あずまやの夢  足バンさん

一度だけおまえの策に乗ってやる

スヒョンはそう言って席を立った
彼の唇が触れた首筋が熱い
喧噪の中で僕は急にひどい寂しさを自覚した

このままスヒョンの気持は遠くに行ってしまうかもしれない
ばかな僕は自分で傷口を開いちゃったんだ

ミンチョルとは明日から会えなくなっても耐えられる
でもおまえと会えなくなったら僕はきっと頭がどうかなる
あのあずまやでの言葉を信じればいいのに…

目を閉じるとあの時のスヒョンの目を思い出す

スヒョンは哀しそうな目で僕を覗き込み
おまえはどこにも行かないでと言った
その哀しみはミンチョルさんのギョンビンへの決別を知ってたからだって
後からわかった

スヒョンはすごい力で僕を抱きしめて
強引に唇を重ねてきた
無理にこじ開けるから歯がぶつかった
抗う気なんてなかったけどあまりに苦しくて逃れようとした
それでもスヒョンは僕の頭を押さえつけて離してくれない

とうとうバランスを失ってあずまやの床に倒れてしまった
それでもスヒョンは僕の唇を塞ごうとする

「どうしたのスヒョン!」
「黙ってろ」
「スヒョン!待ってってば!」
「待たない」

きっとやりきれない気持だったんだ
せっかく想いを閉ざした人の辛い決断に心乱されたんだ
僕はそんな気持をうすうす感じていたのかもしれない
自分でも嫌なひとことを言ってしまった

「慰みものなんて嫌だよっ!」

いきなり顔を上げたスヒョンの瞳が哀しげに凍りついていた
口は何かを言いたそうにぴくりと動いた
スヒョンは目を閉じると僕の胸に額をつけた

頬を支えて顔を上げさせると、その目からひと筋の涙が落ちた
僕はひどい自責の念に駆られた

「ごめん…スヒョン…ごめん…」

僕はうなだれているスヒョンを支えながら身を起こし
肩を抜いてスヒョンを下にした
哀しそうに見上げる睫毛に、そして唇にキスをした

ごめん…

その黒髪をかきあげてやるとスヒョンの腕が伸びて僕の頭を優しく抱いた
僕は柔らかく吸いながら頬から首筋へと小さく噛み進んだ

目を閉じたスヒョンの喉からため息が漏れる

僕はそのままシャツのボタンを順番にはずし
その滑らかな胸の盛り上がりに舌を這わせる
小さな突起を噛むとスヒョンは声を漏らした

そのまま僕は腹からその下へと強弱をつけて吸い付いて行く
雨あがりの静寂の中、濡れた音があずまやに響く

僕の口がスヒョンを捕らえるとスヒョンの背中がのけぞった
両手は僕の髪を絡めたまま頭を強く掴んでいる

僕の指と唇が丹念に愛撫しくちづける
スヒョンは苦しげに眉を寄せ、開いた口からは吐息が漏れている
その声を聞きながら僕は動きを早める

「ドン…ジュン…」
「いいよ」

スヒョンは僕の頭をわしづかみにすると
大きく背中をのけぞらせて顎を上げ、喉元から声を漏らした
僕はその全てを受け止めた

スヒョンはしばらく僕の肩を抱いて横たわっていた
時折僕の髪にキスして、そして指で唇に触れて囁いた
好きだよ…ドンジュン…

舞台の大きな音に我に返った
僕はそっと自分の唇に触れてみた

…思い出になっちゃうの?

僕は不安に呑み込まれ、祭の会場でひとりぼっちだった


【41♪あなたが望むなら by ドンジュン】ロージーさん


背中  ぴかろん

凄いキスをしてくれたおじさんの肩を押して俺は唇をやっとのことで離した
おじさんは離れ際にまた切ない顔をした

何でそんなに寂しそうなのさ
いつもいつも…
俺にまで寂しさが伝わってくるじゃんか…

おじさんの頬をなでて俺は努めて明るく言った

「もうそろそろホール行かなきゃ…出番が近いもん…」

おじさんは少し潤んだ瞳で俺を見てそうだなと言った
俺は立ち上がってドアの方に進んだ
後ろからのろのろとおじさんがついてくる
俺はドアで立ち止まっておじさんの方を振り返った
急に振り返ったからおじさんは勢いを止められず、俺の方に倒れこんだ

「何だよ、急に止まって…」

俺はもう一度おじさんにキスをした
おじさんは俺をゆっくりと抱きしめて俺の下唇を強く吸った
また少し肩を押すとおじさんは俺の唇を音を立てながら離してはぁっとため息をついた

「行かなくちゃ…」

そう言うと突然おじさんは俺に背を向けてしゃがみこんだ…

「なに…」
「何っておんぶ…」

おんぶ?
ヘンなの…

「いいの?」
「…」
「乗ってもいいの?なんで?」
「…いや、おんぶしたくなって…」

俺は何だか不思議な気持ちでおじさんの背中に乗った

「重いだろ?」

おじさんはすっと立ち上がると、いや…と言ってドアを開け、廊下を歩き出した

「ふふ…へ〜んなの…」
「…」
「でも…嬉しい…。おんぶなんてしてもらったことないもん…
俺さ、女の子おぶったことはあるけど、自分がおぶわれた事なんてないもん…」

俺は本当に嬉しくておじさんの首にぎゅっと腕を巻きつけた
おじさんの髪にこっそりキスしたり、おじさんの背中に頬ずりしたりしておじさんの背中の感触を楽しんだ
やっぱり…お父さんみたいだよ…ごめんね…おじさん…
背中に頬をくっつけて少し夢を見させてもらった


「何っておんぶ…」

そう言ってから僕はしまったと思った
イナと間違えてしまった…
ラブは気づいてない…
気づかれちゃいけない…

ラブは…嬉しそうに僕の背中に乗ってはしゃいでいる
可愛かった
そして苦しかった

背中のラブは僕の息子のチフン…
アナスターシャの元へ連れて行く時、ずうっとおぶって行った事を思い出す

背中のラブは幼かった弟のギョンビン…
ケンカしたりころんだりしてすぐ泣いて歩くのが嫌だと言っておんぶをねだったあのギョンビン…
よく泣きながら眠ってしまったんだ
重かったな…

背中のラブは…さっきおぶってたイナ…
イナ…イナ…僕の心を命がけで解きほぐしてくれたイナ…

そして背中のラブは…可愛くて可哀相なラブ…

こんなに喜んで、こんなにはしゃいで…
ごめんな…僕、こんなでごめんな…

僕の頬を涙が伝っている
この涙を絶対にラブに見せたくない
それがせめてもの償いだよね…ごめんな…


おじさんの呼吸が聞こえる
おじさんの匂いがする
ああ…いい匂い
俺の体の奥まで刺激する男の匂い…
とっても気持ちいい
俺、幸せだよ、おじさん… おんぶしてくれてありがとう…
「おい、ラブ…」

少し声が上ずってる…どうしたのかな

「ちょっと腕、苦しいよ」

ああ、きつく絞めすぎた?

「へへ、ごめ〜ん…」
「ちょっとさ、煙草咥えさせてよ。胸のポケットに入ってるから」
「歩き煙草なんていけないんだぞ」
「いいじゃん…ホールでは吸えないんだから」
「んふ…」

俺は手を伸ばして煙草を一本取り出し、おじさんの口元に持ってった
そしてライターを取り出して火をつけた
ライターをポケットに仕舞い込み、仕舞い込んだついでにこしょこしょっとおじさんの胸を擽ってやった

「こら!」
「へへ、感じる?」
「わ〜か!」

煙草を咥えてるから喋りにくそうだ

「ちょっちょ、タワコ外しへ…」
「へいへい」

煙草をとってやったらふーって白い煙を思いっきり俺の方に向けて吐いた

「もう…」
「仕返し」
「ね…俺も吸っていい?」
「ああ…取りなよ」
「これ…吸っていい?」

おじさんの吸いかけのタバコを揺らした
コロンと灰が床に落ちた

「あ〜あ、お前、汚した」
「…いいじゃんか…おじさん一吸いが凄すぎない?普通、灰、落ちないぜ」
「…るせぇ…」
「吸っていい?吸うよ?」
「ああ…」

おじさんの吸いかけの煙草を俺は吸い込んだ
途端に咳き込んでしまった

「きっつぅ〜。こんなきっつい煙草、一吸いでこんなに吸うなんて…。ダメだよ長生きできねぇぞ…」
「るっせぇな…」
「うぁ…クラクラする…」
「おい、ホールに着いちゃうからもう一吸いくれよ」
「はいはい…」

おじさんの口元にもう一度煙草を持っていく
おじさんの唇が俺の指に触れる
どきどきする
俺は背中から落ちないようにおじさんにしがみつく
それでおじさんは咳き込んでしまった

「げほっげぇっほ…こいつ…うぇほっ…苦しい…。喉絞めんなよもう…えほえほ…」

ホールの入り口について、おじさんは俺を下ろした
けど俺は暫くおじさんの背中にくっついていた
もう少しだけ夢を見たかったから


ホールのドアの前に来てもラブは背中から離れない…
その隙に僕は涙を拭った

「ったくもう、首絞めるから涙でちゃったよ、げへっげほっ…」
「ごめ〜ん」

明るくて甘えた口調のラブ
ほっとした
ばれなかった…
ごめんな、ラブ…
お前の事、後回しにしてて…
ごめんな…

「ねぇ…おじさんの体に触ってもいい?」

どきん
何を言い出すんだよ…ラブ…

「…」
「いい?少しだけ…」
「…あ…ああ…」

返事を聞くや否や、ラブは僕のシャツの裾から手をいれて、僕の胸を撫で回した
そして手を止めてみぞおちのあたりでしがみついてきた

「おい…後ろでやられると抱きしめられないぞ…」
「いいんだ…俺がおじさんを抱きしめてるんだから…」

そういうと背中にくっつけていた頬を離し、僕の首筋に口付けた…
ばか…またイナと重ねてしまうじゃないか…ばか…

「ほら…中に入ろう…」
「キスして…」
「じゃあこっちにおいで」
「このままでして…」
「…ラブ…」

僕はラブの方を振り返った
ラブは首を伸ばして僕の唇に口付けをした

ラブに口付けているのに…僕はイナを想っている

ラブ…ごめん…ラブ…


◇悪魔と小悪魔3  妄想省家政婦mayoさん

悪魔ちぇみは小悪魔闇夜の左足先”こちょこちょ”が気に入った様である…
カリスマ顔ですましているが鼻の下がべぇーっと伸びてきた…
悪魔の口元がだらける前に小悪魔は足を戻した…

「鼻の下…伸びてるよ…」
「ぉ…ぉぅ…」

俺は両手で顔を撫でまた腕を組んだ
すると闇夜は膝の裏を足先でつんっ#と強く押した
”膝カックン#”…腕を組んだまま俺はちょっとよろけた…

「おぃ〜っ!」
「ん?」
「お前…足癖悪いな…」
「癖が悪いんじゃなくて…」
「何だ…」
「器用なの…」

「お前は…舌も癖が悪い…」
「癖が”悪い” と違うよ…」
「癖に”なる” か?」
「そうです…」
「ったく…お前って奴は…」

そう毒づいた俺の舌に少し前の舌の痺れが蘇る..
~さわさわ~さわさわ~とした痺れを舌先に感じ
その痺れに心地いい想いになって俺は油断した..
じわっ#っと広がる…痺れが…そして~~さざ波~~のように痺れが続く…
痺れは波のように寄せては引き…寄せては引く..

喉の奥まで痺れがなだれこみ…俺は一瞬…呼吸が出来なくなった
俺は一旦闇夜から唇を離した…
普段のお前の顔から誰もこんなkissは予想も想像もできまい…
お前に誰が教えたんだこんなkissを!と苛つくほどだ…ったく…

俺は舌に痺れを感じながら…俯いて小さく吹き出した…
闇夜はそんな俺の横顔にちらっと目線を送った…

「どうしたの…」
「ん…ぃや…」
「…気に入ったの…kissだけ?」
「馬鹿者…」
「…ごめん…」

「闇夜…」
「ん?」
「…テソンとのことは迷うな…」
「…」
「…テソンのためだ」
「…自分のためでもあるんじゃないの?」
「どういうことだ…」
「もう自分から離れるから…」
「ぉぃ…」
「少し…楽になる部分もある…」
「…甘いぞ…」
「…ぇっ?…」
「俺はお前が誰と何をしようと想いは変わらん…」
「…ぉ…」
「見守る気持ちは変わらん…」
「ぉ……」
「大馬鹿者!…」

俺は堪らずに正面向いたまま闇夜の後頭部にぐぅー★を一発入れたあと
すぐそこをすぅーと撫で…すぐにまた腕を組んだ…
闇夜は何も言わず俯いた…

「闇夜…2階のミンギが捜してる…お前だろう…」
「…?」

2階の方へ首を伸ばして見ると ミンギがちょっと身を乗り出し
ホールを覗いていた…
私の姿を見つけると「ヌナ〜来て!」と言いながら手招きをしていた

「なんだろう…行ってくる」
「テソンに伝えておくか?」
「ぅぅん…いい…」
「大丈夫か…一人で」
「ふっ…大丈夫」
「ん…」

闇夜がすぅーっと左手を伸ばした…
俺は組んでいた手をほどき右手でそれをぎゅぅーと握った…
手はまたすぐ離れ…闇夜は2階のジホ達の所へ行った…


イナとラブとギョンジンと パート2 ぴかろん

一人で座席に座っていると、扉の方から何だか温かい空気が流れてきたような気がした


ギョンジンだ
やっと帰ってきた
どこ行ってたんだろう
ラブは見つかったのかな…

ギョンジンは時々後ろの方を見ながら、ぎこちない歩き方でこちらへ向かってくる
後ろを向く時は優しい笑顔
そして前を向くと急に寂しげな顔になっている

?

なんで?

俺はじっとギョンジンを見ていた
すると奴の左腕の後ろから、時々誰かが顔を覗かせているのに気づいた

何だよ、ラブじゃねぇか
くそっ
何背中に貼りついてんだよ!
俺の指定席だぞっ馬鹿野郎!

俺は立ち上がってギョンジンの方に足を引きずりながら歩いていった
何やらラブと話しながらゆっくり歩いてきたギョンジンを、通路の境目の、客の邪魔にならないところで捕まえた
いい場所
ギョンジンは眉を上げて驚いている
素早く唇を奪う

「ねぇ何止まってんのさおじさ…」

へん!にわか愛人め!
俺のジツリョクを思い知れ!
俺は薄目を開けてラブを見下ろしてやった
ラブはギョンジンの肩に顎をのせ、俺を睨んだ
そして俺達の方に顔を近づけ、まじまじと観察を始めた

「へぇぇ…そんな風にするんだ、イナさん」

るせぇなっ!
俺はギョンジンの舌を吸いながらラブを睨みつけた

「おじさん、美味しい?」

ギョンジンは俺から離れようとしているのだが、後ろにぴったりとラブがいるから身動きが取れないようだ

おう、いいぞラブ!

ちょっと目で笑ってやったの、ラブ、わかるか?
ん?アイツも目が笑ってるわ…んふ…よし!お前、子分にしてやる!
時々ギョンジン貸してやっても差し支えない!ふふん

「おじさん…後で僕にもやって…」

擦れた声でギョンジンの左耳に呟くと、野郎!そのままギョンジンの耳たぶを口に含みやがった
目の前にラブの色っぽい顔とギョンジンの耳がある
妙に生々しい音がする
くそっ
負けるか!
俺はキスを続けながらずっとラブを見ていた
ラブも時々目を開けて俺の顔を見ていた
目が合うと何だかへそのあたりがムズムズした

「おじさん…震えてる?」
「…あ…」

俺達にいいようにされてギョンジンの体は異様に揺れている
ラブの手がごそごそと動いている
何する気だよこの色気小僧は!
ラブはギョンジンのシャツの下に両手を入れてギョンジンの体を弄っている

「…ふぁ…」

ギョンジンの唇から息が漏れる
ぞくぅっ…
いろっぺぇ…
このクソガキ、タダモンじゃねぇ…
くそっ
負けたくない!
どうしよう…
ラブはギョンジンの体に指を這わせているみたいだ
ギョンジンの体が不規則に揺れている
感じてんの?
やべぇ!俺がギョンジンを抱くんだかんな!
クソガキ、ギョンジン抱こうとか思ってんじゃねぇだろうな!
俺、不利じゃん!キスだけじゃん俺…
そうか、だからギョンジンはよく背中から俺に抱きついて、ンで…ああゆうことをしてたんだ… う〜ん…そうすれば…えっちに持っていきやすいもんなぁ…う〜ん
後でテジュンに試してみよう…
うまくいけばテジュンを…ひひ…

「あくっ…」

ギョンジンが眉根を寄せて苦しそうな顔をする
なに?
クソガキが何かしたのか?
クソガキはまだ執拗にギョンジンの左耳を舐めたり噛んだりしてる
クソガキの指はっと…

あっ!
ずっるぅ!こいつ!
俺もまだ遠慮して触ってねぇのにこの野郎!
ギョンジンのチ○ビ触ってやがるっ!きいっ!

「…ん…ん…んぁ…」

目の前にいるギョンジンが色っぽい喘ぎ声を出す
…俺…っていうか俺達…相当ヤバくないか?
人が通ったらどうしよう…
どきどきする
ギョンジンの喘ぎ声を聞いてると俺まで何だか感じちゃうよ… テジュン…お前俺の事いんらんだって言うけど…見てよ…ラブのがよっぽどいんらんじゃんか…
ああ…こんどテジュンとギョンジンにこれ…やってもらおぉっと…
そん時はもちろんクソガキは見学だ!フンっ

「んぁっやめっ…はっ…」

ギョンジンが俺から必死で離れ、ようやく声らしい声を出した

「やめて…ラ…ブ…おねが…い…」
「感じた?」
「…」
「感じたって言わなきゃやめない…」
「…くぁっ…やめて…感じる…」

ギョンジンは顔を歪ませてどうにかその言葉を吐いた
ラブはウフンと笑って指と唇をギョンジンから離した
俺はドキドキしてたけどラブの頭を小突いてやった
ラブは上目で俺を見て、それから口元で笑った

「あんだよお前、あんで背中側取るんだよ!そっち側オイシイじゃねぇか!」
「…うふ…」
「何で背中に貼りついてんだよっ!」
「おんぶしてもらったんだぁ〜」

そう言った時のラブの顔
可愛かった
嬉しくてたまらないって顔だったんだ

ちくしょぉ…俺の指定席だったのにな…
んな顔されちゃ…たまんねぇな…

でも何でおんぶ?
…まさか…ギョンジン、俺と勘違いした?
もしそうだったら…お前…
けど目の前で幸せそうな顔してるラブを見ると結果オーライだなって思えてくる
絶対ラブに知られちゃいけないな…
ラブの輝いた顔を壊したくないな…
だってさ、何でか解んないけど俺も嬉しくなったから…

ラブの頬に手を伸ばした

「何さ…」
「お前…可愛いな」
「…」
「そうやって笑ってろよ。いっつもナイフタンタンして怖い顔しか見てなかったからさ」
「…笑ってるよ俺だって…」
「俺は見てねぇもんっ!笑顔はミンジちゃんにしか見せてないんだろっ?!」
「…ミンジちゃんには振られちゃったからさ…」
「…そなの?ミンチョル知ってるの?」
「…まだだと思う…」
「…よかったな。ミンジちゃんと結婚してあんなのがもし義理の兄貴になったら、お前三日で病気になるからな…」
「フフっ」

はにかむ笑顔もめちゃくちゃ可愛いじゃんか…
俺までなんだか幸せになっちゃったよ…

俺は、まだラブの指の余韻に浸ってるらしいバカギョンジンと、可愛い笑顔を見せているラブをまとめて抱きしめた
…嬉しくてさ…

「…イナさん…」
「ん〜?」
「イナさん…男前だね…」
「…あったりめぇの事言うな!」

ちょっと照れくさかった
抱きしめている俺の背中にラブの手がチョコンとかかった
俺とラブはギョンジンを挟み込んでケラケラと笑った


【42♪せつないだけの恋歌 by ギョンジン】ロージーさん


君が思い出になる前に  れいんさん

僕の隣にスハがいる
目と目が合ってちょっとはにかむ
自然に指が絡み合う
誰かに見られていないかな
照れくさいけど、触れていたい
スハの指を弄びながら、僕の頭は他の事を考えていた

祭が終わったら、僕達どうなるんだろう
妻には…打ち明けるつもりだ
僕は兄さんの生まれ変わりじゃないって事…
それで何かが変わるんだろうか
僕自身も変われるんだろうか

もしかしたら…
妻と僕は、お互いを兄さんの身代わりにしていたのかもしれないな…
新しい命が誕生したら
身代わりかもしれない僕の役目は、そこで終わるのかな…

とにかく…話してみよう
これまでの事、これからの事

スハはいったいどうするんだろう
こいつにはほんとに待っている家族がいるだろ?
こいつの気持ちが固くても
そんなに簡単な事じゃない

僕達のこれからは難しい事が多すぎる
だけど…そういう状況って
結構…絆が強くなったりするのかな…

こいつと二人で暮らしてみたらどんなだろう

庭のある、こじんまりとした家に住んでさ…
離れには僕専用の小さなアトリエなんかあってさ…
僕が家具を作ったりして
あいつはガーデニング…

時には柔らかい日差しの中
テラスのチェアにあいつが座って読書をして…
僕がおいしいお茶をいれて…
いいよなあ…なんか…そういうの…

僕の作った家具が売れた日には
ささやかなデイナー
あいつが家庭教師のバイトから帰って来たら
キャンドルだけ灯してサプライズ…なんて…
僕が疲れて帰って来たら
あいつがはにかんで出迎えてくれる…
二人の時間をそんな風に過ごせたらな…

しかし…男同士って…いったい…どうなんだ?
僕もスハも女は知ってるけど… 男だと…どっちがどうで…どこにどうなんだ?

やっぱり僕が…抱く方だろうか…

…何、考えてるんだ…!
僕達…まだそんなんじゃない…!

いや…しかし、いざという時の為に、予備知識も…
うろたえたりしたんじゃみっともないしな…

誰かに聞くか?…誰に聞くんだよ、そんな事!

…イナ?…あいつはいろいろ教えてくれそうだけど
危ない世界に引き込まれそうだしな…やめとくか
…チーフ?…そうだな…きっちり理論づけて教えてくれそうだけど…
聴いてるこっちが、生々しくて恥ずかしくなりそうだ…
…スヒョン?…うん、スヒョンが一番聞きやすそうだな
あれこれ詮索しないで、さらりとスマートに教えてくれそうだ

おいおい…さっきから僕は何考えてるんだろう
どうかしちゃってるな…
そんなの夢にすぎないのに
身勝手な僕の幻想だ
誰かを傷つけて幸せになんて…
僕はこいつの笑顔すら守れやしないのに…

僕は無力な自分が悲しくてスハの手を握りしめるしかなかった


【1♪君が思い出になる前に】れいんさん


◇あたらしい仲間1 妄想省家政婦mayoさん

「ジホ監督..」
「ぉ..何..ミンギ君..」
「僕、監督の作品..全部観ました..」
「ぉ、そう..」
「はいっ!招かざる客..砂漠..最後の願い..踊る工場..青い鳥..」
「す、すごいじぃょぉー〜監督ぅ..全部観てるじぃょぉー」
「ほんとだ..ウォニ..」
「監督の作風は若者に人気があるんです..」
「そう...うれしいねぇ..そういえばミンギ君は」
「…?」
「お父さんが監督さんだったよね..」(ミンギ@チング父=映画監督チン・ヨンホ)
「..はい..」
「映画好きはお父さんの影響なんだね..」
「僕は小さい頃から父と映画の話ばかりしてきましたから..」
「そうか...一度映画に出たよね...浪漫忍者...だっけ?」
「はい..でもあんまし...興業良くなかったけど..」
「ん..でも皆最初はそうだからさ..」
「演技の勉強になりましたから..」
「ぅん..そうだね...君も将来は映画監督目指してるの?」
「ゆくゆくはそうしたいなぁと思いますけど..」
「まだまだいろいろ勉強しないとね..」
「はい...監督?..」
「ん?なに?」
「映画撮るとき..僕を助手に使って下さい..」
「はは..いいよ..僕の下でいいなら..」
「よかったぁ..ありがとうございます..」
「でも..ミンギ君、店はいいの?」
「えっ..店って?」
「ほら..例の3人組の店..そこにいるって聞いたけど?」
「ぁ〜ぁ..あの店..僕と先輩はその店に引き込まれそうな時..逃げてきました..」
「はは..そうなの..」
「監督..3人組みの店って何のことだじぃょぉー?」
「ウォニ..ほら..カン社長とペクデシクとムンスクの3人が作ったホスト倶楽部さ..」
「ふぃぃーん(>_<)..こ..怖いじぃょぉー..」
「ホント怖そうだ..ソヌ君、名前なんだっけ?」

ソヌは丸いチョコレートケーキをひとくち口に運び..丁寧に味わい..
スプーンを手で弄びながら..顔を上げちょっとため息をついていた..
ソヌはジホの方へ振り向き唇の端に冷笑を浮かべ答えた..

「BSHCですよ…Bitter Sweet Host Club..」
「ぷはは..何それ..BHCに対抗してるつもりなのかな?」
「さぁ...どうでしょうか..」
「3人の他にメンバーはいるの?」
「元武器密輸組織のボス..テウンにミョング、ミハイル..」
「まだいるの?」
「ペクの構成員だったムソン..スナイパーのテグ..」
「くはぁぁ〜〜ちんぴら倶楽部だね..」
「ふっ..お笑いぐさですよ..」
「それってさ..カン社長の発案なのかな?」
「カンをはじめ皆..若い女好きですからね..当然の選択なんでしょう..」
 
そう言ったソヌの顔は目だけが刹那に空を泳いでいた..
ジホはソヌの顔を眺め眉をちょっと上げた..

「そういうことか..ミンギ君..君たちどうやって逃げられたのよ..」
「ソヌ先輩はBHCって決まってましたから..」
「例のスカウトかい?」
「そうです..僕らがスカウトと打ち合わせしていた時..」
「ぅん..どうしたの..」
「例の3人組が現れた..」
「ぁひゅ..それで?」
「スカウトが僕らの前に両手を広げて通せんぼ..」
「くはは..それで..」
「スカウトが3人組と睨み合いになった..」
「君たちが無事だと言うことは..」
「スカウトの睨み勝ち#です..怖かったぁ〜」
「ぷっはっは....こりゃいい..」
「す、すごいじぃょぉー〜〜@@」
「面白い人だ..彼女は..」
「おとこですよ…ヌナは…あ、ヒョンって言うと怒るんで…」
「オーナーが離さないのがわかるね…ミンギ君…」
「はい?」
「ちょっと呼んで…彼女…」
「あ、はい…」

ミンギは2階から身を乗り出して闇夜を捜した
闇夜はミンギに気が付き2階へ向かった


混乱  ぴかろん

イナが突然唇を奪い、ラブが突然耳たぶを噛む
僕はどうしていいのか解らないぐらい感じてしまった
なのにラブは僕にもっと刺激を与える
頭の中で何かが弾けとんだ気がした

声を出そうとしてもイナが唇を塞いでいるし、逃げたくてもラブが逃がしてくれない
だんだんと混乱してくる僕
ラブがおんぶの話をしたとき、僕はやっと我に返った
イナが怒り出さないかと心配だった
でも…
イナはとても嬉しそうな顔をしてラブの頬を触っていた
その後、僕ごとラブを抱きしめていた

イナ
やっぱりお前は凄いね…
イナ
僕はやっぱりお前が好きです…
そして僕の背中に貼りついているこの可愛い男の事も…好きです…

僕だけがちっとも成長できていない…
どうしてみんな僕を置いてどんどん高いところに行くんだろう…
弟がそうだったように一度経験したことはもう身についているみたい…

あ…
イナは違うか…
いつも浮気してテジュンさんに怒られてるな…

でも…
ああ…

二人に挟まれて僕の思考は完全に停止した
二人に包まれて僕はとても幸せだった…
でも僕はこれから一体どうしたらいいんだろう…
こんなところを誰かに見られたらどうしよう…
ぼんやりと思っていた僕の目に、弟の顔が飛び込んできた…
ああ…どうしよう…どうしよう…


意地悪な僕…   ぴかろん

兄さん…何やってんの?!
いや、何やられてんの?!

あの『女千人斬り』とか言われてた兄さんが…そんなうすぼんやりした恍惚の表情浮かべて…恥ずかしい…
でも…サンドイッチ状態なんて…ちょっと経験してみたい気もしないでもない…

あ!
僕、したんだ…
挟まれる方じゃなくて挟む方だ…
あの、狐のお気に入りのキツネのぬいぐるみクンを…狐と僕とでサンドイッチしちゃったんだ…

ああ大胆な事しちゃった…思い出すと恥ずかしい…
おっと、兄さんと目が合っちゃったよ
んふふ
ちょっと意地悪してやろうかな…
あれ…
僕このごろかなり強気かな?
それと言うのもあの頑固な狐が強情張るからなんだ
強情張られるとこっちも強気でいかないといけないもん…
強情さえ割ってしまえば後は簡単に…うふふ


いけない
僕この頃かなり『兄さん』っぽくなってきてる

何?わかんないの?『兄さんっぽい』ってことが…
だから『えろみん』が入ってきてるってことさ…
それもこれもみぃんなあの『強情なキツネ』のせいなんだけどね、うふふ

それにしても兄さん、僕の『えろみん』はキツネに対してだけなのに、兄さんの『えろ』は…見境がないな…男でも女でも…
兄さんってたくさんの人を虜にしてしまうんだ…
僕のかつての彼女たちも兄さんの『えろみん技』に嵌ったんだってね…
突然切り出される別れの言葉、辛かったなぁ…
「別れましょう」という彼女達の首筋に、必ず『印』がついていたのを覚えてる…
家に帰って僕を迎えてくれた兄さんの鎖骨のあたりにも『印』がついてたっけな…

ああ…兄さん…全く…
あれは僕への意地悪だけじゃなくて、兄さんの『趣味』でもあったんだろう…
兄さん…
今、そうやって目を泳がせている兄さんを見ていると、とっても楽しいよ、僕…
もっと翻弄されちゃえばいいんだ

あっそうだ…
僕もいたずらしちゃおっかな…
こっそり背中から兄さんのこと抱きしめて、首筋に兄さんの大好きな『印』を落としてやんの…
くふふ…

何かでむしゃくしゃした時には絶対そうしてやる!
それぐらいの事、してもいいよね?
仕返しにさ…
だめかな…

ミンチョルさんがスヒョンさんと話をするって聞いてからちょっとイライラしてる…
だからこんな意地の悪い事思いついちゃうのかな…

安心しなよ兄さん
そんな事しでかしたら無事でいられないのは僕の方だって
ちゃぁんと解ってるからさ…


意地悪する僕   ぴかろん

イナさんと共同作業でおじさんをよろめかせてしまった…
ちょっと恥ずかしいな…

イナさんはおじさんが言うように素敵な人だと思う
おじさんがイナさんを好きになるのが解る

俺は自分まで火照ってしまって、イナさんと笑いあった後ちょっとトイレと言ってまたホールを出た
扉に凭れておじさんの背中の感触を思い出していた

「ねぇ…」

俺に話しかける声がおじさんそっくりだった
ギョンビンだ…

「君、兄さんに惚れてるの?」

唐突にそう切り出されてどう答えようか迷っていると、俺を上から下までじろじろと見て、ギョンビンは言った

「そのシャツ、兄さんに貰ったんだろ?」
「…あ…うん…」
「…僕もよくそういうの着せられたな…。これのが似合う、こっちにしろとか言って…」

ふぅん…

「君、そういうの嫌いだったら初めに言っといた方がいいよ」
「…ああ…」

別に嫌いじゃない
好きでもないけど…
ホテルのショップに俺好みのサイケデリックなシャツなんかなかったんだろうし…
それにおじさんが選んでくれたものだから…どんなものでも俺は嬉しかったんだ…

「ちょっとさぁ…」
「なに?」
「ごめんよ」

そう言ってギョンビンは俺の顎をクイッと指で持ち上げた
何する気?

「はぁん…悪い癖が出てるな…」
「は?」
「それで?兄さんの鎖骨にキスマークつけたの?」
「…え…」
「ねぇ、兄さん何て言って君にこれ、つけたのさ」
「…は…」

俺は思わずおじさんのつけた首の印を隠した
シャツの襟で見えないと思ってたのに…
それにどうしておじさんの鎖骨に俺が印をつけた事、知ってるんだ…
悪い癖?

…昔っからこういう事してたのかな…

「ねぇ、何て言って君の首に吸い付いた?あの『えろみん』は…」
「えろみん?」
「兄さんは通称『えろみん』で通ってたの。知らないの?」
「知らないよ…え?おじさんってそういう癖があるの?」
「うん、モノにした子には必ずつけてたし、自分の鎖骨にもつけてもらってたね」

モノにした子?

「俺はモノにはされてないよ」
「じゃ、いずれはそうしようとしてるんだな…」
「…え…」
「嫌だったら逃げた方がいいよ。兄さんほんとはイナさんに参ってるみたいだし…
遊ばれて捨てられる前に君の方から振ったら?」


どうしてこんな事言っちゃったんだろ…
こんな事言うつもりじゃなかったんだ…

ホールの外に出たら、ぼんやりしているラブ君を見つけたのでそっと近寄ってみた
兄さんが選んだってすぐにわかるブルーのBDシャツを着ていた
そういう物を与える時って、兄さん必ず赤い印をつけるんだ…

僕も一度された事がある…

同じようなシャツを着せてくれて…ボタンまで留めてくれたっけ…
とびきりの優しい笑顔で僕をみつめて『とっても似合うよギョンビン…』って言いながら、首に唇を近づけて…そして印を落とした

僕はまだ12かそこらで、何をされたのかよく解ってなかった
何してるのって聞いたら、おまじないだと言った
悪い虫がつかないおまじないだと…

兄さんは兄さんにとっての『悪い虫』である僕の彼女たちにも、そのおまじないをしていたんだね
いやらしいな…

ラブ君は少しきつい目をして僕を睨んだ

「…遊ばれて捨てられる?…おじさんはそんな人じゃないですよ…」
「…おじさんか…フフ…」
「貴方は弟さんなのに、おじさんの事よく知らないんじゃないの?」

きつい目をしたまま、僕に突っかかるラブ
そうだね…よく知らないしよく解らない…
でも今の兄さんは嫌いじゃないよ
むしろ好きだ…
だけどイナさんと君にあんな風に弄ばれてる兄さんは、見たくなかったな…
イナさんだけとなら解るけど…君まで一緒になって兄さんをあんな風に…

「怒ったの?どうして怒るのさ…」
「…別に怒ってなんかいないよ…くだらない事聞くなと思っただけ…。印をつけた理由なんて知らないよ…
そんな理由には興味ないもの…俺はただ、おじさんが…」
「おじさんなんて言うなよ!ちゃんと名前で呼んでやれよ!」
「…そんなの、俺の勝手だろ?おじさんだってちゃんと返事もしてくれるもの…」

ラブ君とケンカするつもりじゃないんだけどな…
まだイライラしてるからかな…
どうしたんだろう、僕…

僕を睨みつけるラブ君の頬を撫でて、僕はもう一度ホールに戻る事にした…

ミンチョルさん
僕を一人にしないでよ…
貴方がいないと僕バランス崩しちゃうよ…


後ろ姿   足バンさん

ドンジュンはまた突っ走ってる
ああゆう時はなにを言っても曲げないやつだから
あんなに我を張っちゃって…

ミンチョルのことは自分でもどうケリをつけていいのかわかっていない
そんな僕の気持をおまえはクリアにしようとしてるの?
行き先もわからないのに?

いいよ…おまえの気が済むなら転がされてやるよ


さて。仕事を済まさなくては
オールインの円舞が終わったらスタンバイだ

ミンチョルは客席と舞台裏を忙しく行き来している
テソンたちにぬかりはなさそうだし、
あのうるさい連中はまぁ固まってるから大丈夫だろう
テジンは…

テジンとスハを見つけて確認しようと近づくと、テジンがはっとしたように僕をみた
軽く絡んでいた指がほどかれたのを見逃さないんだな、僕は

「テジン…ギョンビンの兄貴の件はもう大丈夫だよ」
「そう…よかった」
「スハも出なくても舞台裏に来るといい」
「はい」

テジンがなにか言いたげな目で見ている

「ん?なに?」
「いや…なんでもないです」
「じゃあとで」

…これからいろいろ大変そうだな、あいつらも

テジュンさんのところに行こうと迂回すると
通路の向こう側の目だたないところでイナとギョンジンが?
いや…もうひとり…ラブだ
おいおい

憑き物がとれたギョンジンはさぞ魅力的だろうな
しかしギョンビンとの葛藤がきれいさっぱりしたとは思えない
あの兄弟もまだ全てを出し切ってないだろうから
ゆっくり時間をかけて溶けていければいいけど

僕はスタッフに指示を出しているテジュンさんの横に座った

「お疲れさまです」
「スヒョンさんこそ…あ、でも顔色少しよくなりましたね」
「今のところ順調ですね」
「ええ…回りはこんがらがってますけれどね」

テジュンさんは笑った

「僕の最後の仕事になるかもしれない…なんとかやり通しますよ」
「テジュンさん…」
「それが正しいのかわかりませんが」
「本気なんですか?」
「ええ…そのつもりです」
「すごいな…」
「はは…僕は自分勝手なだけですよ」
「イナは幸せなやつですね」

テジュンさんはとても照れくさそうに笑った
脳裏にさきほどギョンジンにくっついていたイナを思い出したが
もうなにも言うことはないような気がした

「スヒョンさんはいいですね…その…自由なところが」
「ふらふらしてるってことです」
「そんな…」
「まぁ…つい最近まではそうだったかな」
「…」
「本当の自由っていうのは”守るものがない”ってことですよね」
「え?」
「だから僕はもう自由じゃない」

テジュンさんは僕の目をまじまじと見つめると、ふと頬を緩めた

「そうですね…」

僕は騒がしい一団の中でぽつんと座っているやつの後ろ姿を見ていた
すぐにでも走って行って抱きしめたい気持を抑えた

そいつのためにも自分の気持に今度こそ向き合わなくては…
どんな答えが見えてくるとしても
ーそう思った


破片   ぴかろん

この印はなんの印なのさ…

おじさんに聞きたい

遊んで捨てるの?俺を?
いずれはモノにするって印なの?

嘘だ…
あんな寂しそうなおじさんが
あんな優しいおじさんがそんな事…

でもギョンビンはそう言った…
きっと『酷い過去』の話なんだろう
今のおじさんは違うよね
違うよね…

俺は急に落ち着かなくなって中庭に走り出た
さっき指を切ってしまったその地面にもう一度左手を置いた
おじさんが巻いてくれた包帯に芝が刺さる
俺はナイフを取り出して指の間に突き立てる
瞬きもせず、ナイフの切っ先を見つめる
徐々に早くなっていくナイフの動き

やめろ…また切っちゃうよ…
やめろ…手に突き刺しちゃう…

『どうして自分を傷つけるようなことするの?
やめな…』

俺はナイフを弾き落としてしまった
おじさんの声が甦ってくる

『やめな』

俺は芝生に座り込んで宙を見つめた
視界がまたぼやけてる
流れ出るほどの涙ではない
だから俺は上を向いた
空が青い
おじさんのくれたシャツと同じ色だ


イナとラブの間に挟まって、自分を見失いそうになった
僕はやっと現実に戻れたような気がしてホールの外に出た
深呼吸をして扉から二、三歩離れた

後ろから抱きつく奴がいる
ラブ…
この感触はラブのものだね…

「なぁに?」

ラブは突然僕のうなじキスをした
くすぐったいな…

僕は可愛いいたずらに、またにやついてしまった
したいようにさせておこう…
僕は目を閉じて首を前に項垂れた
首筋から肩に向けてキスを落とすラブ
ぐいっと襟元をひっぱり、そしてその唇が鎖骨の方へと移動する
いつものラブより少し執拗な口付け…
この子学習能力高いからな…
だから愛撫もうまくなってきてる…

「…あ…」

声が出てしまう
尚も続く愛撫…

「…あ…もうやめて…お願いだから…」

ラブはやめてくれない
前の方に回って鎖骨をむき出ししにして、それからさっき印をつけてくれたところを、もう一度吸う
強く…痛いぐらいに強く…

「…はっ…」

我慢できずに息を吐く
ラブを抱きしめる僕

「やめ…てよ…ラ…ブ」
「僕にも印つけてよ」

え?

僕は驚いて目を開けた
ラブがいない
ラブじゃなくてギョンビンだ!

「兄さん僕を抱きたかったんだろ?抱かれるのは嫌だけど抱きしめるだけならいいよ」

なんで…お前が…

僕の体が震えだした
ラブと弟を間違えるなんて…


ホールから出てくる兄さんを見つけた
まだぼんやりとしているね、兄さん…

意地悪な僕が、僕の体を勝手に動かす
僕は背中から兄さんを抱きしめた

ああ…兄さんの背中だ…

僕は兄さんのうなじにキスをした
兄さんは目を閉じたまま、声を出した
やめてと言ってたけど、やめない…
僕は兄さんについているであろう印を捜した

やっぱり…

ラブ君につけてもらったんだ…

僕のその時の感情をなんと説明すればいいのだろう…
いろんな気持ちが一度に僕の心に押し寄せてきた
目の前にある、堅く目を閉じた兄を見つめながら僕は兄の鎖骨に口付けた
その印の場所に…

僕を強く抱きしめると「やめてよラブ」と言った
僕はすかさず「僕にも印をつけて」…と頼んでみた
兄は驚いていた
ずっとラブ君だと思ってたんだね…

ふぅん、その程度か…
僕とラブ君とを間違える…その程度の想いか…
なら早めに打ち砕いておかないとラブ君が可哀相な思いをするだけだよ…

「…抱きしめるだけなら…」

いいよと言ってみた
兄は僕を…突き飛ばした…


弟を突き飛ばした
怖くなった
まるでかつての自分がそこにいるような気がした

どうしたんだギョンビン
何かあったの?
さっきまでミンチョルさんと幸せそうにしてたのに
なんでそんな得体の知れない光を放ってるの?お前の瞳は…

弟は僕をじっと見つめると、はぁっとため息をついて首を横に振った

「…どうかしてる…どうかしてる全く…ふっ…。冗談だよ。つけないでよね、僕にはもう、あんな印…」

あんな印?

「足枷みたいな印さ…。あの子につけてどうする気?飼い犬にでもするの?…あいつ可愛いよね、兄さんのことえらく信じてたよ
どうやって手なずけたの?あのシャツ、兄さんが選んだんだろ?彼には似合わないよ!あれが似合うのは…」
「ギョンビン…どうしたの?何かあった?嫌なことでもあったの?」

僕はたまらなくなって聞いてみた

「…別に…別に、兄さんがイナさんにキスされて、ラブ君に耳を吸われて恍惚となってるとこ見ただけさ…情けなかったよ…」

…ギョンビン…

「兄さんのあんな顔、初めて見たからさ。色っぽかったな…」

…ギョンビン?

「ああごめん!情けない兄さん見てたら意地の悪い事言いたくなっただけ…でもどうするつもり?」
「…え…」
「まだモノにしてないんだってね。珍しい…。1時間以内に落とすって有名だったのに、兄さん…」
「…ギョンビン?」
「ねぇ…捨てるんなら早いとこ捨てちゃえば?僕とあの子と間違えるって程度じゃ、あの子、見込みないじゃない」

そうだ…僕はなぜラブと弟を間違えたんだろう…
なんで弟は急にこんな意地悪な事を言い出したんだろう…
僕はもう一度弟の顔を見つめた
瞳の奥に寂しそうに揺れる炎が見えたような気がした
ラブの瞳にもこんな炎が揺れていたっけ…
ラブと弟は…似たところがあるんだ…きっと…
だから…僕は間違えたのか…
僕はあたりを見回した
ラブがその辺にいないかと思って

「何捜してるの?あの子?」
「…ラブを知らないか?」
「兄さん、やめときなよ。あんな風に兄さんを弄ぶヤツなんて、やめるべきだよ」
「…何言ってんの?ギョンビン…どうしたのさ、お前らしくないよ…」
「…そう?…」
「ラブ捜してくる、もうすぐ出番だろ?」
「兄さん」
「なに?」
「僕とキスしない?」

何言ってるのさ…どうしたんだよ…

「兄弟なのに?」
「昔よくしたじゃないさ…大好きだよって言い合って…」
「…お前が好きなのはミンチョルさんだろ?」
「…兄さんも好きだよ」
「僕もお前が好きだよ、自慢の弟だ…。弟として大好きだよ…ラブを捜してくる」
「わかんないな、イナさんとどっちが好きなのさ」
「…どっちも好きだ…」
「僕は?僕は何番目?」

ギョンビンはおかしかった…
何か安定を欠いている…
ミンチョルさんがそばにいないから?
ううん…そばにいなくったってこんな風に人を傷つけるような事、言ったりしなかったのに…

こんな時は一人にしてやる方がいい…
こんな事、解って言っているに違いない
こう言えば僕が傷つくと解ってるに違いない…

僕はギョンビンに背を向けて中庭に向かった
このあたりにいないとするならば中庭しかないもの

歩いていくと芝に座り込んで空を見上げているラブがいた
僕はほっとしてラブに近づいた

「ラブ…」

僕がラブに声をかけたのと、ラブがこちらを振り向いたのと、そして背中から誰かが抱きつくのが同時だった
ラブは僕の首に回された腕を見つめて、堪えていたらしい涙をぽろぽろ流し始めた…

「ギョンビン…お前…」

僕の背中に顔をくっつけて、弟が泣いていた


再生  オリーさん

弟は僕の首に腕を巻きつけたまま泣いている
ラブもそれを見て涙をこぼしている
どうして今日はトライアングルばっかりなんだ
どれもとてもヘビーな…

「ギョンビン…大丈夫か?」
僕はラブの視線を感じながらもとりあえず後ろを振り返った
下を向いたまま泣いている弟に言った
「ちょっと話そう、いいな?」
弟は泣きながらうなづいた
弟の手を引きながらラブの所へ行った
ラブは僕らが行くのをじっと待っていた
僕はまた3人のまん中…
僕は涙目のラブに言った
「ちょっと身内の話をするから、いいね」
ラブはコクンとうなずいて僕らからちょっと離れた

「何かあったのか、元に戻れたんだろ」
僕は弟に言った
弟は膝を抱えて顔を隠している
ラブはそんな僕と弟をただじっと見つめている
弟が呟いた
「今朝、彼を殺すところだった」
「え?」
「もう少しで絞め殺してた。突然ひどい事言われて、わけがわからなくなって…
気がついたら、首絞めてた」
「ギョンビン…」
ミンチョルさんの首を絞める弟、弟に首を絞められるミンチョルさん
ふたりのシルエットが生々しく浮かんでは消えた
体中の血がざわざわと沸騰し始めた

「部屋を出てからも怖くて怖くてたまらなかった…どうしようって
手に残った彼の首の感触が怖くて…しばらく震えてた」
「ギョンビン…」
弟にかける言葉が見つからない
僕のせいだ
ひとつ間違っていたら殺していたに違いない…
「兄さん、何が一番怖かったかわかる?」
「…何?」
「こんなに好きになってたんだって…どうしようって…それが一番怖かった…」
ああ!ギョンビン!
「すまなかった、みんな僕のせいだ。すまない…」
僕は弟の頭を胸に抱きしめた
弟は僕の腕の中で嗚咽を漏らしていた
「悪かった、許してくれ、ほんとうに…」

僕は弟の背中をさすり、何度も同じ事をつぶやいた
どれくらいそうしていたのだろう、突然隣の空気が動いた
「僕、行くね」
振り向くとラブが無表情で立ち上がった
「あまり聞きたくない話だから」
「ラブ…」
離れていくラブの後姿を見ながらも僕は弟を抱き寄せていた

泣いていた弟はだんだんとおさまり、やがて静かになった
「兄さん…」
「何?」
「久しぶりだ、こんな風にしてもらうのは」
「そうだな。いつもお前は可愛くて、泣き虫で…」
「子供の頃の話だろ、泣き虫は」
「いつまでたっても子供みたいな気がする」
「じゃ、僕とテコンドー勝負する?いいセンいくと思うよ」
「生意気になった」
「ごめんね…」
「ん?」
「チフンのこと。僕も兄さんにひどい事した」
「いいんだ、ほっておいた僕が悪い」
「じゃ、これでおあいこにしようよ」
僕はもう一度弟を強く抱きしめた

「それよりお前何かあったのか?」
「いや、何も…」
「嘘つくな」
「兄さん、人の気持ちはむずかしいね」
「ギョンビン?」
「ラブ君だけど、気をつけてよ」
「何が…」
「わかってるだろう。もし僕の身代わりだったらやめてよ。彼が気の毒だ」
「…」
「イナさんだって、決まった人がいる。僕には理解できない。愛されてるのに浮気するなんて」
弟は唇を噛んだ
「イナさんはテジュンさんを愛してるんだよね。でも兄さんのことも気に入ってる」
「色々助けてもらったよ」
「あの人、不思議な人だよね。やっぱり大事なのは…」
弟は最後まで言い切らなかった
大事なのは?
何?
誰?

「もう行くよ。ありがとう。ラブ君の所に行ってあげて」
いくらかさっぱりした顔になった弟は
立ち上がって離れた木の根元に腰掛けているラブの方へ顔を向けた
「ギョンビン…」
歩き出した弟に声をかけた
「ほんとうにもう僕を許したのか?」
弟は振り返って、僕の顔を見ずに視線をちょっと上に向けた
考え込む時のお前のしぐさ、変わってない
「僕たち兄弟だよ。兄さんのこと好きだ、兄貴として。それでいいだろ」
そう言って僕を見た
目が笑っていた
僕は頷いた
ほんとにもう子供じゃないな
何があったか教えてもらえなかったけど、
少しはお前の役に立ったか…

弟の後姿を見送ってから、ラブの方へ歩き出した
弟の言葉が頭で響いた
『僕の身代わりならやめてよ』
揺れている心はどこへ落ちていくのだろう
わからないままに僕の足はラブの方へ進んでいった


揺れる心  ぴかろん

僕が近づいていくとラブは哀しい瞳で僕を見つめた

「ラブ…ごめんね」
「また謝る」
「あ…ごめ…」

どうして僕はラブに謝ってしまうのだろう…

『僕の身代わりなら…』

身代わり…

ギョンビンの身代わり、チフンの身代わり、イナの身代わり…
僕はそんな風にしかラブを見ていないのだろうか?
確かにラブと過ごしていると色々な事を思い出してしまう…
僕はラブ自身を見ていないのだろうか…

僕は僕に問いかけた
ラブのどこに惹かれた?

最初に出会ったときの危うい印象
キスを仕掛けて来た時の生意気な態度
僕のキスを受けて震えて泣き出した可愛らしさ
僕はあの時ラブがどんな子なのか、まるで解らなかった

ラブだって僕がどんな風に生きてきたか、誰を好きで何をしていたかなんて知らなかったんだ
お互いのキスだけを気に入って、何故か優しい気持ちになれたんだ
ラブもきっとそうだろう…
あれから何時間か一緒にいるうちに、ラブは僕の気持ちの変化を敏感に感じ取るようになった
今だって…きっと揺れている僕の心なんかお見通しだよね…

「俺の事…捨てる?」
「…え…」
「遊んで捨てる?」
「…ラブ…」
「いいよ…その気なら。でもそうならそうと初めに言っといてよ。親切になんかしなくていいよ
おじさんのキス、凄いからタダでえっちヤらせてやるよ、どこでする?ここでもいいよ。それとも祭が終わってから?」
「ラブ!そんな風に考えてないって言ったろ?!」
「…じゃあ俺って何?…おじさんにとって俺って何?」
「…ラブ…」
「ギョンビンの身代わりってわけ?」
「…」
「ねぇ!それならそれでいいよ!ちゃんとその役やったげるよ。どうすればいい?さっきのギョンビンみたく、背中から抱きついて泣けばいいの?それとも」
「じゃあ僕はお前にとって何なの?」
「…え…」
「僕は何?」
「…」


おじさんの事が好きです
大好きです
俺はおじさんの事が好きなんです
どうしてこんなに好きになったのか解りません…

ギョンビンがミンチョルさんの事

『こんなに好きになってたんだって…怖かった…』

そう言った時、おじさんがギョンビンを抱きしめている事よりも何よりも、その言葉がずしんと胸に響いたんだ…

怖いほど好きになる

俺はまだその入り口にしか立ってないけど、扉はもう開いてるんだ
中を覗いたら真っ暗なんだ
床が見えないんだ
だって底なしの真っ暗な空間なんだもん、おじさんは…
これ以上好きになったら俺はまっ逆さまに堕ちていく
きっと堕ちていく…
堕ちていきながら、ギョンビンみたいに『怖い』と思うんだろうか…
それとも俺には羽根があって…真っ暗な空間を優雅に飛びまわれるんだろうか…

「おじさんは…キスのうまい素敵な人だよ…」
「…」
「…それだけ…」
「…それ…だけ?」
「だってイナさんが好きなんだろ?」
「…」
「だから好きになんかなってやんない」
「…」
「でもね。おじさんのキスは大好きだよ、あんな凄いキスできる人はそうそういないからさ
だから…キスしてよ…俺にさ」


そんな哀しそうな顔で、そんなセリフ吐くなよ…
僕の気持ちに沿うようにお前、いつも先回りする…

「抱いてほしいのか?僕に…」
「抱きたいなら抱けば?」
「…ラブ…」
「キスして欲しいだけだよ…すっごいのね」
「…僕のキスなんて凄くなんかないよ…」
「イナさんが痺れないから?」
「違う…」
「何でさ、イナさんを落としたいんだろ?」
「…イナは落ちないよ…」
「でも好きなんだろ?」
「好きだよ」
「俺はおじさんのキスが好き」
「僕もお前とキスするのが好きだよ…」
「…じゃあそれでいいね…俺達はキスする間柄…他の感情なんて入れなくていいじゃん。決まった」
「…ラブ…」
「してよ!キス!」

哀しい先回りの言葉だよ…ラブ…馬鹿野郎…

ラブは瞳の奥に涙を封印してしまった
僕の気持ちがはっきりしない限り、優しい言葉をかけるのはラブを惑わすだけかもしれない…
僕はラブを地面に押し倒し、最初にしたような乱暴なキスをした
キスだけに集中した
これはラブじゃない
これはイナじゃない
これはチフンじゃない
これはギョンビンじゃない
これは…これは…


◇あたらしい仲間2  妄想省家政婦mayoさん

2階に上がっていくと、ミンギが寄ってきた…
「ミンギ…何…」
「監督が呼んでこいって…」
「何か余計な事…言ったでしょ…」
「ごめん…ヌナ…睨み勝ちのこと…」
「ぁち…おしゃべり…誰も知らなかったのに」
私は睨み勝ちの事をテソンとちぇみには黙っていた
テソンは余計にざわざわするだろうと懸念したし
ちぇみからは ぐー★3連発が落ちてくると思ったからだった…

「それと…」
「今度は何…」
「ぅん..僕監督に助手お願いしてOKもらったけど…」
「ぉ、よかったじゃない…あ…ウォニさんに気を使っちゃう?」
「ぅん…ウォニさん差し置いて余計なこと言っちゃったかな」
「大丈夫だよ…ウォニさん…映画出演も多いから…留守がちになるし…」
 そこんとこわかってるからOK出たんだよきっと…」
「ぅん…」
「ミンギ…ジホ監督はいい人だから…」
「ぅん…スタッフの信頼があるって聞いたことある..僕…」
「ちょっと女たらしみたいだけど…」
「ぷっ…そうなんだ」

「んー…”おんなたらし” は余計だなぁ…」

私とミンギがこそこそ話しているとジホが後ろに立っていた
「ぁ…ぉ…すいません^^;;…でも…事実…」
「んーまぁね…ちょっとだけね…」
「監督…私に何か用が?」
「いや…大した用じゃないんだが…オーナーの映画の話…知ってる?」
「あ、内容は解りませんが…」
「コメディかな…ロマンス系かな…解る?」
「いえ…」
「そう…何か解ったら僕にすぐ教えて…いいね」
「あ、はい…」

その時ちぇみから通信が入った…
「闇夜…テソンが捜してる様子だ…すぐ戻れっ」
「…わかった…」
「ん…」
私は急いでホールの一階に戻った…

テソンはホールをきょろきょろして闇夜を捜していた
俺が通信してすぐ闇夜は戻ってきた
闇夜はテソンに軽く手を振る..テソンは安心した様子で微笑み返す
闇夜が俺のそばに来るのと同時に
テソンの隣にいたテスが俺の懐に入ってきた…
テスはそばに来た闇夜の頬にぽちゃぽちゃの両手でナデナデ#をした…

「mayoさん、テソンさん…また心配してた…姿が見えないって…」
「ぉ…ごめんごめん…」
「あんましテソンさんに心配かけちゃ駄目…」
「ぁぅ…テスシ..」
「あったかい?」
「ぅ、ぅん…」
「えへっ#」

懐のテスが闇夜の頬にナデナデしているのを眺め…
俺はテスにダメ出しをされているような何とも言えない思いにかられた…
闇夜も俺と同じ思いになっているに違いないだろう…
俺は闇夜に眉を上げてみせた…
闇夜は俺にサインも返せずに懸命に平静な顔を作っている

「mayoさん…」
「ぅ…ん?」
「サンバのステップ…ちょっとだけ教えて」
「ぁ、ぅん…いいよ」
「テソンさんには言っておいたから大丈夫…」
「わかった…じゃ…ちょっと中庭行こうか…」
「ぅん#」

俺たちと闇夜はテスは中庭へ向かった…
テスと闇夜がステップの練習をしているのを俺はベンチに座り眺めていた
すると腕を絡ませながらぴったり寄り添って歩いてくる2人がいた
闇夜とテスも2人の姿を見るとステップを止めた

「ぁ、あいつ…」
「あれぇー?…」
「オモオモ…」

2人は俺等3人に近づいてきた…


揺れる心 2 ぴかろん

息が止まりそうだった
苦しくて…
おじさんへの気持ちを封じ込めた心が
壁を突き破って出てきそうだった…
おじさんの心が流れ込んでくるようだ
何でこんなにおじさんの気持ちが解っちゃうの?
とても揺れてるね
俺に悪いと思いながら、悪いと思うことを打ち消そうとしながら
でもやっぱり答えが出なくて、それでいつも後回しなんだ…

奪いたい
イナさんから奪いたい
イナさんの方を向いてるおじさんの心を俺の方に向けたい
でもできない
できっこない

きっとおじさんは、イナさんには印なんて付けられないさ
だってイナさんは特別な人なんだもん…とても大切な人なんだもん…
解るよ、俺にとってもイナさんは特別だ
あの人は『別格』なんだ…

キスに集中できない
好きになりすぎてる
こんな短い時間で
こんなに好きになってる
どうしたらいい?どうしよう…
泣きたい
けどもうおじさんの前では泣けない
また心を揺らすから…
揺らしたらおじさん、いつまでたっても幸せになれないから…

ああ
おじさん… 愛されてるような錯覚に陥る
こんな丁寧なキス
こんな強引なキス
こんな激しいキス
こんなに…甘いキス…
俺は…今まで知らなかったんだ…

おじさんは俺をおもちゃになんかしない
俺を大切にしてくれる
知ってる
解っちゃう…
温かいから
俺に触れるおじさんの全てが温かいから
だから…おじさん…
おじさん自身が幸せになってよ…
俺、そばで見届けたい…
奪いたいけど、もうそんな事言わない
キスだけで我慢するフリをするよ

ホントはね…キスだけで俺…幸せなんだ…
おじさんがこんなに寂しそうじゃなかったら…


キスに集中する

できないよ…ラブ…
できないよ…ラブ…

僕がキスしているこいつは、お前だよ、ラブ
僕はお前にキスしてるんだよ、ラブ

僕は唇を離してラブを見つめた
僕の目から涙がポタポタとラブの顔に落ちる
まるでラブが泣いてるみたいだ…
ラブの胸に顔を埋めた

「疲れちゃったよ、ラブ…」
「…」

ラブは動かなかった
さっきまでなら、ラブはきっと僕の髪を優しくなでてくれたはずだ

「ラブ…泣きたくなったらラブを捜したらいいんじゃなかったのか?背中ぐらい擦ってくれるって言わなかったか?」
「…言ったっけ…俺バカだから覚えてないよ…」

嘘つき…

「嘘つき…」

声に出して言ってみた
ラブは乱暴に背中に手を当てて、ごしごしと背中を擦った
もう一度顔を上げてラブを見た
涙は出ていない…

切り替えたの?違うだろ?やせ我慢してるんだろ?

僕はそばに落ちていたラブのナイフを拾った

「これは預かっておく」
「…!返してよ!」
「嫌だ!またお前が自分を傷つけるから」
「そんな事しないよ、返せよ」
「嘘つき」
「…何が…」
「言えよ、お前の思ってること…。何にも言わないから僕はついお前を後回しにしてしまう…話してくれよ、お前の想いを…」
「言ってるでしょ?キスが好きって!」
「僕は…お前といると優しい気持ちになれる…。そんな風になれる自分がとても好きだ…ねえ、お前は自分を好きだと思った事あるかい?
…僕はなかったから…とても嬉しかった…」
「…嘘つきはそっちだろ?苦しんだくせに!」
「…」
「子供の事、弟の事、イナさんの事、いろんなこと思い出して苦しんだくせに、俺のせいでさ!」
「でもお前がいてくれた。そばにいてくれたから…」
「…結局はイナさんとこに行くじゃんか…俺なんかいなくてもいいじゃんか…」
「でもお前がいなかったら」
「思い出さずに済んだだろう?!違う?!」
「ラブ…そんな風に言わないでくれ…」
「俺の方こそ、そんな風に言わないでよ。俺はおじさんが想うほど情の厚い人間じゃないもん」

嘘つき…嘘つき…嘘つき!

「どいて…」
「…」
「もうそろそろ集合だもん…」
「嫌だ…」
「…どいてよ…」
「嫌だ!」
「どけよ!おっさん!」
「嫌だ!」

僕はもう一度ラブにキスをした
ラブはもがいて腕を振り回した
僕の頬にラブの手が勢いよく当たった

「あ…ごめんおじさ…」

ラブの瞳が躊躇う
ほらみろ、お前は優しいんだ…
僕はラブを抱きしめたまま…今ある僕の気持ちを告げた


【43♪スキさ スキさ スキさ らぶの心の叫び】ロージーさん


たいせつにしたい…  ぴかろん

「お前が好きだ。失いたくない。そばにいてくれ」
「…おじさんの好きな人はイナさんだろう?!」
「ああ…でもお前にそばにいてほしい!」
「…俺がどんなに辛いか解って言ってるの?」
「…そうやって僕にお前の事もっと教えて…お前の気持ちを僕に伝えて…なあ…ラブ…僕の事好きか?」
「…」
「好きかと聞いてるんだ」
「…別に…」
「好きだろう?」
「…自信過剰なんじゃない?」
「好きだろ?僕の事…」

好きだよ…何度も言ってるじゃん、心の中でさ…好きだよ!好きだよ…
そんな目で見つめるなよ
イナさんが一番好きなくせに
涙がでそうだ…

「好きって言ってよ…ラブ…」
「…」
「僕は言ったよ…失いたくない…お前は誰の身代わりでもない…お前はラブだ…もっとよく知りたい…」
「…辛いもん…身動きできないもん…苦しくて…」
「僕をイナから奪ってくれるんだろう?」
「…おじさん…」
「なら好きにさせなよ…もっと好きにさせてよ、お前を」
「…どうやって?これでも俺一生懸命だぜ…」
「…お前の思う事を教えてほしい…全部…」

俺は返事の代わりにおじさんの舌を貰いに行った
甘いキスで受け止めてくれるおじさんを体を入れ替えて抱きしめた

「俺、軽くないよ…いいの?俺の想い…ぶつけていいの?」

受け止めてもくれないくせに…

「うん…」
「ほんとに俺が好き?」
「うん…」

イナさんから離れられる?…そう聞きたかった
離れられるわけがないよね…

「受け止めるの、下手だけど少しずつ受け止めてくから…。お前だけが涙流すの…やめて…」
「…」
「僕にもお前の辛い気持ち…分けて…」
「おじさ…」
「僕はお前の事…何も知らない…だから…」

おじさんの唇を塞いだ
それ以上聞くと堪らなくなる
俺は床のないおじさんの部屋に踏み込んでしまった
堕ちていく
おじさんに堕ちていく

イナさんと俺の間で、過去と今との間で揺れ続けるおじさんを俺は支えたかったのに…
もうできないよ
おじさんをもっと苦しめてしまいそうだ

「俺…我儘だよ…捨てるなら今だよ…」
「僕も我儘だ…だから離さない」
「…馬鹿なんじゃない?」
「うん…」

おじさんは少し伸び上がり俺を捕える
キスが落ちてくる
俺を酔わせるキス

唇を唇でなぞり、こじあけて俺の中に入り込む舌
頬を包む手のひら…時折触れる睫毛
舌や歯や唇が吸い込まれる度に気が遠くなる…
俺の吐息とおじさんの甘い声とキスの湿った音が耳に響く

携帯電話が腰のポケットで鳴り響いた
おじさんにしがみついて柔らかく唇を吸い、そっと離れる

「本とに…行かなきゃ…」

涙がふいに流れ落ちた
きっと辛い
きっと苦しい
今まで以上に心が切り刻まれる
おじさんといてもきっと碌な事なんてない
けれど

「好きだよ…誰よりも…」

そう言うと心が透明になった気がした

「僕もラブが好きだ…お前が大切だ…多分…一番大切だ」

どきんどきんと大きな音で全身が脈打った

大切…

俺を甘く包み込む言葉

「おじさんも…俺に気持ち全部…伝えてくれる?…でなきゃ俺…」
「…お前を傷つけてもいいの?」
「…解らないでいるよりずっといい…。俺の方こそおじさんを傷つけちゃうかも知れない…」
「いや、僕も…解らないでいるよりいい…」
「…痛いかな…」
「お前と一緒なら…怖くないよ…僕は…」

その言葉で俺は、おじさんに添う事を自分に誓った
傷ついても構わない…傷つけても抱きしめてあげるよ…

おじさんにつけた赤い印に優しくキスをして俺は立ち上がった


でんごんげーむ  足バンさん

まつりがはじまらなくてたいくつしていたころ
ぼくはみんなに「でんごんげーむ」をしようとていあんしました

さて、どんなふうにつたわるんでしょう
きっとひどいことになるんじゃないかとたのしみです

ぼくがいなさんにつたえたことばは
「びーえっちしーのみんなはえいえんになかよしです」です

イナからテジュンへ
「えっちしているみんなは永遠に仲良しです」
 
テジュンからテソンへ
「えっちなことしていると延々と長くなります」

テソンから闇夜へ
「えっちなことは延々なかなかできません」

闇夜からチェミへ
「えっちな子は延々仲直りできません」

チェミからテスへ
「えっちなこわいことは中々治りません」

テスからドンジュンへ
「えっちはこわいことなんてありません」

ドンジュンからスヒョンへ
「エッチにこわいという字はありません」

スヒョンからスハ先生へ
「えっちにこわいという自覚はありません」

スハ先生からテジンへ
「エッチ2コは E という字ではありません」

テジンからギョンジンへ
「えっちな恋はいいということではありません」

ギョンジンからラブへ
「えっちな恋はいいことだけではありません」

ラブからスヒョクへ
「えっちに来い、はいいことだけではありません」

スヒョクからソクへ
「えっちに来ないといい子ではありません」

ソクからテプンへ
「ごほん!エッチに来ないといいことはありません」

テプンかミンへ
「ご本のえっちにいけないところはありません」

ミンからミンチョルへ
「5本のえっちにいけないことはありませんか」

ミンチョルからソンジェへ
「5本のえっち…いけないことないと思います」

ソンジェからチョンウォンへ
「びっくりした…5本のえっちなんていけないことだと思います」

チョンウォンからソンジュへ
「びっくりしたご本のえっちなんて、ええと経験ないです」

ソンジュからシチュンへ
「びっくりのえっちは永遠にないです!」

シチュンからチョンマンへ
「びっぐえっちはそんなの永遠にないです、え?」

チョンマンからウシクへ
「びっぐえっちしてのそんなの永遠になしです?ん?」

ウシクからイヌ先生へ
「びっくえっちしてのみんな永遠になしです???なにそれ?」

イヌ先生からジュンホ君へ
「んー…ビーエッチシーのみんなは永遠になかよしです、かな?」

わお!ちゃんとせいかくにつたわりました!
すごいです!すごいです!
ぼくはみんなをみなおしました!


個人授業 れいんさん

僕はスヒョンと話せるチャンスを待ってた
スヒョンは忙しく動き回ってて、なかなか捕まらない
入り口付近でやっとスヒョンの姿を捕らえた
僕はスハにここで待ってるように告げてスヒョンの所に行った

「スヒョン…ちょっといい?」
「…ああ、テジンか」

僕はスヒョンにあの事をそれとなく聞いてみようかと思っていた
忙しいのにマズイかな…
祭の後の方がいいだろうな
だけど、祭の最中の方が、かえって人目につきにくい
祭が終われば、僕とスヒョンが二人きりで話すなんて難しいからな

どこか、誰にも邪魔されず話せる場所ってないかな
今、テプン達とかに見つかってみろ
取り囲まれてワイワイ騒がれて聞くに聞けやしない…
僕はキョロキョロ辺りを見回して、人気のない方へとスヒョンを連れ出した

「テジン…スハはいいのか?」
「あ…ああ、向こうで祭を見てるよ」
「…何かあったの?」
「う…いや…その…」

僕はリネン室と書かれた扉の前で足を止めた
ここなら…今の時間なら、きっと誰も来ないな
僕はリネン室の扉を開けてスヒョンを中に入れた

「どうしたんだい?いったい…」

こんな時…なんて切り出したらいいんだ
いきなり聞くってのもな…

「うん…その…体の方はもう大丈夫なのか?」

…まず、本題に入る前にそういう話からな…

「…?ああ…心配かけたね」
「そうか…。なら…いいんだ」

…いよいよ本題いくか…?

「それを聞くのにわざわざここに?…すまないが…もう行かないと」

「あ…スヒョン、ちょっと待って…その…」

…えっと肝心の事がまだ…

「いったいどうしたのさ…?」
「あのさ…ドンジュンとは…うまく行ってるのか?」

…またこんな余計な事聞いて…

「…うん…まあね。…で?何か大事な話でも…?」

…いや…それ程大事ってわけじゃ…

「その…な。えっと…君達って…その恋人同士だよな…」

…なんだ!このマヌケな質問は…!

「…なんかじれったい奴だな。…こうした方が手っ取り早い」

スヒョンが手を伸ばしてきていきなり僕を引き寄せた

「何するんだ…!おいっ!」

スヒョンと抱き合う格好になった僕の手がバタバタと宙を泳いだ

「いいからじっとして。おまえの話に付き合ってたら明日になっちまう」

スヒョンは目を閉じたまましばらく僕を抱きしめていた
人気のないそのその場所にさらに静寂が広がった

それからスヒョンはくすりと笑って、そっと僕を離した

「ふうん…。なるほど、そういう事…。そんなの自然の流れに任せたら…?」
「おまっ!人の心の中勝手に読むなよっ!」
「僕が天使だって事忘れた?…その僕に聞きたかったんでしょ?」
「…僕はただ…ちょっと、その…好奇心から聞いてみようかと…」
「なんなら僕が手取り足取り教えようか?」

スヒョンは僕の肩に手を回して僕を抱き寄せた
そして耳元に唇を寄せてそっと囁いた
もう片方の手は僕のシャツのボタンを器用にはずしはじめた

「おい…やめろよ…スヒョン」
「今ここで、僕が特別に個人レッスンしてあげるよ」

そんなに強い力じゃないはずなのに
僕はスヒョンに捕まったまま身動きできなかった

色っぽい表情を浮かべたスヒョンの唇が僕に近づいてくる
はだけたシャツから手を滑り込ませ、僕の体を愛撫した後、今度はベルトを緩めだした

僕は声も出ないし、動く事もできない…
…ああ…!もう…ダメだ…!

「くっくっくっ…」
「…え?」
「おまえって…可愛いのな…」

僕の肩に額をつけて、スヒョンが小刻みに肩を震わせ笑い出した

「なんだよっ!おまえっ!からかってるのかっ!」
「…くっくっ。いや…すまなかった。おまえがあんまり面白いものだから…つい」
「…ったく!おまえって奴は…!もうダメかと思ったぞ!」

スヒョンはひとしきり笑った後

「おまえ…変わったな」
「…あ?」
「その笑顔…スハのせい…?」
「…そう…かな…」
「後悔だけはするなよ。…大切にしてやれよ」
「いや…そんなんじゃ…」
「ところで…いい?キメル時はね、優しく丁寧にたっぷりとしてあげればいいんだよ。…愛を込めてね」

スヒョンは僕の肩をポンと叩いて笑いながら扉を開けた

「だから…違うって…」

僕の言葉を聞きもせず、スヒョンは

「楽しい気分転換だったよ…」

と言ってパタンと扉を閉めた

「…結局…何もわからないままだろ…」

シャツが全開になってる情けない姿の僕は
扉にもたれかかってつぶやいた


ちょうさいらい  ぴかろん

ぼくはよっぽどひまだとおもわれています
おーなーからのちょうさいらいがきました
ぶあついふぁいるがさんさつあります

「この中からある事を調べてその人物に自覚があるかどうか問いかけて欲しい」

といわれました
ぼくにできるのでしょうか…

しつもんすることはこれです
このかみをいなさんにわたして、そのかいとうをききなさいというものです
そのご、ちょうさしなさいといわれました…
はぁ〜
ぼくはぼくのすきなべんきょうをじしゅてきにしたいのにな…はぁ〜

『しつもんじょう きむ・いなしへ
なんかい?』

これはなんでしょう…
このかみをわたしたら、いなさんはしばらくぼくをじっとみつめて、それからくちにてをあててかんがえこみ
そしてにやにやわらい、それからめそめそもしました
でもさいしゅうてきににやにやとわらってこういいました

「数え切れないっつっといて。まだ増えてるし…」

…なんのことでしょう
ぼくはへやにかえってさんさつのふぁいるのいちぺーじめをあけました

『イナの回数を調べよ。ただし「57」までの資料しかない』

かいすうとは?なんのかいすう?
いなさんだから…きっと『ちゅう』のかいすうですね?

ぼくはしらべました
おーなーはきっと、ちにさんとのちゅうはかぞえなくていいとおもってるはずです
だから、てじゅんさんとちゅうしだしてからのいなさんのちゅうをかぞえることにしました

一、T、下、I下、正

こうやってぼうをふやしていくと『ごかい』になります
ぼくは『はむ』とか『ちう』とかにきをつけてかいていきました
でも『はむはむはむはむちうちうちうちう』などというところは、とってもこまります
これはぼくのけいけんでいくと、いっかいの『ちゅう』のなかの『はむはむ』なので、いっかいとかぞえることにしました

もっとこまるのは『なんども』とか『くりかえし』とかかいてあるところです

ぼくのけいけんでは『なんども』というとさいていじゅっかいぐらいするとおもいます
いなさんたちは、『はげしく』て『しつこい』らしいので、にじゅっかいぐらいしているかもしれません

ぼくはぜんごのぶんしょうをよんでよそうし、てきとうにかきました

よんでいるといなさんとてじゅんさんはほんとうになかよしなんだなとおもいました

よくはだかんぼうになってじゃれあうしーんがでてきます

そうか『ちゅう』だけではだめなんだな、きっと『えっち』もかぞえなくてはいけないんだなときづき、ぼくはまた、おはなしをよみかえしました
ああめんどくさい…

ときどきてじゅんさんは、らんぼうなことをします
いなさんがおこって、てじゅんさんをぶんなぐるかとおもってたらそうじゃなくて『はふん』とか『へへん』とか
『てじゅしゅき』とかいうことばのぼうぎょをしてうまくてじゅんさんのらんぼうさをおさめているようです

かみのけをひっぱられるのはいたくていやだとおもうのに、いなさんはてじゅんさんがかみのけをひっぱるとよろこんでいるみたいです

どうしてでしょう

あ…といれのこともありました…

すぱーりんぐではなかったのですね…
なあんだ…
…ふうん…

ぼくのあたまのなかに『へんたい』というもじがうかびました

ぼくはもうひとつのことにきづきました

いなさんの『うわきちゅう』のことです
これをぬきにしてはいなさんをかたれません

ぼくはまた、いなさんのところをよみなおしました
ものすごくいやになってきました

『うわき』のいなさんは『ちゅう』しかしないということがわかって、すこしほっとしました
もし『うわきえっち』をしていたら、ぼくがてじゅんさんのかわりにいなさんをぼこぼこにしてやる!とおもいました
よかったです
なんてったって『びーえっちしーのみんなはえいえんになかよしです』から…

『うわき』のあいてはそくさんとぎょんじんさんですが、もうひとり『ふくへい』がいました
すひょんさんです

いなさんってひとは…


<けっかのほうこく>

いなーてじゅん ちう やく180かい いがいとすくない?
        えっち 13かい  すくない?

これはこのふぁいるにのっているかいすうだけですので、じっさいにはもっとたくさんだとおもいます(ぜったい!)

いなーそく ちう 19かい でもびりびりしますそうです

いなーぎょんじん ちう 29かい そくさんよりあとからしりあったのに、もうすっかりぬいてます!きょういのいなさんです
         えっちまえ 3かい これは『えっち』じゃないけど、そのてまえまでいったかいすうです
あぶないひとですね、ぎょんじんさんは…
だからいなさんはそくさんよりぎょんじんさんによっていったのですね?

いなーすひょん ちう 5かい よかった…すくなくて…

でもふつうはこいびとがいたら、ほかのひとと『ちゅう』なんかしないとおもいます
いなさんは『きょういのひと』です

けど、もっと『きょういのひと』は、やっぱり『てじゅんさん』だなとおもいました
こないだあかまるをつけましたが、かえます

『あかまるきゅうじょうしょうちゅう』


むふふん… 薔薇族 ロージーさん

らぶくんはゆかのないぴかろんさんのぶらっくほーるにおちてゆきました…
ぼくはぎょんじんさんはぴかろんさんのだみーだとおもっています…
らぶくんがこんなことになったのはいきあたりばったりなんかじゃありません…
いしきかのぴかろんさんがだれにもさわらせずにとっておいたのです…
ぼくもすきなものはさいごにたべるしゅぎです…おすしのうに…とろ…とろ…とろ…うに…
でも…らぶくんがぴかろんさんのさいごのえじきというわけではありません…なにしろぶらっくほーるですから…
ほらまだ…きっちゃないあのこものこっています…あらえばきれいになります…あ…あらわなくてもへいきでしたね…
それから…ぼくが…ほんとにかぞえたかって?…そんなにひまじゃあないんです…
とくにこれからつうじょうもおどにとつにゅうしたらどんなことになるか…ぼくをほんとうにしんぱいしてくれるのは…ろーじーさんだけです…
もっとも…ゆびがかたつむりだから…すくないじですぺーすをとれるかえうたにのめりこんでいて…そんなよゆうがない…
のがほんとのところらしいです…


あしばんさんはれいのあのひとのいっけんいらいなにかふっきれたようにかんじるのはぼくだけでしょうか?…
でもそれはとてもよいことだとおもいます…みんながよろこぶからです…もちろんぼくも…
きょうのでんごんげーむにしてもそうです…ぼくはいまのみんちょるさんとみんくんなら…もうにさんかいおっけいだとおもいます…
ぼくはせいぜいさんかいです…むだなえねるぎーはつかわないしゅぎです…

れいんさんのすひょんさんはほんらいのすひょんさんらしくてよかったとおもいます…あいてがてじんさんだったからかな?…よゆうでした…
すひょんさんでもほんとうにすきなひとのまえやここいちばんというときにはおもいっきりすてきこうせんをだしまくるらしいです…
あの…くちではみんみんひとすじ…といってるろーじーさんでさえやられちゃって…
いちどでいいから…ううんにどさんど…われをわすれてくるおしくみだれるすひょんさんをみたい…などといってるしまつです…

…いったいぼくはだれだっけ?…


もうすぐ出番だぞ!  ぴかろん

イナがイライラしている

ば〜か
ギョンジン君とラブ君は…なるようになる!

イナのやつ、さっきのサンドイッチ、僕が知らないと思ってるからなぁ…ば〜か…

『ば〜か』じゃ迫力ないな…なんだっけ、ミンチョルさんが言ってたの…

「あ、お忙しいところすみませんミンチョルさん」
「何ですか?何か舞台に問題でも?!」
「いえ…あの…ごにょごにょ」
「…」

ミンチョルさんは僕を冷たい目で睨んだ
何さ、いいじゃない、簡単に答えられるでしょう?

「ぶぁか!」
「は?!」
「だから『ぶぁか』」

そう一言言ってミンチョルさんはムッとした顔で舞台袖に行ってしまった
フン
よかった、恋人がミンチョルさんでなくて!

それにしても『ぶぁか』か…
けど僕の小さなお口で『ぶぁか』って言ってもさっきのミンチョルさんのような迫力は出ないな…
前髪を垂らして下から睨みつけるようにしてそして口の中に空気を溜めて一気に吐き出すように

「ぶぁか!」

できた!よし!
イナがこっちに来たら言ってやる
来い!来い来い!
あ、来た来た…にへら〜
あっいかんにやけてしまう…

あっどこいく!なんでこっちに来ない!

…ああ…ギョンジン君たちが来たからか…

あれ?
なんかあの二人…雰囲気が…ちょっと変わったかな…

ふふん…またイナの奴、荒れるかな?


「ギョンジンどこ行ってたんだよ!」
「…ちょっとラブ捜しに…」
「…何、お前ら…なんか…した?」

したってどういう事だよ!全くイナは…
えらく不安そうな目で僕達を見つめてるな…
ごめん、イナ…
僕はラブと一緒にいる…

ラブは僕のシャツの裾をぎゅっと握り締めて俯いている
イナはそこをじっと見てから僕の顔を見、そしていきなりキスをしてきた
僕はすぐにイナを押し戻した

「…なんだよ…冷たいじゃん…」
「イナ…もうすぐ出番だろ?」
「…なんだよ!お前ら何?ヤってきたの?どっちが抱いたの?まさかお前この色気小僧にヤられたのかよ?!」
「…イナ…」
「おい、ラブ!どうなんだよ!ヤったのかよ!」
「…やってないよ、馬鹿じゃない?!」
「…てめ…」
「何怒ってんの?何もしてないよ」
「…」
「じゃ、おじさん、俺達行ってくるね」
「…うん…」
「イナさん、行こうよ」
「…」

イナは物凄い形相のまま、ラブに腕を引かれて舞台袖の方に行った

ふぅー

僕はため息をついた
イナはテジュンさんの横を通り過ぎる時、ラブに持たれていた腕を振り払い、テジュンさんに抱きついた
テジュンさんはイナの顔を覗き込んで慰めてやってるみたい…

ふぅっ…

ふとラブと目が合った
にっこり微笑むとラブもニコっと笑った

信じてないの?信じろよ…
お前の事が大切だよ…

ラブはくるりと背を向けて舞台袖へと一人で歩いていった

僕はテジュンさんに慰められているらしいイナの横顔を見た

お前にテジュンさんがいるように、僕にもラブがいる
僕はラブが好きだ
そしてやっぱりお前が好きだ
でもこれからは気をつける
テジュンさんやラブの前ではお前とキスなんかしない
お前と二人っきりのときにしか…しない…

僕は目を閉じて、自分に『卑怯者』と言った


「泣くなよばか」
「だってよぉ〜キスしてくんないんだもん」

ベシっ☆
ここだよな、ここで『ぶぁか』だよ!
せえの…んむむっ

はむだ
はむはむだ…
ああ〜ん…何このはむはむ…
なんで下唇だけはむるのよ…と思ってたら
はむ・はむ・はむ
の三噛みで口全部たべられたぁん…
でっかい口…息できない…

「あり…全部口の中に入っちゃった…なんでだろ…あ、そか、テジュンだった…口のサイズ直さなくちゃ」
「ちょっと待て…何を直すって?」
「口のサイズ…。ギョンジンモードからテジュンモードに切り替え…。よし、はい。はむろう」
「ぶぁか!」

やった!言えた!

「何よ」

あれ?堪えてない…

「何ミンチョルみたいなこと言ってんのよ…早くハムしようよ、時間ない」
「お前なぁそういうこと…むはむはむはむ…」

ああらめら…こいつのペースら…どうしようもないわ…
もういい…
祭が終わるまで好きにして…はぁん…


ふん…ギョンジンのばか!ラブのばか!
絶対なんかしてきたんだ
なんだろう…えっちまではいってないな…
それにテジュンまで俺のこと『ぶぁか』なんてミンチョルみたいなこと言って!ふん!
すっごく傷ついたじょ…
でも傷ついてないふりするじょ!
ふん…
覚えてろよテジュン…
えっち一回お預けだかんな!

俺はミンチョルに頭を殴られるまでテジュンと濃いキスをし続けた


芝生  オリーさん

暗い海に僕は沈没してしまう、深く深く底の底まで
もう暗くて何も見えないよ……
スヒョン……

今度は眩しくて眩しくて目が痛い、目を閉じていても眩しい……
ここはどこ?

「着きましたよ」
え……
「座りましょ」
ギョンビン?
そうか、さっき誰かに腕を掴まれて連れ出された…
あれはギョンビンだったんだ
着いた場所はホテルの裏手の小さな庭
庭って言ってもただ芝生があるだけ簡素な空間
ギョンビンは僕の腕をはなすと、芝生へ寝っころがった
僕は気持ちと裏腹の場所へ引っぱり出されてイラついた

「ドンジュンさんも早く、こっちに」
僕は渋々横になってるギョンビンのそばに腰をおろした
体全体が凍えた気持ちに関係なく太陽に暖められていく
それがすごく不愉快な気分になってきた
「僕のこと怒ってるんだろ」
「何?」
ギョンビンは眩しそうに僕を振り返った
「よけいなこと言ったアホな奴って怒ってるんだろ」
ギョンビンがゆっくり体を起こした
ギョンビンの顔が少し蒼ざめていた
「怒ってます。よけいな事言ってくれて、波風立てて…」
僕はギョンビンの言葉を聞き終わらないうちに飛びかかっていた

怒ってるよね
僕だって…当の僕だってイライラしてる
僕はギョンビンの顔に向かって拳を振り下ろした
でもそれは簡単にをよけられて、すぐ下にされた
それで僕はまた暴れてギョンビンを下にして…
僕らは芝生の上でごろごろと転がった
僕らの喘ぎ声が静かな芝生の上に響いた
最後にギョンビンが僕を下にすると、両手を押さえられた

「馬鹿。僕はこんなことするために呼び出したんじゃない」
低くうめくとギョンビンは僕に覆い被さった
「お礼を言おうと思ったのに…」
ギョンビンの小さな声が僕の耳元で呟いた
「お礼?何よ、それ」
「さっき、スヒョンさんのために一所懸命だったでしょ」
「それは…」
「いつも自分の気持ちにも相手の気持ちにも真っ直ぐでしょ」
「ギョンビン、僕はただ…スヒョンのこと想って…」
「そう、スヒョンさんのことほんとに想って、それで自分の気持ちにも嘘つかない」
僕は思わず目を閉じた、涙がこぼれそうになった
でもすごく辛くて海の底に沈んじゃったよ…

ギョンビンは僕の手を離すと僕の上から体をどけた
「おかげでわかりました」
「何が?」
「朝から色んな事があって…とてもひどい一日だった…で、仕上げにドンジュンさんのお願いを聞いた…」
「迷惑なお願いだろ」
「それでわかった。彼がどうしてあんな事したか。ただひどいって思ってたけど、違った。彼は自分の身を削ってた
僕にはあの時それがわからなかった。だからもうあんな事させないように、もっと相手のことを真っ直ぐ見ようって」
「何わけわかんないこと言ってんの…」
「もしあの二人が僕らから離れていったらどうします?」
「え?」
「スヒョンさんのことあきらめる?あきらめないでしょ?」
「ギョンビン…」
「僕も彼のことあきらめない。だって自分の気持ちに真っ直ぐにいたいから。これ、教えてくれたのドンジュンさんですよ」
「僕はそんなんじゃないよ、ギョンビン…」
僕はもう我慢できずに涙をこぼした

馬鹿ギョンビン!何でそんな言い方するんだよ

「そんなんですよ。自分の気持ちを強く持ったら、相手のこともわかるようになるでしょ。ドンジュンさんのしてる事ってそうでしょ?」
ギョンビンの声が震えてた
泣くなよ、お前まで、馬鹿!

「ギョンビン、お前理屈っぽくてやっぱり嫌いだ!」
僕は叫んだ、でも実際かすれ声になってた
「僕だって嫌いです。いつも自分ばっかりで、余計な心配増やしてくれて。でもね…」
「何だよ…」
「もしあの二人がそうなるなら、いつか必ずなる。それを待つよりよっぽどいいでしょ。違います?」
ああ、僕が怖いのはそれだよ…もしスヒョンとミンチョルさんが…
「そしたらたとえ離れていっても相手のことがわかるかも。それでも僕は自分の気持ちをしっかり持とうって、…そう思えた
だから、一言ありがとうって言いたかったのに…暴れたりして」
ギョンビンもやっぱり怖いの…でも…自分の気持ちを強く持ったら…
馬鹿!お前の方がやっぱりわかってるじゃん

でも僕は逆のことを言ってた
「馬鹿に馬鹿って言われたくない」
「それはこっちのセリフ」
「うるさいよ!」
僕はギョンビンの上に倒れこんだ
「馬鹿は馬鹿同士、慰め合う?」
「馬鹿には慰められたくないです」
やっぱり嫌な奴だよ、お前は…
僕は何だかおかしくてギョンビンの胸で笑い出した
ギョンビンもくすくす笑い出した
しばらくふたりで泣き笑いした

「じゃ、僕は今ギョンビンの救世主じゃない。朝からずっと」
「認めたくないけど、そうなるかな」
「もう一度ありがとうって言ってごらんよ」
「お礼は一度きり。もうだめ」
「ケチな奴」
「欲張りな奴」
僕はギョンビンの首に巻きついてやった
「ありがとうって言わないと離れないぞ」
「しつこい奴」
「ほら、言えよ」
ギョンビンは巻きついた僕の頭を抱えた
「お礼は言わないけど、でも…何があっても友達でいましょう」
馬鹿!また変なこと言いやがって
「仕方ないけど、まあOKしてやるか」
ギョンビンの鼓動が僕の胸まで響いてきた
辛い、辛い、辛い…でも強くなろうって

しばらくして、僕らはやっと起き上がった
ギョンビンはふっと笑って僕にこう言った
「実際、おやじ二人で一晩お酒飲んだってどうこうなりませんよ。せいぜい僕らの悪口でも言うくらいでしょ」
「おやじ…」
「でしょ?」
僕は思わず吹き出した
「まだ甘いな、ギョンビンは」
「え?」
「ジジイだよ、ジジイ」
「それ…って強烈だな」
ギョンビンは大声で笑い出した
僕もおかしくて一緒になって笑った
「じゃあさ、ジジイ二人がくっついたら、僕らくっつこうか?」
ギョンビンは僕の目をじぃっと見つめると言った
「それはダメ」
「なんで?」
「年寄りのわがままは許せるけど、若い奴のわがままは僕許せません」
「今度は年寄りときたか」
「どう?」
「そうだな、僕もジジイの口うるさいのは我慢するけど、若いのが口うるさいのってうんざりだな」
「僕、口うるさい?」
「違うの?」
「ううん、うるさい…」
そう言うとギョンビンはのけぞってくくっと笑った

暗い海の底からプクプク上がってきて海面にちょっと顔が出た
「そろそろ行く?」
「そうですね」
僕らは立ち上がった
「ちょっと、芝がくっついちゃって…」
「こうやって落とせよ」
僕はギョンビンをバシバシ叩いた
「そう、こうやるんですね」
ギョンビンも僕をバシバシ叩いた
バシバシ叩いて、叩いて、叩いて、叩いた

僕とギョンビンはそれ以上何も言わなかった、
スヒョンとミンチョルさんのことは
いいさ、僕はしたいようにした
後のことは後のこと
きっと出口は見つかるはず…
僕の横を歩いてる嫌な奴も同じ事思ってるはずだよね…


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