座ってもらった
そしてまだギョンビンの兄貴もスヒョンも戻っていないことに気づき
僕はドアの外まで出てみた
いない
裏?

裏の通路を曲がろうとした時、話し声が聞こえた

スヒョンとミンチョルさんだった
僕は心臓が凍りつくかと思った

曲がり角の向こうのスヒョンはミンチョルさんを抱きしめ
その頬に自分の頬を重ね合わせていた
大切なものを包むように優しく抱きしめている

ああ…

今ミンチョルさん大変だから
スヒョンもいろいろ気をつかってるんだから
そう、ギョンビンと兄貴とのことできっと…

ああ…

僕は来た道を戻りながら落ち着こうとしていた
ぴりぴりと痺れる指で自分の顔を触った
ひどく冷たく感じた

ああ…


イナの励まし方   ぴかろん

俺はメイという女の子から連絡を受けて、ギョンジンのいる部屋に向かった
気が利くな…松葉杖を持ってきてくれた

テジュンに「行ってくるね」と言うと、テジュンは俺の手を引っ張って、後ろから俺の肩を抱きしめた

「…抱きしめてやってもいいぞ…キスも…いいぞ」

そう言って俺のうなじにキスをした
どんな顔して言ってるんだか…

「じゃ、うんと濃いのしてくるぞ、いいのか?」
「…ああ…」

肩に回されたテジュンの腕に軽く噛み付いて、その上から口付けを落とす
テジュンの手が俺の唇をつまむ
ふふふ

「ちょっと!早くしてよ!」

メイと言う子におこらりた…
俺はテジュンを振り返り、口をとんがらせてチュウの真似をした
テジュンは笑っていた

メイと言う子に案内されて、俺はその部屋の前に来た
中に入るとギョンジンはぼんやりと座っていた

「ギョンジン…」

無言で顔を上げるギョンジン
俺を見た途端顔がくしゃくしゃに歪む
堪えていた感情が一気に噴出す
悲しみ、苛立ち、怒り、切なさ、憐れみ…
そういった感情がぐちゃぐちゃに入り混じっている…そんな叫び声
獣の咆哮だ…聞くだけで涙が出てくる…
ギョンジンの隣に座り、俺はギョンジンの背中を擦ってやった…
何を言っていいのかわからなかった

あああああああっ

喉から血が吹き出るような叫び声だった

「…何にも…何にもできない…僕が何をしてももう何にもどうにもできやしない…
僕が全てぶち壊したんだ…弟も…ミンチョルさんも…元通りにならない…
どうしたらいい?なにすればいい?教えてよ、イナ、教えてくれよ…」
「ミンチョルと…話した?」
「話したけど…弟を僕に任せるって…連れてってくれって言う…」
「…あんの馬鹿…。もういい。あいつの事はいいよ、ギョンジン」
「だって僕が原因だ…」
「あの石頭ギツネの問題は、自分で頭突きして石頭かち割らなきゃ解決しない事なんだ、お前が気にすることはないよ」
「…」
「…お前…今、『たとえが幼稚だ』って思っただろ…」
「…」
「絶対俺の事馬鹿にしてるだろ…」
「…して…ないよ…」
「ギョンビンには会えたの?」
「…会った…少し話した…でも弟は僕を憎んでるから…もっとダメだった…。もう遅いって…。無理なんだ…解って貰うなんて無理なんだ…」
「お前さぁ、少ししか話してなかったら解って貰えないに決まってるでしょ?」
「…つらいよ…信じてもらえないし罵られた。何を言っても無駄だ…」
「一回しかぶつかってないのに何言ってんだよ!」
「…」
「テジュンなんかは甘いから、一回で落ちるよ。スヒョンは人の心読めるからさ、あれも一回で落ちる
ミンチョルはお前とそっくりだから、お前の心情がすぐにわかったんだろうな
でもギョンビンは違う…長い間かけてお前が仕組んできたことを、全部悪い方に取ってるってことだろ?
どろっどろの想いが真っ白なシャツにこびりついてるんだ、しかも二十何年もの間…
その汚れを洗うのって、めちゃくちゃ時間かかるんじゃないか?」
「…無理に物に譬えるなよ…」
「…なんだよっ!解りやすく言ってやってんじゃんかよっ!」
「…解りやすいけど…」
「ふんっ!馬鹿にして!」
「お前の言いたいことは解るよ…」
「だろーが、解りやすいだろーが。…しかもその泥汚れの中には、う○こまで入ってたりする…」
「…イナ…」
「なんだよっ!解りやすいだろっ!」
「…」
「触りたくないのは解る。だが、誰かが洗わなくちゃそのシャツは綺麗にならない。臭くて汚いからって捨てちゃっていいのか?」
「…」
「…シャツぐらい…いいか…捨てても…」
「…もし…」
「なんだ?!」
「…シャツで譬えたいなら『とてもお気に入りのシャツ』にしたほうがよかった…」

ベチン☆

俺は思いっきりギョンジンの頭を張ってやった!ふんっ!一生懸命心をほぐしてやってるってのに!ふんっ!

ギョンジンは頭を擦りながら、少し笑顔を見せた

「…こんな状況なのに…僕は笑ってる…」
「俺様のおかげだろ」
「…笑うと…力が湧いてくるね…」
「う○こまみれでもお気に入りのシャツなら洗いたくなるだろ?」
「…シャツなら諦めて捨てるけど…」
「捨てるのかよ!」
「弟につけた僕の汚れは…落したい…」
「だろ?!」
「…どうすればいい?」
「石鹸を持ってくるんだ」

ギョンジンは、目を丸くして俺を見た
そして俺の頭を軽くはたいた

「何すんだよ!」
「真面目に考えてるのに…」
「俺は真面目だよっ!」
「…物に譬えないでくれ…」
「…」

ふざけてるわけじゃないのに!ふん…俺はこれでも一生懸命なのに…
ちょっと悔しくなって俯いていたらギョンジンがそっと俺を抱き寄せた

「なにさ!」
「ありがとうイナ…お前と知り合えて…僕は幸せだよ…」
「…だろーが!」
「イナといると…心が和むな…」
「…そう?」
「キスしてもいいか?」
「…き…気合か?気合入れるのか?」
「違う…」
「ちっ違うって…」
「感謝の気持ち…」
「…う…あ…ああ…いいよ…」

ギョンジンが唇を薄く開いて俺に近づく
俺はその唇に吸い込まれる
唇をつけたままギョンジンは誰に言うでもなく呟く

「汚れ…落とせるかな…何回も石鹸つければ…」
「…ん…も…おまえまでキスしながら…いうな…」

俺、これに弱いんだから…

「頑張れるかな…僕…」
「んも…」
「失いたくない…弟でいてほしい…僕はあいつの兄でいたい…。ちゃんと弟の幸せを願いたい…」
「唇の上でしゃべるな…」

理性がとんじゃう…

「できるかな…僕…ちゃんと話できるかな…。弟とミンチョルさん…元に戻れるかな…うっうっ…」

ようやく唇を離してギョンジンはそう言った
涙がぽつりぽつりと俺の足に降る

「できるって信じなきゃできねえぞ」
「お前はどうやったの?どんな気持ちで僕と話したの?」
「俺は…知りたかっただけだよ、お前の事をさ…」
「…僕は弟の気持ちを…解ろうとしてなかった…」
「んだから、それを聞けばいい…」
「話してくれなかったら?」
「お前の気持ちを先に言え。それから聞けばいい…」
「できると思う?」
「できるよ、お前ならできる。俺がついてるからさ」
「…落ち込んだら…またヘンなたとえ話してくれるか?」
「…」
「してくれるか?」
「ぜってぇしねぇ!」

拗ねた俺を見て少しだけ微笑んだ涙のギョンジンは体を伸ばして俺にまたキスをした
俺の急所をつくエロいキスを…

ばかやろぉ…んなこと…してるばあいじゃないじゃんかぁ…

テジュンの顔がちらつく頭で、俺達は10分ぐらいキスし続けた…


兄弟   オリーさん

イナに言われて待っていると弟が部屋に入ってきた
疲れた顔をしている
これから話すことを考えると心が塞がった
でも話さなくては
イナは弟が椅子に座るのを見るとじゃあな、と言って出て行った
僕は弟の前に座った
「今まで色々すまなかった。ちょっと話を聞いてほしい」

弟は下を向いたまま聞いていた
「本当に悪かった」
最後まで話すと僕は謝った
「もういいよ、わかってる」
弟はそう言うと顔を上げた
「もっと早く兄さんに教えてればよかった」
「何を?」
「父さんのこと。父さんがなぜ僕とばかり遊んだか知ってる?」
「それはお前を愛してた…」
「違うよ。父さんは僕と遊ぶことで兄さんと近づきたかったんだ。僕と遊びながら
いつも目線は僕の肩越しに兄さんを追ってた。後で母さんに話を聞いて納得した
僕がもうちょっと大きくて事情がわかってればうまく橋渡しできたのにって後悔した」
「ギョンビン…」
「父さんはいつも僕に言ってた」
「何て?」
「兄さんを見習え。兄さんみたいになれば間違いないって」
父さんがそんなことを…
「だから僕はいつも兄さんを見習った。兄さんに追いつこうって
いつも兄さんの背中を見ていたんだ」
「そうなのか…」
「兄さんも父さんもちゃんとぶつかればいいのに、なぜか僕を間に入れる
僕は笑うことしかできなかった…あの頃僕はまだほんの子供だよ」
「……」
「父さんは兄さんも僕も愛してた。それは確かだ。兄さんはわかってると思ってたけど
もっとちゃんと教えてあげればよかった。ごめんね。それに…」
「それに?」
「僕は天才なんかじゃない。兄さんの知らないところで僕は一生懸命勉強したんだ
行く先々で、君はギョンビン君の弟でしょって期待をこめたまなざしで見られるんだよ。子供の頃からずっとだ」
「お前も大変だった?」
「大変だったのはそれを隠すことさ。いつも平気な顔して笑ってた。いや、笑うふりをしていた
兄さんと僕で月と太陽だって言われてたよね」
「ああ…」
「僕あれ大嫌いだったな…」
「お前はいつも明るかったから…」
「月はいいよね、毎日形が変わる」
弟はそういうと窓の外に視線を投げた。弟は僕の知らない悩みを抱えていた
ふと視線を僕に戻すと弟は聞いた
「兄さんは僕に色々したけど、僕はそのたびに許してた。なぜだかわかる?」
「いや…」
「兄さんを好きだから。当然だろ、兄弟だもの」
ギョンビンが僕を…憎まれてると思ってたのに…
「で兄さんは僕を好きって言うけど、それは違うと思う」
「違わないよ、僕は…」
「兄さんは僕を通して父さんを求めてた。僕にちょっかいを出したのはそのせいだよ。僕とかかわれば父さんとつながっていられる
どこかできっとそう思っていたはすだ。違う?」
そうかもしれない。僕は弟しか見てないふりをしていた
でも弟は僕と父親の両方を見ていた
「お互いもう大人だ。今さら昔のことを言っても仕方ないね」
「謝りたいんだ」
「だったらチフンに会いに行ってあげて」
ギョンビンはそう言って僕をじっと見つめた
「チフン…」
思いがけない言葉に僕は狼狽した
「なぜチフンに会いに行かないの?アナスターシャも心配してる」
「どうしてそれを…」
「時々アナスターシャに連絡してるんだ。今だって休暇なら会いに行ったらいいのに
僕の後なんか追いまわさないで」
「…」
「本当に謝りたいなら認めることだね」
「何を?」
「兄さん、それを認めなきゃダメだよ。謝るならチフンに謝って。ほったらかしにしてごめんって」
僕は涙がこぼれた。弟の言うとおりだ
チフン…僕の息子、弟そっくりの太陽のように明るい息子
「兄さんにはチフンとアナスターシャがいる。二人を愛さないで誰を愛すの?僕?僕は代理なんだ
小さい時は父さんの、今はチフンの。それに気づかない?」
弟はそう言うと僕の手を取った
「僕が言いたいのはそれだけ。もういいよね。やめよう、こんな話」
「すまなかった…ギョンビン」
僕は弟の手を掴んで泣いた
「チフンに会ってやって。いい子だよ。だって僕そっくりだから」
弟は笑った
僕はただうんうん、と泣きながらうなづいた

「じゃあ、僕は行くから」
「待てよ、これからどうする?」
「悪いけど兄さんとは仕事はしない」
「ここに残るのか?」
「わからない」
「あの人とどうする?」
「気にしないで。僕と彼の問題だから」
「違うんだ、あれも僕のせいだ」
「きっかけはそうだろうけど、決めたのは彼なんでしょ」
「…知ってたのか」
「最初は気づかなかったけど、だんだんね」
「悪かった。でもあの人は…」
「いいんだ。僕のしたいようにする。もう子供じゃない」
弟はそう言うと立ち上がった
「兄さん、今日はたくさん話ができてよかったね」
ドアのところで弟は振り返って言った
でも僕はその姿がぼやけてよく見えなかった


セツブンショー3  ぴかろん

今度の衣装…なんだよこれは…僕はベイシティーローラーズじゃないぞ!
タータンチェックの派手なスーツ
そしてズボンの裾はブーツイン!
だからなんでブーツイン?!

鏡の前で僕は蒼くなった

絶対スヒョクに見せたくない!
スヒョクが豆の枡を持ってきた

この上豆の枡持つのかよ!
イライライラ

「どうしたんですか?ソクさん…怖い顔して…」
「あっち行け!」
「…え…」
「僕を見るな!」
「…ソクさ…」

あ…しまった…誤解させたかな…

「スヒョク!違うんだ!僕あまりにもかっこ悪いから…その…見て欲しくないんだ…」
「…ソクさんは…素敵です…」

さっきのフラメンコが終わった後、スヒョクからキスしてきたので僕は面食らった
瞳が妖しく濡れていたもんなぁ…
なんで?って聞いたら、何も言わないで俯いた
ねえなんで?って問い詰めたら

「俺も布になりたかったです…」

って消え入りそうな声で…大胆な事を言うんだよぉぉぉくうう…
かわいくてもうっくしゃくしゃにしてやりたかったけど、妖怪がこの服を持ってきたんだよな…

「これはイギリスの伝統的な柄だ!おめぇちゃんと豆撒けよな!」

って凄むからさ…スヒョクにキスする暇がなかった…
でも…はずかしい…かっこ悪い…

僕はスヒョクの持っていたおもちゃの銃を借りて、そこに豆を詰めた
ためしに打ってみたらちゃんと豆が打てる!
これを使ってやる!

僕は舞台に出た
おもちゃの銃で豆を撃ちまくってやった


「あの野郎!銃なんか持ち出しやがって!なんて野郎だ!マイクかせっ!」

デジャイナー先生の顔は、赤鬼みたいになっていた
俺はマイクを差し出した

「おめぇ、これ被れ」

そう言って先生は俺に着ぐるみの猫の頭だけを被せた

「いいか、おめぇオレがナレーション始めたらあの馬鹿野郎のとこまでそれ被ったまま行って、銃を取り上げてこい!
そんで豆枡渡して、ごにょごにょ…」

物凄い形相なのだ…怖ろしい
先生の伝言もつたえなくちゃいけない
俺は頭だけ猫になってまた舞台に出た
ソクさんはまた目をまん丸にしていた…

「銃…人に銃口を向ける事は何を意味するか…。人の命を奪う事…。人の命を弄ぶ事…。アタクチは平和を願うテンチ(天使)
お洋服もじぇんしぇかいの平和を願いながらちゅくっているのよ…」

ソクさんの顔が引きつった
俺も猫の中で顔を引きつらせていた

銃は…人の命を奪うもの…
どくんどくんと心臓が鳴っている
きぃぃんと耳の奥で音がする…
あの日に引き戻されてしまう…

「銃はいらない…捨ててしまいなしゃい…立ち向かうなら素手で立ち向かいなしゃい…」

ソクさんは、震える手で俺に銃を渡した…そして俺の持っている豆の枡を取った
俺はハッとして、ソクさんに先生からの伝言を伝えた
かろうじてあの日に引き戻されるのを免れた…

『ソクさん…先生が上着を脱げって…。豆をかっこよく撒けって。それから…』

俺は猫のまま、ソクさんに伝えた
ソクさんは頷いて俺の猫の頭を優しく撫でた
俺は舞台袖に引っ込んで猫を取った

ソクさんは豆を撒きまくった
かっこいい撒き方をしている
素敵だ…上着を脱いだから余計素敵だ
白いシャツがかっこいい…
ズボンの裾がブーツに入れてあるのはちょっとヘンだけど…
ソクさんは段々スターになりきってきている
撒き方に艶が出てきたし、堂々としている…
たかが豆まきなのだが、本当にかっこよくて、客席にいる人たちの瞳にハートが浮かんでいるのが解る

ドラムロールが始まった
そろそろこの回も終わる…
ソクさんは豆を激しく、鋭く撒く
顔つきも変わってきている
ロックスターが観客を煽るような顔つきだ

ベイシティーローラーズとはちょっと違うな…
どっちかというとKISSだ…(ソクさん、キス好きだし…)

ソクさんはドラムロールが終わるのにあわせて、豆をガンガン撒き散らした

♪ダン・ダン・ダン・ダパトトン、シャーン

シンバル音に合わせて、ソクさんは、マジックテープ仕立てになっているシャツの合わせ目をジャッと引き剥がし
胸をはだけて七三の構えに立つ。腕をブランブランさせて、はあはあ荒い息をしながら、視線を下に落としている
ピンスポがソクさんに落とされる
肩で息をするソクさん
胸板が膨らんだりしぼんだりしている…
俺はその姿にまた、体中の血が逆流した…
どうしよう…
こんなソクさんばかり見ていると…俺は…

今朝のシャワー室での出来事を思い出してしまった
あんな恥ずかしい事を俺はこの人に…こんな素敵な人にしてしまった…
なんてことを…

ピンスポが落ちて、真っ暗な舞台からソクさんが袖に戻ってきた
続いて筋肉番付が始まる

「はあはあはあ…すみません、先生…銃は…まずかったですね…」
「そうだよ!オレぁてめぇが銃構えたとき、てめぇを北極に送ろうと思った!」
「…」
「けど、今回も結果オーリャイよっよかったわん」
「ゆっ…許していただけるんですか?」
「いいわよん」
「ありがとうございます!地獄に仏だ!」
「…てめぇ、オレが閻魔大王だって言う気かよぉっ!」
「いっいえっ…」

俺は先生に責められているソクさんをぽーっと見ていた…
俺…ソクさんにかなり参ってる…

ソクさんがこっちに来る
恥ずかしい

「スヒョク」
「…」
「スヒョク?返事は?」
「…はい…」
「さっきの猫、可愛かった…」
「…」
「僕、変じゃなかった?」
「…凄く素敵で…」
「…ほんとに?」
「…はい…」
「今度はキスしてくれないの?」
「…」
「じゃ…」

ソクさんからのキスだ…
俺の唇を掬い取るようなキス…
逆流がおさまらない…これ以上だめだよソクさん…

「おっと…次の服に着替えなきゃ…」

ソクさんは俺からはなれて衣装のあるところにいった
そして…また真っ青になっていた…

俺は…これ以上カッコいいところを見せられたら…どうなってしまうかわからなくて、とても怖かった…


【24♪小悪魔の恋】ロージーさん


変わらない状況  ぴかろん

僕は、どこをどうやって歩いたのかわからなかった
気づいたらイナの隣に座っていた
どうした?話はできたのか?と聞くイナに、僕はただ頷いただけだった…

果たして僕は、やれるだけの事をやったのだろうか…
弟もミンチョルさんも、僕の事だけをわかってくれて…僕が引き起こした二人の問題は、未解決だ
いや、それどころか、僕と話したことによって、二人とも帰って『別れの意志』を強めたような気さえする…
そして、弟の言った息子の事…
忘れているわけではない…
会いたいとも思う…
だが、どうしても妻の事を思い出してしまう…
アナスターシャがチフンを育てると言った時、僕はチフンに会いに来るのをやめようと思った
妻と僕の間にできた愛しい子供を、妻が死んでから愛した女が育てる…
アナスターシャは、貴方の子供だから、貴方の愛した人が生んだ子供だから私はたくさんの愛を注いであげられるわ…と言った
妻にとっては残酷な行為なのではないだろうか…そしてチフンにとっても…
でも男手だけでは子供を育てられない…
それにどうしても妻を、妻の最期を思い出してしまう…チフンを見ると…
僕は逃げたんだ…あの残酷な出来事を思い出したくなくて…

そして弟を求めた…

チフンに会いに行くべきなのだろうと思う…
とても怖い…

「どうしたんですか…」

テジュンさんが声をかけた
イナは知らん顔している

「あ…いえ…大丈夫です…」
「疲れましたか?」
「…いえ…」

テジュンさんはとても親切だ…
大きな人だな…さっきイナと長いキスをした後に一応イナに確認したけど
テジュンさんがキスしてもいいと許可してくれたらしい…

イナは幸せ者だ…

テジュンさんが舞台横手に向かった隙を狙って、イナが僕に話しかけてきた

「いいか、さっきのキス、三分ぐらいってことにしといてくれよ。くれぐれも、俺がしがみついて離れなかった事とかは言うなよ!いいな」
「…はふんとかもっととかギョンジンしゅきとか言ったことも言っちゃいけないんだよな…」
「しいいいっ!」
「…言わないよ…」
「あれも言うなよ、こんどお前を抱きたいって言ったことも…」
「…イナ…」
「なに?」
「僕、祭が終わったら…すぐに…発つよ…色々とありがとうな…」
「…なん…だって?」
「…息子に会いに行ってくる」
「…むすこ?…」
「ん」
「子供がいたのか…」
「ん…。色々有難う…なんの恩返しもできないけど…」
「…」

イナは、何か言いたそうに口をひらいたけど、目を泳がせて舞台の方を見た

「ありがとう…感謝してる…」

僕は背けられたイナの顔に向かって、その言葉を送った


俺の名は    足バンさん

俺はサンドゥだ
少しばかり身の丈が小ぶりだからってなめんなよ
ちったぁ名の知れた男なんだ

最近ちと様子がおかしいんじゃねぇか?
祭がやっと始まったのはいいが
あっちでがたがたこっちでがたがた

こっちは小白雪姫に挑戦で緊張してるってのによ
「小」ってのが気に入らねぇが
スングクの奴に「そこがラブリーです」とか薄く言われて
そんなもんかなと思ってよ

ま、俺くらいになると
そんなちっちぇこたぁゴタゴタ言わねぇわけだ

メイクにだってけっこう時間かかんだぞ
最初白く塗った顔見た時はトイレの花子さんかと驚いたが
そのうちけっこうクセになってな
化粧品使い切っちまってな
も一回発注したって次第よ

口紅は「でいおーる」の春の新色がお気に入りだ

衣装もなかなかだぞ
なに?子供用かって言ったかてめぇ!
こう見えても特注だぜ!

こんな面倒な衣装だがチュニルの奴が意外に着付けがうまい
小道具までいろいろ世話焼いてくれるわけだ

で、最近目障りなのがテスの野郎だ
あの野郎すっかりかわいこぶりやがって
あいつに裏切られた時は海で風に吹かれてすっ飛びそうになったもんだ

まぁサイズ的には昔から好意を持ってるんだがな
ふん。最近はあのでかいのが側についててよ
なに?寂しいのかって言ったかてめぇ!

まぁ…ちっとはな…かわいい子分だったからな
よくこの手で足で殴ったもんだ
そのあと足がつっちまったけどな

まぁみんな昔のこった

さぁ!支度できたぜ!
7人の小人ども行くぞおらぁ!

え?出番まだなの?
そうなの?
あ、はい

もちっと待ってって。ごめん


月あかり   れいんさん

どれくらい泣いたのだろう
これからどうすればいいのだろう
平気なふりしてテジンさんの傍に行く…?
…僕にはできそうもない

どこか遠くへ行こう
誰とも会わずにすむところへ
もともと僕は遅れて来たんだ
ここには来なかった事にすればいい
テジンさんとも…会わなかった事にすればいいんだ

僕はのろのろと起き上がって荷物をまとめた
ほとんど来た時のままだから荷造りする程の事もない

ベッドの乱れを整えて僕は部屋を出た
部屋を後にする前に僕は後を振り返った
テジンさんの香りを覚えておこう
さよなら テジンさん…

人目につかぬよう会場の脇を通り抜ける
ジュンホ君の姿が見えた
僕に気づいてニコニコしてる
ジュンホ君にはちゃんとさよならを言おう…
僕はジュンホ君に手招きした

「すはせんせい。ぐあいはどうですか?」
「うん。ありがとう。もう良くなったよ」
「そうですか。よかったです。じゃあ、いっしょにまつりをみましょう」
「ジュンホ君…その…悪いんだけど、急用ができて…帰らないといけなくなった」
「おうちにかえるのですか?すはせんせい、どうしましたか?なんだかかなしそうなかおしてます」
「そんなことはないよ。ジュンホ君、これまでいろいろありがとう」

僕はなるべく手短に話した
テジンさんの方は見ないようにした
見ると辛くなるから
そして僕は会場を後にした

ぼくはこんなとき、どうしたらいいのかな
たぶん、すはせんせいのことを、だれかにいわなきゃいけないんだろう
でもだれに?

ちーふもすひょんさんもいそがしそうだし
どんじゅんさんもようすがへんだし
いなさんとてじゅんさんもいつもとちがうし

あ…てじんさんがいる
たおれたときも、てじんさんがつきそっていたもの

ぼくはてじんさんのちかくにいって
すはせんせいのことをみみうちした
てじんさんのかおいろがかわって
すぐにすはせんせいをおいかけていった
ぼく…またきのきいたことしちゃったかな

僕は走った
スハはどこだ
まだその辺にいるはずだ
なぜ黙っていなくなる…

「…スハ!」

大きな荷物をひきずって、エントランスホールを歩いているスハを見つけた
僕は走り寄ってスハの腕を掴んだ

「どこに行くつもりだ!荷物なんか持って!」
「…テジンさん…」
「さあ、戻ろう」
「イヤです!」
「スハ…」
「僕はもう行く…!」
「…何わからない事言ってるんだ!」
「お願いですから、行かせてください!」
「スハ…わかったから…ちょっと…話そう」

振りほどこうとしたその腕はますます強く掴まれた。痛みさえ感じた
僕はテジンさんに腕を掴まれたまま、中庭に連れて行かれた


寂しい野良猫   ぴかろん

…ギョンジンが白い顔をして唐突に言った
祭が終わったら発つって…

え?こどもがいるの?
…なんだ、恋人もいるのか…
そりゃそうだよな、こんなかっこよくてこんなキスがうまいんだもん…きっと…誰もが夢中になるよな…

俺も…

いや…俺は『キスが好き』なだけであって…
俺はテジュンさえいれば…いいんだから…

胸のあたりに何か痞えてて、何度唾を呑み込んでもそれが降りていかない…
ギョンジンの顔をまっすぐに見られない
ギョンジンには帰る場所があるって事、忘れていた
…もう、すっかり仲間なんだと思ってた…
俺にとってはもう…かけがえのない仲間の一人になってたから…

何か言ってやりたい
進む道がわかってよかったな
とか
息子さんとその恋人と、三人で幸せに暮らせよ
とか
気の利いた言葉をかけてやりたい
でも、口を開くと、同時に涙まで出そうで俺は…
唇を噛み締めて舞台を見つめていた

「ありがとう。感謝してる」

首筋が震えて喉の奥から熱い塊がこみあげてきた
もうだめだ…涙が噴き出す
ギョンジンにばれてしまう…泣いてることが…
だめだ…ちゃんと笑って、よかったなって言って送り出してやんなきゃ…

「イナ…お前に出会えて…僕はほんとに…ラッキーだった…。お前のおかげで僕は僕を取り戻せた…。こっち向いてくれよ…
命の恩人の顔、覚えておきたいんだ…」

俺は涙を拭いて、ゆっくりとギョンジンの方に向き直った
ギョンジンの落ち着いた笑顔を見た途端、俺の目は涙の膜に覆われた

「…仲良く…がんばれ…しあわせに…」

励ましてやりたかった
言葉を発したと同時に、寂しさが押し寄せてきた
泣いちゃいけない
コイツを引き止めちゃいけない
コイツにはコイツの幸せがあるんだから
俺にはテジュンがいるんだから
俺にはたくさんの仲間がいるんだから…

もう一度涙を拭って、奥歯に力を入れて、俺は精一杯の笑顔を作った

「…寂しくなるな、でもお前の幸せのためだ。頑張って、家族で仲良く暮らせよ…な?」
「…ありがとう」
「…祭、最後まで見てくだろ?」
「…うん…」
「…だったらもう一回ぐらい…キスできるな…へへっ」

もうキスなんかしたくない
そんなことしたら俺はお前にわがままをぶつけてしまう…
もうやめておくよ…
俺はなんでこんなにも馬鹿なんだろう…
ソクの時に学習したんじゃなかったのか?
なんでこんなに気が多いんだろう…

「テジュンとこ行ってくる」

立ち上がった俺の腕をギョンジンが掴んだ

「ここに居てくれないか…今日だけは僕と一緒に…」

そんな事…そんな酷な事…

「…いいよ…」

俺たちは恋人同士じゃないんだものな…
祭が終わったら散り散りになる、ただの…友達だもんな…
いいよ…俺だけがお前の全てを…覚えておくから…

椅子に座りなおした俺の小指に、ギョンジンは自分の小指をそっと絡めた


デラルスイリュージョン れいんさん

私はプリンセス・ミミ
そう…あのプリンセステ○コーと肩を並べるイリュージョニスト…
年齢不詳では負けてるけど、イリュージョンでは負けないわ

「おお!これはなんと麗しい…。ミミさんは日増しに美しくなられる」
「あらん、会長。似合うかしらこの衣装。ちょっと地味じゃなあい?」
「何を言っておられる。あなたの為にあるような衣装じゃ」
「そお?この衣装、小林○子の紅白衣装担当のデザイナーに作らせたのよおん
…そんな事より、会長、折り入ってお願いがあるの」
「ほう。この私に?ミミさんのお願いだと断れませんな。わはは」
「あのねえ〜ん、私のイリュージョンのステージに出てほしいの。…初めはそのままの髪型で…
で、ボックスに入って私がカウントしたらヅラを取って出てきて欲しいの」
「ええっ!なんですと?ヅラを…?そ、それはいくらミミさんの頼みでも…」
「いやん!会長!頼りにしてるのよっ!私に恥をかかせないでっ!会長の男の花道を見せて!!」
「ええい!わかった!男トファンの意地を見せましょうぞ!」
「ありがとおん、会長!会長は観客の拍手喝采を浴びるわ!」
「えっと…次にミンチョル君…あなたはイリュージョン得意だったわよね」
「え…?僕ですか?」
「そう…あなたが客席に座っているところにパッと照明を当てるわ。そして次の瞬間会場の照明を全て落とすわ
次に照明が当たるまでのほんの一秒くらいの間…。その間にミンチョル君は客席上部に立ってるソンジェ君の隣に瞬間移動するのよ」
「…そんな無茶な…」
「前も難なくやってのけたじゃないの。息ひとつ切らさずに」
「だってあれは…」
「もう!時間がないの!ごちゃごちゃ言ってないで頼むわよっ!…で、この角刈りのカツラとサングラスと衣装つけて」
「…なんですか。これは…?」
「これは、西部警察の大門刑事のイメージよ」
「…!こんなのイヤです!」
「きいい!あなたショーをぶち壊したいのっ!とにかくやってっ!いいわねっ!」
「えっと…次は…ソンジュ君にウオンビン君。あなた達ステージの上で二人で私を高く持ち上げていてね
上半身裸で黒ビキニパンツ一枚の姿で肉体美をアピールして」
「わかりました。おやすい御用です」

この子達は素直でいいわ…

「それから…っと、マイキーとミヒちょっと来て。マイキーはこの三○憲一の衣装でお願い
ミヒ、あなたはあのボックスに入るのよ。そしてマイキーがくるくる回した後、剣を突き刺すわ。何本も何本もよ
そして最後にあなたが傷ひとつない姿でボックスから登場するの」
「え?…でも、それって痛くないの?」
「大丈夫に決まってるじゃない!ちゃんとしかけがあるのよ
あなたは何も心配しないで、このキャンデイキャンデイの衣装をつけて誇らしげにポーズを決めてくれたらいいのよ」
「ふうん、そう…。客席の注目を浴びるかしら?」
「当然よ!その瞬間、あなたは皆の注目を一身に集めるステージのヒロインよ!」

(コショコショ…ちょっとマイキー…一応ホテル前に救急車スタンバイさせといてね。…大丈夫よ!ちょっとやそっとではあの女くたばらないから)

「それから次は…チョンウオン君。スングクさんとあなたの子役の子呼んできて。あのね、まずスングクさんがゴンドラから降りてくるの
で、私がリングカーテンで目隠しするわ。そしてカウントした後、その子役の子が入れ替わりに出てくるの
子供に変身したスングクさんを見て観客は息を呑むはずよ。頼むわね。で、衣装はこれ…二人とも横浜銀蠅の格好で
いいの!目立つ方がいいんだから!ちゃんとリーゼントにしてきてよっ!」

さあ、こんなものでいいかしら…
もうすぐステージの幕があがるわ…
私の…イリュージョンワールド…

ああ…!!

私…溢れる涙を止められないわ…
…あんなに客席が熱狂してる…
なんてパーフェクトなステージだったのかしら…
そう…そして今から私がピアノ線で天井から吊るされて…イリュージョンの華麗なファイナルを飾る…
観客からは、私は宙に舞う天女のように見えるはず…
完全にプリンセステ○コーを抜き去ったわ…
感・無量…!

ミシ…ミシ…ピリ…ピリ…

えっ?…あっ!ピアノ線がっ!
もっとダイエットしなきゃダメだったかしら…
ああっ!切れるわっ!
私は最後まで女優よっ!
笑顔を絶やさないわっ!

ブチッ!

「あああああ〜!!早くっ!!幕を下ろしてえええ〜!!」


ミンです  オリーさん

ミンです
ここのところお騒がせして申しわけなかとです
でも実際ひどい目にあっとるとです
温和な僕でもちょっと切れそうになっとるとです
時間にして半日ばかりのことですが
もう何日もひどい目にあってる気がしとるとです
なのでつい愚痴も出るとです

ミンです
まず狐に捨てられたとです
悔しいからちいっと首ば絞めてやったとです
ペンダントも捨ててきたとです
引きちぎったので、首が痛かったとです
次は性悪な兄です
人のことさらし者にして試練だと言い張っとるとです
でも僕には単なる意地悪だとわかっとるとです

ミンです
やっと兄から離れたと思ったら、
左右後ろに人がいて見張られとるとです
いえ、スヒョンさんとドンジュンさんには
迷惑かけてすまないと思っとるとです
でも!僕のプロフェッションは諜報部員です
いつも確保する立場とが、素人に確保されとるとです
情けなかとです

ミンです
もう嫌気がさして脱走したとです
一人で遠くに行きたかと思ったとです
やっとプロらしい段取りつけたとです
やっと素人を出し抜いたと思ったとです
したら、あの性悪の兄がでてきたとです
なして、兄はホテルの見取り図なんか持っとるとですか!

ミンです
あの兄が僕に謝ったとです
今までしてきた意地悪を全部告白したとです
でもはっきり言うと迷惑です
だって過ぎた事でどうしようもなかとです
それどころか、盗られた彼女の数が増えたとです!
僕は5人だと思っていたとですが、
奴は7人盗ったと謝ったとです!
僕はどうすればいいとですか…
でも僕は基本的に礼儀正しい人間です
謝った兄を許したとです

ミンです
兄の話はもういいです
他にまだ大きな問題があるとですから
そうです、あの扱いづらい狐のことです
洗面所で水をざあざあ出してる奴がいたとです
「節水にご協力を」という張り紙が読めんとでしょうか
顔をバシバシっと洗ったあと、また垂れ流しです
限りある資源を無駄にしとるとです
そして最後にお面をつけて
気どって出て行ったとです
はっきり言ってアホです!

ミンです
思ったとおりです
やっぱり狐はやせ我慢しとるとです
頬がぴくぴく、喉仏ぶるぶるです
僕みたいな極上な恋人と別れようとしとるとですから
無理に決まっとるとです
それにしても勝手です
僕の気持ちはどうなるとですか? 振り回される僕に人権はなかとですか?
兄にしても狐にしても、どうして僕の回りには
手のかかる男ばかり寄ってくるとですか!

ミンです
狐の取り扱い説明書は長くてこ難しいとです
めったな人では理解できないとです
たぶん奥さんは半分も読めなかったと思うとです
全部読めるのは僕くらいです
なのに!ひどかとです!
そんな僕を放り出すなんて
ここはきっちり教え込む必要があるとです
閉じこもりの性根をたたき直すとです
決めたとです
皆さん、僕はやるときはやるとです!


その頬  足バンさん

会場に戻りひとり座っているギョンビンに声をかけた

「大丈夫か?」
「ええ…あのスヒョンさん…イナさんにあとで兄さんのところに来いって言われたんですけど」
「そう…話せる?」
「わからないけど…もう一度…会ってみます」
「会場脇の控え室だ」
「はい…あの…済みませんでした…出ていったりして…でも…」
「もういいよ。今ここにいるんだから」

ギョンビンは小さくではあるが微笑んだ

僕はさっきから気になっていることを聞いた

「その…ドンジュンはどこに行ったのかな」
「さっきスヒョンさんを捜しに行きましたけど…」

唐突にどきんとした
捜すって…さっき?…

僕は今度は自分のためにドアから飛び出した
携帯は切られたままだ
あいつのお気に入りの中庭を見渡した
裏の噴水もあのあずまやにも走った

部屋に帰ったのかと考えホールへの入口に戻った時、
あの階段の隅に座り込んでいるドンジュンを見つけた

安堵で身体の力が抜け、思わず膝に手をついて深く息を吐いた
ドンジュンはそんな僕をしんとした表情で見ている

気を取り直して近づくとやつは目をそらした
肘をつき片手に顎をのせてしらんふりをきめている
僕は階段に片足をかけてその顔を覗き込んだ

「廊下で見てたんだろう」
「なにを?友情のハグを?」
「そうだ。友情のハグをだ」
「見たよ」
「それでそんな顔してるの?」
「放っておいてよ。今猛烈に頑張ってるんだから」
「なにを」
「耐えてるのっ!スヒョンの友情を理解しようとして!」

僕はそっとドンジュンの頬に手を伸ばしたが、その手は払われた

「まだ理解はできてないみたいだね」
「車の構造より遥かに難しいよ」

僕は今日何度目かのため息をついた

こんな僕がミンチョルになにを言えるんだろう
いちばん大事にしてる人間にこんな思いをさせて
いったい誰に何を言えるって言うんだろう

「さっきのスヒョンの答え聞いてないけど」
「なんの?」
「ミンチョルさんと同じ立場だったら僕にも同じことするのって質問」

ドンジュンはどこか挑むような口調だ
僕はそんなドンジュンの目を見たまま、言葉を選びゆっくりと答えた

「同じことはしない。僕が別れようという時はおまえと本気で別れたい時だ」

ドンジュンの目に複雑な感情が走った
そして曲げた指を軽く噛んでその目を伏せた

僕はしゃがんでドンジュンの手をとり、その噛まれた指に唇をあてた
ドンジュンの首の後ろに手を回し、俯いているその顔を覗く

「ギョンビンが行ったら…おまえも本当に出て行く気?」
「ん…」
「それ聞いて僕が黙って見てられると思う?」

ドンジュンは目を開けると僕の左頬に手を当てた

「わかってる…でも…ここに触れた頬にどうしても嫉妬しちゃうんだ」
「…」
「気づかないふりなんかできない」
「ドンジュン…」
「そんな僕が本当に嫌になったらちゃんと言って」
「…」
「これが僕だから。これ以上足すことも引くこともできないから」

真っすぐこちらを見る瞳が迷いと寂しさに濡れている

僕は我慢できなくなった
首に回した手に力を込め強く唇を重ねた

離したくない。この透明な魂を
僕はほんの少しの間、今日の喧噪を忘れた


ミンチョル取扱説明書 第1章 れいんさん

1 車の運転並びに駐車についてはかなり強気である(具体例…他の車にお構いなしに三車線変更する)
  桜並木前に人の迷惑も顧みず警備の人の目の前で堂々と路駐する
2 走り方のフォームは背中に板が入ってるが如く美しい。しかし、病院内で靴音を立てて走ったりする。ややTPOを間違えている
3 携帯電話の電源はOFFにせず、バッテリーをはずす
4 以前はフクスケ人形を叩き割ってストレスを解消していた。現在はミソチョルちゃんに話しかけたり鼻をつんと突付いたりする
  かなり円満な解消法になったと見受けられる
5 どんなシチュエーションでも(コントのセットのような民宿であろうが魚臭かろうが)キザなセリフを涼しい顔で言える
6 どんな時も、例え海でズブ濡れになった後でもシワひとつないワイシャツを着ている
7 テニスをしているフォーム(素振り)はできるが実際ボールを打っているかどうかは定かではない
8 心を許した相手には甘えたさんになり、もっと心を許した相手には「フーフーしてくりぇないと僕じぇったい食べないれしゅ」
  などと赤ちゃん言葉になる。そこまでになれば取り扱い上級者といえる
9 靴は自分では磨かないがいつもピカピカでないと気がすまない
10 美意識に対しては徹底しており、顔の腫れまたは髪のセットの乱れについても納得がいかないと他人と会おうとしない


ミンチョル取扱説明書 第2章 れいんさん
11 節水などについては無頓着なので洗面の際には誰かが傍について水を出したり止めたりしてあげるのが望ましい
12 猫舌なので熱い物はフーフーしてあげないと食べない(誰でもいいというわけではない)
13 運動神経はいいはずなのになぜか体が硬いとかリズム感がないとか思われがちである
14 額に手をあてて俯いたり腰に手をおいたりドアに手をついてうなだれたり前髪フーをする
15 ベルトにお腹が乗ってたり気太りする傾向がある(日によって体の横幅のサイズが変わる)
16 足の長さも日によって違う(シークレットブーツ疑惑)
17 坂道で誰かと会話する時は上り坂の方の場所をキープする
18 自分の殻に閉じこもる時は目にガラス玉をはめ、時にはサングラス時には仮面をつけたりする
19 角度によって表情が変わるが下から見上げる角度で撮るのは控えた方がよい
20 花の種類はバラしか知らない


◇ないしょのはなし1  妄想省家政婦mayoさん

軽いハグの後ちぇみと並んで隅っこの壁に寄りかかっていた...

「ちぇみ...」
「何だ...」
「あの荒行の時の単車...まだ置いてある?」
「ぁぁ、まだ返してない...何だ、乗りたいのか?」
「ぅん...あの型はめずらしいんだ...だから...」
「ははは...わかった、わかった..ウォンギに話つけておく..」
「さんきゅ..」
「お前.....もう大丈夫なのか?」
「ん?」
「ん...事故のトラウマ....☆彼..」
「ぁ..ぅん...まぁ...☆彼はテソンに降参したし...」
「あはは..そうだろうな...」
「それにちぇみは運転がうまいから安心できる..」
「ならいいが...お前も後ろにテソンを乗せればいいじゃないか..」
「やだよ..自分で運転するときは一人がいい..」
「そっか..まぁその気持ちもわからなくもないが..」

「ちぇみ..」
「何だ..」
「好きでいつも一緒でも..一人になりたいとき...あるんだ...」
「闇夜...」
「充分にあふれる想いもらってる...テソンのこと好きだよ..」
「ん....」
「でもね...ふっ…と一人になりたくなる...」
「ぷぷぷ……」

ちぇみは腕を組んだまま下を向いて笑っている

「何よ..」
「いや...俺もお前も放浪癖があるからな...本来の癖は抜けん..」
「ぷっ...そう...ひとりに慣れすぎてたから..」
「そうだ...だからよくわかる..」
「悪いなとは思うんだけど..」
「だがテソンはお前のそういうところもわかってるだろ」
「ぅん..テソンからの想い...半分も返せてないなぁ..私..」
「奴は自分の想いの分を返せとは思ってないさ...」
「だといいんだけどぉ...」
「テソン..も..厄介な奴に惚れたもんだ..」
「....自分でもそう思う...」

「闇夜...」
「ん?」
「お前がな...そうやってふらふら〜ふらふら〜気持ちが揺れるとな…」
「何..」
「正直...俺も困る...」
「ぁふ...」

ちぇみは私が見上げると悪戯っぽい顔で言った...

「お前とふたりで逃げよっかなぁ〜〜っとちょと思う…」
「あは...いいよ..」

視線が交錯し..しばし妄想のちぇみと闇夜........@_@@_@
ぶるんぶるんと頭を振る2人....

「「ぁ〜ぁ〜悪魔なふたりだぁ〜^^; ^^;」」

ちぇみが私の頭を後ろからビタン#と手のひらで一発叩いた..
手を伸ばすとちぇみが頭を差し出した..
私もちぇみの頭をビタン#と一発叩いた..

「もぉ〜仲直りしたばっかでしょうがっ!」
「ぁぅ..すまん...そういうお前だって..」
「ごめん..」
「俺はテスもテソンも..お前も大事だからな..」
「わかってる..」

ちぇみは私の肩を引き寄せてぽんぽんと軽く叩いた
そして静かに言った..

「お前も早くテソンとひとつになれ...迷いは消える..」
「ぅん...ちぇみ..」
「ん?」
「でも..ちょっとは..さみしい?」
「ぅぅ〜ん......あほ!真面目に聞け!」
「はい...」

 『テス..すけべぇーな俺を許せ..』
 『テソン〜ミアネ..』

「闇夜...内緒話は終わりだ..マイクのスイッチ入れろ..」
「ぅん..」

悪魔ちぇみと小悪魔闇夜はマイクのスイッチをONにした..

その時ホールの入り口に2人の男が現れた..
若い男が闇夜に手を振った...
俺はテソンにマイクで知らせた..

~~~~~~ 僕は隣のテスから闇夜の背中話を聞いていた..

「テソンさんは知ってたの?」
「...前に闇夜に聞いたことがある..」
「そう...じゃぁ妖精を包んでくれる風はテソンさんかな..」
「そうかな...でも清・風・明・月だと風は闇夜にしたじゃない..」
「そっか..んー...」
「..テス...闇夜は同じなんだ...ちぇみと..」
「えっ?何が?」

僕はテスのペンダントの石を指した..

「ぁ...そうなの...でも旧暦..」
「旧暦も月は一緒、旧暦の日付は一日違いさ..年は違うけどね..」
「うっそぉーそうなんだぁ..」
「ぁぁ...だから...あの2人...似てるだろ?」
「ぁ..ぅん...そう言われれば...似てるかも..」

 『テス...お前は気づいてないよな...
  あの2人は..似てるから..似すぎてるから..
  どっかで惹かれ合ってるんだよ....これは..お前は気づかないで欲しいな...』

「どうしたの?テソンさん…」
「お?...何でもない..」

僕はテスの頭をくしゃ#とした..
その時ジュンホがテジンのそばにきて耳打ちをした..
テジンは顔色を変えて席を立って行った..
テジンの席にジュンホが座った..

「ジュンホ、何かあったのか?」
「はい、すはさんがにもつをもってろびーにいたんです..」
「スハが?」
「さっきおへやにつれていったのがてじんさんだったのでそれで..」
「そっか..よく見つけた。偉いぞ。ジュンホ..」
「ぼくはびーえっちしーのあんてなです...」
「あはは...ホントだな...お前が一番沈着冷静かもしれない」
「てそんさん、ちんちゃくれいせいってどーかきますか?」
「お、んっと...こうだ...物事に動じないで感情的にならないこと...わかる?」
「それはおちついておどろかないってことですか?」
「ぅん。そうだね..」
「じゃ、ぼくですね。それはいいことですか?」
「そうだなぁ...時と場合によるかな...間違ったことしたら怒らなきゃ..」
「あんまりおこっちゃだめです..おこられるよりおこるほうがかなしいです..」
「...そうだね...そう...」

 『僕は冷静沈着でいられるかなぁ....』

「てそんさん、したはどうなりました?」
「ん?あはは...”進”...」
「よかったですね...つぎは?」
「聞くねぇ..ジュンホぉ〜」
「すみません...もうききません..」

横からテスが僕に耳打ちした..

「テソンさん、いつ?」
「何が...」
「したの次のした...へへ..」
「言えるかっ!くーっ..えっちな奴めっ..」
「えへっ^^; だって...アヤシイ..テソンさんだもん...」

 『僕のその日...予定が狂いそう...秒読みなのに..』

僕が小さなため息をひとつ..ふぅ..とついたときにちぇみから通信が来た..

「テソン...例の2人来たぞ...闇夜が向かった。入り口に行けっ..」

僕がホールの入り口に向かうのと闇夜が向かうのとほぼ同時だった..
闇夜は途中で僕に気づき待っていた..
僕は合流した闇夜の肩を抱いて入り口の2人に挨拶をしに行った..


俺は入り口に現れた2人の若い方が
「ヌナァ〜!(姉さん〜)」と闇夜に手を振ったのと同時にテソンに通信した..
「行ってくる...」と闇夜が向かい合流したテソンの様子を見ていた..
テソンのちょっと前のざわざわがなくなっているのが見て取れた..

だが...闇夜は..どうもいかん..
ソヌふらふらだ..困った奴だ...
ふらふらは誰が止めるんだ...テソンか..そうだよな...
ぅ〜ん...俺にも原因があるか...じゃ..俺が止めるか?
あぅ..いかんいかん...
俺が頭をぶるんぶるん振っているとテスが傍に来た...

「ちぇみ~どうしたの?」
「ぉ、ぉ..何でもない...*^_^*」

俺はテスを懐に呼んだ..
ふらふらしてるのは俺…か?


セツブンショー4  ぴかろん

次の衣装が問題だ…恥ずかしい…恥ずかしすぎる…

なんでもこの衣装はそんすんほん君が、デジャイナー先生のファッションショーで着たのと同じ衣装らしい…
彼は恥ずかしくなかったのだろうか…

黒のシースルーの長袖Tシャツみたいなもんである…
そして豹柄パンツに豹柄マフラー…
パンツの裾はやっぱりブーツイン…

どういうの?なんなの?わかんない!はずかしい!
スヒョクに見せたくない!

「おいっお前」
「ははははいっ!」
「どこでダンス習った」
「…習ってないですけど…あの…僕のイトコの嫁の弟の息子が、ニホンのジャ○ーズというところでショービジネスをやっていて
その子から送られてきたジャ○ーズのビデオを見てて、ショーの振りを真似してたら…」
「ほぉ…知ってるぞ、ジャ○ーズ。社長がアタクチとイッチョの趣味なにょよぉん…なんて子?」
「は…はい。確か少年○のニッ○とかって名前で…」
「はあん、あのベテランね。あーたと同い年ぐらいじゃなくて?」
「へっ!そうなんですか?!年下だと思ってた…」
「とにかく、アータのダンス、なかなかいいわ。今度もにゃにかパフォーマってちょーでゃいっ!…あ、そうそう、今度は豆、忘れずに持ってけよ!」
「へっへいっ…」
「早く着替えろよ!のろま!」
「あ…はい…」

僕は妖怪にノロマ呼ばわりされ、仕方なくこのいやらしい衣装を身につけた
スヒョクに見られたくなくて、僕はそそくさと舞台に出た
スヒョクの横を通り過ぎた時「あ…」という小さな声とそして「う…」という驚きの声を聞いた…

見るな!恥ずかしい!

でも舞台に出ると、ニッ○の魂が乗り移るのだろうか…僕は気分が高揚して、オラオラ状態になる
どんな衣装を着ていようが、音楽に合わせて体が動いてしまうのだ…


ソクさんは、物凄くいやらしい衣装を着て舞台に立った
俺はもう、どうしていいかわからない…
見ていてもいいのだろうか…
チ○ビが透けてるんだよ!
尋常ではいられない…
客席からの熱い視線がソクさんの…衣装に集まっている…
絶対ヘンだ!この衣装…
でも舞台中央に立ったソクさんは凛としている…
かっこいいんだ…
俺はやっぱり見とれてしまう…

ソクさんは音楽に合わせて、体を開く
拳を胸の前で十字に組んで、それを両脇に広げながら、右足を肩幅より少し広めに開いた
それから膝を曲げ、腰を落として『突き』をするように右手を前に突き出した
右拳を腰に戻し、両腕を大きく回しながら真横に開く…と同時に、膝を開いて…いわゆるガニマタ状態になる
相撲のシコとかいう形に似ているけど、でも…かっこいいんだ…
そして音楽に乗りながら、両肩を揺らし始める
肩を揺らしながら、腕を前にゆっくりと動かし、そしてまた戻し、それを片腕ずつ行う
腰は落としたまま、大きく足を開いて、膝を曲げたまま…
上体を前に倒し、腕を片方ずつ前に伸ばし、まるでスパイダーマンのようにゆっくりとくねらせる
目は一点を見つめ、険しい顔をしている
そして左手に豆の枡を持ち、右手で豆を掬い、スパイダーマンの動きでゆっくりと豆を撒く

うねりをあらわすような腕の動き
何かを渇望するかのような表情
広げた足が野蛮だ…
腕の動きを少しずつ早め、足幅を狭くしていく
流れるような動き
低かった姿勢が、高くなり、七三に構え、右腕を天に向かって突き上げる
でも目線は斜め下…

ああ…
色っぽすぎる…
客席からため息が漏れている

突き上げていた右腕を勢いよく振り下ろし、豆を床に投げつける…
そしてまた足を大きくひろげ、上体を曲げてスパイダーマンのようになる

豆の枡を横に置き、上体だけをうねらせる
何かを睨みつけるような瞳
その瞳を覆う長い睫毛
不敵な笑みを浮かべた唇
太ももに当てられ両手
その両手を伸ばし、何かを掴もうとするような動きを見せる
動きは段々と早くなり、両手を組んで自分の腹を突き刺すように動かす
音楽の終わりがけに、組んだ両手をまた上に突き上げ、体をのけぞらせる
音が終わると同時に、体を起こして両手をザンっと放し、体の横でぷらつかせている
肩で息をするソクさんは、とてもセクシーだ…
ほんとにあのソクさんなの?

こんな人と俺は…キスしてたの?

ライトが落ちると真っ直ぐに袖に歩いてくる
袖に入ったとたん、スケスケのシャツをさっさと脱いだ
そして上半身裸のまま、俺を抱きしめた
心臓が張り裂けそうだ
ソクさんの素肌が俺の頬に当たる…

「しばらくこのままでいて…」
「だっダメです…」
「頼む…すっごく恥ずかしかったんだ…」
「…かっこよかったです…」
「かっこよくないよ!こんな恥ずかしい衣装…」
「凄く…セクシーでした…」
「…何も言わないで…」
「だけどほんとに…」
「スヒョク…」

ソクさんは、俺の額に自分の額をくっつけて、目を瞑っていた

「キス…しましょうか?」
「いや…いい…」

俺は返事を聞く前に、ソクさんの唇にキスしていた…
俺のものだ…この人は…俺の…
俺はきっと夢を見ているんだ…
俺は人を愛する資格なんてないのだから…
これはきっと夢なんだ…
なんて幸せな夢なんだろう…


【25♪罪びとの恋(スヒョク編)】ロージーさん


はなれていくもの  ぴかろん

つながれた小指が痺れている
俺の心臓はドキンドキンと大きな音を立てている
テジュンに聞こえてるかもしれない…
さっきからテジュンは、オ支配人と一緒に、俺から少し離れた場所に立っていて、俺を振り返ってもくれない
俺の小指が、ギョンジンに囚われてるんだぞ…
奪い返してくれよ…
小指から心が吸い上げられちゃうよ…テジュン…

「イナ…こっちを見て…」
「…嫌だ…」
「どうして?」
「お前なんか…」
「…」
「…子供の話…してよ…」
「…イナ…」
「恋人の話…聞かせてよ…」

そうすれば、このモヤモヤも晴れるだろうから…

ギョンジンはポツポツと語りだした
奥さんが爆死した事
奥さんのお腹には二人目の子供がいた事
息子の名前はチフンと言って、今度四つになる事
奥さんが爆死した三年前、まだその子は一歳?

奥さんの事を忘れるために仕事に没頭したギョンジン
息子は妻の母に預けっぱなし…
子供の顔を見るのが辛かったって
それほどまでに奥さんの事を愛してたってこと?

仕事上で知り合ったアナスターシャという女性と恋に落ちたんだってさ
それが二年前…
自分に息子がいると知って、アナスターシャは育てたいと言ったんだって…
妻の母親も、体調を崩しがちだったし、ギョンジンはアナスターシャの好意に甘えた…
でも、彼女がチフンに優しくすればするほど、ギョンジンは辛くてたまらなかったって…

「本当に息子を可愛がってくれるんだ。まるで自分の子供のようにね…。ありがたいと思う反面、死んだ妻に申し訳なくて…
僕一人で育てるべきなんじゃないかと思えて…」

それからギョンジンはまた、仕事に没頭したんだ
息子とアナスターシャに、会いに行かなくなった
たまに電話を入れるぐらいで…段々…二人の存在を心の片隅に追いやっていったらしい…

「話してもいないんだ…。会ってくれるかな…」
「…奥さんの死がギョンジンの心を凍らせたってわけか…」
「…」
「愛してたんだね、すっごく…」
「…」
「アナスターシャは?愛してるの?」
「…わからない…」
「息子は?」
「…僕は…父親失格だ…」
「…んなことねぇよ…。会ったらさ『イイコだ』っつって抱きしめてやればいいよ…な?」

俺は精一杯の笑顔で、ギョンジンにそう言った
ギョンジンは俺を抱きしめた
そして言った

「…いいこだ…お前はいいこだ…可愛くて…温かくて…どうしょうもなくて…いいこだ…」

涙が溢れてきた
もう励ます言葉もでてこない
ただ寂しいだけで
俺は涙が止まらない

「イナ…泣くなよ…」
「…ギョンジン…」
「ありがとうな…」
「寂しいよ…」
「…イナ…」
「俺…祭が終わったら…お前も俺たちと一緒に来いって誘うつもりだったんだ…」
「…それは…無理だよ…イナ…」
「だってお前ひとりぼっちになっちゃうと思って…。でも…家族がいたんだ…」
「…」
「じゃ、大丈夫だな…。寂しくなんかないよな…。寂しいのは…」

俺だけだ…

ギョンジンがいきなり立ち上がった
俺の腕を引っ張り、俺を立たせる

「なにさ、なんだよギョンジン」
「来て」
「どこへ…」

無言で俺の腕を引っ張り、ギョンジンは俺をホールの外へ連れ出した

「ギョンジン!なんだよ!」
「外の空気が吸いたい…屋上がいい?それともテニスコート?」
「…」
「屋上にしようか…」
「なんなのさ…急に…」
「気分転換」

ふっと笑って、俺たちは屋上に行った
誰もいない
みんな祭に夢中…ってわけでもないか…
BHCのやつらは気もそぞろだよな…

手すりに凭れて街を眺めていると、ギョンジンが俺を背中から抱きしめた


月あかり3 れいんさん

中庭には誰もいなかった
ホテルの中の光が漏れる
テジンさんの顔がはっきり見える
僕らは傍にあったベンチに腰かけた

「…どこに行くつもりだった…?僕に何も言わずに…」
「…テジンさんは元の場所に僕を戻すと言ったでしょう?だったら…僕がどこに行こうが構わないでしょう?」
「元の場所に…帰るのか…?」
「…いいえ。僕はもう戻りません。こんな気持ちで戻れるはずないから…」
「…すまない、スハ。…僕のせいだ…」
「なぜ謝るんです!謝らないで…」
「僕の過去など話したから…」
「僕は…何も後悔していない。あなたに会えて…よかった」
「スハ…」
「だからもう行かせて下さい」
「…行かせない!」
「…なぜ!」
「元の場所に戻るのなら…僕は止める事はできない。でも…そうじゃないのなら…行かせたくない」
「…どうして!僕はもう…あなたの傍にいられない!こんなに胸が苦しいのに…!こんなにあなたでいっぱいなのに…!」

途端に僕は抱きしめられた

「どうしておまえは僕をこんなに困らせるんだ!僕がどんな気持ちでああ言ったか…!あの時どれ程…おまえを抱きしめたかったか…!」

テジンさんの胸の中
テジンさんの温もり
テジンさんの香りがした

…ああ!
僕は、泣きたくなる程この人が好きだ

「僕はもう抜け殻のまま生きたくない。先の事などどうでもいい。あなたと一緒に苦しむ方がいい」
「僕はまだ自分の事すらよくわからないんだ…!」
「それでもいいから…傍にいさせて下さい」

テジンさんの腕に力がこもる
少しの隙間もないくらい
僕らは強く抱き合った

「僕はあなたと一緒にいられるだけで…ほんの少しの間だけでも」

テジンさんの唇がそっと僕の唇に触れた
その口づけに僕も応えた

「スハ…好きだよ」

僕達は何度も何度も口づけした
僕がほんとの愛を知った瞬間だった
月あかりが静かに僕らを照らしていた


ミンチョルです オリーさん

ミンチョルです
元御曹司です
昔はベンツに乗ってブイブイしてたとです
妹もお兄ちゃんカッコイイと言ってくれたとです
自分でもそれなりにいい線いってたと思っとります
なのに、なぜ!
気休めにプリンスなどと呼ばれるだけで、
反応してくれたのは主任だけ、
相手になってくれたのはヨンスしゃんだけとですか!
他におなごはおらんかったとでしょうか…
もっとこじんまりしたおなごが…

ミンチョルです
なぜか今ホストです
破産してなくしたベンツになぜかまだ乗ってます
無理して買ったとです
実はそれしか運転できんとです
まだ半分以上ローンが残っとるとです
なのになぜ!
知らないうちにハンドルがぼこぼこになっとるとですか!
外車は修理代が高いとです

ミンチョルです
今、絶不調です
大事なものをなくしたとです
でも誰も同情してくれんとです
それどころか
石頭とかおばかな狐とか言って責めるとです
僕だってもっと素直に可愛くなりたかとです
なぜ僕のキャラは固定しとるとですか! みんな新しいキャラもらっとるのに…
イナなんかキスやりまくりで別人になっとるとに…
あ、でもチョンウォンのキャラはいらんとです

ミンチョルです
ドンジュンのまねをしてみました
階段にすわって、指をかじってみたとです
かわいい!好き好き!とか言ってもらいたかとです
ミミさんが通りかかったとです
ミンチョル君、おなかすいてるの?と言われたとです
なぜドンジュンが指をかじると可愛くて
僕がかじるとハングリーだと思われるとですか!
もとは同じとです…
月日の流れるのは怖かとです

ミンチョルです
今朝はとてもショックでした
でも暴れなかったとです
部屋の備品を壊さなかったとです
テジュンさんのホテルだから我慢したとです
それに物を壊すと誰かが調べるとです
花瓶何個、グラス何個とか巻き戻してチェックされるとです
前は服を着たままシャワーして寝ても風邪ひかないとか言われたとです
いい加減にしてほしかとです
僕だって不思議とです
なぜ僕のシャツがいつもパリパリなのかわからんとです!
本人がわからないのに、見てる人がわかるわけなかとです!
そういうことはPDに言ってほしかとです

ミンチョルです
本題を避けてたとです
目が腫れた原因の子犬の話です
ある日突然現れたあの子に僕は降参したとです
あの子の前だと素に戻れたとです
超甘えッこができたとです
おかゆまで食べさせてもらったとです
そんな子供なら誰でもしてもらえるような事で
喜んでいる僕はアホですか…
でもそんなこんなで大好きになったとです
だから…だめです…
また泣けてきたとです…

ミンチョルです
子犬の話の続きです
子犬は諜報部員だったとです
パイロットもできるとです
すごかとです。マッハ3.98とです
今まで仕事が生きがいだった僕はあきらめたとです
そんな子犬にホストはさせられんとです
おかゆふーふーもさせられんとです
靴磨きもさせられんとです
僕は間違っとるとでしょうか
みんなの言うように石頭でしょうか
わからんけど
でも、つらかとです…


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