このページ では古今東西、銀幕の中より魅了してやまない様々なアクターを紹介しつつ独自のオマージュを捧げたいと思います。どちらかと言えば脇役、仇役的な個性派からカルト俳優まで百人を目指します。
山内恵美子は伝説である。そしてその出演作「犬神の悪霊」も伝説なのである。

山内恵美子
 その情熱的ではあるが憂いをおびた陰りのある眼差しを、スクリーンの彼方からでも十分すぎるほどの切迫感をともない、眩しくも哀しく投げかける。主演の大和田信也も戸惑い心が大きくゆらめいた。東映「犬神の悪霊(たたり)」での後半に差し掛かる一場面である。「うちも前から好いとったんよ」張り詰めた緊張の中、今は自分の親友の夫となってしまった現実に哀切を込めてそう告白する。夫人役の泉じゅんもけっして悪くはない、しかしその憂愁の眼差しにおいて山内恵美子は作品中、登場回数が少ないにもかかわらず、静かだか深く切ない刻印をしっかりと我々に残したのだ。
「犬神の悪霊(たたり)」は時折、都心のメジャーではない映画館で上映されているようだが、ビデオ及びDVD化は今だかつてない。私はひたすら待ち続けた。20年以上も待った。そして先頃ついにそれを入手したのである。もちろん海賊版であり実際はひと昔前のダビングを重ねたアダルトビデオ並みの画質であった。それでもかまわない。そこにはけっして忘れ去ることの出来なかった、一輪の野草のごとく佇む彼女の姿があった。淡い恋情ともいえる片思いはまだ始まったばかりなのだろうか。
山内恵美子という女優は映画出演が数少ない。73年に東映「ネオンくらげ」でデビューしたのち「番格ロック」で初主演、清純派ではなくどちらかといえばワイルドで悪女的な役柄に扮してきた。テレビのドラマ出演も80年後半までいくつかあるようだが、残念ながら私はブラウン管では一度もお目にかかる事はなかった。

20数年ぶりの再会を祝して山内恵美子さんに祝杯を!ホワイトラムにコアントロー、レモン果汁をしぼりこみ軽やかにシェイク、XYZでございます。



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