家庭教師2 れいんさん
僕はちょっと驚いて言った
「え…。よく作るの?」
「えへへ。はい。ときどき。ほてるのごはんはおいしいですが
ときどききゅうに、らーめんがたべたくなるときがあります
ぼくのおきにいりのおなべ、いえからもってきました」
そう言うとジュンホ君は、床に転がっていた使い込んだお鍋を拾い上げて見せてくれた
なるほど、にぶい金色をしたアルミ製の両手鍋…ところどころに小さなへこみがあって、年季を感じさせる
ジュンホ君はその鍋いっぱいに水を張ってコンロにかけた
そんなにいっぱいのお水…。いったい何人分作るつもりだろう…
ちょっと心配だから、近くにいよう
ジュンホ君と僕は丸いスツールに並んで腰をかけコンロの青い炎を見つめていた
静かな時間が過ぎて行く…
初めて会った人なのに、昔からの知り合いといるような居心地の良さ。流れるせせらぎの音に包まれている様だ
そういえば、昔こんな風に、僕の愛する人と一つの長椅子に腰かけてオルガンを弾いた
でもあの時は、春のひだまりにいる様なこんな気持ちではなかった…
あの時の胸のときめき…
嬉しさと恥ずかしさとで胸が躍った
オルガンの音色と一緒に僕の心も躍ったんだ
あの人も清らかな笑顔を僕に見せてくれた
僕はまだ、その人に思いを伝えてはいなかったけど、思いは通じ合っていると信じていたんだ
だけど…あの人は…何も告げずに行ってしまった…
ただ僕は見送る事しかできなかった
僕の思いは…涙と一緒に心の奥に飲み込んだ
切なくて…ほろ苦い、初恋の思い出
なぜだか今日は昔の事ばかり思い出してしまう
長旅で少し参っているのかな…
ドライブ2 オリーさん
ミンが夜の海を見たいというので海岸線を走った
海をみつめるミンの横顔を時々見ていた
ミンの横顔は端正でとても綺麗だ
「ねえ、海岸まで降りてみましょう」
僕はハンドルを切って砂浜まで車を入れた
ミンは車を飛び出すとまっすぐに波打ち際まで走っていった
海は僕の心のように黒々とした闇をたたえていた
車にもたれてミンが波と遊ぶのを見ていた
ミンは器用に波と鬼ごっこをしている
引いていく波を追いかけ、追って来る波をかわして
月明りの下でミンは時々僕を振り返り手招きをする
僕はその度に首を横に振る
昔、調子にのって海に飛び込んでとんでもない目にあった
腰から下全部濡れて後が大変だった
革靴も結局ダメにした
もうやらない
ミンがあんまり手招きするので僕は車を離れた
ちょっとだけ海に近づき乾いた砂浜に腰をおろした
ミンが波を追いかける姿、僕に手招きするしぐさ
全部覚えておこう
僕がいくら呼んでも来ないのでミンがやってきた
「せっかく来たのに何気取ってるんですか」
そう言って僕の側に腰をおろす
「だって濡れたら後が困る。靴をダメにしたくない」
「ちょっとくらい平気。僕ちゃんと防水スプレーかけてますから」
「え…」
「磨いた後にスプレーしとくんです。そうすると長持ちします」
「知らなかった。まるで奥さんだね」
「そう、僕はいい奥さんになりますよ」
そういうと僕の腕にからみついた
僕は鼻の奥がつうんとして返事ができなかった
僕が何も言わないのでミンは僕の顔を覗き込んで言った
「冗談ですよ。軍隊では日課なんです。毎朝チェックされて磨きそこないがあると罰です。
シャツもズボンもきちんとプレスしてないとだめ。おかげで身の回りのことは自然にできます」
「僕は服のひとつも満足にたためない」
「だから僕を側においておきたいんだ」
ミンは笑った
「そんなんじゃない」
僕は海を見るふりをしてミンから顔をそむけた
ふいにミンが僕に抱きついたのではずみで僕はすこんと後ろへ倒れた
ミンが僕にのしかかるような形になった
ミンは上から僕を見据え僕の髪の毛に指を突っ込むとパラパラと弄んだ
僕はこみ上げてくる物をこらえる為に目を閉じた
するとミンは僕のまぶたにそっとキスをした
「僕がどれだけ幸せか計れる機械があればいいのに。そしたら…」
僕はこらえきれずにを体を反転させてミンを下にした
そして何も言わずにミンにキスした
もうしゃべらないでくれないか
「僕がせっかく告白してるのに…」
今度はミンが体を反転させて上になって言った
「それよりキスしよう」
また僕は上になった
今になってミンの気持ちなんか聞きたくない
波の音をバックに僕らは上と下とかわりばんこに入れ替わり
砂浜をゴロゴロしながら何度もキスしあった
砂だらけ
最後は起き上がってお互いの服についた砂を払い落とした
その後二人で月明りの下波打ち際を散歩した
じゃれあって押し合ったり、くっついて歩いたり
ミンが何度か僕を波打ち際に押しやったので結局足元が少し濡れた
「いいでしょ、どうせ僕が手入れするんだから」
ミンはクスクス笑った
僕も笑った
笑いながら僕はミンの笑顔をしっかりと胸に刻んだ
しばらく海で遊んだ後、海辺のレストランで軽い食事をした
ミンはいつもよりよくしゃべりよく笑った
「ねえ、新しい部屋にはどんな家具入れましょうか?」
「え?」
「寮は狭いから二人でマンションを借りようって言ったでしょ」
「あ、ああ」
「僕、その時絶対に欲しいものがあるんです」
「何?」
「まだ秘密。その時になったら一緒に選んで」
「う…ん。でも忙しくなるからしばらく寮でもいいんじゃないかな」
「そうなの?すぐにでも寮は出たいって言ってたのに」
「様子を見て落ち着いたらにしよう」
「ふうん。まあそれでもいいけど」
なんて迂闊な僕
そんな話もしてしまったのだ
僕があまり食べないのでミンは僕の分までペロリと食べた
とりずらい皿の上の野菜を手でつまんで食べるやり方も
ミンがやると下品に見えない
そんな事も覚えておこう
食事を終えて外に出るとミンが言った
「帰りは僕に運転させて」
僕はキーをミンに投げた
ミンはそれを片手で受け取ると慣れた手つきでドアを開けエンジンをかけた
「早く乗って」
ミンの運転は滑らかだった
「この車って気取ってますよね」
「そうかな」
「僕はベンツだって言い張ってるみたい」
「そんなことないだろ」
「座席なんか二つしかなくて排他的」
「スポーツカータイプだもの」
「でも最初にエンジンを十分温めてやるとあっという間にトップスピードに入る」
「加速はいい」
「それを維持したまま楽々とどこまでも走る。ハンドルはなめらかで思ったとおりに動いてくれる
カーブも大胆に切れるし、案外小回りもきく」
「慣れるといいだろ」
「最初に乗るのはちょっと勇気がいるけど、乗りこなしたらすごく乗りやすい」
僕はふっと笑った
「ねえ、誰かさんに似てると思いません?」
ミンはちょっとだけ僕を振り返った
「何、それ」
「わかってるくせに。僕は車の運転得意ですから」
「靴磨きのほかに運転も上手じゃかなわないな」
ミンは前をむいたまま満足そうに微笑んだ
ミンの言ったとおり車は夜の闇の中ハイスピードで楽々と僕らを運んだ
性懲りのない唇 ぴかろんさん
本とは別に、興味あるモノなんてない
部屋でじっとしてたって足が治るわけじゃなし
だから散歩
もしもスヒョクに出会ったら、ちゃんと礼を言いたいし、詫びも入れたい
もしもソクに出会ったら…普通に挨拶して…んで…今度こそホントにサヨナラだ
しかし松葉杖って歩きにくい
慣れないと難しい
俺はえっこらえっこら歩きながら、ふと中庭の方を見た
さっきあった事をいろいろと思い出してみた
テジュン、かっこよかったな…
仕事してるテジュン…素敵だな…
辞めさせていいのかな…本当に…
ガラス戸をあけて中庭に進み、木陰の椅子に腰を下ろして空を見た
腰を下ろしてから気づいたんだけど…椅子…濡れてる…
夕立だったのか!ああっぱんつまで滲みてるわ…
ちぇ…やんなっちまうな…
すうっと深呼吸すると、きつい煙草の香りがした
あれ?人がいたのか…気づかなかった
今まで気配を隠してた?
「こんにちは」
俺は誰かに声をかけられた
「ちわ…」
「ソクだが…」
『ああ、すまない。明日の祭の節分ショーなんだが』
「出なきゃいけないのか?」
『当たり前だ!デジャイナー先生が張り切って衣装を作ったらしいぞ』
「なにっ?!」
『都合10着ほど用意してあるからって、ファッションショーの予告も兼ねてとの仰せだ
だから…その衣装合わせと打ち合わせに来て欲しいんだが…』
「…遠慮したい気分だな…」
『そう言うなよ。祭だぞ。楽しもう。…それと…イナが…すまなかった』
「…」
『あと、スヒョク君が』
『総支配人、デジャイナー先生がお見えです』
『わかった…ああ、すまない、至急こちらに来てくれないか?スヒョク君の事はそのときに。じゃ』
「おいっ!テジュン!…スヒョクの事?…一体何なんだ…」
僕は気の進まないショーの打ち合わせに出向くことにした…
挨拶をした男がいきなり俺の口に吸い付いた
だけど俺は驚かなかった
そいつの顔を見たときにこうなる事を予感したから
なるほど…ミンチョルが蕩けるのも解る
人の弱点を探し出すのが上手いな
巧妙にそこを突いてくる
よく解るな…俺の好きなキスの仕方…
スマートな身のこなし、涼やかな微笑み
ギョンビンにそっくりのこの男
ミンチョル、上手いよこいつ、確かに上手い
男は唇を離すと不思議そうに俺を見た
俺は物足りなかったので、男の唇を捕らえに行った
すると男は『やっぱり』とでも言うように笑って俺の唇をもう一度吸った
煙草の味がする
苦い
さっきより深くて、もっと攻撃的なキス
俺の弱みだけでなく、知らなかった部分も探し出す舌
俺は奴に身を任せて、次にどんな技を仕掛けてくるのか待った
また唇を離す男
「何?」
「応えてくれないの?」
「ん?」
「他の連中は夢中になって応えてくれたのに、君は僕の技を味わってるだけ?」
「…これだけなのか?」
「…え?」
「技ってこれだけ?」
「…」
涼やかな微笑みが一瞬消えた
だがすぐにまた微笑んで唇を重ね、冷たい炎を燃やした瞳で俺を見つめる
唇に触れたまま俺に言った言葉
「ふぅん…面白いね…君は連中とは少し違うのかな?」
そう言って俺の唇の上に自分の唇を滑らせる
「…そう…それ…好きなんだ…」
うっとりして呟くとまた動きを止めて俺を見つめる
「君…よくわからないな…」
不思議そうに呟いた
奴は俺を引き離し、上から下までじろじろと見てため息をついた
「不感症?」
失礼な!
「いや、アンタ上手だよ…でも…俺は痺れないな…なんでだろ…」
ちょっと考えた
「んと…わかった!アンタの顔、俺好みじゃねぇもん」
男は目をまん丸にして吹き出した
…この男に『吹き出す』という行為は似合わねぇ…
「アンタ、ミンの兄貴だろ?兄弟揃ってスカしてやがんな…」
男はまたまた笑い出した
「あんだよ」
「君って…君ってすっごい正直…ははは…」
「悪かったな」
男は煙草を取り出して、時々吹き出しながらそれに火をつけ、一服した
きっつい匂いだ
そして俺の方に煙草を差し出した
「これって…間接キッス?」
そう言うと、プルプルと手を震わせてまた笑っている
あれ?弟の話ではもっと冷徹な男じゃなかったっけ?
俺は差し出された煙草を吸おうと口を寄せた
ミンの兄は、すっと煙草を動かした
「…意地の悪いとこは弟そっくりだな!」
「くっはっはっは…」
「でも俺、アンタの方が好きかも…」
「え?」
「俺、アンタの弟、だいっ嫌い!俺にすんげぇ意地悪だもん!」
「…ぷ…くははははっはっはっはっ…気に入った!君、おかしいよ…初めてだよ、弟と僕を比べて僕の方がいいなんていうヤツ…」
「…そう?あいつ中々厭味なヤツだぜ」
「ククク…」
「…あんたって…弟のモン欲しがるんだってな?」
「…」
「なんで?」
「…フ…苛めたいから…なぁんてね」
「…あれか?『好きな子ほど苛めたくなる』ってヤツか?…あんた、弟の事、好きなの?」
何の気なしにそう言ってみた
まさかね
ミンの兄は顔色を変えずに言った
「そうかもね。可愛さ余って憎さ百倍…なんて言うものね…でも…違うよ」
案外ホントだったりして…
「でも、アンタさ、ほんと上手だよ、キス」
「じゃあもう一回する?」
「いいよ」
「ちょっと聞くけど、君、彼氏いるの?」
「いるよ。なんで?」
「ふっ…彼氏がいるのに…僕とキスするの?」
「うん。俺、首から上と下と別人格なんだ」
「…はぁ?」
「よく『下半身は別人格』とかいうじゃん。俺はキスが好きなの。だから首から上が別人格」
ミンの兄の目がまん丸になり、口がぽっかりと空いている
しばらくして、ミンの兄は腹を抱えて笑い出した
可愛い顔してる…好みじゃないけど
大笑いしてるミンの兄貴の腕を引き寄せ、唇を重ねた
いて…また足ぶつけたかな…
ミンの兄の舌が攻めてくる
唇が巧みに動く
今度はそれに応える
けど
痺れはしない…
突然俺たちは引き裂かれた
そして俺の頬に平手が飛んできた
あずまや 2 足バンさん
スヒョクさんは僕を押さえつけたまま動かない
僕は外の小さな明かりの中で、見下ろすその目を真っすぐ見つめた
押さえているその手も、小さく噛んでいる唇も小刻みに震えている
その瞳にはあきらかに迷いの色が見える
僕は決して視線を外さなかった
スヒョクさんはそのまま顔をしかめて目を閉じた
小さな涙のすじがつたった
そうだった。さっきスヒョクさんは僕の前で声をあげて泣いていたんだ…
スヒョクさんの腕の力が抜け、頭が僕の肩にうずめられた
声を殺して泣いている
「ごめん…ドンジュン…ごめん…」
僕はそのまま腕を抜き、スヒョクさんを抱きしめた
あずまやの小さな暗い天井を見つめるとスヒョクさんの心が流れてくる
渦巻くどす黒い血の海の中
スヒョクさんも今の僕のように背中を冷たい地につけ暗い空を見ている
蛍のように小さないく筋もの閃光
なにも聞こえない。感じない
宇宙にひとりきりになってしまった…凄まじい孤独
ソクさんのあの地の底のような哀しみを思い出す
自分の癒しかたが見つけられずにいる…
似ているんだ…ふたりは…
スヒョクさんは僕の中で子供のように泣いていた
僕は抱きしめた手に力を入れた
スヒョンが言ってたっけ…
ひとの心を吸っているといたたまれなくなる時があるって…
こんなスヒョクさんになにもしてあげられない自分を思い知らされる…
「ごめん…」
「もう謝らないでよ…」
少し落ち着いたスヒョクさんは鼻をすすりくぐもった声で言った
「本当はおまえみたいに笑ってみたいんだ…」
僕は胸が痛くなった
長い間ひとりで飢えをしのいできたスヒョクさんを想った
僕は背中にまわした腕の力をゆっくり解いた
「車のライトってね、こまめに消すと長持ちすると思う?」
「え?」
スヒョクさんはいきなりの質問に頭を起こして僕の目を見た
「フィラメントにストレスを与えるから逆に寿命が縮まるの」
「…」
「だから必要ならずっとつけっぱなしがいいの」
「…」
「だからね…辛い気持も一度にちゃんと出し切った方がいいと思うんだ」
きょとんとして聞いていたスヒョクさんは下を向いて小さく吹いた
「なんで笑うのさ」
「ごめん…すごい理屈だから…」
スヒョクさんは僕から降りると僕の肩をささえて身体を起こしてくれた
僕たちは床に座りしばらく黙っていた
「膝…痛くない?」
「痛いよ…乱暴なんだもん」
「ごめん」
「おせっかいついでにもうひとつ言っていい?」
「ん?」
「スヒョクさんはとても魅力的だよ」
スヒョクさんは目を大きく見開いてしばらく閉じてまた開いた
その瞳にさっきまでの緊張の影は感じられなかった
そして僕の頬に触れると立ち上がり、内ポケットから携帯を取り出し僕に渡す
「ジャケットは借りて行くよ、ひまわりくん」
「僕だって悩みくらいあるんだからねっ!」
スヒョクさんはちょっと微笑んで濡れたシャツを拾いあずまやを出て行った
僕はほっとしたが疲れてもいた
そのまま寝転ぶとスヒョクさんの言葉が思い出される
陽の下に出たくない人間だっているんだ
無理に人を照らそうとするな
…たしかにそうだと思った…久々に落ち込んで涙が出た…
手の中の携帯が鳴った
スヒョンからだ
『どこ?』
「えっと…ちょっと散歩中」
「うそつけ」
驚いて飛び起きると、手すりの向こうにスヒョンが寄りかかっていた
「なにひとりで感傷にひたってるんだ」
「ずっといたの?」
「車のライトのわけわかんない話のとこから」
「ふんっ!ヤなやつ!」
むくれてるとスヒョンが横にきて座り僕を覗き込む
「おまえ…言いたいことあるでしょ」
「…」
「ちゃんと答えるからちゃんと言ってみな」
僕はまっすぐにスヒョンを見据えた
「ミンチョルさんのこと気になる?まだ好き?」
「好きだよ」
「えっ?」
「一度は本気だったんだ…そんなに簡単に忘れられるものじゃない」
「スヒョ…」
「でもね、おまえへの想いとは全く違うんだよ」
「どう…違うのさ」
「ミンチョルとは明日から会えなくなっても耐えられる。でもおまえと会えなくなったら僕はきっと頭がどうかなる」
「スヒョン…」
スヒョンはそのまま僕をすごい力で抱きしめた
「だからおまえはどこにも行かないで…」
「息ができないよ…」
スヒョンの唇が僕に近づいた
僕はそのスヒョンの口元に慌てて手を当てた
「ダメ。罰としてしばらくキス禁止なんでしょ」
スヒョンは僕の手を乱暴に払うと強引に唇を押しつけてきた
なぜか哀しそうな目のスヒョンの心は読めなかった
それがミンチョルさんとギョンビンの2人へと通じる想いだってわかったのは
もっと後のことだった
☆ピョル(星) 妄想省家政婦mayoさん
「これから仕事するの?腕も痛いだろう?」
「ぅん..今日はもう休むわ..」
「じゃその前にちょっと外に出ない?」
「ふっ..ぅん..」
テソンが何故誘ったのか、何処へ行くのかはわかっていた
夜更けの廊下は誰もいない
テソンの好きな毛布くるみをしていつものベンチに座った
空を見上げると僕の目にひときわ明るく入り込んでくる☆を見た
闇夜の元カレの☆だ...彼☆の声が僕#に届いて来た..
☆あんまりいちゃいちゃ見せつけるな..
#はは..いいじゃないか...
☆彼女はじゃじゃ馬だ。覚悟するんだな..
#全部いいんじゃないか..
☆言ってくれるな..
#彼女を僕に送ってくれたこと..感謝してる..
☆あんたなら大丈夫だと思っただけさ..頼んだぞ..
#まかせてくれ..
隣のテソンは明るく光る☆を見ている。テソンがふっ..と笑った後
空を見上げた。彼☆が私*にウィンクをした
☆オレ..
*何よ...最近ずっと知らんぷりして..
☆オレの出る幕がなかっただけさ..
*そんな..
☆オレにばっかり気をとられてたら大事なもの見失うからな
*わかった..
☆隣のそいつになら..幸せになれる..
*ごめん..でも忘れないよ..
☆たまに思い出してくれればいいさ..
*ぅん..またウィンクしてくれる?
☆ぅ〜ん..そいつと喧嘩でもしたらな..
*わかった..
「mayoシ.....話できた?何話したの?」
「ぅん?..内緒..」
そう言って笑うと、テソンは髪に指を差し入れ唇を捕らえに来た
いつものように優しく..いつもより長く続いた..
☆ったく...見せつけやがって..まよ..本気出せ...
*ぁぅ..徐々に..
☆はまたきらりん@と瞬いた..
家庭教師5 れいんさん
甘くせつない記憶に浸っていた僕にジュンホ君の優しげな声が聞こえた
「すは…せんせい。そのうわぎ、とてもよくにあってますね」
ジュンホ君は僕の少しくたびれたジャケットを見てにっこり笑って言った
「ありがとう。少し古いデザインなんだけど・・僕の父の形見なんだ」
「すはせんせいは、がっこうでこどもたちにべんきょうをおしえているのですか」
「うん。田舎の小さな学校でね」
「すごいですね。だれかにべんきょうをおしえられるなんて」
「そうかな。僕はただ子供達が大好きなだけなんだ」
「そうですか。ぼくもこどもがだいすきです
ぼくのかぞくも、ぼくがせかいせんしゅけんでちゃんぴょんになったとき、すごくよろこんでくれました
みんながぼくのからだのことをしんぱいするから、ほかのしごとをやってみたけど、どれもうまくできませんでした
ぼくはぼくしんぐのことしかしらないんです。でもそんなぼくのことを、こどもたちはじまんにおもってくれています
こんなぼくにもまっていてくれてるかぞくがいます」
ジュンホ君は家族の話になると嬉しそうに目を輝かせて勢いよく話した
家族…。そう、僕にも待っていてくれる家族がいる…
緩やかな時間の経過の中で、僕と彼女は静かに愛を育んだ。彼女の事は…好きだ…
一途に僕の事を思い続けてくれた彼女…
彼女の成長を見続けながら、彼女のひたむきさを愛しいと思い、彼女の真摯な愛を受け止めた…
そんな愛の形もあるだろうと、そう僕は思った
今まで僕は、自分を見失う程誰かを愛した事はない。その誰かに狂おしい程愛された事もない
僕は、僕の生きてきた中で、身を焦がす程の愛を誰かと交わした事はあったのだろうか…
そんな事をとりとめもなく考えていると、僕の思考を遮るように、煮えたぎるお湯の音がしてきた
とっさに僕は立ち上がり、コンロのそばまで駆け寄った。ジュンホ君も駆け寄る
二人同時に鍋の取っ手を掴んだ
「あっ!」
お互いの指と指がかすかに触れ合った。僕ははじかれたように、すぐにその手を引っ込めた
「あ!あぶないです!」
ジュンホ君には不似合いの大きな声と共に、鍛え抜かれたその体に僕の体は引き寄せられた
その子供の様な屈託のない笑顔とはかけ離れた無駄のない引き締まった体…
急に胸の奥がじんとした
僕達はお互いがお互いにないものを持っている
僕が持っていない大切な何かを彼は持っている…そんな気がした
「だいじょうぶですか?やけどしませんでしたか?」
せっかく湧いたたっぷりのお湯…
こぼれてしまったね
君が、初めて出会った僕の為に、心も体も疲れた僕の為に、一生懸命作ってくれようとしたのに…
僕は自分の不器用さに呆れ、まっすぐな瞳で心配そうに見つめるジュンホ君にすまない気持ちでぽつりと言った
「また…作り直しだね…」
彼と僕の目と目が合う。彼の瞳に僕が映る…。僕の瞳にも彼が映っているのだろうか
僕らは顔を見合わせて、くすりと微笑み合った
また心に温かいものが流れ込む
彼とほんの少しの時を過ごしただけなのに、僕は慣れないこの場所でもなんとかやって行けそうな気がした
深い森の中で迷子になった気分の僕に優しい光を照らしてくれた彼がいるから…
…僕の新しい教え子…。そして僕がここに来て最初に出会った…僕の大切な一番の友達…
性懲りのない唇 2 ぴかろん
ガタガタァン
俺は椅子から吹っ飛んだ
「ってぇ…」
「だ…大丈夫?」
ミンの兄が俺の肩を起こす
「イナに触るな!」
「君、イナって言うの?」
「イナから離れろ!」
「君の彼氏かい?」
「ちげーよ!」
平手を食らわせた男が俺達に向かってくる
ミンの兄が俺の前で両手を広げて遮る
「あんたには関係ない。僕はコイツに用がある」
「彼氏じゃないんだろ?なら僕達のアバンチュールを邪魔しないでくれる?」
「イナ!キム・イナ!こっちを向け!」
「っるせーな、アンタにはもう関係ない事だろ?」
「こんな馬鹿だとは思わなかった。何故テジュンを傷つけるような事をする!」
「傷つけてなんかいねぇよ」
「僕は今からテジュンに会う。お前も一緒に来い!自分の口から報告しろ!」
「…イヤだ…」
「…なら僕から報告しておく…」
「余計な事すんなよ、アンタはスヒョクの事でも考えてりゃいいだろ?!」
俺をぶったのはソクだった
ミンの兄貴は俺とソクとを交互に観察していた
「イナ、キム・イナ!来い!」
「…」
「嫌がってるんだ。どこへ連れて行くつもりなのか知らないけど、貴方、彼氏でもなんでもないなら
僕達の事、放っておいてくれる?僕達は大人の関係なんだからさ…」
「…あんた…イナと遊ぶつもりか?」
「…遊び?フッ…僕はいつも本気だけどね…フフ」
「…やめた方がいい…傷つくから…」
「傷つけないように付き合うよ。僕は気に入ったものは大事にする方だから」
「馬鹿…傷つくのはあんたの方だ。気をつけろ。コイツは…」
どういう意味だよ
アンタが傷ついたって言いたいのか?
「…へぇ…僕が彼に傷つけられるって言うの?…フッ…彼はそんなに凄い男なの?」
「…いいからもうやめておけ…あんたが辛いだけだぞ」
ミンの兄貴はソクの言葉に触発されたのか、俺に近づくといきなり口付けした
ソクの目が突き刺さる
俺はソクの顔を見つめながらミンの兄貴のキスを受けた
俺はビリビリと感じ始めていた
ソクが苦い顔をして俺達に背を向ける
途端に痺れは治まる…
「ふぅん…あれが君好みの顔…」
ミンの兄貴の言葉など耳に入らない
ガラス戸の方に向かうソクの後を、松葉杖を拾って必死で追いかけた
戸の手前で追いつき、俺はソクの袖を引いた
ソクは立ち止まり大きなため息をついた
どきどきする
まだ俺はこの男にどきどきする
俺は松葉杖を離して奴の前に回り、ソクに体を預けた
驚いて抱きとめるソクの唇を掬い取る
ああ…
これだ…
応えてくれなくても
俺の好きな唇は
この唇なんだ…
ミンの兄貴はきっとこの光景を見ているのだろう
けれどその視線は気にもならない…
ソクは俺の肩をぐいっと押し、辛そうな顔をした
「キム・イナ…僕は今、君を受け止める余裕がない…」
「…スヒョクの事で精一杯ってか」
「…そうだ…」
だから…今度こそ…普通に話をして…そして…サヨナラだと…俺はそう思ってたんじゃないか!
なんでいつもアンタが通りかかるんだよ…
なんでテジュンじゃなくてアンタなんだよ…
アンタのせいじゃない…全部俺が馬鹿だからだ…
解ってるよ…解ってるさ…
俺の目から溢れた涙を、ソクは拭ってもくれない
当たり前だ
「テジュンのところへ行く。ついて来い」
アンタの心はスヒョクに向かってるんだな…
「悪いが僕は…大事な物を見出せそうな気がしていてな…お前の浮気に付き合う気にはなれない…」
「アンタが…アンタが全部悪いんだ!アンタが俺に…」
俺は、最低だ
ソクを詰る理由なんてどこにもないのに…
情けなくて涙が出る
泣きながら、ソクの後について行った…
ふぅん…キム・イナか…
気の多い男だ…
しかも…今までにない新しいタイプだ…
恋人でもない男とキスをして感じていた…
この僕のキスには、落ちなかったというのに…
興味深いな…
弟のものじゃないのにこんなに魅かれるなんて…
…
どうかしている…
久々のつぶやき オリーさん
最近兄さんを見かけない
何度か会いに部屋に行ったのに
あの生意気な若造が会えないとか言って門前払いだ
失礼な奴
せっかく離婚届をとりよせたからサインさせようと思ってたのに
ヨンスさんも最近僕の電話に出ない
ミンジに探りを入れたら、あのくだらないドラマをまた見ているらしい
しかも9話を集中的に見てるようだ
あんな貧相なお宿にお泊りの回が何でいいのだろう
そうか!
僕がとっても心配してウロウロしている姿を見ているに違いない
だったらヨンスさんも僕の愛の深さを再確認してくれるだろう
よし!
何とかここにいる間に兄さんにサインさせなくては
それにしてもリハは疲れた
兄さんの代理のあのPD、僕が音をはずしてるといわんばかりのあの態度
まったく何をカン違いしているのだろう
あれは音響が悪いのだ
僕の歌に間違いはない
それが証拠に僕より歌が下手なサンヒョク君はOKなんだから
まったくどうかしてるよ
それにしてもやっと祭前日にこぎつけたのに、この一日の長いこと
絶対24時間以上は経っているはずだ
でも時計は今日のまま
このホテルそのものがおかしいんだ、きっと
やっと足かせが取れた
あのドラマが終わったのだ
これで僕は自由だ
僕本来の魅力を発揮できる
でもここでは御曹司としてきているから仕方がない
何かできることを考えていたら、何だ、僕はピアノが弾けるんだ
御曹司の三種の神器
留学、体力、ピアノだ
ふふっ、海辺からの二元中継を申し込んだ
なのに、何だ!あのミンチョルさんの代理のPDは
面倒くさいと言わんばかりのあの態度
二元中継する意味がない、とまで言い切りやがって
生意気この上ない
費用は全部ウチで持つんだからいいじゃないか
ね、皆さんもそう思うでしょ
チャン理事に手配を頼んで、ずぇったいやってやる!
それにしてもオールインのあの小僧、ちょっと生意気だ
何かにつけて僕にたてついてくる
御曹司だと言っても、あそことウチじゃ規模が違うんだ
ぶっちゃけあっちは成り上がりだ
正統派の僕とは育ちが違う
なのに嫌みったらしく真っ白い歯をキラキラさせやがって
いつか一度ギャフンと言わせないとな
集中放送のおかげで僕の人気はうなぎのぼりだ
さらに地上波でも放送が始まるからな
これでやっとイナとの勝負がつく
僕が留学してる時、あいつは刑務所だ
もうここで勝負は決まったも同然だろう、ふわぁははっ!
それにしても最近イナはふらふらしすぎだ
この間は撮影だとか言って、総支配人とえらく恥ずかしい事をしてた
まったく何を考えているのだろう
チニさんとくっついたと思ったら総支配人とあんな事して
わけがわからない
そのチニさんは何だかサルみたいなBHCの奴とイチャイチャしてる
チニさんの趣味はわからない
サル系が好みだったとは
そう言えばイナもちょっとサル系だな
爽やか系の僕の魅力に気づかないなんて、ちょっと信じられない
そういえば、最近ミンチョル君も見かけないな
何やら顔が腫れてるとかBHCの連中が騒いでいたが
普段から顔はでかかったじゃないか
小顔の僕と並びたがらないのもうなずける
まあ、人のことはいいとして、さて、
王子さまの衣裳は僕にピッタリ
後は本番のステージで皆の賞賛を浴びるだけだ
ああ、楽しみだ
あ、あのヘヴンのオバカ御曹司、ピアノの二元中継とか騒いでるぞ
海岸にピアノなんて何考えてるんだ
だからオバカは困る
つける薬はない!ふわぁははっ!
監督ジホの部屋1 妄想省家政婦mayoさん
「このシリーズはテーマ♪はこれね。エレキの音で始まるこの曲..」
「わかったじぃょぉぅー」
♪The Crying Machine♪♪(Happy Togetherテーマ曲)
「んっと…シーン2の『俺』にぎにぎ..この女の手、もうちょっとズームアップして」
「はい。わかったじぃょぉー」
「ここはシーン4−6、前のめりの姿勢に繋がる重要なところだからさ」
「了解したじぃょぉー」
「やぁーこのテプン君?いいねぇ.動きが実にいい!」
「監督と同じ顔だじぉー」
「この前のめりのひょこひょこ走り...最高だねっ」
「BGMはどうするじぃょぉー」
「ぅ〜〜ん...ここの♪は..これだな。テプン君が走る時のいつものBGMだ」
♪ハンボンド イッチ アナソ オルマナ ウレン シガヌン ノル キダリョヌンデ~~♪
(サビ) キオッケジョ ノルル ウィヘソン ムオット トリョチ アナ~~~♪♪(Happy Together:憶えていてくれ)
「ちょっと軽そうなこのシチュン君?..女チェリムに投げ飛ばされる。すごいね彼女は」
「また気に入ったじょぉー?また罪を犯すつもりぉぉー?」
「何よそれ。エキストラ!」
「3年浮気した女いたじぃょぉーまたするつもりじぃぉー?」
「あ〜ぁ、<青い鳥>撮影から付き合った…あの彼女ね…」
「湖畔のモーテル304号室で ”やってきた” って言ったじぃょぉー」
「そうそう、あの時は..3時間に2回?...あれっ?...2時間に3回だったかな...忘れた」
「アィゥ…アィゥ…」
「エキストラ!くだらないこと言ってないでっ!」
「俺はイム・ウォニだじぃょぉー」
「その訛り、直せないのか?耳障りだっ」
「無理だじょぉーそんな事言うと..またライターで顔燃やすじぃょぉぉ〜??」
「それはもう勘弁してくれ。僕の素敵な顔が全編お前のせいでほっぺた赤いままだった」
「うひひ…俺みたいに顔に黒い線書いた方がいいじぃょぉぉー」
「もっと美しくないだろうがっ!」
「じゃぁ..またぱ○つ丸出しで字を書くじぃょぉー??」
「ぁぅ...もっと嫌だ。もう二度としたくない」
「屁もこいた...じぃょぉー??ブリッ#ブリブリ…ブリっ#…うひひ」
「いい加減にしろっ!」
「わかったじぃょぉぉ…」
「シーン4−25、シチュンがテプンを見下ろしてため息..ん〜切なさが出てる」
「ここはどうするじぃょぉー?」
「んー...ここの♪は..これだな」
♪クレ ハジマン イミ ネ ギョッテ ニ マウル ホッラハン サラミ イッチャナ~~ニガオレットナン ギダリンサラン~~♪
(Happy Together:君のための選択)
「それとっ...シーン6の最後ね...シチュンがプロポーズをしに行くテプンの後ろ姿を見送るシーン...」
「やっぱここはこれしかないね」
♪tears
♪アニャナンケンチャナ ナンチョンマルチョア ~~(いや..僕は大丈夫だよ..本当に大丈夫だ..)
プディ ナルル テシネ ノマヌン ヘンボケヤヘ~~~(どうか僕の代わりに君にだけは幸せになって欲しい)
「泣けるじぃょぉぉー(;_;)」
「お前でも泣くのか?」
「監督みたいに残酷じゃないじぃょぉぉー?」
「何だ。どういう意味?」
「奥さんのこと石っころっていったじぃょぉぉー?」
「ふっ…本当の事だ」
「ひぃぃ〜ん」
かくして…
この女たらしの監督のところへ編集テープを取りに行かなくてならない闇夜であった…
果たしてテソンがそれを許すであろうか?
ジュンホの手紙2 れいんさん
あいするつまへ
そにょんさん、げんきですか?
こどもたちや、おとうさんおかあさん、さんみんせんせいもげんきですか?
ぼくはげんきです。はやくみんなにあいたいです
ちーふのみんちょるさんが、ぼくにかていきょうしをつけてくれました
すはせんせいというひとです。とてもいいひとです。ぼくにかんじをおしえてくれます
このまえてがみをかいてから、もうなんにちもたっているようなきがするけど、まだまつりははじまりません
やっぱりぼくは、きょうが、なんがつなんにちかもわかりません
きょうこそだれかにきくつもりです
ちーふのみんちょるさんをみかけたのできこうとおもったら
ぎょんびんさんとくるまにのってどこかへでかけてしまったのできけませんでした
みんちょるさんのくるま、かっこいいです
でも、みんちょるさんには、すこしきゅうくつそうにみえました
てぷんさんは、せのたかい、すらっとした、よこからみるとうすっぺらいおんなのひとをおいかけてました
まえかがみの、へんなしせいではしっていたのできけませんでした
てじんさんは、なにかいつもいろいろなものをつくているので、いそがしそうできけませんでした
どうしつのどんじゅんさんは、ぼくにかんじで、「はいしゃ」ってかきのこして、またすぐにいなくなりました
うしくさんといぬせんせいは、いつもふたりでなやんでるようなので、きょうはなんがつなんにちですか、なんてきけませんでした
てそんさんは、たまにろうかでみかけると、くろづくめのおんなのひとらしきひとと、ふたりでもうふにくるまってあるいています
…ちょっとききにくいです
ほてるのそうしはいにんがいました
あのひとは、しっかりしているみたいだから、きいてみようとおもいました
そしたら、30ぷん、30ぷんっていいながら、いなさんのへやにいそいではいって、そして10ぷんででてきました
また、ききそびれてしましました
いまさっき、みんちょるさんと、くるまででかけたはずのぎょんびんさんをみかけました
こーとをきて、またたばこをふかしていました
みんちょるさんに、しゅんかんいどうをおしえてもらったのでしょうか
いなさんは、こんどはまつばづえをついて、またふらふらあるきまわって
「みんあにそく…みんあにそく」っておきょうをぶつぶついっていました
ちょっとようすがおかしいので、やっぱり、いなさんにはいちばんきけません…
#それぞれの渦1 妄想省家政婦mayoさん
====
珍しく早起きした闇夜とホテルにあるカフェテラスに行った
テラスは早い時間、客はほとんど見あたらず静かだ
澄んだ空気とひんやりとした風がぼんやりとした頭をすっきりさせてくれる
隣でテーブルに頬づえをついている闇夜が僕に振り返える...
「たまに早起きするのもいいね(*^_^*)」
ぁぅ(>_<) 朝から鼻血が出ちゃうよ…
僕が横からデコ〜みみ〜から◎を狙っていたときだった
「よぉ〜でれでれぇ〜!!邪魔するぞっ」
「あっれぇ〜?昨日は別宅にお泊まりじゃなかったのぉ?」
「せっかく夜は遠慮したのに...何やってんだぁ?テソン…」
「「…ぁぅ@_@ @_@オモ…」」
朝の散歩のコモテスだった…
2人は僕らのテーブルに座り4人で朝食を摂った
####
特捜隊ソクの部下メイはイライラしていた
ったくぅ〜〜このイベントは何なのよぉ...
すぐ始まるのかと思ったらずぅーっとリハリハばっか
あっちこっちでハグハグ、むにゅむにゅ、ちゅうちゅう…
どこもかしこもカップルは男&男・男&男・男&男…薔薇..薔薇..薔薇
ホスト祭りだからしょうがないけどさぁ…
大体ソク隊長からして警備に来た途端にサンプル集めとかいって
あのBHC?皆同じ顔のホスト連中…
片っ端からちゅうちゅう、むんにゅむんにゅ、するもんだから…
悪者扱いされて挙げ句に殴られたかと思いきや
天使に癒やされちゃって...
挙句にちょっと精悍な男に本気で惚れたみたい...
ソク隊長がいるからあたしも特捜隊で頑張ってたのにさっ
もぉ〜ついて行けないっ!
ちょっとソクに似たホテルの総支配人?あの人いいわよね…
でもさ、どこでもちゅうなのよ。コイツも
駄目だわ。ソク顔はもういいっ!
あたしってこのとおり下ネタOKのラブコメ系だからさ
話がおもしろい男じゃないと嫌なのよ
いない?そういう男…
++++
シチュンは面白くなかった..時間を持て余していた…
あ〜ぁ〜つまんねぇ〜
最近はカップルばっか出来ちまって
俺とメシ食う奴もいねぇよ!
テプンはチェリムに返事もらったのかなぁ…
あいつ報告もしねぇし…ま、いいけど。上手くいったならいいさ
お?誰よ、あれ…おんないるじゃん…
うわ…結構可愛いじゃんか…スタイルも完璧なS字だな…
どれ、誘ってメシでも食うかな…俺の誘いなら大丈夫さ
シチュンはメイの姿を目で追い、後ろをつけた
====
「テソン、闇夜の.怪我はどうだ?」
「ん...大丈夫。...ちぇみは?」
「俺は大丈夫だ..闇夜は落ち着いたか?」
「ぅん…ありがとう、いろいろ…」
「いや…」
4人で朝食の時間をたっぷり摂ってまどろんでいると
カフェテラスにだんだんと人の気配がしてきたので
僕達は部屋へ戻ることにした
####
昨日も徹夜で警備。お腹空いたぁ〜誰かおごってくんないかなぁ…
知った顔いないしなぁ…ってうろうろしてたらさ!
いたじゃん!!..知った顔…それもこっちに歩いてくるじゃないよ
テソンよ、テソン!!..あたしを持ち上げて突き落とした、奴よ!
ん?テソンと手繋いでる女、誰?彼女?うそでしょぉ〜〜
彼女も毎日持ち上げられてるのかしら?
あたしより重そうだけど?彼女…
えっ?何よ…ゴ・ゴ・ゴリアトも一緒?
オモ…テソンの助手だった..あのおどおど..びくびく..の板前もいるじゃないのぉ〜
知った顔が揃い踏みじゃない…奢り決定!
メイはちぇみテス&てそまよの4人に近づいて行った
++++
ん?何だ?何処見てんだ?あの女…
お?テソンを知ってるんのか?
えぇ〜い…様子見なくちゃ…
====
見覚えのある女が近づいてきた…
僕とテスとちぇみを交互に見ながら…
ぁ...あれは…
ソクとテジュン ぴかろん
スタッフルームのドアがノックされた
やっとソクが来たようだ
アンドレセンセイのお相手は、かなり気を遣う
持ち込まれた衣装は豪華絢爛で、これをソクが着るのかと思うとかなり笑える…
僕は、にやつく顔を一生懸命真面目に整えてドアを開けた
?
なんでイナ?
「どうしたの…そんなに泣いて…足が痛いの?」
「すまない、テジュン」
後ろにソクが立っていた
すまないとは?
…まさかまた?
僕は泣いているイナをジロリと睨んだ
イナは俯いている
「また悪さか…」
「すまない…悪さしてるとこをぶん殴って拾ってきた」
「?!」
悪さしてるところって?
僕はまじまじとイナを見つめた
しゃくりあげて泣くばかりで何も言わないイナ
ソクは決まり悪そうにしている
なんだよ
どういうことだよ…
僕は気になって仕方がなかったのだがアンドレ先生がモデルのソクをいまかいまかと待ちわびているので
とにかくそちらを片付けなくてはならない
「イナ…僕の部屋で待ってて。どこへも行くな。わかった?」
泣きじゃくるイナは、コクッと頷いて松葉杖をついて歩き出した
「ソク、入って」
「いいのか」
「何が?」
「一人にしていいのか?行ってやれ。あいつは不安定すぎる。見てられない」
「いいんだ」
「テジュン!」
「いいんだ!…入ってくれ」
「…テジュン…」
「…わかってる…いいんだ…」
イナの浮き沈みの激しさは今に始まった事じゃない
僕がイナについて行くと言った後も、その浮き沈みはまた違う意味で激しくなっている
イナが僕の事を考えているのもわかっている
それが原因なのかどうかはわからないけれど、あいつはフラフラとキスを求めて彷徨っている
僕は心配そうな顔をしているソクを促してアンドレ先生の前に座らせた
「あ〜らあん、あーたたちしょっくりしゃんねぇん。あっしょぉだっアタクチいーこと考えちゃったわぁん
二人イッチョにセツブンショーに出ちゃいなちゃいよぉっしょれがいいわぁっ。双子ちゃんみたいでしゅてきっ!」
「あ…センセイ、僕は他の進行状況など確認するという仕事がありますので…申し訳ございませんが…」
「ありゃぁんしょぉなにょおん?じゃんねんだわっ!じゃ、ショクちゃん?このお衣装着てみしぇてちょーだいっ」
ソクはその豪華な衣装を見て、顔を引きつらせながらついたての向こうに消えた
そして僕の方を覗き、手招きをした
「なんだ」
「ちょっと、これはないんじゃないか」
「なんで。いいじゃん。赤紫のラメのスーツなんて、マツケンさんに匹敵するぐらい素敵だぜ。ほぉ〜ネクタイもお揃いじゃないか
へぇ〜これは…ピーターパンか?お前、このラメ入りのタイツ…履くんだな?それと…うわぁぁっ、セクシーじゃないか!
これ、確かセンセイのファッションショーでそんすんほん君が着ていた黒のシースルーのシャツだ…びーちくがスケスケの…へぇぇぇせ〜くし〜」
「ふざけるな!こんなもの着れるか!」
「いや、似合うぞぉ…」
「…まあ…いい…僕はセンセイと二人で打ち合わせするから、お前、イナのとこに行ってやれ」
「…ソク…」
「自分から言うかも知れないが…中庭でミン・ギョンビンの兄って奴と…」
「はぁっ…あの馬鹿…」
「それで…すまない…殴ってしまった」
「ああ…」
「それで…あの…」
「?」
「イナが仕掛けてきたんだがその…また…」
「またキスしたのぉっ?!」
「すまない…あの…ただ受けただけだから…反応はしてないから…」
「…受けただけで罪だ、お前の場合…」
「…飛びついてきたんだ…」
「しょうがない奴だな…でもお前、何で応えてやんなかったの?…やっぱりスヒョク君の事が気になってるのか?」
「…」
「…ふ…じゃあ僕も教えてやる…」
僕はスヒョク君がイナのふりをして僕に言ったことを教えてやった
「…なん…だって?」
「お前の事が気になってるらしい。だけど、どう近づいていいのか解んないんだろうな…。なんだかお前と似ているね」
「…そう…思うか?」
「うん…お前達は…難しい問題を抱えている…それだけしか僕にはわからないけど…でも…」
「…」
「きっとお互いに必要な人間なんだと思う」
「…そう思うか?本当に?」
「ああ」
「…。ああ、ここはいいから、早くイナのところへ行ってやって」
「…ソク…」
僕はソクの言葉に甘えて、少しだけ馬鹿の様子を見に行く事にした
見に行ったってどうにもならないかもしれないけれど…
鎖 ぴかろん
ドアを開けて部屋に入ると、イナは僕のベッドの上で枕を抱いて泣いている
「後悔するならなんで悪さするの」
「後悔なんてしてねぇもん!」
減らず口
「何したの」
「…キス…」
「誰と」
「…ソク…」
「ソクだけじゃないだろ?」
「ミンの兄貴…」
「…なんで!お前僕に言わなかったか?よそ見は一箇所だけだって!」
「…」
僕はイナのそばに行き、赤くなっている頬に触った
唇をとんがらせてあさっての方を見ている拗ねた顔
僕のついた大きなため息に、また涙をポロポロとこぼす
「僕にできることはないのか?」
「…え…」
「こんな浮ついたお前に、僕は一体何をしてやればいいの?」
「…」
「放っておいてほしいの?叱ってほしいの?何がしてほしいの!」
「…」
「イナ!」
黙り込んだイナは、一つ小さく息を吸うとこう言った
「…仕事…辞めんなよ…」
それは意外な言葉でもあり、十分想像できた言葉でもあった
仕事している僕を見つめるイナの目は、輝いていたし、寂しそうでもあった
「イナ…お前について行くって言ったからか?仕事よりお前を選ぶって言ったから、お前…」
だからお前、自分を貶めて僕に呆れさせて…離れて行こうとしてるの?
そうしようかどうしようか…迷ってるからこんなに不安定なの?
お前…
僕の目から涙が落ちた
泣くつもりなんてなかったのに…
お前が離れていくことなんて考えられない
言ったじゃないか
仕事の代わりはいくらだってある
けど
お前は一人しかいないんだって
だからお前を選んだんだって!
「テジュン…俺のために…大好きな仕事…辞めないで…」
「わかってない!何にもわかってない!僕の気持ちなんてお前は何にもわかってない!」
「…わかってるよ…お前…優しいから…俺の事ばっか考えてくれ」
「違うよ!僕は優しくなんかない!僕は自分の気持ちを最優先してるんだ!お前を失うくらいなら死んだ方がましだ!」
「…」
「誰とキスしようが、えっちしようが、そんな事構わない、構うもんか!でもお前の心は誰にも渡さない!
…僕は…僕は…絶対にお前を失くしたくない!!」
「…」
「お願いだから…僕から離れて行かないで…イナ…お願いだ…何したって構わない…頼むから…一緒にいてくれ…」
僕は…心の底に溜まっていた思いをぶつけた
きっとイナは驚いているだろう
僕がこんなにもお前に執着していると知って…
そんな束縛をきっとイナは嫌うだろう…
そう思って今まで言えずにいたのに…
こんな事言ってしまったら、イナは僕を恐れるかもしれない…
僕を捨てたら僕に付きまとわれると思うんじゃないか…
僕はこんなにもイナに囚われている…
これではいけないと思いながら、僕はいつもイナに溺れている
イナの顔をまともに見ることができない
こんな自己中心的な思いを彼にぶつけてしまってはいけないのに…
イナの手が僕の髪に触れる
優しく撫でる
顔を上に向かせてそっと唇を重ねる
「ごめんね…」
イナは呟く
鼓動が激しくなる
それは『縛られたくない』の『ごめんね』なの?
『さよなら』の『ごめんね』なの?
…僕の思いを受け止められないっていう『ごめんね』なの?
「そんな事言わせちゃってごめんね…」
「…」
「俺テジュンが好きだ…テジュン、わかってるよね?俺の心はいつもテジュンにあるって…わかってるよね?」
「…」
「でも…さっきソクを見て、またどきどきしたんだ…俺、ほんっとにどうしようもないよね…わかんないんだ、なんでこんな浮気症なのか…
こんな俺、テジュンと一緒にいる価値がないって…そう思えて仕方がないんだ…俺…自信が…ないんだ…」
「…僕だって…自信がない…」
そう…
イナは可愛い。イナは魅力的だ…
ソクだって一時はイナに惹かれていたじゃないか…
きっと他にもイナを好きな奴はいるに違いない…
イナが僕の恋人であることを僕は自慢に思う反面、僕自身が彼にふさわしいのかといつも思う
彼が僕を嫌いにならないように、それだけのために、僕は彼を自由に遊ばせているんだ…
ジュンホ君に頼まれて書いた文字
「達観」だなんて…偉そうに…
そうなれたらいいなと
そう思いながら書いたんだ…
『いいんだ』といいながら腹の底で煮えたぎってた僕の執着心
「…こんな僕…イヤだろ?…すまない…」
僕は一つ深呼吸をして立ち上がった
「お前がいやだと言うのなら、束縛はしない…。僕についてきてほしくないなら…行かない…
お前が嫌がるような事…しない…すまない」
「テジュン!」
イナが僕の腕を引く
僕はイナの上に倒れこむ
ポロポロと涙を流しながら僕のシャツを脱がせて肩に口付けるイナの、その唇が痛い
僕もまた、イナのシャツを脱がせて口付ける
肌と肌を密着させて僕らは抱き合った
「俺はテジュンの全てが好きだよ…」
上半身だけ露わにした僕達は、互いの体に触れ合った
「僕だって…お前の全てが…好きだ…」
今までに何度こんな事を繰り返したんだろう…
その度にこうやって言葉と体で愛を確かめ合う
離れてはくっつき、くっついては離れ、同じところをぐるぐると回っている
まるで輪になった鎖のようだ
輪の中心にあるのはお互いへの想い
それだけは変わらない
そう信じていたい
こんな事を繰り返しながら、僕はずっとお前と一緒にいたい…
お前もそう思っていると信じたい
「俺以外の男とキスしたら許さない」
「…僕以外の男とえっちしたら…殺す」
くすっと笑って顔を見合わせる僕等
「祭が終わったら…ほんとに一緒に来てくれるの?」
「ああ」
「本当にそれでいいの?」
「お前が許してくれるなら…」
「ずっと…ずっと一緒にいてくれるの?」
「ああ!」
「テジュン」
「一生付き纏ってもいいのか?」
「…ん…」
一糸纏わぬ姿になって僕達はお互いの体を愛でた
脱ぎ捨てた服の間でトランシーバーが鳴っている
『総支配人…進行表の最終チェックとリハ開始時刻です。総支配人…』
「…テジュン…いいの?しご…あ…あ」
僕は後先を考えず、その通信を無視してイナを抱いた
#それぞれの渦2 妄想省家政婦mayoさん
===テソン:過去の渦
「君は..ヨンウン...」
「ひさしぶりね。テソンシ」
「あ、駐車場のひと...」
「板前君、その節はありがとうね」
「お前...ソクんとこのメイか」
「ゴリアトがこの人たちと知り合いだったとはね...」
ヨンウンは昔僕の中の僕★がストーカーをしていたスンヒの親友
そう、僕★が階段から突き飛ばし持ち上げて落とした彼女だ
テスは板前助手の時に彼女と面識がある
彼女は今ソクの下で特捜隊のメイとして働いている
だからゴリアト=ちぇみも彼女の顔は知っている
「すっごい..妙な取り合わせよね」
「ふっ..そうかな…」
「ちょっと朝ごはん付き合ってよ」
「えっ?僕らはもう…」
「いーじゃん。板前君も一緒に行こっ…ゴリアトは..いいや。オヤジだから」
「あふっ..!!>_
メイは僕とテスの手を強引に引っ張りズンズンとレストランへ入っていった
「元気そうだね…」
「元気よ。ホストやってんの?」
「一応…でも僕は厨房の方だから…」
「そっか。料理人だもんね。…板前君もホスト?」
「やだなぁ..僕の名前はイム・デス..」
「名前あったんだぁ…」
「えへっ。テスでいいよ」
「ゴリアトとどんな関係?」
「ぼく?内緒…」
「えぇ〜ぃ...どうせ薔薇の仲よねっ。あ、さっきのテソンの彼女?」
「あぁ....」
「ひゅぅ〜相変わらず髪長いの好きなんだ…」
「たまたまだよ…」
「そっ…」
「ヨンウン…君にもすまないことしたと思ってる…」
「やだぁーもうーいいよぉ。あたしも今頑張ってんだからぁ…」
「あ、ぅん…」
僕はメイの返事にほっとした
でも僕にしばらく忘れていた感覚が襲いつつあった
そのときシチュンが僕らのテーブルに来てさっと座り、僕にそっと言った
『テソン、お前、席立てっ。俺コイツに話ある。お前..邪魔っ!!』
『シチュン...お前...』
『いいからっ。それに..入り口で待ってる。早く行けよっ』
『ぁ、ぅん..わ、わかった...』
僕はテスを促しメイに挨拶をして席を立ち入り口に急いだ
待っていた闇夜の顔を見て僕は安堵感でいっぱいになった
闇夜は僕の手をすぐ握ってくれた
戻ってきたテソンの顔を覗くと
乾いた瞳が心の中の僕☆と僕★の間で厄介に揺れているのがわかった
すぐ手を取って握ると俯いてふっと笑って肩に手を置いた
テスは闇夜と一緒に待っていた俺のところに戻ってきた
「ちぇみ..一緒に部屋に戻らないの?」
「少し..2人にしてやれ..」
「ぁ..ぅん...」
++++シチュン:恋の渦
俺はテソンとテスのいるテーブル近くに座って様子を見ていた
mayoシは入り口近くで心配そうに待っている...
ラブラブってホントなんだな..
テスはあの通りだからにこにこと喋ってるが、テソンの表情が少し堅かった
あ、なんか..テソンちょっとヤバイ感じになってきてる?...
そう思った俺はすぐさまテソン達のテーブルに移動した
「ちわぁ〜お邪魔するよ」
「誰、あんた...て..顔同じ..あんたもBHCなの?」
「そっ、俺シチュン...」
「ぁぃぅ〜BHCって何人いるわけ?...」
テソンとテスをさっさと帰し俺はその女と話をした
「名前は聞かして」
「あたし?メイ…」
「ここで何してんのさ。おんなは入れないはずだろ?」
「ん?…これ…」
メイは手でピストルの型をして見せた
「へっ?お前...警備なの?いつもここのホテルにいるわけ?」
「違うよ。特捜隊だから今回特別に呼ばれたの」
「ふぅぅ〜〜ん...」
でっかいチョコパフェがメイの目の前に来た
メイはパフェに食らいついた
「…朝からこんなんよく食えるな..」
「だって好きなんだもん..」
「あ、そっ..」
俺はパフェを口に運ぶメイと夢中になって話をしていた
メイは嬉しそうに目をくるくるさせてパフェを口に運び、
時たまスプーンを持ったまま口をとんがらせて話をする
教育実習で行った高校で男子生徒に言い寄られた話や
ミニスカートの制服で高校に潜入捜査した話…
車のトランクに男と一緒に閉じ込められた話…
表情豊かに話をするこいつを俺はいっぺんで気に入った
こいつとは気が合いそうだ…
「な、今日何時に終わる?遊びに行こうぜ!」
「はんっ。誘ってんの?」
「そっ 」
「あたし、徹明けなの。これから仮眠…」
「じゃぁ、後で電話する。電話教えろ。いや、そっちの携帯よこして」
「あ、あ、ぅぅん…これ…」
メイは意外にも素直に自分の携帯を俺によこした
<<<<<アッサー!(やった!)..脈あり? >>>>>
俺は自分の番号をメイの携帯に入力し、
メイの携帯から自分の携帯に一度着信させた
「ぜってぇー電話すっからなっ。無視すんなよっ」
「あ、あ、ぅん…」
あたしは話のおもしろいこの男のペースにはまっていた
テソンと同じ顔だけど性格はまるで正反対
ちょっと軽そうだけど…気が合いそう…
かなり溶けかかっているパフェを食べきってしまわないように
ゆっくり口に運んでいるあたしがいた
もうちょい話をしたかったのかな…
ちぇみとテスはてそまよが部屋に戻る姿を送った後いつもの天井裏にいた…
臨時のお仕事 足バンさん
こんな時に余計な仕事を頼まれた
こんな時というのは祭の直前(ずっと直前だな)なのに
ミンチョルはギョンビンと外に出たようだし(まさか駆け落ちじゃないだろうな)
イナはソクさんに引っぱたかれてたし…というか最近あいつ全く使えないし
仕事とイナのことで身も心も忙しいテジュンさんも掴まらないし
という時だ
その仕事というのが…
「あぁーん!あにゃたがスッヒョンちゃんねぇ〜ん!あぅん艶っぽいわぁ!さすがBHCのNo.1ねぇ!
ねぇ開催間近で悪ぃんだけどぉ…ちょっと手ちゅだってくんないかしらぁ」
「なにをです?」
「あたしのショゥに出す予定の2人がどょーしても色気がでにゃいのよーん!
短時間で手っ取り早くなんとかしちぇくんない〜?」
「お断りしたら?」
「もちろん一切から手を引くってこった!」
デジャイナー先生にあの顔でいきなりスゴまれ
祭はおろかホテルの存続にも関わるわよん。あたしを甘く見ないでんと言われ仕方なく引き受けた
そんなわけで一部屋借り切って教育することになった
で…その2人ってのが…
「スヒョン殿なにやら世話になるようだな。かたじけない」
「スヒョン殿っ!はっ!お手数をお掛けいたし恐縮ですっ!」
の2人だ。やっぱな…
アシスタントにドンジュンを雇った
ドンジュンはこの件に関してさんざん大騒ぎして反対したが、
失敗したら僕はデジャイナー先生にイタリアに拉致されるかもと言ったら、しぶしぶ了承した
お前以外の誰に頼めるんだよ、こんなバカなこと!
方法は単純。洗脳だ
まずBHCの連中のあらゆるラブシーン映像の鑑賞
暗い部屋で将軍と男組隊長をソファに座らせプロジェクターで映し出す
容赦なく映し出す
2人は生唾をのんで画面を見ている
僕はその様子を横からチェックする
僕もみんなのをこんなにまとめて見たのは初めてだ
やはり少しずつ上手くなってるな
というか監督たちもそこに執着してきているような気もするな
自分で観てもさすがに口はいやらしい
ミンチョルのシーンをじっくり見てやろうとしたらドンジュンが横で睨んでた
その上ドンジュンのかわいいシーンを見ようとした僕の目を手で塞いだ
自分は僕のシーンでは絶対見ないといってぷりぷり怒ってトイレに閉じこもってた
かわいいやつ
ラブは踏み絵といわれるだけあるな…ま、若さかな
そういえばテジュンさんにも踏み絵の過去があると聞いた…今度聞いてみよう
イナのやつ…なんて純情…今のあいつと同じ人間とは思えないな…
まぁヤケになって女を誘ってるあたりに名残を感じるが
あいつ少しこの頃を思い出した方がいいんじゃないか
祭が終わったらオールインの上映会でも企画したらいいかもな
一通り見終わり明かりをつけると将軍と隊長は黙り込んでいた
将軍はうっとりとした目でなにか感じ入っている
隊長は耳まで赤くして涙目になっている
「いかがですか?」
「うむ…あの目とあの口元だな…」
「そう。そして指の先まで全神経を集中させる。どの角度からアップになっても耐えられる繊細さが重要だ」
「自分は硬さが抜けないんだ」
「隊長、あなただって最近のCMですごくいい表情してるじゃないですか」
「そ、そうですかっ?」
「そう、2人ともそのルックスだ。自信を持って
君たちが本気になったらBHCも危ういかもな(ドンジュン笑うな)」
僕はソファの後ろから2人の肩を抱いて甘く囁く
「君たちは自分の艶やかな魅力にまだ気づいてないだけだ
明日のショーで君たちは他のホストを圧倒する。いい?頭で考えてもだめだ。形から入ってもだめだ
自分に素直になるここと愛したいという気持ち、それで自己表現の90%は達成だ」
2人は潤んだ目でうっとりと聞き入っている。なかなかいい表情になってきた
ソファから離れ、呆れてテーブルに肘をついて見ているドンジュンの横に座る
「さてドンジュン…もう一回僕のシーン観る?」
「やなこったっ!」
「またむくれて…わがままだな」
「なにさ、こんなとこでいきなりそんなこと言わないでよ」
「おまえって子供だね、ほんとに」
「じゃ大人の誰かんとこに行けばいいじゃないっ!」
僕は哀しい目でドンジュンを覗き込む
「ごめん…スヒョン…」
「また言ったね?謝っても許さないよ」
「…」
「反省するまで今夜自分の部屋に帰さないからね」
「もぉ…いじわるっ」
ちょっと涙目で首に巻き付くドンジュンを抱きそっとくちづける
唇を離してソファの背にかじりついて見ている2人を見た
「わかった?残りの10%」
「「か、駆け引きかっ」」
「というところで臨時講習会は修了だ。あとは自分たちの魅力を信じて」
「「はふぅ…」」
「じゃこれから僕達ちょっと取りこむのでお帰り願おうかな」
ドアまで送ると2人は潤んだ目で礼を言って出て行った
ちょっと刺激が強すぎたかな
振り向くとドンジュンがいじいじとテーブルをいじっている
「スヒョン…駆け引きなの?僕のことも…」
「ばか…おまえとは駆け引きできないから困ってるんだろ」
「スヒョン…」
僕は臨時のお仕事を手伝ってくれたドンジュンにたっぷりキスしてやった
しばらくしてデジャイナー先生から連絡が入った
「しゅんばらしぃわ!もう2人とも目がうるうるで戻って来たわっ!2,3日はもつわねっ!
しゃんきゅうべりまっちよぉ〜!ちゅぎのショゥでは是非あにゃたを使いたいわぁ〜ん」
もちろん丁重にお断りした
テプンの告白 ぴかろんさん
俺は馬鹿女を追っかけた
馬鹿女はチニさんに泣きついて喚いている
どうせ俺の悪口に決まっている
あ〜あ、ぐしゅぐしゅの顔だ…
遠目にみても目の…あの…なんていうんだ?睫に塗ったくるヤツ…あれがドロドロだってわかる
だってアイツ、目がちっせぇんだもん、胸と一緒でよ!
チニさんなんかと一緒にいると、ちっと地味に見えたりなんかしちゃったりするけど、そこがかわいいんだよな…
チニさんは笑って馬鹿女の肩を叩いている
突き飛ばしてやれ!
すっころびゃいいんだ!
したら俺が…抱き起こしてやるのによ…
あ〜あ。どろっどろの顔…拭いてやりてぇ…
また手のひらで拭くなって怒るだろうか…
ちゃんと親指で拭いてやるからさぁ…
あっ。ああっ…。チニさん、その暴力女を一人にしてくれ!肩抱いてどっかいくな!
「ああっ!」
しまった…大声を出してしまった…
チニさんが振り返った…
暴力女はあっち向いたまま、固まっている…
チニさんが暴力女に何か言って、俺を手招きしてそして、猿の元へ向かった
あの猿野郎のどこがいいのか、イマイチわからない
チニさん…ついこないだまでイナといちゃついてたのにな…まあいい
俺はそぉっと暴力女に近づいた
「…何よ…」
「あの…あのさ…」
「…何なのよ…」
俺は馬鹿みたいに「あのあの」を繰り返した
板胸女は俺を睨んだ
俺はその、黒くなった目元を親指で拭いてみた
「いたいっ!何すんのよっ!」バチイン☆
やっぱり暴力で返された…
「お前、目が真っ黒だから…」
「だからって親指、目に突っ込まないでよ!」
「へっお前の目に俺の親指が入るわけないだろ!胸と一緒でちっこいのによ!」
ばちいいいん☆
両手で挟みビンタだ…
クラクラした…
「あ…ごめん…血がでてる…」
暴力板胸女は、顔色を変えて、俺の頬を撫でた
俺はその手を掴んですぐ様こう言った
「捻るなよ、投げるなよ!じっとしてろ!」
「…何よ…」
「…そのあの…さっき言った…嫁の貰い手の話なんだが…」
「私、お嫁になんか行かないからいいの!」
「へ?」
「一生独身で行くの!」
「…そんな…勿体無い…お前みたいなキュートな別嬪さんが…一生独身だなんて…」
「…え?」
「あわわ…」
「キュートで別嬪さん?私が?」
「…あう…おお」
「…」
「おっ…俺なぁ…」
「…うん…」
「もう…お婿にいけねぇんだ…」
「え?…何か問題でもあるの?どっか悪いの?」
「んと…」
「アンタみたいに人情に厚い優しい人が、どーしてお婿に行けないのよ!」
「え?」
「あわわ…」
「お前…」
「だから。何でか教えてよ…力になれるかもしれないから…」
「…んと…その…だってよ…お前がよ…」
「うん」
「あのその…俺の…その…」
「何!」
「大事なとこを…にぎ」
「えっ!握りつぶしちゃった?!」
「…」
馬鹿女…
「うそ…そんな簡単に潰れるものなの?!」
「お前…カマトトぶってんじゃねぇよ!」
「…だって…」
「お前に握られちゃったから他の女と結婚できない体になったんだ!」
「…」
「だから…その…お前も…他に嫁の貰い手がないなら…握って握られた者同士その…けっ…けっこん…しないか?」
「…」
「…だめか?」
「なによそのプロポーズ!最っ低!どーゆー理由よっ!もうさいってい!デリカシーのかけらもないわ!」
「…なんで怒るんだよ…要は『結婚しよう』って言えばいいんだろ?プロポーズって…」
「そんな最低の理由で『はい結婚します』って返事すると思う?!
…結婚してからテジ君に『ねぇママ、ママはパパになんてプロポーズされたの?』って聞かれたとき何て答えるのよ!ばかっ」
「…テジ…聞きそうだな…『握って握られた関係だったの。だから結婚したのよ』なぁんてお前が答えてさぁ…」
どすっ☆
「ぐぇ…」
「最っ低!」
「お…お前こそ…さいてー…俺が必死でプロポーズしてんのに…腹を膝蹴りするなんて…」
「そうよ!あたしはそういう女なんです!結婚したってケンカになったら負けないから!」
「前言撤回する!」
「…え…」『まさか…プロポーズ撤回?』
「嫁の貰い手、引く手あまただって言ったの撤回。ぜってぇ貰い手なんかねぇよ…ゲホゲホ」
「…ふ…ふん」『そっちか…』
俺は前のめりの姿勢のまま、暴力女の腕を引き、頭を掴んでヘッドロックをかけた
「あにすんのよっ!痛いっ!ばかっ」
そして頭をクイッと回し、罵詈雑言を浴びせかけるその口を俺の口で塞いだ
暴力女は、やっと大人しくなった
俺は唇を離し、チェリムをそっと立たせてTシャツの裾で目の周りを拭いてやった
「痛いよ…」
「…わりぃ…」
お詫びに瞼にそっとキス
それからかわいい鼻にも
透明な頬にも
そしてもう一度唇にもキスをした
どきどきしている
口から心臓が飛び出ているんじゃないかとか、顔から火が出ているんじゃないかとか
余計なことを考えてしまう
「チェチェチェ…チェリム…」
「…うん?」
「おれっおれっ俺は子持ちでこんなホ○トやってるけどっ…」
「…うん…」
「おれとけっこんしてくんないかな…」
「…」
「…つっつりっ釣合いとれないってのはわかわか解ってる…けど…俺…お前が…お前がその…」
「…」
「お前が暴力女で馬鹿女で板胸女でも構わない!」
「またそんな事言う!」
「聞けよ!…俺は…お前が好きだ」
「…」
「はぁはぁはぁ…結婚してください…」
「…」
チェリムは俺をじいっとみつめて握りこぶしをつくり、俺の顔面めがけてヒュッと腕を伸ばした
寸止め…
俺は目を瞑らなかった
チェリムは俺に抱きついた
「うちのパパ…怖いわよ…大丈夫?」
「…オーケーなのか?」
「…アンタなら…」
「ん?」
「いつでもぶん殴らせてくれそうだもん…」
そう言って俺にキスをした
苦い暇つぶし ぴかろん
僕は衣服を整えて仕事に戻る事にした
トランシーバーがうるさく鳴り響く中、僕はイナを慈しんでいた
イナが狂ったように頭を振ったり、潤んだ眼で何かを懇願したり
涙を流しながらベッドの端の方へ背を這わしたりしていたのを覚えている
その度に僕はイナを捕まえ口付けを落とし、逃がさなかった
何度も気を失いかけていた
はじめにトランシーバーが鳴り出してから1時間ほど過ぎた頃、僕達はようやく頂上に到達し
イナは同時に意識を手放した
僕は朦朧としているイナにゆっくりお休みと声をかけて部屋の外に出た
オ支配人につるし上げられるのは解っている
長かったな、意外と…
やっと出て行ったか…
それにしてもあの男が恋人だなんて…
さっきの男とそっくりじゃないか
気を失っているのか…
シーツの包まれたその体を見てみたいな
不思議な男だ
恋人がいるというのに他人のキスを求めるなんて…
僕はベランダから彼の寝ている部屋に忍び込み、無防備な彼の裸体を眺めていた
男は
抱いた事がない
だから
今日は眺めるだけにしておこう…
初めて見た
男同士のこんな現場…
僕は女は得意だけれど
男はどうしていいか解らない
なのに何故ここに来たのだろう
とても興味があったから
それに
弟達はまだ帰ってこない
あのかわいい子も彼氏とどこかへ行ってしまったようだし
単なる暇つぶしだ
暇つぶしにしては、随分危険な事を僕はしている
休暇中なのに…
半開きの淫らな口
汗の浮いた額
さっきまで恋人の愛撫を受けていた全身
切なげな表情を浮かべて拒絶しながら求めていた繋がり
不感症じゃなかったんだね、君…
僕は人差し指で無防備な彼の肩や胸をなぞった
気がつかない
ふぅん…
まだ夢の中?
そんなにアイツはよかったの?
黄色や黄緑色の得体の知れない形が伸びたり縮んだりしている
ショッキングピンクの液体がばら撒かれる
俺はテジュンに与えられたサイケデリックな花園で浮かんでいる
意識が舞い降りてこない…
誰かがそばに立っている
俺を眺めている
夢を見ているのか?
俺の体をなぞる指
知らない指
テジュンじゃないの?
ぼんやりと開けた目に、ミンの兄貴の顔が写る
中庭での出来事が俺の意識の中を舞っているのだろうか…
その胸に唇で触れてみた
初めての、男の体
僕の欲しい体ではないけれど
練習台には最高級品
胸板から肩に、肩から腕に、腕から首筋に、顎に、喉に、
そして上半身で最も敏感な部分を僕は探ってみた
案の定反応した
ふぅん…
けどまだ意識ははっきりしていない
好都合だ
耳を軽く噛む
ふっと吐息が漏れる
頬に口付ける
ゆっくりと瞬きをする
ノーズラインに舌を這わす
ぴくぴくと睫が揺れる
唇を捉える
深く捉える
反応あり
少しずつ意識を取り戻す彼
もっと深く口付けをし、僕は指で体をなぞる
やがて彼は覚醒し
僕を見つけて仰天している
押し戻そうとしても君にはムリだよ
脚も腕も決めている
それでなくてもぐったりしてたんだ
そう簡単に動けるわけがないよ
たっぷりとキスを味わってから僕は唇を離した
「…なんでここに…」
「覗いてた…」
「え…」
「随分感じてたね」
「…どうやって入った…」
「ベランダ。プロだからね」
「…なんのために…」
「暇つぶし」
「ふざけんな!」
「おっと…怒るなよ…」
「どけよ!お前なんかに抱かれたくない!」
誰が抱くって言ったよ
抱く気なんてさらさらないのに
いや
なかったのに…
「約束してたね」
「…」
「彼以外の人と寝たら君、殺されるんだってね…ほんとかな?ホントに殺されるかな?」
「…なんで…そんな事知ってる…」
「言ったろ?プロだって」
僕は彼にそう言ってもう一度口付けた
頭を左右に振って無駄な抵抗をしている
どんなに弱点をついても
コイツは落ちない…
腹の立つ男だ
少し感情的になって、僕は彼が纏っていたシーツを剥ぎ取った
露わな姿
身を捩る彼
全身を使って彼を押さえつけながら、僕は自分のベルトを外した
「なんだか我慢できないな」
「何が!」
「君に…君の何もかもに…」
「何で!」
「何でかな?めちゃくちゃにしてやりたくなる」
「…」
「弟より僕の方が好きだって言ってくれたのにね。期待を裏切って申し訳ないな。でも甘いよ、君は…」
「何する気だよ!」
「わかってるくせに」
「やめろ…やめてくれ…やめて…嫌だ…やめてくれ」
彼は懇願した
ああ、そういえばさっきも彼氏に何事か懇願してたっけねぇ
そうそう、今と似た表情だよ
でもさっきは『求めて』いたよね
今はどうだい、『助けて』ほしそうだね
「駄目だよ」
######################
僕は彼に狙いを定め、その中に入った
彼は大きな呻き声をあげ、狂ったように泣いている
ああ…凄いじゃないか
素敵だよ君は…
でも、少しつまらないな
君は動きをあわせてくれない
さっきは彼とあんなに一つになって揺れていたのに
見開かれた目は天井を向いている
涙が溜まってて
可哀相
君がいけないんだよ
僕で感じないから…
僕はこんなに感じているのに…
息をしている人形と遊んでるみたい
最低の気分
突然気持ちが萎えて
僕は彼から離れた
######################
シュミレーション
最低だ
僕は頭に流したその映像を削除して、懇願し続ける彼の顔を見つめた
「…やっぱり辞めとく…」
抱けないな、男は…
君に興味はあるけど欲しい体じゃないもの…
僕は彼から離れてベルトを締めなおした
震えている彼の唇に軽く口付けをして
「悪かったね、驚かせて」
そう言って窓から外に出た
僕らしくないな…何故後味が悪いんだろう…
#恋の渦 妄想省家政婦mayoさん
僕がテーブルに腰を落とす
落とす角度によって立っている闇夜と同じ目線になったり
ちょっとだけ見上げる角度になったりする
僕はこの姿勢が結構気に入っている
最初は闇夜の両手を取って僕の足の間に引き寄せているだけだったけど
最近は闇夜の腰の後ろで手を組むまで進んだ
「忍耐」の賜物だ。じわじわきてるぞ..
メイに会ってシチュンに後を任せ部屋に戻ってから
僕はいつもの様にテーブルに腰を落とし闇夜の腰を引き寄せた
僕がちょっと見上げると闇夜はちょっと笑って僕の髪に指を差し入れて来た
僕の顔は横向きにポトンと闇夜の胸の谷間に落とされた...
どきどきした。かなりどきどきした...
やっぱりされるのはどきどきする...僕は...
ちょっと夢心地になっていた僕はトントン背中を叩かれて闇夜の胸から顔を離した...
「落ち着いた?」
「ぅん..ごめん...」
闇夜が僕からすぅっと離れたようとした
「ぁん...もうちょっと...」
「駄目。たぶんもうすぐシチュンさんが来る....」
「えっ?何でよ...」
闇夜はPCに向かい資料を印刷し始めた。印刷が終わる頃本当にシチュンが来た
バタン★
「テソン!教えてくれ!!」
「何だよ..急に...」
「お、お、あ、あ、あの..メ、メ...」
「何だよ、落ち着けよ」
「お...あのメイのこと知ってんだろ?テソン...」
「昔の彼女は知ってるけど...お前、惚れちゃったの?」
「ぉぉん...そうかもしんない...」
「って...さっき会ったばっかじゃないかぁ...」
「そ、そうだけど...」
「遊びで付き合うなら止めろよ」
「今までのおんなと違うんだ...もっと知りたいんだ」
「メイに関してはmayoシの方が詳しいよ..だよね...」
「mayoシ、教えて。メイのこと...」
「ふっ...資料はこれ」
「お、サンキュ。さすが」
「あと...ptotoがこっち」
ソナphotoをみるテソン&シチュン...
「うひゃ^o^ な、テソン..この下右のやつ、胸の谷間...」
「えっ...うそ...どれ...」
「な?結構でかいよな..」
「ぅん...」
「ぉ、..どうなの?テソン...どのくらいだ?おい..もう知ってるんだろ?」
「ん.....ん....っと...」
パチン☆パチン☆
「痛いよ..」「痛ってぇよ..」
「ったく...シチュンさん、マジで付き合わないならこれら没収!!」
「あ、あ、わーった。わーった...マジ・マジ・俺今回マジ!!」
テプン・テソン・シチュンはいずれも99年…
99トリオはノーマル揃いか...と納得する闇夜だった^^;
バー オリーさん
駐車場に車を入れると彼が僕の腕を掴んだ
「バーに寄っていこうか」
何だか今日の彼はいつもとちょっと違う気がした
でもいい
デートのしめはホテルのバー
僕らはホテルの最上階にあるバーに入った
思いのほかバーは混んでいた
テーブル席はすでに一杯だったので
カウンターの隅っこでよければと言われた
僕と彼は目立たないカウンターの隅へ座った
「何にする?」
僕はちょっと考えてからモスコミュールと言った
僕の答えを聞いて彼も同じものを、とウェイターに頼んだ
「カクテル好きなの?」
「そういうわけじゃないけど、ちょっと甘いものが飲みたくて」
「そう言えば、ミンにはあまりお酒のイメージがないな」
「あまり強くないけど、飲むのは好きですよ」
「そうなの?そういえば一緒にお酒も飲んだ事なかったね」
そう言うと彼は僕の目をじっと覗き込んだ
僕は彼のこういう目が好きだ
言葉に出さなくても僕を呼んでいるのがわかる
なぜそうしたのかわからなかった
でも突然そうしたくなった
彼の肩にもたれた
目立たないとはいえ人目がある場所なのに…
でも彼は僕がもたれかかると腰に手をあてて抱き寄せた
バーテンダーはしらんふりで飲み物を僕達の前に置いた
僕と彼はそのまましばらくじっとしていた
柔らかい薄灯りの照明の下で、他の客の話し声が小さく響いている
でも僕と彼の世界はとても静かでここだけ別世界のようだ
彼の手がゆっくり動いて腰から肩、肩から首、首から耳へ順番に触った
そして最後に髪の毛を優しく掴んだ
彼が少し顔をずらして僕の髪の毛に口づけするのがわかった
僕は目を閉じてじっと彼を感じていた
初めて会ったときからこうなる予感はあったけど、
色々な事を通り過ぎて、今僕は彼とここにいる
そのことが僕は嬉しかった
そしてそれだけで満足だった
「乾杯しようか」
そういうと彼はグラスを持った
僕らは小さく乾杯、と言ってモスコミュールを飲んだ
「ロシアにいる時に覚えたの?」
「ロシア人はこんなカクテル飲みません。ウォッカをストレートですから」
「そうか」
「甘すぎます?」
「いや、大丈夫」
「飲みやすいけどベースがウォッカですから結構強いんですよ」
「いいじゃないか、酔っ払っても」
「でも明日のことがあるでしょ」
彼はおかしそうに笑った
「ミンはほんとに真面目だな」
「だってそうでしょ」
真面目って言われるのはあまり好きじゃなかった
何だか面白くない奴って言われているようで
でも彼が僕に真面目だって言う時は
案外それが気に入ってる時だって知ってる
僕は思わずにやついてしまった
「何笑ってるの?」
「僕そんなに真面目じゃないです」
「知ってるさ。案外大胆な時もあるしね」
彼は僕にウインクした
僕はちょっと赤くなったかもしれない
2杯目は彼はバーボンのロックを頼んだ
僕はまたモスコミュール
でもジンジャエールではなくただのソーダで割ってもらった
彼は僕のグラスのライムをつまんで絞るとその指を僕の唇にあてた
僕はライムの汁がついた彼の指をなめてあげた
ライムの酸味が口いっぱいに広がった
バーテンダーは僕達にさり気なくオリーブの実を出してくれた
彼はそれをつまむと半分だけかじり、残りを僕の口に押し込んだ
そしてバーテンダーに微笑んだ
バーテンダーは軽く会釈をした
その後、彼はバーボンを何杯かおかわりした
こんなに飲む彼を見るのは初めてだった
「ねえ、ちょっと飲みすぎですよ」
彼は答えるかわりにカウンターの下で僕の手を握った
そしてゆっくりと顎を振って出ようと合図した
外に出ようと立ち上がった時、誰かの視線を感じた
振り返ると兄さんが窓際の席から僕達を見ていた
彼も僕の視線に気づいて兄さんの方を見た
兄さんはグラスをちょっと上げて僕らに挨拶した
彼はそれを完璧に無視して僕の腰に手をあてるとそのまま歩き出した
「ちょっと兄と話してきます」
「何を?」
「やっぱり何しに来たのか気になるし」
「必要ない。用事があれば向こうから来るだろう」
彼はそう言うと僕の腰にあてた手に力をこめた
そしてそのまま出口へ向かった
僕が兄さんの方を振り返ると、兄さんは涼しい笑顔を僕に向けた
兄さんがああいう笑顔をするのはよくない兆候だ
でもその時僕はまだ何も気づいていなかった
バー…ボックス席にて ぴかろん
「あれはキツネと猟犬ではござらんか?」
「おお、まさに生キツネと生猟犬ですな」
「…あのように、人目を気にせず腰など掻き抱くような行為を…はしたない!」
「しかし、スヒョン殿の指導では『愛したい』という気持ちを大切にせよと…」
「ううむ、なるほど…」
「将軍殿、我々も『らぶびーむ実践』のためにここへ参上したのでございますからして、やはり何か行動をしたほうが…」
「承知。では…」
「いざ…」
睨みあう男組隊長と将軍
シャバッ、ガッという衣擦れの音を立てて互いの肩を掴みあう二人
額を突き合わせお互いから視線を外さない
「しばし待たれよ、ドンゴン殿」
「何ですか将軍殿」
「何か様子が違うような…」
「しかしスヒョン殿の教えでは『見つめあい、肩を抱き、触れ合う事から始まる』と…」
「左様。だが…ちとあちらのキツネと猟犬と漂う雰囲気が違うであろう」
「…確かに…あの者達は一方がえばりくさっており、一方が頼り切っておるように見えますな」
「そうであろう…ならばこの体勢…今一度やり直す勇気が必要と見た」
「さすがは将軍殿。恐れ入りました…ではもう一度…」
離れる二人
「将軍殿」
「なんじゃ隊長殿」
「あの者達は並んで座っております。我々はその段階で間違いを犯したのでは?」
「おお!貴殿の大きな瞳は伊達ではないな。鋭い観察眼である。ならば早うこちらへ」
「はっ。恐縮であります!」
隊長は起立して敬礼し、将軍の横へ移動する
「しかし…この椅子は一人掛け…少々窮屈でありますな」
「いや、スヒョン殿の映像に、あのカマトト女が初接吻を仕掛けた時、確か一人掛けの椅子にスヒョン殿と女と二人で座っておった」
「おお!そうでした。いやいや将軍殿の記憶力、素晴らしい」
「はは。そう褒め称えるな。照れるわ」
「では、失礼して…」
一人掛けの椅子に無理矢理座る二人
「うむむ。否応なく密着いたしますな」
「全くじゃ…では次の段階じゃの」
「「見詰め合う」」
睨みあう二人
「「肩など掻き抱く」」
肩を組む二人
「「触れ合う、その一」」
ゴツン☆
頭突き状態の二人
「「っ痛ッ」」
「さてこれからですな」
「うむ。ここから先が問題じゃ」
「まず、顎を掴む」
「こうか」
「こうでございます」
お互いの顎を掴む二人
「そして引き寄せる」
「こうか」
「こうでございます」
顔を引き寄せる二人
「そして唇を…」
「ドンゴン殿」
「はっ。将軍殿」
「お主とは顔のサイズが違うようじゃ。デコをくっつけたまま唇を合わす事は不可能じゃ」
「そのようでございますな、どうしても私の唇が将軍殿の顎に当たります」
「このような場合どうすればよかったかの」
「…おお…」
「なんじゃ!名案が浮かんだか!」
「デコを離すのでございます」
「おお!さすがは隊長殿じゃ。では…」
デコを離す二人
「「今一度、唇をば…」」
ゴツン☆
顎同士をぶつけ合う二人
「何故じゃ!何故顎がぶつかる!」
「申し訳ございません将軍殿。私の顎が少し出ているようでございます」
「いや、お主のせいではござらん。わらわの鼻が高すぎて、唇の接触を妨げておる」
「それなら私も負けてはおりませんぞ」
「そうじゃの。隊長殿」
「このような場合…確かスヒョン殿の映像では…斜めに顔を傾けつつお相手の唇を射ると…」
「そうであった!我々はどうも真っ正直に直線的に事を進めてしまうのぉ」
「はっ。お志が天に向かって真っ直ぐ伸びておられる証拠でございます」
「それはそちもそうじゃ!のぉ!」
「勿体無いお言葉痛み入ります」
「「今一度、斜めに…」」
ゴン☆
「ムムムンムム」『将軍殿』
「ムンム、ムンムンムム」『なんじゃ、ドンゴン殿』
「ムウムムムームームムムウムム」『どうやら成功したようです』
「ウーム。ムムム、ムムムムムームムム」『うーむ。これが、色気というやつか』
「ムムムム、ムムムウムムムムムム」『私、感動いたしました』
「ムムムムム」『わらわもじゃ』
「「ぶはっ」」
「わははは」
「ふははは」
「「これで我々は最強の色男」」
「わははは」
「ふははは」
睨みあいながら、マッコリ酒を酌み交わすふたりであった
月光 足バンさん
月明かりの下、僕はドンジュンを誘って庭に出た
祭が終わればもうここに来ることもないかもしれない
ホールではまだ明日の準備が終わっていないのだろう
くぐもった喧噪は遥か遠くで響く雷鳴のようだ
あの噴水の近くを通りかかると小さな水の音がこだましていた
ミンチョルたちのことが気になっている
どうしても頭から離れない
あいつは本当にギョンビンを手放すつもりなのか
ギョンビンが自分から離れていくようにすると言っていた…
やると言い出したらやるやつだ…本当にそんなこと…
ドンジュンがふと足を止めて僕をまっすぐ見つめる
「スヒョン…言いたくないなら言わないで」
「ん?」
「ミンチョルさんになんかあった?」
月のひかりがドンジュンの頬を白く照らす
僕は返事をせずただその目を見つめた
その長い沈黙はドンジュンに答えを言ったようなものだった
「そう…わかった」
「ドンジュン…」
ドンジュンの手を掴もうとした時、噴水の向こうに影が見えた
「ミンチョル…」
2つの影はゆっくりと近づき僕たちは向かい合った
「帰ってたのか」
「ああ…」
「飲んでるのか?」
「ミンチョルさん飲み過ぎちゃって…少し風にあたってたんです」
ギョンビンは照れたように微笑んだ。まだなにも聞いていないのか
僕はミンチョルの青白い顔に胸が痛んだ
ドンジュンがいきなり前に進み出た
「ね、ギョンビン…ボタンはずしの件でちょっとだけチェックしたいんだけど
すぐ済むから。ね、ミンチョルさんもスヒョンも5分だけいいでしょ?」
「ああ…」
「大丈夫!悪さしないから!」
「あ、じゃすぐ戻りますから…」
ドンジュンはギョンビンの袖を引っ張ってホテルの方に歩いて行った
あいつったら…変な気の利かせかたして
振り返るとミンチョルは小さくふらついていた
僕はその左腕を支えた
「大丈夫か?」
「ああ…」
「気は変わってないのか」
「ああ…」
「僕はどうしても納得いかない」
「おまえに納得してもらう必要はない」
「ミンチョル!」
「僕は…ミンの幸せのために全力を尽くす」
「そんなの詭弁だ。傷ついてなにが幸せだ」
「傷はいつか癒える」
「わかったような口をきくな」
「スヒョン…これが僕の生き方だ」
「…」
「昔からこうして生きてきた」
「…」
「ミンを…愛しているんだ」
ミンチョルの澄んだ瞳が月明かりに濡れている
僕はそれ以上なにも言えなかった
腕に力をこめミンチョルを引き寄せて抱きしめた
ミンチョルの揺るぎない強い気持が波のように押し寄せる
その海のような深いギョンビンへの想いがあまりに澄んでいたので
僕はただこうして抱いてやるしかないような気がした
「おまえに力を借りることになるかもしれない」
「ミンチョル…」
ミンチョルはうなだれたように僕の胸に頭を預けるとほんの一瞬喉を鳴らした
泣き出すのかと思ったが…上げたその顔にもうその兆候はない
ミンチョルは僕の胸をそっと押して身体を離した
「もう行くよ…ミンの側にいたいんだ」
「ああ…」
ミンチョルはドンジュンたちが消えた方角に歩いて行った
そのかげろうのような後ろ姿に僕はまた無力感を感じた
入れ替わりにホテルからドンジュンが出てきた
なにも言わず僕の横に立つと僕の指に指を絡ませた
しばらく僕たちはなにも喋らずに噴水を眺めていた
さざめく暗い水の中に冷たい月がゆらゆらと泳いでいた
#テスの渦 妄想省家政婦mayoさん
僕とちぇみはいつもの天井裏の隅からステージを見下ろしていた
ステージやホールは各倶楽部が最終のチェックに入っている
僕とちぇみはちょっと屈んで縁に寄りかかっていた
丁度サンヒョク君とソンジェさんが音合わせをしていた
サンヒョク君はずい分とステージ慣れをしてきたみたい
日本のコンサートが盛況だったからかな..彼、歌上手いし…
ソンジェさんはバラードの新曲「さくら」を用意してきて勝負のようだ…
せめてイメージはMV通りに…とガラスの窓枠を用意させて…
でも…音合わせしても…やっぱり外れていた..
「あいつは口パクじゃないと駄目だな…」
「やっぱそう思う?ちぇみ…」
「ん….高性能マイクでもかなりの調整が必要なレベルだ…」
「ぷっ!ちぇみぃ〜…言い過ぎ…」
「はは…そうか?」
…沈黙
「将軍さんと男組の隊長さん、ちょっと変わったでしょ…」
「目がうるんで前より色香が出て見えるが…」
「天使のコンビが調教して2人は実践までやったらしいよ…」
「ぷっはっは!…だっから鼻やら顎やらが赤いのか?あの2人..」
「ほんとだ…思いっきしぶつけたんだよ。きっと…」
「ぷひひ..怖いもの見たさで見てみたいもんだ….」
…沈黙
「そういえば<アタシ>はどこにいる?今日もブースか?」
「ん?あのね…マジ先生いるでしょ?」
「振付けのか?」
「キムさん、アタシと同じ匂いがするぅ〜ってマジ先生の追っかけやってる」
「ぐっはっは…そりゃぁいい…アタシとあたし いいコンビだ」
…沈黙
「テス…お前…ちょっと変だぞ」
「変じゃないよ」
「いや。変だ。何か不安なことでもあるのか?…ん?」
「ちぇみ…」
「ん……」
「僕の辛い記憶なんてちぇみのそれの比じゃないよね…」
「それはしょうがない…俺、オヤジだから…お前より長く生きてるしぃ〜」
「ちぇみぃ^^;; 」
「ぉ、すまんすまん…それが何だっていうんだ..」
「僕はちぇみの..哀しい記憶たち..全部受け止めてるかな…」
「テス…」
「ちぇみはいつも優しくて..いつも僕の全部を包みこんでくれてる..
でも僕は…ちぇみの全部を包んでる?辛い記憶たちを放してやれてる?
僕がこんなだから…全部見えないのかな…ちぇみ..」
「俺はな、テス…」
「ぅん..」
「その都度その都度…感情は捨ててきた。そうせざるを得なかった
蜘蛛として残ってるのは記憶でも、思い出でもなく、ただの"記録"だ…わかるか?」
「ぅん…」
「幸せなんて考えたこともなかったさ
手が届かないと諦めていたから裏切られてばかりさ…」
「ちぇみ..」
「だがひょんな事でここに来た。闇夜にコマされた。そしてお前に出会った
お前の無邪気な笑顔で俺は癒された
ぽっかりあいた胸で生きてた俺を..お前は一杯に埋めてるんだぞ?.今は
何が俺のためなのか..お前はわかってるはずだろ?…ん?…」
「ちぇみ…」
「お前のいない幸せは俺には意味がないんだ..わかったかっ」
「ぅん…ちぇみ…?」
「何だ…」
「ちょっと..かっくいぃ^o^ 」
「ったく…最近ちょっと甘やかし過ぎたかな…お仕置きだ。来いっ!」
「えっ?なに…」
僕はちぇみに腕を引っ張られて行った…僕…何されるの?