変更と変化 足バンさん
従業員:総支配人、よろしいでしょうか
ハン総支配人:あ、あぁ?どうした?
従:お客様2名様が発熱されたということです
ハ:すぐ医務スタッフに連絡を。状況によっては医師を呼んで
従:はい
ハ:お客様は?
従:ミニョン様とソンジュ様です。それぞれお部屋に戻られています
ハ:お2人揃って熱?
従:はい。中庭で風邪をお召しになったようです
ハ:わかった。手配してくれ
従:総支配人、お疲れですか?元気がないですね
ハ:そうか?気にするな。じゃ、頼むぞ
ドンゴン:大丈夫か?
ウォンビン:僕は大丈夫。でも全然<カラス>来ないじゃない
ドン:おかしいな。作戦No.112「公開生CM」で必ず引っかかると思ったんだが
ウォ:そういう風に甘いから変な暗号掴ませられたりするんだよ
ドン:俺も脱ぐか
ウォ:ダメだと思うよ
ドン:お前、ちょっと最近生意気だな
ウォ:それよりあの2人大丈夫かな
ソンジュさんは強がってたけどミニョンさんは辛そうだったな
ドン:お前に対抗してずっと裸でポーズとってるからだ
ウォ:鼻水たらしてたもんね。僕もこのまま裸でいなきゃなんない?
ドン:いや、作戦中止だ。<カラス>の部屋に潜入する
ウォ:誰が?
ドン:こんな重要な作戦を人に任せられるか。俺が行く
ウォ:またへましないでよ
ドン:その生意気なお口にチャックしろ。弟じゃなきゃ既に命はないぞ
彼は焦っていた。曖昧な記憶を必死にひもといてみたが思い出せない。どこにやった
なんということだ。こんな単純なミスをするなど。彼はふと自分の人生を反芻した。ミス
そうミスと呼ばれる過去の中には必ずある男の影があった
ペチン!
イナ:おい!アホゥ!
チョンウォン:痛っ! か、影!?
イナ:何が影だ!もういいかげん〈オリーさん調〉はやめろ!殴るぞ!
チョ:僕だって憧れるんだよ、ぶつぶつ…
イナ:な、お前、テープ知らないか?
チョ:えっ!?い、いや!渡しただろう?
イナ:拾わなかったよな
チョ:も、ち、ろんだ!
イナ:ほんとか?
チョ:と、友達を疑うのか!
イナ:まぁいいや。もし見かけたら教えろよ
チョ:わ、わかった
イナ:どこに落としたんだ、まったく…あの…あのテープ(ズキン)
チニ:わっ!
イナ:うぁっ!び、びっくりした!チ、チニさんか…
チニ:どうしたの?ぼーっとして!
イナ:そう?んと、ちょっと忙しくて疲れちゃったかな
チニ:私もなの。なかなかクリンちゃんに会えなくてつまんないな
イナ:クリンちゃん?
チニ:そ、そのかわいいおめめ♪
イナ:えへ…へ
チニ:どうしたの?なんか変よ?
イナ:ん?なんでもないって!プリンちゃんも忙しそうだね
チニ:ふふ!そうなのプリンも大変!今もこの決済書持っていかなくちゃ…
あ、やだサインし忘れちゃっれる。クリンちゃんペン持ってる?
イナ:え?いや…
チニ:あらぁ、そこにあるじゃない、ちょっと貸し…
イナ:ああ!それはダメっ!!
チニ:…ど、どうしたの?
イナ:あ…あ?いや、ごめん、どうぞ使って。はい
チニ:うふ!変なクリンちゃん!はい、ありがとう。じゃまたね♪
イナ:うん…またね…(ズキンズキン)
美しい朝 オリーさん
「ミン、話があるんだ。その…僕と君の事なんだけど」
「はい」
「僕は昔の事は忘れてるし、別居中の妻はいる。それに厳しい弟もいる…」
「わかってます」
「僕のような人間のそばにいるのは楽じゃないから…でも考えてくれないか、僕と一緒にこれから…」
「考える事はありません。そばにいます」
「ほんとは少し不安なんだ。君を幸せにできるか。幸せな関係を知らないのに」
「大丈夫です。いつも幸せでなくても。たまに昨日みたいに幸せでいられたら」
「ミン…」
「僕は大切な人をたくさん失いました。これ以上後悔したくありません」
「僕でいいのか」
「僕が守ってあげます」
「ミン」
「ミンチョルさん」
ハグッ!ハムハム…ムニュムニュ…ペチャペチャ…
「んー、離れたくない」
「でも祭の準備があるでしょう」
「んー、仕方ない。じゃ朝食にしようか」
「そうですね。ルームサービス頼みますか」
「そうだ、黒蜘蛛はどうしたろう。一緒に食べるかな」
「聞いてきましょう。待っててくだ…」
「朝粥定食にしてくれ」
「うわっ!い、いつからそこに!」
「すまん、腹が減ったので」
「今の全部聞きました?見ました?」
「心配ない」
「そうじゃなくて、だから昨日もお願いしたでしょ。勝手に入るなって」
「つい習性で」
「プライバシーの侵害です!」
「俺の情報は常に最重要機密事項にファイルされる。公になることはない」
「そういう問題じゃない」
「ルームサービスはだめか?」
「わかりました。食べたら出てってくださいよ。でもそれって美味しいんですか」
「健康にいい」
「ミン、じゃあ僕もそれにしてみる」
「わかりました。僕も食べてみます」
「俺の前であまりいちゃいちゃするな」
「気にしないでください」
「食事の時くらい手を離したらどうだ」
「いやなら、白夜倶楽部に帰ったらどうです」
「開き直り作戦か…」
「自然にしてるだけですけど」
「ギョンビン、お前隙だらけだぞ」
「食事の時くらいリラックスしたっていいでしょう」
「だからって、大の男があーんって食べさせてもらうな」
「ミン、熱かった?ごめん」
「大丈夫です。今度は何食べます?お粥それとも漬物?」
「んー、漬物!」
「はい、あーん」
「こら!俺を無視するな!」
避難 妄想省家政婦mayoさん
♪ヤァ~クソッケ〜ネェ~ヌンムリィ〜…ピピッ
++ ピョートルだ。中庭の様子がおかしい。男組隊長の姿が見えない
あいつは任務に忠実な感情爆発型だ。CM作戦に失敗した今、何をするかわからない
すぐその部屋を出るんだ!白夜に避難して!パルリ!(早く! )
メールを読みながら機材をバックに詰め込む闇夜
「テソンさん、心配しないで…」バタン☆
「ど・何処行くの…ってもういないし…(^^;)」
バタン★「<闇夜>は何処だ!」
「ちょっと、ノックぐらいしてよ」
「あ・あぁ…(トントン)これでいいか!」
「お・男組の…」(落ち着け!テソン)
「ドンゴンだ」
「ふ〜ん、で、何か用?」(お・お前なんか怖くて覗きができるか!)
「ここに<闇夜>がいるはずだ。出せ!」
「あのね、品物じゃないんだから。出せ!はないでしょうが」(よし…いいぞぉ〜)
「確かにこの部屋だ。隠すと命はないぞ」
「好きにして。僕、一回死んでるから」(一応そういうことになってるもん)
「うっ…とにかく調べさせてもらう」
「どう〜ぞぉ〜」(あっ…ヤバイ。この感じ…変身…誰か止めてくれっ)
バタン☆「腹へったなぁ〜テソン〜飯食いに行こうぜ〜」「てそんさんいっしょにいきましょう」「行こう、テソン」
「くそっ!いない!<闇夜>を何処に隠した!」
テプン・ジュンホ・ウシク「あんた、誰?<闇夜>って誰よ」
「ここに黒づくめの人物がいるはずだ!」
「あっ、まよ…あぅ…」ウシク、テプンの口をふさぐ…
「ここは僕達4人の部屋だ。他には誰もいない」
「<闇夜>だかなんだか知らないけどさ、いないって言ってるんだから。それとも俺らとやる気?」
『テプン、マズイぞ…テソンに変身の…気配だ…』
『それなら、なおさらあいつを早く追い出さないと…ウシク』
『ぼくのアッパーきめますか?』
テプン、ガム膨らまして威嚇。ジュンホ、ボクサーの構え。ウシク、両手にスリッパ
「エ〜〜ィ…くそっ!逃げたな!」バタン★
「はん!大したことねぇな」「テソン、しっかりしろ!」「てそんさんしっかり!」
「ん・う・ううん…助かったよ…」
「mayoさん大丈夫なのか?」「あぁ…たぶん…」
足早に廊下を歩く闇夜…『ったく、しつこい男組!顔もしつこいけど…うっ…』
前方に隊長確認…『ここは直線廊下。逃げ道なし...オットケ〜ToT;;…後退…後退…っと』
くるり振り返る隊長…「<闇夜>!待て!」
「オットケ…オットケ…」角を曲がったところで<闇夜>の腕を掴んで隠れる**
「な・何するの!」(あぁ…どうしよう…生じゃん…)
「兄さんには任せられないんだ」
「あの…離してくださ…いっ!」(って腹王…触っちゃえ〜ひひ…)
「うっ…そっちで持ってる情報渡したら、手荒な真似はしない」
「何も持ってま…せん!」
「ウソだ。出して!」「ない!」「出せ!」(ナマゴエサイコー@o@//)
「そこまでだ…そいつの手を離せ」背後から**を羽交い締めの帽子の男…
「お前は…仲間か?!」「お前には関係ない」「く・くそ…」「行け!!」
「白夜まで送る…」「コマした私を何故助けた??」
「ふっ…何故かな…飯は食ったのか?」
「アジク(まだ)…」
「朝飯は大事だ、ちゃんと食え」
「…@@」
交錯 足バンさん
ミンチョル:ミン、エレベーターを出たら離れるんだぞ
ギョンビン:はい、わかっています。今だけです
ミン:ん?なに?
ギョ:ずっとここにいたいです
ミン:緊急停止する?
ギョ:くすっ。大騒ぎになりますよ
ミン:これから大仕事が待っているからな
ギョ:そうですね
ミン:ミン…
ギョ:え?
… …… … ………
扉が開き、素早く髪の乱れを直し歩き出すミンチョルとギョンビン
ロビーまで進んだ時遠く対角線にスヒョンの姿。ゆっくり歩み寄る3人
スヒョン:いい天気だ
ミンチョル:そうだな
スヒ:午後の舞台練習には連れて行く
ミン:頼む
ちらりとギョンビンを見るスヒョン。目をそらすギョンビン
ミンチョルがギョンビンに目で合図し3人はすれ違う
イベント会場ではすでにテプンやウシク達が練習を初めている
ミンチョル:合流して
ギョンビン:はい
ウシク:なんだか、どこ見ていいのか困っちゃうな
テソン:余計なこと言うなよ!映画のことはおくびにも出すな
チョンマン:でもなんか2人のムード違っちゃってない?
テソ:いいから!放っておけ!
テプ:そうそう!練習ぅ練習ぅ!
チョ:あ、テス!
会場の奥から舞台下のミンチョルとギョンビンを見つめていたテス
それには気づかず小さな声で言葉を交わしている2人。真っすぐ歩き出すテス
ウシ:ちょっと、まずくない?
テソ:あいつ映画のことは知らないんだが
チョ:あのムードだもの。どんな奴だってわかるでしょ
テス:ミンチョルさん
ミンチョル:おはよう
テス:これ先日頼まれていた音楽の資料です。これがCD。これが他の店の資料
それからこれはホテルでレンタル可能な…あとはご覧下さい。では失礼します
ミン:テス…
テス:はい
ミン:ひとりでそろえたの?
テス:はい
ミン:ありがとう…
テス:いえ
ギョンビンには視線も向けず背を向け会場を後にするテス。見送るミンチョル
そのミンチョルの視線を追うギョンビン
チョ:うはっ!冷や汗出た
ウシ:テス、チーフの顔、見もしなかったよ
チョ:なんかテス、雰囲気こわくない?
テソ:いいから!ほら、練習!滑舌の方も行くぞー!
「アカマヨピーキマヨピーアオマヨピー」
「ミンチョルピョコピョコ ミンチョルピョコ アワセテピョコピョコ ムンチョル…」
ミンチョル:おい、なんだそりゃ
テソ:テプンが考えたんです
ミン:そういえばイナはどうした?
テソ:さぁ、いろいろ忙しいみたいです
ミン:なにかみんなの雰囲気変じゃないか?なにかあったのか?
テソ:え?いや!あぁ、そういえば男組の隊長が部屋に来ました
ミン:来た?
テソ:そう、来ただけ。なにもせずに帰りました
ミン:無事か?
テソ:無事です。今回も黒蜘蛛に助けられました
ミン:今回「も」?
テソ:あ、いや、なんでもないです〜!
同志 妄想省家政婦mayoさん
「お前は…」「はい?」
「ああいうのが好みか?」「…って?」
「さっきのは男組の弟の方だろう。もう少し待ってれば良かったか?邪魔したか?」
「いえ…あ、もうちょっと後でも良かったかな…」
「おい!」「す・すいません…」
「あいつらはお前の何を狙ってるんだ」
「さぁ…大した情報でもないはずなのに…」
「お前の情報は…突拍子もない事項が多い」
「私のは…ただの『覗き』に過ぎませんから…」
「いや、ある意味『覗き』が一番怖い…無防備な面を突かれる」
「あなたもそうだった…」
「そうだ」
「でもいろんな面を見せれば、貴方のファンは増えるの…」
「そんなものか…」
「そう…」
「まだ何か…俺の情報があるみたいだな…」
「それは…あなたと同じで最重要機密事項にファイルしてますから…」
「俺たちは[同志]だ。隠すことはない」
「へっ?ど・[同志]って…あ、あの…勘弁してくださいよぉ〜」
「つべこべ言うな!俺の情報は何だ!言え!」
「…パン屋…」
「何!パ・パン屋…って、お前…あれを…調べたのか!?」
「カリスマの二枚目、渋いナイスガイのヒイヒイ泣く顔・かわいらしい上目使い…」
「お・おい!」
「情けなくて下がりっぱなしの眉毛…」
「ぁう!お前の調査は…底なしか!?」
「『良いパンを焼くということは素敵な恋をすることと似ている』…でした?」
「アイゥ〜…」
「パン屋でもやれば、素敵な恋に巡り会えるんじゃない?手伝うよ?」
「恋だの愛はもういい。それに…俺はBHCのあいつらほど…」
「くく…ちぅが上手くない…」
「お、お前って奴は…ったく…」
「あはは…」
「笑うな」
「あ、吹替え無しでパン作ったって…ホント?」
「そうだ」
「ふ〜ん…」
「まだ観てはいないのか?」
「捜してるんだけど…VもVCDさえ見つからないの」
「あれは…ヒットしなかった。ネチズンは皆…俺のカリスマに期待する」
「いつもタフガイが多いからしょうがないか。でも私は見たいな。パン屋」
「お前は、何故いつも崩れた俺を見たがる?」
「ん〜…どんなキャラも自分流に仕上げるじゃない…」
「!!…今度捜しておく。見ておけ」
「うわっ!やった。ついでに…」
「何だ」
「パンも焼いてきて欲しいな ^_^v 」
「調子に乗るな」「…@@」
揺れる心 ぴかろん
『どうしたの?何だか変よ。疲れてるの?』
『んあ、いや…チニさん、いや、プリンちゃん』
『なあに?』
『(やっぱカワイイよな…)プリンちゃんは愛情と友情、どっちが大切だと思う?』
『…やっぱり変よクリンちゃん…比べられないわ。両方とも大切。…何か悩み事?』
『両方…か…両立出来るのかな?』
『普通できるわね』
『プリンちゃん…僕はプリンちゃんに会えて本当に幸せになれた…どん底から救われたし…今もとても幸せなんだ…け…あっ!』
ちゅううっ
『(プリンちゃんからちゅうを!)』
『私イナさん好きよ』
ドキドキ
『パパが来るから準備しなきゃいけないの。忙しくなっちゃうから連絡できないかもしれない…』
『あう、僕も、祭の事でいろいろ…』
チッ『チニ君、至急○○に来てくれ』
チッ『了解…じゃあね…ウフ』
『うん…』
あの時俺は、去っていくチニさんに笑顔で手を振りながら、胸ポケットの万年筆を探っていた
チニさんからのキスへの嬉しさと、万年筆の贈り主への言いようの無い痛み
俺は…何を考えているんだ?
チニさんと離れたくない。幸せになりたい。いや、きっとなれる。だが…
あの人の揺れるまなざしが俺の脳裏に焼き付いている
あの時、俺に縋りついて急勾配を転げ落ちた
すっかり俺に体を預けて
あそこまで他人を信じられる物だろうか…
もしもチニさんとあの坂を転げ落ちる事になったら…
いや、チニさんは女性だ。そんな事させられない。するはずがない…
テジュンさん…
「イナ!上映許可取ったのか?」
「テソン…まだ…」
「早く取ってきてくれよ!」
「ああ、解った」
俺は万年筆を手で弄びながらあの人の部屋に向かった
あの人の部屋のドアをノックしかけて、忙しいのにいるはずがないと気づいた
『総支配人・ハン・テジュン』
ドアにかかったプレートを俺は無意識に撫でていた
『何やってんだ、俺』
俺は自分の行動を鼻で笑ってそこから離れようとした
カチャリ
ドアが開いた?
振り返るとそこに、寂しげなあの人がいた
「テジュンさん…どうしたんだ。元気ないじゃないか!」
「…イナさん…どうしてここに?」
「あ…その、BHCで映画を上映したいんで、その上映許可を貰いにきたんだ…」
「…仕事…の事ですね。どうぞお入りください」
俺は彼の招く方へ進んだ
「!…どうしたんだよテジュンさん!この部屋は…」
「あ…すみません、忙しくて…ハハ…片づけられなくて…」
「こんな…割れた瓶があちこちに…怪我したらどうするんだ!」
「…いいんです…」
「よくない!」
「ほっといてください!僕の事なんか!」
「ほっとけない!俺達…友達じゃないのか?」
「そうです!友達です!ただの友達だ!だからほっといてくれ!」
「テジュンさん…!これは…万年筆…貴方の万年筆じゃないか。俺とお揃いの…なぜへし折れているんだ!」
「何をそんなに怒ってるんです?フフ、僕の万年筆を僕がどうしようと貴方には関係無い!」
「…友情の証じゃなかったのか?アンタがそう言ったんじゃないのか?」
「…友情なんて!」
「テジュンさん!どうしちまったんだよ!」
「離してくれ!貴方と仕事以外では関わりたくない!」
「テジュンさ…」
「…上映するテープ、一度見せてください。過激な物は許可できませんから…」
「…」
「…今なら時間があります。すぐに持って来てください」
「…仕事だけの関係…そうなんだな?この万年筆は一体何だったんだよ!」
「…捨てるなり何なり好きにしてください」
「!」
「早くテープを持ってきて。今しか時間はありませんから…僕は忙しい」
「…」
俺は呆然として部屋を出た。どうしたんだ彼は。何が彼をあんな風にしてしまったんだ
テープを貰いにテソンの所へ急ぎながら俺は、自分が泣いている事に気づかなかった
俺の顔を見たテソンは、少しびっくりしていたが、すぐにテープを渡してくれた
「いいか、総支配人以外に知られないようにしてくれよ。それと…」
二人で見ろ
テソンはそっと微笑んでそう言うと、俺の涙を不器用に親指で拭いた
「へへ、一度やってみたかったんだ」
「テソン…」
俺は彼の部屋に走った。ドアを開けようとしたが、鍵がかかっている
何故?俺が帰って来る事が解っているはずなのに…。何故鍵を?
俺を拒絶しているのか?
バンバン、バンバンバン
ドアが少し開いた
さっきよりもっと憔悴した彼の顔が覗く
どうしたんだ…どうしたんだよ…
彼の疲れきった様子は、俺に涙を流させた…
俺は何も言わず彼の後について行った
「テープを…有難う。見ておきますからイナさんはご自分のお仕事をなさってください」
「追い出す気か」
「…」
「一緒に見よう」
「一人で見ます」
「…内容を漏らされては困るんだ!一緒に見ないなら返してくれ!」
「…見れないなら上映をやめるまでです」
「強情な人だな!何が気に入らない!何があったんだ!」
「何があった?!…酷い人だ!僕の心に土足で踏み込んだくせに!」
「それは謝ったじゃないか!」
「…そうでしたね。じゃあもういいじゃありませんか、僕たちは『友達』、それでいいじゃないか!帰ってください」
「テジュンさん!どうして俺を拒絶する?なんでこんな急に…ううっうっ」
「…イナさん…」
「俺は…俺は…」
「イナさん…泣かないで…貴方が泣くと僕は…」
「テジュンさん…俺はアンタを離したくない!」
はぐううっ
彼は俺の腕の中で放心したような表情を浮かべた
俺は…この人も離したくはない…
俺は、あの狡猾な鷹の気持ちが少しわかったような気がした
休憩 妄想省家政婦mayoさん
「「「「はぁはぁ…ちょっと休憩しよ〜テプン」」」」
「お〜10分休憩〜」
舞台に輪になって休憩をするメンバー
群れから離れ、歩き出すギョンビン
「何処行くんだ??」「聞くだけ無駄…」
「ちょっと…行ってみようぜ…」「テプン!」
舞台の陰で休むギョンビン
その姿をじぃ〜と見つめるミンチョル
視線を感じ顔を上げミンチョルを確認するが恥ずかしそうにうつむくギョンビン
「辛そうに見えるけど…大丈夫か?疲れてないか?」
うなずくギョンビン
「昼食も部屋で一緒に食べよう…」
2回、3回とうなずくギョンビン
ポケットに両手を入れ、ギョンビンの額に##をし、左眉をピクッとさせ立ち去るミンチョル
うつむいて恥ずかしそうなギョンビン
すぐ戻り、両手でギョンビンの両腰を支え、##を始めるミンチョル
♪ジャンラランジャジャン ジャンラランジャジャンジャン〜ジャンラランジャジャン♪BGM:SENS
最初軽く捕らえられたギョンビンのそれは時に軽く強くやがて下からすくい上げて離さないミンチョルのそれにすっぽりと捕らえられた
息も出来ず戸惑いながらもそろそろと肩に手を伸ばす。執拗なまでのモグモグは続く。両手が首に回された時、すっとミンチョルはギョンビンから離れた
去った後それに余韻を感じながら肩で息をするギョンビン…
固唾をのんで一部始終を見ている寂しい大人達…
隅で縦に並んでいる寂しい大人達の顔・顔・顔・顔…
まるでそれはだんご4兄弟…チョンマン・ウシク・テソン・テプン…
「す・すごい。生で見ちゃったよぉ…」
「テソン、す・すごいパワーアップしてるな、チーフ…」
「あぁ…ここまでとはな…」
「何だよ何だよ…やっぱり唾べちょべちょじゃねえかぁ」
『見た?』舞台裏天井にサインを送るテソン
『もちろん!』サインを受ける闇夜
「ねっ?あれが見本です(^_^)」
「お・俺は…出来ない…」
「そっ…じゃ、やっぱりパン屋から始めようよ…愛が見つかるかもしれないよ?」
「くどい!」
「…@@」
決意 ぴかろん
僕は夢を見ているんだろうか?
これは悪夢?それとも…
あの人の胸の中で僕は何も言えずにいた
何も考えられずにただあの人の香りを胸一杯に吸っていた
好き…
目の奥がツゥンと痛む
喉の、胸の、体の奥から熱い塊がこみあげてくる
僕の、震えだした肩をあの人は優しく抱きしめる
僕の、震えだした唇を、あの人の指は、そっとなぞる
「離したくない…」
熱く潤んだ瞳で僕を見つめ、あの人の手は僕の顎を掴む
その瞳の奥がためらいで揺れているのを、僕は見逃さない
このままでいれば、やがて一つになれるのだろう
けれど、いけない
僕はありったけの理性を集中させてあの人から顔をそむけた
「…テジュンさん…」
「貴方は僕に…何と言いました?」
「…」
「僕にその世界は向いていないと、そう言いましたよね」
「…」
「サシで勝負する事はできないと…そう突き放した」
「ああ…けど」
「けど?でも?何ですか?どれだけ僕を惑わせたら気が済むの?ほんの二時間前に突き放したばかりなのにもうこんな…」
「あれは勝負の話だ。今は違う!俺の…正直な気持ちなんだ…」
「貴方から友達でいようと言った。だから僕は…。貴方が『交われば後は離れていく』と言った!
だから僕は…平行線であっても…永遠に貴方と関わりたいと…遠くであっても貴方を…思っていたいと…そう決心したのに!」
「確かに言ったさ!あの瞬間は!けど今は違う。気づいたんだ!アンタは、大切な人だって。本当に大切な人なんだって…」
「…」
「友達でいようと決心した?そのすぐ後にこのザマか?何だよ、こんなに荒れて…
万年筆までへし折って…。俺達の証じゃなかったのか?」
「辛いんだ!」
「…」
「貴方はつれない…」
「テジュン…」
「ある人が言っていた。貴方はゲームを楽しんでいるに違いないと…」
「何?」
「警戒しても警戒しても、貴方は僕の心に踏み込んでくる!どうしようもなく…」
「…」
「解ってる!それは僕が貴方を求めているからだって…」
僕は、泣いていた
あの人も、泣いていた
あの人は僕の額に自分の額をくっつけて、ごめんと言いながら泣いていた
暫くして僕達は、ベッドに座り、凭れあってBHCの上映映画を見た
美しい物語…
僕は子犬が羨ましかった
子犬になりたいな…
そう呟くと、あの人は
俺は…鷹なんだ…
と返した
鷹?
そう、貪欲なんだ…あれも…これも…手に入れたい…
ああ…
チニ君の事だとすぐに解った
チクリと胸が痛む
けれど彼には幸せになって欲しい
僕は笑顔を作ると彼にこう言った
「今だけ…このお祭りの間だけ…僕はそれでいい」
あの人はその言葉を聞くと、一瞬泣き出すように顔をしかめて、そして僕を抱きしめた
僕は…目を閉じた…
不安 妄想省家政婦mayoさん
「あの…」
「パン屋はやらんぞ!」
「そうじゃなくって…」
「何だ」
「あなたにとっての危機が訪れるかもしれないから忠告しておきます」
「危機?どこの組織だ。言え!」
「ホワイトナイト…」(…ブラックナイトだなぁ(^^;))
「!!?白夜か?ピョートルめ…」
「違う違う。白夜倶楽部とは関係ない…」
「聞いたことない組織だ。武器は何だ。戦略は何だ」(武器はキラースマイル?妖しい視線?戦略モグモグ?…言えないよぉ(^^;))
「怪しい武器は持ってません。戦略はその時その時変えてきます。実に巧みです」
「進入経路は?」
「もう潜伏しています…」
「な・何?!」
「まだ具体的には動いてません。ただある意味あなたは狙われてる」(親鳥、鷹がひとりで狙うのか、組んでくるのか…わからないしな…)
「武器を持ってない奴が、なにで俺と張り合うつもりなんだ」
「あの…命を落とすような事ではありませんから」
「どういうことなんだ…」
「そのうちわかるでしょう…さっき見たものがきっと役に立つ…」(かな?…上手くないからなぁ…心配だなぁ)
「いったい…俺に身に何が起こるんだ…」
「大丈夫ですよ。闇夜も捨てたもんじゃないですから」
「お前の『覗き』が役に立つものか!」
「もし…環境変えたくなったら…」
「お前はどうしても俺をパン屋にしたいのか!」
「はい。きっとその時が来ますって。ホントは…ちょっとやってもいいかな?って思ってる…」
「ったく…お前は…」
痛み 足バンさん
ホテル庭のベンチ。ひとりぼんやり座っているテス
テソン:おい、大丈夫か?
テス:え?あ、テソンさん…
テソ:その…
テス:ミンチョルさんのことでしょ?大丈夫ですよ
テソ:大丈夫って顔じゃないぞ
テス:…
テソ:辛いんだろう?
テス:…
テソ:ほら、飲めよ、梅茶
テス:僕にかまわないで。テソンさん忙しいでしょ
テソ:なんか気になってさ
テス:僕…チーフの記憶を取り戻す方法ばかり考えてた…あの階段から落ちたらその衝撃でどうかなるかなとか…
テソ:おまえ…
テス:ふふ、大丈夫。突き落としたりしませんよ
今は…そうだな…僕は自分の記憶をなくしたい…へへ、なんてね
ミンチョル:なにばかなことを言ってるんだ
いつの間にか背後の木に寄りかかっていたミンチョル
テス:ミ…
テソ:あ、さて、ちょっと現場行ってきます
2人を気にしながら歩き出すテソン
ベンチに腰を下ろすミンチョル。遠くの一点を見つめるテス
ミン:オールインの舞台のキャストに入っていないみたいだな
テス:はい。裏方やります
ミン:なにか僕に言いたいことがあるんじゃないかな?
テス:ありません
ミン:テス…
テス:ありません!
立ち上がろうとするテスの腕をつかむミンチョル。涙が溢れ出すテス
テス:お願いです。これ以上みじめにさせないで下さい。出発前に約束した通り仕事もちゃんとやります
帰ったらヘルプにも行きます。もうやめるなんて言いません。だから放っておいて下さい
ミン:テス…
遠くから走りよるギョンビンの姿
ギョ:ミンチョルさん捜しましたよ。終わりました。食事に行けます
ミン:ああ
うつむいたままミンチョルの手を振りほどくテス。凝視するギョンビン
テス:失礼します
足早に去るテス。後ろ姿を見つめるミンチョル。寄り添い座るギョンビン
肩を抱くミンチョル
ギョ:いつも気にしているんですね
ミン:ん?なに?
ギョ:彼のこと
ミン:記憶をなくす前、僕は彼に安らぎを求めていた
その事自体は憶えていないが、わかる気がする…優しいんだ彼は。あんな目をしているけど
ギョ:彼を見る目が優しいですね。やけます
ミン:ばか
ギョンビンを抱き寄せ髪に顔をうずめながら、テスが走り去った方向に視線をおくるミンチョル
遠くからミンチョルとギョンビンを見ているジョン将軍
将軍:おい,チン。このところBHCの連中おかしくないか?
チン:は?
将軍:いつも誰かと誰かがこそこそいちゃついておるぞ
チン:それが今様にございます。ホストでございますし、それはそれ色々ございましょう
将軍:今様か。それが時流ならばわたしもヨソルと…
チン:おやめ下さいませ!
将軍:この際男組とやらも総当たり戦で…
チン:おやめ下さいませっ!
将軍:いっそのこと祭りも乱…
スパコーンッ!
チン:おやめ下さいませっ!最近将軍のキャラが変わってますぞ!
将軍:痛いな。冗談だよもぉ
今だけは ぴかろん
震えている。俺の腕の中で
「今だけ…お祭りの間だけ…僕はそれでいい…」
俺は何も言えなかった。彼は…俺の欲望を理解している…。あれもこれも欲しいという貪欲な俺を…
目を瞑って震えながら、彼は俺に全てを預けている
こんな俺に全てを…
熱くこみあげる涙を堪えきれず、俺は彼の頬に涙を落としてしまった
瞬間、彼は目をあけて俺を見た
そしてその優しい手で俺の涙を拭った
その優しい手は俺のシャツのボタンにかかった
俺の目はその優しい指を追っていた
一つ、二つ、三つ…
そこまで外すと彼の指は宙を泳いだ
愛しい指
俺の手が荒々しく彼の指を掴んだ
はっと息を呑んだのが解る
俺はその指に口付けした
俺の指は彼のシャツのボタンに向かった
だが、彼の優しい手は、俺の指の行く手を阻む
なぜ?
仕事が…
ああ…
そうだった…。どんな時でも仕事が優先…。そんな彼の姿が好きだったんだ…。けど
なぜ俺のシャツのボタンを?
ふふふ
悪戯っぽく笑うその笑顔が胸をしめつける
何?
苦しそうに見えたから…ふふ…ふふふ
そう言って立ち上がりかけた彼の腕を俺は引っ張った
あっ
小さく叫び声をあげて俺に向かって倒れ込む彼を、俺はきつく抱きしめた
もう一度顔を見せて…
俺は彼の顔を両手で挟んで、全てを、忘れないように全てを目で愛撫した
彼の額に、瞼に、その長い睫毛に口付けを落とし
彼の瞳から溢れ出る涙を、あの映画のように唇で掬い取ろうとしたその時
ドアが激しく叩かれた
誰だ?俺が出る!テジュンはここにいろ!
テジュンと呼び捨てにしてしまった…
彼は少し驚いていたようだ
イ…ナ…
彼もまた、俺を呼び捨てにした
俺は彼を振り返りながらドアに近づき、それを開けた
「テジ!パパだよ!」
「テプン…」
「イナ!なんでお前がここに?」
「…上映許可を貰いに来てたんだよ。お前こそ何でここへ」
「テジに会いたくてさ」
「彼はテジュンだ!テジじゃない!」
「…解ってるよ…でもテジにそっくりなんだ…顔みるくらい構わないだろ?」
「…テジュン…さん、すみません、テプンのバカが…」
取り繕う様に「さん」をつけ、彼の方を残念そうに見ると、彼は寂しそうな笑顔を作り、構いませんよと言った
俺はその場をテプンに譲り、部屋を出て行く事にした
ドアを閉める前に俺は、彼だけに解るように万年筆に口付けをした
彼の微笑みから寂しさが消えた
競争 オリーさん
「ドンジュン、いい加減に起きろ」
「ほっといてよ」
「午後の練習が始まるぞ」
「そんな気分じゃないよ」
「ミンチョルとギョンビンは出てたぞ」
「あの2人の話なんか聞きたくないよ」
「これ以上勝手なマネするな」
「チーフったらどうかしてるよ。あんなぽっと出の犬っころに目つりあげちゃってさ」
「強がりを言うな。お前だってただの犬っころじゃないってわかってるからあんなマネしたんだろうが」
「スヒョンさんこそあいつのこと狙ってたくせに」
「俺は引き際はわきまえてる。大人だからな」
「ちぇっ、すっかり立ち直っちゃって」
「さあ、服を着ろ」
「僕に命令しないで」
「さっさと支度するんだ」
「ねえ、ほんとに立ち直っちゃったの?」
「黙れ」
「面白くない!編物しないの?」
「もう飽きた。メリヤス編みもゴム編みも完璧だからな」
「ふーん、ねえ昨日あいつと間違えてキスした時、すっごい素敵だったよ」
「当たり前だ、俺はだてに天使をやってるわけじゃない」
「僕だとわかっててもあんな風にしてくれた?」
「うるさい、早くしろ」
「こわいスヒョンさんもやっぱりいいなぁ…」
「お前は懲りるという事を知らないのか」
「ねえ、昨日あの部屋にいた人、黒蜘蛛。どこのクラブだろう」
「知らん」
「厨房のあの人なら知ってるよね。ふふっ」
「いい加減にしろ」
「スヒョンさんだって狙ってるくせに。部屋出る前に何て言ったのさ」
「べ、別に。迷惑かけました、って言っただけだ」
「嘘つき!口説いてたんでしょ」
「バカ!」
「ねえ、競争しようか。どっちがあの人モノにできるか」
「…」
「あんなタイプ初めてだなあ…チーフともスヒョンさんとも違う。ふふっ」
「お前、無口な弟と一緒に階段落ちでもやったらどうだ。目がさめるぞ」
「やだよ、痛いことは。ね、どっちが勝っても恨みっこなしでどう?」
「とにかく急げ。行くぞ」
「あの人も練習場にいるかもね、よし!何だかやる気が出てきた」
「まったく…」
「スヒョンさん、早く行こう。何してるの」
「ドンジュン、待て!」『まずいなあ、目のつけどころが一緒だ…』
変身 妄想省家政婦mayoさん
♪叩けボンゴ 響けサンバ〜♪…胸にあふれるこのリズム〜♪
オ〜レ オレ〜 ユ・リ・キ・ム サンバ〜オ・レ!♪
「はぁはぁはぁ…ピョートル…ふぅふぅ…わしは駄目だ…2番まで持たない…」
「もうぉ〜だから少し痩せて下さいって言ったでしょう〜」
「無理だ…ホテルの食事は美味い…」
「もぉぅ…僕たちはリマリオダンスなんですから…」
バタン☆「連れてきたぞ」
「お?黒蜘蛛…あ、まよぴー…遅いから心配したんだ…大丈夫だった?」
「男組の弟に押さえられたのを俺が助けた」
「えっ?生に出くわしたのか?」
「目が泳いでよだれも出そうな顔だったな…」
「ちっ…どう?」
「あぁ…父さんが息切れして…間奏の踊りも2番も駄目だ…僕たちはリマリオだし…」
ピョートルに目配せのまよぴー…
「お、黒蜘蛛!お前、間奏と2番やれ!ラストで父さんとフィニッシュ」
「な・何?こんなもの出来るか!」
「いや、今のお前なら出来る!まよぴー、衣装!」「アラッソ〜」
「な・何する…」
皆で黒蜘蛛を押さえ込み着替えさせる…
いぶし銀の生地に金のラメ入りの着物。帯は金色に銀のラメ
「うわっ、先輩、いいっすよ〜格好いいよな、チンソク」
「うん、ヨンジュン…さすがカリスマです。オーラがありますよ」
「髪は…んっと…オールバックにして…これを…」
「うわっ…蜘蛛だ…」
「冬ソナ@チェリンのヘアアクセサリー蜘蛛版…ピカピカしていいでしょ?」
「ぉ..お前ら…」
「シロ?(嫌?)…パン屋?」
「…くそっ…」
「よし!間奏の踊りのチェック〜間奏〜腕は10:10、表情大事。蜘蛛!表情が怖い!」
「…わ・笑えないんだ…俺は…そういうのに慣れてない」
「感情を隠すのは得意?駄目駄目〜♪胸にあふれるこのリズム〜恋せよアミーゴ!♪ファイティ〜ン!」
「右左に腰振って4歩左に移動〜10:10、お〜蜘蛛!腰振りのキレがいいぞぉ〜左から中央に寄って…」
「右足2回振り出して…右手上げて…おい!目線はこっちか?!」
「黒蜘蛛!いい感じだ。イケるじゃないか!2番〜」
「♪はずむ南の恋の夜…愛を囁き踊れば…風に誘われ歌い出すぅ〜サンバ・ビバ・サンバ…黒蜘蛛サンバ…」
「まよぴー、黒蜘蛛サンバって暗いよなぁ…」
「ん〜テックヒョン・サンバ?サンバ・タランチェラ?」
「蜘蛛!どっちがいい?」
「…テックヒョン・サンバにしろ」
「オッケー!なんか…蜘蛛変わったな。何かあったのか?」
「ん?ん〜刺激的なの見ちゃったからね〜」
「刺激的?」
「どう?いい気分でしょ?」
「あぁ…俺の心の中の熱いものが…こう…なんていうか…突き上げてくる」
「その調子〜…♪恋せよアミーゴ〜〜♪♪」
「…恋はいらん」
「またぁ…その気になれば1人や2人…翻弄出来る!…かな?」
「おい!俺は仕事を全うするだけだ!」
「もう〜だから狙われるんだから…あ、マフラーくれる人がいても、受け取っちゃだめよ」
「マフラー?」
「うん…フェロモンが詰まってる…」
「??…」
発覚? 足バンさん
僕は彷徨っている
悲しみ。怒り。落胆。焦燥。…嫉妬
捨てたつもりだった。自分のための感情など
あの人が本当の自分を取り戻すために、二度と同じ寂しい日々をおくることのないように、もう一度自分と向き合ってほしかった
そのためには僕は影でなんでもするつもりだった
そのために僕は自分の欲望を封じ込めた…
たとえあの人の心が他にあっても耐えられる…つもりだった
でも今、涙が止まらない
あの人の声が響く。さらりとかかる前髪の向こうの瞳を思い出す
つかまれた腕の感触が熱く残っている
もう逃げないと約束したのに…逃げたい
ここから逃げ出してしまいたい
心が痛い…
テプン:え?なに?痛いの?どこが?
テス:は…テプンさん…なんでもないよ。ひとりごと
テプ:もぉ元気ないなぁ!ほら、肉まん食うか?
テス:テプンさんが食べ物くれるなんて…へんなの
テプ:ここんとこみんな元気なくってまいってんだよ!
テス:みんな?
テプ:そうだよ。イナまで沈み込んじゃってさ。ドンジュンは部屋から出てこないし
テソンはやたら気をつかって忙しそうだし
テス:テソンさんも仕切ってくれてるからね
テプ:やっぱりあのべちょべろ上映、気がすすまないけどなぁ
テス:べちょ?なに?
テプ:あ!あぁ?いや…
テス:なに?
テプ:んと…
テス:なに隠してるんです?
テプ:詳しいことはイナが…あの…おい、テスってば!
テス:もういい!自分で聞いて来る!
テプ:じゃ、おまえも上映反対って言ってこいよー!おい、肉まんいらないのかー!
張りつめた空気
ぴったりよりそいソファに座る二人の男
サンヒョクパパ:もっとこっちに
ユジンパパ:でも…
サンパパ:いやですか?
ユジパパ:こんな私でいいんですか。こんな影の薄い私で
サンパパ:関係ない。あなたはいつも遠くから優しく人を包んでいる。そんなあなたが好きなんです
ユジパパ:でも…でも…
キム次長:カァーット!だめだめぇ!硬いよ二人とも!
サンパパ:次長、無理ありますよ、これって
キム:他店じゃそういうパターンで来るって噂なんですよー!なんとかうちらも頑張んなくちゃー!
ホスト祭りなんすから!ね、理事もなんとか言ってくださいよぉ!
ミニョン:次長の気持ちもわかりますが、コマーシャル的には逆効果じゃないですか
キム:だって理事もサンヒョクも嫌だって言うんですもん
サンヒョク:僕は絶対嫌ですよ!歌もある!
ミニ:僕もごめんだ
キム:まったく看板の二人がこれだものなぁ!
サン:お兄さんは何をするつもりなの?
ミニ:なにも。僕は立っているだけで絵になる
サン:そんな。なんのため参加したのさ
ミニ:好奇心と想像力だ。そういえばお前の衣装見たが…派手じゃないか?
サン:いきなりコーディネートしてくれるって人が現れて…
ミニ:あまりハメを外さないようにな
サン:お兄さんこそもう中庭で風邪引かないでね!
キム:あぁぁ、もうその辺で!仲悪いのバレないようにしてくださいよ、もぉ!
望むもの ぴかろん
テジ、この部屋めちゃくちゃ危ないぞ。パパと一緒に片づけよう…
僕が自分の息子にそっくりだと言って、テプンさんは目を細める
これ折れてるな、捨てるぞ
あっ!それは!
なんだ、大事なものなの?なんで折れたのさ
転んじゃって…
こっち来るなテジ、ガラスの破片がいっぱいだ!掃除機借りてくる、動くんじゃないぞ
僕は折れた万年筆を拾い上げた
インクが漏れている
手が真っ青になった
馬鹿だな、僕は…
へし折ったあの時の、その感情のままでいれば…
チニ君、すまない。少しだけ…少しだけ愛を分けてくれないか…
ガラスの破片を拾いながら、僕は、いつもニコニコとよく働くチニ君の顔を思い浮かべた
つっ
気をつけていたのに、指を切ってしまった…
罰…
あの人を愛した罰だ…
がーがーがー
「…!…!」
聞こえないよテプンさん、掃除機の音で
ピシュルルルゥン
「テジ!血とインクだらけじゃねぇか!早く医務室行ってこい!ここは俺が片づけとくから、早く!」
「あ、はい…」
ハンカチで指を押さえて僕は廊下に出た
白いハンカチはすぐに赤く染まった
あつっ
あの人が僕の腕を掴む
切ったのか?
あ、うん。ガラス拾ってて…
テプンに任せればよかったのに!ばか!
…
あの人はハンカチをそっと外すと、血の流れ出る僕の指を口に咥えた
…んっ!
…
やめてくださ…
だめだ。どんどん血が出てくる…行こう!
一人で!一人で行けます…
…一緒に行きたいんだ…
イナさ…イナ…
医務室で手当てを受けた後、部屋に戻った僕達…
『ガラスを触る時は気をつけてね、万年筆大事にしろよ。パパテプンより…P.S.テジュンさん、有難う』
机の上に万年筆が置かれていた
折れた所に包帯が巻いてある
テプンらしいな…
大事にしなくちゃ…
僕は、包帯を巻いた万年筆を、包帯を巻いた指でシャツのポケットに差し込んだ
僕達はまた、寄り添った
イナ、チニ君の事を…
言うな…
彼女は僕の大切な部下だ。彼女を傷つけるような事だけはしたくない
解ってる…俺だって…
彼女は大切だとあの人は言った
あれもこれも手に入れたい…鷹なんだ、俺は
もう一度そう言った
虫が好すぎるよ、手に入れるのは彼女だけでいいだろ?
僕は俯いてそう呟いた
テジュン…君はそれでいいの?
彼の瞳が揺れた
欲しいくせに…
彼は怒ったように僕を見た
俺が欲しいくせに…
欲しくなんかない!欲しくなんか…
俺は…欲しい…
一瞬俺を見て、彼はすぐに顔を背けた
顎を捉えようとしても体を翻して俺から逃げようとする
俺は後ろから、彼を羽交い締めにした
チニ君に何て言う気なんだ!
動きの取れない体勢で僕は、必死で彼の良心に呼びかけた
何も言わない…
え?
言うつもりはない…
…僕が「今だけ」と言ったから?
そうでなくても、言うつもりは、ない…
僕の耳元でそう囁いてそれから…僕の耳たぶを噛んだ
彼は崩れ落ちそうになった
けれど俺は耳への愛撫を辞めなかった
小さく震えた吐息が、彼の唇から漏れている
俺の目はその唇を求めていた
そっと顎を掴まえ俺の方に顔を向け、俺はその吐息の漏れる唇に口付けしようとした
チッ『総支配人!至急中庭に来てください』
チニさんの声だった
チッ『すぐ行く』
離れようとする彼、掴まえようとする俺
今から僕はチニ君に会うんだ!
構うもんか!
イナ…
… …
相棒の報告 妄想省家政婦mayoさん
「持ってきたよ。梅茶。出歩かない方がいいんじゃない?」
「ん…大丈夫。同志が…あそこにいる…」
「は?同志?って誰よ…オモオモ…蜘蛛…」
少し離れて立っている黒蜘蛛
「そう言わないと怒る…」
「ははは…ボディーガードみたいだ…」
「テスさん、どう?」
「かなり参ってるな…あ、テプンがちょっと口すべらしたみたいだ」
「イナさんに聞くって?」
「あぁ…」
「イナさんとテジュンさんだけど…あの後の…」
「見つけたよ。僕しか知らない。とりあえずさっきまでのディスクは…これだ」
「テソンさんは見つけると思った。さっきあわててて…」
「はは…元は消しておいた。さすがにこれは上映できないだろう?」
「うん…テジュンさんの仕事もあるからね…」
「後で記念にプレゼントすればいいさ。それと例の2人が動きだした」
「ふふ…そうなの…」
「白夜倶楽部は舞台練習しないのか?手ぐすね引いて待ってるぞ」
「ピョートルさん、本番でいきなり見せるって作戦」
「そりゃいいや。2人で捜してるだろうな…そこの同志、一緒に梅茶飲もう〜身体にいいよ」
「…お前は、同志の同志か?」
「僕はテソン。闇夜の相棒。きっとあなたの役にも立つよ。よろしく」
「お前もBHCの覗き屋か?」
「情報屋って言ってよ」
「同じようなもんだ…」
「あ、僕は料理人だけど、パン屋をやるなら何か力になれると思うよ」
「お・おい!闇夜!何回言ったらわかる!」
テソン&闇夜:肩をすくめながら…「『パン屋はやらん!』…ってか?」
僕の愛 ぴかろん
テジ!テジ!どんどんどん
後少しだったのに…
俺は乱暴にドアを開けた
イナ!何でいっつもテジんとこにいるんだ?
テプン!言っただろう!テジじゃない!テジュンだ!
お前何でシャツのボタン全開なんだ?
うっ…それは…
俺の後ろをすり抜けるように彼はテプンの前に歩み出た
テジ…
どうしたんですか?テプンさん
そう言いながら彼は俺の前でドアを閉めた
「心配になってさ」
「…さっきは片づけ有難うございました」
「他人行儀だな、指は大丈夫?」
「はい」
「あーあ、インクついたまんまだ…」
テプンさんは僕の傷ついた手を取りインクの跡をそっと撫でた
「なあ、テジ…いやテジュンさん。イナ、変だろ?」
「…」
「あんたも見たんだろ?あのベチョベチョ映画」
「ベチョ…ああ…」
「あんな事されたら顔中べとべとして気持ち悪くねぇか?」
「…多分その後シャワー等浴びるんでしょうねぇ」
「なんで?」
「…」
「まあいいや。イナさ、もろ、あの映画の影響受けちゃったみたいでさ…もしかしてテジに変な事してないかと思って」
「テプンさん…」
「あいつ、チニさんと出会ってからとても幸せそうなんだ。なのにさ、自分から…その幸せ壊すんじゃないかって…俺…」
「…」
「それにテジ…テジュンさんを傷つけるんじゃないかって…心配で」
「大丈夫。チニ君は僕の部下でもある。彼女を傷つけるような事はしません。それに…僕達はただの『友達』なんです…」
「ほんと?それ聞いてパパは安心したよテジ」
「ふふ、はいパパ」
テプンさんはニッコリ笑った
「じゃ、俺、行くわ。イナに惑わされないでね」
「…パパ」
「何だテジ」
「助けてくれてありがとう」
テプンさんは頭の上に「?」を一杯くっつけて去って行った
あの映画のせい…
そう…僕が浮ついたのも、あの映画のせいさ…
僕は気を引き締めて彼のいる部屋のドアを開けた
ゴツッ
「てっ」
「プッ何?ドアにへばりついてたの?」
「何話してたんだよ」
「貴方の事」
「何?」
「イナさん…貴方は…鷹なんかじゃない」
「?」
「鷹なんかにはなれない」
「…どういう事?」
「そんな狡猾な人じゃない」
「!」
「僕には解る」
「テジュン…」
「貴方は…やっぱり…りす君だよ」
「ふざけるなよ!俺はあんたが欲しいんだ!」
「僕だって!貴方が欲しい」
「だったら…」
「欲しいと思うよ。けど手に入れたいんじゃない!思うだけだ!それだけで…いいんだ」
「テジュン」
「貴方を幸せにするのはチニ君だ。それは貴方だって解ってるはずだ」
「だから俺は両方手に入れたいと…」
「僕を手に入れたらきっと貴方は…チニ君を諦めてしまう…貴方はそういう人だ」
「…」
「こうやって、一緒に過せた事、僕は忘れない。貴方が僕を求めてくれた事、忘れない」
「祭の間だけ…アンタそう言ったろ?」
「そう。だから後腐れのないようにしたいんだ…」
「後腐れって」
「…チニ君は僕の同僚だ。祭が終わっても僕はチニ君と一緒に仕事しなきゃいけない。もし貴方と何かあったら…」
「…」
「解ってくれるよね?」
「…」
彼は俯いて涙を堪えていた
そんな彼が愛しくてたまらず、僕は彼の背中をそっと抱いた
彼は僕の肩に顔を埋めて声を殺して泣いていた
途切れ途切れにミアネヨという彼の声が聞こえた
イナ…ありがとう
ごめんね…
耐えるということ 足バンさん
舞台袖ー
ドンジュン:あれ?ねえ、テプンさん、練習してるのこれだけ?
テプン:おぉ、ドンジュン…復活したの?
ド:ねぇ、背の高い人、黒蜘蛛って人来てない?
テ:んーっと…ここにはいないけど。なに?
ド:ふぅん…じゃいいや。ね、それなに?
テ:練習風景撮ったやつ
ド:違うよ、これだよ なにこれ。スヒョン?
テ:あぁ、これ?テスと一緒のとこ
ド:なによこれ。スヒョンの肩にもたれちゃって!
テ:なに怒ってんだよ
ド:もういい。ありがと!
スヒョン:ドンジュン、どこ行ってたんだ。すぐいなくなるんだから
ド:つんっ
ス:なんだ。今度はなに怒ってるんだ?
ド:なんでもいいでしょ
ス:よくない。黒蜘蛛見つからなかったのか?
ド:すぐにだって見つかるよ!
ス:ずいぶん張り切ってるな
ド:なんだよ!自分だってテスと仲良くしてるくせに!
ス:…ん?
ド:放してよ!
ス:放さない。妬いてるの?
ド:違うよ!
ス:違わないでしょ
ド:やめてよ
ス:やめない
ド:なによ、スヒョンさんも新しい獲物見つけたんでしょ!
ス:言っておくけど、ドンジュン。俺はお前に散々かき乱されてはいても、一度も落ちたことはないんだからな
ド:う…
ス:俺の手から巣立ったからと言って俺を越えられたと思ったら大間違いだからな
ド:やめて…放して…
ス:…
ド:ん…
イナ:放せよ、スヒョン
二人の後にふらりと立っているイナ
ス:…なんだよ
イ:嫌がってんだろう!
ド:どうしたの、イナさん。怖い顔して…
イ:どうもしねぇよ。いいから離れろ
ス:虫の居所が悪そうだな
あたりを捜しながら、イナを見つけ走りよるテス
テ:イナさん!イナさん!
イ:…なんだ
テ:ねぇ、なにか僕に隠してることない?
イ:なにが
テ:上映とかって。なに?
イ:さぁな
ド:もしかしてミンチョルさんのこと?
イ:ドンジュン!
ス:なんだよ、それ
ド:だってあの時カメラ見つけちゃったもん。ミンチョルさんの寝室で
くすっ。あのあとギョンビンとどうなったかきっと全部…
イ:ドンジュン,いい加減にしろ!
テ:…
イ:いいか、テス。映画だ
ド:映画じゃないよ!
イ:おい、スヒョン!そいつを向こうに連れて行け!
イ:テス、早まるなよ
テ:ミンチョルさん知らないんでしょ?
イ:あぁ
テ:じゃぁ、教えてあげて。ミンチョルさん傷ついたら嫌だ…
イ:テス…また…泣くなよ…
テ:僕のことはいいから…
わかるよ…お前の気持ち…今の俺には…
しばらくの間テスはイナの胸で泣いていた
イナはテジュンのありがとうという消え入りそうな声を思い出し、涙をこらえていた
兄さんの恋人 オリーさん
「ソンジェ、どうした顔色が悪いぞ」
「に、兄さん!何でもないよ」
「そうか、ならいいが。歌の方はうまくいってるのか」
「ああ、大丈夫さ」
「ミンチョルさん、買って来ました。でもゴディバが売り切れでモンブランなんですけど」
「ミン、ありがとう。何でもいいんだ。どうせ彼は何でも持ってる。見舞いは形だけでいい」
「兄さん、その人…一緒の部屋にいる人だよね」
「ちゃんと紹介してなかったな。新人のミン君。ミン、僕の弟のソンジェだ」
「ミン・ギョンビンです。よろしく」
「ソンジェです」
「さあ、行こうか。あまり時間がない」
「はいっ」
「兄さん、ちょっと待って。彼とはどういう関係なの?」
「お前には関係ないだろう」
「だって一緒に寝てるんだろ」
「悪いか?」
「それって、変じゃないか」
「お前にとやかく言われたくない。僕とミンの問題だ」
「そうだけど。ヨンスさんは知ってるの?」
「ヨンスには連絡するなとお前に言われてる。お前が話すと言ってたじゃないか」
「そうだけど。まさか、ほんとなの?」
「ミンチョルさん、僕のことは…」
「いいんだ、ミン。いずれヨンスにはちゃんと話す。君は心配しなくていい」
「家を出たばっかりなのに、勝手なことしてひどいじゃないか」
「勝手なこと?」
「そうさ、またヨンスさんを傷つけた」
「ふっー。お前と話してるときりがない。ヨンスにはきちんと説明するつもりだ」
「ひどいよ、兄さん」
「時間がないんだ。ミン行こう」
「ちょっと待って。まだ話は終わってない。どこ行くの?」
「ソンジュ君の見舞いだ。風邪を引いたそうだから」
「え…ソ、ソンジュってあのヘヴンの?」
「あそこは人手がないから何かと大変だろう。様子を見てやらないと」
「そ、そんなラ、ライバル店の心配なんかしなくていいだろう」
「わかってないな。店同士はライバルだが、同業者だ。困った時は助け合うものだ」
「ミ、ミニョンさんも風邪ひいたって言ってた。そっちに行けば?」
「彼に助けはいらない。鼻水たらして熱でフラフラしてても風邪など引いてないという人だ」
「だったらソンジュ君だってほっておきなよ」
「お前に指図される覚えはない」
「あ、僕がかわりに行ってあげるよ」
「お前ではBHCの名代にならない」
「じゃ、一緒に行く。いや、やめとく、いや一緒に…」
「何を訳のわからない事言ってるんだ。ミン、行こう」
「はいっ」
「待って、待ってよ。兄さん。彼には会わない方が…一緒に…いや…やめとく…」
「ミンチョルさん…」
「おかしな奴だ。気にしないでくれ」
「いえ、あの、僕の事はあまり重荷に感じないでください」
「いいんだ。君の気にすることじゃない」
「兄さん!待ってよ!いや、待たないで!いや一緒に…どうしよう…」
予兆 妄想省家政婦mayoさん
『きっと、きっと…またあの人達が盗聴したんだ…上映はさせない!…いた!』
「テソンさん!あ、mayoさんも!」
「ど・どうした?テス…」
「また、また…ふたりで…ミンチョルさんに何かしたの?」
「な・何のことだ…テス」
「とぼけないでよ…どうして?どうして、いつも覗いてばかりなの?」
「テスさん…」
「ミンチョルさん知らないんでしょ?映画か何だか知らないけど」
「…」
「僕は…自分の欲望も心の奥にずっと閉じこめて頑張って耐えてきた…」
「うん。わかってるぞ、テス」
「テソンさん、わかってないよ!」
「…テス…」
テソンが目にいっぱい涙をためたテスを押さえようとするが、手をふりほどくテス
「ミンチョルさんがまた傷つくの…僕は耐えられない!…上映なんてやめて!」
タバコをふかしながら空をぼんやりと見つめ、じっと聞いていた黒蜘蛛
テスの方に振り返りおもむろに口を開く…
「お前…」
「テソンさん、誰?この人…」
「オ?…おぉ…僕らの…友達だ…」
「あんたも覗きの仲間なの!」
黒蜘蛛の目の中に自分と同じ苦悩を見つけ、のろのろと黒蜘蛛に近づくテス
「…ひくっ…ぐすっ…」
テスの両肩に手をかける黒蜘蛛…嗚咽の止まらないテス
「泣くな…」
黒蜘蛛のバリトンボイスが響く…
「あの…」
「ん?何だ。言ってみろ」
「僕は…」
「お前の欲望は触れて欲しいことだけか?交わることだけか?」
「ぼ・僕だって、優しく抱かれたい…包まれたいよ…」
「遠くから守るのも愛だ。たとえ報われなくても。お前とミンチョルは結ばれない運命だ」
「ずっと影のように生きろって言うの?それがどれだけ辛いかわかってるんでしょ?」
「たとえそうだとしても、ミンチョルの心の隅にはお前がいるはずだ」
「隅っこなんか嫌だ」
「わからん奴だな…」
「…」
「その方がずっとしこりになってミンチョルの心に残る…それは消えることはないだろう」
「…うん…」
「わかったら行け!」
「あの…」「何だ」
「名前は?」「黒蜘蛛」
テスを振り返えさせ、背中を押す黒蜘蛛
テスが去った後タバコに火を付けテソン&闇夜の方をチラッと見て満足そうに煙をふかす黒蜘蛛
ぽかぁ〜〜ん(*o*)と口を開けて2人の会話を聞いていたテソン…
テスが可哀想でたまらないが…2人の会話に笑いをこらえるのに必死な闇夜(^^;)
『ちょ・ちょっとぉ〜ど・どうしたんだ?黒蜘蛛…』
『くっくく…少しは良い方向になってきたかな…』
選択肢 ぴかろん
「遅いわよ総支配人!」
「すまない。で、問題は?」
「男組の方々が、また中庭を掘り返し始めたの…」
「!以前あれほど注意したのに!ドンゴン氏は何をしている!統率力がないのか!」
「…総支配人?」
「失礼、男組の皆さん、総支配人のハン・テジュンです」
「よぉ、兄ちゃん」
「何をしておいでですか?」
「何って…塹壕を…」
「前にも言ったはずです、止めるようにと」
「でも暇なんだよ俺達」
「…即刻埋め直さないと皆さんのご招待は取り消します。個人宛にそれぞれ10万ウォン請求、並びに損害賠償請求致しますが、よろしいすか?!」
「えっ10万ウォン?」
「そんな金ないよぉ」
「当ホテルはこれでも破格の値段です!食費だけですからね。それでもサービスしているんですよ!あなた方の食費だけで、一日200万ウォンの赤字です!」
「こらぁっ貴様等っ何をしているぅ」
「ドンゴンさん、これはどういう事ですか!私が以前に申し上げた事、全くお解り頂けなかったようだ」
「すっすまない、弟の事で少し気が滅入っていたので、今後このような事のないよう気をつける。申し訳なかった」
「すぐに元どおりにしてください!」
「総支配人、かっこよかったわ。いつもと全然違う…どうしたんです?何かあったの?」
「チニ君…」
「なんだか…渋いわ…」
「からかうな…仕事に戻ろう」
「…なんかあったでしょ…イナさんと…」
どきいん
「何かって?」
「抱き合った?」
「え?」
「そして落ちた?」
「…」
「ウフフ、階段落ちしたんでしょ?」
「…あ、ああ…」
「痛かった?」
「いや、僕は大丈夫だったよ。僕より彼が」ずきん
「イナさん、総支配人を守ってくれたの?いいなぁ〜ずるいぞ、総支配人!」
「…すまん…」ずきんずきん
「…総支配人」
「何だ」
「イナさんのこと、好きなんでしょ」
「えっ!」
「…顔に描いてあるわ。イナさんもここの所少し変だった…階段落ちしてからね…」
「チニ君、何言ってるの?」
「…私、パパを迎えにソプチコジまで行かなきゃいけないんです。今から24時間だけ休暇をください。忙しい時にすみませんが…その間、イナさんをお願いね」
「チニ君…困るよ、何か勘違いしてないかな?」
「平気よ、私。イナさんが誰を好きでも…。それでも私はイナさんが好きなの…」
「チニ君、違うよ、僕とイナ君は友達なんだから…」
「解かるのよ、総支配人の様子見てたら全部…」
「チニ君!いい加減にしないか!」
「パパを迎えに行かせてください…ね?」
「チニ君!」
『クリンちゃんへ
私、パパを迎えにヘリでソプチコジまで行ってきます
その間、演歌さんをヨロシクね。演歌さんはクリンちゃんにぞっこんですあ、知ってるわよね…
クリンちゃんも、プリンより演歌さんのほうが好き?
…それでも構わない。私はそれでもイナさんが好き
ソプチコジから帰った時、貴方が色々な事を話してくれるといいな…。プリン』
「チニさん!チニさ…」
チニを乗せたヘリがはるか彼方へと飛んでいった
決別 足バンさん
総支配人室ー
ハン総支配人:では社長の挨拶に続きオープニング挨拶。
その後衛星回線のお客様には店舗の紹介がありますので、その間オープニングセレモニーをはじめ…えぇと…
ミンチョル:大丈夫ですか?
ハ:え?
ミ:なにか気がかりなことでも?
ハ:いや、お気になさらずに
ミ:手…怪我されたんですか?
ハ:あ、えぇ、ちょっと
ミ:イナが…
ハ:えっ?
ミ:イナがあなたのことを、どうしたわけか賭博組織の一員などと勘違いして…いろいろご迷惑を掛けました
ハ:あ…
ミ:あいつは昔その世界で死ぬような思いをしたんで…あなたを巻き込みたくないと…あなたには誠実なホテルマンでいてほしいと
ハ:あぁ…ふふ…そう…だったんですか…
ミ:あいつは昔ひどい失恋をしてやっと立ち直ったところです。チニさんのおかげで
ハ:…ええ…
ミ:あいつはあなたに初めて会った頃から、あなたの仕事に対する姿勢を尊敬しています
ハ:…
ミ:祭りの後も、よき友人として支えてやってください
ハ:…はい…もちろんです…
苦痛の色を漂わせ指の包帯を目見つめるテジュン
そのわずかな表情を読みとるミンチョル
ノックの音ードアを開けるテジュン
ハ:テスさん…
テ:あ…すみません。お忙しいところ
ハ:どうぞ、今ちょうどミ…
テ:あ、ここでけっこうです。あの…テープの件なんですが…
ハ:え?
テ:お願いです。ミンチョルさんまだ知らないんです
ハ:あ…あの…
テ:上映するなら本人達の許可をとって下さい
ハ:…
テ:ミンチョルさんに…もう傷ついてほしくないんです。すみません。個人的なことです
ハ:…
テ:それだけです。それからこんなお願いに来たって、ミンチョルさんには言わないで下さい。僕は…
大きく見開かれるテスの目。テジュンの背後のソファからゆっくり立ち上がるミンチョル
ミ:今そのテープを見せていただきましょうか
テ:…
ハ:はい…
入口に近づき、テスの腕を掴み引き入れドアを閉めるミンチョル
ソファに座り、顔色を変えず映し出される映像を見るミンチョル
デスクチェアに腰を下ろし黙っているテジュン
ドアの前にたたずみ無表情で画面を見るテス
映像修了
ミ:…
ハ:…
ミ:いいでしょう。祭りに支障なければ上映して下さい
ハ:はい
ミ:たいへん魅力的な映像だ
ゆっくり振り返るミンチョル
まったく表情を変えないプラスティックのような瞳のテス
遠くから守るのも愛だ。たとえ報われなくても。お前とミンチョルは結ばれない運命だー黒蜘蛛の声がこだまする
テ:よかったテジュンさん。許可が出たみたい
小さく微笑んで出て行くテス
立ち上がりそうになった自分を制し、目を閉じるミンチョル
テジュンは出て行ったテスの後ろ姿に自分を重ねていた
僕の子犬を… オリーさん
「あ、あなたは…」
「ミンチョルさんなら、総支配人の部屋にいたよ」
「ありがとう。あの…」
「何か用?」
「あなたも彼の事…」
「終わった事だよ。ミンチョルさんは君を選んだ」
「…」
「あの映画も上映OKだって言ってた」
「映画?」
「よかったよ。悔しいけど」
「もし僕が選ばれたのならそれは傷のせいです」
「傷?」
「僕はある事で傷を持ってる。あの人はそれに気づいてくれた」
「…」
「どんな傷だかわからないけど僕もあの人が傷を持ってるのがわかった」
「…」
「選んだ選ばれたというより磁石みたいに引き合った。それだけだと思います」
「ミンチョルさんの傷がわかったの?僕はわからなかったんだ。あの人が寂しい時にね。僕には資格がなかったて事だね」
「資格がないのは僕の方です」
「え?」
「でも後悔したくない。きっと彼を守るから。約束します」
「何の話?」
「僕自身のためにもきっと守ります」
「君…」
「だから彼のそばにいる事、許してください」
「わかったよ、なんでミンチョルさんが君を選んだか」
「そんな風に言わないで下さい。良心が痛みます」
「君、いい人なんだね」
「違う。資格がないってわかっていてそばを離れない僕は卑怯です」
「そんなに自分を責めないでよ」
「本当にすみません」
「ミンチョルさんのこと幸せにしてあげて」
「命にかえても」
「君と話ができてよかった」
「僕もです」
「泣かないで。僕も泣けちゃうから」
「すみません」
「早く行ってあげてよ。待ってるよ、ミンチョルさん」
「ハイ」
「失礼します。ミンです」
「ミン君、入って」
「はい」
「テジュンさん、僕の子犬を紹介します。ミンです」
「以前打ち合わせの時お会いしましたよ。ミンチョルさん」
「そうでした?それは失礼」
「何だか羨ましいですね。そんな風に開けっぴろげにできて」
「テジュンさん、覚悟を決めた時人は強くなれるんだって僕はこの頃感じてます」
「え?覚悟…」
「失う事も得る事も覚悟を決めれば怖くありません」
「失う事も、得る事も…」
「映画の件はOKですから。僕たちは平気です。一番前の席で見ちゃおうかな。ふっ」
「ミンチョルさん、映画って…」
「ミン、すごくいい映像に仕上がってる。僕らの記念になる」
「覚悟を決めた…ですか…ふう」
「テジュンさん、どうかしました?」
「い、いや」
「じゃ僕らはこれで。ミン、行こう」
「覚悟か…タイムリミット24時間…」
「ミンチョルさん、あまり僕の事で…」
「いいって言ったろ。僕がそうしたいんだ」
「でも…」
「黙って…」
… …… … ………
「チン、やはりMUSAも路線を変えた方が。殺陣と階段落ちだけでは芸がない」
「将軍!」
「あのようにおのこ同士、頭をかき抱いて接吻など」
「将軍!!」
「ヨソルとだめなら、チンお前でもかまわ…」
スパコーーンッ!!
作戦 妄想省家政婦mayoさん
=テスのひとりごと
これで良かったんだ…でも彼の『資格がない…』てどういうことなんだろう…
でも彼ならミンチョルさんを守ってくれる…これでいいんだ…
そういえば…黒蜘蛛…て…
シュレックは…緑蜘蛛…相談ブースに来たのは学生服を着た…緑蜘蛛
MUSAくずれみたいに、兜かぶって来たのも…緑蜘蛛
緑蜘蛛と黒蜘蛛って…同じ人?…蜘蛛…いい友達になれそうだ…
「(*o*)…びっくりしましたよ。あなたも愛について語るんですね…」
「愛を知らないわけではない…」
「テスに話していた時、僕にはあなたが自身にも言ってるようにも聞こえたな。違います?」
「テソン、鋭いな…」
「カリスマオーラも出てました。格好良かったな」
「当たり前だ」
「ひと頃はドロドロのメロで女性ネチズンを虜にしたんだものね?ずっきゅ〜ん!!って…」
「闇夜!」
「へぇ〜そうなんだ…」
「昔のことだ…」
「BHCにはいないタイプだし…必ず狙われますよ。気をつけてください」
「メロで攻めるか…カリスマで攻めるか…コメディでおちゃらけるか…」
「いずれにせよ。意外と手強いな…てこずるのは目に見えてる…」
「あ、ひとつ、いい武器がありますよ。同士!」
「何だ」
「名付けて[ちぇみの微笑み]」
「??…」
「普段笑わない黒蜘蛛の可愛らしい微笑み…」
「あはは…それ、いいかもしんない…」
「効くのか」
「たぶん…」
「わかった。覚えておく」
悪魔と天使 オリーさん
「見ーつけたっ!」
「誰だ!目隠しするな」「やっと見つけた、黒蜘蛛さん」
「お前か。何か?」「ドライブ行こう!運転してあげる」
「運転手なら間に合ってる」「僕のテク最高だよ」
「車の運転など簡単だ。戦闘機に比べれば」「え?黒蜘蛛さんてパイロット?」
「それもやる。ふっ」「そんな人初めてだ、すごい!」
「ギョンビンがいるだろう」「え?あいつも…」
「俺の方が腕はいいが」「ちぇっ。いちいちカンにさわる奴」
「ん?」「何でもない。とにかく行こう!」
「俺は忙しいんだ」「後悔させないから!ね!」
「先輩!探しましたよ」
「ヨンジュン…」「練習の途中で勝手に闇夜とフラフラしないでください」
「ふらふらって…」「決めのポーズまだ練習不足でしょ。さっ!」
「僕らドライブ行くんだから、邪魔しないで」
「先輩、この若造誰?」
「ああ、ちょっとな」
「失礼な奴!コマしちゃうぞ!」
「先輩、変なのにつきまとわれて大丈夫ですか?」
「ん…」
「無口なふりして気取ってたんじゃないでしょうね」
「う、うるさい」
「僕はドンジュン。BHCの売れっ子。お前こそ誰?」
「俺は先輩の助手だ。先輩は忙しい」
「ドンジュン、ドライブはまた」「えーー!つまんない!」
「腕に巻きつくな」「だってぇ、行きたいのにぃ」
「肩に抱きつくな」「僕のことほっておけるの?」
「耳元でくすぐったいじゃないか。ふっ」
「先輩!」
「わかった、今行く」
「後で連絡して。約束だよ。スヒョンさんには気をつけて!あの人面白くないよ。じゃね!」
「何ですか、あれ?」
「さあな、ふっ」
「お邪魔します。今ドンジュンにドライブ誘われませんでした?」
「うわっ!脅かすな」「行ってはだめです。破滅しますよ」
「何だ、お前か」
「先輩!今度は誰ですか!」
「おや、すでにお連れが…君、女癖悪いだろ」「何だって?」
「歩きながら女にキスしたり。僕にはわかる」
「ひどい!僕は一途な気持ちを隠す為に…ってあんた誰?」
「僕はスヒョン、BHCのナンバーワンです」
「売れっ子にナンバーワン…先輩、大丈夫っすか」
「ん…」「今おヒマ?」
「だめだめ!先輩は練習があるんだ」
「残念だ。あなたとはゆっくりお酒でも飲んで語り合いたい」
「酒…」「そう、じっくりやりたい、色々と」
「色々…」「そう」
「あいつとあいつみたいに?」「そう」
「俺にはあれは無理…」「僕がリードします。まかせて…ほら。肩の力を抜いて」
「ん…」
「先輩!」
「わかった、今行く」
「連絡待ってます。夜がいい、あなたと会うのは。ドンジュンには気をつけて。あれは悪魔です。僕は天使。じゃ」
「先輩、キャラぶれてますよ」
「ヨンジュン、俺の笑顔かわいいか?」
「しっかりしてください!」