2005年4月24日

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 気持ちのよい季節になりました。 一斉に若葉が伸びて、新緑が日差しに映えるようになりました。 この間、冬が終わったと思ったら、 もう初夏ですね。

この季節になると出てくるのが、 サマータイム(夏時間)の議論です。 何と、国会で導入法案の提出が検討されているというので、 今回は、日本と夏時間について考えてみました。

 ◇サマータイム導入法案、「春時間」なら賛成だが…◇ 

 国会に超党派の「サマータイム制度推進議員連盟」というのができていて、 22日、国会内で総会を開き、サマータイム実施法案を決定したそうです。 各党で党内手続きを進めて、 5月の連休明けに議員立法で法案を提出する考えとのこと (毎日新聞)
です。
ウエッブで検索しても、法案そのものは見つかりませんでしたが、 「読売オンライン」 によると、
「法案は、全5条と4項の付則で構成。 時刻の切り替えは、 3月の最終日曜に午前2時から午前3時に進め、 10月の最終日曜に午前3時から午前2時に戻す。」
というものだそうで、 4月から10月まで、時計の針を1時間進めることになります。

今年の3月に発表された、 「関西広域連携協議会」の調査研究報告書 (報告書概要のPDFファイル) によると、「サマータイム制度」というのは、 「日の出時刻が早まる時期に、 時計の針を1〜2時間進め、 夕方の明るい時間を増やすことにより 太陽光を有効活用しようとする制度」 とのことです。

なお、この報告書は、 わが国でも戦後実施されたこと、 どんな効果が期待できるかなど、 賛成の立場からですが、要領よくまとまっていて便利です。

 議員連盟には、自民、公明、民主3党から190人が参加しているとのことですが、 法案を提出するためには、各党内で了承をとるという手続きが必要だそうです。 法案の上程が決まったわけではないようですが、 国民の日常生活に大きな影響を与えるような立法が、 国民的な議論がされていない中で法案づくりが進められているかと思うと、 日本の民主主義の底の浅さを感じます。

 不思議なことに、 夏時間を導入しようという意見が跡を絶ちませんが、 日本で、 「夏」の日照時間を節約しましょう、 という発想が成り立つとは到底思えません。

日本の夏は猛烈に暑いのです。日照は敵です。 そのために、夏には、 日が昇りきる前の午前10時くらいまでを、 人間の活動時間としてきました。 夏祭りは、日が落ちる午後7時くらいから始まります。

夜は寝苦しく、寝不足になりがちなので、 日中は涼しいところで昼寝するような習慣もあります。

考えてみると、朝の気持ちのいい1時間を 自由時間から労働時間に差し出して、 まだ日のあるうちの午後の1時間を労働時間から自由時間に返してもらうのです。 まるで猿蟹合戦、 おにぎりと柿の種の取りかえっこのようですが、 この柿の種が実を付けて、 私たちの私的生活を豊かにするのかは疑問です。

エアコン頼みの生活になった今も、 動物としての人間の体は、季節に確実に反応します。

東京のマンション暮らしの人はどうか知りませんが、 地方都市で木造家屋に住む私たちは、 夜はエアコンをかけていても寝苦しいのです。 早く床についても、気持ちよく熟睡するのは明け方です。 朝起きるのが本当につらいのに、 今より1時間早く起きなければならないのでしょうか。

夕方は、今の4時過ぎに、終業になりますが、 この時間はまだまだ日差しも強く、 ずいぶん暑い中で家路につくことになります。

残業する場合は、どうなるのでしょうか。 私の職場は、終業と同時にエアコンが切れます。 今でも、一挙に室温が上がって、残業は地獄ですが、 4時過ぎにエアコンが切れたらと、想像しただけでも汗が噴き出します。 職員の健康管理の責任が問われることになるかもしれません。

夏時間導入論は、 現実を見ないで、机上で考えられているように感じます。 また、東京での感覚で考えられているようで、 地方都市での生活は考慮されていないようにも感じます。 総じて、新しい政策を考えるための想像力が欠如しているのではないでしょうか。

 「サマータイム制度」には、次のような効果があるとのことです。
(1) 夕方に明るい活動時間が増えて、 家族とのふれあい、レジャーや地域ボランティア などの機会が増える。
(2) 明るい時間が増えて照明用エネルギーを節約できる。
(3) 明るい時間に帰宅ができるので夜間における犯罪の減少や交通事故の防止に役立 つ。

しかし、真夏を想像すると、
(1)は、暑くて夕方の時間が無駄になるかもしれません。
それより、残業をなくす方が、効果があるのではないでしょうか。
(2)は、日照時間に、残業の人と帰宅の人があったり、 生活の場が分散するので冷房エネルギーが増える。
(3)は、米国の事例から期待できるというのですが、 日本の場合は、その効果は疑問です。
今でも地方都市では、残業か寄り道がなければ、 明るいうちに帰宅できるのです。

(1)と(2)のような効果は、 日本の季節なら、 だいたい4月から6月くらいなら期待できます。 したがって、「春時間」なら検討する価値があるかもしれません。
日本人にとって「春」はとても良い季節です。 「春」をもっと楽しみましょうと 春分の日に時計を1時間早めて、 本格的な夏の来る前に1時間遅らせる、 いうことなら、 日本の季節感にも合って、 わが国に「ゆとりのライフスタイル」をもたらすことができるのはないでしょうか。

「夏時間」の議論が活発になるのは、 どうも春から初夏にかけて、気持ちのよい季節で、 真夏にはいつのまにか姿を消してしまうのです。

 「夏時間」の是非は、 7月下旬から9月中旬に、 国民的な議論をしたうえで決めてもらいたいと思います。

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