2003年3月16日

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  ザ・サークルのギター弾き「ムラさん」から、 日頃お世話になっている「みなさん」へのお便りです。 ホーム・ページでは十分に伝えられないザ・サークルの近況や、 文化情報、私の雑感などを、随時お知らせします。
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 ようやく記事が少したまってきました。
古くなりそうなネタは、一挙に大処分、 というわけで、 昨年の映画に関する話題、 ベスト邦画と、観客数についての 豪華「二本立て」でお送りします。

 ◇昨年のベスト邦画は「たそがれ清兵衛」◇ 

 3月7日に、第26回日本アカデミー賞の発表授賞式が行われました。
昨年公開の映画が対象なのですが、 邦画では、「たそがれ清兵衛」が、 作品賞のほか、 監督賞(山田洋次)、 主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(宮沢りえ)など 12部門で最優秀賞を受賞したそうです。 (産経新聞のWEBページ)

 こちらは旧聞に属しますが、 映画専門誌「キネマ旬報」が毎年1月に発表している 昨年公開映画のベストテンでも、 邦画ベストは「たそがれ清兵衛」でした。 (京都新聞のページ)

 私が昨年(映画館などスクリーンで)見た映画は、見た順に、
(1月)シュレック、
(3月)ロード・オブ・ザ・リング、モンスターズ・インク、
(4月)ビューティフル・マインド、
(5月)突入せよ!あさま山荘事件、
(6月)軍隊をすてた国、
(7月)猫の恩返し 外、
(8月)釣りバカ日誌13、
(9月)山の郵便配達、龍馬の妻とその夫と愛人、アメリ、
    秋刀魚の味、たそがれ清兵衛、オー・ブラザー!、
(10月)阿弥陀堂だより、
(12月)ハリーポッターと秘密の部屋
の以上16本でした。

 そのなかからベストを選ぶなら、 やはり「たそがれ清兵衛」でしょうか。
俳優さんでは、 釣りバカ日誌13、龍馬の妻とその夫と愛人 の鈴木京香が印象に残っています。 色ぽっくなったというか、女優さんとして新しい魅力が加わったような、…
山の郵便配達、アメリといった ある意味「マイナーな」映画が良かったのも印象的です。

 飛行機のなかで断片的にみただけですが、 「ピンポン」も印象に残っています。
2001年のキネマ旬報1位の「GO」(監督:行定勲)は、 最近になってテレビで見ましたが、 語り口がよく似ていました。 同じ監督かなと思ったのですが、 日本映画データベース というサイトで調べてみますと、違うんですね。 監督の曽利文彦は、初監督作品のようです。
主演が、窪塚洋介というほかに、 宮藤官九郎の脚本という共通点がありました。
日本映画では、このようなテンポの速い語り口は、記憶にありません。 両作品とも、とても新鮮に感じました。 丁度目線で撮っていることに新鮮さを感じた、 「シコふんじゃった」(周防正行脚本・監督)以来です。 日本映画に、新しい表現方法が出来てきているのかもしれません。
 ◇映画の観客は増えているらしい◇ 

 日本映画製作者連盟という団体があって、 そこが、毎年1月に前年の映画産業に関するデータを発表しています。 (発表データのページ)

 それによりますと、昨2002年の映画の入場者数は、 160,767千人で1.5%の減だそうです。
2001年は、「千と千尋…」の大ヒットがあったこともあって、 対前年で20%以上増の163,280千人でしたので、 斜陽といわれている映画にしては、 よく健闘しているということでしょうか。

過去のデータも発表されていますが、 入場者数は、1958年の1,127,452千人 スクリーン数は、1960年の7,457スクリーン が最高で、以後、どんどん減ってきたわけです。
映画は、 私たちの生活からも、どんどん遠のいていき、 街の映画館は、次々に廃業していきました。

 ところが、 入場者数は、1996年の119,575千人、 スクリーン数は、1993年の1,734スクリーンを底に、 それ以降、増加傾向に転じています。
ワーナーマイカルが、 本格的なシネコンを設置したのは、 1993年のことだそうですから、 街の映画館から、シネコンに移ってきたということでしょうか。

そういえば、私自身、津にワーナーマイカルが出来てから、 映画をよく見るようになりました。 プログラムが多いので、 見たい映画を見るチャンスが広がったことが大きいでしょうね。

 映画の平均料金も出ていますが、 最盛期の1960年は、何と72円です。
朝日文庫の「戦後値段史年表」によりますと、 正規の入場料は、200円のようです。 「キャラメルの値段」(一橋芳則;河出書房新社)では、 昭和30年ころの映画観覧料(大人)は、 東京108円、名古屋112円、大阪123円とあります。
この二つの本によると、 公務員の大卒初任給が10800円(今の20分の1くらい?)、 背広1着が約1万円、 京都の市電の運賃が13円という時代ですから、 映画がそれほど安かったわけではありません。

封切館と再上映館では入場料が大きく違っていました。 多くの映画ファンの実態は、 場末の三流館のトイレの臭いがただよってくるような客席で、 立ちながらスクリーンに目を凝らしていたのです。

 日本が豊かになるにつれて、 そんな映画に魅力を感じなくなっていったわけです。 もちろん、音声がドルビーになったり、 業界もいろいろ努力はしたのでしょうが、 決定的に映画のイメージを変えることはできなかったと思います。

 それが、シネコンの登場で、 映画館のイメージがガラッと変わりました。
津東宝にトトロを見に行った時は満員で、 小さな子どもを抱きかかえながら立ち見でした。 今は、全席指定ですから、そのようなこともなくなりました。
街の映画館では見なかった 若いカップルも目につきますし、 日曜日などは、 ロビーが、家族連れなどで、ごった返しています。 客層が広がったということです。

 私の世代には街の映画館への、一抹の郷愁があることは確かですが、 新しい時代にふさわしいシステムで、 新しい時代にふさわしい魅力的な映画が上映されることによって、 たくさんの人が映画を楽しむことは、良いことではないかと、 思います。

一方で、前回ご紹介した シネマテークや岩波ホールのように、 マイナーな映画を きちんと上映していくことが大事なのでしょう。

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