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これ読んだ感想を
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☆たった一人で当直をしていると、時として不安になる。誰にも相談出来ず自分の判断だけで患者さんを診療しなければならない。そんな時、研修医当直マニュアルの本などは心強いアイテムとなる。

☆その本のあるページにこんなコトが書いてあった。『アルコール患者の救急について』・・・以下抜粋。「深夜のアルコール患者に腹を立てて放置するな!【症例】63才男性。スナックの階段の登り口で寝ていた、と搬送。泥酔状態。バイタルOK。呼びかけに、うるさい!と叫ぶが神経学的に異常なし。急性アルコール中毒と診断し点滴で外来ベッドに寝かしていたところ早朝に呼吸状態悪化。CTで外傷性頭蓋内出血と診断。」

☆つまり、「酔って寝ていた」という病歴に騙されるな!というのである。「酔って寝ていた」→「階段で転落した」と考えるべきであると。

☆記述はこれだけであったが、つまり解釈すると泥酔状態ではまともなアナムネ(問診のコト)は聴取出来ないと言うコトである。頭部外傷は、一定の時間意識の清明の時期があって(ルシッド・インターバルと呼ぶ)、その後急激に悪くなる。頭を強く打ったかどうかが診断の鍵になるが、泥酔状態ではこの確認が出来ない。

☆オマケに時間は深夜、患者は酒を飲んでクダを巻いている。こっちは眠たい。何度も言うてるが、医者も人間!感情が先に立つと通常なら見逃さない事でも、先入観があるとついついエエ加減に診察してしまう。・・・う〜ん、そうか。勉強になったワ。

☆前置きが長くなったが、中年男性が深夜救急搬送されてきた。道路に寝ていた、とのこと。診察するとかなりのアルコール臭!「ウワッ、飲んでるワ、この人!」呼びかけにも反応がない。四肢は弛緩状態。診たところ神経学的には異常ないが、この間読んだマニュアルのコトもある。

☆「いやいや、倒れていた、という可能性もある。」基本的に酒飲みは嫌いや(これは前にも書いた!?)ケド、誤診したらアカン。「看護婦さん、アクチット(点滴の種類、ネ)でキープして、同時に緊急項目の採血や!その後、スグ頭部CTネ!」

☆CTでもこれと言うて異常は見当たらない。生化学もたいしたことない。それでも、そのマニュアルの事が余程記憶に鮮明やったんやね。「看護婦さん、あんまり異常なさそうやけど、念のために入院して貰おうか。」病棟にひととおり指示して意識が戻るかバイタルが悪化したら連絡してもらう様頼んでおいた。

☆結局患者さんの意識が戻ったのは早朝。アナムネをもう一度取り直すと、何でもかなりハシゴして暑くなって、道路が冷たくて気持ちが良かったのでちょっと横になっていたらその後記憶が無い・・とのこと。「ただ、寝とっただけかぁ〜っ!

☆患者さんは、日勤帯になってからバツの悪そうに礼を言うと、自販機でポカリを買って飲みながら帰って行った。・・・また昨晩も寝られんかった・・・その日はヤケに太陽が黄色かった。

☆「それ、見てみぃ!!あの本の通りや。酒飲みは誤診のモトなんやっ!!せやから酔っ払いは嫌いなんや〜っ!!」
◇酔っ払いは誤診のモト!?◇

(長いスランプのあとようやく戻って来ました。ごく一部のこのサイトファンの皆様、お待たせしました!)