テソン闇夜の事情3  妄想省家政婦mayoさん

「どうした、こんなところで…」
「あ、ちぇみ…テスさんは?」
「ん…テソンのところにポット返しに行った」
「そう…」

ちぇみは闇夜の隣に座った
「闇夜…あいつ…お前のこと…」
「ちぇみ…わかってる…わからない振りしてる」
「闇夜…」
「わたしね…」
「ん…」
「どこかで…テソンも他のメンバーみたいに誰かとくっつけば。って思ってた…」
「そうなればお前が楽になると思ったのか?」
「そうかもしれない…」
「それはあいつが気の毒だ。選ぶのも決めるのもお前じゃない」
「うん…失礼な話だよね…」

闇夜はベンチで膝を抱えた
「やな奴だよね…」

ちぇみは煙草に火をつけた。闇夜の鼻孔に煙草の香りが入ってくる
「吸うか?」
闇夜は一旦伸ばした手を止めた
「いい…」
「…??」
「少し前に辞めたから。テソン…気にするから…」
「ふっ…そうか…」
「店にね…」
「ん…」
「何となくわかってから、厨房に行くの辞めようと思うこともある…」
「それは何の解決にもならない。逃げてるだけだ。お前らしくないな」
「…」
「そんなことをしたら自分のせいだとあいつは自身を追いつめるぞ」
「…」
「あいつは無理はしない」
「うん…」
「頑丈な要塞を壊してまで入り込んで来ようとは思ってないはずだ。違うか?」
「うん…そう…」
「あいつが嫌いなのか?」
「皆と一緒。特別に思わないようにしてる」
「ったく…お前もやっかいな奴だな…」
「うん…」
「だが…お前のこと一番心配してるのはあいつだというとこは忘れるな…」
「わかってる…」
「ぷっ…お前でも悩むことはあるんだな…」
「あのね!」
「お、すまんすまん…」

『ちぇみぃ〜どこ?』
『ん…外のベンチだ。そっちに行くから待ってろ』
『うん』

「部屋まで送るから…」
「うん。テスさん?」
「ん…」
「ちぇみとテスさん不動だね」
「もとはと言えばお前がきっかけ作ったんだろうが?」
「そうか…(^_^;)…感謝してる?」
「ん…」

バタン★
「あ、ちぇみ…お茶追加しておきましたよ」
「お、ありがとう。テス行こうか(*^_^*)」
「うん。じゃね、テソンさん、リハーサルの話、またね!」
「あぅ…テスぅ!」「えへっ(^o^)」

「くく…リハーサルの内容聞いたの?」
「うん。ちょっとね…」

お互いにフッと笑った後のちょっと気まずい沈黙…
「あ、これ…」
「ん?何?」
テソンはちょっと笑って闇夜にディスクケースをひらひらして見せた
「おぉ!〜清風明月!」
「ネットで予告何度も見てたでしょ?テスに貸す前に吸い上げて今ディスクに落としたから」
「あ、でもテソンッシ観たんでしょ?」
「いいよ。付き合うよ。観よう!」

「これと、これは必需品ね」
「タオルとティッシュ」
「絶対!大泣きするから…」
「ね、…また映画ぁ?とか…これ読んでる人言わないかな」
「無視無視…観よう!」

「うわっ!ちょ・超〜渋いよっ!渋いよねっ!」ビシッビシッ!
「い・痛いって…はたかないで…」(#おとこおんなめっ!)
「かっちょえぇぇぇ〜〜(^o^)ね、ね、これ真剣なんだってよ!!」
「はぃはぃ。剣さばきは見事だし。凄い」
「剣道4段だも〜ん。1ヶ月で殺陣マスターしたってぇ〜すごいぃぃ〜かりすまミンスぅ〜」
(さすが<廃人>…詳しい(^_^;))

「(;_;)」「ほらっ、タオル!」
「ウ・ウン…(;_;)…」「ほらっ、鼻水出てるって!」「ウンウン....」

「はぁ……渋いっ!渋いぞ!!かりすまミンス!」

『ったく…でも覗き以外の映画一緒に観たの初めてかな…』


久々のつぶやき大会  オリーさん

兄貴に会いに行った
好物のチョコパイを持って
兄貴はカフェにいた
ケーキバイキングの時間だそうだ
ケーキをホールごと取ろうとしてホテルの人に丁寧に止められていた
俺の持っていったチョコパイにはもうあまり興味がなさそうだった
職を転々としたらしい
刑事や床屋はともかく覆面プロレスラーっていうのはどういうつもりだ
兄貴は変わった、特に顔のサイズが
帰りしなに俺の持っていったチョコパイを夜食に食うと言って持って帰った
あれ以上食べるのだろうか
僕は見ているだけで胸が一杯になった

ミミさんが冷たい
いや冷たいと言うより、心ここにあらずと言った感じか
白夜倶楽部から戻ってからだ
僕の踊りに艶やかさが足りないいと言う
前はすごく誉めてくれたのに
なぜだろう
派手と艶やかは違うと言っていた
奇抜と個性は違うとも言っていた
どういうことだろう
誰か僕ら以上のダンサーでも見つけたのだろうか
そんな馬鹿な、ありえない
会長は何も気づかないようだ
年寄りだから鈍感なのだろう
取り越し苦労だといいのだが

あたしゃ決めましたよ
何をって、実は独立するんですよ、この祭が終わったら
これ以上理事とお付き合いしても何のメリットもありゃしません
それよりあの占い、あれはいけます
あたしゃ、今までの立場上、人の心のキビには精通してますからね
きっと大当たりしますよ
まず都心で当てて、そのあとチェーン化して全国展開です
グッズ販売より絶対受けますわ
人助けして金儲けできるなんざ一石二鳥ってもんです
さてと、この間のあの子、どこいっちまったのか
助手で雇おうと思ってるんだけど
ここんとこ見かけないんですよ
どなたか見かけたら伝えてくださいよ
あたしがいい話があるって言ってたって

最近僕の話題が出ない
理由はわかってる
誰も僕のドラマを見なくなったから
最終回だけ見ればいいと思ってるんだろう
あのキャラは僕に向いてなかったんだ
でもここまできたら最後まで行くしかない
チャン理事も相変わらず椅子に座ったまま
勘当されついでにどこか他の店に就職しようか
男組はきつそうだし白夜倶楽部はテファがいるからしゃくだ
やっぱBHCが無難かな
え?
BHCって資格審査があるの
僕はだめ?
チャン理事、なんでそういう事最初に教えてくれないの

ここへきてからじかんがたつのがおそくて
いつうちへかえれるかわからない
はやくあいするつまとこどもたちにあいたいのに
みんないそがしそうにくっついたりはなれたりしてる
ぼくじしんはかたかなしゃべりができるようになって
ずつうもおさまっているからいいけど
このあいだびっくりした
とつぜんうしろからかたをなでまわされた
カン・ミヒさんのようなてつきだったのでびっくりしてふりかえった
まっかなくちのおんなのひとがいた
あなたいいからだしてるのね、といってわらった
くびににほんしわがあって、はまきタバコをもっていた
こわくてぼくはにげた
うしろからかわいい、というつぶやきがきこえた
どうしてぼくはああいうひとにめをつけられるのだろう

最近おやつを食べるようになった
だって口元まで持ってきてくれるんだもん
つい調子にのって食べてしまう
期待に答えないわけにはいかない
だんだん僕の好みがわかってきたようだ
そう、リンゴが一番好きだ
二番目がフレンチフライ
ドーナッツはだめ
この間バナナに飛びついたら、口の奥まで入ってしまった
自分でも怖かった
困った事がひとつ
ウェストラインが気になる、特にベルトの上
ちょっとダイエットしようかな
あ、今日はリンゴだ
サクサクッ


暗中模索   ぴかろん

助けてと叫んでいる君
僕は抱きしめるのを躊躇う
僕の欲望はもう修まっているのだろうか?
彼を抱きしめたらまたドクドクと腹の底から真っ黒い欲望の塊がこみあげてくるのではないか?
こんな無防備な君を僕はどうにかしてしまいやしないだろうか…
僕の欲望を抑えていた壁は、きれいさっぱり消えてなくなった
だから怖いんだ
僕の想いが他人に向けてまっすぐに流れ出していくのが

壁を作り直す必要がある
あんな強固な壁じゃなくて、もっと行き来のできる壁を…
僕の塵は留めておけて、でも風通しのいい、他人と交流できるそんな壁を作る必要があるんだ

だけど今はまだ何もできない
ようやく均された荒地のような僕の心
君の言ったとおり、僕は色々な人に助けて貰ったよ
もう少し落ち着かせてから種を植えるんだ
僕の種、仲間の種、苦しみの種、苦しみに打ち勝つ種、喜びの種、分け与える種、思い出の…種、そして君の種…

それができたら君とも自然に触れ合える
そんな風に思った
ドンジュン達が帰った後、そんな風に考えた

僕から流れ出していったドロドロとした物が、まさか君の周りにこんなにもうず高く積もっていたなんて…
なぜ君が僕の澱を身に纏わなくてはならないのか?
君は君の清らかな流れで僕を洗い清めてくれたというのに…

僕はどうすればいい?どうすれば君を救い出せるの?

身を投じて僕を救った君…
僕と言うやっかいな嵐に巻き込まれた君を
僕はどうすれば助けられるんだ!


せんせ…
見えない、聞こえない、泥がもう…喉まで詰まってる
僕ね、彼女を傷つけたよ…
嫌だね、人を傷つけるってとっても嫌だ
傷つけたくなかったんだ
彼女に好感は持ってるよ
それでいいと思ってた
結婚すれば自然に好きになれると思ってた
何より家族ができる事が嬉しくて
大切にするんだって思ってた

先生…
先生に会わなきゃよかった
なんで先生なんか好きになったんだろ…
先生はね
いつも柔らかく微笑んでた
でもね
どこを見ているのか解んなかった
僕ね
時々先生の目を見ていたんだよ
どこも見ていない目を
優しい瞳のその中心がとても深くて暗くて
もし真っ直ぐに見つめたら溺れちゃうなって思ってた


溺れたんだね
底なし沼みたいだ
これ
この泥
先生の底なし沼の泥だ

先生の中にいるの?
先生
こんなところにいたの?
こんなところで何も見ずに何も聞かずにいたの?


ここにいてもいいかな?
もう
結婚なんて
したくない
あんな事言ってしまった
僕は酷い男だ
僕は
うわべだけの男だ

この泥
僕の澱かな?
僕の心に溜まってた澱かな?
ずっと偽善者ぶって溜めてきた澱かな…

先生
楽だね
この中にいると
苦しいのに
楽だね
先生の気持ち
解るよ今…

「ウシク」


僕は君の名を呼んだ
聞こえていない?
違うだろ?聞こうとしないから聞こえないんだろ?!
僕の声を聞いてくれ!
そんなところにいちゃいけないと僕を引き上げてくれたのは君だろ?
僕に「生きてないじゃないか」と言ったのは君だろ?

ああ、届かない?僕の声が君に届かない?
その泥を取り除きたい
僕の澱だから…

『自分で足枷つけてさあ!自分で作った憲法守ってさあ!…』

ドンジュンの声がした
足枷?
足枷…


言霊    ぴかろん

ウシク。僕だ。イヌだ。僕の声が君に届くように…僕は君に触れるよ…いいかい?

僕は彼の手を撫でた
そして彼の、何も見ていない瞳を見つめた
それから彼の両耳に触れた

ウシク、これは君の耳だ
耳は音を聞き取るためにある
耳は話を聞くためにある
君の耳は聞こえるはずだ
これは耳
泥は詰まってない
君の中から綺麗な水が流れ出して
泥も澱も洗い流されたよ
さあ、聞こえるだろう?
ウシク、僕の声が聞こえたら返事をして
ウシク、聞こえるだろう?

「き……こえ…る…」

よかった
じゃあ、次だ
これは君の目
目は見るためにある
君の目は見えている
耳と同じ
泥も澱もない
綺麗な目だよ
さあ、見てごらん
何が見える?
何か見えたら僕に教えて

「…」

見えるだろ?

「先生…」

…よかった…

これは君の心
泥に埋まってもほら、綺麗なままだよ
見てごらん、なんの歪みもない綺麗な球体だ
衝撃を受けて凹む時もあるけど、ゆっくりと元通りになる強い心だよ
君の心は…こんなに強い
こんなに柔らかでこんなに綺麗だ
自分の手で抱きしめてごらん

ウシク
君は泥の中になんかいない
君は君だ
君はウシクだ

君は彼女を傷つけたんじゃない
君の思いを、少し乱暴な言い方で伝えただけだ
謝ればいいんだよ
つらいことがあって君に当り散らした、君に甘えていたと…
君は幸せになれる
君は


先生!

ウシクが僕に抱きついてきた
僕は少し身を硬くした
僕の欲望が抑えられるようにと願いながら

先生…

ウシク…すまなかった
本当にすまなかった
あんな事を…
君を傷つけてしまった…

先生、先生、先生…

ウシク、僕が見えるんだね?僕の言葉が聞こえるんだね?
僕を…感じるんだね?

ウシクは何も答えずに、泣きじゃくりながら僕の唇を貪った


岸辺   ぴかろん

甘い…甘い…君の唇
君がしたいようにしていいよ
君が僕にそうしてくれたように

僕はウシクの口付けをただ受けていた
彼がその後何をしようと僕はただ受けようと思った

ウシクは僕をベッドに引き倒し、なおも唇を貪り続けた
長い間、彼は僕の唇を弄んだ

はぁっ…

ため息をついて僕は先生から離れた

ありがとう…助けてくれて…
息ができるようになったよ先生…

それだけしか言えなかった
先生はまだじっと身を横たえたままだ

僕は彼女を傷つけてない?



ねぇ、答えてよ先生。僕はまだやり直せるの?

…ああ。君にその気があるなら…

先生はどうするの?

え?

…ううん…なんでもないよ…

ウシク、謝りに行けばいいんだ。ね。変な奴とケンカして、むしゃくしゃして酷い事を言ってしまったって…そう言えばいいんだ
君が言いにくいなら僕が彼女に話してやるよ

…何言ってるの…何言い出すの先生…

え?

僕、結婚したくないよ…

…ウシク…

僕、彼女とは結婚できないよ…

ウシク…

僕と結婚したって彼女は幸せになんかなれない…きっとそうだ…



先生

ん…

先生といちゃダメかな…

ウシク…
僕は怖いんだ



君を…壊さないかと、傷つけないかと思うと…

ふ…もうとっくに壊れちゃってるよ、僕…
先生が助けてくれたけど
僕、ガタガタだよ

ウシク…

ねえ先生、ほんと?

え?

僕の心って強いかな?

ああ。強いよ

どうしてさ、さっきまで泥の中で暮らそうと思ってたのに…あそこにいるとぬくぬくして気持ちよかったよ…

ウシク

先生を無理やり引っ張り出してよかったのかな…

よかったんだウシク。ありがとう。君のおかげで見えなかったものがたくさん見えた。知らなかったことがたくさんわかった
だから君に、泥の中にいて欲しくなかったんだ

先生の思い出…多すぎて…苦しくて…持てやしないよ…僕には

持たなくていいよ、僕も流してしまった
もういいんだ

よくないよ。先生の彼女に申し訳ない…だって、生まれ変わったら一緒になるって約束…

約束って、縛り付けるものだよね…



僕は縛られていたんだね。僕だけが生き残っているから、僕は自ら縛られていたんだ



君と出会って、君に惹かれて、君の中に彼女を見つけ出せたらと思った
けど君は君だ。彼女じゃない
それでも好きだった。どうしても君が気になった
君が僕を好きだと言ってくれた時、僕は嬉しかった
震えるほど嬉しかった
それ以上を望んだ僕が、自分で壁を突き崩した
君に向けて今まで耐えてきた事を全て流した
僕は君を打ちのめしたんだね…

先生…僕は過ぎた事をしてしまった…僕に出来るはずのない事をしてしまった…



先生を助けたかった

助けてくれたじゃないか

砕いただけだよ

違う!

そうだよ!

…じゃあそうだ!砕いた。でも、砕かなきゃならないほど僕の心は頑なだったんだ。だから君が…
もうよそう…僕は…こうなってよかったと思ってる
でも君は…君にとっては…


ウシクは僕をもう一度押し倒した

何してもいいよウシク
君の思うがままにすればいい

殺しても構わないの?

…ああ…

ばか…

君になら命を奪われたって構わない

初恋の彼女はどこいったのさ!

…彼女は死んだもの…

…じゃあ彼女のもとへ送ってやろうか!だから殺されてもいいなんて思うんだろ?!

…違うよウシク…

…僕は嫉妬してる…先生の彼女に…




恐る恐る僕はウシクに手を伸ばして僕の方に引き寄せた…

僕は…君が好きだ
でも君が僕を好きである必要はない…
大事なのは僕自身の気持ちだもの…

先生…

ふ…ドンジュンの受け売りだけど…


そう言って僕は彼にそっと口付けた
唇を離すと彼は僕の腕を押さえつけた
そう、あの時僕が乱暴に彼の腕を押さえたと同じように
そして僕のシャツを引き裂いた

ねえ、こうしたよね。こうして…こうしたよね!

荒々しい口調で言いながら、僕の体を撫で回す彼

確かに…怖いね…すまないウシク

何冷静に答えてるんだよ!

君の好きなようにすればいい…

ああ、してやるよ!先生は僕のものだ!僕だけのものだ!


狂ったように口付ける君
体を這い回る君の指と舌
僕は耐える…声を漏らさないように…
こんな風に感じるのは嫌だったんだよね、ウシク…
本当に酷い事したね…

「ごめんよ」


先生の体を貪っていた時、先生は震えながらそう囁いた
僕は…先生を許したと思ってた…
僕は…今の今まで先生を許してなかったんだ…

「先生、ごめんね…ごめんね…」
「いいんだウシク、怖い目にあわせたのは僕だか…」

僕は先生の唇を塞いだ
今度は優しく
押さえていた腕を放し先生の目を見つめた

「先生、先生の声に導かれて僕、元通りになった」
「導いてなんかいない」
「元通りになったんだ。先生のおかげで…」
「ウシク…」
「言葉って大事なんだね…」
「ああ…大事…」
「好きだ。先生が…。ずっと一緒にいたい…」
「…ウシク…僕も君と…一緒にいたいよ…」

もう一度先生の唇に優しい接吻を落とし、僕らはお互いを抱きしめた…


氾濫   ぴかろん

僕らはどちらからともなく接吻を交わした
僕らはお互いの体の傷を、泥を、お互いの唇で拭い取っていた
優しく這いずり回る僕たちの舌
僕は、えもいわれぬ快感に酔いしれる
声をあげそうになる
駄目だ
溺れてはいけない
溺れぬように必死で彼の肌に吸い付く
優しく、傷つけぬように、僕のつけた傷跡を包む
そこに溜まった毒を、泥を、僕は必死で吸い出す
彼も声をあげる
彼の声は美しい
けれど彼もまた溺れまいとしている

感じていいよ…ウシク

嫌だ



先生が感じてよ…僕を…


そう言ってまた繰り返す接吻
何度も繰り返す接吻
甘い唇…
これ以上僕に君を与えないで…
僕の荒れ野原はまだ、均されただけで
なんの準備もできていないんだウシク

ウシク、やめて…お願いだから

嫌だ。逃げるなよ先生。先生は僕だけのものだ!

ウシク…お願いだからウシク


僕の呟きは彼の唇にかき消される

言い訳なんか許さない、先生は僕のものだ!

…ああ…そうだよ…君の好きなように…すればいいんだ…でも…

何!




何に怒ってるんだ、ウシク
僕?彼女?それとも自分に?
僕を弄ぶことでそれは取り去られるの?
それならば僕は君にこの身を差し出そう
だけどそうでないのなら…ウシク

感じろよ!声を出せよ先生!何でだよ


僕は引き裂いたままにしていた先生のシャツを乱暴に脱がせた
先生は抗わない
僕のなすがままだ
僕は何をしたいんだ?
なぜこんなに不安定な気持ちで先生に口付けを落とす?
まだ許せないの?
わからない…
めちゃくちゃにしたいの?
這わせていた舌を止め、先生を見つめた
先生の顔が涙で濡れている
僕は混乱している
先生をまた泣かせてしまった
僕は混乱と安定を繰り返している
なぜだ…

先生は僕のものだよね?



先生?

…僕は…誰のものでもない



僕は僕のものだウシク…

…僕が嫌になった?

ならない

僕の好きにしていいって言ったよね

…ああ…

抱くよ

…したいならすればいい…

僕を欲しくないの?!

君も僕もまだ不安定だ…

だから?だから何さ!

こんな風に…したくない…でも君がしたいならすればいい…


ウシクはまた僕の口を乱暴に塞ぐ
息が出来ないほど激しく僕の唇を吸う
そしてまた僕の腕の自由を奪う
彼の唇が僕の体をまた這いずり回る
時折痛いほどの口付けをして僕を食い千切ろうとしている
僕を感じさせたかと思うとすぐに痛めつける
僕は声を出さなかった
それが返って彼の狂気を呼び覚ましたのか…
僕の体中に散らされた花
痛みを伴う植樹

ウシク
お願いだ…
こんな事するならもう殺してくれ




僕の言葉に彼の狂った唇はようやく動きを止めた
そして僕の体を見つめ、植えられたその赤い花を、一つ一つそっと撫でた

何をしてもいいと…言ったじゃないか…

ウシク…

先生は僕を好きと言ったじゃないか…

ウシク…

僕のものだ!


そう叫んで彼は僕の脚を乱暴に持ち上げた
怖ろしい…けれど…彼がそれを望むのなら…でも…

僕を…好き?


僕は振り絞るように彼に声をかけた
僕の中に入ろうとしていた彼は、動きを止めて僕の顔を見た

好きだって?…ああ好きだよ

一緒にいたいって本当?

…ああ本当だよ…



先生は?先生は僕を好き?本当に好き?

好きだ…

なら問題ないだろ?

でも…僕は…こんなのは嫌だ…


僕がそう言うのを聞いて、彼は持ち上げていた僕の脚を下ろした
そして僕の顔に顔を近づけて言った

こんなのは嫌?じゃあどんなならいいって言うの?!

ウシク
僕の心はまだ整ってない

僕だってそうだ!

荒れたままで君を受け入れたくない



ねぇ、まだ泥の塊なんだ
何も育たない
土の中から泥の腕が出てきそうなんだ
君が僕を抱いたら…泥の腕が君を捕まえて引きちぎってしまうかもしれない

そんな事させない!


ウシクは僕から離れた
両手で顔を覆っている

なぜそんなに焦るんだ?

だって今しかないじゃないか…この祭の間しか…

ウシク…結婚する気残ってるんだろ?
なら僕なんか抱くな…
そんな事して自分を汚すなよ…

違うよ
先生を抱かなきゃ…揺らぎそうで…

揺らぐ?

結婚しないって伝える事が…できなくなりそうで…
…わからない…どうしていいのかわからないんだ。先生の事が好きなのに…大切にしたいのに…どうしてこんな…


震えているウシクを僕は抱きしめた

僕は君の傍にいるよ…
焦らないで…ゆっくり考えればいい…

一つになりたいんだ…でも後悔するかもしれないとも思ってる…

ウシク、僕は逃げないよ
君が好きなのも本当だ
君がどんな選択をしようと、僕はもう騒がない
君が彼女との生活を選んでも、僕はもう荒れたりしない
君が僕を選んだとしても…逃げない

なら…

ただもう少しだけ時間をくれないか…
ここにいるから…
君の傍にいるから…




彼は俯いて僕の手を握った
僕はなんとなく解っていた
彼は本当は僕を抱こうなんて思ってなかったと

そうだよ…こんな風には…なりたくなかったんだ
こんな風に僕たちを始めるつもりじゃなかったんだ
これからどうすればいいのだろう…ねえ、どうすればいいんだろう、僕…

ウシク…ゆっくり考えよう
僕と一緒に、僕が傍にいるから…
君にとって一番いい方法を、一緒に考えよう、ね…


彼はコクリと頷いた


悪魔の指 9 足バンさん

冷たい空気に誘われて目を開ける
僕の腕の中にドンジュンはいなかった
一瞬、あれは夢だったのかと思った

しかし彼はいた
肩からすっぽりと白い上掛けに包まれて窓際に立っていた
少し開けた窓から空を見ている
明け方のうすもも色に染まった風景に絵のように同化していた
髪をかきあげるその横顔がなんと妖艶に映ったことだろう
僕はそのシルエットを見ながらまたぼんやりと考えていた
彼なら僕を癒してくれるのかと

ドンジュンはゆっくりとふりかえる

「起きた?」
「ふふ」
「なに?」
「天使が立ってるのかと思った」
「よく言うよ」

白い大きな布を翻し近づくと僕に覆いかぶさる
真っすぐに見据える視線はもう昨日までのドンジュンと違った
扱いを間違えると、どこかに逃げて行ってしまうのではないか
そんなことを感じさせる十分に成熟した視線
僕は自分の作品の出来に満足しながらも
同時に翻弄されそうな予感にとまどった

「あ、そうだ!」

ドンジュンはいきなりベッドから飛びのいた
降りてくる唇を期待していた僕は肩すかしをくらった

「あーあ、こんなになっちゃった」

ドンジュンはジャケットから小さな包みを持って戻った
くしゃくしゃの包みの中には小さなチョコがあった

「例のまずいっていうやつ?」
「そう」
「まずいチョコってどうやって作るんだ?」
「泣きながら作んの」

スヒョンは一瞬僕を見て真面目な顔になった
別にいじめるつもりはなかったんだけど
チョコをひとつつまんでスヒョンの口に入れた

「どお?」
「まずい」
「そ、じゃ誰か別の人にあげよう」

スヒョンはいきなり僕を抱え込んでベッドに転がした

「誰にあげるって?」
「ひみつ」

そう言ってスヒョンの唇に人指し指をあてた
しーってするみたいに
スヒョンはにやりとしてからその指にキスをした
その指を無造作にどけると、押しつけるように唇を重ねてきた
チョコの味がする

スヒョンは急に顔を離して僕を覗き込んだ
そして僕の肩に顔をおしつけた

「どうしたの?」
「側にいてくれるか?」
「スヒョン…」
「ひとの気持ちを吸ってると時々自分がその渦に巻かれる」
「うん…」
「いたたまれなくなって誰かに抱いてほしくなる」
「スヒョン…」

僕はスヒョンの頭をそっと抱きしめた

「いつでもおいで」
「……」
「半分こしよう」

ドンジュンのその言葉に、僕は不覚にも涙ぐんだ
ドンジュンは僕の頬に手をそえて顔をあげさせると
透るような目で見つめ、額に慈悲のくちづけをしてくれた

突然背中の羽根が軽くなったような気がした
ドンジュンにキスされるたびに
こころのひだの一枚一枚が潤っていく

僕とドンジュンの指が強く絡み合い溶けていく

チョコ味のスヒョン…好きだよ…

ようやく輝きはじめた海のひかりが部屋にひろがり
そよ風が遠くのさざ波を連れてくる
その空気は懐かしい早春の香りがした


渦  ぴかろん

僕の混乱は治まらない
僕の心は凪と波を繰り返す
元通りになんてなってない
先生の唇に優しくキスしたかと思うと
次の瞬間にはその唇を引き裂きたくなる

一晩中そうやって僕は先生を傷つけ
そして僕を傷つけていた
僕のその接吻に先生は一声も上げなかった
僕の心は泣いてる
僕の心は憎んでいる
何を?誰を?

許しを乞えよ!痛いって叫べよ!僕が欲しいくせに嫌だなんて言うな!

先生を責め立てて苦痛に満ちた顔を眺める
僕はどうしてしまったんだろう
こんな顔を見たいんじゃない…
けれど耐えている先生の顔はたまらなく美しい
ぞくぞくするほど綺麗なんだ…

僕はおかしい…僕は普通じゃない…
先生は僕の心を綺麗で強いと言ったけど
そんなの嘘だ
知りもしないくせに

ここで
こうして
貴方を痛めつけて
うっすらと喜びを感じている僕がいる
そんな僕に気づいてしまった

いい人だね…温かい人だね…

僕への評価
僕自身も自分の事をそう思ってたよ…
引鉄を引いたのは貴方だ
僕は彼岸と此岸を行き来する渡し舟のように
善人の僕と悪人の僕をちらつかせる

ああ…
ひとしきり彼を痛めつけると
必ず後悔の波が押し寄せて
僕はどんどん弱くなる…
だから…貴方の言葉が欲しいのに
貴方が悲鳴を上げてくれたらそれで僕の欲望は治まるのに…
なんでそんなに耐えてるのさ…先生…


ウシクの歯車は正常に動いたり逆回転したりを繰り返す
僕はその状況に慣れてきた
あんなに穏やかだったウシクをこんな風にしたのは僕だ
きっと…何度か僕を打ち据えたらきっと…その波は治まるはずだと…僕は人形のように耐えた
ふっと僕の体が軽くなった時、僕は薄く目を開けて見た
彼は僕を冷たく見下ろしていた
それは僕の知っているウシクではなかった
冷たい顔で口元に微笑みを浮かべるバンパイアのようなウシクだった
背筋がゾクリとした
怖ろしいと同時に僕はなぜかその冷たい瞳のウシクに強烈に惹かれていた

いけない…溺れそうになっている…いけない…

執拗に責めた後、涙を流しながら優しく僕を愛撫する彼
僕はここにいてはいけなかったのか…
彼の混乱を深くするだけだったのか…
けれどここに居たかった
彼の隠された部分を僕は全て見たかった
たとえ彼が僕から離れて行くのだとしても…


彼は左手で僕の体を弄りながら右手で受話器を握った
どこへ…かけてるの?

もしもし、僕です。ええお義父さん、昨日ゆっくり喋れなくて…体の具合はいかがですか?…
そう…無理しないでね…彼女何か僕の事言ってましたか?…そう、ちょっとケンカしちゃって…
沈んでましたか?…へえ…そうなんだ…ふぅん…え?いや、いいんです…
あの、あのね、僕、友達にお義父さんの事話したんです
そいつも父親が早くに亡くなってて…
そしたら羨ましがってね、ええ、話がしたいって…今替わります

何?何を…ウシク…

僕は彼が何をしたいのか解らず、首を横に振ってやめて欲しいことを伝えようとした
彼は僕に受話器を渡し、僕を背中から抱きしめ、そして背中にキスを落とした
彼はまた、僕の体に指と舌を這わせている…

もしもし、もしもし、ギヒョンの友達かい?

あ…こん…にちわ…お話は…彼からよく…伺ってま…す


途切れ途切れに答える僕
彼の愛撫に声がでそうになる…

こいつ、照れてるんですよ、ハハハ
ちゃんと話せよ!ホラ!

あ…ああ…

ん?どうしたね?

あ…

君、名前は?

名…なま…


名前?!

僕の頭に穿孔が走った
僕は彼の舌と指を振りほどき、しっかりと受話器を握った
彼は少し僕を睨みつけてなおも僕の体を弄ろうとする
僕はその手を払いのけたそして


僕、ウシクといいます!彼からお義父さんの話、聞かされ続けてて、羨ましくて…
お願いです!僕の名前を呼んでくれませんか?

おい何言ってるんだよ!辞めろよ!


ウシクは慌てて僕の邪魔をしようとした
僕は彼を睨み、そこに留まらせた

お願いです、僕の名前…呼んで貰えませんか?

いいよ、お安い御用だ…ええっとなんという名前だったかな?


僕は不安気に僕を見つめているウシクの傍に言って、彼の耳に受話器を押し付けてから彼のお義父さんにこう言った

ウシク…ウシクです…お義父さん

ウシク君…くんはつけない方がいいかな?ハハハ
あ〜…ウシク…ウシクや…
なんだか変な気持ちだな
息子が二人に増えたみたいだ…
ウシク、君もギヒョンと一緒に一度遊びにおいで
ああ、違う違う、息子なんだから…
ウシク、お前も一度家に帰っておいで…




ウシクの目から涙が溢れ出した
彼の体から、煤けた気体が抜けていくのが見えたような気がした

ウシク?聞こえているか?どうした?ウシク?

…はい…お義父さん…お義父さん…僕は…ウシクです…

おお、聞いてたのか?そうか、嬉しいなぁ、いい息子がもう一人出来たようで嬉しいなぁ
是非遊びに…いや、違った、帰ってくるんだぞ?

…はい…お義父さん…
あ…あの…もう一度だけ…僕の名前を…

ウシク、体に気をつけて、しっかり仕事してくるんだぞ

…はい、お義父さん…ありがとう…


僕はウシクから受話器を取ると、彼のお義父さんに礼を言って電話を切った
彼は静かに泣いていた

祭が終わったら…僕と二人で…お義父さんに会いに行こう…ね?ウシク
そうして君の気持ちをゆっくりと伝えればいいさ…

僕は泣き続けるウシクの肩を包み込んだ


テソン&闇夜  妄想省家政婦mayoさん

「mayoッシ..@@」
「テソンッシ..@@」
「2人で覗くの久しぶりだね」
「ふふ…そうだね」

キム・ソヌのことがあって以来…
僕らにはちょっとぎこちない"間"がある
お互いでそれを感じ取ってる

「ここ、ずぅ〜〜と撮ってる?」
「ん?うん……先生達見てると…ちょっと苦しくなる」
「うん…」

  皆は心の中吐き出して楽になってる…
  楽になりたいから苦しむのか…
  苦しいから楽になりたいのか…

「僕みたいな多重な奴は…何処から吐き出せばいいのか…」

「テソンッシ?…」

  つぶやくように言った言葉が重かった
  3つのテソンを冷静に見ることは出来ても
  すべての人格が同じ重さでのしかかってきたら…
  癒せるのか…自信はない…
  いつものように先回りして回避ミサイルを発射させて
  ずるい闇夜の顔になればいい

  モニターを見ている、いつも見慣れたテソンの横顔を
  じっと見つめることしかできないでいた
  肝心なことは上手く言えない…闇夜の顔がそこにある

  僕が近づけば
  僕の顔を見ずに腕をまっすぐに伸ばして
  刃だけを僕に向けてくる
  刃先が僕に向いていても怖くないさ…
  でも闇夜は踏み込めば..手首を返して自分に刃先を向ける筈…
  闇夜には有無を言わせない怖さがある
  無理はしないほうがいい
  自分らしい言葉で言えばいいんじゃないか?
  そう言い含めるいつもの僕◎
      僕◎らしくか…

モニターから目を離したテソンはゆっくり振り返った

「…??どうした?」
「えっ?あ..あ、何か変?」
「すごい変だ…」
「ぁ..ぁ..そぅぉ?…」
「mayoッシ…」
「ん…ん?」
「ひとつだけ…言ってもいいかな」


パートナー   オリーさん
 
「あら、お久しぶり」
「ミミさん、こんにちは」
「なかなか会えないけど、元気なの?」
「おかげさまで。ミミさんこそ調子はどうですか?」
「ホホホ、踊りもワイヤーも階段落ちもデラルスは絶好調よ」
「それはよかった」
「で、ミンチョル君、そちらは?」
「え?」
「あなたの後ろの彼よ」
「ああ」
「ああじゃなくて、新しいホストなの?」
「ええ、まあ」
「若くて素敵だこと」
「はあ」
「で、お名前は?」
「ミンといいます。ミン・ギョンビンです。よろしく」
「よろしく。あたしはヤン・ミミ。ミンチョル君とはとーっても親しくさせてもらってるの」
『ミン、嘘だぞ.』
『あ、はい…』
「いつも一緒にいるのね、彼と」
「ええ、ミンは僕のパートナーですから」
「パートナー?」
「はい」
「仕事のパートナー?」
「はい」
「初めて聞くわ、その言葉。じゃイナ君は?」
「イナは同僚です」
「同僚とパートナーって何が違うの?」
「日本語と英語ですかね」
「じゃあ彼も同僚でいいじゃない?」
「彼は新人なので」
「ふうん、なーんかよくわからない」
「別にいいじゃないですか」
「そうだけど…じゃ今度お店に行ったら指名するわね」
「ミンを指名すると自動的に僕もつきます」
「どして」
「そういうきまりです。パートナーですから」
「じゃ、ミンチョル君を指名すると?」
「ミンもつきます」
「ふーん、なーんかよくわからない」
「ルールです」
「そう、ふーん」
「じゃ、僕らはこれで」
「じゃまたね。ギョンビン君指名するから待っててね!」

「ミン、今の女には気をつけろ」
「はい」
「僕と一緒じゃなきゃ会っちゃだめ」
「はい」
「パートナーって言えばパートナーだろうが。こんなにいい呼び名はないのに相変わらず鈍感な女だ」

「なーんか変なの。まるで恋人みたいじゃんねえ…あら!イナ君!」
「ああ、ミミさん、こんにちは」
「元気?」
「おかげさまで」
「今ミンチョル君に会ったのよ」
「そうですか」
「ミンチョル君もそうだけど、あなたも何だかちょっと変わったわね」
「何がです?」
「何かこう…ほんわか色気が出てるって感じ」
「えっ、そ、そうですか」
「そうよ、でも何であなた総支配人と一緒なの?」
「ミミさん、お部屋はいかがですか」
「おかげでとても快適よ。さすが総支配人だわ」
「いえ、とんでもありません」
「でね、ミンチョル君ちょっと変なのよ」
「何がです?」
「若い子つれてパートナーだって言うの。イナ君は同僚だって、この差は何?」
「さ、さあ?ミンチョルと一緒にいるのは若いからか、な…ね、にゅ…テジュンさん?」
「そ、そうだね…ですね」
「であなた達は何で一緒にいるの?」
「パートナーっすから」
「は?職場が違うのに?」
「ええ、店を越えたパートナーです。ほら、今回色々共同でやりますので、そういう関係で」
「そうなの…ふーん。なーんか様子がおかしいわね…」
「ミミさん、あまり深く考えるとほら美容に悪いっすよ」
「そうかしら。それもそうね」
「じゃ僕らはこれで」
「失礼します、ミミさん」
「じゃまたね」

「あの女に嗅ぎつけられると厄介な事になりそうだ」
「イナ、なるべく気をつけよう」
「わかったよ、にゅー。にゅーも気をつけてね」
「オーケーだよ、にゃー。あっ、まだこっち見てる、手を離せ!」

「何だかあいつらもちょっと変よね。パートナーねぇ…ふぅぅぅん…」


おこもり    オリーさん

「おい、ミンチョル」
「やあ、イナ」
「さっきミミさんに会ったぞ」
「僕も会った」
「パートナーのこと聞いたぞ」
「うるさいな。曖昧でいい表現だろうが」
「俺達も使った」
「そう」
「へへっ」
「テジュンさん、ちょっとお聞きしたいんですが」
「何か?」
「スケジュールの件ですけど」
「はあ」
「気のせいか、ずっとこのところリハーサルが続いているようですけど」
「はい」
「たしか、随分前に祭まであと3日ということでしたが」
「はい」
「あれから1日くらい経っている計算として、あと2日くらいですかね」
「そのくらいでしょう。1日かもしれない」
「で、延々リハーサルなんですが、これはいつまで?」
「祭まで延々と」
「延々とね?」
「はい」
「おい、ミンチョル、スケジュールで何か文句あるのかよ」
「いや、別に」
「だったらそんなにくどくど聞くなよ。お前祭が早く済めばいいと思ってるのか」
「いや。僕はどっちでもいいんだ。イナは?」
「俺はこのまま延々と祭のリハーサルでいい」
「だろうな」
「何だよ、やっぱ文句あんのかよ」
「ないよ」
「だったら何で…」
「確認したかっただけだ」
「だから何でだよ」
「BHCはリハーサルOKだから、延々これが続くのなら僕はミンと部屋にこもろうかと思って」
「こらっ!ミンチョル!」
「お前だってその方がいいだろ」
「う、うん…まあ…」
「じゃ、そういうことで。テジュンさん失礼します」
「お気をつけて」
「ミン、行こう」
「あのミンチョルさん、こもるって?」
「いいから」

「あいつ吹っ切れたなあ…」
「じゃ僕らも吹っ切る?」
「もう、にゅーったら…」
「あ、オ支配人が見てる!手を離せ!」


非常階段   ぴかろんさん

「じゃあ後でね、ニャー」
「あ…にゅ〜」
「ん?何?」
「ちょっと…こっち来て」
「何さ」
「こっちこっち」
「何?何よ」
「もっとこっち」

イナは僕を非常階段まで連れ出した
はぁ〜もう…可愛い奴…

イナがしたい事わかったよ…

「こっち…あ…」

… … …

「…んも…いっつも!いっつもなんだからッ!」
「なぁに怒ってるんだよ」
「いっつもにゅ〜が先手を打つ!」
「解っちゃうんだもクク」
「悔しい!あ…ん…」
「あっあれ…」
「うぉっ!ミンチョルとミン君だっ!うわっ…すっげぇ…」
「なんかもぐもぐしてないか?!」
「してる!あれって舌じゃないよねっ!(@_@;)」
「…食ってるよな、なんか」
「…あっ!バナナの皮が落ちてる!」
「えっ。バナナ食いながらちうしてるのか?!」
「…美味しいんだろうか…」
「…やってみる?」

僕をじっと見るイナ

「無理だな」
「なんでさ」
「ミン君とミンチョルって口のサイズ一緒でしょ?だからできるんだよ、バナナ」
「僕だってできるよぉ」
「無理だよ、にゅ〜のお口ちっちゃいもん」
「変わりにお前の口がでかいからいいじゃん、できるよぉやろうよぉ食べたいよぉバナナ味のイナ」
「ばか。ちょっとそれより見なよにゅ〜…」
「…うっ…」
「飴だ…」
「…」
「それもミン君が…リードしてる…やっぱり入れ替わってるよぉいいなぁねぇにゅ〜一回入れ替わろうよぉ」
「ダメ」
「なんでさケチ!」
「だってお前こないだだってどこにどうすればどうなるか、解ってなかったじゃん!」
「…」
「だ〜め!」
「あ!目新しいカップルが…」
「え?」
「もうちょっと下に…」
「あれは…」
「天使と悪魔だ…」
「なんかこないだまでと雰囲気違うね、悪魔が天使みたいな顔つきしてる…」
「…あそこも入れ替わってるのかな…」
「…」
「ねぇねぇ。入れ替わってるよね、ね、にゅ〜ぅぅ」
「ダメ」
「…けち!」
「…ふぅん、そんなに入れ替わりたいの?」
「…だってさぁ…どんなのかさぁ…」
「…じゃ、お前僕の言う事聞くか?!」
「…なにさ」

ごにょごにょごにょ

「えーっ!嫌だよ裸にエプロンなんてっ!」
「しいいいっ大声だすな!」

下にいた2カップルの視線が僕たちに向いたのは言うまでもない…

「…いいかもしれないね、ミン」
「貴方がするんですよ、裸にエプロン」
「えっ?!」
「…可愛いだろうなぁ…」
「…ミン…」
「フリフリのね」
「…」

「いいかもしんないね!」
「僕は嫌だぞ」
「なにが」
「僕はそんなもの着ないぞ」
「スヒョンに着ろなんて言ってないよ気持ち悪い」
「…」
「僕がやんのよ」
「…」
「なによ」
「…それ、いいかもしんない…」
「誰もスヒョンの前でやるって言ってないでしょ?」
「なに?」
「ンフ…そぉだなぁ…やっぱキツネかなぁ…」
「ドンジュン…」
「んふふぅどうする?」
「ばか…行かせるか!そんな事出来ないようにしてやる!」
「あん…ん…ん…わ…わかったよ…スヒョン…ん…スヒョンの前でしか…しないからぁ…」
「よし、じゃ、ショップに行こう」
「…え?」
「打ち合わせまでまだ時間あるだろ?さっそく」
「…ばかっ!」
「あっドンジュン、待てよドンジュン!」

「…にゅ〜が悪いんだからね」
「ニャーが大声だすからじゃんか!」
「違うもんにゅ…ん…ん…」

はむはむはむはむ…ってやってろよ☆

とテソンはモニターのスイッチを切った


テソン&闇夜2  妄想省家政婦mayoさん

ゆっくり振り返ったテソンはいつもと違う闇夜の顔を見た…

 らしくない顔…ったく…
 僕が襲うわけないだろうに…

闇夜が見えない刃をテソンの前に突き出す瞬間
テソンは言った

「僕は互いに[あ・うん]..で想いやってる感じ…それが心地いいんだ..僕はそれでいい」
「うん…」 「mayoッシはいつも..[あ・うん]の中で僕に心のバランスをくれる。僕は..何をしてやれる?」
「……」 「無理にえぐることはしない…嫌がることをしない…」
「……」
「だいいち..どうにかしようなんて…」
「…できない…テソンッシには…」
「うん…そう..出来ない。それに..腹の探り合いはもう..止めようよ」
「……」

  闇夜の手から刃が落ちた

「ごめん…余計なこと言わせて…」
「謝ることないよ。ほら、そういうの…いざとなると..変に気使うのも…もう止めよう」
「……ぅん」

  闇夜は落ちた刃を拾おうとした
  テソンはそれを拾って闇夜に渡した

「お願いだから自分には向けないで。僕は無理に踏み込まない…」
「テソンッシ…」

テソンはいつものようにグー★と突き出しピシッ◎と闇夜は手のひらで受けた

「でもそのうち…どうにかなる..かな…」
「ない..絶対無い..」
「ふ〜〜ん…」
「…@@」


コミエサラン5 妄想省家政婦mayoさん

バタン★
「テソン!闇夜!…」(れれれ?..何か…空気が変〜♪ぅそぉ〜ん♪)
「あ、あ..ちぇみ..あれ?テスさんは?」
周りをきょろきょろする闇夜
闇夜の頭越しに@@会話のテソン&ちぇみ
 『テソン..悪い..邪魔したか?』
 『はは…何言ってるですか…』
 『だが…』
 『何もないですよ…僕と闇夜ですよ?』
 『ぷっ..それもそうだな…』

「テスはどうしたんです?」
「ん…拉致..された…」

「「えぇぇっ〜〜〜〜!?」」
「おい…お前たち..ハモってるぞ…」
「「あ、あ…^^; ^^; 」」
「拉致って…ちょっとぉ〜〜ちぇみ..助けなかったわけ?」
「というか…テスが付いて行った…」
「「だ・誰に?誰に付いて行ったの?」」
(またハモるかよぉ..)「ん…<アタシね…>..って奴だ!」
「「キム次長だ!!」」
(またハモりやがった こいつら#..)
「そういえば捜してたって聞いた…」
「商売替考えてるからなぁ次長..テスが必要なんだ…」
「…@@」
「占い相談、テスさん結構上手だったし…」
「…@@」
「相談に3回も!!行った人いるくらいだし…」
「お・おい#..って…俺です…@@..」
「ちぇみ…このまま戻ってこないかも…テスさん」
「…@@」
「「どうする?ちぇみ…」」
「エェ~~~イ!!!..いい加減にハモるのやめろ!…ぅぅ〜気に障る!」
「「…^^; ^^; 」」

テスの代りにクッションを懐に抱くちぇみ…
「テソンッシ、食事…どうしようか…」
「ん?ん〜ちぇみは?…」
「…@@」
「「どうする?..一緒にレストラン行く?」」
「ぅぅ〜またハモりやがって。今の、この、俺の孤独なハートを刺激するな!」
「「…^^; ^^; ぷっ..俺の孤独なハートだって…」」
「いくらキム次長だって夜は解放してくれるよ」
「でも『アンタ、かわいいねぇ…アタシと、どぉ?』とかなんとか…」
「そうそう『いいねぇ〜アンタの彼氏は…アタシ、妬けちゃう..でもたまにアタシと..』とかなんとか…」
「で…『今日はアンタを独り占めしちゃおっかな…』とかなんとか…」

「「ぷっひっひ…あぶねぇ〜(^o^)(^o^)…」」

「お・おぃ〜…;ToT;」
「迎えに行けばいいじゃない…」
「テスが自分で付いていったんだ。俺は行かない」
「「エェ~イ…意地張ってぇ〜」」
「お前ら!何なんだいったい。さっきから。急にハモハモしやがって…」
「しょうがないなぁ…ルームサービスにしようか、mayoッシ…」
「そうだね…軽いものは部屋の冷蔵庫にも入ってるし」
「OK…」

バタン★
「ちぇみぃぃ~~~(^o^)」
「お?ぉ..ぉ..て・テスぅぅぅ~~~(*^_^*)」

ちぇみは懐のクッションを宙にぶん投げ、入り口のテスに飛んでいった
宙に飛んだクッションは闇夜の方へ飛んできた。ヒョイ!とかわす闇夜(^_^)v
クッションは闇夜の後ろに立っていたテソンの顔に#ばふん#とまともに当たった…
#(>o<)#「痛いよ…」

「今日は誰が来たの?テスさん」
「んっとね…ソンジュさん来たよ」
「ぷっ、何て?」
「最近僕の話題がないって悩んでた。だから僕、あなたも椅子を作りなさいって言ったの」
「ぷはっ…テスいいなそれ…テジンも稼げる」
「でしょ?えへっ(^_^)暇なんだね、ソンジュさん。明日も来るって言ってた」
「明日来たら、日本にお行きなさい。お金も稼げます。っ言うといいよ」
「どうして?」
「ん?握手を待ってる人がいるし、写真集も出る。また新しいドラマが始まるし…」
「うん。わかった」

ちぇみはそれらの会話を終始笑顔で聞いている。テスの顔を見ながら
「あ、キム次長、『アタシと商売しない?』とか言ってきた?」
「うん。でも僕、断った。祭りの時ちょっとだけね。ね、ちぇみぃ〜」
「ん?何だ」
「明日もちょっとだけ手伝ってもいい?」
「ん〜(*^_^*)」
「僕がいなくても寂しくない?」
「大丈夫だ」
『さっきの、見せてやりたいよ…』
『テスぅぅぅ〜…俺の孤独なハート…』
『『ぷっ…(^o^)(^o^)…』』


おこもり2  オリーさん
 
「あっ、何するんだ」
「今日は僕の番でしょ」
「そ、そうだけど、こんなに急に」
「かわりばんこっていったのはそっちでしょ」
「そ、そうだけど…あう!」
「じゃ、今日は僕にまかせて」
「だ、だけど、あっ、そこは…くう!」
「だけどじゃないでしょ。今日は僕に主導権があります」
「あああ、で、でも…うぅ…」
「分からない人だな。口で言ってもわからないとこうですよ」
「くう…!」
「おこもりするから時間はたっぷりあるって言ってましたよね、たしか」
「そ、そ、そうだけど…あああう!」
「じゃ、ゆっくりいきましょう」
「うわっ…!」
「いいから」
「そ、そ、それは僕のセリフ…」
「いいからまかせて」
「そ、そこは…く、くう…」
「僕を信じてリラックスして」
「は、はう!も、もう」
「僕はいつまでも子犬じゃありませんから」
「わ、わかってる…だから…ふふぅ!」
「ちょっとは成長してるでしょ」
「す、すごいよ…じゅ、十分してるから…そ、そんなに…あう!」

「だめだめ、そんな顔しても。もっと、ほら、こうしたらどう?」
「は、はうう!」
「よくなったでしょ、ふふっ…」
「く、くうん…」
「それは昔の僕のセリフ」
「あ、あう!」
「どうです、こんなこと?」
「あ、だ、だめ!もうっ!」
「だから今日は命令するの僕ですから」
「で、でも、もう…ああっ!」
「まだ、だめ!我慢して」
「あああああああーーーっ!」

「もう!だらしないんだから。ちょっとストレッチやっただけなのに」
「だ、だって、僕体硬いから」
「だから柔らかくしないと。それに最近おやつのせいでウェスト危ないんだから」
「でもそれはミンが食べさせるから」
「食べるのは問題ないんです。それをどう消費するかです。さっ、ランニング行きますよ」
「ランニング?」
「そうです。おこもりで時間はたっぷりあるんですから」
「あうっ!」
「まぎらわしい声出さないの!」
「くうっ!」
「こらっ!」


テソンと闇夜3  妄想省家政婦mayoさん

「ねぇ、mayoさんはあの映画全部見たの?」
「うん見たよ」
「じゃぁリハーサルも?」
「ぷっ…見た。まだ見てないの?」
「ちょっとだけ。ちぇみがブチン★って切っちゃうんだ…」
「そうか…あれはね…#”&△◎でね…$&%…でね%&+*なの…」
「うっそぉぉぉん〜(>_<)僕、絶っ対!!観なくちゃ」

テスと闇夜から少し離れて座っているちぇみ&テソン

「テソン…お前たち…」
「…僕らしく言葉を伝えただけです」
「ふっ…そうか..あいつは何て」
「わかるでしょう?そういうときは沈黙か短い返事ですよ」
「はは…色気のない厄介なやつだ。相変わらず」
「はい」
「要塞は崩せそうか?」
「誰も崩せません。無理したくない…僕が臆病なのかな…」
「それはあいつも同じだろう」
「そうなのかな…」

「あ、テスが占いの間、僕らに付き合ってくれませんか?」
「ん?何だ。何かあるのか?」
「はい。ちょっと…お願いします」
「わかった。さて…行くとするか…」

「テス〜帰るぞ〜」
「うん。(^_^) …じゃねテソンさん、mayoさん!」
「ん〜〜」バタン★

ドアを閉めた後
振り返った闇夜の前には両腕をドアについたテソンがいた
闇夜はドアとテソンの両腕の間に挟まれた

「さっき…言い忘れたことがあるんだ」
「何?…」
「ありがとう…僕みたいな奴の側にいてくれて..感謝してる」
「テソンッシ…」

「ひとつだけ頼みがあるんだけどな?」
「内容による…ハムカムは嫌だ。もぐもぐも嫌だ」
「ぷっ..」
「むにゅむにゅも嫌だ。べちょべちょも嫌だ」
「ぷっはは!あとは?」
「ん~~~と..ん~~~っと…お、###はもってのほかだ。アンドゥエ!!」
「わかってるよ…」
「じゃ、何」
「ったく…これ…」

ドアについた腕を離し、テソンはそっと闇夜を抱いた
「あ…お…は・はな・せ…って…」
「ハグは嫌だって言ってないだろ?」
「あぅ…しまった(>_<) なんたる不覚…」

テソンは胸の中でばたばた泳いでいる闇夜の腕を自分の腰に回した
「今だけ。もう言わない。今日は抱きたかった…」
「…今日だけだぞ。もう言うなよ」
「わかってる…わかってるから…」

闇夜に聞こえるテソンの鼓動は闇夜を息苦しくさせた

テソンは不器用だが優しく闇夜を包み込んでいる
最初硬くなっていた闇夜の背中がふっと軽くなった時
テソンは片手で闇夜の頭を包み自分の顎を軽く乗せた

あ・うんの中で僕に心のバランスをくれる…
僕は言葉にした時に僕自身の想いを確認したような気がした
何もしないと決めたのに…
無性に今日は抱きたかった
もっと近くに感じたかった…

テソンの胸の鼓動が心の言葉となって闇夜に深く染み入っていく…

お願いだから自分に向けないで…
誰にも見えないはずの自分の刃…
思わず落としたそれを拾い上げ発せられた言葉だった…

闇夜の鼓動が心の言葉となってテソンに届いた時、
テソンはちょっと強く闇夜を抱いていた…

mayoッシ…
ん?
お願いがあるんだ…
さっきもしたじゃない…これ…
これは<頼み>だ
同じだよ
違う。今度は<<お願い>>さっ
そういうの、へ理屈っていうの
僕には違う
…何…<<お願い>>..
また抱いてもいい?
お……
ふっ…これから返事がないのはOKとみなすからね
…あ..ぁ..@@

テソンは悪戯っぽくい顔で闇夜を抱いた…


鷹と猟犬  あしばんさん

穏やかな風の午後、
僕は中庭のはずれのベンチに腰を下ろしている
そして遠く離れた木陰でドンジュンとギョンビンが座って
なにごとか小さく笑いながら話しているのを眺めていた

海のコテージから戻ってドンジュンはまた
以前のように僕に甘える
自分の心に素直になった人間がこんなに美しく変わるのか
これほど感じたことはなかった

そのふっくらとした微笑みが嬉しい
そのくったくのない笑い声やあいかわらずのいたずらに
僕は自分らしくもなく心揺すられる
だからホテルに戻ってから僕はドンジュンの唇以外に
触れていない
大事にしたい…僕らしくもないな

「なんだ、珍しくぼぉっとして」
「ミンチョル…ランニングか?」
「ミンに体調管理されてる」
「変わったなおまえも」
「変わったのはおまえだろう、ドンジュンのせいか?」

僕とミンチョルは一緒に遠くの2人を眺めた

「なにをおかしそうに笑ってるんだろう」
「ドンジュンもいい顔してるな」
「いいだろう?」
「ミンもいいだろう?」
「本当に変わったなおまえ」

僕たちはしばし自分たちの大切な作品の出来映えに見とれていた

「スヒョン、人は変われるものだな」
「変われずにいるのは変わろうとしないからだ」
「うん」
「もう心の濁りはなくなった?」
「全てではないがずいぶん楽になった。世話になったな」
「あの時の最後のキスは僕の本心だった」
「おまえ、そういうことをサラリと言うようになったんだな」
「うん。あいつのおかげかな」
「ふふ」
「なんだよ」
「もったいないことしたかな」
「もう遅い」

僕はミンチョルと久しぶりに笑った


僕が木陰で寝転んでいると、ギョンビンが近づいてきた
スヒョンとホテルに戻った日
僕を見つけたギョンビンは遠くからこちらを見ていた
そしてちょっと眉をあげてにこりと笑った
僕はウインクして返した

「休憩ですか?」
「さぼり。君は?」
「ミンチョルさんのトレーニングの監視です」
「やられちゃってるね、ミンチョルさん」
「僕は彼を支えていきたいだけです」

「僕に少しは感謝してよね」
「なにをです?」
「だってあの夜の件があって一層愛が深まったでしょ」
「ふふふ、そうですね、乱暴なキューピットだ」
「相変わらずヤなやつ」
「あなたは思ってたよりヤなやつじゃないですね」
「そういうこと言うとまたその気になって襲うぞ」
「スヒョンさんに怒られますよ、ほらあそこでこっち見てます」

「スヒョンは大丈夫、大人だもん」
「嫉妬に大人も子供もないですよ」
「君こそ気をつけなきゃ、ふふ…ミンチョルさんもこっち見てるよ」
「僕は気をつけることなんてないですよ」
「奥さんのこととかあるんでしょ?」
「ほんとに言いにくいことを言う人ですね」
「あ、この話いや?」
「ふふ…いいです。そのことはじっくり行きます」
「とは言ってもね」
「うん…まぁ…平気と言えば嘘になります」
「僕に相談なんかしないでね、アドバイスって苦手だから」
「しませんよ絶対」
「失敬なやつ」

僕たちはなんだか優しい気分で笑った
でもギョンビンのなんとなく寂しい気持ちが伝わってきて
僕はギョンビンに軽くキスをした
ギョンビンは一瞬驚いたが、すぐにおかしそうに笑った

「「あ゛っ!!」」

遠くで見ていたミンチョルさんとスヒョンが飛び上がった
僕とギョンビンは笑いながらホテルの方に逃げた
なんだか楽しくなりそう


呪縛   オリーさん
 
その夢をまた見るようになったのはいつからだろうか
最近までほとんど見ることはなかったと気づいた
今になってなぜだろう、猟犬は考え込んだ

ぽつんと見える紅い染み
それがあっという間に全体に広がる
彼女が着ていた純白のドレスに
僕はただそれを見ているだけ
彼女は赤と白のドレスに身を包んで逝ってしまった
突然始まった銃撃戦
倒れている父さんがいた
駆け寄ろうとしたが父さんは来るなと言っているような気がした
僕はその場に立ったまま泣く事しかできない
銃声が響いて、そして父さんも消えた
戻ってこいよ、そういってあいつは笑った
その笑顔がどんどん悲しい顔にかわり、
最後は苦しそうに顔をゆがめた
助けようと思うけどまた体が動かない
気がつくとあいつはシートをかぶせられ番号で呼ばれていた
みんながいなくなるのに僕は何もできない
胸がつぶれそうに恐ろしい
細い糸でキリキリと心と体を縛り上げられているようだ
はっと目をあけると彼が隣で寝ている
眠っている彼の髪に触ってみる
これは夢じゃない
安心すると同時に言いようのない不安が募る
彼がもしいなくなってしまったら
突然彼の手が伸びて僕を抱き寄せる
怖くてたまらない
けれどそのまま彼に包まれていると、やがてすべて忘れて眠る事ができる

キツネは猟犬が以前から時々うなされているのは知っていた
たぶん昔の事でいやな思いがあるのだろう
単純にそう思っていた
ただ最近は毎日のようにうなされている
おかしい
けれどなぜか理由を聞くことができなかった


誤算   ぴかろん

そろそろ始まる(らしい)祭の打ち合わせ兼顔合わせ会に俺は出ている
ミンチョルの代わり…
あいつは何かと忙しいらしい…(こもってなにしてんだか!)
俺はいいんだ
だってこういうとこに来ると『キリッ』としたにゅ〜が見られるじゃん♪

俺はオ支配人の説明をそっちのけでにゅ〜の姿を探した
いないかな?主催者だもんなぁ、ノコノコ出てこないか…

ん?あれ?やだ、いるじゃんこんな近くに…

ちょっと髪切った?
いつの間に?
んふ
スーツもなんかいつもと違うけど、なんだろ?

かっこいいな…
外に誘い出して…ハム…へへ…しちゃおっと…

俺はにゅ〜にラブラブ光線をお見舞いする
5mほど横にいるにゅ〜は、ようやく俺のラブラブ光線にひっかかった
俺は目と口と顔で語る

『にゅ〜、ちょっと、こっちこっち』

にゅ〜は不思議そうな顔をして見ている

『外、外出よう廊下、階段行こう、ちょっとだけ』

俺は眉を上げたり下げたり口をむにゅっと横に広げたりなんかしながら、必死で顔面トーク…
にゅ〜は周りを気にしてから俺を見た
俺はにゅ〜を誘導するようにして会場から出た
にゅ〜は遠慮がちに着いてきたフフ


何やってんだよニャーは!今説明中だぞ!
全く、もう、どこへフけようとしてるんだよ…
僕は茶目っ気たっぷりに顔で語るニャーの後をつけた


来た来た
俺はさっきの非常階段近くまで来て、廊下に人がいない事を確かめ、ミンチョルたちがやってた『飴』ちうをやってみようと思ったフフ

俺は口に飴玉を仕込んで、後からついてきたにゅ〜の方を振り返り、飴玉を舌に乗せて見せてやった
にゅ〜は困った顔をして首をかしげた

ほら、早く取れよぉ〜にゅ〜

でもにゅ〜は取らない
流石に廊下だとやりにくい?
でもスリリングじゃ〜ん?


ニャーの馬鹿野郎は舌に飴玉を乗っけて、挑発している
馬鹿野郎!こんなとこで…あ…


来ないならこっちから行くまでさ

俺はにゅ〜の首に腕を回して素早く唇を奪った

「う…」
「!」

俺はにゅ〜の肩を突き飛ばした

いや…

にゅ〜じゃない!

「…誰だよ…」
「君こそ誰だい?いきなりキスとは…」
「ニャー!」

「あ…」
「総支配人、この方は?」
「…ソクさん…」
「に…にゅ…にゅ…」
「失礼しました、彼は僕と貴方を間違えたようです…」
「間違えた?ほう…貴方はこの方とそういう…」
「なんにせよ、間違いです。イナ、謝れ」
「…」
「イナ!」

俺は混乱していた
にゅ〜と別の人を間違えるなんて…
でもこの人、にゅ〜にそっくりだ…
自分のしでかした事にショックを受けた俺は謝れと言われても言葉が出なかった
にゅ〜は俺の頭を押さえつけ、その人にすみませんでしたと俺の代わりに言った
俺はずっと唇を押さえていた

「ニャ…イナ、会場に戻ろう。ソクさん、貴方も会場へ…」
「…BHCのキム・イナ氏…」
「…」
「今度はもう少し長く深く…でないと飴玉は受け取れないな…」
「失礼。『今度』はあり得ません」
「…ほう?何故そう言い切れる?」
「あり得ないからです。失礼します!」

俺のかわりにそう言ったにゅ〜

「ごめん…間違えた…」
「…」
「にゅ…ごめ…」
「馬鹿野郎!」
「…」
「なんで僕とあんな奴とを間違えるんだよ!僕がBHCの人とお前と間違えた事あるか?!」
「ごめ…ん…」

俺は自分が情けなかった…
涙が溢れ出した…

「馬鹿!あんなキス…」
「見てたの?何で声かけてくれなかったのさ…」
「声かける暇があるかよ!あんな速攻…」
「…ごめん…」
「ほんとにわかんなかったの?!髪型だって服装だって全然違うじゃないか!」
「…」
「キスするまでわかんなかったのか!」
「…ん…」
「ばか!」
「…」

怒るにゅ〜に何も反論できない
にゅ〜は黙り込んだ
全く…情けないよね…
唇が触れるまでわかんなかったなんて…

目を瞑って反省していたら突然にゅ〜の唇が俺の唇を掬った
そして…いつものキスとは違う、もっと深くて強くて束縛されるようなキスをした…
息苦しくなるくらい強いキス…
ごめん…テジュン…

ようやく唇を離すと今度は俺をきつく抱きしめた

苦しいよ…テジュン…

「馬鹿野郎!ほんとに馬鹿野郎!」
「…そっくりだったんだもん…似た人がいるなんて知らなかったんだもん…」
「クソッ!あの男、最初にチラっと姿見せたきりだったのに…どこに潜んでたんだよ!クソッ」
「…いたの?最初から?」
「…いいか!お前の名前を知られた。気をつけろ!」
「…うん…」
「罰としてエプロンね!」
「えええっ!酷いよそんなのぉ」
「やるからね!」
「…」

俺はにゅ〜に腕を引かれて会場に戻った
さっきの人のいないところに立った

それにしてもそっくりだったな…
にゅ〜より渋いかな?
それににゅ〜より…かっこいいか…

「いつ飴玉をくれるの?」

いつの間にかあの人が俺の真後ろにいて、俺の耳に息を吹きかけるように囁いた

「僕はユン・ソク。よろしく」

俺は全身が凍りつくのを感じた


アフレコ  ぴかろん

アフレコが始まった
俺は…総支配人のオッサンのセリフになってしまった…
だってさ…
テプンさんにグーで殴られたんだもん…

「こんな変なセリフチェリムに言わせてお前何する気だ!」

そりゃもう見たことないぐらい真剣な顔つきでさ…
思わず目を逸らしたよ俺…
チェリムはテプンさんを止めてたけど

「じゃあお前こんなはしたないセリフを言うのかよ!絶対ゆるさねえ!」

とか怒鳴られてシュンとしてた
可哀相だったから、イナさんのセリフと替わったんだよ…

「けど…俺…自分で書いたけど…やだなぁ…
こんな声でるかなぁ…ちょっと手伝ってほしいなぁ」

って言ってみたんだ、冗談っぽく
そしたらチェリムが、悪いと思ったのか

「何?手伝うわよ。どうすればいいの?」

って言ったんだよ
だからさ…俺さ…アイツに耳打ちしたんだ

「うなじにキスしてくれる?」

って…

チェリムからはボディにパンチ
テプンさんからは頬にグーパンチ
そしてチョンマンからは頭にハリセン
三つもの攻撃を受けた…

ちぇ…いいじゃんか、俺がチェリムにするんじゃなくてチェリムが俺にしてくれりゃいいんだからさぁ、それぐらい…

ダメか
ふぅっ…

アフレコの間中ずーっと、ドーナツ片手にテプンさんが俺を睨んでた
あのテプンさんがドーナツ食わずに、片手に持ったまま、睨んでた
はぁ〜…わかったよ
でも好きなんだもん…しかたねぇよな
わかってるよ、手出しなんかしねぇよ…
チェリムと▽●×■してると想像しながら…このオッサンの声を担当するよ…
俺はそう思って一生懸命アフレコに臨んだ
だから…多分…上出来だろうよ…フン…


ベーカリー物語  妄想省家政婦mayoさん

運転席にテソン、助手席にちぇみ、後部座席には闇夜

「テソン、どこに行くんだ?」
「あ、これ、ちょっと目を通しててください」
「ん?…これは…」
「後ろ、ああなんで…僕が説明しますから…」

♪クロミョンソチャルサラァゴ〜ヘンボカァラゴォォ〜〜♪
イヤホンで音楽を聴いて歌い踊りの闇夜…

「おい、いつもああなのか?」
「はぁ..音楽にもよりますけど…僕しか知りませんかね。あれは」
「ふっ…そっか 」
ちぇみは書類を読み始めた…

商品pro:製品企画案・顧客ターゲット(覆面調査結果)
空間pro:什器備品リスト・厨房機器リスト
広告pro:ショップカード発注先リスト
施工関係書類:店舗・2階部分/見積・設計図・スケッチパース…

「本当は先に話してからと思ったんですけど…いい場所が空いてたんで」
「まいったな…」
「必要な調査結果、資料はそこに書いてあります・場所をとにかく一度見てみたらと」
「これは闇夜が全部調べたのか?」
「人に頼んだのもありますけど…ほぼ」
「いつの間に…」
「2階部分はほぼ終わってます。一緒に住みましょうね」
「お?そうなのか?」
「場所がBHCのすぐそばなんです。だから僕の部屋確保しました。^^; 」
「そうか」
「あ、着いた」

「どう?場所いいでしょ」
「前の店はちょっと道路が広い角地で。車の往来も多かった」
「そう。ここは面積も2/3くらいだし。ちょうどいい感じ」
「じっくり考えてやる気が出たらやればいいよ…僕もいるし」
「そうだな…」
「2階見てみよう〜」

2階は中庭を囲みコの字型になっている

「俺とテソンだけか?」
「いまのところ…BHCも近いから誰か来るかもしれないけど」
「そんなに部屋数とれないでしょ…」
「闇夜の部屋は?」
「ん?あるよ」
「何だ?テソンと一緒の部屋でいいじゃないか…」

「「ちぇみ!!!!!(>_<)(>_<)」」

「え?だって…お前たち…」

「「何もないからっ!駄目!(>_<)(>_<)」」

「とりあえず部屋確保なの!私は!」
「ふ~~~ん」

帰りの車中。後部座席で居眠りの闇夜

「テソン」
「はい?」
「ほんとに何もしてないのか?」
「あ、あぅ…お答えできません…」
「何かしたな?教えろ!言え!」
「ぁぅ..」

ちぇみの後頭部に後ろからグー★!!  「痛っ!…闇夜#」
 「余計なこと詮索しないの!」
 「^^;;..」

『何かこいつら…空気が違う…何かある…』
ちぇみはテソンと闇夜のやりとりを横目で見ながら図面に目を通していた

「闇夜、店の間取りは前の店と同じだな」
「そう。前と動線が同じ方がいいと思って。まだ変更OKだよ」
「いや、この方がいい」
「厨房のオーブンと作業台の位置も同じはずですよ」
「テソンも観たのか?」
「僕、何回も巻き戻しさせられました^^; 」
「はは…それは災難だったな」
「いえ…機器のメーカーはこれでいいんですよね」
「ん…そうだ。2階は厨房も少しオープンじゃなかったか?」
「リビングに繋がるように..リビンは大きく取りたいって…食事は皆でしたいって」
「闇夜か?」
「うん..」
「平行に連なる部屋の部分..ムショみたいだな…」

「「もぉぅ#!!」」

「お、すまんすまん…まぁ、そうハモるな..お前等..^^;; 」
「だから中庭に面した渡り廊下をガラス張りにしたんですよ…」
「お、そうなのか…」
「小さいけど中庭部分テジンさんのテーブルとベンチ置いたらいいし…」
「天気のいい日は外で食事ができるよね」
「夜は星も見えるよ?」
「俺もテスと一緒に見よぉ〜(ぼぉぉ~~☆☆)」

「「…^^;.. ^^;…」」

「あ、ね…」
「ん?何」
「mayoッシの部屋..僕の隣?」
「あ..お..」
「ん〜返事がないから決定!」
「ちょ、ちょっとぉぉぉ〜 」


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