2004年1月25日

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  ザ・サークルのギター弾き「ムラさん」から、 日頃お世話になっている「みなさん」へのお便りです。 ホーム・ページでは十分に伝えられないザ・サークルの近況や、 文化情報、私の雑感などを、随時お知らせします。
メイルでも配布していますので、必要な方はお知らせください。次回からお送りします。
ご意見、ご感想などは、 Eメール でどうぞ。


 寒さは厳しいのですが、 日はずいぶん長くなってきました。 庭の梅の木には、花芽がたくさんついています。 冬来たりなば春遠からじ ということでしょうか。

 なお、1月4日の新春ライブは、 年明け早々にもかかわらず、30人近い方が、 わたしたちの演奏を聞いてくれました。
感激です。ありがとうございました。

 ところで、今年は、すでに4本の映画を見に行きました。
恒例のゴジラ、評判のニモとラスト・サムライ、 それに「半落ち」です。 半落ちは良かったですね。 名優さんがたくさん出て、すばらしい演技で感動させてくれました。
新年第2回は、映画の話題を2つ。
梅の花芽がふくらんだ

 ◇リング公開迫る、ハリポタも年内公開予定◇ 

 ロードオブザリングは、 いよいよ三部作の完結、 「王の帰還」が2月14日公開です。

 ハリポタも、 ワーナーの公式サイト によると、
『シリーズの第3弾「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」は、 現在アルフォンソ・クアロン監督のもとに、 屋内撮影はリーヴスデン・スタジオで、 またイギリス、スイスの各地でロケが行なわれています。』
とのことです。
 先日、劇場で、予告編を見ました。
ダンブルドア校長役のリチャード・ハリスが急死とか、 ハリーら子役がませてきたとか、 続編の制作が危ぶまれるニュースも流されていましたが、 年内には、上映されるようです。
予告編で見る限りは、 おなじみのスネイプやマクゴナガル先生にまじって、 ダンブルドア校長も前任とよく似た雰囲気をだしていました。

 また、公式サイトには、
『「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」の撮影は、 2004年4月からイギリスにおいて始まる予定です。 2005年後半にワーナーブラザーズ映画から公開が予定されている』
とも出ていて、
『撮影スケジュールに重複する部分があるため』、 『マイク・ニューウェル氏が、 ワーナーブラザーズ映画の大ヒットシリーズ第4作、 「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」の監督に決定しました。』
とのことです。

 なお、本の方も、 アマゾン によると、日本語訳が秋には発売のようです。
『「ハリポ」5作目、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の発売が 2004年9月1日に決定。』
とのことです。
 ◇ラスト・サムライと武士道◇ 

 評判の「ラスト・サムライ」(公式ホームページ) ですが、 外国人の日本イメージを見せられるのでは、 と敬遠していました。 「そんなことはないよ」と聞いて見に行きましたが、 良くできた映画で、 外国製という違和感はほとんどありません。
なにせ、日本制作と比較して、 お金がかけてあるのは歴然で、 特にその点は楽しめます。

 冒頭で、白人アメリカ人によるインディアンの虐殺が描かれ、 トム・クルーズ扮する元騎兵隊員は、 それに加担したという罪の意識に悩まされています。 それが、物語を通しての基調線になっています。
カスター将軍の第7騎兵隊が多数のインディアンと戦って玉砕したのは、 子どものころ英雄物語として読んだ記憶があります。 (中身は思い出せません) その評価が、最近の米国では変わってきているのですね。

 トム・クルーズが上陸する横浜の様子など、 日本人の私も、あんなだったのだろうなと見えて、 日本の描き方には違和感はありませんが、 渡辺謙扮する勝元(つまりラスト・サムライ)の拠点になっている農村の描き方は、 戦国時代までのもののように感じました。
江戸時代までに兵農分離が進んだので、 幕末には、一般的に、武士は農村にいませんでした。 農地を所有するということもなくなっています。

藩によって政治や制度が違うので、 あのような農山村がなかったと言い切るのは難しいのですが、…

また、これを言い出すと、 黒沢明の名作「七人の侍」にも逆の疑問がでてきます。
野武士に農村が襲われるのですから、 戦国以前のお話だと思われるのですが、 そのころの農村は、基本的に武装していました。 (だから刀狩りが必要だった)

 ラスト・サムライでもっとも気になる点は、 「武士道」を賛美していた点です。

 昨年11月25日付けの中日新聞で、 佐藤正明描くところの風刺漫画「真綿で首を…」は、 ラスト・サムライを取り上げていました。
(1コマ目)
渡辺謙とトム・クルーズが官軍と戦っているスクリーンがアップで描かれ、 「日・米手を携えて戦う映画」 とあります。
(2コマ目)
ブッシュ大統領と小泉首相が、ふたりでこの映画を見ています。
ブッシュ「どうよ?」
小泉「はあ、いいっすねー」
(3コマ目)
映画を見終わったふたりがお茶を飲んでいます。
ブッシュ「でどうだった?」


漫画は笑えましたが、 小泉さんが、もしこれを見て、 「感動した」などと言ったりするとこわいですよね。

 新渡戸稲造「武士道」(岩波文庫)によると、
武士道とは、 『武士がその職業においてまた日常生活において守るべき道』『「武士の掟」、すなわち武人階級の身分に伴う義務 (ノーブレッス・オブリージェ)である。』 とし、
『道徳原理の掟であって、武士が守るべきことを要求されたるもの、 もしくは教えられたるものである』 とのことです。

 また、 日本経済新聞で今年の1月5日から16日まで連載された 川勝平太「やさしい経済学−歴史に学ぶ・移りゆく覇権」によると、 実は、「武士道」は、平和主義なのだそうです。

『江戸時代のさむらいは全員が「士」である。 「士」という字は、武人ではなく、学徳のある人物を意味する。』 とのことです。
戦国時代まで武力を行使したサムライが、 江戸時代になると、武力を捨てて、学徳を身につけ「士」になったというのです。
『日本社会の支配者層が、 16世紀から17世紀以降にかけ 武力中心主義から学徳中心主義へと変わった。』
それを支える倫理が「武士道」で、 四書(「大学」「中庸」「論語」「孟子」)を勉強して徳を積み、 その徳によって藩を治める徳治主義だったそうです。

武を捨てて軍縮し、 土地(資本)から切り離された「士」による藩経営と 勤勉が、江戸時代の経済発展を生み出し、 明治維新はその最終局面とのことです。

戦後の経済成長をみても、 「平和」が社会にもたらすものは実に大きいようです。

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