戻る 次へ 目次へ


6時間  ぴかろん

「テソンシ、造血ドリンク飲む?」
「ウィッス…」
「目薬さす?」
「イッス」
「あと何時間?」
「6時間」
「進展は?」
「かたつむり」
「こっちはねえ、蜘蛛はぁ…やっぱちぇみこまされてるしぃ、ミンミンはぁ」
「言わなくていい」
「いい?」
「…でもミンミンはもう…かな?」
「…」
「何?なんか決定的な事でも?!」
「いやぁ…いざって時になるといっつもチーフの電話がさぁ…」
「なんでバッテリ外ししないんだよ!なぁっ!」
「…案外さ…焦らしてるんじゃないの?子犬を…」
「どーぶつぎゃくたいだっ!」
「で、かたつむりは何やってんの?」
「わかんない」
「わかんない?」
「だってテジュンさんが肩から上を布団から出しててぇ」
「うんっ!」
「イナはぁその…布団のぉ…中でごそごそ…」
「さっきと同じじゃんか!」
「そーなんだよ」
「テジュンさんはやっぱし、アレ?喘ぎ声を?」
「うん…(*^^*)」
「(@_@;)」


「やめろって、イヤだよイナ怒るよあうっ…」
「やめられない…美味しくて」
「あっ…イヤだ…」
「可愛いおへそ〜」
「くぅん…」

ガサゴソガサ

布団の中を移動して顔を出すイナ

「今くぅんって言った?」
「くぅ…」
「…」
「…何さ…」
「かわいい…」
「もおっ!イナが変なことするからっあ…」


「ねぇ〜カタツムリはさあ、なんで同じとこを行ったり来たりしてんのぉ?」
「知らないよmayoッシ、ああ、もうティッシュいらないから。慣れたよ
この後肩行って鎖骨行って胸板…ただしち○びは避けて…で耳行ってデコ行って鼻行って
目行ってほっぺで口角で顎でそのまままっすぐまた潜る…」
「…よく覚えたねぇ」
「その後背中ね。で腕で手で指でまた手で腕で肩で…」
「なぜ肝心なとこは避ける?」
「しかも…」


「テジュン、もういいだろ?」
「ダメ!絶対ダメ!」
「我慢できないよ…やってくれよテジュン」
「イヤ!」
「何でそんなに…いいよ。わかった。自分でやる!」
「そんなのダメだよ!」
「やってくれないならお前の目の前でやってやる」
「ダメだってばぁ」
「我慢できないんだ!」
「あっイナ…ああっあっ…」


「…(@_@;)」
「…(@_@;)」
「なんだよ!何始めたんだよ!」
「…テソンシ。…イナシ、ネクタイ今外したよ…」
「(@_@;)」
「あ、テソンシ、怒らないで!変身しちゃだめだよ!」
「ヤっちまえよ!早く!」
「テ…テソンシぃ(^^;;)」


「あーすっきりした。これが邪魔で邪魔で…これでお前をゆっくり…」
「ばか!イナ!」
「そんなに怒るなよ」
「取ったらかっこよくなっちゃうじゃないか!」
「いいだろ?」
「…かっこよくなったら…溶けちゃうじゃないか…」
「…かわいいっコイツゥ」

ぎゅうう…


テスと蜘蛛のために  妄想省家政婦mayoさん

「ふぅ…あと6時間か…あ、さっきの話さ…」
「ん?」
「大事なこと」
「何…」
「資金はどうするの」
「調達した…」
「オモ…いつの間に」
「ふっ…」
「まさか白夜のマフィア?」
「違う」
「返事が短いと何かあるんだよな…mayoッシは…」
「ふふ…そう?」
「だって…1万ウォンとか、10万ウォンのレベルじゃないよ?」
「そうね…」
「じゃ、どうやって?危ないことしたの?何したの?」
「相変わらず質問が多いよ…」
「だって…」
「誰にも言わないなら教える」
「わかった…他言しない。ほら…これでいい?」

ヤクソック→トジャン→サイン→ポクサ…(指切り→拇印→サイン→コピー)

「で?どこから…」
「#%@の…◇○に…%$#を売った」
「えっ?全部?」
「まさか…%$#の一部」
「一部って…」
「どうしても欲しかったんじゃない?言い値で買い取ったよ」
「こわいな…ホントにぃ…オーナー知ってるの?」
「うん…必要なときまで預かってもらっってる」
「って…一番心配かもよ?」
「ぷっ…そうかな…」


蜘蛛の朝  妄想省家政婦mayoさん

僕のこと好き?…か…

『テックヒョンッシ!…テックヒョンッシ…』
『闇夜か?』
『ネ…』
『お前たち…寝てたのか!通信切れてたぞ!』
『ミアネミアネ…鼻血出してた…』
『…また覗きか?』
『ちっ…テックヒョンッシ…』
『何だ…』
『あったかい?2人とも…すっごく…いい顔してるよ…』
『あぅ…う・うるさい!…少しは寝ろ!クマ出来るぞ!』
『アラッソ…チャルジャ〜』(わかった…おやすみ〜)
『ん〜』

お前といると…俺はちょっとは人間らしい顔になるみたいだな

「う…うぅぅ〜ん…」寝返りのテス、蜘蛛にまとわりついてくる…

俺はお前が笑顔でいられるようにできるのか?…テス…


4時間 ぴかろん

「で。かたつむりの方は?」
「聞くだけ無駄!ずーっとぉ『くぅん』『かわいい』はぐっ『もう一回言って』『くぅん』『かわいい』はぐっ…」
「でも油断大敵だよ、テソンシ」
「アラヨォ〜…けど眠い…おおっ」
「何?」
「逆転した!」
「何?(@_@;)」


「あっこら、テジュン!な…何…こらっ潜るなよああっ」
「***」
「そんなとこにっくっ」
「***。***。***」
「うっ…あ…やめっ…くはっ…ぁあン…」
「くすっ…イナの声…可愛い」
「ばかやろぉっあっこらっだからそこはぁあン…」


「そろそろかな?テソンシ!」
「ヤっちまえ!」
「…テソンシ…」


「はうっ…あ…もう…だめだよぉ」
「ここは?***」
「くふっダメ」
「じゃ…ここ***」
「くぁん」
「こっちは***」
「くぅん…」

ガサゴソガサ

「いった?」『いっただと?mayoッシ!ボリュームアップ』
「くぅっ…」
「いったよね、くぅんって」
「う…」
「かわい〜」

ぎゅううっ

ばきいっ!

「テソンシ…(^^;;)」
「…腹が減った…」 「アイゥ〜テソンシのお口に合うものは〜ないかも〜(^^;;)」
「腹が!減った!」
「カップラーメンでもいい?」
「…仕方ない!」

〜あと3時間〜

「テ、テソンシ…ラーメン伸びてるよ」
「ズルズル…まずっ!」
「すぐに食べないからさあ…」
「眠い!」
「あーコーヒー飲む?」
「嫌いだ!」
「あーじゃ梅茶…ってないじゃん!全部飲んじゃったじゃん!どーしよ…んじゃ、梅とお茶っ葉!」
「すっぺぇっ!にげぇっ」
『わがままなんだからな!』
「なんか言ったか?!」
「あんに〜ん(^^;;)」
「うおっ今度こそ!」
「始まった?」
「あと3時間しかないもんな」
「うんっ(@_@;)」


「そろそろいいだろ?」
「…」
「時間がないよ…」
「だってイナ、三分で終わるんだろ?」
「誰がそんな事言ったんだよ!俺は一時間は…」
「持つの?そんな…僕死んじゃう…」
「優しくするから…」
「まだ時間あるもん…」
「まだ前菜だぞ!メインディッシュ食べたい!」
「食いしんぼだなぁ」
「時間がないよ…いただきまぁっす」
「あっ」
「おなか減ったよう〜」
「こらぁかわいこぶるなぁぁん…」
「***。***。***」
「ん〜僕も***」
「う…」
「僕もおなかすいたよ…そろそろ食べたいな…これ」


「mayoッシいいいっ!乙女が娼婦になりそうだ!待った甲斐があったぁっ!」
「テソンシ…涙が…(^^;;)」
「いけぇっ!ヤれぇっ!」


「んふ…お前が食うのか?」
「…そ…」
「…ほんとに?」
「うん…」
「ほ…あ…む…」


「やったあああっ!ちうしたあああっ(T_T)」
「テソンシ…鼻血も…」
「やっとだ…15時間かけてやっと口にちうだ!」
「…はいはい…」
「それも乙女の方から…」
「軽いね」
「ん?…確かに…こんなぐらい誰とでも!」

ばきいいいっ

「テソンシィ〜まだまだかたつむりだねぇ(^^;;)」

〜あと2時間〜

「テソンシ?テソンシ?寝てる?」
「…起きてる…」
「ずーっとちゅっちゅってぇかる〜いのばっかしだねぇ」
「飽きてきた…」
「う…ん…(^^;;)」
「ラブ○テルだってふつう休憩2時間とか3時間とか書いてあるよなぁっ!」
「…」
「ということは…やっぱそろそろ…」
「(^^;;)」

ちゅっちゅくちゅっちゅく

「ん…わかったよ、ん…こら。本気でしろよ」
「だってさ***」
「俺からいってもいい?」
「だめだよっ溶けちゃうからあっんん…」


「やったああっ(T_T)でたああっはむちゅうだああっこれで先に進めるぞおっ!」
「…でもさぁ…多分はむはむで1時間たつよ…」
「もういいだろう!もうはむはむしなくていいだろう!次いけよ!つぎいいいっ!」
「テソンシ、声がデカいよ…(^^;;)」


援助 足バンさん

ピンポーン

ばきいぃぃぃぃっ!

テソン:だれだぁーっ!こんな時にぃーっ!
mayo :怒らないで、わたしが出るから
テソ:まったく!どいつもこいつもぉぉっ!

mayo:テソンッシー!見て見て!
テソ:なんだ?
mayo:オーナーからだって
テソ:なんで?
mayo:オモオモ。差し入れだよこれ
テソ:カップ麺、即席総菜セット、キムチパン、梅茶パック…
mayo:栄養ドリンク、ビタミン剤、鉄剤…
テソ:ガーゼ、アイスノン、頭痛薬、アイクール、目薬…

mayo:はは…あとこれ…
テソ:…ビデオテープ…
mayo:テソンシ…(^^;)
テソ:オーナーの執念が一番こわいな…

mayo:あとひと踏ん張りだよ!
テソ:ウィーッス!


Destination オリーさん

彼が僕のそばに近づく
顎をそっと持ち上げて僕の唇をふさぐ
やわらかい感触に包まれ僕はもう逃げられない
僕も彼を逃がしたくなくて両手を彼の髪の中に入れる
茶色に銀色のメッシュがはいった彼の髪の毛
彼は僕をそっと押し倒し僕の顔に丁寧にキスをする
僕にできるのは彼の髪をそっと掴むことだけ
僕を欲しいのですか

彼は時々僕を覗き込みふっと笑う
僕はその度に吸い込まれて彼の中へ落ちてしまう
もっと彼を感じたいと思ってしまう
彼の唇が僕を潤し彼の指が僕の体に火を灯す
僕と彼の触れ合った肌の部分だけがとても熱い
彼の吐息が僕を誘い彼の筋肉のしなりが僕をとらえる
いくつかの階段をひとつひとつゆっくりとのぼる
僕もあなたが欲しいです

のぼりつめた後でとうとう僕たちはひとつになる
彼のすべてが僕になり僕のすべてが彼になる
どこかで小さい叫び声が聞こえる
たぶんそれは僕の声
僕と彼はひとつに溶け合ったままじっとしている
彼の胸の鼓動が僕の体にしみわたる
しばらくすると彼が顔を上げて僕に微笑む
僕を好きですか

眠る時は彼の胸に顔をうずめる
長い間ずっとそうしてきたような錯覚を覚える
僕はとても幸せな気分になる
彼も幸せですか
確かめたくて僕は彼の胸に口づけをする
彼は僕の髪に唇を押し当ててくれる
僕は満足して眠りにつく
僕もあなたが好きです


疲労困憊の2人 妄想省家政婦mayoさん

「テソンッシ!!テソンッシィィッ〜〜!!!」
「何…どうした?」
「さ・さ・さ…さぁ〜」
「だから…何!」
「さ・サー…サー…ビス…ミンミンミンミン…」
「えっ?どれどれ…カメラAっと…お!…ごっくん…」
「や・や・や・っちゃ…た?」
「mayoッシ..(^^;)…みたいだな…」
「ほ・ほ・ほ・ほんとに?」
「mayoッシ〜どもってる!…あ・い・う・え・お…言ってみて!」
「あ・い・う・え・お…」
「オーケー…ミンミン、ひとつになってる…」
「…トロトロ…すっごい恍惚の表情…」
「なんか2人の心臓の音まで聞こえてきそうだ…追加で編集だな」
「これ…チーフの<美しい映像>へのこだわり感じない?」
「ぷっ!僕らに予告したからね…」
「見せて、魅せたいのか…」
「そういうこと。ほら、左眉ピクッしてるし」
「ほんとだ…」 


蜘蛛の朝part2   妄想省家政婦mayoさん

『あいつら…一睡もしないつもりか?肝心なときには通信切ってるくせに…全部聞こえてるぞ!
 …やっちゃった?ミン×2か…ひとつになった…か…
 …テス…お前のミンは遠くに行っちまったな…』

 「う・うぅぅ〜ん」寝返りをうって蜘蛛の胸に顔をうずめるテス…

テスの頭を撫で、髪を弄ぶ蜘蛛…

『恍惚の表情?…テス…お前もそんな顔みせるのか?誰に…』

テスの顎を軽く上げ寝顔を覗き、ふっと微笑む蜘蛛…テスをぐっと引き寄せる蜘蛛

『俺はお前の笑顔だけでいい…トロけたお前もちょっと見てみたいがな…俺には無理だ…
心臓の音まで聞こえてきそう…か…お前の鼓動…感じるぞ…俺の心臓の鼓動が伝わってるか?
…左眉ピクッ?って…どうやるんだ?』

眉毛を上下左右にピクピクさせる蜘蛛…右眉を指で押さえて左眉をピクッ…

『出来るじゃないか…』…指を離す…『駄目だ…両眉上げたら…お笑いだな…』

眉が引きつっていつもの怖い顔になる蜘蛛

「う・うぅぅ〜ん…」テスが薄目を開ける

「起きてたの?…どうしたの?」
「ん?…」
「顔が怖い…僕の隣は…シロ?(嫌?)」
「何言ってる…ほら、<ちぇみえみ> ^_^v 」
「ぷっ…へんな蜘蛛さん…可愛い…」
「…(^^;)…もうちょっと寝ろ。後で起こしてやる」
「うん…」

『テックヒョンッシ?』
『闇夜か?寝ろって言っただろ!何だ!邪魔するな!』
『あはっ(^^;)…あのね…眉ピクッ…変!』
『わかってる!』
『テスさんには<ちぇみえみ>が一番だよ』
『ん…』


1時間30分  ぴかろん

はむはむはむ…はむはむはむ…

ぶちっ

「テソンシ…今のなんの音?」
「…」
「テソンシ…あ…ガーゼぶちきった…」
「後…」
「ん?」
「90分しかねえんだぞぉっ!」
「…(^^;;)」
「なんではむはむ30分してんだよぉっ!てめえら!ミンミンを見習えっ!」

ばしいいん!

「アイスノンに当たらないでよテソンシ…」
「はあはあはあ…ん?」
「ん?(@_@;)」
「(@_@;)おおっ!やっと離れた!いけっ次はち○びだろう!未到達の峰に登れよ!イナっ!」
「…(^^;;)テソンシ、これ、振る?」

そっとチアボーイ用ボンボンを渡すmayoッシ
ひったくって振るテソン


「あ…」
「はあ…」
「もっと…」


「もっとじゃねえよ!次いけっての!」
「テソンシ(^^;;)」


「疲れちゃった、口…」
「もっと…」
「んーどうしようかなぁ〜」
「美味しいんだもん、イナの唇…」
「お前だって…・あぉっ」

体を入れ替えるテジュン

「な…」
「僕の番だ…」
「いいよ、もうん…ん…」


ぐしゃっ!ばきいっ

「…テソンシ、梅茶、濃いいの。梅干も入ってる」
ゴクゴク「あぢいっ!くしょおっ!」
「…熱かった?(^^;;)」
「また30分はむかよっ!きしょう!やってらんねぇ!」

ラジカセをオンにするテソン

♪とっとこ〜走るよはむたろぉ…

「テソンシ…壊れた?」
「ぜったいBGMにこれつけてポ○ノショップに売り飛ばしてやる!」
「…新しい人格が出てきたね…(^^;;)」


「やめ…ん…あん…む…」

はむはむはむ


「15分もはむはむしてて何がたのしいっ!」
「…はむはむもこう長いと…」
「手を動かすとかもっと何か、することがあるだろう!なんで貴様らはそう『はむだけ』とか『ちうだけ』とかに拘るんだっ!」
「テソンシィ…絶望的かもねぇ…」
「…ここまで見守り続けた僕達のためにも、絶対先に進んでもらうぞ!mayoッシ、念を送ろう!」
「テ、テソンシ…」
「早く!」
「イェ〜(^^;;)」


「く…ぅうっ…うっ…」
「…ん…イナ?どうしたの?なんで泣いてるの?」
「ううっ…くぅっ…」
「イナ?」

はぐううっ


「ん?イナシ泣いてる!」
「泣いてる暇なんかねぇんだぞ!」


「あっイナっ…」

体を入れ替え、テジュンの腕を押さえつけるイナ

「ハアハアハア…もう待てない…」
「イナ…待って…イナ…」
「待てない!」
「あっいやだ!乱暴にしないで!イ…イナ…」


「(@_@;)」
「テソンシぃっ!(@_@;)!」
「ついにようやくエンジンかかった!!あと1時間だっ!」
「うーん…何分で終えるつもりだろう」
「え?mayoッシ…どういう意味?」
「えっ(^^;;)いや、その、チニさんが帰ってくるまでにやっぱしシャワーとか…さ…」
「けえええっ!じゃあレゴってる時間は…えーっと…多くて30分か?」
「テソンシ、レゴってるって?」
「レゴってほら。こう、凸だろ?凸凸って。で裏が凹じゃん。そこにこう嵌って凸で…」
「…解んないけど解るような気がする(^^;;)」


「いやだイナ…」
「このまま終わる気か?」
「…もう一回キスして…でないと…」
「…テジュン…」

はむぅ


「またはむだよおおっばかああっ!(T_T)」

バタン

「はむってなあに?」
「「(@_@;)けええっチニさんっ!」」
「何これ…あ…」
「「けええっ(@_@;;;)」」
「!…」

タタタバタンタタタタ

「…mayoッシ…」
「…テソンシ…」
「「チニさん早すぎないかぁっ?(@_@;)」」


はむぅっ

「いいか?」

コクンと頷くテジュン

「あ…痛いよ…」
「体硬いよお前…足あがんない?」


「…チニさんまさか乗り込む気?」
「それよりmayoッシ、男同士でもあれでいいわけ?」
「…し…しらねいっ(@_@;)」
「ミンミンはどうなってた?」
「おっ覚えてねいっ」


「仕方ないなぁ…」

テジュンをうつ伏せにし、腰を上げさせるイナ


「「けええっ」」
「…布団掛かっててよかったねっ!(@_@;)」
「モモモザイクできねいよねっ(@_@;)」
「こっこれが一般的なのかねっ」
「しらねいっ」
「テソンシ、今後の参考にしたら?」
「僕は見てるだけのがいい(@_@;)」


「…あ…優しく…ぁふっ」
「顔見ながらやりたかったのに…」
「…ん…」
「…いいな?」
「…痛くしないで…」
「やるよ」
「…ぁああっあっ痛いっ痛いっいやぁぁっ」
「テジュン、我慢して、最初だけだから。そんなに動くなっ俺が我慢できなくなるからっテジュン!」
「いた…い…よ…イナ…」
「テジュン…テジュン…ああ…テジュン」


蜘蛛の朝 part3  妄想省家政婦mayoさん

朝の弱い光の中、窓辺でタバコを吹かすナムジャ
少しづつ強くなる朝陽は浅黒いナムジャの翳りのある横顔に反射する…

忘れられないのは国境で送り出した彼女の後ろ姿…
生き残って再会したかった…それだけが心の支えだった…

『どれだけ血を流せば済むの?』
『もう遅い。もう引き返せない』
『引き返す勇気がないんでしょう?』

奥歯をグッと噛んで頭を左右に振った後、ナムジャは深いため息をついた

無邪気な寝顔を確認したナムジャは目を細めもう一度暖かいガラス越しの朝陽を浴びた
『ふっ…』うつむき微笑んだ…たばこの煙の隙間から覗くちょっとはにかんだ笑顔…
その笑顔からはナムジャがこれまで過酷な任務を遂行してきたとは想像すら出来ないだろう…

ゆっくりと目を開けたテスは窓辺に立つナムジャの笑顔に心臓の鼓動が少し早くなった…

 「く・蜘蛛さん?…」
 「ん?起きたか…」

ベットから出て窓辺のナムジャに寄るテス

 「朝陽が気持ちいいね…あったかいな…」
 「あぁ...少しは眠れたか?」
 「うん…ごめんね……寝てないんでしょ?」
 「…アニャ…いいんだ…」

軽く目を閉じ首を振り..答えるナムジャ…
お互いに顔をのぞき込み、軽く吹き出す2人…

 「蜘蛛さん…ありがとう…」
 「テス…」

テスの肩を軽くトントンと叩き、引き寄せるナムジャ…
ちょっと背伸びをして…ナムジャの頬に軽くchu!をするテス
反射的に身体を離し、自分の頬に触り目を丸くして動揺するナムジャ

 「エヘッ!」
 「お・おい!」
 「お礼だよ!蜘蛛さん!(*^_^*)」
 「ったく……」

テスを小突くナムジャ…

 「蜘蛛さんは何するの?ショーに出るんでしょ?」
 「お・おぉ…」
 「僕、ちゃんと見てるから」
 「…お前に♪恋せよアミーゴ!♪…か?」
 「ぷっ…僕だけ想って言ってよ?」

トントン☆

 「誰だろう…イナさんかな……はい」
 「ちょっと待て、テス…」

テスの髪をなでつけ、不器用なしぐさでシャツのボタンを止めるナムジャ

 「よし。行け」
 「うん……誰?」
 「朝食をお持ちしました」
 「えっ?…僕…頼んでないよ?」
 「いえ。確かにこのお部屋にお届けするように承っております」

 「…」

不安そうな顔でナムジャを見るテス

 『…!!……あいつら…気きかせやがって…』
 「テス、入って用意してもらえ」
 「えっ?いいの?」
 「あぁ…」
 「ではこちらにサインを……失礼致します」バタン★
 「誰だろう…いいのかな…」
 「テス…朝飯は大事だ。チャ、モクチャ!(さぁ、食うか)」
 「うん!(*^_^*)」

『闇夜』
『ん?』
『コマウォ…』
『アニ…』


タイムアップ  ぴかろん

「(@_@;)!」
「やった…」
「テソンシ…涙が…」
「やったな…」
「けどチニさんが…」
「…」
「「けえええっ(@_@;)」」


「ああっあああっああっ」

バターン

「何やってんのよ!」
「チニさん」
「何やってんのよ!何やってんのよ!何やってんのよぉぉぉっううっううっ」
「チニ君…あっ」


「「どどどどーなんのぉっ(@_@;)?」」


「約束が違うでしょうっ」
「おせぇよ、なげぇよ、いてぇよ!」
「ごめんチニさん…」
「キスはしないでってあれほど言ったのに!」
「ごめん…ぐすっ」
「しかたねぇじゃん、他にやることなくなっちゃったんだからさぁ〜」
「総支配人!狙ってたんでしょっ!イナさんの唇」
「え?…えへへ…」


「(゜゜??)」
「(^^??)」
「…なに?これ…」


「もう!絶対後で総支配人、罰!」
「罰なら十分うけたよぉ唾液でベトベトだし」
「…何よ!気持ちよかったくせに!」
「えっ(^^;;)?…見てたの?」
「チョンマン君とシチュン君に頼んであの秘密部屋のビデオ装置と連結させてもらってね!」
「…プリンちゃん。ごめんっ僕っ僕っひっくひっく」
「クリンちゃんはいいの。頑張ったわ。…でも…キスは減点ね!プン」
「えっえっだってだって」
「仕方ないわ、かなり引き伸ばしたんだもの、あそこでキスがなくちゃ不自然よ」
「えっえっ」
「総支配人から仕掛けたわよね?キス」
「…そおだっけ?」
「…しらばっくれる気?」
「だってリアルに演じろって」
「総支配人があんなとこでポッポするからクリンちゃんおかしくなっちゃったじゃない!もう、台本通りにやってよね!」
「ぐすぐす」
「よしよし。クリンちゃん、シャワー浴びてくる?頑張ったわね、主演男優賞モノよ」
「えっえっええっ」
「泣かないで…そんなにショックだったの?」
「だってだって…演歌さんがはむはむって…それにっネクタイっひっくひっく」
「…どういうつもりだったのよ総支配人!」
「だってさあ…」『ああでもしないと本気になっちゃいそうで…』
「まあいいわ。後は編集するだけ」
「えっぇええっ。これ本とに祭で流すの?ひっくひっく」
「うまく編集してコメディにするから、安心して。クリンちゃんは色っぽい主演男優、総支配人は汚れ役よ!」
「ひでえ!めちゃくちゃ感情こめて演じてたのに!」
「そうね!途中でクリンちゃんに色目使ってたものねっ!フンっ」
「…こぇぇぇっ…」
「プリプリ…ごめ…ごめ…えっえっ」
「ごめんねクリンちゃん、辛かったね」
「えっえっええんええん」


「(..)(。。)」
「テソンシ…」
「…」
「テソンシ?」
「最後のあのリアルなレゴもどきは何だったんだ?」


「あーったく痛いったらありしゃしない!スポーツマッサージだか何だかしらんが
あんな恥ずかしい格好させて筋肉ぎゅうぎゅうもみやがって」
「えっえっえっ最初にっ筋肉揉み解したじゃんかっ」
「確かに肩こりも腰痛も唇マッサージで良くなった!」
「うえっうえっテジュンさんは何もしなくていいって言われてたくせにっ僕の真似してっへんなっへんな事してきたあっ」
「総支配人!」
「これだけ協力したんだからいいだろ!ちょっとぐらいイナを味わっても!」
「やっぱり好きなのねっ!」
「ふふ〜ん」


「…マッサージだって…」
「…ぜったい…」
「ん?」
「…オーナーが絡んでるよ…」
「…テソンシ」『…まさか私も絡んでるってバレてないよな…(^^;;)』


チニは小悪魔の如き微笑を、隠しカメラに向けて送った……(^^;;)


タイムアップ後 妄想省家政婦mayoさん

「て・て・て・テソンシ…」
「何!」
「イ・イ・イ・イゴ…オ・オ・オットケ…(これ、どうしよう)」
「どもってる!て・そ・ん・は・さ・い・こ・ー、言ってみて!」
「て・てそんはさいこー…(^^;)」
「オッケー!で・何…」
「これ、どうする?編集しちゃうって…チニさんが…」
「原本バックアップ済!♪はむたろ〜挿入!店で流す!」
「お・ぉぉン…ア・アラッソ…」
「疲れた…寝る。後で起こして!アラッソ?」
「ネ…」

『ふぅ…あ、メール…っと』

 「おはよう、ミン…」
 「おはようございます…」
 「朝、目が覚めたらまず僕に何をするんだっけ?」
 「はい…(^_^)…」
 「ん〜〜駄目だ…」
 「…(*^_^*)…」
 「よぉし・合格!…ミン…」  「はい…」

……、……、……。

♪タァ〜リ〜ラ〜リッ…タァ〜リ〜ラ〜リッ♪ ピピッ!
 「ん・ぐっ…ミ・ミンチョルさん…メール…」
 「ん・ぐっ…誰だ…いいとこなのに」

## チェソンエヨ…お邪魔しちゃいました?イナさん、マッサージ終わりました
++マッサージ?
## はい…
++ 本番には間に合う?
## はい…
++ わかった。 ぱんっ!

 「何か、問題でも?」
 「いや。…ミン…」
 「はい…」

……、……、……。

『もぅぉ〜〜…夜も朝も濃厚だ…(^^;)』

『闇夜!』
『ネ…』
『テスは可愛いな…(^o^)…食べてもいいか?』
『お・おい!』


変調  足バンさん

男ドンゴン、今日こそ絶対にこいつから情報を引き出してやる
ドンジュンの印象がどうも昨日と違うが、まぁ、これも俺を翻弄する作戦のひとつだろう
最前線で戦ってきた男の根性を見せてやる

「なに?さっきから黙って」
「い、いや、べつに…どこに向かってるんだ?」
「海」
「そう、海か」(軟派なやつだな。男は山だろ)
「いや?」
「どこでもいい」
「じゃ、ちょっと入り組んだ道行くよ。つかまって」
 
カンカンカン! ブイブイブイィーーーッ!

「す、すごいギアさばきだな…」
「ふふ」
「な、なんだ?」
「やっと褒めてくれたね」
「えっ?」(どきん)
「自分を素直に出せばもっと楽なのに」
「よ、余計なお世話だ」(これはナンパの手口だ。要注意だぞ、自分)

「コホンッ、ところでBHCの内部で…というか内部の人物で…」
「ほら」
「え?ほら?」
「海」
「あ、あぁ…もう着いたのか…あ…コホン…で、内部の人物で…」
「ほら」
「は、へ?」
「水平線が輝いてる」
「あ、あぁ…綺麗だな…う…コホッ…それで…」
「砂漠の夕日見たことある?」
「へ?あ、あぁ…砂漠っていうか荒涼とした…あ、いや」(いかんっ!なに答えてんだっ)
「いろんな経験したんだろうね」
「ま、まぁな」
「大切な人亡くしたりしたんでしょ?」
「ま、まぁ、そんなこともな」
「僕もいろいろあった…」
「え…」(どきん)(どきんじゃないっ!くそっ)
「ま、いいや」
「あ…そ、それで…BHCの…」
「着いたよ」
「え?あ、そう?」
「どうする?降りる?それともここにいる?」
「あ?降りるとも!食事もしたいしな」(どうも調子が狂う、一筋縄ではいかないか)

バタンッ!

「大丈夫?足もとよくないから…手貸そうか?」
「だっ!ダイジョブだっ!触るな!いいから近づくな!」
「ずいぶん嫌われちゃってるね」
「いいからっ!自分で降りるから」
「……」
「え…?あの?」
「なんで今日誘ったの?」
「え?な、なんでって…その…」
「息抜きって感じじゃないね」
「う…いや…」
「BHCのことでも聞き出そうと思ったの?」
「へっ!?あ、いや…」(ば、ばかじゃなさそうだな)
「僕なら口軽いんじゃないかって思った?」
「い、いや…そんなこと…」
「甘いな…隊長さん」
「(どっきーん)」
「僕の口からじゃなくて心を読んでみなよ」
「ひぇっ?」
「敵を欺いてきたんでしょ?」
「そん…なに…近づくな」(鎮まらんかっ!ばか心臓っ)

「あっ!あそこに店がある!ご飯食べよう!」 タッタッタッ
「……」
「おーい!隊長さん!早くっ!」
「はひ…」(ちくしょぉっ!し、しっかりしろ、男ドンゴンっ)


蜘蛛の朝 part 4   妄想省家政婦mayoさん

『闇夜!』
『ネェ!!』
『何だ…機嫌が悪いな。寝てないからか?朝飯はちゃんと食え』
『ネ…』
『テソンは?』
『テソンさんは寝てます』
『そうか…あ・んっと…その…だな…』
『食べるのはまだ早いですよ!』
『うっ…さ・さっきのは冗談だ…』
『そぉぅ?』
『おぉ・こほん…けほん…』
『テックヒョンッシ…』
『何だ…』
『テスさんとの間に深い溝はありませんよ。だから頑張って』
『闇夜…お前…』

遠い記憶の彼女の言葉…そして俺の言葉…

『2人の間にある深い溝を私は渡ることはできない。渡りたいとも思わない。それにあなたは渡ることはできないわ』
『2人の間に残ったのは深い溝だけなのか?これで終わりなのか?もし俺が帰れるのならお前のところだと思っていた』
俺は…最後まで渡れなかった…渡っていれば帰ることができた…運命に翻弄された2人に埋めることができなかった深い溝

『ミアネ…思い出しちゃった?』
『いや…昔のことだ…』
『大切なものは胸に残るけど…大事なのはこれからだから…』
『俺は何をしてやれるんだ…』
『やだ…テスさんに聞いてよ…あ、じゃね!』
『おい!闇夜!』

 「蜘蛛さん!」
 「ん…酒は抜けたか?」
 「うん。さっぱりした。蜘蛛さんもさっぱりしたら?」
 「ん…」
 「あ、一緒に入ればよかったかなぁ…今度ね!」
 「お・おい!…」
 「うわっ…はぢかしい?いいじゃん…男同士だもん」
 「だ・駄目だ!」
 「…@@」


クランクアップ  ぴかろん

「イナ!大浴場行かないか?」
「ええっええっ」
「まだ泣いてんの?」
「あんなキスするからよっ!」
「イナの方が先にハムッてきたんだぞ!」
「うえっうえっ」
「もう!総支配人!」
「あ…悪いなチニ君、先にハム食っちゃって。てへへっ」
「うえ〜えええっ」
「よしよし。クリンちゃん、とにかくお風呂でキタナイ唾と嫌な思い出を洗い流してらっしゃいね」
「チニ君!どういう意味だよ!」
「そういう意味!」
「君が台本書いたんだぞぉっ!」
「フフ…はいはい。ほら、クリンちゃん、演歌さんと一緒に大浴場いってらっしゃいよ、着替えは届けるから、ね」
「えっえっ…怖いよ…」
「ばか!襲わないよ!人もたくさんいるんだから!僕は先にいくぞ!」
「総支配人、イナさんにTシャツとズボン貸してあげてよ」
「あーはいはい!」

泣きながらテジュンの後を着いていくイナ
二人無言で従業員用エレベーターに乗り込む


「くすんくすん」
「しつこいな。まだ泣いてるのか?」
「うえっうえっ」
「んな嫌だったらチニ君にはっきり言えばよかったじゃないか!もう」
「テジュンは…もう平気なの?」
「へ?」
「…」
「…」
「俺…」
「さ、着いたぞ!」

明るい様子で先にエレベーターを降りるテジュン

「ほら、早く来いよ」
「…ん」
「ここ、入ったことある?広くて気持ちいいぞ〜当ホテルの自慢の大浴場だ」
「…前に入った…」
「そう?よかったろ?」
「よかった…」

テジュンをじっと見つめているイナ
視線が一瞬絡む
テジュンは口元に笑みを作ってイナを手招きする

「フロから上がったら、僕達は、本当の友達…いや、親友になれる!な!」
「…テジュン…」
「いつまでもメソメソすんな!あれは演技だ!引きずるなよ!お前がそんなだと僕まで…いや、チニ君だって困るぞ」
「ん・・解った」

どきどきしていた。演技だったんだから。チニ君が飛び込んできてそこでカットだったんだから
気持ちを切り替えなくては…

そう。僕達はやっぱり友達だ

イナは切り替えができないでいるようだ
チニ君も残酷だよな…こんな不安定なヤツを、相手役だった僕とフロに放り込むんだもの…ふふふ

ぜーったいカカア天下の家庭になるよ…ふふふ

「さあ入ろうぜぇっ」
「…」
「…何見てんの?」
「…」
「…おまえ!」
「入ろっと」

体を洗うとスッキリした
ねとねとした感情が(演技だったけど…そう『演技』だったけど…)きれいに洗い流されていく

イナは…まだぼんやりしてる
あいつ、ほんっとに切り替えが下手なんだな…
だから今までにも一杯傷ついてきたんだな…

チニ君ったら…ほんと…酷い女…絶対『S』だよ!

「イナ〜背中流してやろうか?」

黙って首を横に振るイナ

「とにかくお前も体洗えよな!くせぇぞ!」
「…テジュンは…平気なんだ…」
「何が!」
「俺はきっと…これからも…さっきの事…思い出しちゃう…」
「なにを…裸にネクタイの事か?それともぉんーとぉ」
「テジュンからキスされた事」
「…」
「すっごく…どきどきした…」
「…あああ、すまん」
「テジュンの喘ぎ声も…」
「お、おい…(^^;;)」
「…俺は…さっきまでの18時間中…テジュンの事…好きだった…」
「…何を言い出すんだよ…ばか…あれは演技だぞ…」
「でも好きだった…本とに…」
「…ああ、ありがと」
「テジュンは?俺の事好きだった?」
「ん」
「じゃあなんでこんなに態度が違うのさ!」
「…だから…お前って本とに切り替えできない性質なんだな!お前の好きな人はチニ君だろ?」
「うん…でも」
「僕はそんな風に引きずる奴は嫌いだ。あれは演技!そしてもう終わった。明日から僕は仕事人間に戻る
君も戻れ!できないならすぐこの場を去れ!」
「テジュン!」
「僕は祭のためにあれを引き受けたんだ!」
「…」
「な。体洗ったらスッキリするって!な」

イナは涙を堪えながら体を洗っていた
半べそかきながら頭を洗っていた
僕は、上からお湯をぶっかけてやった

「わはははわははは、お前、カッパみたい〜」

必要以上にハイテンションになって盛り上げていた

イナは、少しずつ笑顔になってきた

よかった…


誤算  足バンさん

今日誘い出した理由を知っているのか?ただのハッタリか?
よくわからない奴でやりにくい。作戦の立てようがない
しかしここで引き下がっては弟に何を言われるかわからん

「隊長さぁ〜ん!はい、アイスキャンディ!」
「あ?あぁ、いいよ俺は」
「えー?もうおなかいっぱい?さっきあんまりご飯食べなかったのに。じゃ、半分こねっ」
「は…」
「なによ、変な顔しちゃって」
「いや、弟と昔こんなことしたなって…」
「ふぅーん……シャクシャク……はい、食べて」
「い、いいよ…」(ドキン)(くそっまた)
「弟とやったんでしょ?僕のも食べて」
「な…なんだよ、変ないい方するなよ、みんな聞いてるじゃないか」
「関係ない。食べて。じゃないとBHCの話なんかしないよ」
「えっ…う…」
「しないよ」
「わかった、食うよ…シャク…」
「ふふ…」
「なんらよシャク」
「間接キスだよ」
「なっ!(ドキーーン)」
「ねーぇ、ちょっと海岸歩こうっ」 タッタッタッ

はぅ…頭痛がしてきた…ドキンドキン…どうしてもやつのペースになっちまう
からかわれてるのが…ドキン…わかってるのに…ドキン…が、がんばれ、男ドンゴンっ!
俺は軟派には絶対、つ、つかまらんぞ!

「ねぇ、なにが聞きたいの?ボタンはずしショーのこと?」
「ボ、ボ、ボタンはず、はずっ!?」
「違うの?じゃ、雪山で先輩をコマシたこと?」
「コ、コマ?」
「新人の子犬くんを奪い合ったこと?」
「こ、こいぬ…」
「なんだ、違うの?じゃなに聞きたいのさ」
「こ、こら、腕にからむなっ!」
「あぁー!そんなにつれなくするともう連れて帰ってあげないよーっ」
「う、うるさいっ!うるさいっ!まとわりつくなっ!
 不道徳極まりない!軟派のかたまりのBHCの奴らと一緒にするなぁーっ!」
「……」
「はぁはぁ……?」
「…ぽろ…ぽろ…」
「あ?…な、なんでぽろって…泣い…?」
「BHCの悪口を言うなっっ!なにも知らないくせにっ!」
「え、あぁ?」
「みんなひとりひとりいろんな傷を持った人が集まってるんだっ!めちゃくちゃ厳しいけどみんな優しいんだっ!
 みんなで支え合ってるんだっ!この僕だってあの人達の中だからいろんな辛かったことを受け止めて前向いていられるんだっ!」
「あ…いや…」
「うぅ…ひっく…悪口言うな」
「す、すまなかった…」

「……」
「な、なに?」
「もう言わない?」
(ドォッキィーーン!)
「あ…あぁ…もう言わない…すまん」
「じゃ、約束、手出して」
「え…」
「ゆびきり…チーン…きゅっ、はいこれで仲直り」
(ドッキューーーン!)
「あ……」
(ガラ…ガラガラ…)

俺の…男ドンゴンのなにかが…音をたてて崩れた…

「シートベルトして」
「は、はいっ!」
「じゃ、出すよ!」 ギャルルルルーーーッ!

「でね、理論空燃比よりもガソリンの量を少なくした時の問題点は、燃焼状態が安定しにくい…
 そこでリーンバーンは燃焼室や吸気ポートを改良して…」
「(ぽぉ〜)」
「退屈?」
「い、いや、全然」
「そ、よかった!」
「お,男らしい…(キュゥーーン)」

帰り道。俺はドンジュンの低燃費エンジンの講義をずーっと聞き続けたー

ウォンビン:な、なんだよっ!兄さんっ!このテープ!なんにも肝心なこと聞いてないじゃないさっ!
ドンゴン:ぽぉ〜
ウォン:なにボンヤリしてるのよ!エンジンの解説聞いてどうすんのさっ!
ドンゴ:シベリアも完走したんだって…
ウォン:兄さんっ!しっかりしてよっ!
ドンゴ:硬派だったんだな…
ウォン:兄さんってばっ!

従業員:あ、ドンゴン様にお届け物です
ウォン:兄さんに?
従業員:はい。BHCのスヒョン様からです。では
ウォン:なんだよこれ…

箱の中にはたくさんの毛糸と編み棒が入っていた


ひとりごと オリーさん

何だか面白くないわ。女ひとりのせいかしら…
みんなバタバタしちゃって、落ち着かないったらありゃしない…
あたし達のショーはばっちり。会長もマイキーも階段落ちとワイヤー宙吊りマスターしたし
階段落ちはあの無口な子に迫力負けしてるけど、そんなものは衣裳でカバーよ
あとはあたしが出て盛りあげれば完璧。どこよりも完成度は高いわ、ふふ
でもソンジェ君はあの人の部屋に引っ張り込まれたまんまどうしちゃったかしら。まさか食べられちゃったりしてないわよね
中庭には埃くさい連中が穴掘ったり埋めたりしてて、うっかり近づけないわ
この間は男組の若い子がCM公開してたけど、ソンジュも一緒になって脱いでたわね
ふっ、バカな子、あんな生っ白いの見ても誰も喜ばないわ
ま、ポラリスよりはましだったけど
あのウォンビン君はちょっといけてたわね。でもあの子の後ろにはいつも目をむいた兄さんがいるのよね、ちょっとうざい
BHCの連中もばたばたしててあたしのこと見向きもしない
イナ君なんか涙目でウロウロしてたかと思ったら、やけにきっぱりしてどこか行っちゃったし
テプン君はべちょべちょは汚いとかテジがかわいそうだ、とかブツブツ言って歩き回ってるし
テジン君はどこかに大きな椅子運んでたわね。あたしも注文しようかしら
あのコックさん、今回は二人連れであちこち歩き回って何かしら?食事付きだからヒマなんだわね、きっと
でもあの黒づくめの連れってあたし知らないわ
あのテスって子がめそめそしててみんなで寄ってたかって慰めてるし。あほらし。泣いてる奴なんかほっとけばいいのに
スヒョン君も急に元気になっちゃってあちこち愛想ふりまいてるのに、あたしんとこには来ないわ。時々一緒に歩いてる子は新人よね
妙に人当たりがよさそうだけど、目つきがちょっと妖しい
大体ミンチョル君よ。いつもはご機嫌うかがいに素っ飛んで来るのに、今回はやけによそよそしいわ
いつも若い子連れてカツカツ歩き回って。どうしてあの若い子あたしに紹介しないのかしら
この間なんか親切にどなたって聞いてあげてるのに、忙しいとかいってとっとと行っちゃったし
何かあるわね。あの子もチェックね。若くて締まってていいわ
MUSAの将軍もいいルックスしてるんだけど、ちょっと話が弾むとどこからかスリッパ飛んでくるのよね
この間なんかあたしにまで飛んできたわ。痛いったらありゃしない。何とかならないかしら。お洋服コーディネートしてあげるのに
そういえば、公開練習してないクラブってどこかしら。ちょっと気になるわ。ま、あたしの敵じゃないと思うけど

ドン!
「痛いじゃないの、どこ見て歩いてるのよ!」
「あ、これは失礼」
「まったくもう、あー痛いわ」
「すみません。おや、ホストしかいないと思ったのに、こんな魅惑的なマダムがいらしたとは」
「え?」
「とんだ失礼を。どうかお許しください」
「ああら、別にいいのよ。ホホ。魅惑的だなんて正直な子ね。あなたどこのクラブ?」
「僕は白夜倶楽部のヨンジュンです。どうかお見知りおきを、マダム」
「白夜倶楽部?」
「ええ、北からやってきました。ところで先輩見ませんでした?」


蜘蛛の恋part1   妄想省家政婦mayoさん

♪ヤァ〜クソッケ〜ネェヌンムゥリィ〜♪
「ネ…」
「ピョートルだ」
「何かあった?」
「うん。黒蜘蛛どこだ?昨日から姿が見えない」
「ん〜」
「最終チェックしたいんだ。知ってるだろ?白夜倶楽部に来る様に伝えて」
「わかった。あ、リマリオは到着した?」
「うん。実物はかなり濃いよ。僕といい勝負だ。それと、ヨンジュンどこ」
「ヨンジュンさんどうかした?…あ、いつものウロウロだと思う…」
「ちっ!…とにかく見つけて」
「ん〜アラッソ…」

 「蜘蛛さん、何処行くの?」
 「ちょっと向こうに顔出す…」 
 「向こうって…白夜倶楽部?ぼくも行く!」
 「お…お前もBHCのチェックがあるだろう…」
 「いい。今日は蜘蛛さんと一緒にいる」
 「…って…言ってもなぁ…」
 「邪魔しないから…ね?」
 「しょ・しょうがないなぁ…行くか?」
 「やったぁ〜(^o^)」

『闇夜!…いいか?一緒に行っても…』
『ぷっ…いちいち聞くな!マイク外さないでよ』
『おぉ……なぁ闇夜…』
『何…』
『テスは可愛いなぁ…』
『さっきも聞いた!』
『そ・そうだったか?すまん…』

 「お、おい!まとわりつくな!手を離せ!」
 「えぇ〜…やだぁ〜」
 「ひ・人目がある!ベタベタするな…」
 「…僕…」
 「何だ」
 「蜘蛛さんの手…好きなんだ。手だけじゃないよ?…蜘蛛さんはあったかい…」
 「テス…」

人がいないのを確認し、廊下の陰で思わずテスを懐に引き寄せる蜘蛛…
 
 「はぅ…く・蜘蛛さん?」
 「テス…我儘言うな……ふたりのときだけにしろ…な?」
 「ごめん…怒った?…ふたりのときはいいの?」
 「ん…」
 「ほんとに?」
 「^_^」
 「わかった…蜘蛛さん…」
 「よし、行くぞ」
 「うんっ!」

蜘蛛の小指だけをそっと掴んで一緒に歩くテス…『…?』『…(*^_^*)』『…(^^;)』
廊下に先にヨンジュンを確認した蜘蛛…

『くそ…ヨンジュン…あいつには何を言われるか…回り道だな…』

「あれ?蜘蛛さん…そっちは遠回りになっちゃうよ?」
「いや…いいんだ…あっちに回ろう…」

「あれ?さっきの…先輩??..えっ?一緒にいたの…誰?えっ?..うそぉぉ〜〜ん@@」


ため息 足バンさん

テプン:おい!イナ!
イナ:おぉ
テプ:おまえどこいってたんだよ。どいつもこいつも勝手しやがって!
イナ:仕事だよ
テプ:仕事ぉ?
イナ:そう…仕事…
テプ:それよかテジ知らない?うまい饅頭あるから持って行こうかと思って
イナ:さぁ…たぶん飛び回ってるんじゃないかな、忙しくなるって言ってたから
テプ:おまえ、変なことしてないだろうな
イナ:してないよ
テプ:なんだよ、元気ないな
イナ:そんなことないよ
テプ:なんか暗ぇぞー!頭ばっか使って身体使わないからそんななるんだ!体操しよう,体操!
イナ:身体使ったからこんななんだよ
テプ:え?なに?

カツカツカツ
ミンチョル:イナ…やっと出てきたか
イナ:あ、あぁ、いろいろ忙しくて
ミン:思い切った企画だったな
イナ:もう伝わってるのかよ
ミン:当然だ。しかし今後はひとこと報告してからにしろ
イナ:わかったよ
ミン:で、テジュンさんは大丈夫か?
イナ:すごく頑張ってくれたよ
ミン:そういうことじゃない。あの人の気持ちは大丈夫かと聞いているんだ
イナ:気持ちって…ちゃんと切り替えられる人だから…
ミン:そうだろうな
イナ:なんだよ、なにが言いたいんだよ
ミン:あの人はダテに総支配人をやっているわけじゃない。自分の感情をコントロールするプロだ

イナ:でも…
ミン:もうおまえの思わせぶりな態度で振り回すな
イナ:思わせぶりなんて…
ミン:もっと大人になれ
イナ:俺はおまえみたいにスッパリ切り捨てたりできないんだよ!
ミン:切る切らないは問題じゃない。何を選択するかだ
イナ:選択?その選択は正しいのか?
ミン:どういう意味だ
イナ:おまえは記憶が戻った時のこと考えたことあるのか
ミン:なに?
イナ:今選択してるものと過去に選択したものが相対するものかもしれないんだぞ!
ミン:それはその時考えればいい
イナ:問題の先送りだろう
ミン:今の自分に正直なだけだ
イナ:それを先送りって言うんだよ!
ミン:なにを苛ついてる
イナ:もういいよ
ミン:イナ…
イナ:とにかくテジュンさんのことは心配ないよ!
ミン:…

チニ:クリンちゃーん!
イナ:チニさん…
チニ:どう?もう元気もどった?
イナ:うん
チニ:例の編集終わったわよ!
イナ:そうなの?
チニ:素敵に撮れてるのよ!ちょっと妬けちゃうくらい
イナ:なんだか恥ずかしいな
チニ:総支配人、演技とは思えないわね。あやしいっ!
イナ:やだな、プリンちゃん
チニ:うふふ!もうあんな企画しないからね
イナ:…うん…
チニ:はい、ご褒美。ちゅっ!
イナ:へへ…
チニ:じゃ、あとで現場でねー♪

イナ:ふぅー…


それぞれの情景 オリーさん

「熊さん、熊さん、ねえ待ってよ」
「子猫ちゃん、早くおいで。タヌキさんに見つかっちゃうよ」
「だって、熊さん歩くの速いんだもの」
「さあ、熊さんの腕に捕まって…」
「先輩!何やってるんですか!」
「おお、ヨンジュンどうした」
「どうしたじゃないでしょ。誰がタヌキですって?」
「いや、その…」
「探しましたよ。昨日はどこで寝たんです?」
「まあ、色々とな…」
「で子猫ちゃんは誰?」
「こ、これはテス君だ」
「こんにちは、タヌキさん」
「こら!誰がタヌキだ!先輩、もうお願いしますよ」
「なに、気にするな」
「戻ってくれるんでしょうね」
「これから行くところじゃないか。うるさく言うな」
「で、子猫ちゃんも一緒なわけですね」
「ん…」
「ったく!」
「そういうお前こそ真っ赤な女につけられてるぞ」
「え!」
「ほら、今あの木の陰に隠れた」
「まずいなあ。あの女特別参加らしいんだけど、ウチの倶楽部に興味持ってて…」
「お前、あの手の女の扱いは慣れてるだろ」
「でも好きじゃないんすよ、ほんとは。先輩に合う年代でしょ」
「俺は女は清純派と決めてる」
「子猫ちゃん連れてるくせに、偉そうに」
「うるさい!だがとにかく巻こう。こっちだ」
「はい」
「子猫ちゃん、こっちだよ、急いで」
「ニャン!」

「ドンゴン殿はどうされたのじゃ」
「知りませんよ。帰ってきてからあの調子」
「編物が趣味だったのか…」
「さあね。偉そうに言って結局役にも立たない情報ばっかり持ってきて…」
「でヨソルの兄とはブイブイで行ったのか、しっとりで行ったのか?」
「は?」
「いや、何でもない。やはり余の出番じゃ」
「え?」
「大将自ら出向いて情報を取ってこよう」
「あんた、兄さんと同じで世慣れてないでしょ」
「何を申すか。これでも将軍。名に恥じない働きを見せてやる」
「とにかくチアボーイズは僕が仕切るから、一緒にやりたいなら家来に話つけといてよ。いきなり後ろから刺されたらいやだからね」
「わかっておる。さ、行かねば。その車とやらはホテルで借りれるのだな」
「そうだよ。でも1日に2回も行ってくれるかね、彼は」
「今でなくては。チンがオープニングのリハーサルをしている間に抜け出さねば、またスパコンじゃ。では!」
「待て!ドンジュンを誘うのか!」
「ドンゴン殿、手を離されよ!」
「俺も行く。いや、やめておく…いや連れてってくれ」
「おぬしはもう行ったであろう!おとなしくしておれ」
「うう。車に乗りたい、が乗ると…ああ…」
「兄さん、ほら編み棒落ちたよ。落ち着いて」
「ああ…」
「では、ウォンビン殿ごめん!」
「気をつけてよ」

「ミン、僕イナに叱られた」
「どうしてですか?」
「問題を先送りしてるって」
「僕のことですか?」
「まあね」
「奥さんのこともありますしね」
「すまない」
「らしくありませんよ。元気出してください」
「近いうちに何とかするから」
「いいんです、今のままで。僕は満足してますから」
「僕はソンジェの言う通り勝手な奴だ」
「やめましょう。そんな話」
「本当にすまない」
「いいから、黙って…」

*** **** ****


漂う想い  ぴかろん

「それはそっちじゃない、そう、そこでいい。何だ?…ああ、そうしてくれ!」

「ほら見なよ。総支配人キビキビしてるだろ?」
「…ん…」
「さっきチニさんにちうされたんだろ?」
「…ん…」
「ふぅ〜まさかイナまでこんな事になるとはなぁ…」
「スヒョン…俺…」
「ま、練習しようぜ。総支配人にとって祭の成功が一番大事なんだから」
「…」
「協力してやれよ」
「う…ん」

イナ、まだ元気になんないのか?
そんな顔してるとどうしても気になるよ
指示を出しながら、目の端で君の姿を追ってしまう

僕は先に大浴場を出た
チニ君が君の着替えを持って待っていた

「これ、イナさんの」
「ああ、脱衣カゴに入れとくよ」
「総支配人。ごめんね」
「ん?…いや、こっちこそ…ちょっと調子に乗っちゃったかな、ハハ」
「私、いつも通りに振舞うから…イナさんの事…お願い」
「だめだ。僕には面倒見切れない。アイツは引きずってる」
「…総支配人だって…」
「チニ君」
「…ごめんなさい…」

チニ君は口元だけ微笑んで仕事に戻ろうとしていた

「チニ君」
「?」
「…ありがとう」
「え…」
「僕の気持ち…君は…知ってたからあんな台本…」
「…」
「おかげで思い残すことはない」
「総支配人」
「ただイナがああだと」
「…」
「やっぱ僕がハムっちゃったからか?アハハハ…ハハ」
「イナさんが自分でなんとかする…かしら…」
「チニ君」
「ウフ…パパも来たし、さ、忙しくなるわぁっ」
「そうだな…僕も…彼に構ってられないよ」
「…そうね…」
「大丈夫。元通りになるよ」
「…うん」

チニ君は、解っていたんだ。僕のドロドロした気持ちを…。そしてイナの…気持ちを…
例え演技だったとはいえ、何時間も…
いけない。思い出すと胸が熱くなる
もう昇華したはずなのに…
彼が僕に深く口付けた、それだけで満足しておけばよかったんだ…
それを僕は…

悪いことしたな…。ごめんよ、チニ君、イナ…

「けど…欲しかったんだ、僕も、僕から…」

ああ、だめだな、僕は
よし、この作業が終わったら、気分転換だ!またおフロに入ろっと♪

ザバァ〜

「フヒー、気持ちいい〜」

ザーザーザー

誰かシャワー浴びてるな?深夜の2時だぞ
従業員かな?

僕はシャワーの方を覗いてみた



イナ…

シャワーから噴出すお湯を、顔で受け止めている
まるで滝に打たれている行者のようだ…

ごめんな、イナ

僕は彼の後姿を見つめた

なんて美しい背中だろう

僕は、目をつぶってシャワーを浴び続けているイナに引き寄せられていった

「ふぁ…ふぅっ…テジュン…ふっ…」

僕の名前…
愛しい唇から漏らされる僕の名前…
半ば開けられた口の中にシャワーの飛沫が流れ込んでいる

あの唇…あの…

僕は無意識にイナの顎を掴み、シャワーの中で彼の唇を奪った…
…奪ってしまった…

抵抗しようとしていた彼は、唇を奪ったのが誰なのか…きっと解ったのだろう
少し震えながら、そして目を閉じたまま、僕の首に腕をまわし、僕の口付けに…応えた…

お前が好きだよ…

何分たったろう…風呂場の引き戸の音を合図に、僕は彼から離れた
シャワーの飛沫の中に彼を残して…

彼は目をつぶったまま、放された腕を宙に舞わせそして、力なくそれを両脇に納めた

これで、本当に、終わらせよう…


蜘蛛の恋part3  妄想省家政婦mayoさん

  『熊ちゃん、熊ちゃん!…ぷっ』
  『闇夜か…何だ』
  『ヨンジュンさん……は…』
  『はは…わかった。テス…子猫ちゃんに伝える』
  『…@@』
『(コソコソ)…テス…』『(コソコソ)何?蜘蛛さん』
『(コソコソ)…あいつは…で……だ。でもって…で…だ』
『(コソコソ)…え?ホント?』
『(コソコソ)…からかってやれ』
『(コソコソ)…うん!(^_^)』

「おい!ネコ!先輩にまとわりつくな」
「たぬきさん、僕は可愛い”子猫” ね、熊さん!」
「お、おぉ…可愛い〜可愛い〜子猫だ。*^_^v…」
「アィゥ…アィゥ…先輩〜〜!!(>_<)」
「それにね、たぬきさん…」
「…何よ」
「僕の方がたぬきさんより年上なんだよ?」
「なにぃ〜〜!」
「だからね、僕もたぬきさんの先輩。ね、熊さん!」
「ん…そういうことだ。ヨンジュン」
「先輩、何でこいつが誕生日まで知ってるんですか?」
「決まってるだろ…」
「くぅ〜〜闇夜…ですか…」
「それにね、僕とたぬきさんは同じ事務所なんだもん…仲良くしなくちゃ」
「そうだった?」
「へへ…僕、影薄いから…気が付かなかった?たぬきさんの方が売れてるからね…」
「子猫ちゃん、気にしない、気にしない…」
「うん。熊さん!」
「子猫ちゃん、ほら掴まって。たぬき!行くぞ」
「もぉぉ〜〜先輩〜〜」

たぬき→子猫→熊が並んで歩く…2人の間でブラブラするテス…
テスの頭越しに会話をするヨンジュン&蜘蛛…

「どうなっちゃったんですか…先輩、好きなんですか?こいつのこと…」
「可愛いだけだ…」
「BHCに出入りするから…こんなになっちゃって…」
「何だ…こんな俺は変か?嫌か?」
「あ…いえ…笑ってる先輩見るのもいいな…って…」
「ふっ…こいつのおかげだ…」
「先輩…」

「ね、ね…たぬきさんは何か踊るの?」
「たぬき、タヌキ…言うな!シッポが出てきそうだ。アィゥ…」


天使の誘い ぴかろん

「やあテジュンさん、今フロですか?」
「ああスヒョンさん、従業員はこんな時間しか大浴場に入れなくてね
ここのフロはどうです?」
「いいですね、すっかり気に入っちゃって…じゃあひとっ風呂浴びてきます」
「ごゆっくり…」

カラカラ

風呂場への扉を開けると誰かが声をあげて泣いていた

誰だ?

…イ…ナ…

まさかあの野郎!

僕は脱衣場に引き返すと、まだそこにいたテジュンさんの腕を掴んだ

「お前、イナに何かしたのか!」
「え…」
「切るなら切るで態度をはっきり…うっ…何でこんな時に…」

テジュンさんは不思議そうな顔で僕を見つめている
突然甦った『読心能力』
この男の思考が僕に流れ込む

なんで?
まだ本調子ではないな
前はそいつを見ただけで全て読めたのに、でもなぜ?

「スヒョンさん、どうしました?」
「…いや、解った。…もう…これきりにしてくれ…」
「ス…」

不思議そうに僕を見つめていた瞳はやがて何かを悟ったらしく、諦めの色を帯びてその目線を落とした

「…ええ…これっきりにします。すみませんでした」
「テジュンさん…」
「イナには貴方の様ないい仲間が大勢いる。彼を理解して見守ってくれる恋人もいる
僕がしゃしゃり出ちゃいけないんだ…。解ってるんです。ただ僕は…」
「いいよ、解ってる…解ってるよ」
「スヒョンさん…」
「明日から、頑張ろうな」
「ええ。それじゃ」

僕はテジュンさんの後姿を見送って、そして号泣しているイナのそばに行った

イナの前に立ってみた。見つめてみた。けれどイナの思考は読めない
イナはシャワーの中で泣き続けている
僕はイナの肩に触れてみた
びくっとして、そして恐る恐る僕の首筋に腕を巻きつけるイナ
目は閉じたまま…
巻きつけた腕をすぐに放すと、イナは目を開けた

「スヒョ…」

僕は何も言わずにイナに微笑みかけて、そして自分の方に抱き寄せてやった

「ス…」
「泣きたいんだろ?誰かさんのかわりをしてやる」
「…」

イナは嗚咽を漏らしはじめ、やがてさっきと同じようになりふり構わず号泣しだした

なんだこれは…
ぐちゃぐちゃだ…
マーブル模様の心
チニさんとテジュンさんへの想いが複雑に絡まっている

簡単には理解できないな…
丁度いい、イナは泣ける胸が必要だし、僕はイナを理解する時間が必要だ

僕達は暫く、抱き合っていた

流れ込むイナの想い
安心できるのは…チニさんといる時か…
心から明るくなれて、幸せな時間
楽しくて嬉しくて切なくて…

ときめくのは…テジュンさんなのか…
体が切り刻まれそうになるほど心が痛むのに、テジュンさんに魅かれているなんて…
それはチニさんに対する罪悪感と、秘密という甘い蜜で彩られた恍惚の感覚だったんだな?

それが今は…どちらにも魅かれる自分を責めて、それでも心のままにテジュンさんに吸い寄せられて
チニさんに会えばホッとして…

この男は…ばかだな…
ばか正直な男だ…
まっすぐで…ああ、かつてのドンジュンがそうだったようにまっすぐで…
嘘をつく事ができやしない…

「イナ…お前も不器用な男だな…」
「うっううっ」
「…そこがお前のいいところなんだけど…」

僕なら…両方とうまくやれる
両方を幸せにできてしまう
それは、もしかすると、不幸な事かもしれないね…
幸せそうに、楽しそうに見えて実は、不幸な事かも…

お父さん、そうなんだね?
でも、僕は僕。こういう風にしか生きられないよ…

あ…ここで、そんな事を…あいつ…あの野郎…

でも僕はテジュンさんの気持ちも解ってしまう
本当はイナの事を忘れられないって
諦めきれないって
けれどテジュンさんは…きっと…その想いを封じ込めるだろう
チニさんとこいつのために…
こいつのために…

こいつの心臓を引き裂かないようにするために…
自分の心臓を生贄にするだろう
平静を装いながら、体の裏側で血の涙を流し、心の奥底で叫び続けるだろう

本当に愛してたんだな…あんた…

うううっひっくひっく…

僕達はシャワーの飛沫を浴びながらずっとそこにいた

「イナ…忘れろ…テジュンさんのためにもお前のためにも…」
「忘れたいよ!忘れたいんだ!でも…忘れられない!…俺、俺どうしたらい…!…」

テジュンさんがしたと同じように僕はイナの唇を奪った
イナは激しく抵抗して僕を押しのけようとした

「辞めろ!なんでこんな事」
「たかがキスだろ!」
「…」
「どうって事ない!」
「…」
「取り返しのつかない事じゃない…」
「…」
「明日から元に戻れ」
「…っひっくひくっううっうううっ」
「あいつよりもっと凄いキス、してやろうか?」
「いやだ…」
「して欲しくなったらいつでも言えよ」
「ううっうううっ」

僕にできるのはこんな事ぐらいしかないし…

解ってるよ…
たかがキス…されどキスだって事ぐらい僕だって、イナ


想い 足バンさん

ミンチョルさんが荷物を整理しているのを隣室からぼんやりと見ていた
こうして彼のなに気ないしぐさを見ているのが好きだ
時間がゆっくりと流れるような静かなひととき

トランクの隅にあるものを見つけてミンチョルさんは手を止めた
小さなきつねのぬいぐるみ
そのあまりのギャップがほほえましくて笑いそうになった

でも僕はそのまま声をだすことはできなかった
思いがけずミンチョルさんの表情が硬かったから

ミンチョルさんは目を閉じるとしばらく動かなかった
そしてぬいぐるみをトランクの底の方に押し込み
閉めたふたに手をついたまま、また目を閉じた

窓からのひかりは彼の美しい横顔を切り取るように射し込んでいる
その横顔が物語っているのは決して幸せだけではない

僕は思わず視線をそらした
そう。わかっている
僕の知らないミンチョルさんがいる
知らなくてもいいと思っているミンチョルさんがいる
知りたくないと思っているミンチョルさんがいる
そして…すべてを知りたいと思っている僕もいる
傷つくことを恐れながら…

顔を上げると、ミンチョルさんは僕を見つめていた
ひかりの中の彼は無造作に手招きをした
近づくと僕の腰に手をまわし、額に自分の額をつけた

なんて顔してるんだ
すみません
不安か?
いえ…


僕は自分の心の整理が下手だ
……
気持ちの表現にもひと苦労だ
……
ゆっくり歩いてくれるか。一緒に
…はい

それでも下を向いている僕の額を額でふざけたようにぐいと押して、
まるい目で覗き込む
いきなりその唇が僕の唇をすくいあげるようにとらえる
彼のくちづけはいつも息が止まりそうになる
底がないかと思われるほど深く熱く湧き出る感情
彼はいったいどこでこんな情熱を育ててきたのだろう

さ、仕事だ。行こう
はい

現場に歩いて行く途中、僕たちはテスさんとすれ違った
テスさんはひとりじゃなかった
テッヒョンとヨンジュンと歩いていた
僕はなぜか反射的につないでいたミンチョルさんの手を解こうとした
しかしミンチョルさんはその手に力を入れて離さなかった

ミンチョルさんはテスさんを見てにこりと笑った
テスさんもミンチョルさんを見てにこりと笑った
2人とも優しい笑顔だった
テッヒョンは妙な表情で少し頭を下げた

テスさんの手がテッヒョンの親指をひかえ目に掴んでいるのが
すれ違う瞬間に見えた
ミンチョルさんもそれをちょっと見たのかもしれない
小さく微笑むとまた顔をあげて歩き出した


蜘蛛の恋part4 妄想省家政婦mayoさん

BHCのミン×2にすれ違った。先輩は妙に照れていた…
先輩がホントは優しくて熱いのは知ってる。…でも…こんな顔は初めてだ
テスは先輩の方を向いて何か呟いていた

 『蜘蛛さん、僕は大丈夫…』
 『ん…』
 『泣きたくなったら蜘蛛さんがいる。蜘蛛さんが暖かくしてくれる』
 『テス…』

先輩はちょっと首をかしげて無骨な手でテスの頭をくしゃくしゃに撫でていた
そして自分からテスの腕を自分の腕に絡ませた。僕はテスの頭越しに聞いた

「先輩?…あれが…例の…ミンミン?」
「…」
「こいつと…何かあったんですね?」
「…ヨンジュン…」

先輩は静かに瞬きをしながら首を横に振っていつものバリトンボイスで僕に言った

 『何も言うな…テスは無邪気だが、それなりに傷を持ってる…』
 『先輩…』
 『守ってやりたくなる…それだけだ…』
 『なんか…こいつ…憎めないやつなんですね…』
 『ふっ…そうだな』
 『でも…###は無しにしてくださいよ。もしかして…もう…』
 『おい…』
 『先輩は最近、そういうの、慣れてないから…』
 『…何もしない…と思う…が…』

そんなことをいった先輩も無邪気な顔をしていた
妙にじゃれてくるテスが僕も可愛く思えてきた。でもやっぱり僕の先輩はひとりだからね。子猫ちゃん


極彩色男色絵図 妄想省家政婦mayoさん

「…暇だ…」
「ウォン様…ここにいらしてからまともに描いていらっしゃらない…」
「当たり前だ…男しかいない…」
「あの…ホ○ト祭りですから…それは…」
「私は<女性との戯れ>しか描けないのは知ってるだろう?」
「はい…」
「チョ夫人のような気品のある美貌の女性はいないの?」
「あ、先ほど成熟した女性はお見かけしましたが…」
「そう…肌は綺麗?」
「ちょっと首にクッキリと2本…」
「あ、駄目。ヒヨンのような清楚な色香の女性は?いないの?」
「はぁ…なにせ男ばかりですので…」
「男はあまり描く気がしない…僕以外は…」
「でも…ウォン様にそっくりの方はいらっしゃいましたが…」
「そうなの?…連れてきて」
「あの…またそのお方との<戯れ>をお描きになるので?」
「私に似ているのだろ?…美しいに違いない」
「ですが……」
「君だって僕の画集でまた儲けたいのでは?」
「あ、それは…」
「ん〜〜画集の題は『極彩色男色絵図』にしよう」
「それはいいお考えです」
「この際、美形のホ○ト、連れてきて。パーフェクトな顔もいるんでしょ?」
「はい。承知しました」 


将軍の秘書 オリーさん

「将軍まで誘ってくれるなんて嬉しいな」
「早くまいろう。追っ手が来るとまずい」
「でも、その格好じゃだめだよ。これに着替えて」
「ん?わらわの鎧ではいかんか?」
「ベンツSLK230には合わないよ。さっ、早く着替えてよ」
「これは、チビTにジーンズ、それに皮ジャンでござるな」
「そう。将軍、ビジュアル的にはOKだからシンプルにいこうよ。ファッションは」
「なるほど」
「あとね、言葉使いも変えてよ、今風に」
「今風というと…OK!今着替えるからちょっち待ってね。このようでよろしいか?」
「ちょっと不自然だけど、まっその調子」
「よし、着替えたよん」
「うん、いい感じ」
「レッツゴーでござる!」

スパコーーン!!

「うわっ!出た!」
「どちらへ行かれる?」
「チン!お前リハーサルはどうした!」
「ふっ、スピーチのひとつやふたつは朝飯前。立ち位置とマイクの確認さえすめば問題なし」
「渋いおじさま!将軍、誰よ、誰よ!」
「これはチンと申して、今風にいえばわらわの秘書のようなもの」
「僕ドンジュンです。BHCの新人ナンバーワンです。よろしく!」
「おお、ミンチョル殿の所の…」
「そうか、チーフがスピーチ推薦したおじさまって、あなただったんだね」
「ミンチョル殿が私を推薦したのか。なるほど」
「すごい経歴の人がいるからその人がやれば誰も文句言わないって言ってたょ。おじさん凄いんだね」
「いや大したことはない。無為に歳を重ねているだけ」
「謙遜しちゃって。奥ゆかしいなあ」
「チン、おぬし、そんなにすごい経歴なのか?」
「ふっ、無知とは恐ろしいものでございますな、将軍」
「ひぇーー!主人をさしおいて何てこと!」
「ですから何度も申しておりましょう。時代は刻々と変わっております」
「ねえ、それより僕とドライブ行かない?」
「ドライブのう」
「あれっ、わらわじゃなくて、僕と行くはずじゃ…」
「僕、年上の渋いおじさまって大好き!ねぇ、行こう!」
「ほほ、将軍、そういうわけになりましたので、ひとつ代理で行って参ります」
「将軍はまた今度ね。じゃっ、レンタル料よろしく!」
「あ、あ、あの…」

「ねえねえ、おじさん車に詳しいの?」
「いや、私はさほど…」
「ベンツが他の車と決定的に違うとこ知ってる?」
「さあ、丈夫だということですかな」
「ふふ、それもあるんだけどね。ブレーキだよ。制御するシステムが根本的に違うんだ」
「ほお!」
「でもね電気系統は弱いよ。これは外国車全般に言えることだけどね」
「ドンジュン殿は物知りでございますな」
「車のことはね。で。どこ行く?」
「そうですなあ…」

「チン!せめて絵巻の謎は教えてもらえよ!頼んだぞ!」

「でもってチンさんが行ったの、ドライブ」
「そう…」
「行く前から挫折したわけね」
「う、うるさい…」
「でも編物三昧になるよりいいんじゃない」
「チンも帰ってきたら編物するんだろうか…」
「彼は大丈夫でしょ。年季が違うよ」
「チンはそんなに大物なのか…」
「じゃチアボーイズの練習はいってよ。男組とMUSAのラインで小競り合いがあるんだ。その列に入って盾になって」
「しっとりが…くそっ!」


天使の誘惑  ぴかろん

イナは自分の部屋へ戻るのを嫌がった
仕方ないので僕の部屋に連れてきた
ウシクもいる事だし…安全だろう

こんなイナを見ていると僕の血が騒ぐなぁ…いかんいかん不謹慎だ

だがウシクはいなかった

『イヌ先生と薔薇の投げ方の打ち合わせしてきます。今夜は帰りませんなんちって』



ウシクらしくない

あれ?
韻踏んじゃった(^^;;)

「僕達二人だけだ。いいか?」
「スヒョンさえいいなら…構わないか?」
「僕は大歓迎…いや、構わないが…フフ」
「変なこと考えるなよ」
「ああ…フフ…」
「…ふぅ…」
「なんか飲む?」
「いらない」
「じゃ、寝る?」『フフ』
「…なぁ…あの人どうして俺にキスしたんだろう…」
「またその事か」
「あの人がいるなんて知らなかったんだ、俺」
「…」
「あの人、あれは仕事だったんだって。祭のためだったって…。なのに何故俺に」
「夢だったんだ」
「え?」
「お前は夢を見ていたんだ。そう思え」
「…違う…夢なんかじゃない!あの人の唇が…あの人の肩が…」
「夢だと思え!わかったか!」
「…違う…」
「だったら僕がキスしたんだと思え!」
「違う!スヒョンのキスとは違うんだ!あの人のキスはもっと…」
「はあっやめてくれよ。そんなに気になるならテジュンさんに直接聞けばいいだろ?」

僕が突き放すようにそう言うと、イナは俯いてそしてベランダに出て行った
馬鹿野郎め。湯ざめしちまう…
僕は上着を持ってイナの所に行くと、後ろからそっと上着をかけてやった
ついでに、フフ、抱きしめた

抵抗さえもしない

つまんないな

「雨が降ってる」
「ああそうだな。こんなとこにいると風邪ひくぞ」
「踏ん切りがつかないよ、俺」
「…もしもお前が」
「ん?」
「僕のような奴だったらな」
「…」
「どちらにも誠実に向きあって両方に誠意を尽くして付き合えって教えてやるんだけど…」
「両方に?」
「お前にはできないだろ?」
「…」
「そんな事したら自分を許せないだろ?」
「そんなこと…ない」

「ならしてみろよ。できっこない。例えばチニさんがテジュンさんの話題を出したとする
お前はそれを平然と受けて平然と答えるんだ。テジュンさんがチニさんの話題を出した時も同じ…
そんな真似がお前にできるか?できないだろう?」
「…」
「…お前には無理だ…」

イナはまた俯いた
小刻みに震えていた
僕は少し強く彼を抱きしめた

「スヒョン」
「ん?」
「キスして」
「え?」
「して欲しければ言えって言ったじゃないか」
「…あ…ああ言ったけど…」
「して」
「…キスだけでいいのか?」
「ばか!もういいよ」

イナはプイっと横を向いて僕の腕から逃れようとした

フフ、可愛いな
逃がすもんか

僕はイナを捕まえて引き寄せ、優しくキスをした

代理キスか…

狂おしい程の想いが流れ込んでくる
軽いキスで終えるつもりがいつの間にかむさぼるようなそれに変わっている
おいおい、そんな切ない顔して、想ってる人は別の人だなんて
全く…

唇を離そうとしても、イナは執拗に求めた
無理矢理離れると僕はイナにきつく言った

「僕ならいいわけ?僕なら自分を許せるわけ?…ふぅん。そう。これは夢だってわけ?」

イナは顔を顰めてベランダの手すりによっかかり、ごめんと呟いた
別にいいんだけどね…
僕は別に構わないんだけど…
ちょっと意地悪したくなっただけさ…ごめんよ


できないくせに… ぴかろん

「あ…」
「ん?」
「庭に誰かいる…突っ立って…る…あれ…」

イナは突然ドアへと向かった

「おい、どこ行くんだ。夜中だぞ!イナ!イナ!」

僕は暗闇の中にいるという人物を探した

なんだ…あの人か…
まいったな。代わりも勤まらない…
僕の能力もまだまだ完全には戻ってないって事か

「テジュン!」
「…」
「何してんだよ、びしょぬれじゃないか!風邪ひいちゃうよ!さっき風呂に入ったのに…」
「ほっといてくれ」
「テジュン」
「許せないんだ!自分が許せないんだ…」
「…テジュン」
「…大丈夫…へへ…あ…雨に打たれて修行してたんだよ…」
「…」
「さっきはごめんよ、つい、映画のノリでキスしちゃってさ…」
「…」
「こんな軽い人間じゃなかったのにな。だめだな。…君もずぶ濡れだ。部屋に戻りなよ」
「お前の…部屋に行く…」
「だめだよ。祭の資料で一杯だ。関係者以外立ち入り禁止…さ、行こう。ほら、スヒョンさんが心配そうにこっちを見てるよ」
「…見てたの?」
「何を?」
「さっきの…俺とスヒョンの…」
「うん。よかったじゃないか、スヒョンさんみたいな人がいてくれて。さ、戻ろうぜ」
「…テジュン」
「何さ」
「俺に…もう一度…」
「行くぞ」
「テジュン!俺はお前がす」
「言うな!何も言うな!チニ君を泣かすな!選ぶ人を間違えるな!僕じゃないだろ。君が選ぶべきなのは…イ…」

あーあ
またキスしてる
しらないぞ…
できっこないのに…イナの奴…

できるのか?両方うまくやるなんて事
馬鹿だな…
テジュンさんもイナも、馬鹿だな…フフ…

それから10分後、イナはずぶ濡れで帰ってきた
僕はバスタオルで彼を包んでやった

テジュンさんへの想いで一杯になっている彼の心が僕に流れ込んできた


愛の嵐 オリーさん

それは何の前触れもなく突然起こった。頭の中でトランプのカードがばらまかれる感じ
パラパラと舞い落ちるカードに揺られ、体から力が抜けていく
「どうかしました?」ミンが僕の顔を覗き込むのがスローモーションで見えた。何でもない。自分の声がどこか遠くで響いている
カードは頭の中でゆっくりと舞っている。カードには人の顔…ヨンス、ミンジ、ソンジェ、…今度はイナだ、テス君もいる…
どんどんと降ってくるカードに頭の中が占領されていく
「大丈夫ですか?」ミンがまた僕を振り返る。気分が悪い。僕の声は聞こえたろうか

ミンの肩にすがりつく。立っていられそうもない。倒れこむように体を預ける。頭の中のカードは今や狂った蝶のように乱舞している
どんどん落ちてゆく気分。カードの絵柄はみんな知った顔、顔、顔。泣いている、怒っている、笑っている
ああ、ヨンス、君はどうしていつも泣いているの?カードの嵐に翻弄されている僕。一体どうなっているのだろう。でも僕の一番欲しいカードはどこ?

ベッドに横になっても頭の中の混乱はおさまらない。ミン、お願いだ、僕の手を握っていて。もっと強く
そうでないと落ちていってしまう。もう二度と上がってこれないような気がするんだ
何が起こっているのかやっとわかった。失った物が再生されてるんだ。こんなに突然、こんなに急に
本で見ていた絵画が突然目の前に現れるみたいに。へんなたとえだな。ねえミン、頭が痛いから少し眠るよ

もう真夜中。何度も何度も繰り返し考えた。考え始めてからどれ位経ったろうか。ベッドの脇でミンが僕の手を握りしめている
静かな寝息をたてながら。頭の中のカードの嵐はすっかりおさまっていた。カードは僕の頭の中に積み上げられて、あるべき所へきちんとおさまっている
もう一度それを崩し並べ替えてみよう。もう一度、もう一度。いやもう何回もやってみた。探しているカードが見つからない

ヨンス、君のカードはやっぱり泣いているのが多い。みんな僕のせい?僕は君に何をしてあげただろう。たぶん何も
でも僕はそんな君のカードよりたった1枚のカードを今探してる。ミン、君のカード。涙が出た。僕は何をやっているんだろう。何をやってきたのだろう

「気がつきました?」ミンの声で我に返る。気づかれないよう親指で涙をぬぐう。「気分は?医者を呼びますか」心配そうに僕の顔を覗き込む現実のミン
カードなんか必要ない。大丈夫だよ。心配かけたね。「水を飲みます?それとも何か食べます」いやいらない。「疲れが出たのかもしれませんね」僕の額に手を当て気遣う君
「泣いてるんですか?」知らないうちにまた涙が出ていたのか。ミン…「どうしました?」

記憶が…「え?」思い出してしまった…そういうと僕はミンの腕にすがって泣いた。ミンは僕を抱きとめ静かに体を擦ってくれた
「心配ありません。元通りになるだけです。大丈夫ですよ」ミンは僕の耳元で囁いた。思い出した、ではなく思い出してしまった。この意味を賢明な彼は理解しているか 「僕は大丈夫です。だから泣かないで。ちゃんと戻れます」ミンは何度も僕の耳元で囁きつづけた


嵐の行方 妄想省家政婦mayoさん

「あぁ〜〜〜寝た!おはよう…って…今何時だ?」
「あぁ…来てしまった…ついに…」
「…mayoッシ?」
「…オ・オッ…トケ〜〜オ・オッ…トケ〜」
「どうしたのよ…」
「ミン・ミン・ミン・ミン・ミンミンミン〜」
「mayoッシ!落ち着いて!テ・ソ・ン・は・さ・い・こ−、言って!」
「て・てそんはさいこー……^^;」
「オーケー!で、どうしたの…何!?」
「ミンチョルさんの様子がおかしい……」
「おかしいって…ハグハグ・むにゅむにゅ??そんなのミンミン朝から晩までじゃん」
「ち・違ぁ〜う!!記憶!」
「@@ももも・もしかして…戻った…???」
「みたい…」
「うっそぉ…来たのか。ついに。で?全部思い出したみたい?」
「ううん…まだわからない…混乱してるみたい…」
「そうか…そうだよな…」

「ミンチョルさん、どう選択すると思う?」
「どれを選んでも…誰かが傷つく…か…」
「ギョンビンさんに決めちゃえばいいのよ!思い切って…」
「ぐわっ…爆弾投げてるよ…mayoッシ…今の気持ちに正直になればギョンビンだよな」
「ミンチョルさんは今の自分の気持ちが大事だ。って言ったよ?イナさんに」
「だからといって…妻への気持ちはどうする…愛していたのを思い出したんだよ?」
「だって…今さらあとに引けない…ミンチョルさんはフクスケに好きにしろって印籠渡したよ?」
「ギョンビンの想いも痛いほどわかるよな…」
「だから…フクスケにくれてやればいい。うるさいから」
「ぷっはは…って、笑っちゃいけないな…」
「イナもまだ引きづってんだろ?テジュンさんのこと…」
「スヒョンさんが一生懸命、ハグハグ&ちぅ…して何とかしようとしてるんだけどねぇ…」
「おい、ちぅしちゃったの?あの2人…」
「だって…スヒョンさんだもん…」
「そっか…あ!じゃぁ、ミンチョルさんもやっぱり…スヒョンさんの出番になるな」
テソン&mayo「天使ですからっ!」

「どうするんだ…祭り…まだ始まってもいないのに…大丈夫かな」
「うん…それに…」
「テスか?」
「うん…」
「昔みたいに…テスに優しくなったら…あいつ…」
「今のテスさんは、ギョンビンさんの想い充分わかってるから…大丈夫だと思いたいけど…」
「くわぁ〜〜どうすんだ…いったい!あっちもこっちも」
「何もしてやれないよ…見守るしかないもの」
「だから!イライラするんだよ…」
「テソンッシ…@@」

白夜倶楽部でリマリオとじゃれながら、時おり「えへっ」っと笑顔を送るテス
口元で笑いながら目を細めて眺めていた蜘蛛の目が一瞬曇った
テスに気づかれないように蜘蛛は窓辺に移り、タバコに火をつけた

『闇夜!聞いたぞ…』
『ん…嵐になるかも…テスさん見守っててね…』
『わかってる…闇夜…』
『ん?』
『テスは大丈夫だ』
『ネ…』


女ボディーガード  ぴかろん

「チニ!」
「来てくれたのぉ?」
「当たり前よ、親友の危機だもの」
「危機って訳じゃないけどね。チェリムもここでいい男でもみっけてったら?」
「なーに寂しく笑ってんの!私は仕事一筋よ!」
「…そういう人が恋に落ちちゃうと…はぁっ」
「どーしたのよ!」
「なんでもない!部屋に案内するわ」

「おい!あんた」
「は?」
「あらテプンさん、どうしたの?」
「この女、どっかで見たことがある」
「…私もこの男どっかで見たことがある…」
「…お互いイヤな思い出かな?」
「…そうね…私が仕事一筋になった出来事と密接に関係してるわね、貴方の存在は…」
「小難しい事並べ立てる女だな。知ってるのか?ここはホ○ト祭の会場だぞ!女は例外以外立ち入り禁止だぞ」
「ホ○ト祭なんだからホ○ト以外も立ち入り禁止でしょう?アンタ、ホ○トじゃないでしょ?」
「チェリム、テプンさんはBHCってお店のNO.1ホ○トなのよ」
「…思い出した!ソ・テプン!え?この男がNO.1ホ○ト?!どういうチンケな店なのよ!」
「チェリム!」
「チェリム…この気の強さ…この達者な口、そして胸の薄さ」

スパコォォォン

「ちょっと、失礼ね!アンタ失礼なところちっとも治ってないわね!」
「チェリム…知り合いなの?」
「知り合いっていうかぁ」
「ジソクに横恋慕してたんだ。金に物を言わせて奪おうとしてた。俺が阻止したけどな」
「何言ってんのよ!あんたこそジソクの彼女に横恋慕してたんじゃない!」
「でも俺は諦めたぞ!彼女の幸せが何なのかよくわかってたからな!それでも彼女の事、好きだったけど…」
『彼女の幸せがなんなのか…それでも彼女が好き…』「テプンさん…」
「ん?なあに?チニさん(^o^)」
「ちょっと何よアンタ!なんでチニにだけ笑顔よ!」
「お前怖いもん」
「!」
「まだ検事やってんの?」
「…辞めたわよ。さすがに居辛くって。今はボディガードやってるの」
「ふーん、かっこいいじゃん、男みたいな胸してるもんな!」
「ちょっと!見たこともないくせになんなのよ!」
「へー。ぺんぺらの体してんのに、胸だけぼよよ〜んなんてあり得ねぇもん!」
「むかつくー!きいっ!」
「…チェリム…貴方いつもはもっと冷静じゃない…どうしたの?」
「はっ…ご…ごめん…この男と喋ってるとつい…」
「お前、偉かったな」
「は?」
「あん時、ちゃんと引き下がって…辛かったろ?」
「は…何よ、調子狂うわね」
「俺もお前と同じような気持ちだったからさ。で、恋人見つけたか?」
「…人の心配より自分の心配したら?子供は?どうしたの?ホ○トって本とにやってるの?アンタみたいな人が?!」
「そういう発言は許せないな!検事時代の名残だろ。人を見下す癖」
「…そんなつもりじゃ…」
「いーや、お前はいつもそうだった!そりゃお前んちは金持ちだったさ。俺なんか金なくてヒーヒー言ってたもん。いいよな、親のスネかじってりゃいい奴は」
「スネなんか齧ってないわよ!新しい仕事に就くとき大反対されて家を飛び出してきたんだもん」
「え…だめだよ!そんな事するなよ!親が心配してるぞ!家族は一緒にいなきゃ」
「大丈夫。ちゃんと解決してるわ。仕事には反対してるけどね。けど、一流のボディガードになれたら、私が父や母を守れるんだもの
だから今はまだ、アンタみたいにヒーヒー言いながら修行中よ」
「…お前…やっぱ偉いな…」
「…そ…そう?」


愛の嵐3 オリーさん

僕たちはどのくらいそうしていただろう。すっかり涙が出てしまうと、今度は強烈な脱力感。もう休もう。すまない。ミンはそっと僕の隣に滑り込む
いつものように僕の腕の中にすっぽりとおさまって僕の胸に顔をうずめる。さっきまで抱かれていた僕が今度は彼を抱く。でもいつもと違う今夜
君が腕の中にいるのに今にも消えてなくなりそう。ちゃんと戻れますってどういうこと?僕らのことも入っているんだろ
僕がヨンスの泣き顔やテス君の笑顔を思い出したからって、僕らのことは何も変わらないだろ。僕は思わず君をきつく抱き寄せる

「お願いがあります」君のお願いなら何だって聞くよ。「僕を抱いて」君は今まで一度もそんなこと言った事ないじゃないか。今夜は君を抱きたくない
疲れた。休もう。嘘をつく僕。僕の腕の中にいたミンがすばやく動いて僕を組み敷く。「どうしても今夜」いつもとは違う君
「お願いだから…」そう言いながら彼は僕の唇を覆う。君の事が欲しくない時なんて一度もないよ。今だって。でも今夜抱いたら君はどこかへ行ってしまいそう
だからやめてくれ

ミンと僕は黙ったまま争う。求めるミンと拒む僕。どうして今夜?どうして今?どうしてそんなに急ぐんだ。僕たちには時間が残されてないみたい
先にあきらめたのは僕の方。君がこんなに強引だなんて知らなかったよ。こんな形で君を抱きたくない。でも君はすべてをさらけ出して僕を求める
いいよ、僕のすべてをあげよう。だからそんな目で僕を見ないで。そんなに激しく僕をつかまないで。だって僕らはこれからだ。続きはいくらだってあるんだ
まるで何かの記念みたいじゃないか

君の一途な瞳、柔らかい唇、しなやかな筋肉、額にうかぶ汗、どれもこれも僕の物だよね。そして僕のどれもこれもが君の物だ
僕らは嵐の中に放り込まれたいかだのよう。激しい波に飲み込まれそうになりながら必死にもがいている。伸ばした手を掴んで突き放してはまた掴む
何度も何度もお互いを確認しながら、終わった時には時間も空間も何もなかった
ひとつになった君と僕以外は。すべて投げ出してひとつになれたね。ミン、君は泣いているの?

じっとミンの寝顔を見ていた。僕は決めたよ。君と離れるなんて耐えられない。ヨンスのカードが僕の頭の中でふっと舞い上がった。すまない
最後まで君を泣かせてしまって。でも僕は戻れない。考えたあげく出した結論は簡単な事。思い出したカードの中にミンがいない
だったら新しいカードを作ればいい。そうだろう?何があっても僕らはずっと一緒だ。僕はミンの寝顔につぶやいた
聞こえたのだろうか。君がかすかに微笑んだような気がした。僕はミンを抱きしめて眠りについた

ざわざわと胸騒ぎがして目がさめた。僕の隣にいるはずの君がいない。ミン。声に出して呼んでみる。どこにいるの。君の姿はどこにもない
あわてて部屋中を探す僕。君の痕跡はひとつもない。クローゼット、バスルーム、君の物が何もない。ミンが消えた。煙のように
僕の心臓は今にも破裂しそう。無駄だとわかっていて僕はロビーまで降りていく。外に出てみる
プロの君がそんなドジを踏んでるわけはないのに。どこに行ったの。君の寂しそうな笑顔が浮かんでは消える。決めていたの?僕の声は届かなかったの?

どのくらい外を駆け回っていたのだろう。どうやって部屋に戻ったのか覚えがない。気がつくとベッドに腰かけていた。きれいさっぱりいなくなってしまったミン
君の消せなかったものがひとつ。ベッドに残る君のかすかな匂い。僕はシーツに顔をうずめて泣いた。もっと強く君の手を握りしめていれば
僕はいつでもそうだ。肝心なことをしくじる。イナの言う通りだ。問題の先送り。馬鹿な僕
おかげで記憶が戻った僕はすべてをなくしてしまった。僕自身さえも

何が打ち合わせだ。くそくらえ。でも僕は行くだろう、仕事だから。鏡の中に別人がいる。瞳にガラス玉をはめ能面のようなマスクをつけ心に鍵をかけた僕
もう誰も僕に触れる事はできない。思い出した事で慰めがひとつある。僕は人生の大半をそうやって過ごしてきた。心を閉ざし感情を捨ててただ生きるだけ
慣れてしまえば簡単なこと。やっぱり僕にはできなかった。春の陽射しの中で幸せになることが。僕は吹雪きの中で取り残され埋もれていく
いっそ埋もれたまま消えてしまえればいいのに


戻る 次へ 目次へ