秘密部屋12  妄想省家政婦mayoさん

ショップに付き合ってくれないかと言われた
闇夜が自分からこんなことを言うのはめったにというかほとんどない
友達に贈るカードを買いたいから。一緒に選んで
僕がびっくりしていると闇夜はフッと笑ってそう答えた

僕でいいの?..っと喉から出かかった言葉を飲んだ
何、シロ!?..って言われそうだし
どうするの?行くの!?行かないの!?
っていつもの顔に変わる前に僕は闇夜と部屋を出た

僕は正直些細なことでも誘ってくれたことが嬉しくて
EVの中で闇夜の手を取って自分の胸の前に持ってきた
(*^_^*)…思いがけない闇夜の顔に僕はまた鼻血が出そうになった

EVが開くとギョンビンが立っていた
僕は瞬時に繋いだ手を離したけど彼は見たはずだ
ギョンビンはちょっと笑っていた

「めずらしいですね2人で」
「チーフの腫れはどう?」
「だいぶいいです」
「そう」
「あ、テソンさん…ぁの…部屋の」
「らめらめかな?悪いけど録ってるよ。僕らに破棄の権限はないんだ」
「わかりました、でも他のメンバーには絶対に…」
「わかってるよ。僕らしか見てない」
「お願いします。じゃ…」

ミンがEVに乗ろうとしたとき僕は言ってみた

「ギョンビン、今日はバレンチノのスーツじゃないんだね」
「えっ??」

ミンはちょっとびっくりして僕らを見ていた
じゃ…と僕らは向きを変えてショップに向かった

「テソンシ」
「はは..ちょっとからかってみた」
「まだ判らないのに…粉ふって…」
「そうだけどさっ」
「もぉ..でもあの顔じゃまだわからないね」
「ぅん」

僕と闇夜は何枚かのカードの中からブーシェの裸の天使が空を飛んでるカード2種類と
開くと何匹かのテディが踊っている絵が飛び出るカードを選んだ
カードの横に手のひらに乗るくらいの猫の小さな置物があった

「うわっ..似てる..」
「そういえば、はるみちゃんどうしてるの」
「最近帰ってないから預かってもらってる」
「そぅ…引っ越したら連れておいでよ」
「いいの?」
「ちぇみテスもきっと喜ぶよ。そうしよう?」
「(*^_^*)」
ぁ……ダメ…また鼻血が出そうだ

「よう!めずらしいな!2人で」
「お、お、テ・テプン」
「何あわててんだよ。変な奴だな」
「何してんだ?」
「ぉん?チェリムがおやつが食いたいっていうからよ」
「はは..そう」
「そういえば、お前のチョコうまいんだってな」
「僕のチョコは人を幸せにする。なんちゃって」
「お・お、そうなのか!おい!俺にもくれ。チョコ!」
「後で部屋に取りに来いよ」
「お、わかった!んじゃな!」

ショップでパンを買って出たところで早足のドンジュンを見つけた
「あれっ〜めすらしいね、こんな所に2人で…」
「お、ドンジュンどうしたの」
「ん?ちょっとね…あ、テソンさんまだデコ止まり?早く◎にしなくちゃ!」
「あ、お、おい!って…」
「えへへ..僕は見てなくてもわかるもん!…頑張ってよ!じゃね!」

「mayoシ…」
「テソンシ…」
「なんだか僕らが2人でいるの、めずらしいのかな」
「厨房か秘密部屋以外で一緒にいるの皆見たことないもの」
「そういえばそうか」
「ぅん」
「じゃ〜これからはもっと外に出なくちゃ!」
「…@@」


彷徨   足バンさん

ミンに買い出しに行ってもらっている間にドアにノック
出られるわけがない。知らぬふりをして手にしている本を読み続けた
ノックは執拗につづく
仕方なくドアに近づき誰だと声を掛けた

「ドンジュンだけど」
「用があったら電話で」

しばしの沈黙
いつものドンジュンなら大騒ぎするはずだが
穴から覗くとまぎれもなくドンジュンが立っていた
どこにも焦点があわないようなそんな目をして立っている

「じゃここでいいから…ミンチョルさんからスヒョンに言って」
「なにを」
「なにをって…」

沈黙。いつものドンジュンと違う
どうしたものか
絶対お見舞いに行くって言ってましたよ。ミンがそう言っていた。が…

「やっぱ…いい…」

僕が引き返そうとするとドアが開いた
ドアの側にはバスタオルを頭に巻き目だけが見えるミンチョルさんがいた
超かっこ悪い
いつもの僕なら面白がるとこだけど、今日はとてもそんな気になんない

「入っていいの?」

ミンチョルさんはタオル頭を動かして入るように指示した
僕はソファには座らずに窓際に立った

「おまえまさかこれが作戦じゃないだろうね」
「そんな元気ないよ」
「スヒョンのことか?」
「うん。なにか整理したいことがあるって」
「なにを?」
「よくわかんない、僕のことかも。ミンチョルさん話聞いてやってよ。ミンチョルさんの言うことなら聞くかも」
「それはおまえの仕事だろう」
「僕じゃだめなんだ」

そう言うとドンジュンの目からぽろぽろと涙がこぼれた

「いろんな人の想いを受けとめ過ぎて疲れちゃったのかも」
「……」
「僕は辛いこと半分こって思ってるんだけど…役不足みたい」
「ドンジュン…」
「もっと心も体も側にいてあげたいのに…」

思いがけずミンチョルさんは僕の肩をそっと抱きしめてくれた

「すまないな…僕も世話になったんだよスヒョンには」
「うん」
「あいつはおまえのために変わろうとしてるんだろう?おまえを見ている目は本当に幸せそうなんだよ」

僕はミンチョルさんの目を見た
その瞳は吸い込まれそうな深い色をしている
おかしなタオルがなかったら思わず顔を近づけてしまったかもしれない

「ありがとう…ミンチョルさんってほんとは優しいんだ」
「今頃気づいたのか」

その時不意にドアが開いてギョンビンが入ってきた

僕はミンチョルさんから急いで離れた。ガラにもなく
こういうのってまずいことになりかねないから
ギョンビンは驚いてしばらく動かずにいたが、いきなり吹き出した

「すごい絵ですね」
「それはないだろう、苦肉の策だ」
「それにしても!」

ギョンビンはまたおかしそうに笑った。ミンチョルさんは少しむっとしてる
その感じのいい雰囲気に、僕は安らぐ反面羨ましくもあった

「じゃ、ミンチョルさんありがとう」
「ドンジュン…」
「早く出てきてね」
「ああ」

ギョンビンとすれ違う瞬間小さな声で言ってやった

「キスしてないからね」
「了解」

ギョンビンがくすっと笑ったので僕は安心して部屋をあとにした


コミエサラン #流水の快楽  妄想省家政婦mayoさん

まだ顔痛い?…ごめんね…
……大丈夫だ……テス?……
なに?…
…いま何処に行きたい?…
この間竹林で水の音聴いた…
…わかった

光が幾重にも斜めに入り込む竹林を抜けると
傾斜の緩やかな岩肌を段を刻みながら落ちる滝がある
滝が流れ落ちる滝壺は底まで見えるほど透明感を湛えている

いつものように最初のkissで閃光を見たお前はするりと水中へ消える…
水面を飛ぶように泳いだかと思うと深く沈みまた俺の懐にもどってくる…
お前の身体が水面の飛沫と一緒に光に反射すると俺は目眩を覚える…

戻ったお前の濡れた髪をかき上げまた熱いkissで閃光を見せると
懐からすり抜け水中でくるくるっくるくるっとターンを繰り返す
そして幾度も柔らかくしなるお前の身体は掴み所がなく俺を翻弄している

テス…お前…
僕…泳ぎだけは得意なんだ…
そうなのか…
ぅん…

僕は水中に深く潜り込んでちぇみの後ろに回り込んだ
水面に出て背を捕らえ僕はたくさんのkissを浴びせた…
ちぇみはちょっと俯いて優しく小刻みに続く僕のそれを受けている…
そんなときのちょっと照れたような顔が僕は大好きだ

お前の終わることのない優しいそれは..俺の足もとから力を抜けさせた..
今日の俺はどうかしている
深く沈みゆく瞬間俺はお前を呼んだような気がする…

ちぇみが僕を呼んでいる…僕はここにいるよ…
………おまえは..はなさない..
はなれないよ…

緩やかなの岩肌が光を受け青緑色に輝いていた


わがまま3  オリーさん

「誰に電話してたんですか?」
「あ、いや。別に」
「何が熱いって、スヒョンさんに言ったの?」
「何ら、わかってるんりゃないか」
「またらりるれろなんかしちゃって。ほんとはちゃんとしゃべれるんでしょ」
僕はそう言うと後ろから彼を抱きしめた
だって正面からだと顔が見えちゃって、ちょっと辛い
「しゃべれないし、たべれない。ほんとらよ」
わがまま
「ねえ、それよりキスして」
「まだ痛いんでしょ」
「そっとすればいいりゃないか」
またまた、わがまま
でも僕は肩ごしに彼の唇に触れた
ちょっと切れてる唇の傷を舌でなぞってそれから唇全体のラインに
彼は肩を僕の方にねじると耳元で囁いた
「それらけ?」
またまた、もうわがまま
僕はもう一度唇全体を丁寧に包み、ちょっと考えてから彼の舌を捜しに出た
少しづつ用心しながら僕が舌をからめとる
彼もゆっくりとそれに応える
何だ、いつもと変わらないじゃないか。どこが痛いっていうの
僕はだんだん大胆になって結局かなり濃いキスをしてしまった
目を開けると彼が涙ぐんでる
あれ、何で?
「いたいりゃないか。あんなに激しいやつりゃ」
「どこが痛かった?」
「口の中と頬っぺたらよ。動かすと痛いんら」
「だったら痛いって言って下さいよ」
「らって、よかったんらもん」
「でも言わなきゃ、痛いってわからないでしょ」
「らからよかったんらもん!やめたらもったいないりゃないか」
本当にもう!
「じゃ僕はどうすればいいんですか」
「もういちろやって」
「だめ!」
「ふん!けち!」

まったくもう!

「ところれ、ミンてはれんちのなんて着るの?」
「僕はハレンチじゃないですよ」
「ちがうよ、スーツのはれんちのらよ。クローレットの中にあった」
「あ、ああ、あれは任務の都合で必要な時があったもので」
「はりーの靴もあったよ」
「バレンチノ着た時に合わせたやつです」
「ふうん、れもミンにはあんまり似合わない気がするけろ」
「そう思います?僕トラッド系が好きなんです。ラルフとかブルックスとか」
「君にはそっちの方が似合うよ」
「ミンチョルさん、本当にそう思います?」
「ミンにはボタンラウンのシャツが似合う」
「そうですよね。僕もバレンチノはあまり好きじゃなくて」
「れも仕事なら仕方ないらろ」
「もう必要ないといいけど…」
「店に出るならはれんちのの方がいい時もある」
「着た方がいいですか…」
「いや、好きにしていいよ。トラッドがよければそっちでも」
「ほんと?」
「ミンは何着ても似合うから」
「ほんと?」
「うん、ほめてあげたからごほうびちょうらい」
「またそれ…」
「ねえ、いいりゃないか、ちょっとらけ…」
まったくもう、この人はほんとにしょうがないんだから

あのスーツ、なんでいつまでも持ち歩いてるんだろう、もう忘れたのに
バレンチノ着てバリー履いてディオール締めてダンヒルを吸ってた、そんな時もあったけど…


彷徨 2  足バンさん

雨。気晴らししたいけど外に出るのも面倒でホテル内をうろついてた
イナさんにばったり会った

「ドンジュンなにうろついてんだ、スヒョンは一緒じゃないのか?」
「テジュンさんとは、ちゃんとあれした?」
「あれ?なによヤらしいな」
「仲直りしたかってこと!」
「あ、なんだ、まぁね。ふふ」
「そう言いながらソクのあれ期待してんじゃないだろうね」
「あれあれってヤらしいよおまえ」
「イナさんの頭がどうかしてるんでしょっ!もうっ!心配して損した!」
「ひどいなぁ、一途だよ僕は」
「気が多いんじゃないかって噂だよ」
「スヒョンじゃあるまいし」
「なによそれ」
「誰をも愛せるってこと。それがあいつの持ち味…」
「…」
「なに怒ってんだ?」
「…」
「うまくいってないのか?」
「そんなんじゃないよ、じゃね!」

いろぼけイナさんなんかに声掛けなきゃよかった!ふんっ!痛いとこついてくれちゃって!
そうだよ!スヒョンはそぉゆうやつだよっ!だから大変な目に合うんだよ!

「おぉ、ドンジュンどのっ」

あぅ…将軍さんだ…

「スヒョン殿は?一緒ではないのか?」
「うん」
「遂に鑑賞したぞ!スヒョン殿のテクを!映画でな!素晴らしい!ホストたるものああでなくてはな」
「じゃ講義でもなんでも受けてよ」
「うむ!祭が終わっても店に享受に参るぞ!」
「好きにして。でも店じゃ高くつくよ」
「うむ!馬の一頭も売ればよかろうと伝えておいてくれっ」

相変わらず変な人。テク?そうね、いろいろあるみたいね。ふんっ!
そうだよ!スヒョンはそぉゆうやつだよ!だからみんな喜ぶんだろう!
ふん…

「あぁら!えぇとあなたドンジュン君だったかしら!」

うわぁ!今度は赤い恐怖っ!

「ね、ミンチョル君ぜんっぜん顔出さないんだけどどうかしたのかしら?」
「さぁ」
「あなたって最近スヒョン君と一緒にいる子でしょ」
「…」

「うふふ、あたくしの友人がどうしてもあの『2階からこっち見ながら』を生で見たいんですって」
「…」
「彼女『長女になれたらいくらでも払う』って言うの。今度お店に連れて行くからよろしくねぇ」
「…」
「あなたもかわいいわね。あらいやだんもうこんな時間じゃまたね!」

怖かった…

いくらでも払う?…そーだよ…スヒョンはそーゆぅ…
…はぁ…

僕は部屋に帰った。ジュンホ君はいない。お話したかったのに
秘密部屋もノックしたけど返事がない…またお出掛けかなあの2人
イヌ先生の部屋はなんとなく通り過ぎた。たぶん先生達は自分のことでいっぱいだもん

遠くでテプンさんやチョンマンが騒いでるけど近づく気になれない
ラブ君とスヒョクは楽屋で「前線異常なし」ってゲームで盛り上がってるし
テスさんにはあの怖そうな人がくっついててダメだし
中庭は最も危険地帯で論外

ポラリスの人とかって話合わなそうだし
ヘヴンの人って、僕全然だめそう
あとイナさんのとこの無表情な御曹司もだめだな
ミンチョルさんの弟とかってめんどくさそうだし
チンっておじさんなら話聞いてくれそうだけど見当たんない

って…僕なにしたいんだろう
誰となにが話したいんだろう
超まぬけ

また抜け出してドライブでもしてやろうかと思った時、テジュンさんを見つけた
一生懸命にイナさんのことを想うテジュンさん。キスのメモをとってたテジュンさん
ちょっとなら時間ある?

でも近づいて僕はしまったと思った
ソクだった


秘密部屋13  妄想省家政婦mayoさん

今日はリハーサルがない
コモテスたちと一緒にレストランで遅めのランチを済ませたあと
昨日買わずに戻ってきた猫の置物が気になる様子の闇夜を誘って僕たちはまたshopへ寄った
皆おこもりなのか、誰にも会わなかった
つまんないのっ…せっかく手繋いでるのに。見てよ誰か
でもいいいや…猫を見てる嬉しそうな闇夜の顔覗いると僕も楽しいし
(*^_^*)..あ、また鼻血出そう

部屋へ戻るとコモテスの2人はソファでぺったりとしてうとうとしていた
いつもと違うのはちぇみの頭がテスの肩に乗って半身預ける姿勢になっている
頭が重そうだ..

「mayoシ…いつもと逆だよね。あれ」
「ぷっ…ちぇみ…撃沈されたんだよ、きっと」
「はは…そういうこと…テス、頑張っちゃった?」
「テソンシ…それ…やらしい…」
「だって…そうじゃん…」
「ぅん…まぁ…テスシ、若いしね」
「何…mayoシだってやらしいよ」
「あは…^^;;」
「昨日は何回だろ…」
「テソンシ〜 >_< 」
「あ、ごめん ^^;; 」

(お前らっ!何とでも言え!ぁぁ今日はむちゃだるい)

「mayoシ…カリスマに毛布お掛けして」
「いけない…お風邪を召したら大変だわ…」
闇夜がソファに寄って自分のチェックの毛布を掛けようとした時
テソンが自分のベットから毛布を持って来て闇夜に渡した

「ちぇみテスはこっち。チェックのは駄目。僕たちのおくるみ用」
「ぷっ…アラッソ^^;」

テソンは急にソファから死角になる柱の陰まで闇夜の手を引っぱって行った
後ろから肩をすっぽり包んだ

(お!…とうとう◎侵略か?..だるくて覗く気にもならん…いいとこなのに)

テソンは闇夜の髪を弄び優しくxxxをする。横からのデコxxx…いつもはそこで終わる
片手で少し髪を掻きあげたれテソンの唇が少しづつ下がっていく
「…ぁ…ぉ…ぅ..ヤメロ……ぁ…ダメ..☆.」
「ここで我慢しよっと」
「ぁ..ぁ…ぁ」
闇夜は振り返って笑顔を見せつけた(*^_^*)
「あっ…」
テソンは大量の鼻血を出した…テソン撃沈
===== テプンが秘密部屋に来て残りのチョコを全部持っていった
追加のチョコを作って固まるのを待っていると闇夜がつまみ食いにやってきた
まだ固まってないチョコを闇夜の口に入れる。チョコになりたい僕..馬鹿^^;

「今日はヴァローナのスイートカラク」
「ふっ…さすがだ、チョコ博士」
「今度オレンジピール作ってもらえる?グアナラで」
「ぅん…わかった」

♪♪tears〜♪♪ 「ピョートル。アンドレ先生の資料持ってきてくれないかな」
「今?」
「ぅん。今」
「わかった」
「待ってる」

闇夜はちょっと首をかしげてから白夜に行ってくると言い、資料を持って部屋を出た
白夜倶楽部にはいつも誰か彼かいるから安心だな

白夜部屋の前に来ると常にピョートルの傍を離れないお付きがドアの前にいる
普段笑わない彼がちょっと笑ってドアを開けた。笑うと少年のような顔になる
白夜の部屋はがらんとしてピョートルひとりが窓際に立っていた

「あ、まよぴー、持ってきた」
「お、ぉぉん…これ。アンドレ先生の…呼ぶの」
「ぅん。コンタクトは取れた」
「そぅ…今回若いのあまりいないから、渋ってなかった」
「はは…そぅ。でもほら、ウォンビン来てますって言ったから来るよ」
「ぷっ…そうね…あ、みんなは?」
「父さんが江南の焼き肉屋に行くって聞かなくてさ。皆連れて行った」
「そぅ…一緒に行かなかった?」
「僕の周りは常に人がいるだろ?ひとりになるいい時間だ」
「えぇぇ〜ぃ…ひとりで黄昏?」
「ぷっ…からかうなよ..アンドレ先生は口実。話があるんだ。それで呼んだ」
「私に?」
「ぅん…」
「何…」

ピョートルは一枚の紙を闇夜に見せた


その向こう   足バンさん

裏庭へ続くガラスドアの前でソクは煙草を吸いながら振り向いた
そのまま走り去ることは十分できた
でも次の瞬間僕が言ったひとことといったら

「煙草その辺に捨てないでよっ」

ソクはちょっと眉をあげて何事もなかったようにまた煙草をくゆらせた
無視かよ!
その無表情な目に無性に腹がたってきた
頭の中にスヒョンの哀しげな顔が浮かんだ

「ミンチョルさんになんであんなことしたのさ」
「なりゆきだ」
「謝んなさいよ」
「謝って済むのか」
「しないよりいいでしょ」
「謝って楽になるのはごまかしだろう。解決じゃない」

答えられずにいるとソクは煙草をくわえたままドアを開けて小雨の中に出て行った
そのまま黙って見送ればいいものを
そんなやつ雨の中放っておけばいいものを
ばかな僕はその同じドアを押し開け、追ってしまった

ソクは噴水近くの木々の下で振り向いた
まだ早春の小さな葉をつけたばかりの木々に雨をしのぐ力はない

「ちょっと待てよ!」
「カン・ドンジュン…なにかして欲しいことでもあるのか?」

その失敬な言葉にあったまきて僕はいきなり進んで右手を振り上げた
僕にしたら奇襲のつもりだった

でもその腕はあっさりとソクに掴まれた
間髪入れず左手で殴った…つもりが、それも掴まれた
なんてまぬけ
その時やつはプロだったってこと思い出した
強い力で手の自由を奪われた僕はゆっくりと後ずさった
ソクはそのままゆっくりと歩調を合わせて前に進む
先ほど通ったガラスドアに背中が当たるまでそれは続いて

僕はホールの隅でぼんやりとスタッフのライトのチェックを見ていた
幾多の色が行き交う
無邪気な白いライトが通り過ぎる度にドンジュンの笑顔を想い浮かべる

ドンジュンにどう伝えようかそればかり考えていた
僕が今までしてきたこととこれからのこと
沢山のひとの哀しみをどう受け止めていったらいいか悩んでること
ひとを幸せにしたいと思ってきた気持ちと今おまえを幸せにしたい気持ちは
全く違うものだということ
ドンジュン、おまえを本当に大切に想ってるってこと

不意に携帯が鳴った
ミンチョルから
内容は簡単なものだった

ミンからドンジュンとソクが一緒だと連絡があった
君に知らせてくれと
裏庭に続く北側の細い通路だ

僕は走り出した
側にいたテジンやテプンが驚いていたが答えなかった
北側がどっちかなど知らないが裏庭は憶えている

その通路の手前に到着すると角にギョンビンが立っていた
ギョンビンは目で通路の先を指すと、そのまま下がって消えた
僕は壁に張り付きその曲がった先を覗いた


ソクは僕の両手をつかんだまま下に下げた
ソクの体重がのしかかる
背中のガラスの冷たさが伝わる
ソクは煙草を口から吹いて飛ばしゆっくり顔を近づけた

「BHCの皆さんは隙だらけだな」

その憎たらしい鼻に噛みついてやろうと口を開きかけた瞬間
それはソクの口に塞がれた


わがまま4   オリーさん
 
「ろーして中にいれたんらよ、イナのこと」
「せっかくお見舞いにきてくれたんですよ」
「そうだぞ。むくれてないで顔出せよ」
「やら!」
「俺は喧嘩慣れしてるから全然平気だ」
「ふんとか?」
「俺はボコボコにされたり、したりする人生送ってたんだからな」
「笑わないか?」
「ああ」
「れったいに?」
「くどいぞ」
「約束らぞ」
「ああ」
「わかった…」

……… …… …… … ……

「ろうら?」
「…プッ…」
「あ!笑ったな、今笑ったらろ!」
「いや、ちょっと吹いただけだ」
「この嘘つき!」
「ミンチョル、落ち着け」
「らからいやらって言ったのに」
「いいか、俺とミン以外には絶対見せるなよ」
「それってろういう意味らよ、やっぱひろいってことりゃないか…グスッ」
「泣くなよ。おい、悪かった」
「グスッ…」
「で、でもすぐによくなるって。気にするな」
「もうれったい、祭はれないからな。お前がPDやれよ」
「それまでにはよくなるさ」
「お前と僕とでは美意識のレヘルが違うんら。ほっといてくれ」
「何が美意識だよ。ただ顔がちょっと腫れてるだけじゃないか」
「らいたいお前があいつにいい顔するかららぞ」
「…ん…」
「らめらよ。んがきくのはテリュンさんらけ。僕にはれんれんセクシーりゃないから」
「ちっ」
「でもお前よくあいつにキスさせたな」
「らってよかったんらもん」
「マネするなよ。でもそんなによかった?」
「ああ」
「ろんなふうに?」
「とにかく痺れるんだよ、脳天まで」
「へえ。らったら僕もむりしないで、一回くらいやらせればよかったかな」
「そうだよ、お前抵抗するからこんな目に遭うんじゃないか」
「うーん、惜しい事した…」

スパコーーーーンっ!

「ミン!いたいりゃないか、ぶつなよ」
「何寝ぼけた事言ってるんですか!」
「りょうらんらよ、りょうらん」
「僕は浮気は許しませんからね」
「らからりょうらんらって!」
「冗談でも許しませんから」
「ひぃぃん、イナ何とか言ってやってよ」
「ギョンビン、まだ弱ってるんだからきつく当たるな」
「そうら、そうら」
「弱ってても浮気はだめですから」

『おい、ミンチョルこいつ厳しいぞ』
『そうなんら。結構潔癖症なんら。またそこがかわいいんらけろ』
『ばか!のろけてんじゃねえよ』
『はい…』

「何、コソコソ言ってるんですか」
「なんれもないれす」
「じゃ、俺行くからな。少し養生してれば大丈夫だから」
「ああ」
「生卵持ってきたんだ。これで冷やすといいぞ」
「ありがとう、イナ」

「ミンチョルさんのこと、そそのかさないで下さいね」
「人聞きの悪い事いうなよ、そそのかすなんて」
「僕はテジュンさんみたいに優しくありませんから」
「お前こわいなあ…小姑入ってるぞ」
「大きなお世話です。じゃ」

「ねえ、ミンまら怒ってるの?」
「別に」
「あれはほんとにりょうらんらから」
「ほんと」
「あたりまえりゃないか」
「じゃ、証明して」
「ん〜〜、ブチュっ!これれいい?」
「だめ!もっとちゃんとしなくちゃ」
「ん〜〜〜、モグモグっ、ハムハムっ、レロレロっ……これれいい?」
「んー、今日はこれくらいでいいでしょう」
「よかった…アウチッ!」
「今頃痛がらないで」
「らって、まら口の中が…」
「どこですか?」
「ここらよ、見てごらん、この奥…」
「どれ?」
「奥の方…」
「ここ?」
「ううん、ふふ〜ん、へへ〜ん…」
「何興奮してるんですか」
「ひいいん…」


秘密部屋14   妄想省家政婦mayoさん

ピョートルの見せた一枚の紙にはびっしりと細かい相関図が書かれていた

「最初に会ったときからに何かこう…深いところでもやもやしてた
 何処かの僕が何処かで繋がってる気がしてさ…」
「で、調べた…」
「ぅん…すっきりしたいからね。悪いけど調べた」
「そう..でもよくここまで…さすがだわ」
「ふっ…やっと繋がった。それで納得した」
~~~
テソンのチョコをちぇみの口に運ぶテス
「あれ、テソンさん、mayoさんは?」
「白夜に資料届けに行ったよ」
「ん?白夜は今夜誰もいないはずだが…」
「え?…そうなの?」
「ぁぁ….ユリキムが皆を引き連れて江南に行ってる…」
「そう…」
ちょっと顔色の変わったテソンをのぞき見るちぇみテス
「心配なのか?テソン」
「あ、いえ、大丈夫」
「大丈夫じゃなさそうだけど?テソンさん」
テソンはそう言って自分の顔を覗き込んだテスの口にチョコを放り込んだ
~~~
「知ってたんだろ?」 「ぅん………でも大昔のこと…私はただの末裔…ソウル・メイトとは違う」
「そうだよな…それなら会った瞬間わかるはず」
「お互いが惑わされるの億劫だったから言わないでいた..」
「神経質だからな、君は」
「ぅん…私が話せばよかった?」
「いや。僕は自分で調べて納得したかった。気にすることないよ」
ピョートルはそう言うと闇夜に渡した紙をくしゃっと丸めると
ライターで火をつけ灰皿に落とした。紙は瞬時に灰になった
「もう必要ないだろ?あ、テソンは知ってるの?」
「知らない。何故そんなこと聞くのよ」
「えっ?だって君ら…もう…」
「何もしてないってばっ」
「ふぅぅ〜ん… でも余計な心配はさせない方がいい」
「ぅん…」
「僕らは今までと変わらない。心配ない。男の友情だな」
「男かい..」
「ピョートルがすっきりさせたかったのってさ..彼"のためでもあるんでしょ?」
闇夜は少し離れて傍に立っているピョートルのお付きを目で指した
「わかっちゃたか…秘密保持は自信があったんだけどな」
「さっきね、ピ〜ン!と来た。私に初めて笑顔見せたから」
「ぷっはは..そう」
「ぅん…かなりのイケメンだよね、彼…」
「そう。僕の自慢..」
「くぅぅ〜〜やるじゃない」
お付きの彼は俯いて笑っていた
「じゃ、戻るね」
「テソンにはちゃんと言えよ」
「ん..」
帰りに白夜のドアを閉めかけて闇夜がちょっと覗くと2人は熱いxxxの最中だった
視線が合ったお付きの目は少年のそれとは違う色香の漂う男の目に変わっていた
只者ではない..闇夜はそう思った..


新展開   ぴかろん

俺は彷徨う、このホテル内を…
ちっとも楽しくない
はやく帰りたい
だが帰ったところで何も楽しい事などない…

噂によるとテソンさんまでが最近幸せになっているという…
俺の立場はどーなる!
だからと言って、スヒョンさんやイナさんやミンチョルさんや…え?ウシクさん?ウシクさんまで?!
…がーん…あの清純派のウシクさんまでが「地獄絵巻」に…

あ、いや、「総天然色男色絵巻?」か?…ふっ

俺は彷徨い続けていた

「しちゅんさんどーしましたか?」
「ジュンホ君、てめぇ…じゃない、君こそどうしたの?」
「はい、まつりがいつおわるのかと…」
「…まだ始まってもいねぇしな…」
「ぼくはつまにはやくあいたいです」
「いいな、待っててくれる人がいて…はぁぁぁぁ」
「しちゅんさんはいないですか?」
「…」
「さびしいですか?」
「…ん」
「かたおもいしてますか?」
「なっ…なんでわかる!」
「こいするひとみです」
「…そお?はあああ…見込みねぇしな…俺じゃダメなんだ…」
「あたらしいこいをみつけることです」
「…いねぇもん、女」
「おんなのひとにかぎらなくてもいいですよ」
「…いや、俺は女がいいんだ!」
「そうですか…おとこのひとならたくさんいるのに。よりどりみどりというそうですね」
「うん…でもなぁ…いやだもん。それにさ、フリーの男っていないぞ」
「よそのほ●とくらぶにいっぱいいます」
「よそ?…」
「はい、ひまそうです。ほら、あのしょーぐんというひと、かおはきれいだとどんじゅんさんがいってました」
「…でも男だもんな…」
「そうですね」

ジュンホ君と不毛な会話をしてしまった
俺はロビーでぼんやり座ってた

「ハーイ、マシュマロボーイ、どうしたの?」

突然声をかけられた
さっきの『将軍』とかってヤツだ

「ななな…何か?!」
「君、なかなかかっこいいじゃん?よかったらこっちこない?わらわ…じゃなくてボクさー、祭でショーに出る事になっちゃってぇ」
「は?」
「MUSAのショーだけじゃなくてぇ。ふあつしおんしぉーとかいうの」
「は?ファッションショー?」
「でね、すっごいセンセが来ててさ、綺麗なモデルを探してるんだって。で、チンが『こんなところで無駄な事をしているぐらいなら
モデルでもなさいませ!白夜倶楽部に将軍のプロフィールと写真を送っておきましたぞ』って。そしたら即採用フフン」
「…何のことだか…」
「モデル探してるんだって。わらわの他にはヨソルも…ヨソルなんか小汚いのに『ワイルド』って言われて採用じゃ
片腹痛いわ…じゃなかった、ちょっと悔しいっぴ」
「…」
「んでぇ後は男組のでっかい目の隊長と、その弟」
「…あの…」
「それからポラリスのミニョンさんとサンヒョク君も選ばれてた。でもソンジェっていう人は髪型チェックされてたな
もみあげに黒い墨を塗るか、それともういっぐというものを被るかすれば採用とかって…
あと、ソンジュって馬鹿社長?あれも採用らしい…モムチャンだからって
そんでね、後からチョンウォンって人が無表情で入ってきてね、怒ってた」
「俺…興味ないから…」
「行こうよ、暇でしょ?」
「うわっちょっとっ」

拉致されるシチュンであった…


危機?! ぴかろんさん

言いたい
誰かに言いたい

テジュンはどこよ…
あ。いたっ♪ニコ
あんだよっ!あんでこっち見ないんだよ!

あれ?まさかソク?
いや、違う、あの女の子にニシャニシャ笑いかけるスケベ面はテジュンら…じゃない「だ」

ばかっ!ぷんっ
…あ…こっち見た。えへ。おーい♪
ん?手招きしてるぅえへっ

俺はテジュンのそばに行った
するとテジュンはもっと手招きして俺を…舞台裏に引き込んだ

ちょっと待て…ホントにテジュンだよなぁ…どきどき
いや、実は…どっちでもよかったりしたりなんかするら…

テジュン(だと思う)は俺を引き寄せると黙って口付けした

…ふぅん…テジュンら…甘く痺れるら…
ん?

テジュンは何かを俺の口に流し込んできた
うぐっまずっなにこれっ
口を離そうとしても離してくんないら
にがっまずっげぇぇぇっ
涙目になっらのら…
ようやく口を離してくれたのら
れも俺の顎を持って上向かせて

「ごっくんしなさい。体にいいから!」

って…ごくん

「ばずい」
「ははは、青汁だ、マムシ粉入りだって。デラルスの赤い人がくれた。…精がつくんだって…」
「げぇっ…きぼちわるい」
「じゃ、口直し…ん…」

今度は俺の好きなキス
痺れる…けどさっきの変な味が残ってて…でも…刺激的で…
俺は段々足に力が入んなくなってきた…
あ…ああ…ほんとにテジュン?

俺の体が火照る…
変なもの飲ませやがって…テジュンなの?ソク?どっちさ…

あああ、頭が痺れる…立ってられない…
俺はその場に座り込んだ…


その向こう 2 足バンさん

ソクのこういう行動を予想できなかったなんて言ったら嘘になる
十分わかってたはず
僕はスヒョンをあんなにへこませた彼の内面に興味があった
そして正直言うと「電撃」にも興味があった

ソクのキスは強烈だった
吐き捨てるような、自分を投げ出すようなくちづけ
それはソクから流れ込む細胞に絡めとられるような感覚

あまりにも辛いソクの歴史が僕にどっとなだれ込む
ねじれた運命
他人に作為的に歪められた自分の本能
失ってしまった最愛の人
僕はその無機質な、でもどくどくと流れる濃い哀しみに捕らえられてしまった
からだの奥から嗚咽が溢れ出す
涙が止まらない
またスヒョンに泣き虫って言われる

僕はガラスドアに隔てられた光景を見て一瞬足がすくんだ
ドンジュンが無抵抗でくちづけされている
掴まれた両腕は力なく下ろされている

僕は走り寄りドアを押し開けようとした
しかし予想した通りそのガラス戸は2人の体重で動かない
ドアを足で蹴破ろうかと思ったが手前にいるドンジュンへの衝撃が気になり躊躇した

ソクが僕を見た。ドンジュンにくちづけたままで
その視線がドンジュンにそそがれる
そしてゆっくりとドンジュンの口から離れた

背中になにかどんっという衝撃が伝わった
でも僕の頭は渦巻き状態で反応できずにいる
どこかでスヒョンの声が聞こえた気がする
スヒョン…スヒョン…どうしよう…動けない…
その時不意にソクの唇が離れた

「なぜ泣くんだ」

僕はようやく目を開けソクを初めてちゃんと見た
その意外に人なつこい目を見ると涙がまた溢れる

「もっと辛いって言えばいいのに…」
「なに?」
「自分ひとりで閉じ込めないで…」
「…」
「ちゃんと聞いてくれる人を見つけて、ちゃんと言えばいいのに…」
「…」
「待ってるんでしょ?そうなる日を」

僕はガラスの向こうのそのソクの表情に釘付けになった
なにごとか話しているドンジュンを見つめるその目から急速に強い光が失せた
ソクの緊張も同時に解けたように感じた

ソクの背後の木の陰に人の気配を感じ、
その人物を確認してから僕は渾身の力でドアを蹴り開けた

ドアが激しく2人を弾き、ソクはドンジュンの腕を離し飛び退いた
泳ぐように舞ったドンジュンの身体は、陰から飛び出したギョンビンの腕に受け止められた

僕は瞬時ソクに掴みかかり噴水の淵にその身体を押しつけた
ソクの身体は半分水面にせり出す形となった

「二度とドンジュンに手を出すなっ!」

僕の怒鳴り声は悲鳴のように聞こえたかもしれない
それには答えず、ソクはゆっくり顔を回しドンジュンを見た
ドンジュンはギョンビンに抱きかかえられたまま黙っている
その頬につたっているのは涙か雨か

「さっき言ったことわかった?おじさん」

ソクはくすりと笑って僕の腕を振りほどき立ち上がった
そのままガラス扉の前まで歩き、そこに捨てられていた濡れた吸い殻を拾った
そしてそれをドンジュンに見せると眉を上げ、ポケットに入れた
ドンジュンが微笑んだのを見てそのガラスの向こうの通路に向かった

振り返った瞬間ドンジュンが僕の胸に飛び込んできた
ギョンビンはもう木々の向こうに見えなくなっている

「スヒョン!」

僕はなにも言えなかった
ありたけの力でドンジュンを抱きしめ雨に濡れた頭にくちづけた
ドンジュンは僕の肩に顔をうずめなにごとか囁いている

「なに?」
「会いたかった…」

僕は溢れる気持ちを抑えられずドンジュンの顔をこちらに向けて
半ば開いた唇を塞いだ
また帰ってこられた…そう感じた


秘密部屋15   妄想省家政婦mayoさん

闇夜は白夜から戻って来てもいつもと変わらない様子だった
皆で食事を済ませるとちぇみがテスを促し部屋へ戻っていった

「白夜に何の資料?」
「お?アンドレ先生の…」
「何故アンドレ先生?」
「ん…リマリオがデラルス行ったり来たりでしょ…もう一つインパクト欲しかったんじゃない?」
「そっか…ぁ…白夜、ピョートルひとりだったの?」
「違うよ。いつものお付きはいたよ…」
「あ、そぅ…」

なぁ〜んか間抜けなことしか言えないなぁ…僕って…
そんな僕の顔を覗いて闇夜はふっと笑って映画見ようと僕に言った

ー飛天舞というその映画は14世紀中国の元朝末期を舞台にして
モンゴル族・漢族・高麗遊民の勢力争いが熾烈な混乱期を背景に
踊るような武術・悲愴美を持つ華麗な剣法を使っている武侠映画だった
劇中登場する高麗遊民ユ一族のジナはピョートルに似ていた
そのジナとすれ違いを繰り返すのがソルリだった

映画が終わると闇夜はピョートルと話したことを僕に話してくれた
何代も前に関わりがあったのであろうということはわかっていたが、
自分で自分のことを調べる気がなかった事。ピョートルがすべて調べた事
お互いにルーツに関係なく今まで通り友達として大事に思っている事

最後に闇夜は僕の顔を見..大昔に何があったが知らないが自分の預かり知らぬ事
惑わされずに今の自分の見たことを感じた事を信じる..信じたい
それでもいいか…と付け加えた

僕は返事をする代わりに闇夜を引き寄せた
僕は鼻の奥に溜まっている熱いものが引っ込むまで
じっと闇夜を抱いていた


練習   オリーさん

「か・き・く・け・こ。言ってみて」
「か・き・く・け・こ」
「合格。じゃあ、さ・し・す・せ・そ」
「さ・し・しゅ・しぇ・しょ」
「サ行後半だめ。た・ち・つ・て・と」
「ら・り・る・れ・と」
「全然だめ。な・に・ぬ・ね・の」
「な・に・ぬ・ね・の」
「合格。次、濁音いきますよ」
「が・ぎ・ぐ・げ・ご」
「が・ぎ・ぐ・げ・ご」
「合格。ざ・じ・ず・ぜ・ぞ」
「ざ・じ・じゅ・じゅ・じょ」
「これもだめ。だ・ぢ・づ・で・ど」
「ら・り・る・れ・ろ」
「全然だめ。タ行が全然だめ。サ行もちょっとだめ」
「…ん…」
「んはイナさんでしょ。まねしないの」
「りゃあ、ろうする?」
「そうですね。くうんとかは」
「しょれはミンの昔のやつれしょ」
「僕はもうそれ卒業したから。言ってみて、くうんって」
「くうん…」
「可愛い!それにしましょう」
「れも…」
「いいから。これは僕の前だけね」
「くうん…」
「その調子。いいですか、人前ではらりるれはダメですよ」
「らって…」
「だから連習しないと。いつまでもらりるれしてたら笑われますからね」
「らって…」
「直そうと思わないと直らないから。わかりますよね」
「くうん…」
「甘えてもだめ。もう腫れもほとんどひいたんだから。しっかり練習して」
「はい…」
「じゃあ、僕リハ行ってきますから、いい子でお留守番しててくださいね」
「くうん…ひろりりゃさみしいな」
「仕方ないでしょ。PDスヒョンさんに代わって、代わりに僕がスヒョンさんのボタンはずしすることになっちゃっただから」
「くうん…ごはんにはもろってきてね」
「わかってます。じゃいい子にしててね」
「ん、じゃなくてくうん…」
「サ行とタ行の練習、ちゃんとしてるんですよ」
「くうん…」
「OK。じゃ行ってきます」
「待ってよ、おれかけのご挨拶は?」
「まだ痛いって言ってたでしょ」
「いらくない!」
「嘘つき」
「ほんとらもん」
「だめ」
「ちょっとらけ」
「いつもちょっとじゃすまないでしょ」
「くうん…」
「しょうがないなあ。じゃ両手挟みのデコチューで我慢してね」
「くうん…」

『最近ミンにいいようにされてるような気がする。でも案外こういうのしゅき!いけない。呟きまでおかしくなってる…』
『わお!わがままがすぎたら最近彼とっても可愛くってどうしよう。何かすっごくいいかも、この感じ』


自己嫌悪  ぴかろん

「どーしたのニャー」
「どしたじゃねぇよ、何コレ…体が…熱い…脱ぐ…」
「ばかっこんなとこで脱ぐな!」
「お前は平気らろ?」
「…呂律も回ってない…そんなにきつかったの?」
「なんれ平気?」
「え?僕は疲れてたから、これ飲んだらすごく元気になってさ。ニャーも元気出るかなって思って」
「…変なとこが元気になっら…」
「…と、とにかく部屋に戻って寝てろ」
「あんっ」
「なっ何さ、腕に触っただけだぞ」
「ひゃん…」
「…ニャー?」
「ビリビリしゅる…」
「…とっとにかく…部屋へ…」
「あひゃくぉっアアン」
「へっ変な声立てるな!誤解されるだろ」
「ああんああんああん」
「イナっ!」

「どうしたんですか?あれ?イナさん、なんで上半身裸…」
「チョンマン君、誤解しないでっ。イナが熱いって言って勝手に脱いだ」
「…」
「誤解しないでっそれより君、イナを部屋に連れてってくれない?変なんだ…」
「…一体何してるんですかっ!ヘンタイですか!」
「…いや、その…青汁とマムシ粉を飲ませたら…こうなってしまって」
「口移しれねへへへ」
「…イナさん…よかった…チニさんがこんな人を振ってくれて…行きましょうイナさん!」
「あうっあひゃぁん…」
「総支配人!この人に猿ぐつわ咬ませてくださいっ!」
「さ…猿ぐつわ…(ゴクリ)…」
「何いやらしい顔してるんですかっ!」
「す…すみません」

チョンマンはしなだれかかって呻くイナを部屋まで連れて行った

「ここりゃらいってりゅんろへやりしれよっ」
「は?何言ってるかさっぱりわかりません!」
「こえ、とっれよ…」

チョンマン、猿ぐつわを取る

「はぁん…」
「変な声出さないでください!…いい機会だからお聞きします、イナさんってテジュンさんとお付き合いしてるんですよねぇ」
「うふん」
「…でも噂によると、テジュンさんそっくりの男の人と熱いキスをしてたとか」
「…アン」
「…どーゆー事ですか?!チニさんがあんなに苦しんで貴方を諦めたってのに!許せない!」
「…何でお前、そんなに熱くなってるのぉん」
「色っぽい目で見ないでください、僕は落ちませんからねっ!ふんっ」
「…」
「イナさんがこんなに浮気者でえろだとは思わなかったです!最低です!よかったよ、チニさんと何にもなくて!」
「キスはしたよ…」
「!」
「それもチニさんから…」
「…」
「お前は?自分からしたの?」
「…いえ…まだ…」
「…好きなの?」
「…」
「よかった…お前みたいな男が彼女のそばにいてくれて…頼んだぞ、彼女の事」
「貴方にそんな事言われたくありません!」
「…そだよな…ふぅっ…」
「…火照りは治まりましたか?」
「ん…まだちょっと…」
「…はぁっ…どうやったら…自然に僕からチュウできるのかなぁ…僕、いつも女性から唇奪われるんです…」
「…んと…そだな、じっと目を見つめて、そっと手を握って、顔を近づけていって…」
「…そんなの僕だってシュミレーションしましたよ!」
「じゃ実践すればいいじゃん」
「…でもあの大きな美しい瞳を見ていると…なんだか僕、自分が不純に思えちゃって」
「…ああ…わかる気がする…でも多分彼女、待ってるぞ…お前からのハグとかチュウとか…頑張れよ」
「…ちょっと練習台になってください!」
「は?」
「チュウはしませんから、手を握って目を見つめるまでのとこ」
「…やめとけ!おっ俺は今っあっああん」

イナの手を握るチョンマン
異常に身もだえするイナ

「真面目にやってくださいよ」
「らって…あっああっ」
「手を握っただけっすよ!」
「れもっあうっ」
「こっち見て!じいい、チニさん、好きだ…好き」
「らめらっがまんがれきないっ」
「うわああっひゃめれぇぇぇっ!」

どたがしゃばたーん

床に倒れこむ二人

「ああんもう、止めてくれよおっ何とかしてよおおおっ」
「それはこっちのセリフですううっやめてくださいっイナさんっ」
「はあはあはあ、俺にキスしてっ」
「はあ?!」
「なんでもいいからしてっお願いっ!」
「きえええったすけてぇぇっ」

バタン☆ぐいっ

「行け!」
「…テジュンさん…あ…」
「行け、後は任せろ」
「…はっはいっ失礼しますっ」

逃げ去るチョンマン

「…」
「はぁはぁ…アンタ…」
「何やってんだお前…」
「はぁはぁ…キスしてよ…変なんだ…体中が…」
「…」
「してくれよ!ソク!」
「何故テジュンだけを見ない?」
「…」
「何故僕とテジュンを間違えた!」
「ソ…」
「お前の愛なんて!嘘っぱちだ!」
「…」

テジュン、テジュン、テジュン助けて…
「お前がキスしろと言った!」
いやだ、違う、ごめんなさい…ちが…
「キスだけか?!抱いて欲しいのか!」
いやだいやだ違う
「何も言わないのなら…」
「いや…だ…違う…ごめん…ごめんなさ…」
「…」
「…ソ…」
「大切にしろ…僕の調査は終わりだ。もう君の口など必要ない…」
「…ソク…何かあったの?…」

かすかに微笑むソク

「アンタが笑うなんて…」
「天使に…」
「天使?」
「いや…なんでもない…お前はお前の恋人を大事にしろ…二度と間違えるな、僕に対しても失敬だ!それじゃな」
「待って!最後に一度だけ…」
「なんて野郎だ!性懲りのない奴め!」
「最後だから…」
「…何故僕に…」
「…わかんない…」
「…なんで泣いてる?」
「知らない…あんたが笑ってるの見たら泣けてきた…」
「…お前達…おかしな連中だな…」

ソクは静かにイナにキスをした

「あ…ふ…」
「そうだな、僕といるときは『…ふ…』だったな…ハハハ。もう必要ない」
「…どこか行くの?」
「いや、…捜す…」
「…何を?」
「…まだ…わからない…」
「…ソク…」
「なんだ」
「…俺…アンタの事…好きだった…」
「…」
「嫌いだけど、怖かったけど…好きだった…テジュンに申し訳ないと思いながら…」
「もうやめろ。それは気の迷いだ…じゃあな」

ソクが立ち上がろうとした時、イナはソクの首に巻きついた

「俺、気が多いのかな?」
「その様だ」
「キスしていい?」
「…」

ソクの唇を激しく求めるイナ
応えもしないソク

「…ふ…ううっ…ごめん…ごめ…」
「お前のような奴が恋人とは、テジュンは苦労するな…」
「ううっうっ…」
「じゃあ…楽しかったよ、キム・イナ」
「うううっうっテジュン…テ…」

イナは泣いた。こんな自分が大嫌いで、そして愛おしかった


その向こう 3  足バンさん

スヒョンは僕の左腕を強く握ってどんどん歩いて行く
まるで怒っているみたいなスヒョンに何も言えず引きずられて行く
ずぶ濡れの僕たちは人目を引く
それでもスヒョンは歩いて行く

スヒョンの部屋に入るといきなりバスルームに押し込められた

「早くシャワーを浴びろ!また風邪引くぞ!」
「怒ってんの?」
「いいからっ!」

そう言うとスヒョンは勝手に蛇口を捻りシャワーを出して出ていった
仕方なく鏡の前でのろのろとシャツを脱いだ
やっぱりソクとのあんなとこ見られちゃまずかったかな

突然ドアが開く音がして風がたった
頭を上げる前に僕はスヒョンに抱きしめられ口を塞がれた
そしてそのままの勢いで押し切られ、シャワーの下の壁に背中をぶつけた

勢いよく落ちる湯と激しいキスに息ができない
スヒョンはますます力を込めて抱きしめる
僕は濡れたシャツが張りつく背中を必死に掴んだ
タイルに押しつけられた頭がほんのり冷たい

呼吸困難を起こしそうになった時その唇は離れた
スヒョンは肩で息する僕の顔を覗き込み、そしてシャワーの下から僕を避難させた
壁にかけられていた白いタオルをとると僕の頭をすっぽりと覆った
乱暴に頭をごしごし拭いたかと思うとそのままの僕を抱きしめた

タオル一枚向こうのスヒョンは泣いているようだった

「ごめんな」

僕はしばらくその息苦しい状態でスヒョンに抱きしめられていた
タオルがとられるとそこには優しい表情の彼がいた
涙のあとはもう拭き取られていて見えない

「なんのごめんなの?」
「ぜんぶ」
「そんなにごめんなことしたの?」

スヒョンは答えずにずぶ濡れのまま僕を部屋に引っ張って行った
ベッドに転がされた時は何かまだ怒られるんじゃないかと思ってた
でも下りてきたスヒョンの瞳は優しく濡れていただけだった
ゆっくりと唇が重なる

開けられた口に小さく舌が絡みはじめるともう僕はすぐに夢中になった
あの海以来のスヒョンの暖かい身体に包まれている
ああ、どんなにこうしたかったことだろう…

今は全てを忘れている
僕はただただスヒョンの愛撫に呑まれるだけ
海辺とは違う荒々しいスヒョンに左右の感覚も失いそうだった
身体の中心が底なしの熱い渦でめちゃめちゃになる

巡る閃光のあとスヒョンは気が遠くなるような快感をくれた
そしてスヒョンもまた小さく喉をならして力つきた

僕たちはシーツにくるまって長い間じっとしていた

「ん?なに?」
「濡れた服って脱ぐのけっこう大変だね」

スヒョンは笑って僕を抱きしめた
そしてゆっくり言葉を選びながら低い声で話しはじめた
今までどんな風に生きてきたか
どんな気持ちでひとを癒してきたか
そしてこれからどういう風にひととつきあっていけるのか

「そのままでいいじゃない」
「今まで通り?」
「なにもしてあげなくていいんだよ。ただ聞いてあげればいい」
「…」
「その時は相手を真剣に想ってあげればいい」
「…」
「誰かと共有できることが幸せなんでしょ?」
「…」
「スヒョンの分は僕が担当するから」
「ドンジュン…」

やっぱりこいつは羽根を持ってる。そう思った
そいつをこうして抱きしめていられる自分に幸せを感じた
ふとソクの寂しそうな目を思い出した

「ミンチョルの代わりにPDやる」
「まだ頭にタオル巻いてんのかな」
「ギョンビンとボタン…やるんだけど」

ドンジュンは急に怖い目で睨むとデコをペシッと叩いた

「変なことしたら許さないからね」

スヒョンはなぜか嬉しそうに笑ってもう一度僕を抱きしめた
雨の音はいつの間にかやんでいた


秘密部屋16 妄想省家政婦mayoさん

どのくらいじっと抱いていただろう…
僕は少しからだを離しやっとの思いで闇夜に言った
「僕には君が必要なんだ..今とこれからを大事にしたいと思ってる…君は?」
「ぅん」
瞬きをしながら闇夜は僕に頷いた

僕の左目にはゆらゆらと一粒…落ちる時を待っている
闇夜はちょっと笑って僕の頬に手を当てそっと顔を近づけて来た
僕の瞼に闇夜の暖かい唇がそっ..と触れた

「…ぁ…mayo…シ…」

僕の瞼の上で静かなタッチ続いている…
顔にまとわりつく闇夜の髪の香りと相まって
僕は一気にラベンダー畑に放り出された錯覚に陥った

「ずるいよ…mayo…シ」
「….何が…」
「僕より先に…瞼xxx…」
「オーナー達が何をしてもいいって言ってる…」
「それは…僕に言ったんだ…」
「そっ?じゃ止める…」
「ぁ…駄目…それは駄目…ね…」
「ん?…」
「もう少し…下がって…」

闇夜は僕の鼻筋をゆっくりなぞったところで唇を離した

「あ…何、やめるのぉ?」
「また先にしたと言われる…」
「言わない、言わないからっ…」

闇夜は笑いながらソファから離れた
「ふっ….されるより…するほうが楽しいかも…」
闇夜が本性を表しつつあるのか否か…と
不安でもあり期待もしているテソンであった…


モデル打ち合わせ会  ぴかろん

俺は拉致された
そこは白夜倶楽部の隣にあるスゥイートルームだった
集まってる人…これみんなモデルと言うことだけど…すげぇぞ…チェリムに見せてやりた…はぁ〜…

〜モデルリスト〜
ソンジュ、ソンジェ、ミニョン、将軍、サンヒョク、チャン理事、テファ、チョンウォン、ヨソル、ドンゴン、ウォンビン、
マイケル…マイケル?!、トファン…ト、トファ…ピーター…ぴーたー?!
テクヒョン…えっ…蜘蛛さんか?!、テス(子役)、サンドゥ(子役)…どんなファッションショーなんだよ!
ソク…ソク?!あの人どーしたんだ?!頭でも打ったか?!、そして俺…はあ?

「やあ、君はBHCの…誰だっけ?」
「シチュンです」
「僕、『オールイン』のチョンウォン、知ってる?いやぁ僕は『オールイン』のほうの出し物で大変忙しいとお断りしたのに
こちらにも『王子的衣装』があるというので参加することにしたんだ」
「…」
「おや?王子の衣装なら…ンフ…僕のほうが似合うよ…失礼、チャ・ソンジュです」
「知ってます」
「君、あんまり目立たないね」
『うるさいな、活躍の場がなかなかねぇんだよ!』
「うちからはテファも採用されたんだ」
「あの…チャン理事は?」
「ああ、王様の役で椅子ごと採用…ンフ」
「…!」
「は?ああ、ドンジュンの弟さん…あなたも?」
「…」
「首の詰まった服など着たくない?わかります!胸元は開けないとねぇ」
「…」
「なのに首フリフリブラウスを着ろと?!」
「…」
「着てみたら以外とイケてた?!…俺も着てみろって?!」
「やぁ、マシュマロ・ボーイ、ヨソルなんかと喋ると三白眼になるよ」
「…!」
「アンタと喋ると役立たずになるって…」
「おのれ!そこへなおれ!首をたたッ斬ってくれるわ!」
「…」
「槍でヒトツキだって」
「くう…」

ざわざわ…おおおー

「みなしゃん、よく集まってくだしゃったわ。私、デジャイナーのアンドレよ。よろすくね」

「…ちょっとアンタ」
「なんだい?マシュマロ・ボーイ」
「…アレは…着ぐるみだよなぁ」
「わらわもそう思う」
「…」
「え?人間?!ウソだろ?」

「みなしゃんには、古代と現代がクロスオーバーしたようなすってきぃなお衣装をよういしましちゃの
…オホホホホ…みなしゃんこしぇいてきでシュテキ…オホホホホ」

「…俺の目がおかしいのか…あそこにあるのはウエディングドレスだよなぁ…」
「そうだよ。ンフ。チョンソを呼べばよかったなぁ」
「…女もいるのか?!モデルに女も!」

「このウエデングドリェシュはね、みなしゃんに着ていただくにょよ。おほほほほ。どにゃたとどにゃたをカップリングしちゃおうかひらっオーホホホホ」

「げぇっ男同士でかよ…」
「うむむ、やはり『男色絵巻』じゃ。…マシュマロ・ボーイ、わらわと組まぬか?」
「…アンタ綺麗な顔してるからきっとドレス似合うぞ…俺は…リタイア…」

「お待ちっ!」
「ひっ」
「逃がしゃないわよっほほほっあ〜たはBHCのしちゅんちゃんでしょ?オーほほほ、とくべちゅシュテキなお衣装ちゅくってあげるわんホホホホ」
「…なんで逃げられないの?!…俺…どーなんのぉぉぉ」


困惑   オリーさん

ミンチョルは退屈していた
頬の腫れはだいぶひき、切れた口の中も大体よくなった
でも痛がるとミンが優しくしてくれるので痛いふりをしている
そのミンもリハーサルに行ってしまった
さみしゅい
とりあえず今日のPDはスヒョンがやる
イナはまだ使い物にならないみたい
でスヒョンのかわりにミンがドンジュンとボタンはずしをやる羽目になってしまった
元はミンチョルがPDを降りたせいだから仕方ない
サ行とタ行の練習はあまり気がすすまない
だからやることがない
そうだ、こっそりリハを覗いてみよう
サングラスをかけ、コートの襟を立ててミンチョルは久しぶりに部屋を出た

ホールの中に入って見つかると面倒だ
いったん外に出て窓からホールを覗くつもりだった
久しぶりの外は快適だった
暖かい陽射しと新鮮な空気
ミンチョルは何だかうきうきしてきた
リハを覗く前に、ちょっと庭をぷらぷらしてみようと思い立った
噴水のある公園に出た
ミンに芝生で無防備に寝るなと言われてたけど、
いいお天気なのでついついまたごろんと横になってしまった
目を閉じて陽射しを全身に浴びるととても心地いい
やっぱりPDやろうかな、なんて意欲もちょっと出てきた
そんな時どこからか煙草の香りがした
けっこうきつい香り
外国産に違いない、たぶん米産。マルボロかラッキーストライクあたり
まだこんな強いタバコを吸ってる奴がいるのか
目を開けてみると日の光を背にしながら煙草をふかしてやってくる影をみつけた
歩き煙草はらめれすよ
でもよく見るとそれはミン
いけにゃい、ふらふらしちゃらめれすよ、って叱られるかも
そう思ったけどミンチョルはサングラスを取るとミンに手を振った
ミンはミンチョルに気づくとにっこり笑った

その笑顔のまま自然にミンチョルの隣に座るとミンはまた煙草をふかした
めぢゅらしいね、ミンがたばこなんて
でもマルボロはやめなよ、香りがきちゅい
ミンチョルがそう言うとミンは吸っていた煙草をミンチョルに差し出した
ミンチョルはそれを一息吸うとやっぱりちゅよいよ、と言ってミンに返した
ミンはもう一度戻された煙草を深く吸い込むと足元に投げ捨てもみ消した
なんらか今日のミン大人っぽいよ
それにそのスーチュいつ着たの、さっきはTシャツらったのに
ミンはミンチョルを振り返ると似合わない?と言ってまたにっこり笑った
ミンの笑った顔はらいすきらよ
しゅごく似合ってる。けろ、ばれんちの、あまり好きりゃないっていってたろ
ミンはそれには答えずにちょっと体をずらした
そしてミンチョルの肩をつかまえるといきなりキスをしてきた
さっきご挨拶のキスがデコチューらったの気にしてるんらね
ミンはほんとに上手になったね
丁寧で優しいけどすごく情熱的なキスをしてくれた
もう僕が負けちゃうかも、それに、いちゅもより濃厚かも…
ミンチョルはとても満足してそれに応えた
もうあまり痛くないかも、らいじょうぶかも
そう思うとミンチョルは嬉しくなった
ちょっと大胆になって今度は自分からミンを求めた
ずいぶんと長い間夢中になっていた気がした
けど、突然ミンチョルの肩を抱いていた手がふりほどかれ、肩を押された
「何してるの!」冷たい怒気を含んだ声がした
ミンチョルとミンの前に人影があった

見あげると、ミン
え…??
ミンチョルは激しく動揺した
となりに座って今までキスをしてくれたのはミン…
そして今目の前ですごく怖い顔をしてミンチョルを見ているのもミン…
ふたりのミンにはさまれて…
どして…?


雨上がり  足バンさん

ずどぉぉぉぉぉん………

「スヒョン、なにずどぉーんって顔してんのさ」
「だって…」

スヒョンは「ボタンはずし」をギョンビンとやるんだと思ってたらしい
でも実際は僕とギョンビンだって今わかった
PDやるって張り切ってたくせに

「ほら音声さん達が呼んでるよ!もういいかげん立ち直んなって!わかったっ?」
「わかった…」

「ちょっと待った!確認!スヒョンは僕がギョンビンとやるのが心配なの?それともギョンビンとできなくなるのが残念なの?」
「そぉだなぁ…」
「そんなにギョンビンとやりたいのっ!」
「おまえ、人聞き悪くない?それ」

僕はむっとしてスヒョンの尻を蹴った
スヒョンは妙に嬉しそうな顔して舞台の方につんのめった
その先にイナが突っ立っていた

「スヒョン…」
「イナ…おまえ大丈夫か?すごく疲れた顔してるけど」
「スヒョン…俺最近変かも…」
「イナさんっ!そんなこと言ってスヒョンに抱きついたりしないでよ」
「じゃぁドンジュンおまえでもいいよ」
「おまえでもって…スヒョォン…イナさんやっぱヘーン」
「こらドンジュンまとわりつくな!イナ、テジュンさんにちゃんと話せよ」
「こんな自分のこと言ったらまた落ち込んじゃうよ」

「スヒョン音声さんが呼んでる」
「イナ、おまえも来いよ、仕事しよう仕事」
「うん…」
「じゃ僕はギョンビンと練習しよっと」

スヒョンが振り返ってコワイ顔をした
ふふ…あんまり怖くないけど

僕はスヒョンに飛びついてキスしてやった

「僕が宇宙一好きなのは?」
「ぼく」

「やってらんねぇ」

あんまりやってるとイナが怒り出しそうだからイナに投げキスして離れた
ギョンビンを捜そうと外に出た
ミンチョルさんの顔の具合も聞いてみたかった
あのタオル巻き、写真でも撮っておきたかったなぁ

すっかり乾いた地面に陽射しが降りそそいでいる
少し離れたところにギョンビンの後姿を見つけた
声をかけようとしたら、いきなり向こうに急ぎ足で行ってしまった

その行く手のずっと先の芝生にふたつの影
キスしてるの?
えっ?
ミンチョルさんっ?

ギョンビンは真っすぐ2人のところまで行くともうひとりの手を振りほどいた

2人の前に突っ立つギョンビン
そして振り返ったのもギョンビンだった


ソクの後始末   ぴかろん

よかった…イナ、スヒョンさん達と練習に来てる…
さっき様子が変だったけどな…

僕は大忙し
舞台の方はオ支配人に任せて、イナ達がいるホールを後にした
中庭の確認
塹壕掘ってないだろうな!
武器の確認
減ってないだろうな!
そして…警備グッズの確認…

警備グッズその他危険物保管場所のドアの前に奴がいた

「ソク…」
「ハン・テジュン…」
「お前の『せつぶんショー』だが、出し物の幕間に毎回入れてやるから頼むぞ」
「…おいおい…」
「絶対ウケないと思うが何度も出てくる事によって観客の笑いを誘えるぞ!」
「…怒った顔で言うなよ…」
「…イナに…手を出すな」
「その事だが、やっこさん、あの若い猿の様な男に手を出そうとしてたぞ」
「なにっ?チョンマン君がイナに手を出しただと?!」
「…よく聞けよ!キム・イナが猿にキスしようとしてたんだ!」
「なっ…なんで!」
「廊下を歩いていたら助けを求める声が聞こえたのでその部屋に入っていったら…野獣のようなキム・イナが猿を襲っていた」
「…ウソだ…」
「猿は助けたがその後キム・イナは僕にキスを迫った」
「…」
「体が火照ると言ってな…だからキスしてやった。一度では満足せず、もう一度とおねだりされた
…フフ…やっぱりあいつは色っぽいな…それに、手に負えない淫乱な男だ…」
「貴様っ!」

僕はソクに殴りかかった
かわされようが反対に殴られようが構わなかった
イナをそんな風に言われた事に腹が立った

ソクは…よけなかった
意外だった
僕のパンチは奴の左頬を捉えた
僕はバランスを崩して奴の方に倒れこんだ
奴は殴られたというのに僕をしっかりと抱きとめた

「お前…」
「なんで殴った奴がよろける?ちっとはケンカの仕方の勉強しろ。こんなではキム・イナを守れないぞ」

意表をつく言葉だった
多分ソクから聞いた初めての心のこもった言葉だろう…

「ちょっと話せるか?」

少し切れた唇を指で拭いながらソクは言った

屋上に出た僕達は外の景色を眺めながら煙草を吸った
雨上がりの匂いがする

「…僕は聴覚が異様に発達している。だから猿の声が聞こえた…」
「…あの青汁のせいかな…」
「青汁?」

僕は事の経緯を簡単に話した
ソクは呆れた顔で僕を見つめた

「…元気が出るかと思ってさ…」
「馬鹿だな、あんなお色気野郎にマムシ粉など…」
「お色気野郎じゃない!」
「僕の前ではお色気過剰野郎だ!」
「…」
「だが全てお前が原因だ、ハン・テジュン」
「僕が?!」
「…キム・イナは昔一途に一人の女を思い続けていた。その女と別れて、それでも想いを引きずってた。そしてソ・チニと出会い恋に落ちた」
「…」
「そこに現れたのがお前だ」
「あれは…」
「勘違いメールのせいか?」
「なぜ知っているんだ!」
「調べればすぐわかる事だ。僕はプロだぞ」
「…」
「ソ・チニとの幸せな日々に水を差したのは…お前だろう?違うか?」
「…ああ…」
「お前を選んだキム・イナは、幸せだがある不安を同時に抱えていた。それはお前もそうだろう」
「…祭の後の事か…」
「加えて『祭』の準備に追われて忙しいお前は、キム・イナを一日中かまってやれずにいた」
「…それはイナも承知している…」
「頭で解っていても体は承知していない、あの男は淫乱だ」
「そんな風に言うな!」
「あの男がそうなったのは…お前が原因だ…違うか?」
「…僕が?」
「気づいてないのか?…お前は僕と同じ素質を持っている…
僕のキスが奴を痺れさせたのなら、お前のキスだってはじめから奴を痺れさせていたはずだ
お前、手を抜いていたろう…」
「なっ…」
「…ふっ…まあいい。とにかく、奴のあの色気はお前が花を咲かせた…」
「…」
「咲かせた花なら水をやれ」
「…」
「あの花はじっとしていない。フラフラ彷徨う。お前が与えなければ自分から水を求めて彷徨い歩く。違うか?」
「…与えているつもりだった…」
「あいつは貪欲だ」
「…」
「一人じゃいられない男だ…」
「わかってる」
「…可愛い…奴だな」
「!」
「初めて会った時を思い出すよ。僕とお前を間違えた時、アイツは可愛らしい顔をして僕を廊下に誘い出した…」
「…」
「お前と間違えてたんだがな、妙に人懐っこい笑顔で…似たような奴がたくさんいたのにキム・イナは輝いて見えた…僕にはね」
「…ソク…」
「口の中の飴玉を見せられたときには驚いたよ…何がしたいのかわからなかった。いきなりキスをしてきた時、僕は…」
「やめてくれ!」
「いや、聞いてくれ…」
「…」
「僕の体に衝撃が走った…何が起こったのかわからなかった…奴はすぐに僕を突き飛ばしたけど…
お前と僕を間違えていたのだと気づいた時、僕は奴とお前が憎くなった
ぬくぬくと幸せごっこをしているお前達がな
BHCの連中をサンプルにとは考えていたが向こうから飛び込んでくるとは…
後はお前の知ってる通りだ。だが僕はいつの間にか奴を…」
「もういい、解った!」

「…なぁ。花の育て方、しってるか?やたらと水を与えればいいってもんじゃない。適度にやらないと根腐れするし時には肥料も必要だろう?」
「…」
「キム・イナはお前を求めている…もっとよく見てやれ。本当に必要としている時にたっぷり水を与えてやれ
そのタイミングが合った時の奴は、決して貪欲でも淫乱でもなかった」
「ソク」
「さっきの淫乱さはお前が間違えて与えた肥料のせいだ。不必要なものを与えるな。奴が不安定になる。周りの者が迷惑する…」
「…」
「もっと会話しろ、続けたいのならな…お前達を見ていると、刹那的にお互いを求めている気がしてならない
だからお前も奴も不安を抱えているんじゃないのか?幕に隠れてキスする暇があるなら言葉で伝え合う事をしておけ
甘いキスのは思い出なんて体が疼くだけだろう?…良い言葉は…思い出すと…心の支えになる…」
「…ソク…お前…何かあったのか?」
「変か?…そうだな。変だ…こんなに喋るなんてな…でも、心が軽くなった
無防備な天使が僕に忠告を与えてくれた…僕自身がどうすればいいか…それを示してくれた…」
「…ソク…」
「とは言っても簡単には変われないさ。だからキム・イナにもキスした…悪かったな…だが、もうしない…」
「…」
「キム・イナが最後に僕に『好きだった』と言ってくれたよ…気の多い男だな…あんな奴を恋人にするなんて、お前、苦労するぞ…」
「…」
「僕にはできそうもない。心配しすぎて縛り付けるか、あきれ果てて捨ててしまうかどちらかだ。お前の忍耐力には脱帽だ」
「…イナにお前の気持ちを伝えたのか?」
「…いや…余計混乱させる」
「…何故イナなんだ」
「仕掛けてきたのはアイツだ」
「そうだけど!」
「原因を作ってるのはお前だ」
「…そう…だろうけど…」
「僕とお前は…似てるんだ…好きなものも…」
「…」
「僕の言った事、理解できたか?」
「…ああ…」
「何泣いてるんだ」
「…あれ?…泣いてた?」
「ふっ」

僕は煙草を落として足でもみ消した

「そんなとこに煙草を捨てたままにしちゃ、いけないんだぞ!」

ソクの声がいたずらっ子のように明るかったので思わず顔を見つめてしまった
ソクは笑っていた
初めて見る優しい笑顔だった

「僕もお前のキム・イナのような恋人を見つけるよ…」
「見つけたら僕がそいつにキスしに行ってやる!」
「フン、お前のキスなんて僕にくらべりゃ…」
「フン!イナは僕のほうが上だって言ってたもん!」
「そりゃ錯覚だ」
「なんだよ!自信満々だな!」
「ふふ…」
「ふ…ははは…あはははっあはははは」
「…笑いながら泣くな…」
「…」
「辛い事もちゃんと話してやれよ…って天使の受け売りだがな」

ソクは僕の肩をポンと叩いて扉に向かった

「くそったれ!セツブンショーの時、セリフ間違えるなよ!」
「『鬼は〜うち福は〜外』って言いながらお前達に豆ぶつけてやる」
「僕は絶対笑ってやらないからなっ!」

ソクはふっと笑って片手をあげて扉の向こうに姿を消した
あいつは…イナが…好きだったんだ…


お兄さん   オリーさん

「何してるの」
もう一度立っているミンははれんちの着てるミンに言った
目が僕よりつり上がってこわいのら
はれんちののミンは変わらず穏やかな笑顔を浮かべてるらけ
れったいこのスーチュはあのスーチュらよ、僕は思った
「立って」
ミンは今度は僕にそう言った
「ろーして…ふたりいるの?」
キツネにつままれたみたいら、キツネがキツネに…?変なこと考えておばかな僕…
立っているミンはじれったそうに固まってる僕の手を強く掴んで立たせた
そして自分の背中の後ろに隠すように押しやった
その時僕はミンの首にかかっているキツネのぺんらんとを見つけた
こっちがほんとのミンら
でもらとしたら、ひいん、やっぱり怒ってる
ほんとのミンは座っているミンに向かって言った
「何しに来たの。仕事?それとも僕に用?」
「久しぶりに会ったのに、そんなにつっかかるなよ」
「突っかかられような事するからじゃないか。とにかく僕のことはほっておいて」
「せっかく会いに来たのに」
「僕は兄さんに用はないよ。迷惑だ。帰って」
そういうとミンは僕の手を引っ張るとどんどん歩き出した

「ミン、待って。兄さんて、あれミンの兄さんなの?」
僕は引きずられるようにミンに手を引かれながら聞いた
ミンは答えずどんどん歩いた
ホテルのロビーを突っ切りどんどん進んで人気のない廊下の端まで来ると突然振り返り僕を抱きしめた
「間違えないで、お願いだから」
「ごめん、てっきりミンらと思ったから。あのその、あれしちゃって…しゅまない」
僕はひたすらミンに謝った
らって、ミン浮気はれったいらめらって言ってたから、怖いもん
「あれは…仕方ない。兄さんの事を黙ってた僕も悪いから。でもこれからは間違えないで」
「わかった、そうしゅる」
その僕の答えを確かめるようにミンは僕にキスをした
いつもより長く甘く情熱的なやつを
うふっ、しゅてき…
「わかった?これが僕だから」
僕は何度もうなずいた
「れもほんとにそっくりらよ。れんれん見分けがつかない。双子なの?」
「違う、兄弟です」
「双子りゃなくて兄弟?れんれん知らなかった…れもよく似てる」
「顔だけじゃなく兄さんと僕は人生もとてもよく似てる」
そういうとミンは遠くを見つめてしばらく考え込んだ その表情はとても悲しげで、怒っているようで、とても複雑
僕はその顔を見て何だか切なくなった
「ごめんよ、間違えちゃって」
ミンの首に抱きついて耳元で囁いた
そうしないとミンが今にも泣きらしそうだったから

「詳しいことは後でちゃんと話します。だから部屋へ戻ってて」
練習の事を思い出したミンはふと我にかえると僕に言った
「わかった。ちゃんと部屋にいるから心配ひないれ」
「エレベーターまで送るから、部屋で待ってて。昼は一緒に食べましょう」
僕はうん、うん、とうなずいた
聞きたいことはたくさんあるけろ、待ってるから
ミンは僕の手を握り締めるとロビーの方へ歩き出した

エレベーターに乗る前にミンはもう一度僕にキスした
「じゃあ」
「うん」

そしてエレベーターを降りるとられかに腕をつかまれた
ひいん、お兄さんら
らってはれんちの着てるもん
お兄さんもミンと同じですばやいのら
「さっきは最後までいけなかった、僕は中途半端は嫌いな性質でね」
そういうとお兄さんは僕の唇をふさいだ
間違えてないけろ、これってとってもまずいのら…
ひいん…


ファッションモデル達  ぴかろん

「あーたはあーたと、あーたはあーたと」

着ぐるみにしか見えないアンドレ先生は、次々と男色カップリングを決めていく…
蜘蛛さんがテスさんをコートに包んでるけど、大丈夫かな?
それにトファンとかマイケルなんかどーすんだよ…あとミミ…じゃねぇ、ピーターだったか…あれはどーすんだよ…
ん?あれ?スヒョクだ…なんだ?あいつこんなとこに紛れ込んで

「スヒョク、お前どーした?」
「あ、シチュン…匍匐前進してたら男組の隊長に首根っこつかまれてさ、顔をじーっと見られて涙ぐまれて
『頼む、一緒に来てくれ』って言われて、んで来た。これ何?」
「ファッションショーのモデルだって。俺たちモデル」
「へっ?」
「俺たちの初めての活躍の場が…これだよ…で、デジャイナーがあれ」
「はっ!」
「馬鹿!銃を抜くな!」
「…ごめん、おもちゃなんだけどさ、持ってないと不安で…でも、あれ、何?宇宙人?」
「そんなようなもんだと思う…で、気をつけないとウエディングドレス着せられるぞ…」
「は?!」
「…俺たちきっと似合わねぇから大丈夫だろうけどさ…」
「…お、俺…逃げる…」
「逃げられると思ってんのかよ…」
「え?」
「なんならちょっと逃げてみろ」
「ああ!逃げるよ俺は!」

スヒョクは逃げ出した
そして簡単に捕まった
デジャイナー先生はあんな体格だが素早かった
「狙っちゃ獲物は逃がしゃにゃいわよ!」
スヒョクは真っ青になって帰ってきた

「馬鹿だな、まともに顔見たのか?」
「だってだって…」
「大丈夫か?」

スヒョクの顔は、JSAの、あの、暗いスヒョクの顔になっていた…

「とにかくさ、俺がいるからさ。俺もお前がいてくれると安心できるしさ」
「ふぇ〜ん…」
「今日と明日の二日間の辛抱だ。な?」
「ふぇ〜ん…」

よくよく考えるとスヒョクとこんな風に喋ったのって初めてじゃないかな?
店にいてもこいつ喋らないし…
俺はマジマジとスヒョクの顔を見た

ハンサムじゃん…俺には負けるけど…

「お前ってぇ…彼女とかいるの?」
「いないよ、君は?」
「…今はいない…」
「この頃居づらくない?周りがハートだらけでさ」
「お前もそう思う?俺なんかさ…好きな女、いるんだけどさ…そいつ、別の変な男とデキちゃってさ」
「へぇ〜君みたいなカッコいい奴よりそんな変な男選ぶなんて、見る目ないんだな」
「…そんな事言うな!アイツは見る目があるからその男を選んだんだ!」
「…なんだよ…怒るなよ」
「…ごめん」
「あ〜りゃ、仲良ししゃんねぇ〜うふふ〜でもデャメ!あ〜たたちカップルにしちゃげにゃいっ!プン!あ〜たはあにょ人と、
そしてシチュンちゃんは…しょおねぇ〜あにょ人がいいわっ」
「…げ…チョンウォン…」
「シチュンさん、あの人ってイナさんの…」
「ん?…ソクさん?…」
「なんか凄いキスする人だってラブ君が言ってたけど…俺大丈夫かなぁ…」
「…がんばれ…」
「えっ何を?」
「…わからん…俺もチョンウォンさんとカップルなんだから…訳がわからん…」
「やあえっと誰だっけ、BHCの」
「シチュンです」『さっき言っただろーが!』
「僕はチョンウォン。よろしくね。僕は王子だから君ウエディング・ドレス着てね」
「えええっ!」

「あの…」
「は?」
「僕…スヒョクといいます…デジャイナー先生が貴方と組めって…」
「…そう…BHCの人だよね…」
「は、はい…あの…」
「僕の噂は聞いてる?」
「…はい…」
「…ふぅ…僕に近づかない方がいいよ…」
「…え?」
「はぁ…全く君たちは何故おんなじ顔してるんだ…」
「…」
「…いや、君のせいじゃないけどさ、ハハ」
「僕…どうすれば…」
「ん?適当に…この辺にいれば?」
「…はい…」
「僕、冷たいかな?」
「…いえ…」
「なんか君、涙目になってない?」
「…いえ…」
「あ、ちょっとどこ行くのさ」

あれ?スヒョクがこっちに来た。なんだ?泣いてる?ソクに何かされたのか?!

「どうした?」
「うっうっ…怖い…」
「何かされたのか?!」
「ううん、されてない」
「ちょっと…ごめん、僕何かいけない事言ったかな?…ごめん、会話にあまり慣れてなくてさ…」
「うっうっいいえっ」
「…泣いてるの?」
「ううっうううっ」
「…ごめんって…泣くなよ…」

そういうとソクはスヒョクをいきなり抱きしめた
ひええええっ…何こいつ…
俺は目が飛び出るほど驚いた
隣にいたチョンウォンは…無表情だった…


テソンのわた雪   妄想省家政婦mayoさん

僕はディスクを取りに行く闇夜と一緒に白夜に行った

「隣の部屋のアンドレ先生録っておいたよ。何回もすまない」
「ピョートル、部屋から出たくなかったんでしょ」
「はは..そういうこと」

ピョートルは”彼”に目配せし、闇夜はデスクでチェックを始めた
僕はソファでピョートルと話をした

「闇夜に最初に会ったときピンときたのか?」
「いや。全然わからないと言えば嘘になるが…」
「どんな感じ?」
「ん〜、頭の奥で眠ってたのが起きた感じ..どこかで見たことある感じ..」
「闇夜の方からは全く何も言わなかったんだろ?」
「テソンも知ってのとおりあの性格だ
 僕はすっきりしたかったから何代も前まで調べたわけ」
「で、繋がっていたわけだ」
「そういうこと..僕は事務的に調べたまで。気にするな」
「ぅん」
「僕は最初からまよぴーは友達だと思ってる。父さん共々ね
 せっかくの男の友情みたいなもんを壊したくないじゃないか」
「男以上に男のときある..」
「ぷはは..いいのかそんなこと言っても..チクるぞ?」
「^^;;...ピョートル.…君も闇夜のことがわかるんだな」
「そりゃそうさ。大昔はいい仲だもん」
「あのさぁ..」
「冗談冗談。テソン…お前…いつも近くにいるだろ」
「あぁ…でもあまり近くに居すぎて見逃す事もあるかな」
「肝心なことを言わないからやっかいな時ないか?」
「根気がいる..でも何とも思わない」
「お前ほんとに好きなんだな」
「僕には"今"の闇夜が必要なんだ」
「ふっ...テソン?」
「何..」
「お前..ノロケを言いに来たのか?」
「ぁ..ごめん..」

ソファの傍に立っていたお付きの”彼“が俯いて笑っていた
闇夜のチェックが終わると僕らは部屋に戻った

僕はいつものモニターをチャックしてから..
ソファでMV特集を見ている闇夜の右隣に座った
今日の闇夜はちょっと疲れている様子だ
僕は闇夜の頭を肩に引き寄せ髪〜額にそっとxxxをした

「疲れてない?疲れたら僕にちゃんと言ってよ」
「ぅん…」

肩を抱き軽く手のひらでポンポンと叩くと闇夜はふっと笑った
と…闇夜の顔が近づいている気配を感じた…
闇夜の唇がまた僕の瞼に触れた。さっきよりももっと優しく…

わた雪が落ちては溶け落ちては溶けるように僕の瞼に落ちていく
わた雪は少しづつ鼻に、頬に落ち、やがて僕の口元に並んだ★に落ちていった…
僕の唇に触れそうでいて絶対振れない微妙な角度で
舌を使わずに唇だけで僕に何度も何度もわた雪を落とす…
僕がわた雪を手のひらで受けている
そんな景色が僕の瞼の奥に浮かんでいた

…ちょ..ちょっと…まって…
僕の耳に吐息にも近い自分の声が聞こえてくる
闇夜の方を振り返ろうと思った…でも頭が動かない…
僕の頭の後ろに回された手が一点の何処かを押さえている…

僕の唇をちょっと抵抗して受けるときもあれば僕にふいにxxxをする
どっちが本当の闇夜なんだよ…
僕の思考回路はすっかり混乱し蜘蛛の巣を張っている
考えれば考えるほど自分で吐いた蜘蛛の糸が絡んでくる

闇夜の手が離れ唇が口元から離れた
僕は拗ねた顔で闇夜を見た
「また…ずるした…」
「…嫌ならもうしない…」
「嫌なわけないよ…」
「そっ…じゃまたそのうちする」
「ぅん…」
闇夜は僕のためにわざと外している…そう思えた
僕はそのまま闇夜の唇を塞ぐ気にはなれなかった
欲しいままに貪ることが僕らしくないような気がしたから…

☆〜☆〜☆
「テス…なぁ…これ着て寝るのか?」
「ぅん。お揃いだよ」
「いつものように裸でいいじゃないかぁ…お前の体温感じていたいのに…」
「ちぇみ〜今日はゆっくり寝るの」
「お、俺はもう大丈夫だ」
「駄目。今日はこれ着て添い寝だよ。わかった?」
「ぉぉん…でもこの色…濃くて落ち着かん…」
「僕の好きな色なのにぃ…ちぇみは嫌い?こっちの変なきみどり色の柄物の方がいいの!?」
「ぁ...ぁぅ..ぃや..お前が好きな色にしよう。ぅん」

「ちぇみ..似合うじゃん〜^o^」
「お?そっか..^_^」
「ちぇみ..あんどれ先生のコート綺麗だったね。よかった。ちぇみと一緒で」
「お前のパートナーは俺しかいないだろうが..ん?」
「うん!」
「じゃ、寝よっか。テス..」
「うん!..ちぇ~みぃ~」

テスの好きな濃ゅ〜ぃまっっ青色のパジャマで寝るちぇみテス..
もちろん..添い寝のままでは終わるはずもない..

xxxx…ぁ…xxx…xxxx…ぁぁん…xxxx...


フリータイム  ぴかろん

「はぁい、カップリングしちゃけど、今から二十分間でぇ相性がいいかどうかお二人でたしきゃめてちょうでゃぁい。ハイ、ステャァト!

「君、シチュンだっけ?君、ちょっと馬面だな、でも髪も長いし僕より背が低いからウエディングドレス、似合うよ」
「…いやだ」
「何?僕に対して生意気な口聞くな!僕はチョンウォンだぞ!」
「アンタのほうが口もおちょぼだし可愛いと思うぜ。アンタ『オールイン』の出し物で王子やるんだろ?
だったらこっちでは女装したほうが絶対ウケるぜ」
「むむっ一理ある…」
「ぜってー似合うって…」
「そうか?」
「だってさぁ、可愛い顔だもん」『けっ』
「君、僕に惚れたのか?断っておくが僕は女性しか興味がない!」
「俺だってそうだよっ!」『馬鹿息子!』
「ならば…ちょっとやってみようかな?」
「うんうん、ぜってーウケるよ」『ヒヒヒば〜か』
「よしっ!君っていい奴だな」
「うほほ…」『はぁ〜…』

「泣かないでくれよ…すまない。まだ人とうまく付き合えないんだ…」
「…ううっ…すみません…僕の方こそ…」
「君は…スヒョク君だっけ?」
「はい」
「…ああ…君は…そうか…」
「なん…ですか?」
「ン?いや、君の事も色々調べたから…知ってる」
「…」
「辛い過去を持ってるんだな」
「くっ」
「ごめん!泣くな!泣かないでくれ!どうやって慰めたらいいかわからないんだ!」
「…いえ…一生引きずらなきゃいけない問題ですから…でも俺…いえ、僕、少しは明るくなれたんです…」
「…『俺』でいいよ。自分の事を『俺』という奴が好きだ…」
「…イナさんですか?」
「あ…いや…」
「すみません…あの…そろそろ離してください」
「話すって僕の事を?」
「え?いえ、腕を…」
「あっああ、ごめん」
「貴方の事も教えてください…」
「…ややこしいから二十分では話せないなぁ…」
「相性が合ってたら明日まで一緒でしょ?」
「ああ」
「俺、貴方と合いそうな気がします…あれ…俺なんか変だ」
「…スヒョク君」
「スヒョクって呼んでください」
「じ…じゃあ僕の事もソクって呼んでくれないか…」
「呼び捨てで?」
「…ああ…」
「いいんですか?」
「ああそれと、敬語もなしだ」
「…はい…」

僕はスヒョクに僕の事を話した
予想外に短く話せた
時間が五分も余ってしまった
スヒョクが俺の事は話さなくていいんですか?と可愛らしい目で聞いた
僕は何故だかドキリとした
それは彼の辛い過去に対しての『ドキリ』なのか、彼の可愛らしい目に対しての『ドキリ』なのか解らなかった

僕は、話さなくていいと言った
あまりにも辛すぎるから…

「でも…死ぬなよ…」
「…」
「辛くても生きていかなきゃダメなんだ…」
「…はい…」
「また敬語…」
「だって、そう簡単にタメ口聞けませんよ…」
「…スヒョク…君はなんだか他のBHCの人たちと違うね」

辛い思い出のせいもあるんだろうけど
けれど彼の本質は、人懐っこくて明るい青年だと思う

「本当の君を…見てみたいな」
「え?」
「いや、ごめん…変な事口走っちゃった…」
「…ソクさん…ソクって…言いにくいな…へへ…優しい人なんですね…もっと機械みたいな人かと思ってた」
「…そぉかな」

僕はぎこちなく笑った
その僕を見てスヒョクも微笑んだ
瞳の奥に悲しみを湛えて…


戻る 次へ 目次へ