ボタンはずし 足バンさん
会場は仕上げの作業でものすごい慌ただしさ
僕はホールの入口でギョンビンを待っていた
庭でそっくりさんとしばし対峙したあと
ミンチョルさんとホテル内に戻るところまでは見届けた
遠くのその横顔はなんだかとても緊張したものだった
そっくりさんは少しその後ろ姿を見ていたけどこちらに向かって歩いてきた
壁に寄りかかって腕組んでじっくり見てやった
通り過ぎる瞬間ちらりとこちらを見た
魅力的な目つきで涼しく微笑んだ「熟練した猟犬」
ギョンビンとそっくりだけど、どこか目のひかりが違う
すれ違う瞬間つよい煙草の香りがした
べつにそいつが誰かなんてどうでもいい
僕の興味をひくには十分な謎めいた魅力
やっとギョンビンが会場に入ってきた。心ここにあらずって顔で
「遅くなってすみません」
「大丈夫なの?」
「え?」
「んー…いいや、時間ないし。君も急いで済ませたいでしょ?
えぇとね、イヌ先生達の薔薇投げ、シチュンさん達のパントマイムのあとね」
「曲に合わせて僕に絡みながら片手でボタンはずすんだよ、わかる?」
「はい」
「はいって…できんの?片手」
「はい。ミンチョルさんの見て憶えました」
「なんかすっごくヤらしくない?その発言」
少し頬が赤くなるギョンビン。かーわいい
「いい?こうステップ踏みながらね、そう。片手は僕の背中に。そう、そんで
そのままボタンを外して…そうそう…そのまま手を胸に入れて」
「え?入れるんですか?」
「そう、で、そのまま…あんくすぐったいなぁ…それで顔近づけてキスして舌を…」
べんっ!
「いたぁーいっ」
「キスなんてしないだろうっ!」
僕たちの後にいつの間にかスヒョンが立ってた。怖い顔して。あんまり怖くないけど
「まったく!黙って見てりゃどこまでやる気だ」
「ちょっとからかっただけだってば」
「あの…」
「もう離れて離れて!」
「なによ今日しか練習できないでしょ!スヒョンこそ忙しいでしょ!あっち行ってて」
「だめ。ここで見てる。指導する。絶対する」
「もぉっ!」
仕方なく僕とギョンビンは型通りのボタンはずしを練習した
つまんないの
でもギョンビンはもっとつまんなそう。って言うか全然身に入ってない
「ちょっとギョンビン、真面目にやってる?」
「あ、はい…」
「バレンチノが気になんでしょ?」
「えっ?」
「君ってすんごくわかりやすいのね」
「…」
「行った方がいいんじゃないの?」
「…」
「なにこそこそ話してるんだ」
「ギョンビンが他に用事があるんだってさ、ね?」
「あの…じゃちょっと失礼します」
ギョンビンは小さくお辞儀をして慌てて走って出て行った
さぁてと…僕もちょっとサボって…と思ったらスヒョンが睨んでる。腕組んで
「もしかしてすごぉーくヤキモチやいてる?」
「おまえ、放っておくとアブナイな」
「だって楽しいことはいいことでしょ?心の栄養だもん」
「おまえねぇ」
「でも帰ってくるのはスヒョンのとこしかないもん」
「ほんとに?」
「ほんと。証拠のキスっ、んっ」
「あ、だめ…向こうでイナがじーっと見てるから。刺激しちゃだめ」
もう祭が始まるっていうのに…ダイジョブかなみんな…
ふれあい ぴかろん
「しゃあフリータイム終了〜。どーかちら。みなしゃん、パートナー交換しちゃいかちら?」
デジャイナー先生の灰緑の声にスヒョクが顔を向けた
僕はそのすっきりした顎のラインに思わず見とれてしまった
キム・イナとは違う…
似ているけれど違う…
僕はキム・イナが、僕とテジュンを間違えた事を思い出した
では僕はスヒョクをキム・イナの代わりにしようとしているのか?
いや…違う…
ぼんやりとスヒョクの横顔を見つめながら考えていた
「今のピャートナーがイヤなシトはしゅぐ手をあげて」
その灰緑な声に僕はハッとした
スヒョクは僕でいいのだろうか…
彼はデジャイナー先生の方を向いたままだ
僕は彼の顔をこちらに向けたくて彼の顎に手を伸ばした
そっと顎を掴んでこちらを向かせた
スヒョクは引きつった顔で僕の方を見た
「…な…何か…」
恐れている…僕を…
そういえば僕は前科者だったな、BHCの連中にとっては…
そう気づいて慌てて手を離した
「あ。ご、ごめん…その、パートナー、僕でいいのかと思って」
「…ソクさんは?」
「…僕は…君がいいなら…いいよ」
「…よかった…」
「いいの?」
「ええ」
俯いた彼は、はにかむ様に微笑んだ
その顔を見て僕はホッとした
随分穏やかな気持ちだ…不思議だな…
「しゃあ、パートナーと腕を組んでちょーーだいっ!」
「腕組めって…」
「普通男性がこう肘を張ってて、女性がそこに腕を通すんですよね?」
「うん」
「じゃ…」
そういうとスヒョクは肘を張って僕を見た
いたずらな微笑みを浮かべて…
その様子が余りにも可愛くて僕は笑ってしまった
そして彼の作った腕の隙間に、僕は腕を絡ませた
「こうか?」
僕はふざけて彼の肩に頭を乗せ、彼を見た
彼はまた引きつった顔をした…
しまったな…調子に乗りすぎた…
「悪い…僕なんだか浮かれてる…すまない」
「い…いえ…俺の方こそ…こういうの慣れてなくて…でも、いいですよ、頭乗っけてください」
「いや、君が緊張するだろ?」
「大丈夫です、もう平気。ほら乗っけて」
そう言って僕の頭をくいっと引いた
またドキリとした
「ちょっと…目を瞑ってもいいかな…」
「え?…ええ」
「なんか変だ…すごく安心する…」
「俺もです…変です…」
僕達はお互いが似ていることに気づいていた
人と関わりたいくせに臆病になっている
いろんな事がありすぎたので…
だからなのか…僕はとても穏やかな気持ちで彼の肩に頭を乗せていた
翻弄1 オリーさん
さっきからミンのお兄さんにキスされてるのに僕は逃げられない
逃げようと思えば逃げれるのに
なんらか、この間のイナのパターンみたいらけど、ちょっと違う
らって僕には逃げられない理由がわかっているのら
このへんが僕とイナとの違いら、ちゃんと状況分析がれきる
れも分析れきても逃げられなければろうしようもない
おばかな僕
その理由とはお兄さんは上手いのら、キスが
たら上手いのれはない
僕の弱い所を知っていて、そこばかり攻めるのら
ずるい
れもろうして僕の弱い所を知っているのらろう
突然お兄さんは唇を離した
「どうして僕が君の弱い所を知ってるのか、不思議かい?」
ひいん、ろうして僕の考えてることがわかるのらろう
「ろーしてれすか…」
ひいん、いけない!らりるれ口調は人前れはらめってミンに言われてた
僕は思わず目を閉じた
お兄さんは僕の耳に唇を近づけるとふっと息を吹きかけた
ひいん、なんれそれも弱いって知ってるのらろう
「それはね、君が体で僕に教えてくれるからだよ」
ひいん!僕が自分でお兄さんに教えてるって?うっそお!?
そしてまた僕の唇を塞いですぐ舌を差し込んできた
ひいん、僕は目まいがしてきた
イナの言っていた脳天に衝撃っていうのはこれなのらろうか
お兄さんは僕の舌の裏側を丁寧になぞって僕を攻めつづけた
そうなのら、僕はそこが弱いのら
なのにそこばっかり集中してやられるからもうらめなのら
それをやられると力が抜けるのら
思わずお兄さんにすがりついてしまった
お兄さんは僕をしっかり抱きとめるとまた僕を攻めたのら
僕の目の前で白い光が炸裂して一気に昇天してしまった
しゅまない、ミン…
しばらくの間僕はお兄さんのうれの中れぐったりしてしまった…
「僕のことあいつは何て言ってた?」
お兄さんは僕の耳元でこう聞いてきた
「ま、まだ何も。お兄さんていうことだけ」
やった!こんろはらりるれ入れなかったぞ!
「たぶんあいつはこう言うだろう。僕の兄は嫌な癖があるんだ。子供のころから僕の物を欲しがる
おやつでもおもちゃでも、僕の持ってるものなら何でも」
そりはひろいお兄さんなのら
僕もいいお兄さんじゃないけろ、僕はソンジェのおやつやおもちゃを盗ったことはない
あ、でも一番あいつが欲しかったのを盗ったか…いやあれは盗ったんりゃないよね
「あいつの持ち物の中じゃ、君が一番だね。気に入ったよ」
お兄さんはそう言うと、僕の顔をするっと撫でた
ひいん、何てことするのら、このお兄さんは
「舌ったらずの喋り方、可愛いよ」
そうなのら、人前でらりるれしちゃいけなかったのら
ミン、またまたしゅまない
僕は恥ずかしくて下を向いて目を閉じた
「今日はこのくらいで。君のことだいぶわかったから、いずれまた」
そう言うとお兄さんはひらりとエレベーターに乗り込み行ってしまった
ひいん、何がわかったのらろう…
後に残された僕はエレベーターホールの壁に背をあててへなへなと座り込んでしまった
目を吊り上げたミンの顔を思い出して僕はまたくらくらしてきた
とにかく部屋にもろろう
そう思って立ち上がった時、エレベーターの扉が開いた
中からほんとのミンが現れた
そして僕の顔を見ると表情が凍りついた
言わなくても僕が何したかわかっちゃったみたいなのら
ろーしよう…
ひいん…
ランチタイム ぴかろん
ファッションショーの打ち合わせは、結構簡単に終わった
「どんにゃお衣装か、ちゃのしみにしちぇちぇねん」
というデジャイナー先生の怪しげな(…決して『妖しげ』とは言うまい)微笑みで、本日の打ち合わせはお開きとなった
歩き方もわかんないのに?こんな段取りでオッケーなの?
ま、カップル(男同士じゃん、げぇっ)の中でラストに着るウエディングドレス(正気じゃねぇよ!)をどっちが着るかってのだけ、シェンシェイが決めてった
俺たちンとこは予想通りチョンウォンが着るへへっ
他?しらない
ウエディングドレスの他に、それぞれ一点ずつ『シュテキなお衣装』を着せられるらしい…
俺はシェンシェイにじっと見つめられて(もちろん視線は外してたさ!)
『あにゃたは胸元の大きく開いたシュテキなシェクシーな衣装にしちゃげるっ』と言われた
後ろに立っていたチョンウォンが、立ったまま気絶してたのでどうしたのかと聞くと
「デジャイナー先生がウインクした」
と青い顔で言ってた
馬鹿、正面から見るもんじゃねぇよ…
丁度昼だったのでスヒョクを誘おうと思ったら…あいついつの間にかソクと仲良くなってんの…
大丈夫かなぁ…
ってことはまた俺一人?!ふえ〜ん…
僕は昼飯にスヒョクを誘った
彼はにっこり笑ってついてきた
「俺…BHC以外の人と食事するなんて…ほとんどないんです」
「…僕も…たいてい一人で食べるから…なんか恥ずかしいな…」
「ハハ」
「フフ」
僕らはバイキングコーナーで好きなものを取った
驚くほど好みが似ていた
手を伸ばすものがほとんど同じだったので、何度も顔を見合わせた
最終的に違っていたのはデザートぐらい…
僕はヨーグルト
彼はアイスクリーム
可愛いな…
「真似したの?」
「え?」
「僕の選ぶものと同じだから」
「いえ、たまたま同じだったんです」
「そ?」
「そ」
フフ…クスクス…
なんだろう。何故こんなに和んでいるんだろう…
僕は目の前にあるスヒョクの顔を見つめた
キム・イナと同じ顔なのに、キム・イナには感じなかった安らぎを感じる…
ふとスヒョクが顔をあげ、僕らの視線がぶつかり合った
スヒョクの視線が僕に絡みつく
どきり…
僕は慌てて彼から顔を背けた
気持ちの整理 ぴかろん
あれは…ソク…
隣にいるのは…スヒョク?
なんであの二人が並んでいるんだ?
なんで…スヒョクに微笑みかけてんだ?
俺の見たことのない笑顔…
いつの間にそんな…
もう終わったのに…気になるなんてな…
仕方ないだろ?
アンタ、そっくりなんだもん…
スヒョクといるソクはなんであんなに楽しそうなんだ?
俺はむしゃくしゃしてバイキングコーナーに背を向けた
目の前にテジュンが立ってた
「イナ、話がある」
「俺はないよ」
「ソクからきいた」
「…イヤになるだろ?こんな浮気者。俺、自分でも自分がイヤになる!」
テジュンは俺を抱きしめる
そんな事すんなよ、余計惨めになる
こんなにお前を裏切ってる
「それでも好きだ…離さない」
「俺…ソクの事…好きだったんだぞ」
「馬鹿野郎…あいつの事わかってんのか?」
「知らない…なんにも、でも俺…」
「僕のことはどうでもいいの?」
「…」
「別れてもいいの?」
「…」
「返事しろよ!」
「俺…こんななのに…テジュンの事好きでいていいの?…今だってソクが…気になってた…こんな俺、お前許せるの?!」
「…」
テジュンは俺を抱きしめる
優しい抱擁
俺はまた泣いてしまう
なんでそんな優しくするの?
「僕はお前じゃなきゃダメなんだ…」
「こんな浮気者でも?」
「浮気者じゃないよ、僕が悪いんだ…ほったらかしにしてて」
ほったらかし?
こんなに優しくしてくれてるのに?
感謝しなきゃいけないぐらい大事にしてくれてるのに?
どこがほったらかしだよ…テジュン…
「時間が空いた時だけお前を求めてた僕がいけないんだ…ちゃんと言葉で伝えなかった僕がいけないんだ…」
「テジュン…」
「イナ、愛してる」
「…」
「お前の可愛らしいとこ、気弱なとこ、自信持てないとこ、隙だらけのとこ、全然かっこよくないとこ、僕しか知らない
気が多いのは寂しいからだろ?お前が求める時にはいなくて、僕が欲しくなった時だけ現れるってお前そう感じてるんだろ?」
「…テジュン…そんな…」
「お前が僕を気遣ってくれてるの、わかってる」
「テジュン…」
「お前は僕の事、愛してくれてる…違うか?」
「…」
「ソクに惹かれたのは、ソクが穴埋めしてくれたから…違うか?」
「…」
「…僕のそばにいて…いつも僕のそばにいて…」
「…」
「もう離れないで…何言われたっていい。僕にくっついてて。キスして欲しくなったらそう言って!いつだって応える」
「…ばか…」
「いこう。ご飯食べに行こう」
「…え?」
「従業員食堂で僕と一緒にご飯たべよう、お前の練習以外はずっと一緒にいよう、な?」
「…テ…」
俺はテジュンに引っ張られて行く
目の端にソクとスヒョクが映る
さよなら…
『それは気の迷いだ』
そうだね…きっと…
ごめんね…テジュンの身代わりさせて…
俺は足を止めた
テジュンが振り向く
ゆっくりと腕をあげてテジュンの首に巻きつける
ここでキスしてもいいの?
みんなが見てるんだよ?
お前の立場も考えずに、俺の寂しさを埋めるためだけに…お前にキスしてもいいの?
そんなわがまま、許してくれるっていうの?
涙が溢れて止まらない
そんな事できないよ…お前は仕事が大好きなのに…ばかテジュン
辞めさせられたらどうするんだよ…
躊躇っていると、テジュンの唇が俺を迎えに来た
みんな…見てるのに…
「お前の方が大事だ…失いたくない…」
だめだよ…テジュン…ダメだ…
周囲のざわめきが聞こえなくなった
俺たちは二人だけの世界にいるようだった
光と影 足バンさん
ソクさんとランチをとっていると向こうにイナさんが見えた
俺は最初気がつかなかった
特になにかを喋ってたわけじゃないけれど和んだ空気だった
顔を上げるとソクさんが見つめているので、ちょっと恥ずかしかったんだけど
でもなぜそんなに見ているのか、なんとなくわかった
ソクさんがふと送った視線のその先にイナさんの後ろ姿があったから
ソクさんは俺にイナさんの姿を見ているのかも
噂は聞いていたし、ラブなんか唇死守とか言ってすごく警戒してたし、
ミンチョルさんも酷い目にあったって聞いてすごく怖い人だと思っていた
でもイナさんを見てすぐ視線をはずしたその表情は…そんな怖い人のものじゃない
俺は気づかないふりをした
ソクさんはコーヒーを飲むとしばらく窓の外を眺めていた
「雨上がりは緑がきれいだな」
「え?」
「塵もほこりもみんな流れたあと、深呼吸をしてるみたいだ」
「くすっ」
「なに?なんかおかしかった?」
「いえ…詩人だなと思って…あ、すみません」
「謝るなよ、そんなに硬くちゃうまくいかないぞショーは」
「はい、すみません、じゃなくてあ、ごめんなさい、あ…」
ソクはおかしそうに笑った
そして懐をさぐって小さな入れ物を出した
「お薬ですか?」
「うん」
水でぐいと薬を飲むその姿を見ていて思った
淡々と話して聞かせてくれたソクさんの人生
全部聞かせてくれたのかな。まだもっとあるんじゃないのかな
そんなことを考えているとソクさんがまた僕を見つめている
「会えてよかった」
「え?」
「BHCの人たちに会えてよかった」
あぁ…BHCのことか…
「君にも会えてよかった」
「え?あ…はい…俺も…僕も…兄貴ができたみたいで…」
なんで兄貴なんて言っちゃったのかわからない。咄嗟に出てしまった
その言葉を聞いた時ソクさんの視線が一瞬止まったのは気のせいかな
またソクさんは外を見てしまった
その横顔は明るい光に照らされているにもかかわらず影を感じる
その影にそっと触れてみたいと思った
「あの…」
「ん?」
「俺もずっと薬飲んでたんです」
「知ってるよ」
「そんなことまで調べたんですか…まいっちゃうな」
「知っているだけじゃなんの役にも立たない」
「そんな…」
「でももう飲んでないでしょ?」
「はい…でも…」
「夢にうなされる?」
「え…」
「あ、君の頭の中調べたんじゃないよ、これは想像ってやつ」
そう言ってソクさんが笑った時、泣きたいような気持ちになった
俺の中の忌まわしい想いを全部吐き出してしまいたくなった
でもできない
そんな気持の処理の仕方を俺は知らない
ソクさんはそんな俺をじっと見つめて、またちょっと笑った
「大丈夫だよ…いつか越えられる…ほら、アイスクリーム溶けるぞ」
俺はこぼれそうになる涙を必死でこらえてスプーンを口に運んだ
秘密部屋17 妄想省家政婦mayoさん
全身が鉛のように重かった。ぐったりと身体をソファに預けていると
テソンは小さめのどんぶりを持ってきた。いきなりまずい薬湯だった
「変なの入ってないよね…」
「マムシ粉入れといた。闇夜がイナみたいになったとこ見たい」
「飲まないっ…」
「冗談だって。飲んで、早く寝るんだ。いいね」
たっぷりと飲まされた薬湯のおかげか朝は起きることができた
コーヒーを淹れているテソンの背中に ぴたっ# とひっついてあげる
最近これをするとテソンが喜ぶからだ
「食べないと薬湯が飲めないだろ?」
何もいらないと言ったが、苺やらバナナやら少しだけ口に運んでくれる、
その後例のまずいやつとちょっと甘い2つの薬湯を飲まされた
「一緒にいたいけど…今日はリハがあるから…」
「薬湯も飲んだから..大丈夫だから。いいよ行って」
「あらっそぉぅ〜ぉ…….」
テソンはアヒル口になってちょっと拗ねた
「ちゃんと部屋にいるんだよ?」
「ん〜」
「空き時間すぐ戻ってくるからさっ」
「ん〜」
「行ってくる」
テソンはデコxxxをして秘密部屋を出て行った
ふぅぅ…
テソンはだいぶ変わった
テソンの中にあった冷淡で他人を許せない歪んだ人格、
自身と格闘し続ける人格が最近顔を出すことはなくなっている
あの日以来もうあの落ちる暗い夢は見ないんだ。一回も
元々の暖かくて優しいい人格だけが残ってくれている
[あ・うん]でお互いに何をしたいのかがわかる
一緒にいてとても楽になれるのは確かだ
色気はかなり少ないが…その分気を使わない
ふっ…瞼xxxの時のテソンの拗ねた顔が浮かんだ
部屋を出てリハを見に行くことにした
いつもの場所、天井裏からステージを見ていると
テソンの包丁さばきのリズムが狂っている
「テソン!リズム合わせろよぉ」
「あ、ごめん…」
「お?幸せすぎてぼけちったか?」
「テプン、何だよそれ!」
「な、な、お前、ち◎うしたのか?」
「人に言うことじゃない…」
「教えてくれてもいいだろうが…ケチっ」
「そういうお前はギョンビンの教えどおりしたのか?」
「あふあふ…コホンケホン…何のことだ?」
「ん?軽く顎を持ち上げて…ってやつだよ」
「へほへほ..コホンケホン…いいじゃねぇか…そんなこと」
「だったらお前も聞くな」
「何っ!」
「何だよ!」
「テソン!テプン!いい加減にしろっ!」
グーッ★★
「「テジン…>_< >_< 」」
「刃物持ったままで喧嘩するな!」
「「ごめん…テジン…>_< >_< 」」
「テソン……見てる..」
「えっ?何?..あっ..」
ちらっと天井裏を見たテソンはちょっと笑ったが
『戻れよ。部屋に…』と目配せをしている
頷いてからテソンが見えない場所でホールを見渡した
ドン隊長とヨソルが走り方の練習をしていた
CM撮りの打ち合わせだろうか…
猟奇的な彼女と2人とのCMでは当たるな..
3人の出演料だけでも相当な額になる筈..いくらだろう…
「お前さぁ..デカイから上に跳ぶと画面からはみ出るだろうが?」
「お前はちょっと後ろに引け」
「何でだよ」
「顔がクドイ。俺より前に出るな…」
「ちっ!」
テスが進行表を見ながら音楽のチェックをしていた
ちぇみはいない…まぁたまに離れてもらわないと..って人のこと言えないか
男組弟を見つけた..なんだ..今日は脱いでない…
つまんないな...腹王でも見たら体調よくなるのに
ポラリスが来ている..何もすることないのに…
この間韓流店に行ったらパ○ツは売り切れだった。誰がはくんだ..一体
そういえば..LBH顔のイラスト靴下が入荷していたっけ..いらない
おっとデラルスクワトロだ。ったくリマリオぉ…
すっかり赤ヘビに食われちまって
祭りが終わったらボコボコにしてやるっ
なんだか人がいっぱいで疲れてきた…
ロビーを抜けて外に出よう..冷たい空気が吸いたくなった…
『今日は外に出ちゃ駄目だ。花粉がいっぱいだからね』
テソンの言葉を思い出した。ったく..抜け目がない
部屋に戻ろうとEVを待っているといきなり肩を叩かれた
びっくりして振りかえると2人の男が立っていた…
1人の若い男は帽子を被ってないのですぐ確認できた
もう1人は帽子を目深にかぶりダークカラーのブルゾンを着ている
ちょっと首をかしげて帽子の顔を確認した
「オ・オモ@@」
「「こんにちは」」
「ど・どうしたんです?」
「会いにきたんだ!!」
若い男の言葉に帽子の男は笑っている
帽子の男の初めて見る優しい笑顔だった
荷造り オリーさん
今日は久しぶりにお外に出たのら
れもって叱られることばっかりしちゃったのら
ろーしよう…
ミンの凍りついた顔を見ていたら罪悪感で一杯なのら
とてもカンがいいから僕の目をちらっとみたらけで、
何があったかわかってしまったのらと思う
ミンは誰かさんのように鈍感じゃないのら
誰かさんならきっと「室長、どこか具合でも悪いんですか」
って聞かれるらけれすむのに…
とりあえず声をかけようと思ったんらけど、
ミンは凍った顔のまま、僕の横をすり抜けてお部屋に行ってしまったのら
腕をつかんらんらけど、すいっと振り払われたのら
僕の目と手は泳いでしまった…のら…
しばらく目と手を泳がせていたけろ、大変なことを思いらしたのら
ミンは家出が得意なのら
2度あることは3度あるって言うりゃないか
僕は急いで部屋にもろったのら
やっぱり!荷造りしてたのら…
ろーしよう…
ミンは黙々と荷造りしてるのら
どうしたんれすか、って聞いてもくれない
ダメじゃないれすか、って叱ってもくれない
ものすごく怒っているにちがいないのら
ひいん
れも勇気をらして言ったのら
「どこ行くの?」
ひぇ!間抜けな質問をしてしまったのら。あほっ!
当然答えてもらえないのら
「また家出?」
ひぇ!無視されたのら
「行かないれよ」
ひぇ!またまた無視されたのら
「行かないれよ」
もう一度言ってみたのら
そしたらやっと答えてもらえたのら
「もう僕に用はないでしょ。後は兄さんとうまくやって」
ひいん。やっぱりばれてたのら
もう腹をくくるしかないのら
荷造りしてるミンの隣に行ったのら
そしてごめんなしゃい、と僕にしては最大限素直に謝ったのら
お兄さんにまたあのその…されちって…ごめん
ミンはお兄さんという言葉にちょっとピクってしたのら
あの、その、たしかにお兄さんはキスがじょうずなんらけろ、
らけろ、その、つまり、僕はれったいミンの方が好きらから
らからごめんなしゃい
ふーっ、やっと少しらけ思っていたことを言えたのら
れもまら荷造りしてるのら
チィーン
ごめんなしゃい
もう一度行ってみたのら
やっぱり無視されたのら
ブチッ!
何なのら、この僕が一所懸命誤っているのに!
僕は切れてしまったのら
何らよ、その態度。人がせっかく謝ってるのに
珍しく反省もしてるのに
ふん!そっちがその気なら僕にらって考えがあるのら
僕も自分のトランクを持ってきてミンの隣れ荷造りを始めたのら
ミンは手を止めて僕の方を見たのら
「何してるんです」
「ふん!見りゃわかるらろ、荷造りらよ」
「さっそく兄さんとこに行くの」
「ふん!何言ってるんだ!ミンについてくんだ。もう祭もどうでもいい
ミンがでどこかへ行ったら僕は困る。だから一緒に家出するんだ。文句あるか!」
怒ったららりるれが直ったのら
「ふん!確かにお兄さんにキスされてちょっとクラクラしちゃったさ。悪かったよ。だけどミンがいないと僕はいやなんだ
おかゆをふーふーしてもらえないし、わがままを聞いてもらえないし、寝るときはひっついて寝ないとよく眠れない
だからミンが家出するなら僕もついていくんだ、わかったか、このオタンコナス!」
オタンコナスは余分らったのら
ひいん
突然ミンの表情がくずれて、お口が四角になったのら
ミンも泣くとお口が四角になるのらった
れもって僕の胸に飛びこんれきたのら
僕は押し倒されて、はずみれ床に頭をごんってぶちゅけたのら
痛い…れもいい
らってミンが許してくれたみたいらから
ぐふふ
ミンは僕を押し倒して僕の胸れえんえん泣いたのら
ぐふふ
よかったのら
僕はもうれったいお兄さんには近づかないから、ってお約束したのら
ちょっと残念らけろ…いいのら
ミンが兄さんじゃなくて僕でいいんらね、って言うから
あったりまえりゃないかって答えたのら
ぐふふ
調子にのってキスの1回や2回いいりゃないか、と言ったのら
きっぱりらめらと言われたのら
ひいん
れもミンは午後の練習をさぼったのら
ぐふふ
とにかくよかったのら
れもあのお兄さん一体何しに来たんらろう…
協力 ぴかろん
「あれは…総支配人!何をしているんだ!あんな…あんなところで」
オ支配人が血相を変えて走り出した
チニさんはオ支配人が走っていった方を振り返った
僕もそちらを見て…すぐにチニさんを見た
チニさんは真っ青な顔をしている
…イナさんと総支配人の…
きついよ…なんでこんな目立つとこで…
僕はチニさんに声すらかけられない
どうしよう…
「ウッキー君」
「は…はい」
「カメラ!回して!すぐに!」
「へっ」
「早く!」
「はっはい!」
僕は持っていたビデオを回した
「二人を撮って!オ支配人が駆けつけるとこまで!」
「はいっ」
どうするんだろう…何かの証拠に?
総支配人の不祥事を上に報告する?
いや、そんな事チニさんは…しないよな…
いくらイナさんを取られたからって
そんな事する人じゃない!それは僕がよく解ってる
…と思う…
でももしかしたらチニさんは今でもイナさんを…
「助けたいのよ…あの二人」
「え…」
「あんなにまで想いあってる…総支配人、ばかだわ。あんなところであんな事してたら…
でもクビをかけてでも彼を大事にしたいのね…」
「…チ…チニさん…君は…」
「私は負けて当然だわ。あんな風に彼のために何もかも投げ出すなんてできない」
「…」
「助けたい…ね、これも映画の1シーンってことにして!お願い」
「…チニさん…ごめんね…」
「え?」
「僕、誤解してた…君はまだイナさんの事想ってるのかって…ごめんね…」
「…ウッキー君…ど…どうして?…私…貴方がいてくれるから…イナさんの事なんてもう…」
チニさんは少し暗い顔で俯いた
「ごめんね…ごめん…僕、まだ信じられなくて…チニさんが僕とお付き合いしてくれてること…自信なくて…」
「チョンマン君!なんでよ!なんで信じてくれないのよ!」
「…だって僕…こんな猿だし…」
「チョンマン君…」
「僕は君の事好きだけど、君は…イナさんの代わりに僕を…そう思えて仕方なくて…」
「…ちがうのに…貴方は映画にも詳しいし、私をいつも励ましてくれる…一緒にいていつもとっても楽しいの…イナさんとは違う…」
「チニさん…」
「貴方が好きよ…」
「チニさん…」
「…でも今は彼らを助けたい…協力してくれる?」
「もちろんだよ…。チニさん、ありがとう」
「…」
「…後で…時間作ってくれない?」
「え?」
「二人だけで会いたい…」
「…」
「ダメ?」
「…いいわ…」
「…屋上に…来て…この問題を片付けたら…」
「…わかった…」
僕はカメラを回しながら、チニさんへ贈る告白の言葉を考えていた
僕は、チニさんが、好きだ
誰にも負けないぐらい好きだ
チニさんを悲しませたりしない、するもんか!
ファインダー越しのイナさんとテジュンさんを見ながら、僕は強くそう思った
堅い決意 ぴかろん
「総支配人困ります、こんなところで何を!」
突然引き裂かれた俺達
周囲の視線が突き刺さる
テジュンが…テジュンが…
「とにかくこちらへ…」
「オ支配人、祭の間だけ僕の思い通りにさせて頂けませんか?その後の事は覚悟できてます」
「…総支配人…あなた、あなた何をおっしゃってるんですか!
このホテルにはあなたが必要なんですよ!覚悟ができてるってそれは…まさか…」
「とにかく…僕達の事に口出ししないでくだ…」
「はぁい!カッ〜ト。いい映像が撮れたわぁ。オ支配人、ごめんなさい。びっくりしたでしょ?
おかげでとってもいいリアクションが撮れたわ。ありがとう」
「…は?」
「ごめんなさいね、どーしてもラストシーンに二人のキスシーンが入れたくてぇ」
「ラストシーン?」
「今回の祭で上映する映画のラストがなかなか決まらなくてぇ。ラブコメディなんだけどね
マッサージ師とサラリーマンがマッサージを通じて愛を深めるの。で、マイノリティに光を当てて世間に問題定義したくって…
新人映画賞に応募も考えててぇ社長も承諾してくださってるしぃ」
「…チニく」
「総支配人、ありがとう。とっても素敵だったわ」
「チ」
「さ、お疲れ様、次のシーンが残ってるから行って行って」
「あっちょっと総支配人…」
「オ支配人、この映画、きっと当たるわ。このホテルの名も上がるはず」
「あ…え?」
「だから心配しないで」
「映画?」
「そう…」
チニ君の助け船のおかげで、今は難を逃れた
…でも…僕はもう仕事の事よりイナの方が大切なんだ…
だから…
「テジュン…やめろよ…だめだよ…お前仕事…」
「いいんだ」
「よくないよ…俺のわがままのためにこんな」
「いいんだ!…さぁご飯たべよう、ほら、ここが社員食堂だ」
「テジュン!」
「ミンチョルさんの代わりに君が打ち合わせにつきあってくれ」
「…」
「理由が必要ならそれでいいだろ?」
「俺は…」
「ここ、美味しいんだぜ」
「テジュン…」
俺はテジュンに引っ張られて社員食堂でご飯を食べさせられた
喉を通るわけがなかった
「イナ…聞いて。僕にはお前が必要だ。お前がいなけりゃもう…何もできない…」
「仕事は?あんなに仕事好きだったじゃないか!」
「仕事のかわりなんていくらだってある。でもお前は一人だ。一人しかいない」
「ばか!…今の仕事続けながらだって俺と続けられるだろ?」
「…離れたくない…」
「テジュン…」
「お前と一緒にいたい。ずっといたい、仕事よりお前だ」
「…馬鹿野郎…」
「ああ、馬鹿だ。でも一緒にいないと僕はダメになっちゃう。お前だって同じだろ?」
「…しるかよ…お前みたいな馬鹿野郎は見たことねぇよ。なんで俺なんかのために!」
「幸せになりたいから…」
「お…俺なんかといて幸せになれると思ってんの?!」
「ああ」
「何でだよ!俺みたいな浮気者…」
「もうさせない。そんな気起きないぐらい愛してやる。覚悟しとけ」
「…テジュン…」
「…あ〜またキスしたくなっちゃうなぁ…」
「…ばか!」
「したくない?」
「…」
「したい?」
「…」
「ちぇ…ご飯たべよっと」
俺は、立ち上がってテーブル越しにテジュンの髪を掴んで奴にキスした
「馬鹿野郎!」
そういい残して俺は社員食堂を出た
涙が頬を伝う
テジュンが追ってくる
「もう…ほっといてくれよ!俺のために仕事やめるなんて…」
「イヤか?ずっと僕と一緒にいるの、イヤか?」
「…」
イヤだと言ったらテジュンは仕事を辞めずに済むだろうか…
そしたら俺は…テジュンを失ってしまうのだろうか…
そんなの…
答えが出せない
俯いて泣く俺を、テジュンはまた抱きしめる
廊下の陰に俺を連れ込んでまた唇を塞ぐ
だけど人が通るよ、テジュン、テジュン…
テジュンの暖かいキスに呑み込まれている
いつもより優しいのに、とても激しくて、逆らえない…
俺の感覚は麻痺していく
俺のために…
俺のために大好きな仕事を辞める?
そんな…事…させたくない…でも…離れたくない…
心が痛くて呼吸できないよ、テジュン
お前の生き方まで変えてしまうようなこと、俺は…したくないよテジュン
「イナ…お前のためじゃない、僕のためなんだ…」
「…」
「僕が…お前を選びたいんだ。だから…」
「…後悔してもしらないぞ…」
「しない…お前を放したら、僕はきっと…立ち直れない…」
「ほんとに?」
「お前と…行く」
「テジュン…」
「もう何も心配するな。そばにいる」
「テジュン…」
俺はテジュンの瞳を覗き込んだ
俺を真っ直ぐに見つめるその瞳はとても力強くて…
俺を選んだことを決して後悔させちゃいけない…
そう思った
お前がそこまで覚悟を決めてくれたのなら…俺も…
「俺もお前に応える…もうよそ見なんかしねぇよ」
「ばか!当たり前だろ!」
「…」
「愛してる」
「…俺も…テジュン…愛してる…大好きだ…」
俺達は何度も何度も唇を求め合った
ざわめく人々をオ支配人が『映画のワンシーンだ』となだめていた
…きっとオ支配人も本当の事はわかってるんだろう…
秘密部屋18 #再会 妄想省家政婦mayoさん
思いもかけない訪問者だった
帽子の男はキム・ソヌ
肩を叩いた若い男の方はソヌの右腕のミンギ
ホテルのブライダルフロアーは祭りの間はひっそりとしている
そこに置いてあるソファで2人と話をした
「少し…変わられましたね…ミンギさんいなかったらわからなかった」
「いろいろあったから…」
「元気そうで安心しました」
「その節はありがとう。世話をかけた。テソン君にも…」
「ぃぇ…」
ちぇみはテスの様子を見にホールへ行く途中、闇夜を見かけた
連れの帽子の男をキム・ソヌと確認するとあやしい人物がいないか
周囲をすぐチェックをした。降りた階を確認し隣のEVに乗った
そして柱の陰で彼らの話を聞いていた
「落ち着いたんですか?義理のない戦争…」
「とりあえず..落ち着いた..行き着くところまで行ったからね」
「指…あります?無事ですか?」
「はは…あるよ。大丈夫…ほらっ…」
ソヌは多少怪我の跡が見受けられる両手を広げて見せた
テソンと同じ手…当然か…テソンの方が手が若いか..ふとそんなことを思った
「そうそう、これをオーナーに渡してくれるかな」
ソヌにポストカード付きのチケット数枚とディスクを渡された
「ディスクにはtrailer、TVspotの他に僕の編集したMVが入ってる」
「わかりました。落ち着いたら挨拶に行くから」
「はい。伝えておきます」
「テソン君に挨拶したいんだけど…部屋かな?」
「いえ..今ショーのリハーサル中なのでホールの方に…」
「そう..じゃ行ってみるよ」
ちぇみはソヌの言葉が終わらないうちに柱の陰をすぅっと離れホールへ向かっていた
EVを待っている時ソヌがミンギの頭をクシャっとしながら言った
「こいつね…君の弟子になりたいって…」
「えっ??」
「君はカンやペクの事…かなり調べたらしいね…」
「あ…ご存じで…」
「何かあったらミンギ..使ってやって。裏には詳しいから…」
「ぁ…あの…」
「頼むね」
「あ…はい…」
返事をしてしまった..かわいいミンギ君と調査…うひひ…
EV前でソヌ達と別れ、秘密部屋に戻りチケットを確認した
オーナー達の分は足りているわね…足りなかったら大変だ…
ポストカード争奪戦かな…こりゃ…(^_^;)
僕はホールに来たちぇみの懐に駆け寄って行くテスの姿を見ていた
コモが僕に目指しをし、頭でホールの入り口近くを指した
その方向を見ると2人の男が立っている
…??…あれは..ミンギ。隣の帽子の男…キム・ソヌだった
ソヌは僕に気が付くと帽子を取って軽く手を挙げた
僕はちぇみと目で合図を交わしてから彼らの側へ行き、
軽く挨拶を交わしたあとロビーのソファで話をした
「テソン君、あの時はありがとう」
「いえ…感じが変わりましたね。ミンギ君がいなければわからなかったかな」
「ふっ…君たちは同じ事を言うんだね…」
「…会いましたか?」
「ぅん…さっきオーナーへの届け物を頼んだよ」
「そうですか…BHCへは…」
「オーナー達が待っている。スカウトも有能だ…行かざるを得ない…でしょ?」
「そうですね…覚悟しといて下さい」
「…何かあったら君たちに相談する」
「僕たちで役に立てれば……ですけど…」
「…??…じゃ。また」
ソヌが僕の言葉を理解したかは不明
彼らが帰ったあと僕は秘密部屋に戻った。後のリハはさぼることにした
体調も心配だったがソヌが来たことで僕は早く闇夜の顔が見たかった
闇夜はソファで寝ていた。顔色はだいぶ良くなってる
ソヌに会ったからか?またちょっと頭をよぎっってしまった
いじわるだよな…僕は…
僕の気配で闇夜は目を覚ました
「…リハは?」
「今日はもういい。さぼる。一緒にいる」
僕はソファの端に斜めに座り半分横になっている闇夜を後ろから懐に引き寄せた
「また言われるよ?テプンさんに…ボケたって…」
「はは..いいさ…」
「ソヌに会った?」
「ぅん…ホールに来た」
「感じ変わってたね…」
「君たちは同じ事を言うっていわれた」
「そぅ…いつも一緒だからしょうがない…」
「はは…そうだ…嫌なの?」
返事をせずにくくっ..っと笑った闇夜の振動が寄りかかっている僕の懐に伝わった
僕は闇夜の髪を弄びながら後ろからの闇夜の弱点を狙って唇をすべらせた
闇夜は僕だけが知っている顔をまた見せてくれた…
光と影3 足バンさん
俺はソクさんと一緒に会場に向かった
慌ただしい場内に入るとテプンやテソンが驚いたような顔で見た
ウシク達もちょっと緊張した感じで遠くから見ている
ジュンホ君はにこにこしているけど
やっぱりミンチョルさんのことがあるからちょっと…まずい?
なんか変かな…僕がソクさんと一緒なんて…
「あの…ソクさん…」
「わかってるよ」
ソクさん、居心地悪いかな…
「わぉ珍しい組み合わせ!スヒョクさん!ファッションショーに出るって本当なんだ!」
いきなりでかい声を上げたのは…やっぱりドンジュンだ
「おじさん!どんな服着んの?やっぱすごいハデハデ?全然似合わなそうだけど」
「ふふ、風紀係…あいかわらず元気だな」
「ね!演出はっ?早撃ちショーとかしちゃうわけ?」
ぺんっ!
「痛ったいなぁ!スヒョン!ぺんぺん叩かないでよっ」
「おまえが言うとなんかいやらしいんだよ」
「僕がなに言ったっていうのさ」
ドンジュンとスヒョンさんのやりとりにソクさんは下を向いて笑っている
俺はなぜかその笑顔にほっとした
舞台裏の楽屋に行くとラブは出掛けるところだった
またミンジちゃんにこっそり会いにいくつもりらしい
ミンチョルさんに知られたら大変なことになると思うけど
俺にちょっと目配せして、ソクさんに小さく頭を下げて出て行った
「ここは隠れ家?」
どたがらばたどたっ!
俺はソファの上に散らばっているアレな雑誌を見つけて慌てて椅子の下に隠した
ソクは笑って向こう側の椅子に座った
「あぅ…これはラブが…」
「隠さなくていいよ。健全な男子の趣味だ」
ぜんぶラブなんだけど…そりゃちょっとは見たけど…
俺は気恥ずかしさを隠すために、わざとぶつぶつ言いながらその辺を片付けた
「痛むのか?」
「えっ?」
「足…」
床に膝をついた一瞬、俺が右足をかばったのを見逃さなかったのだろう
「いえ…つい…もうなんでもないんですが…」
昔撃たれた右足をなぜかかばってしまう自分
狼狽した…そんな俺の古傷のような癖を指摘されたのは初めてだった
長い沈黙
そしてずいぶんしてからソクさんは口を開いた
「かばい続けることに意味があるのか?」
「そんな…そんなこと…」
「治ったと思うのが怖いの?」
「そんなことないですっ!なんでもないんですっ!」
「忘れるのが怖い?」
「ソクさん!」
「贖罪か?」
「そんな簡単に言わないでくださいっ!なんでそんな酷いこと言うんです!
関係のないあなたにそんなこと言われたくない!」
「自分を見てるみたいでさ」
「え?」
「君の目がさ」
そう言ったソクさんの視線は意外に優しかった
長い間誰にも触れられないように閉ざしていたものが、突然こじ開けられたようだ
自分の激しい鼓動が耳に響く
その顔がソクさんには怒っているように見えてしまったのだろう
「すまない…調子に乗って立ち入りすぎたな」
ソクさんは立ち上がって部屋を出て行こうとした
「待って!待って行かないでっ!」
俺はその場で硬直して叫んだ。なぜ待てと言ったのか自分でもわからない
ソクさんは振り向き、刺すような視線で俺の目を見ていた
そしていきなり俺の左腕を引っ張りつけるとそのままドアを開けた
「どこ行くんですかっ!」
ソクさんは何も答えずに僕の手を引きどんどん歩いてホールを抜けた
未来 ぴかろん
テジュンは俺の手を握ったままフロアに指示を出している
もしかしたら彼のこんな姿を見るのは最後かもしれない…
仕事を辞めるにせよ辞めないにせよ、俺は彼がこうやって仕事に打ち込む姿を、こんなにそばで見ることは、もうないかもしれない…
だから見逃したくなくて、彼ばかりを見つめていた
こんなにまつげが長かったっけ…
あ…鼻…デカいよな…へへ
なのにお口はちっちゃくてさ…可愛い
くふっと笑ったら彼がこっちを見た
「なに?」
「…ん…」
途端に相好を崩す彼
いけね、つい『…ん…』をやっちゃったよあうっばかっまたハグされちった…
みんな驚くから…テジュン…
「くそ…抱きたい…」
そう耳元で呟く彼
ひどい奴、俺の体の芯を疼かせる…ばか
そして何事もなかったようにまた指示を出す
また俺は彼を見つめる
口元がにやけてるぞばか
そう思う俺の口元も緩んでる…
ありがとうテジュン
ありがとう…チニさん…感謝してるよ…
僕は屋上でチニさんを待っていた
なんて言おう…何を言えばいいんだろう…
好きです
ずっと一緒にいたいです…
そんなありきたりな事じゃなくて…
「遅くなってごめんね」
チニさんが来た
「まだ解決って訳じゃないけど、何とか誤魔化してきたわ。でも総支配人、辞める覚悟できてるみたい…」
寂しそうな顔をしている
「お話ってなぁに?」
「チニさん…僕は貴方が好きです。貴方とずっと一緒にいたいです」
ああ…ありきたりな事言っちゃった
だってここ屋上だも〜ん
僕、屋上っていい思い出ないんだも〜ん
「私もよ、チョンマン君…あなたといるととても…ワクワクするの…
あなたの夢を聞いていると私ももっといろいろなことに挑戦しようって思えるの…
私ね、映画の勉強、本格的にやろうかなって…」
「…え?」
「…あ…あなたも…一緒に・・行かない?」
「どっ…どこへ…」
「アメリカ…行ってみない?」
「…」
行きたい!映画の勉強しに?!行きたい!それもチニさんと一緒だって?!
でも店は…どうしよう…
僕なんか抜けたっていいかな?…猿だから…
「一年ぐらい向こうで勉強したいの…貴方はお店があるから…無理かしらね…」
「いや…行きたい…でも…オーナーに聞いてみないと…」
「…」
「…僕と…一緒に?」
「…ええ、私と一緒に…行ってくれる?」
「本当に?」
「うん」
「チニさん…」
僕は嬉しくてチニさんを抱きしめてしまった
チニさんは身を竦めた
「あ…ごめん…こんな嬉しいこと重なっていいのかなって思って…」
「でも…お店が…」
「一年たったら帰ってきますって言う。二足の草鞋でもなんでも履く!映画、作りたい。君と一緒に…」
「チョンマン君…」
「すっげー夢じゃん、嬉しい…僕、すっごく嬉しい!」
「チョンマン君…」
「…僕ね…屋上って…怖いんだ…昔スタントマンの代わりに屋上から飛び降りて大怪我した事があって…それと…」
「それと?」
「あの…屋上で…その…」
「なぁに?」
「…君には僕の事全部知って欲しいから言うけど…」
僕はあの屋上での昔の彼女との…を…正直に言った
チニさんは呆れた顔をしてたけどクスクス笑って僕の頭にゲンコを一発食らわせた
軽くね
僕はそんなチニさんが可愛くて…
「屋上って場所を素敵な場所にしたいな…」
「どうやって?」
「こうやって」
そう言ってチニさんにキスした
僕は少し高い段に立ってた
だからチニさんの顔が下にあって…とってもロマンチックなシチュエーション
こういうのをたしか雪舟とかいうんだよな…
チニさんの頬に涙が伝った
「イヤだった?」
「ちがうの…嬉しくて…」
「…ほんと?」
「うん」
頷く彼女が可愛くて、僕はつい『メグ・ライアン』にするちうを…
「やんっ!」ぼかっ☆
「…ご…ごめん…」
…調子にのりすぎたウキ…
でもチニさんはにっこり笑ってくれたんだ
僕達は眼下に広がる景色を暫く眺めていた
兄のつぶやき オリーさん
僕には弟がいる
僕とそっくりで僕より鋭敏な弟
名前までいっしょなのだ、ミン・ギョンビン
親が手を抜いたようだ
区別するためにミン兄、ミン弟などと呼ばれていたこともある
子供のころは弟は僕にくっついて遊び回った
が、ある時から弟は僕に用心するようになった
僕が弟の持っているものを盗るからだ
小さい時はおやつだとかおもちゃを盗った
弟の初恋の相手を教えてもらった時は正直驚いた
あいつは担任の教師に恋していたが、これがいい女だった
女優のイ・ミヨンにそっくりだったのだ
小学生のくせに審美眼は確かだ
それから始まり、あいつの彼女はみないい女だった
中学の時の彼女はイ・ヨンエ、高校の時はシム・ウナにそっくりの彼女だった
僕は確信した、あいつの趣味は僕と同じくらいすぐれものだと
だから常にチェックしておく必要があった
だがあいつもバカではない
高校くらいから徐々に僕と距離を取りはじめ
大学へは行かず士官学校に進んだ
学生運動をしている僕に露骨に反発したのだ
だが僕がアメリカ留学時代に課長に誘われ諜報活動を始めると、
弟も同じことをしていた
そのころには僕には妻があり、弟には婚約者がいたのでトラブルはなかった
弟は婚約者を決して僕に紹介しなかったが
だが不幸な事故でお互い婚約者と妻を失った
その後二人とも大学の講師をして隠遁生活を送ったが結局弟も僕も任務に戻った
任務が別のうちは特に弟のことは気にならなかった
が、ある日課長から連絡が入った
弟が僕のフォローに来るという
なかなか情報源の女と切れない僕に業を煮やした本部がとった苦肉の策だ
でもこれはいい作戦だ
僕の情報に基づいて処理をするのが弟の役目だ
弟は軍にいたせいで銃器の知識が豊富で実戦にも強かった
何回か一緒に仕事をして僕達はセットで仕事をまかされるようになった
情報を取る僕と処理をする弟
課長の言葉によれば絶妙のコンビだ、そうだ
ある時弟は死にそこなった
僕の情報が古かったのだ
あるマフィアのアジトをつぶしに行ったら、逆に攻撃を受けたらしい
僕はボスの愛人から情報を得たのだが、その女は昔の女だったのだ
でもボスの新しい愛人は僕のタイプではなかった
だから僕は古い愛人とねんごろになったまま古い情報を弟にやった
命からがら逃げてきた弟は僕を責めた
「新しい愛人の目がダメだからって、わかってて古い情報をよこすなんてひどすぎる
ちゃんと新しい愛人から情報を取れよ。おかげで死にそこなった」
僕には無理だ
目が魅力的でない女を口説く事はできない
それ以来弟は僕と仕事をするのをやめた
それからは別々の仕事をしていた
が弟に恋人ができたらしいという噂を聞いた
今度はどんな恋人だろう
一度チェックしなくては
そう思って弟のいるホテルにやってきた
案の定、弟の相手はなかなかだった
男だが目がすごい
あんな目をしたのは女でもそうはいない
アナスターシャに勝るとも劣らない
弟は警戒心丸出しで僕を嫌がった
が恋人の方は素人なので無防備だ
最初は僕と弟の区別がつかなかったらしい
待ち伏せして少し渡りをつけた
あとはどう料理するかだ
ただ弟の恋人の他にもここはなかなかいい人材がそろっている
例えば、今僕の方に歩いてくる天使
彼もなかなか可愛らしい
バレンチノを脱いで弟と同じラフな格好をしているのでたぶん弟と間違えているのだろう
ギョンビン、早くボタンはずしの練習しようよ、と手を振って僕の方に歩いてくる
ボタンはずしとは何だろう
でもあんなに可愛らしい彼と何かするのはきっと楽しいだろう
弟のふりをしてちょっとリサーチしてみよう
シチュンとテプン ぴかろん
俺は一人でランチを食べた
ふと左の方を見るとあいつらがいちゃついてるのが目に突き刺さった…
チェリムとテプンさんだ…
はぁ…見なきゃいいんだけど見てしまう
だって俺は…チェリムがやっぱり好きだからな…
「これ、一口で食べれる?」
チェリムの奴があんまり可愛い笑顔で言うもんだからつい頷いてしまった
「あ〜ん」
「あーぐっ…」
ジャム入りドーナツは好きだ
でも一口はかなりきつい
前にテジとハンバーガーを食ったとき、一口でいっちゃって苦労した…
顔が伸びて元に戻らないかと思ったもん…
いや、一口でイケるよ、楽勝
でもよぉなんでチェリムの前で…
だってよぉ…ホッペタがボインになるんだぜ
チェリムの前でそんなホッペをボインにしたら…あいつ気にしないかなぁ
とか思いつつ俺はチェリムが押し込んだドーナツを食った
チェリムの目がまん丸になる
「すっごぉい、口の中どーなってるのぉ?どうやったらできるのぉ?」
「はっへ」
「え?」
俺はシュガーのせいでうまく喋れない(シュガーのせいかどうか解んないけど)
チェリムの顔の前に手をかざして待ってくれのポーズをして、5,6噛みすると頬袋にドーナツを収納した
「やっぱ一口はキツいわ」
「すっごおい!なんでそんなハッキリ喋れるのぉ?」
「モグモグごっくん…はぁ…キツ」
「もう一回やってぇ」
「もういいよ、腹いっぱいだよ、あ〜口のまわりが砂糖だらけ…」
俺は手のひらで口の周りを拭こうとした
するとチェリムが俺の手を掴んでこう言った
「私がやったげる♪」
「お…おう」
そして俺に顔を近づけると…俺の口の周りについた砂糖を…ペロペロ…舐め舐め舐め舐めなーっ!
俺は爆発しそうになった
ヤバいっ!
ペロった後ヤツは…俺にっ俺にっ…キキキキキスをっ
どくん☆
「おまえっ…」
「うふ。サービス」
「ばかっ!…ひっ人前でこんな事すんな…うう…」
「だってテプンあんまりしてくんないんだもん」
ううう、かわいい。可愛いがこんな人目につくとこで…こんな事されちゃぁ…俺のからだのいちぶがえらいことになっていて…うう
必然的に前のめりになった俺を見てチェリムは心配そうに顔を覗き込む
「くっつくな!」
「…なんでよ!心配してんじゃない」
「…いいから…離れないとずっとこの姿勢でいなきゃなんねえ。お前もう部屋に帰れ」
「なによっ冷たい!…でもあんなドーナツ一口でいくんだから私の胸なんか…二口ぐらいかな?へへっ」
「…おめーの胸なんか噛みつく部分ねぇよ!」
「何よっ失礼なヤツ!許さん」
チェリムはふざけながら俺のそばに寄ってきて(来るなよっ!)体を起こさせ(やめろよっ馬鹿女!)ボディに一発パンチをくらわそうとして…
「何この武器?」
そう言ってその…えらい事になってる『俺』を…掴みやがった
もちろんズボンの上からだぞっ!誤解すんなよ!
そして…涙ぐみやがった
泣きたいのはこっちだ!
「あう〜もうお嫁にいけないよぉ〜」
「…馬鹿…お前ならいくらでも貰い手あるよ…」
俺はそう言ってやった
あいつは俺をじっと見つめて真面目な顔してこう言った
「貰い手?何それ…」
「何って…お前、可愛いし綺麗だしかっこいいし強いし頭いいし金持ちだし、どんな男だって選り取りみどりだぜ…」
「…何それ…」
「…だから…」
「…なによ…テプンなんにも解ってない!」
アイツはそう叫んで行ってしまった
だって…言えないだろ…「俺が貰ってやる」なんて…
アイツとは不釣合いだ…
そんな事はじめから解ってたのにな…
俺はまだ治まってくれない体の一部をもてあましながらテーブルに頭を乗せた
秘密部屋19 妄想省家政婦mayoさん
僕の想いを少しづつ受けてくれるようになってきたのに…
ざわつくんだ…どうしても…信じてるのに…
あの時よりも比べられないくらいの
鼻血が出るほどの笑顔を僕はもらってるのに…
好きだと言ってもらって満足したいのか?
ひとつになって自分のものにしたいのか?
闇夜の髪を弄び唇を幾度もすべらせながら
頭の中でそんなことばっかり考えていた…
僕はまた自分の吐いた蜘蛛の糸に絡まっていた…だから…
ざわついている…
テソンの心の中が執拗に続く唇から充分に伝わってきた
執着する性格がまた出て来たのか…
何故急ぐ…
何故信じない…
自分らしくって言ったじゃないか…
こういうのは嫌だ…
急に闇夜が僕の手首を掴んだ
僕はハッとして闇夜の首筋から唇を離し掴まれている自分の手を見た…
「…ぁ……」
僕の手は闇夜の鎖骨〜肩にあった…
闇夜のシャツが肩まではだけ白い肌が露出している…
僕は自分で気づかないうちに闇夜のシャツのボタンを外し
鎖骨に手を伸ばし闇夜の肩までシャツを剥いでいたんだ…
嫌がることはしないから…無理はしないから…
そう言ったから闇夜は僕に刃を向けなくなったのに…
これじゃ刃を向けるどころか目の前からいなくなるじゃないか…
僕は頭の血が一気につま先まで下降する感覚に襲われた…
すぐ手を引っ込めようとしたが闇夜は掴んでいる手首を離さない
力が強いというより腕の動きを止められている感じだ
下から強く押さえられた手首は下手に動かすと腕まで捻ってしまう…
さすがだな…有段者…こんなときに思い出す..間抜けな僕…
観念した僕は闇夜が手を離すまで待つしかなかった
不安 ぴかろん
僕はこの頃眠れない
でも先生が心配するので寝たふりをする
先生の肩に頭を乗せて、体をぴったりくっつけて、深く呼吸し続ける
眠りたいけど眠るのが怖いんだ
先生は僕の頭をそっと撫でてくれる
そしてそのうち寝息を立て始める
先生の心臓の音も、先生の規則正しい呼吸も、僕の子守唄にはならない
先生と一緒に生きていくと決心してからこっち、僕は夢を見るようになった
先生と一緒にお義父さんを訪ね、真実を語る
お義父さんはにっこり笑って僕を抱きしめてくれる
『いいんだよ、ウシク』
そう言って許してくれる
そして僕達が立ち上がり、帰ろうとするとお義父さんが倒れる
彼女が泣き叫びながらお義父さんを抱きかかえる
お義父さんは息をしていない…
僕は叫んで飛び起きる
いつもその夢にうなされる
怖い
怖い
正夢になったらどうしよう
初めてその夢を見た時、先生は、取り乱す僕を抱きしめてずっと撫でていてくれた
先生は何にも聞かないんだ
でもきっと何もかも解ってるんだ
リハーサルの時、ふっと僕に
「悪い事ばかり考えるな」
って言った
「なにそれ」
「いや、なんでもない」
意味は解ってた
でも…もしも本当の事をお義父さんに告げたら…
きっとショック受けるだろうな…
病気がますます悪くなるかもしれない…
僕が辛抱すれば…
けど…自分を騙してるときっとボロが出る…
祭が終わるのが怖いんだ
規則正しく呼吸している先生の体にしがみつく
寝ぼけながら僕をしっかり抱いてくれる先生
僕は身を起こして先生の顔を見る
先生の唇、薔薇の花びらみたいだね
柔らかそうで優しそうでさ
ねぇ僕の手には棘が生えてるよ
僕は先生の唇をなぞる
棘で傷つけないように
僕の欲しいものがここにあるのに
僕は手に入れられない
きっと僕はここから逃げ出してしまうだろう
怖くて
僕の真実を生きていくのが怖くて
人を傷つけるのが怖くて
先生
愛してるよ
なんで先生なんか好きになっちゃったんだろ
なんで先生と会ってしまったんだろ
先生…
お義父さんを殺せないよ…
お義父さんを傷つけたくないよ…
ごめん先生
僕
ダメだ
先生と一緒に生きられない…きっと…
すすり泣く僕の唇を捉える薔薇の花
先生…
「僕が一緒にいても怖いの?」
「…」
「何もせずに諦めちゃうの?」
「先生…だって…」
「どうして悪い方にばかり考えるの?」
「傷つけたくない!」
「お義父さんを傷つけないかわりに自分を切り刻むのか!」
先生が珍しく声を荒げた
「ウシク…きっとうまくいく…何もかもうまくいく」
「そんな…」
「信じろよ!うまくいく、みんなが幸せになれるって。君が幸せでなきゃお義父さんだって幸せにはなれない」
「…」
「それとも、僕がいやになった?」
僕は首を横に振った
涙が飛び散った
先生は僕の頬を撫でて唇を吸った
「何が起こっても、僕が君を支えるから…信じて」
信じたいよ…うまくいくって信じたいよ…
それでも怖さは消えなかった
シチュンとテプン 2 ぴかろん
あれ?ラブラブのはずのチェリムが泣きながら走ってくる
さっきキスしてた(ズキン)のにな…
どうしたんだろ…気になる
俺は走り抜けようとするチェリムの腕を掴んだ
…とたんに世界が一回転した…
ずだーん☆
「でぇぇぇっ…おまえ…投げるか?普通…」
「うっううっ」
「いてぇなぁ、ごめんぐらい言えよ…どうしたんだよ…ててて」
「うっうっテプンのばかっテプンのばかっ」
「ケンカかぁ?」
「うっうっおよっおよっお嫁のもらっもらっ貰い手いっぱいあるだろってひくっ」
「?…お前の嫁の貰い手?…そりゃ引く手あまただろ?」
「うえっうえっなんでテプンがそんな事いうのよぉっ」
「え?」
「あたっあたっあたしを貰ってくれっくれっくれればいいじゃないのぉあああんあああん」
うわっ…派手な泣き方…しょうがねえなぁ
「なんなら俺が貰ってやろうか?」
なぁんてね、またぶたれるかな?ん?
「ひくっ…」
「なにマジな顔してんだよ…ばーか。俺に気がない女、嫁に貰えるかよ…」
欲しいけど…
「…なんでテプンは言ってくれないの?アンタはそんな風に軽く言えるのに…」
「…それは…」
きっと…マジだからだ…
マジにお前の事思ってるからだ…
マジにお前と結婚したいと…多分…
俺はなんと声をかけようか考えていた
テプンさんがこっちを睨んでる
いや、睨んでるって言うより…泣きそうな顔に見える…
何かがんでるんだろ…
「あのさ、テプンさんなんであんな前のめりなの?」
「うっううっうえっうえっ…」
「お、おい、なんかされたのか?」
俺はチェリムの腕を掴んで顔を覗き込んだ
目の端で、動き出したテプンさんを捕らえた
でも前のめりの姿勢…
何やってんの?あの人…
そんな姿勢でもえらいスピードでこっちにやって来た
「手を離せよ」
「…あのテプンさん、なんでそんな姿勢…腹でも痛いんですか?またコイツがボディ攻撃したとか?」
チェリムはテプンから顔を逸らして逃げようとしている
俺は力を入れて押さえ込んだ
「チェリムから手を離せ!」
「テプンなんかしらないっ」
「えっと何がどうなってるんですか?」
「今立ってて立てねぇんだよ!」
「は?」
「…解れよばかっ」
チェリムは腰をかがめているテプンさんの尻に蹴りを入れて、そして俺の腕をスルリと振りほどいて走って行った
「いってぇ…暴力女…」
「何がどうして立てないんですか?」
「だから立ってて立てねぇんだ!…あ…ようやく治まった…」
…ああ…そーいう…何やってんのこの人…
なあんでチェリムはこんな人がいいのかなぁ…
俺はまだうずくまってるテプンさんを見下ろして、ため息をついた
光と影 3 足バンさん
ソクさんは何やらホテルの奥に進んで行く
警備室と書かれた部屋の前で待っていろと言われた
俺はわけがわからぬまま白い殺風景な廊下でぼんやりと立っていた
ソクさんはひとりの警備スタッフらしき人と出てきて
また俺の腕を引っ張るとその人と共に地階まで下りた
俺は内心期待してもいた
ソクさんが俺だけになにか面白いものを見せてくれるんじゃないかと
あとでみんなに自慢ができることでもあるんじゃないかって、そんな風に考えていた
でもとんでもない勘違いだってことはすぐにわかった
いくつかの電子キーと暗証番号で開けられたその部屋は、貸し金庫室のような場所だった
警備スタッフは外で待っている
ソクさんは俺を招き入れるとドアを閉めた
「あの…」
ソクさんはある棚の白い金属の箱を選び、
部屋の真ん中のデスクに置くと鍵でその箱の四角い蓋を開けた
何気なくソクさんが取り出した物を見て一瞬足がすくんだ
銃だった
「ブローニング-1910だ。軽すぎるか」
「ソクさん…」
ソクさんはその灰色のかたまりを無造作に投げてよこした
よけるわけにもいかず、俺はその銃を両手で受け止めた
俺の額からどっと汗が噴き出した
「ソクさん…」
「安心しろ、不法所持じゃない」
ソクさんはまた小さな箱を取り出してデスクに置いた
「装填してみろ」
俺はあっけにとられながら思いきり首を横に振った
重量はまったく違うが本物の鈍い光は忌まわしい過去を思い出させる
「嫌だ…なんでこんな酷いことをするんだ…」
「スヒョク。最初は辛い過去を引きずる可哀想なやつだと思った…
でも君は心を閉ざして、そして平気なふりをしている」
「そんな…」
「モデルガンを弄んで過去を忘れたふりをしているからだよ」
「いつまでもウジウジしてろって言うの?」
「ふりをするなと言ってるんだ」
「過去の話はしなくていいって言ったじゃないですかっ」
「しなくていい。でも自分をごまかすこととは違う。ごまかしているから痛くもない足をかばうんだ」
俺はなんだか無性に腹が立ってきた
ソクさんに何がわかるっていうんだ
乱暴に銃からマガジンを取り出し本体をデスクの上に置いた
そして箱の中の弾を詰めはじめた
でも2発詰めたところで…いきなり涙が溢れ出した
思い出すたびに心が潰れそうになるあの日のできごと
極限の緊張。激痛が走る足。目の前を飛び交う弾丸の閃光
あれは夢じゃなかったのかって…ずっと思おうとしてきた
泣く時はいつもひとり暗くした自分の部屋の中だった
歯を食いしばって、ぼやける視界で6つの弾を詰めマガジンを装着した
白い室内に響く冷たい装着音
もうそこでだめだった
俺は銃を持ったままデスクに突っ伏して泣き出してしまった
近づいたソクさんがそっと銃を取り上げ静かにマガジンを抜く
「辛かった?」
俺は返事をしなかった
「僕もずっと辛い…でも逃げてない…忘れたふりもしない」
ソクさんは銃を元あったようにしまうとその金属の箱を片付けた
そのまま俺の前を通り過ぎようとした時、俺は咄嗟にその腕を掴んでしまった
行かないで
ぐしゃぐしゃの顔で見上げると…
ソクさんは子供を見るような優しい目で見下ろしている
ソクさんは俺を引き上げるとそっと抱きしめた
もう虚勢をはることができなかった
俺はひとの胸ではじめて泣いた
追い込み ぴかろん
チッ「総支配人、人生相談ブースのことですが」
チッ「なんだ」
チッ「イナさんの」
チッ「イッイナっ?!」
何慌ててんだよ、ここにいるじゃん俺
チッ「はい、イナさんの担当するカジノコーナーの真ん中に作ってほしいと…」
チッ「は?」
チッ「風水で占った結果その場所が最適だとかで…」
チッ「ちょっと待って」
テジュン…いや、にゃ〜(えへ)は俺を見つめる
ああ〜ん、かわいい目
「どうする?」
「え?なあに?」
「かわいい声出すな、人生相談のブースだよ、お前のカジノコーナーのど真ん中に設置って…」
「却下して」
「ん…」
チッ「無理だそうだ」
チッ「了解…なんとかします」
「テス君に頼めば?キム次長と懇意だから」
「あっそーだな」
チッ「『オールイン』のテスさんに説得頼んでみてくれないか。うまく処理してくれそうだ」
かっこいい〜『チッ』てのがかっこいい〜
「なに見てんの?」
「ううん、かっこいいなぁとおもって」
俺はひらがな喋りで言ってみた
「馬鹿、ここで抱くぞ!」
それは無理だろうテジュン…
俺は吹き出してしまった
「やろうと思えばできるぞ!」
ヘンタイ!
思い切り睨んでやるとテジュンはいたずら小僧のような顔をして俺のほっぺたをつねった
現場は追い込みで大忙し
なのに俺はテジュンと手を繋いで…幸せだな…
テジュンはホールの設備の点検を終えると、俺の手を引いて、次の現場へと向かった
「どこ行くの?」
「中庭。その前にちょっとトイレ…」
なによ、トイレまで手繋いで行くの?
連れションだよと笑ってどんどんトイレに入っていくけど、おいって。個室?!
「あっお前っ何考えてあっあ…」
テジュンが俺を個室に連れ込んで、いきなり首筋にキスをした
「ふふーん…ここでしてもいいなぁ…」
「ばかっ!」
ぼか☆
俺はあんまりなシチュエーションに情けなくなってテジュンの頭を殴って個室から逃げた
「ってぇ…冗談だよイナ」
冗談にも程がある!あんまりだ、馬鹿!
「ごめんってイナ〜怒るなよぉからかっただけだよぉ」
嘘付け。絶対本気だった。目が輝いてた。フン
「仕事しろよっ!」
「するよぉちょっと待ってよ…ねえ」
「なにさ」
「ちゅ」
「…んもっ」
ちうちうはむはむはむはむ
んもうっ…トイレの前でしなくてもいーじゃんかっ!ばかテジュン!
遠くの廊下を通り抜けるスヒョクとソクが見えた…
もしトイレでソクに襲われたら…
ちょっと馬鹿なことを思い、それをかき消して、俺はテジュンのキスに集中した
「やっぱテジュンがいいや…」
「誰と比べてんの!」
「えへへ…」
「こいつ!」
俺はテジュンの首に腕を巻きつけてもう一度テジュンの唇を味わった
ソクは…スヒョクと…こんな事してんのかな…
…まさかね…まさか…
「こらっ集中しろよ」
「集中できるようなキスしてよ」
「じゃ、トイレいこ」
ぼか☆
俺はあきれ果ててソクたちが降りて行った階段の方へ歩いて行った
…降りようとしたときテジュンが俺の腕を掴んで引き戻した
「気になるの?」
「え…」
「気づいてないと思った?この浮気者」
あは…ばれてた…
俺はちょっと残念に思いながらテジュンの手を握って中庭に向かった
やっぱ…サヨナラ…
弟のつぶやき オリーさん
キツネはとても魅力的だ
洗練されていて間をとるのがうまく、すべての感情を目で表すことができる
最近は、わがままを言ったり拗ねたり甘えたりしてますます魅力的だ
僕はキツネにぞっこんだし、キツネも僕を想ってくれる
すべて順調だった
そこへ兄が現れた
キツネは最近弱ってる上に無防備なので、早速兄にコマされた
兄にキスされて落ちなかった者はいない
僕は真っ青になった
が、キツネは僕のところへ戻ってきた
案外免疫力があるみたい
よかった
でも油断はできない
僕とそっくりで僕よりはるかに成熟している兄
名前までいっしょなのだ、ミン・ギョンビン
親の手抜きだ
区別するためにミン兄、ミン弟などと呼ばれていたこともある
子供のころは兄にくっついて遊ぶのが楽しかった
が、ある時僕は気づいた
兄は僕の持っているものを欲しがるのだ
小さい時はあまり気にならなかったが、
高校のとき初恋の小学校の先生に会ってから僕は兄を用心するようになった
先生は歌うように僕に聞いたのだ、「お兄さんはお元気?」
兄は先生とデートしていたのだ
中学の時の彼女も、この間別れた彼女も皆兄が原因だった
おかげで、ヨンエもミヨンもウナも失った
僕は大学へは行かず士官学校に進んだ
パイロットになりたかったのもあるが、
兄と関わりたくなかったのかもしれない
だがあの事件が起こり僕は軍にいられなくなった
課長に誘われ諜報活動を始めると、兄も同じことをしていた
兄には妻がありアメリカで暮らしていたので平穏だった
僕は婚約者を決して兄に紹介しなかったが
そのうち不幸な事故でお互い婚約者と妻を失った
二人とも大学の講師をして隠遁生活を送ったが、結局兄も僕も任務に戻った
ある日課長から連絡が入った
バレンチノを着て兄のフォローに行けという
兄は天才的に女あしらいが上手いので敵の女からうまく情報を取っていた
影のコードネームがエロミンという噂もあった
が兄はいわゆる女たらしではない
その都度のめりこむタイプなので、後が困るのだ
作戦を実行する段階になっても兄は女の所へ入り浸りなのだ
だから任務の仕上げをするのが僕の役目だった
このやり方はとても上手くいった
情報を取る兄と処理をする僕
課長の言葉によれば最強のコンビだ、そうだ
ある時僕は死にそこなった
マフィアのアジトをつぶしに行ったら、逆に総攻撃をくらった
兄はボスの愛人から情報を得たのだが、その女は昔の女だったのだ
でもボスの新しい愛人は兄のタイプではなかった
兄は古い愛人から得た古い情報を僕に伝えた
おかげで作戦は失敗した。警備システムすべてがかわっていたのだ
僕は兄を責めた
兄は「僕には無理だ。目が魅力的でない女を口説く事はできない」と言った
僕は兄と仕事をするのをやめた
兄の趣味のせいで僕は死にたくない
今回の警備の仕事は息抜きになると思って引き受けた
キツネに出会った
僕はこのままキツネのそばに残ることにした
兄は何しに現れたのだろう
キツネは熱烈キスをされたというのに、
もしかしたら店の新人なのかなあ、などとのん気にかまえている
兄がBHCに入るなんて…
マヨピーに聞いてみようっとなどとキツネは落ち着いている
でもマヨピーは花粉症で調子悪いみたいだし、プライベートでも忙しそうだしなあ
まだ言ってる。おまけに…
君のお兄さんはキスが上手だよ
そんなら兄さんのとこへ行ったらっ!
僕は拗ねたふりをしてキツネを脅かす
冗談らよ、冗談。らりるれは他の人の前ではれったいしないから
キツネはあわてて僕の機嫌をとる
可愛い…だから心配…
僕はキツネを胸にきつく抱き寄せる
キツネはミンはあったかいのら、と言って気持ちよさそうに目を閉じる
目を閉じてもキツネは魅力的なのだ
キツネのこんな顔を他の誰にも見せたくないのら…
あら…らりるれがうつった…のら…
不安な気持ちを打ち消すように僕はずっとキツネを抱いていた…のら
キムの館 妄想省家政婦mayoさん
「駄目。キムさん、ここは駄目」
「だってアタシの占いではここって出たんだもの」
「こんな真ん中に相談スペースなんか置いちゃったら運が渦巻いちゃって駄目だよ?」
「でもアンタ、運気を全部渦ん中に吸い取っちゃうっかもしれないじゃなぁ〜ぃ?」
「…(→_→)」
「ね、テス君…」
「はい、キムさんっ」
「後ろにいる、アンタの彼氏…」
「ちぇみ?」
「そっ。何も言わなくても目で語るのね…『テスの言うとおりにしろ』って語ってる」
「えへっ^^; そう?」
「…(→_→)」
「キムさん、そうだって」
「アィゥ…アタシもそんな彼氏が欲しいわぁ」
「仕事運がいいのはね、北西なんだよ、キムさん」
「おや、そうなの…」
「それでね…んっと…何だっけ...ちぇみ〜^o^ 忘れちゃった^^;」
「ん...水...さっき教えただろう?テス..^^」
「あ〜ん!ごめん〜」
「で、何なのよ、ちゃんとアタシにも教えてよ」
「あ、水を置くといいの」
「水?」
「ん〜金魚鉢置くとかぁ、水にキャンドル浮かべるとかぁ、花を生けるとかするといいんだよ?」
「あらっ…そう…じゃぁブースの周りにキャンドル並べようかしら…」
「ちぇみは消防士もしてたから火事になっても大丈夫だよっ」
「アンタの彼氏…何でもやってんのね〜〜まっ、だからお悩みも多かったわけね」
「…(→_→)//」
「余計なお世話?んまぁそんなこといわないでさ、アタシとも仲良くしてよね…」
「テス、祭りの間だけだからな…」
「わかってる。ちぇみ〜」
「ん〜....テス〜」
ここは平和である…
秘密部屋19 #混濁2 妄想省家政婦mayoさん
テソンの手がシャツに伸びてきていた
手は止まることなくボタンは難なく外された
考えてみればテソンは料理人だ...それも日本料理が専門だ...
手先が器用で当たり前なのだ...
おそらくテソンは今自分が何をしているかわかってないはず
テソンの手は鎖骨にそって手がなめらかに動くとシャツを肩まではいだ...
動きは速く即座に手首をおさえるのがやっとだった...
闇夜は何も言わず僕の手を掴んだままでいる
僕は闇夜の沈黙が怖かった。いきなり怒られた方がまだましだった
「...ごめん...僕...」
「…」
「...僕どうかしてた...」
「…」
「.....本当にごめん....」
闇夜のもう片方の手が僕に伸びてきた
僕はその手を取って自分の頬に持っていき自分の手を重ねた
「...怒らないの?...責めないの?...」
「怒れば2人とも楽になる?...それですっきりする?」
「....mayoシ.....」
「お願いだから...」
「ぅん.......」
「ざわついた気持ちでこういう事..しないで...」
「.....ごめん...」
「嫌いになりたくないの......」
僕は何度も頷いた。闇夜は掴んでいた僕の手を離した
僕はその片手で闇夜のシャツを元に戻しボタンをかけた
「テソンシ..何故気にするの....」
「.......正直惹かれてるでしょ?奴に...」
「確かに彼には充分な魅力がある。大人の男に少年の眼差しが共存してる...」
「ほらっ、やっぱり気に入ってる...」
「特別に見たことはない。わかってるじゃない...」
「わかってる…でも心が持っていかれそうで不安になるんだ....」
「何だか信じてもらえないみたいで哀しいよ.....」
「.....mayoシ」
闇夜はもう少し眠るから...とソファに横たわるとすぐ寝入ってしまった
僕はいつもの毛布を掛け、闇夜にデコxxxをしてソファを離れた
ちょうどその時秘密部屋にちぇみが入ってきた
シチュンとテプン3 ぴかろん
俺はテプンさんと中庭を散歩した
「なんでケンカになったんすか」
「いつもの事だよ。俺たちはケンカしてナンボの仲だ」
「何言ってんですか、キスしてたくせに!」
「…見てた?」
「あんなトコで堂々と…」
「…はぁ〜」
「で、テプンさん『俺が嫁に貰ってやる』って言わなかったんすか?なんで?」
「…俺とあいつが釣合うと思う?」
「釣合い?」
「…あいつ、お嬢様だし…俺は…こんなだし…」
「でも好きなんでしょ?」
「…うん…」
「結婚したいんでしょ?」
「そ…そんな…それは…だから…釣合わないじゃんさ」
「らしくねぇなぁ、そんな事気にする人じゃないじゃん、テプンさんは!」
「…けど…やっぱし…」
「ばっかだなぁ、テプンさん、あいつを逃したら一生嫁なんか貰えないですよ、絶対!俺が断言します!」
「…」
「アイツ、決定的な言葉を待ってますよ…『結婚しよう』でなくても『好きだ』とか『愛してる』とか、言った事ありますか?」
「…言ったような、言わなかったような…」
「アンタ、スハさんには『愛してます』連発してたのに、チェリムから聞きました」
「なんでチェリムがお前に…」
「言いやすいんでしょ?」
「…」
「ぐずぐずしてると俺、あいつ、貰っちゃうけどいいですか?!」
「何?!」
「アイツの気持ちは今テプンさんに向いてるけど、テプンさんが放っておくなら、俺…俺の方、向かせる自信ありますけど、どうします?」
「お前、チェリムの事好きだったの?」
何言ってんの、この人
気づいてなかったの?!
鈍感!
「…そうだったのか…それでちょっかいを…」
あーあ暗くなっちゃったよ…
「…俺はまたお前がその、アイツを弄んで捨てるんじゃないかと…」
何よそれ!俺の事一体なんだと思ってたんだこの人!
「…そうか…じゃあ…堂々と…勝負…しなきゃな…」
「あのねー、テプンさん。もう勝負はついてんの。アンタ勝ってるんだよ、解ってる?
せっかく勝ったのに優勝辞退するんだったら、俺、今からでもトロフィー貰いに行くぜ。いいの?
俺、本気出してもいいの?!アイツを夢中にさせるよ、いいの?」
テプンさんは力なく俺を見た
「お前…カフェ経営してんだよな…財力もありそうだし…お前が夫の方が…いいよな…」
あーあ
これだから…
でもマジなんだな…頓珍漢だけど…
「テプンさん、チェリムの気持ち確かめたの?」
「え?」
「アイツ、テプンさんの事が好きで好きでたまんないんだぜ、悔しいけど」
ほんと、どこがどう俺よりいいのか解んないけどさ
「…」
「告白してきたら?自分の気持ちを正直に伝えてみたら?」
「…」
「しょーがねーなぁ…四番、キャッチャー、ソ・テプン…それ、勝負してこいっ!」
「…お前…」
「行けよ!テプンさん!」
「…シチュンお前…」
「アイツの気持ち、それが一番大事じゃん」
「…解った…」
「ホームランかっとばしてくれよ、テプンさん!」
「シチュン…」
「なにさ」
「…サンキュ…」
「…ああ…」
走り出したテプンさんの後ろ姿が急にぼやけた
あれ…俺、泣いてるの?…まさかね…
「こんな時もあるさ」
俺はぎゅっと目を瞑って、二人がうまくいくように心から祈った
携帯 オリーさん
「もちもち、僕はイ・ミンチョルれす。お話ししたいのれ、後でお電話くらさい。待ってましゅ」
「俺だ、イナだ」
「イナ、久しぶりだな」
「ミンチョル、何だよ、あの留守電のメッセージは」
「かわいかったろう?」
「アホか、お前は。あのかまととぶりは何だよ。どこか悪いんじゃねえのか?」
「らって、ミンがかわいいってほめてくれるんらもん。っといけない、他人にはちゃんと話ししなきゃ叱られるんだった」
「お前達、こもってばっかりいるから煮詰まってるんじゃないか」
「そういうお前こそ、人前でちゅうちゅうやりまくってんじゃないか」
「くっ、そ、それはテジュンが悪いんだ。それより話って何だよ」
「祭のことなんだけど、うまく進んでる?」
「さあな」
「さあなってお前やってないの」
「うっ…ちょっと色々取り込み中で…」
「しょうがないなあ」
「お前こそ、そろそろ出て来いよ」
「くうん、らってお外に出ると危ないってミンが言うから」
「何だ、それ?」
「実はミンの兄さんが来てるんだ」
「あいつに兄さんいたのか」
「うん、そっくりな兄さんがいるんだ。しかもめちゃめちゃキスが上手いんだ」
「キスが上手い?」
『イナ、誰がキスが上手いって?』
『テジュン、お前の話じゃないよ。気にするな』
「なんだ、またテジュンさんと一緒か」
「まあな、へへっ。で何でミンの兄貴キスが上手いって知ってるんだよ」
「くうん、僕されちって、とっても感じちゃったんらもん」
スパコーーーンっ!
『痛いりゃないか、ミン。ぶつなよ』
『何の話してるんですか?その電話、相手は誰?』
『イナらよ、イナ。ほんとらってば…』
「そっちこそ、ミンがいるじゃないか。で何でお前がミンの兄貴にキスされてんだよ」
「さあ。美味しそうに見えたのかなあ…」
「はあ?」
「らからまたちゅうされると困るからお外にれるなって」
「あほらしい!そんなもん、相手にしなけりゃいいだろうが」
「そうだよな。そうそうこもってばかりもいられない」
「じゃあ降りてこいよ」
「そうする。テジュンさんと一緒なら、代わりにちょっと話詰めといてくれ。僕はスヒョンのとこへ顔出してみるから」
「わかった。で顔は直ったのか」
「ああ、ほとんど大丈夫だ」
「まあ、お前元から顔でかいからそんなに気にすることねえぞ」
「……」
「もしもし、おい、もしもし、ミンチョル?」
「誰が顔でかいって、もしかしてこの僕のこと?」
「ケホン、コホン。いえ、間違えました…」
「わかればいいんだ。じゃ、後で。パン!」
『うん!久々に耳切りが決まった。それにしても失礼な奴。この僕が顔がでかい?フン!』
「ったく、でかいものでかいって言ってどこが悪いんだよ。ちぃ!」
「そういうことで僕は仕事モードに入ります。ミン、いいね」
「兄さんには気をつけて。僕ずっとそばにいるから」
「わかってるのら。心配ないのら」
「だから心配なの!この隙男が!」
「何だって?スキオトコってどういう意味?新語?」
「そうです。自分の出してるフェロモンに気づかずフラフラする奴の総称です」
「なんか響きがいいね」
スパコーーーンっ!
『ミン!僕は将軍じゃないのら!』
落とし穴 ぴかろん
中庭に出たテジュンは芝の敷かれている地面を注意深く見つめている
ああ…かっこいい…
「なにしてんの?」
ちょっとひらがな喋りで聞いてみた
テジュンはニヤけもせずに言った
「落とし穴、残ってないかと思って」
「へ?」
「男組の連中が落とし穴掘ってたらしい。埋めさせたんだけど、隊長がボケてるからね、今」
「ふーん」
「で、確認。お客様が落ちたら大変だ」
「見ててわかんの?」
「いや、今から僕、歩くから、落ちたら助けてね、ニャー」
「へっ…」
「じゃ、そこで待ってて」
そう言うとテジュンは慎重に芝の上を歩き出した
端から端までそれほど距離はないのだが、彼は慎重に体重をかけている
かなりの時間が過ぎて俺は退屈になってきた
「大丈夫なんじゃないのぉ?」
「わかんない」
「俺も手伝う♪」
「よせ!危ないから」
「大丈夫だって。そんなの残ってな…」ズザザザーッ
「イッイナっああっ」ザザザザーッ
おっこった…二人とも別々の落とし穴に…
「ちきしょー、男組ぃぃぃっ」
テジュンの叫び声が聞こえる
「イナ、大丈夫か?」
「…ん…ちょっと足が…」
「なにっ!あっくそっ結構深い…イナ、お前の方は?深いのか?!」
「…ん…頭の上1mぐらいありそう…てっ…」
「そんなに…くそーっ待ってろよ、今助けてやっから」
え〜テジュンが俺を助けるぅ〜?
無理じゃねぇの?穴から這い出すのも無理なんじゃねぇの?鍛えてないし…
あの腹筋じゃ…
俺は少し挫いたらしい足を見つめて狭い落とし穴で頭上の丸く切り取られた空を見上げた
まだ日は高いのかな?何時だっけ
「イナ!返事しろよイナ!」
「あん?」
「大丈夫?怖くない?」
「大丈夫だよ」
「今無線で連絡とったから…」
「あーい」
俺は落ち着いてた
穴の中なので大声を張り上げないと声が聞こえない
足さえ挫いてなきゃ、こんな穴登れるのになぁ…
そしたら俺、テジュンを助けてやれるのに…
穴の中は人が二人入れるぐらいの広さだ
こんな中にテジュンと一緒に落ちてたらアイツ…
またきっと変な事考えるだろうな
ここだと逃げられないか…でも…くっつきすぎてできないか…あっ俺もテジュンに影響されてヘンタイ思考になってきてる…
一人で笑ってたら頭上が少し暗くなった
人の気配がした
はやっ
もう助けに来てくれたんだ
差し伸べられた手を掴み、上を見上げるとテジュンがいた
「えっ?」
テジュン、ほんとに助けに来てくれたの?!
いや…違う…ソクだ…
「ほら、掴まれよ」
「…」
「通りかかったらお前の笑い声が聞こえた」
笑い声?聞こえたの?
「そっちの穴にテジュンがいるから先に…」
「あっちはスヒョクが助けてる」
「…あっちにいけよ」
「何意識してんの。たまたま覗いたら君がいたってだけだ。掴まらないならほっとくぞ」
なんだかイヤだった
スヒョクに見せた笑顔が頭をよぎる
スヒョクと消えた廊下を思い出す
何を意識してるんだろう…俺
「僕の顔見るとザワつくの?まだ…」
「…」
そうだよっ
「スヒョク、こっちと変わってくれ、救助を拒否してる」
ソクは頭上の空間から消えた
ホッとした
ソクの手の感触が残ってる…堅い手だった
銃を扱う手…テジュンの手とは違う…
俺は代わりに来たスヒョクの手を掴んだ
でも足が痛くて体がうまく持ち上がらない
「だめだ。ちょっと待っててください」
そういうとスヒョクも頭上から消えた
どうやらテジュンを先に助ける事になったらしい
ひーひー言う声がする
かっこわりぃ…
ずるずると地を這う音がする
そしてテジュンが頭上に顔を出した
泥が顔についてるぞ、かっこわりぃなぁ…
「イナ、ソクとスヒョク君に助けてもらって…僕男組に抗議に行かなくちゃいけないから…」
「…」
「わかった?」
「やだ!」
「こら!駄々こねるな!」
「…待ってる!テジュンのこと待ってる…」
「…イナ…」
だってやだもん、あの二人に助けてもらうなんて…
「解ったよ、僕が戻るまで待ってて。すぐ来るから。足、大丈夫か?」
「…大丈夫じゃない…」
「…あとでナデナデしたげるから。な…」
「…ん…」
テジュンの顔が崩れるのが解った
早く帰ってきてよ!俺、どうなっちゃうか解んないかんな!
テジュンが去ってからスヒョクがまた手を差し伸べた
「ソクさん、イナさん足、怪我してるみたい。降りて支えてあげてよ。俺、引っ張りますから」
「僕が?!」
ソクが?!ヤダ!こんな狭い穴で密着すんの絶対ヤだ!
「いいよ!俺なんとか踏ん張るから」
「無理ですよ」
「いいよ!」
「僕に助けられるのがイヤらしいな…放っていくか」
「え?」
「行こう、スヒョク」
「え?あ…ソクさ…」
また頭上に誰もいなくなった
声も聞こえない
ほんとに置き去り?え?…ひどくない?
俺はズキズキ痛み出した足を見下ろす事しかできなかった