はじめに

たまに、自分は霊感みたいなものがあり、よく霊や妙なものを見聞きする、などという人に出会う。大抵、その御仁はいたって真顔である。相手をからかってやろうとか、変な気負いからではなく、思わず瞳の奥まで覗きこんでしまうが、やはり平静な眼差しである。そこで私に限らず大概はこう感じるのではないか「そんなもん見えて恐くないの」と。
そして返ってくる口ぶりもおおよそ同様で「別に恐くは、嫌なことは嫌だけど」前々からそこのところがどうも引っ掛かってて釈然としない。少なくとも心霊なんてしろものこの世のものではない、まあ仮に存在するとしたところで、絶対に気持ちのよいものではない。そこで「その見えるというのは一体どんな風にしてあるわけ、はっきりしてるとかぼやけているとか、うらめしそうな顔だとか、具体的に聞きたいんだけど」と明解な答えを促す。すると「普通ですよ。身体が透けてもないし、ちゃんと服も着て歩いてるし、まあ彼らも元人間なわけですからそりゃ、表情には違いはあるけど、怒ってるとか悲しそうとかね、笑ってる人もいますよ」わ、わらってる!ひ、ひと!としばし絶句の後で、しかしまあよく考えればそんなもんかと納得してしまうが、一般に映画や小説などでイメージしている幽霊の在り方とはかなり違う。そしてあっ、そうか、わかった、なるほど!普通だから恐くないんだ。何だ早くそう言ってくれればいいのに。と手をたたいて感心してると、その御仁「生きてる人間でも何ていうですか、こう普通じゃない人っていますよねえ、尋常じゃない感じの」と目を少しばかりつりあげトーンも下がり更にこう言ったのである「不吉って言葉ありますよね、生理的に嫌ーな感覚、そんな場面があるんですよ、でもね、何せ不吉でしょ。それ以上はさすがに目をそむけるんですよ」それはどんな事でしょう。ぐ、ぐたい的に言えば、、、



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