投降 オリーさん
「兄さん、どこ行くの?」
「ジンソク、止めてくれるな」
「どこ行くか聞いてるだけ」
「行かねばならない。すまん、勝手な兄を許してくれ」
「大げさだなあ」
「部隊を見捨てる俺を許せ」
「どういうこと?」
「これからBHCに投降する」
「は?」
「だからBHCに投降するんだ。あそこに入れてもらう」
「入れてもらうって、BHCは特別な資格がいるんだから兄さん無理だよ」
「何を言うか。俺は熱烈なラブコールを受けているんだ。誘いを断わるわけにはいかん」
「何かカン違いしてない?」
「何を言うか、あれが誘いでなくて何であろう。ンフフフ…デヘヘヘ…」
「あそこは極秘の資格が必要なんだよ。一人テスって子が性格よくて出入り許されてるけど、超例外みたいだし」
「お前くわしいな」
「ふつうに付き合いしてれば自然にわかるさ、これくらい」
「そうなのか…だが、俺は違う。あの人が呼んでいる」
「へえ」
「後は頼んだぞ」
「それは無理。僕もこれ終わったら違うとこ行くから」
「何を勝手な!」
「ガンホの兄貴にでもやってもらえばいいじゃん」
「あいつはここで食ってばかりでパンパンだ」
「どうでもいいじゃん。あの人それが特技なんだから」
「ドンゴン殿、私も一緒に」
「ジョン将軍!その格好はどうされた?」
「ふふ、実はな、見張っていたら例のBHCのロングコートの人が戻ってきたんだ。わらわもその人に教えを受けに行く」
「それでそのようなコートを着ているのか」
「似合うでしょ。見て、サングラスも」
「でも夜だからサングラス外した方がいいよ」
「あ、はい」
「しかしスパコンは大丈夫か」
「チンは今夜はホテルの食事会に招かれておる。ヨソルも一緒につけてやったわ
ふふっ、わらわとて馬鹿ではない。さっ、今のうちに参ろう」
スパコーーンっ!!
「チン!なんという飛距離じゃ!だがすぐ戻ってはこれまい。ドンゴン殿、急ごう」
「合点じゃ。ジンソク許せ。俺が編んだあの旗、元気よく振ってくれ。兄の最後の頼みだ」
「まあ好きにして。うまくいかないと思うよ」
「で、どこに向かえばよいのじゃ」
「さあ。とにかくフロントに聞いてみる」
「調べてないのか!」
「俺はある人に誘われてる」
「ええい、抜けがけは許さん。ついていくぞ。だがフロントはまずい。チンにみつかる」
「ではとにかくウロウロすることだ」
「よし!」
ミンチョルとイナ ぴかろん
「ミンチョル、ちょっといいか?」
「ん?なんだイナ」
「ん…お前と話すの久しぶりだからさ…」
「そうだな…」
見詰め合う二人
ふっと笑う二人
「よかったな、イナ。落ち着いて」
「お前こそ」
「で、何か?」
「その…あの…」
見詰め合う二人
ふっと笑う二人
「それは…最初は僕から行った」
「そうだろうな…ん?最初はって?」
「今はちょっと状況が変わってきててな」
「え…そんなことあり得るのか?」
「ん」
「…」
「お前はやっぱりお前が…だろ?」
「…」
「違うのか?!ウソ…信じられん!」
「…俺はお前が行ったり待ったり入れ替わることの方が信じられん!」
「…それは僕も…ウン…うふふ」
「…信じられん!」
「お前…そうなのか…ふぅん、へぇぇ」
「お前だってそうなんだろ?今は!」
「あ…まぁその…」
「どっちがいい?」
「…言えない…」
「このっ!ニヤニヤしやがって!」
「…イナ…お前…表情が優しくなったなぁ」
「…」
「どんな感じなんだ?」
「…フルコースだ!」
「フルコース?」
「ん」
見詰め合う二人
ふっと笑う二人
照れる二人
二人に言葉はあまり要らないらしい
「よし、ミンにオーダーしよう」
「俺も一回入れ替わろうって言ってみる」
「無理だろう」
「ん…無理だろうな」
「僕はきっと大丈夫だ」
「無理だよ」
「なんで?」
「お前威張ってるもん」
「…」
いたずらっぽく笑うミンチョル
目を見張るイナ
見詰め合う二人
ふっと笑う二人
「「じゃあな」」
「チン、あのおのこ二人は何を話しておったのじゃ?」
「将軍、無い頭をひねっても答えは出てきませぬわ!ささ、祭の準備をはよう!」
「チン、気になるのじゃ!」
「…」
「何?将軍には一生理解できぬとな?ヨソル貴様…ヨソル、ヨソル、チン、わしを放って行くでない!おおーい」
男組崩壊 妄想省家政婦mayoさん
「あ、総帥…どうしたんですか…」
「お、ウォンビン、ちょっと様子を見に来た。出し物は決まったのか?」
「総帥…だ・出し物って…町内会の宴会じゃないんですから…」
「はは…何をするんだ…」
「総帥〜〜チアボーイですよ?チアボーイ!…」
「チアボーイ?..ん〜いいんじゃないか?お前の自慢の上半身を披露すればいい」
「それなんですけど…兄さんが僕の上半身で調査員をおびき出せってことで…」
「あ、そうだったな。彼女はお前に弱いはずだったな…」
「僕、1回遭遇したんです。でも仲間がいるみたいで…手強い奴で逃げられました」
「あ、そのことなんだが…あれは…もういい…」
「はい?」
「私は彼女と裏で取引をしてね」
「取引?」
「うむ…情報は手に入れたから。彼女から聞き出す必要はない」
「総帥!いつの話ですかっ、それって…」
「ん?君たちが出発してまもなくだったかな。安い取引ではなかったが漏れるよりはいいと思ってね」
「総帥…勝手なことを…」
「そうそう、手に入れたのは私の情報だけだから、君たちの情報はまだ彼女の手にある」
「それでは…それは僕たちで手に入れろと?」
「そういうことになるね」
「……」
「そういえばドンゴンはどうしたんだ?姿が見えないが…」
「兄さんはBHCに投降、ガンボ先輩は過食症、ソッキュ先輩は知り合いの女性が亡くなってショックで帰りました」
「そう…では、ウォンビン、君がこのイベントを引っ張っていく様に」
「総帥…また勝手なことを言って…」
「あ、チアボーイの出し物ちゃんと撮影しておくように。編集して君が入隊している間にDVD-BOXとして売りだそう
うん。LBHコレクターBOXより売れるかもしれないな。じゃ!!」
「あ、あの…くっそぉぉ〜〜絶対絶対辞めてやる。男組なんか!!」
天使の指 3 足バンさん
僕はドンジュンを睨みつけた
ドンジュンのやつは冷たい目で見下ろしている
「ねぇ、抱ける?」
「うるさい」
「なにがよ。いつものスヒョンさんなら何でもないでしょ」
「おまえになにがわかる」
「なにイライラしてるのさ」
「もう行け」
「そんなにマジなのっ!」
「ドンジュン!」
「意気地なし!」
ドンジュンの言葉についカッとした
今まではこんな言葉に反応する自分じゃなかった
剥がされた何かを必死に引き戻すような
自分をとりつくろう怒りだった
僕はいきなり目の前の腕を掴み、
不安定になったドンジュンの身体を乱暴に引きずり倒した
ドンジュンは一瞬顔を歪めた
背中を打ったようだ
回りのボールを払いのけ、ぞんざいに組み敷いた
「抱いてやるよ」
「痛い!スヒョンさん!」
「文句言うな」
「なんで怒ってるのさ!」
うるさい口を乱暴に塞いだ。ドンジュンの顔がまた歪む
なにか、どうでもいいような気になった
あいかわらずやつの思考は入ってこない
ドンジュンが苦しそうにもがいていたが抵抗するほどに力をこめた
結ぼうとする唇を執拗にこじ開けた
息の苦しくなったドンジュンは左右に首をふったが
なんの効果もない
ようやく口を離すといきなり悪態をつく
「ばかスヒョンっ!大ばかスヒョンっ!離せ!」
「釣ったのはおまえだろう!
「僕のことだってわかってないくせにっ!ぜんっぜんわかってないくせにっ!」
もう一度、いまいましい口を塞いだ
今度は少し丁寧に
抵抗は少しずつ弱まっていった
僕の中の怒りはまだ鎮まっていなかったが
目の前のくちづけに集中しようとしていた
なにかを放り出したいような気分だった
ドンジュンから小さな吐息がもれた
その音を聴いてさらに深くくちづけた
しかし
次の瞬間、僕は想い描いてしまった
ミンチョルの無防備な寝顔を
あの僕をよせつけない唇を
ドンジュンの身体が電気が走ったように一瞬硬くなった
そしていきなり目を見開いた
まずいことをしたような気持ちで唇を離したが
間に合わなかった
読まれた
ドンジュンは僕の目を悲しそうに凝視していたが
やがて身体から一切の力が抜けた
視線をそらした瞳から涙が落ちた
木漏れ日がその涙のすじを優しく撫でた
ドンジュンは目を閉じて動かなかった
「ドンジュン…」
「……」
「おい…」
「……」
僕はドンジュンのその涙の意味を了解した
僕に似ている
自分を見つけるのが下手なやつ
流れ出す涙は、僕の指で拭っても拭っても止まらなかった
投降 2 オリーさん
「ミンッチョルさん、ちょっと」
「どうした?」
「今廊下に不審者がいたので取り押さえたんですけど、男組とMUSAの人だったんです」
「ドンゴン隊長とジョン将軍?」
「何でも投降したいとかで。武器は持ってません」
「わかった、会ってみよう」
「ねえねえ、なんでいきなり蹴られちゃったの?」
「知らん。油断した」
「僕コートが長くて反撃できなかったよ」
「とにかく早くこの手錠をはずしてもらおう」
「失礼しました。彼はボディガードもやってるもので」
「すみません。手荒な事をして」
「でご用件は?」
「大体のことはわかりました。たぶんそれはスヒョンというウチのホストです」
「スヒョンさん…ていうのですか…」
「おい、目が潤んでるよ。ほんとにちうされちゃったの?」
「う、うるさい!」
「あまり気にしないでください。彼はその何というか、キスしたり抱いてあげたりするのが得意でして」
「確かに上手で…あ、いや…」
「でも他意はないのです。挨拶したりするノリでやってますので、あまり深刻にならないで頂きたい」
「あ、挨拶…」
「何だ、深い意味はないんじゃないか」
スパコーン!
「痛いなあ、あんたまですることないだろ。仲間なのに」
「で、ではこちらに投降するというのは…」
「申しわけありません。ウチは意外と資格審査が厳しくて。専属のスカウトがオーナーと相談して決めるので僕らでは何とも」
「では、テス君とやらのようなお手伝いでは?」
「テスのこともご存知ですか。彼も特別です。とても性格がいいしよく気がつく、それに可愛らしいので出入りさせてますが
痛っ、ミン何つねってるの…妬いてるのか、バカだなあ。あ、失礼、今のところ彼以外は手伝いも必要ありません」
「はあ…」
「ロングコートのカツカツ歩きと言われても…最初だけでしたし。あまり記憶がないな
僕は胸に板が入っているのでついそういう風に見えてしまうのかも」
「でもそれがいかにもホストらしいと…」
「ミンなんか壁に背をつけてソロソロ歩きなんか得意ですよ。ネイビー歩きもできますし、人それぞれですから
テプンはがに股歩きだし、イナは斜に構えたやさぐれ歩きだし」
「がに股でもいいと申されるか」
「個性ですから。自分に合った物を見つけるのが一番ですね」
「自分に合った物…」
「僕は現場に手鏡を持って行っていつもチェックしてますよ。どういう風に自分が映るかを常に気にかけてる」
「手鏡とな、メモメモ、よし」
「いや、大事なのは手鏡じゃなくて、手鏡を持って自分をチェックするという意識です。そのへん誤解しないで」
「うう、うん」
ミンチョルの初歩的なホスト講義は深夜に及んだ
「僕ら寝室で寝ますので、よかったらソファで休んでいかれます。もう遅いですし」
「できれば寝室で一緒に」
スパコーン!
「痛いなあ、じゃソファで結構。何いつも野営しているので全然平気、なんちゃって」
「じゃ、ブランケットだけお貸ししましょう。トイレはあっちです。じゃ」
「キツネに似た人案外いい人でよかったね。あれ?泣いてるの、隊長」
「泣いてなんかおらん…でも、挨拶だったなんて…あれが…おおお…えええん…」
「別にいいけど、うるさいから静かにしてくれる」
「お口に合いません?勝手に朝食頼んでしまって」
「いえ、そのようなことは。お手数をおかけして」
「じゃ、遠慮なくどうぞ」
「「はっ」」
「ねえ、ミンそのクロワッサンちょうだい」
「だめ!これは僕大好きだからとっておいたんだもん」
「ねえ、一口でいいから」
「その一口が大きいから気をつけて、全部はだめ!はい、あーん」
「ん!美味しい。ミンも僕の何か欲しい?」
「じゃそのヨーグルトちょっと」
「はい、あーん。って、ちゃんと食べなきゃだめじゃない。ほらついちゃった」
「え?どこに?」
「右の口角、うふっ。お客さんいるのに恥ずかしいよ、ペロペロしてあげるね」
「やだ、くすぐったい…」
「将軍、確かに昨日のふたりと同一人物でしょうな」
「隊長、いかにも。あの者に縛りあげられ、あの方に講義を受けた」
「BHCはまことに奥が深い」
「でござるな」
「チン、はい、あーんして」
スパコーーンっ!!
「ヨソル、ほら口についてるよ、ペロペ…」
スパシーーンっ!!
「兄さん、もう泣くのはやめなよ」
「あえええん…おえええん…」
コミエサラン part1 妄想省家政婦mayoさん
「ん…っと…」
ー何年か前まで..与えたれた任務を完璧に遂行する有能な男がいましてね..
ある日そんな男が恋をした…しかし奴の様子がおかしい
奇妙なことに恋をしたことを受け入れない、認めようとしなかったんですね..
恋とはなんですか?突然やってくるものでしょう..
男の相手が純粋でねぇ…彼女…いや、"彼"のおかげで男の人生も今度は変わりますかね…
但し…彼らには時間がないんですよ…
…もう戻れない…タルコマン…コミエサラン?(甘ったるい蜘蛛の恋)
「…いい感じ…」
「何書いてんの?」
近づいて覗くテソン
「ん?」
振り返る闇夜。テソンの目の前に闇夜の顔…
「あ、あ、あぅ…」
「テソンッシ…離れて…」
「……@@;;」
バタン★
「テソン!mayoッシいる?..あ、また邪魔した?」
「あ、あ、…ち・違うよ…」
「あ、テジンさん、出来たの?」
「うん。テソン、顔が赤いぞ?」
「あ・あぅ…ぅん?..」
(闇夜..無視…)
「テジンさん、面倒だった?ごめんなさいね…」
「ううん全然。見て。どう?…モチーフがモチーフだから…小ぶりに作ったんだ」
「大きさもちょうどいい感じ」
「そう?追加のリクエストは…ここと…ここ」
「うわぁ…ありがとう…」
「いや…このアイディア、使わせてもらおうかな。妻も喜ぶ」
「うん…いいかも…」
「また何かあったら言って。じゃ」 バタン★
『僕も欲しいな…おさかなモチーフで…』
=ステージ天井裏
柵に手を置き前を向いている蜘蛛
反対向きに背を柵に寄りかけている闇夜
「どう?上手くいってる?」
「ん…それより何だ。忙しいのに呼び出して」
「うん…あ、来たよ…」
蜘蛛は振り返り走ってくるテスを確認する
「ちぇみぃ〜^o^〜」「おぅ!..テぇ〜スぅ〜」
はぐっ☆
背伸びをするテス。テスの顎をちょっと上げて顔を近づける蜘蛛
「ちょぉ〜っと待ったぁ!!」
「「えっ??駄目?」」
「お前はこんなの覗きで慣れてるだろうが…」「そうだよ..mayoさん」
「あ、あのね!もう〜」
「「じゃ…何…まだ何か…」」
「うぅぅぅ〜〜こいつら…用が済んだら行くから!」
「「用って何?早く言って」」
「ったく…ほら!これ!」
「「何?この箱…」」
「闇夜…何だこれは…」
初恋 ぴかろん
「痛いよ先生」
「…すまない…」
「先生、僕を探してた?」
「…」
「どうして?」
「…傷つけてしまったと思って」
「…」
「すまない」
「…歩こうよ、先生」
僕は先生の手に触れた
先生の手は…すうっと逃げた
「…先生、初恋の話してよ」
「…聞きたくないんじゃないのか?」
「聞きたくないよ」
「…」
「だけど聞かないと…先生がわからない」
「…」
「話してください」
「…いいだろう…」
僕は先生の初恋の話を聞いた
あんまりにも切なくて、あんまりにも先生が純粋で、僕は泣いてしまった
「どうして君が泣くの?」
「…好きだったんだね。本当に…胸が締め付けられるほど…」
「…ああ…そうだね…」
先生は、遠くを見てうっすらと笑った
どこかへ消えてしまいそうで、僕は先生を抱きしめたかった
でも体が動かなかった
僕の話をした
彼女と結婚することになったきっかけ、お義父さんのこと…
ありのままを話した
幸せが待っているんだと思うと
「君は幸せだね。いい人には必ず幸せがくるよ」
「…僕はいい人なんかじゃない」
「そんなことない。君は僕の事を心配してくれたり、他の人たちにも親切だ」
「…僕は先生みたいな恋を…したことがないな…彼女とはうまく生活していけそうだから結婚する…みたいな気持ちで」
「君はお義父さんを幸せにしてあげたいと言ったね?それが君の幸せでもあると」
「うん…」
「お義父さんの幸せのためには…彼女が幸せである必要があるね」
「…うん」
「幸せにしてあげなさい」
「…う…ん…」
「彼女と恋をすればいい…」
「しようと思ってできるもんじゃないんでしょう?違う?先生!先生の初恋は突然やってきたんじゃないか!違う?!」
「…僕の場合はそうだった。人それぞれ…違うだろう?」
「僕だって…突然…」
「?」
「突然…人を好きになる事だってある!」
「…誰か好きな人がいるの?」
「…わからない?」
「…」
「…わかってるんだ。わかってて知らないふりしてるんだ…先生…」
「解らないな。幸せが目の前にあるのに。君は火遊びなんかする人じゃないだろう?」
「火遊び?何言ってるの?」
「誰が好きなのか知らないが、彼女とお義父さんを大事にするべきだ。それが君の幸せなんだろう?」
「わかんないの?!」
「…解らない」
「先生!」
僕は…先生の背中に抱きついた
先生の体が凍りつくのが解った
「…僕?」
「ほんとにわかんなかったの?」
「…はな…離しなさい…手を離して…」
「嫌だ」
「だめだ。何を血迷ってる?三日ほど一緒にいたから、君、少し変になってるだけだよ
…へ…部屋に帰って頭を冷やしたら、君がするべきことがなんなのか…すぐにわかるはずだ。君は…結婚するんだ…」
「知ってるよ、解ってるよ。僕は結婚する!彼女を幸せにしてお義父さんも幸せにする!でも…僕のこの気持ちはなんなのさ!
先生が話してくれた初恋の話とおんなじこの気持ちはどうしたらいいのさ!」
「…ウシク…」
「こんな…気持ち…初めてなんだ…先生のこと思うと切なくて…」
「君は…きっと…疲れてるんだよ。部屋に戻りなさい…送っていこう。今日からはちゃんと自分の部屋で」
「疲れてなんかいない!自分がどうするべきなのか解ってるよ!でも…」
「だったらすべき事をしなくちゃいけない!僕が好き?そんな間違った感情は捨ててしまえばいい!」
「先生は捨てられなかったくせに!」
「…」
「僕には捨てろっていうの?」
「…君に、僕と同じ道を歩ませたくはない。君には居場所があるだろう?その居場所を壊すんじゃない…君自身も壊しかねない…だから…」
「今だけでいいんだ!先生に迷惑かけない!何も望まない!
祭の間だけ…先生のこと好きでいさせてください!僕にとっての初恋なんだから…」
「…」
「どうこうなりたいなんて思わない…ただ…好きなんです…ダメですか?」
「…僕は君に応えられない。それでもいいというの?」
「構いません」
「それがどんなにつらい事だか知ってるの?」
「…」
「やめておけ…」
「…いやだ…」
「…なら勝手にしろ。僕は君を見ない…」
「…」
先生は背を向けて去っていった
僕はなんて事を言ってしまったんだろう…
天使の指 4 足バンさん
ドンジュンは目を閉じたままだ
僕は涙を拭うのを諦めて髪を撫でてやった
僕の隠そうとしていた気持ちをみんなわかってるの?
そんな僕への気持ちを、ボールを投げつけることでしか現せないの?
僕から巣立ったおまえ
そんな不器用さまでおぼえていったの?
なんの役にも立たないのに。ばかなやつ
揺れる木漏れ日に誘われて、やつはゆっくり目を開けた
僕はそっと唇を近づけたが、顔をそらされた
「無理しないでよ。わかったから」
「ドンジュン」
「もうわかったから」
「また泣く…そんなに泣くと身体がひからびるぞ」
「ほっておいてよ」
「このままボールの海に捨てて行っていいのか」
「いいから…もうかまわないでよ」
「ドンジュン」
「もうわかったってば…」
起き上がろうとするドンジュンを押し戻した
「逃げるのか?」
「勝手なこと言うな」
「スヒョコマシの名がなくぞ」
「ばかっ」
「コマシてみろよ、前みたいに」
「ばかっ!ばかスヒョン!」
そう言うとまた新たな涙をこぼした
僕は、なにかゆるりとした空気に誘われた
そしてドンジュンの顎をこちらに向けると
もう一度ゆっくりとくちづけた
柔らかく。深く
ドンジュンはもう抗わなかった
ミンチョルの影が頭をかすめなかった、と言えば嘘になる
でも僕は目の前の弱った鷹を放っておけるほど冷酷にもなれない
長いくちづけ
少しずつドンジュンの想いが入ってくる
スヒョン…スヒョン…スヒョン…
心の中で呼ばれ続けている
ドンジュン…
なんでそれを口に出さないんだよ
おまえも僕もばかなやつ…
いつしか僕は強く強くドンジュンを抱きしめていた
ドンジュンは僕の首にしがみついていた
むさぼるようにお互いを吸っていた
ドンジュンのシャツを肩からはずす
顎から首筋へ。そして胸、腹に熱い跡を残して行く
ドンジュンから切ない吐息が漏れる
ドンジュンが動く度に黄色いボールが小さく転がる
お互いはだけたシャツのまま強く抱き合った
暖かさが心に満ちる…こんなこと、僕は限りなく経験したはずなのに
傷を舐めあうつもりか?
ひと時の慰めにお互いを使うつもりか?
決めかねて…
腰のベルトに手をかけた時、ドンジュンの手がそれを遮った
唇を離し顔を覗き込むと、小さく首を横に振った
僕は思わずやつの胸に頭を垂れ、ため息をついた
「ほかの人のこと考えてる人なんかにあげない」
「おまえ…」
「欲しかったらさっさと本気で好きになれば」
「まったく…」
おまえは傷つきながらも帰ってこようとしているの?
だったら僕もまっさらな気持ちで受け止めないといけないのかな
それがいつになるかはわからないけど
僕たちは寄り添い座っていた
肩を抱き寄せ、僕を見つめる瞳の輪郭をなぞった
指が唇に触れた時、ほんの少しミンチョルのことを想ったが
しかしドンジュンはもう何も言わなかった
風が木々を揺らし、ひかりが散る
コートのボールの影が少し長くなった
「寒くない?」
「平気」
「戻るぞ」
「うん」
「ボールはちゃんと片付けろよ」
「やなこった」
「また押し倒すぞ」
「ばかスヒョン」
僕はもう一度だけ静かに唇を重ねた
ドンジュンの涙はもう乾いていた
時計はわざと見ずにいた
もう少しだけこうしていたいと思ったから
コミエサラン 2 妄想省家政婦mayoさん
箱を開ける蜘蛛&テス
「「蜘蛛だ…@@」」
「ちぇみ…これお揃いだ(^o^)」
「あぁ…(^_^)」
「あ、でも何かついてる…」
箱の中は小さな蜘蛛のペンダント
ひとつは胴体の右上に緑色の石が、もう一方は胴体の左下に水色の石がそれぞれ嵌めこんである
「テス…お前の誕生日は12月か?」
「うん。どうしてわかるの?」
「水色の石はお前の誕生石のトルコ石だ」
「そうなんだ…じゃぁ…緑の石はちぇみの誕生石?」
「あぁ…俺は5月、エメラルドだ」
「ちぇみ…石には意味があるの?」
蜘蛛は闇夜に『お前が言ってやれ…』と顎で合図をする…
『自分で言えば?』
『いいから!』
『ぷっ…照れくさいんだ…』
『..っるさい!..』
「トルコ石は持ち主を危険や不幸から守るの。それに愛する人の安全を願う気持ちも叶うの」
「へへ..僕の想いと一緒だ…ちぇみの石は?」
「エメラルドは癒しと安らぎをもたらすの。それとね…テスさん…愛の証し…」
「ちぇみと同じだね、mayoさん…」
「くく…そうなるね…ぷっ」
『闇夜…(>_<)…余計な事…言いやがって…』
「テスさん、こうしたら?お互いの石を交換して身につけるの…」
「うん!いつもちぇみと一緒にいるみたいだ。そうしよ〜ちぇみぃ〜(^o^)」
「テス…わかった。(*^_^*)」
「ちょっと石が小さいけど…あまり目立たなくていいでしょ?…」
「このくらいで丁度いい。闇夜、なぜこんな…」
「危ないところ助けてもらったし…」
「だからといって…」
「ワレワレカンコクミンハ ヒトカラノオンギニハ カナラズ レイヲモッテコタエル…」
「ぷっ…闇夜!お前…また観たな『SEOUL』…」
「あはっ…(^^;)……」
「mayoさん、僕うれしい..」
「コマプタ…」
グー★を闇夜に突き出す蜘蛛
手のひらでパシッ!!受ける闇夜
「用はこれだけ。あ、練習に遅れるなってピョートルさん」
「シガン オムス!(時間厳守!)アラッタ!」
「(ぷっ…自分だって…『SEOUL』モードじゃん…)じゃ、行くね」
闇夜が場を離れるとお互いに首にかけ合う蜘蛛&テス
「「オンジェナ ギョテ イッスルケヨ…」」(いつも側にいるから……)
xxxxxxXxxxxxxxx……ぁ……xxxxxxXxxxxxXxxxxxxx
『ふぅぅ…らしくもないキザなことしちゃったわ……(^^;)……』
閉じた心 ぴかろん
僕は彼から遠ざかりたかった
彼が僕を見つめているのは背中で感じていた
何を…言い出すんだ…君は…
よく管理された木立を抜けたところにテニスコートがある
コートの近くのベンチまで来て僕は大きく息を吸った
息を止めていた
彼が居た所の空気を吸いたくなくて
いや、吸ってはいけないと思って…
僕はベンチに腰掛けた
「先生の事思うと切なくて」「先生は捨てられなかったくせに」「ただ好きでいたいだけなんです、ダメですか?」
駄目だ…
もう一度声に出して言ってみた
声が震えていた
どうして…
彼は彼女ではない
彼女を感じられない…
なのにどうして僕は彼に…
僕の心を波立てるな
君は彼女じゃない!そうだろう?
君は自分でそう言った
僕は僕です、誰でもないと…
だったら僕を好きだなんて言うな
僕は誰も愛せない、彼女以外は…誰も…愛してはいけないんだ…
いけない
駄目だ
考えてはいけない
認めてしまうことになる
よそう
消してしまおう
僕はぼんやりとテニスコートを眺めた
あれはスヒョンと…ドンジュン…
羨ましいな、君達が羨ましい…
僕が望んではいけない事だ
忘れよう、簡単だ
考えなければいい
ずっとそうしてきたように彼女との思い出に浸っていればいい
そうすればまたいつか彼女と巡り合える
僕は煙草を吸おうと思い、ポケットに手を突っ込んだ
あ…忘れていた
テジンから預かった彼のペンダント…
今
渡さなくては、今
それは僕自身を試す事だ
僕は今、彼の前に出て行って、それで揺らぐ事無く僕の世界に戻ってこれるだろうか…
僕は立ち上がった
そして彼が居た場所に戻り始めた
彼は俯いて歩いてきた
僕は彼を見ていない
彼のうわべだけを見ていた
彼がふと顔を上げる
僕を見て驚いている
目が赤い
泣いたのだろう
僕はポケットの中から小さな紙袋を一つ取り出した
「これを渡すのを忘れてた。テジンから預かったものだ」
「…」
彼は恐る恐る手を出した
僕はその手を取ると彼の手のひらに紙袋を置いた
彼がびくりとしたのが解った
「それじゃ」
「…」
彼は中を確かめていた
僕はまた彼に背を向けて歩き出した
さっきより落ち着いている
大丈夫
僕は僕の世界に戻ることができる
「先生待って、これは僕のじゃない」
僕は大きく息を吸って、もう一度振り返った
そしてポケットを探り、もう一つ残っていた紙袋を彼に渡した
「待ってください先生、これを…」
「いらない」
「…」
「君もいらないなら捨ててくれ」
「…酷いよ…テジンさんが一生懸命作ったんだぞ!簡単に捨てるなんて言うなよ!」
「なら君にあげる。君が大切にすればいい」
「先生はなんでそんな簡単に人を…」
「失礼する」
遮断
これで僕は酷い男だと解ったろう?
そうだよ、僕は自分の事しか考えてないんだ…
部屋へ戻ろう…僕の部屋へ…僕の世界へ…
道を曲がる時、君の姿が目の端に映った
僕は無意識に君の方を向いた
君は二つのペンダントを手のひらに乗せて、呆然としていた
「捨ててしまえよ…」
そう呟いた時、僕の胸がずきんと痛んだ…
春が来た ぴかろん
「ちょっと」
「…またお前か、なんだ、蹴るなよ」
「アンタの言ってたリボンなんだけど…こんな感じ?」
「…本とにやる気?」
「こんな風に頭に巻くの?」
「それじゃほっかむりだよ、色気ねぇなあ…んーと…ちょっと目瞑って万歳してみな」
「…こう?」
「そ…よいしょっと」
「きゃあっ!ちょっと何処に巻いてんのよ!ばかっ」
「蹴るなっつーの!触ってないだろ!」
「…胸に巻くの?」
「そ、できればハダカの胸にな」
「何ですってぇ!」
「バカ、蹴るなって!それでテプンさんは鼻血もんでイチコロだぞ!お前の全然ねぇと思われてる色気もアピールできる!
で、下はホットパンツな」
「…」
『あり、本気にしてるのか?コイツ』
「勇気いるなぁ…」
「や…やる気なのか?」
「…そういうのって喜ぶ?」
「…普通の男は喜ぶと思うぜ。あっそうだ、胸にアンパン入れとけ」
「…」
「で、もしテプンさんが引いたら、アンパン取り出して食べさせるんだ。面白い!」
「…わかった」
「え?わかったって…本気でやるの?」
「ありがと、アンタ名前なんだっけ」
「…シチュンだけど…」
「サンキュ」
「本気かよ…ん?」
「何よ!私が誰と喋ってようと関係ないでしょ!」
「馬鹿野郎!アイツは女タラシで有名なんだぞ!お前みたいな世間知らずのお嬢様なんかいいカモなんだぞ!」
「仲間を酷く言うなんて、最低!」
「…仲間だけど、女に関してはルーズな奴なんだ!目ぇつけられたらどうする気だよ!」
「…見くびらないでよ!いい人か悪い人かぐらい私にだってわかるわよ!彼はいい人よ!」
「…お前…」
「少なくともアンタより女心を理解してるわ!」
「…」
「何よ!なんか言いなさいよ!」
「…アイツの事好きなのか?」
「…はあ?」
「…映画の編集とかも一緒にやってるんだろ?こないだも何か相談したらしいな…好きなのか?」
「…」
「そうなのか…」
「馬鹿!鈍感!その上変なとこに敏感!大馬鹿男!」ドスっ☆
「げええっ…蹴るなよ暴力女…ほんっと色気ねぇ奴…げほっ」
「テプンの馬鹿!…悔しい!こうなったら…」
十分後、テプンの部屋の前
チェリム、コートを着込み、美しく化粧をしている
ピンポーン
「はい、誰だ?…なんだよお前か。どっか行くの?コートなんか着て」
「こないだのペンダントのお礼届けに来たの」
「…お前怒ってたんじゃないの?さっき」
「中に入ってもいい?」
「…いいけど…入ったらウヒヒ襲っちゃうかもぉ〜なぁんてね。お前みたいな怖い女、誰が襲う…お…お前っ…」
「…私がプレゼントよ」
鼻血がブヒー
「あっ本とに鼻血出した…」
「おま…馬鹿!」
コートをチェリムの肩にかけるテプン
「なんて格好してんだ!馬鹿!」
「…嬉しい?」
「嬉しかないよ馬鹿女!男の部屋にそんな格好で来るなんて!」
「え?だって男の人は喜ぶって…」
「んなの!引くよ!」
「引いた?(^o^)じゃ、ちょっと待って、よいしょ」
「おまっ!何っ!ばかっ!やめてっ!」
「はい、アンパンどーぞ」
「!」
「食べさせてあげようか」
「…」
「ソ・テプン?」
「…」
「死んだふり?」
「襲われたいのか?」
「え?あ…」
「テテテテテテ」
「ん?何?ああああああっ(@_@;)」
「ひえええっぎょえええっテプンさんがっテプンさんがっ」
「…」
「テソンシっしっかりしてぇっ(@_@;)」
「…テプンまでが…」ガクっ
… …
「こんな事すんな…ばか…」
「…ん、ごめん…」
「今度したら、止まらないからな」
「…ん…」
「「ひえ〜〜(@o@;)」」
テプンにも春が…?
後始末 オリーさん
男組の隊長に会いに行く事になった
気が進まないが仕方がない
ミンチョルにキツネ目で言われたから
後始末をしてきてくれと
最初は手を出したつもりはないと突っぱねてやった
そしたらあいつはおかげで僕は寝不足だと言った
理由を聞いて笑った
部屋に隊長と将軍を招き入れ僕のことを弁解しホストの講義をした上に泊めてやったそうだ
朝飯まで食べさせて帰したが、それでも隊長の態度が気になると
お前にしては親切じゃないか、と皮肉を言ってやった
あいつはいたずらっぽい目で僕を覗き込み
だってその前にミンが2人を縛りあげて丁寧に手錠までかけてたんだ
騒ぎになったら困るだろうと笑った
眩しい笑顔。まだあいつの笑顔には勝てない
頼もしいボディガードがいてよかったじゃないか、と言ったら、
あいつはふっと笑って、だから頼むよ、と僕の肩を触った
僕は思わず目を閉じて、お前の頼みじゃ断われないな、と答えた
元はと言えばお前のせいなのに、その言葉は飲み込んだ
隊長の美味しくないあれを思い出して気が重くなった
一人は嫌だったのでドンジュンを連れて行くことにした
ドンジュンも渋った
そしてスヒョンさんいつあの人を落としたの、と聞いてきた
僕くらいになると、落としたつもりはなくても相手が落ちてる事があるのさ
ドンジュンは鼻で笑った
綺麗な切り方を教えてやる
切るのは落とすより難しいんだぞ
綺麗に切る事ができて初めて一人前さ
ドンジュンは目を輝かせて僕について来た
あーあ、それでもまだ気が進まない
テソンの憂鬱 3 妄想省家政婦mayoさん
「…@_@;;」
「テソンッシ…テソンッシ?テソンッシッてば!」
「…@_@;;」
「ったく..や★!イ・テ・ソ・ン!!何とか言え!」
「うるさい。聞こえてるよ….@_@;;」
「聞こえてるなら返事してよ…お?」
「mayoッシ…」
「ん?うん…何..マレバ!(言って)…」
「僕ってさ…」
「ん…」
「そんなに変かな…」
「@@?………?きゅ..急にどうしたの…」
「ねえ…僕ってそんなに変?」
「うん。変…」
「やっぱりそうだよね…僕は覗いてばっかりの変な奴さ…」
「あ、あ、いや…すべてが変ってわけじゃなくて…」
「じゃ、何?僕にいいところなんてないんだ…どうせ…」
僕は料理と覗きしかできないし…寂しくたって誰も側にいやしない…」
「テソンッシ…みんなはぐはぐ・もぐもぐだからそんなこと言うの?みんな幸せなんだから…」
「僕は不幸だ」
「テソンッシ…顔上げて」
「やだ。離れろとかよけろとか言うもん…」
「言わないから。オソ!(さぁ!)」
「@_@」
「アイゥ~~ちっち!!情けない顔して…ほらっ」
握っていた手のひらを開けて見せる闇夜
魚のうろこの一部にルビーと真珠を交互に6個嵌め込んでいる
「うわっ!おさかなくんだ!!僕に?」
「ぅん。おさかなは目が赤いと駄目でしょ?だからうろこにした。数が多くて大変なんだから…」
「でもこの真珠のうろこは?」
「旧暦だと6月9日でしょ?だから交互に並べた。ん?機嫌なおった?」
「うん^^…でも…」
「何。文句あんの?」
「ペアじゃない…」
ペチン★
「痛っ…」
『う〜〜こやつも誰かに食ってもらわねばならぬ時がきたか…はて…誰がいる?』
混乱 ぴかろん
手渡された紙袋
「いらないなら捨てればいい」
簡単に切捨てるんだね、先生…
嘘だよ、そんなの嘘だ
そんな人じゃないくせに
僕は、テジンさんが作ってくれたペンダントを取り出した
先生のはチョーク…羽根がついてる…
フフ、羽根つきチョークなんて…
僕のはイカ…
イカなんて笑っちゃうな
丁度いいや、笑いたいんだもの、この涙、吹き飛ばしたいんだもの…
僕のイカ…
綺麗だ…
もっと漫画っぽいデザインを頭に描いていた
そのイカは…。烏賊と言うべきだな…
その烏賊はU字型になっていて、流線型の体を柔らかく曲げている
U字型って…もしかして僕のイニシャル?
ひび割れた心に温かいものが染み込んできた
テジンさん、ありがとう…嬉しいよ僕…
きっとイヌ先生のも一生懸命心を込めて…先生の喜ぶ顔を想像しながら作ったに違いないね…
温かだもの…
僕は二つのペンダントを握り締めてホテルのエントランスに向かった
「ウシク〜」
「…テジンさん」
「受け取った?」
「うん。ありがとう、ステキなデザインだね。僕のイニシャルだ…嬉しい。大事にするよ」
「喜んでもらえて嬉しいな。段々作りなれてきたからちょっと凝ってみました。エヘヘ。試しにペアで使えるようにしてみたんだ。気づいた?」
「え?」
「君の烏賊とイヌ先生のチョーク、組み合わせて一つのペンダントにできるようにした」
「…」
「先生のペンダント借りて試してみてよ。後で感想きかせてね。じゃ」
「…」
これとこれを…組み合わせて…ぴったり嵌る…
涙が溢れてきた
どうしてこんなデザインを僕達に…
ためしだって言った
他意はないんだろう…でもよりによって僕達に…
…いいよ、僕が貰う
僕が大事にする
先生の羽根を僕が包み込むよ…
…先生を…包み込む?…
拒絶されてもいい、疎まれてもいい!やはり伝えなくては…
貴方は一人ではないんだと…
僕は駆け出した
先生の部屋へ
「先生!先生!先生!」
バンバンバンバンバン…
狂ったようにドアを叩いた
怒らせたって構わないんだ、このドアさえ開けば突破口はできる
だけど、ドアは開かなかった
「せんせい…」
ドアにもたれて座り込んだ
涙がとめどなく溢れている
手で涙を拭ったとき、指から血が流れているのに気づいた
どこかにぶつけて切ったんだな…痛みも感じなかった…
溢れ出る血液を、僕はじっと見ていた
何故胸が痛んだのかわからない
切り捨てる事に成功したんだろ?
自分だけの世界に帰りたかったんだろ?
自問しながら僕は部屋までゆっくりと帰ってきた
ウシク…
何故いる?
何故君はそんなところに…
僕は唾を飲み込み、息を吸い込んで、突き放す言葉を準備した
いや、言葉なんかいらない
見なければいい
僕は彼に「君を見ない」と宣言したのだから…
僕は僕の部屋に帰るだけだ
そこに転がっているのは、ただの酔っ払いだ
僕に必要な人じゃない
ドアにキーを差し込んだ
彼が僕を見上げている
僕は彼を見ない
「せんせい…」
僕は彼の声を聞かない
「先生…先生、先生!」
彼は僕の腕にすがりついた
けれど僕の傍に君はいない
「先生は…一人じゃないから…みんな仲間だから…。みんな…先生の事大切に思ってるから…先生、せんせ」
バタン
完了
大きなため息をついた
僕に付き纏うな
捨てちまえよ!
気持ちを落ち着かせて上着を脱ぐとぬるりとしたものが手についた
なんだ?
…!
血が…
ウシク…
心で何かが弾け飛んだ
「ウシク!どうしたんだ!ウシク」
ドアに座り込んでいた彼は血だらけの顔で僕をみて、泣きながら嬉しそうに微笑んだ
「どう…したんだよ…この血…」
「やっぱり…そんな人じゃなかったんだ…」
殻が敗れた僕の心を彼の真綿が包んでいくのを…僕は感じた
「…な…にが…」
「先生は…優しいんだ…優しすぎるんだ…」
「…何を…言ってる…」
「みんな、先生の仲間なんだよ…」
「…」
「もういいじゃない…先生…もう十分苦しんだじゃない…彼女のためにずっと生きてきたじゃない
…もう自分のために生きてよ…先生…」
「…何を…僕は…ウシ…」
彼は…僕に…口付けした
血だらけの…美しい顔で…
丸裸の僕の心が…流れ出ていく…
「僕は結婚します…幸せになります…だから先生も幸せを掴んでください…お願いだから…」
ウシク…
「なら何故こんな事をする…離れていく気なら何故僕にこんな事をする!何故僕を惑わせる!!
…君は…君は僕の心をこんな一瞬で奪って、こんな一瞬で捨てるのか!?」
「せんせ…」
「馬鹿だった…もう傷つきたくないのに…壊れた…流れていく…消えていく…僕の思い出が全部…
壊したのは君だ!そして君だけ平凡な幸せを手に入れるんだな!」
「せんせい…」
真綿に、僕は火をつけて燃やしてしまった
心がむき出しになっているのを君は知ってる?
君のせいだ
君がいけないんだ
君が僕に仕掛けてきたんだ
違う、そうじゃない
僕が君に…魅かれていたんだ…君と過ごすうちに…
僕の心は修復不可能だ
粉々で繋がらない…
混乱する僕を、激しく詰った僕を、彼は抱きしめてまた口付けした…
心に何も無くなった
後始末2 オリーさん
僕に会いにいらしてくださったそうですね
隊長を前に、僕はこう切り出した
うちのチーフから僕のこと聞いたでしょ、誰にでも気楽に挨拶する軽い奴だって
彼ははっと顔を上げた
あのキツネの言うとおり、僕はそんな奴です
彼はうなだれた
でも、でもね、これだけはわかって…
そんな僕でも心を動かされる瞬間はある、たとえばあなたに腕を掴まれた時
彼はまたはっと顔を上げる
わかりやすいなあ
あの時、ドンジュンを探していたあなたに一目で心を奪われた
だからつい、あんなことを…
彼の顔に希望の光が浮かんできた。でもだめだよ
許してください、僕は知らなかったんです
あなたが男組の責任ある立場の隊長さんだって
自分の欲求だけを優先してしまって…
ちょっとうつむいてみるか
彼はとまどってる。今の意味わかったよね?
キツネに叱られました
僕のせいで男組に何かあったらどうするつもりかと
あなたが責任ある立場を投げうって僕のところにきてしまったら
男組だけでなく、BHCも破滅する…と
彼は食い入るように僕を見てる
ここは視線を受け止めないとまずいか
あのキツネは僕の気持ちなんかどうでもいいんだ。面子が大事なだけです
彼が初めて口を開く
あのキツネはそんな人なんですか。親切そうに見えたのに…
おい、お前がキツネって言うなよ、俺のミンチョルだぞ
考えてみればキツネもかわいそうなんです。チーフと言っても雇われですから立場が弱い
店に何かあったら真っ先に責任を取らされる
そういう事情は隊長さんも同じでしょう?
たしかにそうです、けど…ひどいキツネだ
だからお前がキツネって言うなって!
僕ひとりの気持ちで二つの店をつぶすわけにはいきません
だから…だから決めました
僕はあなたとの、あのきらめくような一瞬を胸の底にしまい込もうと
僕の宝物にして一生一人で抱きしめていこうと
今切ったんだよ、わかった?
彼はまだ僕をじっと見てる
困ったな、苦手なんだよね、その目つき
圧倒的に色気が足りない、いやない
よく見ればいい男なのに、惜しいねえ
僕は一回視線を泳がせてからまた彼を見据えた
一応念を押しておこうか
あなたも僕のこと忘れないでいてくれますか
ああ、でもこんな勝手なお願い無理ですよね
ごめんなさい、最後までわがままで
隊長はつーっと涙をたらした
おお!わかってくれたか
僕は彼の手を握り締めた
あなたのこと忘れません、僕がこの先誰と会って誰と過ごしても…
あなたはいつでも頼もしい男組の隊長さんでいてください
勝手な僕の最後のお願いです
僕はそう言って彼の顔をのぞきこんで切ない視線を送ってから席を立った
隊長が後ろから僕に言った
じ、自分は隊長の任務をがんばります!
ほーんと最後まで色気のない奴
なるほどね、とトンジュンが部屋の外で僕に言った
じゃ僕も行ってくる
そういうとするりと部屋に入っていった
ごめんなさい
僕…新人だから、店に入ったばっかりだから…
先輩があきらめたものを盗っていく事なんてできないんです
男組でも先輩・後輩の序列ってあるんでしょう?
おお、あいつはやっぱりいいものを持ってる
きっと涙目で言ってるに違いない、顔が見れないのが残念だ
僕とのドライブも忘れないでいてくれますか
いえ、いいんです
先輩とのあの思い出に隠れてしまっても
僕は一緒に食べたアイスキャンディの甘酸っぱい味一生忘れません
さよならって言うのはつらいから、僕、笑って行きますね、隊長さん
ちょっとひねったな、最後。お見事
ドンジュンが満面の笑顔で部屋から出てきた
部屋の中から泣き声が響いた
おい、さっさと帰るぞ
うん
ちょっと待ってよ、と誰かに腕をつかまれた
ありがとね
え?
戻してくれて助かったよ、僕予定があるから兄さんに隊長しててもらわないと困るんだ
そうなの…それはそれは
それにしてもあんた達よくあんなクサイ芝居できるね
クサくなるのは仕方ないだろ、お前の兄貴のレベル低いんだから
たしかに兄さんにはあれで十分だよ
じゃ失礼するよ。励ましてやってくれよ
わかってる。後はまかせて
撹乱 ぴかろん
♪アニャ〜ナンケンチャナ〜ナンチョンマルチョア〜
「はいっもう一回〜」
「何回目だよ、百回は歌ったぞ、ここばっかり!」
「だって最初の『アニャ』が好きなんだもん♪」
「…そか?じゃ…」
「あー聞いてらんねぇ見てらんねぇ…つまんねぇの!」
「で、この腕ハムハムは、やっぱし『血行を良くする効果的なマッサージ』でいいの?」
「そうね」
「…あの…あのさ…ピンキーちゃん辛くない?この映像見てて」
「全然」
「…本とに?無理してない?」
「してない」
「…どして?」
「いやん、言わせる気?」
「…僕がいるから?なんちってエヘヘ」
「ちゅ」
「あ…へ…へへ」
「ねぇたまにはぁウッキー君からしてよね」
「あ…うん…今度…今シチュンさんが見てるから…」
「ウフ」
「やってらんねぇ見てらんねぇつまんねぇ!全く!」
「ねえシチュン」
「ギクッ…蹴るなよ!」
「あのさぁ、テプンって何が好きなの?」
「テプンさん?…野球じゃないの?なんで?」
「野球かぁ…他には?」
「ドーナツ。ジャム入り」
「ドーナツ?!」
「一口で食べる」
「ふうん」
「お前も一口でいかれたの?」
ドスっ☆
「だから…腹はやめてくれよ…」
「んふふふ〜」
「…何にやけてんの?」
「…だってぇ…」
「気持ち悪りぃ、似合わねぇよ!ナヨナヨすんの」
「あはぁ〜」
「…そーだ、お前もっと化粧濃くしてみろ」
「え?そしたら喜ぶかな?」
「うんうんきっとな」
「他には他には?」
「いっつも見えそうで見えない露出度の高い服を着る」
「ふむふむ」
『やる気だなぁコイツ。ガッツあるぜ』
「それから?」
「それからぁ…んと…そだなぁ…しなだれかかるとか」
「しなだれかかるってどうやるの?」
「例えば一緒に酒飲んだ時にぃこうクテェ〜っと肩に凭れ掛かるんだ」
「ふむふむ。こういう感じ?」
『ぎょっ!』「あ…そうそう…。…お前、いい匂いするな」
「ん?そう?」
「…よく見ると…美人だな…」
「よく見なくても美人です!」
ケホンケホン
「あ、ソ・テプ〜ン」
『やべ…睨んでる…』
「何してんだ?仲よさそうに」
「ん?色々と教えて貰ってたの」
「ふぅん、何を?!」
「秘密」
「…シチュン、ろくでもねぇこと教えるんじゃねぇぞ!バットで頭かち割るぞ!」
「…へ〜い…」
「おい、キャッチボール教えてやっから先に外行って待ってろ」
「はーい」
「おいシチュン」
「は、はい」
「お前…アイツにちょっかいかけたらコロすからな!」
「…テプンさん」
「なんだ!」
「…彼女いい匂いしますねぇ」
「!」
「美人だし」
「お前」
「口説いちゃおうかな〜」
ドスっばきっ☆
「いってぇ〜」
「アイツは純情なんだ!お前の毒牙にかけたら承知しないからな!コロす!」
「…へーい…」
でもちょっと…裏からちょっかい出してみよ…いいよな、俺つまんないもん
観察 足バンさん
ジョン将軍:はぁ〜…
ハン総支配人:どうされましたか?こんな楽屋裏で
将軍:あ…総支配人殿…
ハン:もうリハーサルはお済みですか?
将軍:まぁ…
ハン:どこか具合でも?お疲れですか?
将軍:いや…ちょっと勉強のし過ぎで疲れた
ハン:勉強…ですか?
将軍:よきホストのノウハウをな
ハン:それはそれは…さすが上に立つ方ですね
将軍:それがなぁ…はぁ…なにがなにやらわからんようになってしまった
ホストに大事なものとはなんなのだ
ハンそれは相手を思いやる気持ちでございましょう。我々ホテルマンと同じです
将軍:思いやりか…
ハン:相手を選ばず心からつくす、ということではないでしょうか
将軍:ほう…選ばずか
ハン:そして相手への感謝の気持ちを忘れないことです
将軍:感謝のぅ
ハン:もちろん、ご自分が相手にどう映るかも大切なことです
将軍:おぉ、ミンチョル殿もそんなことを言っておったな
ハン:よろしければコーディネイトをお手伝いいたしましょうか?
将軍:こーでねいとか。うむ、この蝶々のタイにも飽きたからな
ハン:では後ほど係の者を伺わせます
将軍:おお、さんきゅう!では…
はぐうぅぅっ!
ハン:あぅっ!
将軍:苦しゅうない、感謝の気持ちぞ
ハン:あ、はい…で、では失礼します… すたすた
将軍:おぉ、できたできた。なかなかよいものだな
お、そうだ!育毛剤を頼むのであった!…おい、総支配人!待たれよ!
すたすたすたすた
(あぁ、びっくりした…ほんとに変わったゲストが多いからな)
「おいっ!」
「な、なんだニャーか」
「ニャーじゃねぇよ。なんだよ、今なにしてたんだよ」
「今?なにってジョン様と…」
「なにしてたんだよ」
「んー?もしかして妬いてるの?」
「ふんっ!」
「急に感謝のハグされただけだよぉ…ヤキモチくん」
「そんな隙見せんなよ!」
「だって…相手はお客様じゃないか…拗ねるなよ…」
「お客ならなんでもありなのかよ」
「イナ…どうしたの?」
「どうもしないよ…」
「なんか言いたいことがあるんでしょ?」
「その…リハーサルが終わるし…」
「それで?」
「で、祭がはじまる…」
「だから?」
「だから…」
「おいで」 ぎゅぅむ
「後のことが心配なの?」
「だって…」
「大丈夫。心配しないで。僕に任せて」
「もう、にゅ〜無しじゃいらんないからね」
「ん…」
あむあむあむあむぅ〜んちぅ〜
将軍:ほぉほぉ、なるほど
どたがらがらどたーーっ!
ハン:ジョ、ジョン様っ!
イナ:痛ってぇー!いきなり離すなよ!
将軍:いや、そのまま、そのまま。これほど至近距離での観察は初めてよの
イナ:ばかやろう!こういうものは見て見ぬふりすんだよっ!
ハン:イナ!
将軍:許せ。観察も勉強勉強
ハン:あ、あの…
将軍:ホストもホテルマンもまこと同じなのだな。うむメモメモ。では失礼する
あ、総支配人殿、育毛剤をひとつ都合してくれ
ハン:あ、はい
将軍:できればトリートメントタイプね。では失礼
ハン:はい
イナ:おい
ハン:あひ…汗が吹き出した
イナ:なんだよ、いきなり突き放して
ハン:さすがにお客様の前では…
イナ:ふんっ!日陰の身ってやつか!
ハン:怒るなよ、埋め合わせはするからさ
イナ:なんでも言うこと聞くか?
ハン:な、なによ
こしょこしょこしょ
ハン:うっ!ば、ばか!なに言ってんだよ!ばか!
イナ:だってミンチョルだってそうなったって言ってたもん
ハン:もぅ!仕事にもどる!
イナ:へっへっへ〜耳まで赤くなってやんの!
ハン:じゃっ! すたすたすたぁ〜っ
イナ:かわいいっ!俺のにゅ〜!
努力 ぴかろん
『化粧濃くしてぇ…露出度の高い服…
おへそも出しちゃえ!
んで、このショートパンツね
ホットパンツはやめろって言われたし…
よし
これで喜ぶかな?』
あり?なんだよアイツ、先に行ってろっつったのに!まだいねぇよ…
トイレか?
「ソ・テプ〜ン…ここよ〜」
誰だ?あの露出狂は…って…馬鹿!
「おまっおまっなんでそんな裸みたいなかっこで!」
俺は焦って自分のTシャツを脱いで馬鹿女にすっ被せた
「くさっ!汗臭い!何よ!」
「なんて格好してんだっての!昨日といい今日といい!変だぞおま…おま…なんだ!その顔はあっ!」
「へ?」
「口口口…血血血」
「くちくちくちちちち?」
「口、血がついてる!」
「血?…失礼ね、口紅よ!」
「…びっくりするじゃねぇか!そんな真っ赤な口して、人食ったのかと思ったぞ!」
「…こんな色、検察庁にいた時毎日塗ってたわよ」
「…そんな口でジソクを食い潰してたのか?!」
「何よっ!久しぶりにお化粧したのにっ」
「…シチュンか!」
「…」
「なんでアイツの言う事を聞く!」
「だってアイツ男の人が喜びそうなカッコとかお化粧とか…知ってると思って…」
「馬鹿女!言ったろ!アイツは女タラシなんだって!アイツの相手してる女はお前とは違うんだ!」
「…」
「口紅取れ!スボン履いて来い!冷えるぞ!」
「…」
「ほら早く。ったく、お前の無い胸チラチラされてもなぁ…気の毒に思うだけだぞ!
それに足が細いのはわかったから、露出するな!それと」
「…ばか」
「ん?何?」
「ばか!」
「…」
「喜ばせようと思って一生懸命やったのにっ」
「…お前…」
「もういい!嫌い!」
「…ばかだな…お前…」
俺は馬鹿女の腕を掴んだ
「アンタなんか…どうせスハさんみたいな清楚で優しい女の子が好きなんでしょ?!」
「お前だってジソクみたいな頭のいい陰気な男が好きなんだろ?」
「…違うもん…今は違うもん…」
なんだよぉ可愛いなぁコイツ
いいのかなぁ抱きしめても…
俺ってこういうの慣れてないから…
「しらない!」
「あっ待てよ、口紅拭けよ」
「イヤだ!」
「拭け」
「やだ」
「拭けって!」
「絶対やだ!」
「意地っ張り」
「馬鹿テプン!」
「馬鹿女!俺は化粧してないお前の顔が好きなんだ!」
「…」
「拭いてやるよ…」
「…いたっ手のひらで拭かないでよ、痛い」
「こら、暴れるな!こら!」
「やめてよ顔が…」
「…ぶっ…ぐははは、口紅びろーんてなっちゃったぐはは」
どすっ☆
「ぐ…ごめっ…」
「(;_;)ばかぁ〜」
「げほ…泣くな…よ…ごめん…ちゃんと…拭いてやるから…」
「うえ〜ん(;_;)」
「もぉ〜泣くなって…」
こんな事していいのかな…いいよな…俺、一応ホ○トだもん、出来るよな…みんなのヤらしい技とか見てて解ってるはずだ…
頬を手で挟んで…コイツの涙を…食う
「(・・)」
それから、はみ出した口紅を…食う
「(・・;;)」
食って食って食いまくって…ついでに唇も食…
ぼかっ☆
「ぐーで殴るな!」
「ひっ人の顔べろべろ舐めまわしてなっなっ何のつもりよっ!」
「舐めまわすって…涙も口紅も食ってやったんじゃねぇか!」
「食う?!」
「ついでに唇も食…」
ばきぃ☆
「…だからグーで殴るな…」
「…」
「なんだよ!」
「…こないだみたいなの…」
「…え…」
「こないだみたいなのがいい…」
「…わ…わかった…」
… …
『やってらんねぇ!畜生!絶対ちうは俺のがうまいぞ馬鹿女!』
孤独が続くシチュンであった
ドンジュンのつぶやき ぴかろん
つまんないな。スヒョンはなんだかんだ言ってキツネが欲しいんだろ…手出しもできなかったくせに
意気地なし
あっ…そういやぁ僕…キツネとキスしたんだった
後でえばってやる!フンだ
…でも…あのスヒョンがキスもできないって事はやっぱり、本気だって事だよね
あれ、僕っていつから「スヒョンさん」って言わなくなったんだろ…昔は「スヒョンさん」って言ってたのにな…
懐かしいな…
そういえばアクター置きっぱなしだ…
あれ…
イヌせんせとウシクさん…
あああ…そ、そうなの?うそだ
ウシクさん、そんな人じゃないじゃん!
ちょっとスヒョンに相談しなきゃ…
こんなとこ見ちゃうとイヌ先生美味しそうに見えるんだもん…
ん?…イナさんと総支配人…うっわぁっ濃厚!
うっわぁっイナさんのあの蕩けるような顔…
え?え?あの二人って…どうなってんの?え?
スヒョンに相談しなきゃ!
「呼んだ?」
「う…」
「びっくりしたねぇ」
「つけてたの?」
「だってつまんないんだもん、ミンチョルいないし」
「…フン」
「ウシクとイヌ先生の問題はちょっとややこしそうだから、手出しするなよ」
「なんで解るの?」
「空気が澱んでるだろ?」
「…ああ…」
「イナとテジュンさんは…相当…」
「何?」
「…えっ?」
「どしたの?」
「今、見えちゃった…」
「?」
「透視能力ちょっと戻ったかな?うわっ…」
「何何、何が見えたの?」
「…すげぇなぁ…」
「何よ何よ!教えてよ」
「…気が向いたらな」
「ずっるぅ」
「気が向いたら実地で教えてやる」
「実地?」
「…」
「?」
「わかんないのか?」
「何のこと?」
スヒョンは僕を小突き回しながら髪をくしゃくしゃにして抱きしめた
少し嬉しそうな顔をしてた
え?実地?わかんないのかって?
ばーか
ふふ
テソンの憂鬱4 妄想省家政婦mayoさん
いつもの黒の作業着を脱ぎ、黒シャツ、黒のパンツスーツに着替える
いつもボサボサの髪を1本のスティックに巻き付け器用に後頭部に止めた後、
少し迷って薄めにルージュを引いた
♪♪☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。…♪♪
「ヨボセヨ〜…」
「テソンッシ」
「お?どうしたの…何処にいるの?」
「今日のスケジュール終わりでしょ?ちょっと出掛けない?」
「ど・どこによ…い・い・一緒に?」
「何…一緒じゃ、シロ?」
「アニアニ!カジャ!」
「じゃ10分後にロビーで」ブチッ☆
「…@@」
『一緒にって…何処にいくのさ…話なら秘密部屋でいいのに…
みんなに聞かれたくない話かな…くふっ…僕に話あるの?うそっ…(^^;) 』
テソンはスヒョンの部屋へ急いだ
「スヒョンさん!」
「ん?どうした、テソン…」
「すいません、ジャ・ジャケットとコート貸して下さい!」
「えっ?あ、あぁいいよ」
「すぐ返しますから」バタン★
「どうしたんだ?あいつ…」
ロビーでキョロキョロ捜すテソン…
柱に寄りかかりその様子を見ていた闇夜は後ろからテソンに近づき、突っついた
「お?誰!って…@@…mayoッシ?」
「何…化け物で出会ったみたいな顔して」
「だって…いつもと違う」
「ぷっ!…カジャ!」
「う・うん」
「ちぇみぃ〜何食べようかぁ…」
「ん〜〜俺はテスが食べたい」
「えへっ。後でね…あ、テソンさんだ…誰かと一緒…女の人」
「ん??…『あいつら…何処行くんだ?』」
「mayoッシ…何処行くの?」
「調査…」
「調査?」(返事が短いときは何かある…)
mayoッシに連れて来られたのはビルの最上階のスカイラウンジだった
受付にこれ渡してくれる?と渡された封筒を案内の人に渡した
するとマネージャーみたいな人が出て来た
先日訪ねて来た笑わない人。指はちゃんとまだあった
黒のスーツを着たその人はキム・ソヌです。と今日はちょっと笑顔で挨拶してきた
でも…やっぱり目が笑ってない…隙のない人に感じた
案内された席からはソウルの街が一望出来た
「すごい…」
「ここは料理も評判いいって」
だから僕連れてきたのか…素材を活かした食事はおいしかった
デザートが終わる頃マネージャーがやってきて、
「向こうのバーへ移動しましょう」と案内された
La dolce vita という名のバーは赤と黒のインテリアでライトダウンされている
マネージャーはカウンターの中に入って僕たちと話をした
「テソンさんは腕のいい料理人と聞きましたよ」
「いえ…それほどでも…」
「BHCは料理もいいと評判です。スカウトがいいのかな?」
mayoッシはうつむいて笑ってた…何か…変…妙におとなしいし…
生え際が危ないよ?このマネージャー。確かに僕らに似てるけど頭は切れそうだ
マネージャーは帰りに出口まで送ってくれ、オーナーによろしくお伝え下さいと
丁寧に挨拶をした
ホテルに帰るとmayoッシは「ビジネスセンターで仕事するね」とちゃっちゃと行ってしまった
何か期待したやっぱり冴えない僕…
調査:a Bitter sweet Life 妄想省家政婦mayoさん
ビジネスセンターのPCで資料を作っていた闇夜は背後に気配を感じ振り向いた
「あ、ちぇみ」
「どこ行ってたんだ?調査にしては妙に洒落てたな」
「ぷっ…変?」
「いや…」(ちょっとテソンが気の毒だが…)
蜘蛛はPCのディスプレイをチラッと覗いた
「……La dolce vita…??…!!…カン社長のところか?」
「知ってるの?」
「あぁ…少しな…何故調査に行ったんだ?」
「次のスカウトがマネージャーやってる」
「カンの右腕って奴か…ん〜っと…」
「キム・ソヌ」
「お、そうだ、そうだ…カンは裏でチンピラ社長のペクとも繋がってるだろう?」
「うん…あ、テグって若いスナイパー知ってる?」
「ロシアで銃の密売もやってた奴だ。若いが腕はいい」
「ひゅぅ〜@@ そうなんだ…」
「内部の調査はやめろ。危険だ」
「やめろって言われるとやりたくなるなぁ…」
「おい!…指1本では済まないぞ。手首からやられる」
「うっ…そうなの?」
「容赦はしない奴らだ」
「わかった。いずれにせよ2ヶ月くらいで来るだろうし…」
「部屋まで送る」
「いいよ。…ほらっ、捜しにきたよっ」
「ん?」
「ちぇみぃ〜〜いないから心配したぁ〜」
「おぅ…テスぅ〜…すまん…すまん…」
xxxxxxxXxxxxxxxxxx…ぁxxxxxxXxx
「あのさぁ…少しは遠慮つ〜もんが…」
「「僕たち、闇夜の前では遠慮しないの…(^o^)(^o^)」」
「お・お・おい!(>_<)…」
悪魔の指 足バンさん
僕はミンチョルさんを見ていた
舞台の下から指示を飛ばしている
ネクタイを緩め、腰に手を当てて
なにごとか考える時はもう一方の手で口元を触る
決して大きすぎる声は出さない
近くのイナさんたちに間接的に指示を出す
スヒョンの気持ちだってわかる
あのスリルある夜には僕だって絶対に欲しいと思った
あの冷たく光る目が僕に落ちたらって考えると
ぞくぞくする
あの冷静な表情を、僕の動きで歪ませることができたらと
思うとたまらなくそうしてみたくなる
でもそんな風じゃないんだ。スヒョンの気持ちは
幕の影のスヒョンは髪に触れることが精一杯だった
あんな無防備なミンチョルさんから
キスのひとつも奪えない
なっさけない
その分本気だってことに僕は苛つく
いつの間にかすぐ側にギョンビンが立っていた
舞台の明かりを受けて表情が見える
真っすぐミンチョルさんの方を見ている
その視線は強い自信に溢れている
ふんっ
ちょっかい出してやりたくなった
「幸せそうじゃない」
「…ええ」
ギョンビンは僕をちらりと見てそう言った
憎ったらしい
「僕に拒否反応出ない?」
「いえ、もう終わったことです」
「大人なのね、君って」
「褒め言葉と受け取っておきます」
感じわるっ!まぁこういうのも悪くないけどね
「ね、ミンチョルさんのどこがいいの」
「答える理由がありません」
「けっこうヤなやつだね、君って」
「……」
「なによ」
「いえ…はっきりものを言う人だなぁって」
「そう?褒め言葉と受け取っておくよ」
そう言うとギョンビンはおかしそうに笑った
笑うとかわいいじゃん
「実は僕、君も落とそうかなって思ってたんだけど」
「あんなにひどい目にあわせておいて?」
「うん、僕、寒いとことか強いし」
「僕に合わせて?大変ですね、いろいろと」
「そ、コマシも基本的には苦労してんの」
ギョンビンはまたおかしそうに笑った
僕もなんだかおかしくなって笑った
「今度ドライブ行かない?」
「あなたってハンドル握ると1000倍いろっぽくなるって聞きました」
「誰だよそんなこと言ったの!いいとこ100倍くらいだよ」
「あはは、嫌です、絶対に行きません」
「ほんとヤなやつ」
今度は2人で笑ってしまった
思ってたより心地いい時間だった
「なにやってるんだ!」
僕らに気づいたミンチョルさんが近寄って来た
「なんでもないです。雑談です」
「ドンジュン、まだ懲りてないんじゃないだろうね」
「なにもしてないよ」
「ミンチョルさん、本当に大丈夫ですから」
「いいか、ドンジュン、祭の間は大人しくしてろよ」
「はぁい」
「行くぞ、ミン」
「はい」
ふん。なんだよ。おしゃべりしてただけなのに
ギョンビンが少し済まなそうにこっちを向いた
いいやつなんだけどね
寄り添って歩いて行く2人
お互いを守りながら。大事にしながら
出入り口で2人とスヒョンがすれ違った
間の悪いやつ
通り過ぎたあと、スヒョンは振り返りそうになってやめた
暗くて見えないけど、どんな顔してるかわかる
ばか
隊長さんを軽くいなしたスヒョンはどこいっちゃうのよ
僕にいつまでそんな姿を見せつけるつもりさ
テソンの憂鬱5 妄想省家政婦mayoさん
僕はホテルに帰ると借りた服をスヒョンさんの部屋へ返しに行った
「ありがとうございました」
「あ、いいよ。必要な時はいつでも言って」
スヒョンさんはそう言って僕の肩に手を置いて僕の顔を覗いた
フッ…と笑ったスヒョンさんは僕の肩をポンポンと叩いた
僕の心を読んでる?……僕は澱んでるからわかんないよ。スヒョンさんでも
ビジネスセンターの方へ歩いていくと、mayoッシとちぇみテスが出てきたところだった
「闇夜、さっきの件、わかったな」
「mayoさん、おやすみ〜」
ちぇみは僕の顔を見て右眉をピクッとさせて、テスを促して帰っていった
「お?どうしたの..エエ~イ…迎えに来た?」
「うん。さっき蜘蛛が言ってた件って何?」
「ん?うん…あっ…痛っ…」
mayoッシがよろけた時、持っていた資料が床にばらけた
*キム・ソヌ経歴書
*キム社長組織系統図
*パク社長犯罪履歴
*スナイパー:テグ資料
*La dolce vita での裏金工作資料…
僕は散らばった資料を拾いあげた
表紙を見る限りにおいても細部に渡る膨大な資料のように思える
こんな調査いつしてるんだ、いったい…
「あははっ…慣れない物履いちゃったみたい…」
「資料は僕が持つから…」
「あ、お願い…」
「あと……んと…」
僕はポケットに手を突っ込んだまま黙ってひじを突き出した
ぷっ!と笑ってmayoッシは掴まって歩いてくれた
でも僕はやっぱりあのキム・ソヌ…気になる…
柱の影から覗く2人
「ちぇみぃ〜あの2人…」
「テス、闇夜の場合は..ないな。あいつは中性に近い」
「…中性??」
「男のようで女だ。女のようで男だ。そんな奴だ」
「ますますわかんない…」
「はは…そうか?」
「ぅん..」
横恋慕 ぴかろん
「第二編集部屋」のプレートが取り付けられた××号室
ラブ?コメディー映画の編集に大わらわ
チニはホテル業務と掛け持ちなので、もっぱらチョンマン、シチュン、そしてチェリムの三人が中心になって編集を進めている模様
でもチェリムは時々抜け出している(^^;;)
「今日は抜け出すなよ!」
「はいはい」
「いっつもその返事だ!抜け出しても10分だけだぞ!俺たちだって舞台稽古があるんだからな!」
「はいはい」
「明日一日で仕上げなきゃいけないんだ!」
「はいはい」
「ったく解ってんのか?」
「シチュンさん!チェリムさんに文句言う前にアンタがもっと働いてよ!」
「…へーい」
あ…チェリムの奴ニヤニヤ笑ってる
やな感じ
けど
かわいい…
ああ俺ちょっと変?
あんな胸のない色気のない女は対象外だったのに
ここんとこずーっと女日照りだったからか?
妙に気になる
多分テプンさんがアイツといい感じになったのが俺の闘争心に火をつけたんだろうな…クソ
「図星指されたからって落ち込んでる暇ないでしょ?ホラ、アンタ得意のヤらしいセリフ考えてよ」
「チェリムさん、このさぁ、この総支配人からのハムちゅうは…入れるべき?」
「う…そうねぇ…いらないんじゃないの?元々台本になかったんでしょ?チニだってこのきったない場面は見たくないでしょ」
「(^^;;)…イナさんからのハムちゅうだって、あんまり綺麗とは…」
「…でもチニはイナさんがリードしてる場面は絶対入れるって頑張ってたわよ」
「…わかんない。見たいのかな…」
「サル君、悔しいの?」
「…いや、チニさん辛くなんないかなって…」
「優しいっ!そこに惚れたのね、チニ(^o^)」
「え?」
「大丈夫よ、アンタがもぉっと濃厚なのしてあげればさ」
「…チェリムさん…やだっ恥ずかしいっ」
「やっちゃえ〜。ね、シチュン」
「…へ?何?」
「聞いてなかったの?」
「…あ、セリフ考えてた…」
「あら、真面目にお仕事してたんだぁごめんね」
「いや…」
考えられるかよ!お前が気になって…
あ、いや、違う。気になんない!
セリフセリフ…
「どれ、見せてよ」
『綺麗な背中だね、テジュン』
『いやだ…』
『ここに僕は跡をつけるよ』
『あ…ン』(思いっきり色っぽく)
『ちゅうううう』
『ああああっ』(感じてる風に)
『痛い?』(優しく)
『気持ち…いい』(息も絶え絶えに)
『そう、よかった。これは毒を吸い出す方法なんだ。普通吸盤などの器具を使ってやるんだが、僕の口は特別なんでね
唇で吸い出すのが一番効果が上がる…ちゅうううう』
『あああああン』(イク感じで)
「…ねぇちょっと…アフレコするんだったよね。このオッサンのセリフって誰がやるの?」
「…お前」
「なんでアタシ?!」
「だってチニさん忙しいし、俺がイナさんのセリフやるし、チョンマンは録音するし…」
「アタシが録音する!サル君がやれぱいいじゃん!」
「だめだよ、俺たち声が同じになっちゃうから、お前しかいない!」
「…やだこんなの、どうやって『イク感じ』なんて表現すんのよ…」
かわいいっ!真っ赤になってる…
ああ新鮮だなぁコイツって…
思えば俺の付き合ってきた女なんて、すぐ…アレだったもんなぁ…
「何笑ってんのよ!」
「いや、練習になるぞぉ。テプンさん(ズキン)に迫られた時の声の出し方の…」
「…そうかな?」
俺、騙してる?…いいよな、少しぐらい…
「お前ならできるよ、な」
「…わかった。頑張る」
『おかしい。シチュンがこんな優しいなんて!なんか魂胆があるな?テプンさんに知らせなきゃ!』
「サル君、編集間に合うの?」
「へっあっ後はその、ハムちゅうと最後のベッドのマッサージ部分ですね」
「セリフのアフレコ、いつやる?」
「今夜、夜までに編集終えます」
「チニのためにもお願いね」
「はいっ」『あれっ何かしなきゃいけないと思ったのになんだっけ?忘れちゃった』
「で、シチュン、どうやったらその『イク感じ』とかの声が出せるの?」
「…そりゃ簡単」
「どうすんの?」
「ヤればいいんだ」
「は?」
「ヤるの」
「何を?」
「…」
「?」
「…ごめん…冗談」
参ったな、わかんねぇんだコイツ…ほんと色気ねぇなぁ…ドキドキ
「じ、じゃあ、最近ときめいた事でも思い出してみろ」
「ときめいた事?…あ…歌。ソ・テプンが歌った歌の冒頭部分の色っぽい声(^o^)」
「…」『そーゆー事言うなあっ!』
「♪アニャ〜ナンケンチャナ〜よ!うーん…もう一回生で聞いてこよっと」
「待て!それなら俺も歌える!歌ってやるから行くな」
「なんでよ!」
「…時間がないだろ?座れここ」
「あん」
どきどき…俺、ヤバイかな…
「いいか、目を瞑れ。声だけ聞いてろ」
「うん」
チェリムは目を瞑っている
キスしちゃおうかな
いや、駄目だ
俺は自分の欲望を抑えて歌い始めた
テプンさんと同じ声で…
アイツはうっとりと聞いている
俺はアイツの肩を抱いて俺の肩にもたれさせた
アイツはきっとテプンさんだと勘違いしている
アイツの耳元に口を寄せて囁くように歌ってやった
アイツは少し吐息を漏らした…
俺…コイツが好きだ…
癒し1 オリーさん
ドアを開けるとミンチョルがいた
ちょっと予定に変更が出た、チェックしておいてくれ
そういうと一枚の紙を差し出しすぐ引き上げようとした
僕は思わず声をかけた、ちょっといいか
あいつは振り返った
僕は部屋の中に入れと顎をしゃくった
祭の予定に変更があった
部屋に戻るついでにスヒョンに届けようと思った
予定を渡して戻ろうとすると
呼び止められた
何だろう
何か用なのか、あいつが聞いた
せっかちな奴
この間はすまなかった
あいつは僕をまっすぐにみつめ何のことだ、と聞いた
僕は下を向いて目線だけをあいつに向けた
屋上でほら、ちょっと言い過ぎた。悪かったよ
あいつはちょっとビックリしたように僕を見返し、いいんだ、とつぶやいた
あれはお前の言う通りだ。僕が悪い
あいつは僕から視線をはずし窓の方を見て言った
僕はその静かな横顔をぼんやり眺めていた
部屋に入れと言われたので入った
思いがけずあいつの口から詫びの言葉を聞いた
あれはあいつが正しかった
僕が悪いんだ
胸がうずいた
あいつの顔を見るのがつらくて窓の方に視線をそらした
しばらくするとあいつはまた僕を振り返り
イナにも同じ事を言われた。だからもう気にするなよ、と僕の腕をそっとたたいた
その瞬間だった、僕の脳天が衝撃を受けた
あいつの心が僕に流れ込んできた
熱い思いと自責の念が嵐となってあいつの心の中でせめぎあっていた
僕は信じられなかった
心の中に嵐を抱えたまま、あいつは静かに立っていた
口元に微笑みさえ浮かべて
じゃあな、とあいつは部屋から出て行こうとした
もうあまり考えるのはよそう
考えてもどうしようもない
僕はこの気持ちをひとりでかかえていくしかないのだから
僕は戻ろうと出口の方へ向かった
テソンの憂鬱6 妄想省家政婦mayoさん
「料理は参考になった?」
「うん。素材を活かしてる料理だったと思うよ」
「そう。よかった…ぁ…っつぅ」
闇夜は湿布が終わるとソファでウトウト寝始めた
僕は毛布をかけてやり、近くのソファに座った
僕はテーブルの上の資料の中から1つの資料に手を伸ばした
*キム・ソヌ経歴書*
-1997〜2004の7年間でスカイラウンジを仕切る総マネージャーにのぼり詰めた男
-すべてに完璧を求める男
-クールでストイックな男
-ボスの信頼と寵愛を全身全霊で受けている男
-人を愛したことのな冷徹な男
-ボスの愛人ヒスの監視を続けている男
-ボスのために死ねる男
-○×◆○×▽○×◆▽…
-○○×○×◆▽◆◆▽…
最初のページはすべて箇条書きで書かれていた
単純明解な短い文節は僕の気持ちを妙にザワザワさせた
感情を押さえている様に感じ取れる。考えすぎかな
僕はその時、キム・ソヌと話したときの、うつむいて笑ったあの顔が浮かんだ
厨房や覗き部屋にいる時とは違う顔がだった
僕はちょっといぢわるをしたくなった
空白の部分に赤ペンでおっきく書いた
*笑わない男
*生え際が危ない男
ページの一番下はこう締めくくってあった
<ボスを裏切る→抗争→孤独→破滅>
僕はちょっと苦しくなって資料を閉じた
短い返事、短い言葉は感情を見透かされたくない闇夜の癖
僕と過ごす時間が一番長い
いつも一緒にいるのに
ソヌと話した時の闇夜は僕の知らない闇夜だった
悔しかった
僕が知らなかった。ってことがちょっと悔しかった
覗きは映画評論家みたいじゃないと…闇夜の変な持論
男も女、どちらの感情も持たなくてはいけない…変な理屈
じゃぁ…何?あの笑ったあの顔…
あれ、完璧に一瞬女だよね…
っていうか僕がそういう目で見ただけなのかな…
闇夜にとってキム・ソヌはただのスカウト人員に過ぎないのかな…
そんな顔をさせたキム・ソヌ…
絶対気になる。 どんな奴か観察したいんだ
生え際もちょっと触りたいし。すこしツルツルしてる
何年か後には…来るね。絶対
そしたらトファンと同じで…つけるね。彼も
うちの店に来たら…誰が最初にこますのか…楽しみだ…
たぶん闇夜も同じだろうな
あぁ…早く来ないかなBHCに…
僕は闇夜の寝顔を見ながらそんなことを考えていた
激流 ぴかろん
彼の唇だけを感じる
僕の目は見開かれているのに何も見えていない
ただ繋がれた唇の柔らかい感触だけを感じる
ついさっきまであった僕の世界は砕け散ってしまった
彼がこうして壊したんだ彼が…
彼の顔の輪郭が僕の視覚を刺激する
僕の涙腺を刺激する
唇を触れ合ったまま僕は涙を流した
何の涙?
悲しいの?
嬉しいの?
わからない
僕が感じているこの胸の疼きは何?
…るんです…
何?
っこんするんです…
え?何?
結婚するんです…だから先生も幸せを掴んで…
僕にこんな事をしておいて?
僕を好きだと言っておいて?
今しているこのキスは何?
君、何を考えてるの?
力が出ないんだ
何もできないんだ
立ち上がれもしない
君を突き飛ばすことも
君をめちゃくちゃにする事も
君を殺すこともできない…
ごめんなさい…
君が唇を離して静かに言った
コツンと僕の額に自分の額を当てて…
こんな事は恋人同士がやることだろう?
僕達は恋人同士なの?
先生が好きです…先生に幸せになってほしいんです…
僕らBHCの仲間は、口に出さなくてもみんな、それぞれの事思いやってます
これ、テジンが一生懸命作ったんだ
ほら、先生のイニシャルだよ、チョークだから元々Iってかたちだけどさ…
でもね…羽根がついてるでしょ?
テジンさんは解ってるんだ、先生が心を閉ざしてるってこと
あの人も色々あったから…
先生に羽ばたけって…そう言ってるんだよ…
みんな、お互いを感じあってるんだ…僕も一人じゃない…
先生、もっとみんなを信じてよ…幸せになってよ…
「先生?」
彼は僕の目を覗き込んだ
その血まみれの美しい顔が、何か僕に説教じみたことを言っていたな…
「聞こえてた?」
「ああ聞こえたよ」
誰が答えたんだ?…僕?
彼は僕をまた抱きしめた
体中が甘く痛む…
僕の血管から見えない触手が伸びてきて、僕を抱きしめている彼の体を徐々に縛り付けている
「少し部屋で休んで…夕方のリハーサルに備えてください…」
彼は僕を助け起こし、僕の部屋の僕のベッドに寝かせた
見えない触手はスルスルと引っ込んだ
「じゃあ…僕…部屋へ帰ります」
彼はそっと微笑んで僕に背を向けようとした
待てよ
お前俺の言った事、聞こえなかったのか?
「え?」
俺の心に踏み込んできて、俺の思い出も俺の居場所も全部ぶち壊して、俺の心を奪って…
そんなきれいごと並べてそして放り出すのか?
「せんせ…」
俺の思い出はどこだよ、俺の初恋の彼女はどこに行ったんだよ
お前が俺を好きだって言って、そうして俺にキスしたんだろ?!
お前が俺を誘惑したんだろ?!
「先生…どうしたの?あっ」
僕は…何をしているんだろう
何故彼を引き戻したのだろう
僕は彼を引っ張り、ベッドに押し付けた
結婚する?幸せになる?
お前は彼女を愛してなんかいないじゃないか!
お前が欲しいのは「お父さん」と言う名の家族なんじゃないか!
お前が好きなのは俺なんだろう?
違うか?!
そうなんだろう?
「先生、やめてください!先生!」
抵抗する彼の腕を片手で押さえつけて僕は、彼のシャツを引き裂いた
彼の顔が恐怖で引きつった
お前が悪いんだ
俺を砕いた!
返せよ!俺の住む世界を!
お前だけがぬくぬくと幸せになるなんて許さない!
誰が言ってるんだ!やめろ!彼が泣いている!やめてくれ!
僕だ!僕が言ってるんだ
むき出しの心から溢れ出る欲望。せき止めていたバリアーが砕け散ったから…
『彼が好きだ』という抑圧されていた想いが、激流となって流れ出していく
彼を自分のものにしたい!
何か叫んでいる彼
乱暴にその口を僕の口で塞いでやった
血の味がする
めちゃくちゃにしてやる
見えない触手が彼をがんじがらめにする
僕の手は、その見えない触手に操られ、彼のベルトを外させ、下着の中に手を滑り込ませた
唇から唇を離し、彼の体中にそれを這わせた
押さえていた腕を放し、彼の体中に指を這わせた
彼は…静かだった
彼は…僕の背中に手をまわし、棘だらけの僕の体を、彼の真綿でまた…包み込んだ
いいよ…先生…何しても…
その声は清らかだった…
見えない触手が消えて無くなった…
「…ごめん…ウシク…ごめんよ…ごめん…」
僕はウシクの胸に突っ伏して泣いた
大声を上げて泣いた
いいよ…先生…僕がいけないんだ…
ウシク…
癒し2 オリーさん
僕は突き動かされるようにあいつを抱きすくめた
このまま行くなよ、そんな心を抱いたまま
あいつはびっくりして僕の腕を振りほどこうとした
何するんだ、離せよ、スヒョン
だめだ。しばらく抱いてやる
何言ってるんだ、離せ
僕らはもみあった
突然あいつに押さえられた
一体何のつもりだ
今度は僕にまでちょっかいを出すつもりなのか
いい加減にしてくれ
僕はあいつの手をふりほどこうとした
僕はあいつの耳元で言ってやった
僕の特技を知ってるだろう。静かにしてろ。楽になるから
あいつは一瞬びくっとした
少しづつあいつの力が弱くなり、掴んでいた僕の腕から力が抜け落ちた
そんなことまでわかるのか
あいつは小さくつぶやいた
いいから黙れよ
それであいつは抵抗するのをやめた
信じられない言葉を聞いた
ミンを求めながらもどこかで妻に呵責を覚えている僕の心の闇
あいつにはそんな僕の心の奥の葛藤まで読めるのか
僕を抱きながら楽になれと言っている
どうすればいいのだろう
迷っているうちに僕はどんどんあいつに包まれていった
僕は力の抜けたあいつを懐に抱き寄せた
あいつは僕の肩に顔をうずめた
またあいつの心が僕に流れ込んできた
お前が悪いわけじゃない、自分ばかり責めるな
いや、やっぱり僕が悪い……
やめろよ、ミンのことだけ考えろ
それでいいのか…
いいに決まってる
あいつに包まれると不思議な感覚が広がった
今まで経験したことのない安堵
ほんとうにいいのだろうか
でもとても心地よく包まれていたので、
僕は抗う事を忘れてその平安に落ちこんだ
うねり ぴかろん
泣きつかれて眠るというのはこういう事か…
僕はいつの間にか眠っていた
目が覚めた時、ウシクの姿は無かった
僕の胸にペンダントがかけられていた
それは僕のではなく、ウシクのものだった
ウシク…すまなかった…あんな事をしてしまって…
顔を合わせられるだろうか…
きちんと謝ることができるだろうか…
僕は彼を壊そうとした
もう少し眠ろう
疲れたから…
目が覚めたら羽ばたけるような気がした
何日ぶりだろう…部屋に戻るのは…
体が震えていた
スヒョンさんはいなかった
僕はシャワーを浴びた
無意識に、豹変した先生が口付けた場所を擦っていた
僕がいけなかったのに…
バスローブ姿で部屋に行くとスヒョンさんがいた
「久しぶりだな…」
スヒョンさんは静かに言った
「…」
「どうしたの、こんな時間にシャワー?」
ふふっと笑ってスヒョンさんが言った
僕は笑って答えようとしたのにただ震えているだけだった
馬鹿
気づかれてしまう…
スヒョンさんは心配そうな顔で肩に手をかけた
イヌ先生と何かあったな?
…う…
「ウシク…お前…」
「…え…」
ウシクのガウンを少しずらして見た
ウシクは身を捩ろうとしたが動きがギクシャクしている
襲われた?
思考が読めない
随分混乱してるな…
ガウンの下に覗いた肌にたくさんの跡がある
あの先生が?こんな事を?何があったんだ
僕はウシクを抱きしめた
「やめて!スヒョンさん!」
必要以上に怯えるウシク
やはり…
「ウシク、何もしない。楽にしてごらん」
「…」
読みきれない…痛みと苦しみと悲しみと切なさと良心の呵責と…何故だ?
何故こんなに自分を責めているんだ?
「スヒョンさん…僕…ひどいことをした…」
「僕には、君がひどいことをされたように見えるが…」
「ううん…僕が傷つけてしまったんだ…」
「…どういう事?」
「…彼の殻を取り除いて楽にしてあげられると思ってた…」
「…イヌ先生の事だね?」
ぽつぽつと話しだした彼の言葉と、彼の体から伝わる思考が一致し始める…
随分大きな渦だな…大丈夫か?
「彼が閉じこもってるのはずっと感じてた。それでも傍目には普通に見えたし、それほど苦しそうでもなかった…
でも一緒にいて、どうしても彼の心を開きたくなった…。それで僕は…」
「…彼の心の防波堤をつついた?」
「…少しだけ穴を開けるつもりだった…そうすれば、閉じていた心がゆっくり開かれると思ってた」
「…わかった…」
「え?」
「辛かったな…怖かったんだな…」
「ス…」
「よく耐えたな、ウシク…」
「スヒョ…」
ウシクが泣いている
イヌ先生の心の防波堤は、ウシクが入れたひびだけのせいじゃなく壊れたんだ
多分そうだろう…
一気に壊れてしまったから、感情を抑えられなくなってきっと…傍にいたウシクを…
「好きなのか?」
「…」
「結婚するんだろ?」
「するよ…でも…先生が好きなんだ!どうしたらいい?スヒョンさんどうしたらいい?!」
「ウシク…」
「あのままにしておけない。僕がバラバラにしてしまった。どうしたらいい?」
「ウシク…焦るな。ゆっくり考えよう…少し眠れ」
「…」
かわいそうに…
「僕には受け止めきれない…」
「ウシク…」
「でも…逃げたくない…どうしたらいい?」
答えられなかった
僕にだってわからないよウシク…
僕はため息をついてウシクの額にキスしてやった
それから鼻に…そして唇に…
ウシクは僕の唇を強く吸った
どうしたんだウシク…
僕はイヌ先生じゃないんだぞ
いいんだ…優しくキスして…お願いだから…
優しく?…いいよ…そういう事は得意だから…
長く優しくキスしてやるとウシクは安心して目を瞑った
少し眠りなさい
僕はウシクを寝かせてイヌ先生の部屋に向かった