BHCでは「大入り満員感謝イベント」をすることになった
オーナー(とテプン)の独断(?)によるものらしかった
その「お知らせ」を受け取ったBHCのホ○トたちの声を拾ってみた
「これ誰が考えたの?オーナー?」
「違うよチーフ、オレオレ」
「テプン…お前…」
「お前!お前一人で考えられるはずないだろう!」
「んー、ちらっと『お祭りがしたい』っつったらさ、オーナーが『それだ!』とか言い出して…」
「やはりオーナーか…。骨の髄まで絞り取る気か?」
「違う違う、オーナーは単純に、面白そうだって言ってさ」
「あの人は…。オーナーが面白がってるだけだろう!」
「いや、ミンチョル、それは違う。勿論、一番面白がっているのはオーナーだが、お客様はもっと喜んでいらっしゃるぞ」
「イナ、しかし…」
「『オールイン』の方では、こんなイベントやろうとしてもきっと人が集まらない
集まっても真っ黒い服の人の割合が多いだろう。これはお客様への感謝のイベントと取るべきじゃないか?」
「…」
「いつものお前なら、このイベントが今後のBHCにとってどれだけの利益をもたらすか、すぐに計算できるはずだぞ」
「…イナ、お前、勝算はあると思うか?」
「当たり前だ」
「…しかし、この入場料だとか参加費だとか…あまりにも安すぎないか?」
「ここを見ろ、『+α』だぞ。そして、この『+材料費、+料理代、+シャワー使用料…』ここの裏、お前ならすぐにピンとくるはずだ!」
「…確かに、その『+某』で莫大な利益を得ようとしているのかもしれん…だがな…
このスケジュール表をよく見てみろ、テプンはいいかもしれんが、お前なんぞフル回転だぞ!」
「…う…誰だよ、こんなハードなスケジュール組んだの…」
「お前、先にそれを確認しろよ、全く情に流されやすい男だ!」
「…フッ…お前ほど冷徹でいられたら、どんなに楽か…だが一生孤独だなんて俺はイヤだ!」
「僕だってイヤだ。だから…愛する人を見つけたんだ…」
「…ミンチョル…そうだったな。すまない。しかし、お前、お前の方が目一杯びっちりじゃないか…」
「何っ?…本当だ…。ラクそうに見えて結構キツいな…」
「お言葉ですが、私の方がもっとキツイです」
「テソン…ああ…本当だ。君の不得手な客前ショータイムや講演、それに…教室が三つも任されているな…」
「それだけではありません…厨房も任されているのです…」
「…そ…それは…」
「それに…人前で変身しろだなんて…」
「…それは…はた迷惑だしな」
「しかし、オーナーは、これを乗り越えてコントロールの効く人間になれと私に望んでおられるのかもしれません…ですから…私はやってみたい」
「テソン…」
「ミンチョル、あとテジンも結構フル活動だが、大丈夫だろうか?」
「テジンのダンナは、やりたいってよ。何か講演会で主張したい事があるし、作った家具とかこの際全部売りたいらしいよ。お金がいるんだって」
「テプン…お前…もしかしてオーナーのスパイか?」
「違う違う。でもオーナーには事前に、何人かに意見聞いてくれって頼まれた」
「…何食わせてもらった…」
「え?…食い物は、足りてる」
「…これか!この携帯電話か!」
「あっだめだよ、返してくれよ!やっとポケベルから卒業できたんだからなっ!」
「…何でイナと僕にまず先に意見を聞かない?!」
「だってオーナーが…あの二人は小うるさいから、全部出来上がってから言えばいいって」
「…じゃあ、知らなかったのは僕達だけか?」
「そうらしい…」
「くっ…屈辱だ…」
「まあいいじゃねえか、楽しそうなイベントだぞ」
「そりゃあ、僕が開発に関わった新製品の『ヘアスプレー』も販売させてくれるようだし…だが、何故僕が歌とダンスを…」
「チーフ、気にすんなよ、俺がカバーしてやるから」
「…。解った。やればいいんだな」
「…そうだよ、今後の事を考えれば、これは充分勝てる勝負だ」
「勝てないゲームはしない…だからな俺達は…」
「ああ」
「あーよかった。楽しいなっ楽しいなっ。テジやパッカにも腹いっぱい食わせてやれる♪」
「解った。イベントは開催決定だ。やるからには、全力を尽くそう!よし、仕事だ。ガンバロウ!」
イベント初日
イベント会場:A.M.6:00
「チーフ、いよいよですね」
「ああ…やるべき事はやった。あとは無事に三日間を終えるだけだ」
「チーフ、オーナーがいらしてませんが…」
「いいんだ!僕が特注品を朝から頼んでおいたから、その製作に大忙しのはずだ。フンっ」
「…おい、イナ、チーフの顔、キツネになってるぞ。大丈夫かな?」
「…」
「イナ、おい、イナ」
「テプン、イナはまだ本調子じゃないんだ!最終日とはいえ、大変な苦痛が待っているからな」
「へ?」
「…」
「元気ないの?イナ、じゃあこのミルクでも飲む?」
「!」
イナ、真っ青になって倒れ込む
「テプン!イナにミルクを見せるな!イナ、妙な格好で倒れるな!」
「…す、すまない。気持ちを切り替えなきゃいけないんだが…」
「あと一時間で開場だぞ!そんな事でどうする!プロとして情けないぞ!さあ、皆もそろそろ持ち場についてくれ!」
キツネ顔のミンチョルは、みんなに指示を出し、自分も最初の持ち場、『ヘアースタイル教室』を確認に行った
「イナさん、大丈夫ですか?」
「…ウシク…すまない…」
「僕は比較的ラクチンですから、何かあったら言ってください。…寸劇もなくなっちゃったし…」
「…そうなのか…」
「チーフ〜」
「何だテプン」
「言い忘れてたけど、三日目の紅白試合のとき、このユニフォーム着て試合に出てくださいね」
「え?僕が?ぼ、僕は最終日もスケジュールはびっちりだぞ!」
「だめですよ。代打でいいから出場してください。いいですね!」
「…代打か…じゃあ一回だけでいいんだな?」
「はい」
「…この縦縞のユニフォーム…何なんだ?ん?阪神?ん?…このネーム、ミンチョルじゃなくて『HANAGATA』になってるぞ?」
「いいんですよ、それ着て思いっきりカッコつけて打席に立ってくださいね。空振りしてもいいですから!」
「…空振りなど僕はしたくない!今からバッティングセンターで練習を…」
「しなくていいです、時間ないですから!じゃ、お願いしますね」
「あっテプン…あの野郎、わざと今日になってから僕にこんな大事なことを告げたな!きっとオーナーとグルなんだ…」
A.M.7:00 開場
「やあ、ミンチョル君、招待ありがとう」
「う…トファン会長…お、お早いですね。どうぞ楽しんでいってください」『なぜトファン会長が一番乗りなんだっ』
「マイケル君、一緒に周らんか?」
「そうですね、この間からのご縁ですから」
「うっ…マイケルさんまで…今日は『オールイン』は?」
「臨時休業じゃよ、オーナーが勉強してこい、とな」
「そうです。オーナーの命令じゃ仕方ありませんからな、会長」
「…うっ…チョンウォン…君…」
「こんにちは。素晴らしい会場ですね。楽しみです。特に三日目の火山ショーが」
「…」
「おや、ミンチョルさん、僕には何も言ってくださらないんですか?」
「…ごゆっくりどうぞ…」
「楽しみだなぁ。色々と勉強できそうだ」
チョンウォン、表情を変えずに呟く
『どういうことだ。一般のお客様よりも先に、こんな濃いオッサン連中が入場するなんて…』
「こんにちわ〜。一番乗りしたかったけど、ちょっとお化粧に手間取っちゃって〜」
「ぐ…ミ、ミミさん…」
「あ〜ら、ミンチョル君、どうしたの?すこしやつれたみたいよ〜?まあ、なぜピンクのタートル着てないの?」
「はあ、スーツでいるようにとオーナーからの命令でして…」
「あ〜らそんなこと一言も言ってなかったわよぉあの人。ま、いいわ」
「ミミさん、確かご予約の講演は、ウシクの『人に優しく』でしたよね?それならば最終日です。お間違いでは?」
「あ〜ら、確かに予約は入れたわ。でも他にもおいしそうな…いえ、楽しそうなイベントが目白押しじゃない!
三日間通しの券、買ったわよぉほほほほっそれに、ソンジェ君も三日間ここにいるっていうから、心配でね
アナタ!ソンジェ君苛めたら承知しないわよっ」
「…承知しました。ごゆっくりどうぞ」『くそう!三日間くるのかっ!』
「こんにちは。ミンチョルさん、大丈夫でしたか?昨日の晩は、早く寝ましたか?」
「…テスっ…」
「うぎゃっちょっちょっミンチョルさん、やめてくださいっ苦しいっ!」
「あっ…す、すまないっつい気が緩んで…」
「…よく寝てないんですか?」『ヤバイなぁ、涙目で抱きしめられちったよぉ〜ドキドキ…
まだ人少ないし、誰も見てないよな、チョンエも来るって言ってたけど…』
「…よく…よく来てくれたね…。有難う…」
「あ、いや、キムチチャーハン食べたくって…」『あっキツネ顔になっちゃった』
「僕のコーナーにも立ち寄ってくれたまえ」
「はあ…時間があれば…」
「必ず来てくれ。電話するから!」
「…は、はあ…」『昨日先生んとこに連れてったのに、まだまだヤバイのかなぁ…』
「さ、行き給え!」
「なな何ですか、急に態度変えて…」
「しっ…妻がこちらを見ている…」
「…あ…はいはい。じゃあ」
「後で電話するからな!」
「…」『しなくていい』
「聞いているのか?」
「…あ…はい〜」『え〜い、バッテリー外れたってことにしちゃおう』
「待て!電話を貸せ」
「あのっ時間ないですよ」
「すぐに済む。これでよし。さあ行きたまえ」
『…バッテリーんとこに強力セロテープが…』
A.M.8:00 野球教室
「ナイスキャッチ、あなたのお名前は?」
「チョンウォンです」
「あなたお上手ですね」
「僕はプロ目指してましたから」
「…じゃあわざわざ僕に教えを請わなくてもいいじゃん!
あ、アンタ『オールイン』のボンボンじゃんか!何やってんだよ。こっち来て手伝えよ」
「…なんだ!僕は今日はお客様なんだぞ」
「はい、次の人〜いくよ〜そうそう、ボールしっかり見てね〜。ほら、アンタも指導しろよ!」
「僕はお客…」
「小せぇこと言うな!」
「ぐっ…」
俯きながら指導を始めるチョンウォン
A.M.9:00 ヘアースタイル教室
「ワシにはどんな髪型が似合うかのぉ」
「はっ…か、会長には、その髪型以外、考えられませんが…」
スンドンの巨体を前にして、怯むミンチョルである
「そうか?娘に『ひよこみたい』と笑われるのだが…」
「いえ、ご立派です」『ご立派なひよこです』
「この、ヘアスプレーだが、髪を立てる時などに便利か?」
「はあっ?か、会長の髪を立てるのでございますか?」『どこをっ!』
「そうだ。前髪なども君のようにすうっと垂らしてみたいのぉ」
「は、はあ…そうですね。このスプレーをかけて、スタイリングし、最後にもう一度スプレーすると
一日髪型は崩れません」『崩しようがないだろ、会長!』
「そうか。一本貰おう」
「ありがとうございます」『ちっ、トファンなら100本売りつけるところだが、スンドン会長ではな…。1本で一生もつだろうし…』
「あ〜ら、ミンチョル君、こちらどなたぁ?」
「おっこれは美女がいらしたようだな、ワシは席を譲るよ、ところでキム・イナはどこだ?さっきから捜しておるのだが…」
「イナは…控え室で準備中です…11時からのショータイムに出ますので…」
「そうか、それは楽しみだ。さ、美しいお嬢さん、どうぞお座りください。…ミンチョル君、この派手な女はなんだね、客かね?
気を付けたまえ、客を選ぶことも必要だぞ」
「…はい会長。肝に銘じてはいるのですが…」
「ミンチョルくぅん、ちょっとアタシのヘアーをゴージャスにしてくれないかしらぁ〜。もうすぐショータイムでしょぉ?
ウヒウヒ。ストリッ○ーのおぱん○にこのお札、挟みに行かなくちゃいけないから、ウヒヒヒ、目立つようにキメてほしいのよぅ〜」
「…ミミさんは、いつもご自分で、素晴らしい髪型になさっている。僕が手を入れる必要など…」『触りたくない!髪が手に刺さりそうだっ』
「男性から見た好感の持てるヘアーにしてほしいのよぅ。オ・ネ・ガ・イっ」
「…そうですか…では…」『へび女へび女っ!』
10分後。ミミ、セナのHeavenの時の髪型になる
「あらっ。セナちゃんの髪型?じゃあメイクも濃くしなきゃあ」
「いえ、ミミさんは、そのままでお似合いです」『これ以上厚化粧なんて、前衛舞踏家にでもなるつもりか!』
「そうぉ?ウフッ。似合う〜?」
「はい、ミミさんはお美しいからどんな髪型でもお似合いです」『ああっ口が勝手に動く!』
「うふっアリガト」
「ソンジェならキムチチャーハンコーナーで愛想を振りまいてますから、そちらへ行ってびっくりさせてやってください」
「そうねぇ。セナちゃんと間違えて抱きしめられたりしてぐふふふ」
「それはいい!ぜひ抱きしめられてください!」『キスもしてこい!』
「ありがとぉ〜じゃあねぇ〜」
「…ふうっ…まともなお客がこない…どうしてだ…」
「…室長…」
「はっ…ヨンスさん、じゃない、ヨンス…そろそろ室長と呼ぶのはやめたらどう?」『今の、見られたかな…』
「…セナがいたような気がしたの…」
「違うよ、セナ君じゃない。セナ君の髪型にしたいというワガママなご婦人が来たんだ
それよりどうしたの?デッサンの方はどう?体、きつくない?」
「大丈夫よ。モデルの方々がとても優しくて」
「えっ」『なんだって?!』
「とくにスヒョンさんって方?女心を知り尽くしてらっしゃって…
履いているパンツはボクサー型の長めのもので、ちょっと…だけど、良い方よ」
「…」
「それにテジンさん?さっき挨拶にいらして、今日は木工教室でモデルになれないからって、私とミンジにかわいい椅子をくださったの
花がモチーフのかわいい椅子。花ってこういう風に贈られるのもいいものね」
「…そう…よかったね…」
「そういえば、デッサン教室にいらした方が、室長に『薔薇をありがとうと伝えておいて』って。お二人…。貴方、まさかまた薔薇を?!」
「…」
「…そうね…貴方は薔薇しか知らないものね…ふっ…」
「…」『悪かったな!』
「ああ、そう言えばジュンホさんっていう方、このあとボクシング教室だって言ってたけど
なんだか放っておけなくて、大丈夫かしら…。心配だわ」
「…君こそ体調はどう?疲れてない?」
「平気よ。絵の勉強ができるんですもの」
「…そう、あまり無理しないで、歩き回らない方がいいよ」
「ありがとう。でも貴方の出る物は、全部チェックしたいの」
「…ヨンス…」『…きっとソンジェとダメ出しするつもりだろう…』
「そろそろ行くわね。…あ、そうそう、ミンジったらモデルの一人と仲良くしてたわ」
「なにっ!」
「貴方に似た髪型の人。少し危なそうな子だけど、ミンジとは話が合うみたい
何かショーに出るんですってね。ミンジにダンスを教えて貰ってたわ」
「だめだ!あまり近づかせるな!」
「あら、どうしたの?いいじゃない、ミンジだってお年頃よ。じゃあ」
「ヨ、ヨンスッ…」
A.M.11:00〜ショータイム
(チョンウォンがメモを片手に見学している)
P.M.14:00 講演会
「貴方、室長」
「よ…ヨンス…」
「私、最前列で見ているから。頑張ってね」
「えっ…さ、最前列?」
「ええ、ソンジェさんと一緒に」
「ソンジェと?ミンジはどうした?」『なんでソンジェが聞きに来る!』
「ミンジは、ほら、デッサンの方があるから…」
「君もデッサンの方に行けばいいのに」『二人とも居てほしくない!』
「私が見ているといけないの?」
「い、いや、あちらの方も盛況だと聞いたから、ミンジだけではその…。やはり君がいないと…その」
「大丈夫よ、貴方の妹ですもの。信じて!それに貴方の講演は是非聞きたいわ。どうしても!」
「…そ、そんな大した事は言わないし…それに、ソンジェがいるのはちょっと…」『嫌だっ!』
「あら、当然でしょう?ソンジェさんは弟なのよ」
「だが、ソンジェにとっても触れられたくない部分も話さなくてはならないし、やりにくいし…」
『解れよ!あいつの前で弱みを見せたくないってこと!』
「大丈夫、ソンジェさんは大人よ」
「…」
「ほら、10分前よ、用意して。頑張ってね」
「…」『貴様等がいると頑張れない!』
「あっそうそう、さっきのショータイムでね」
「ん?」
「ストリッ○を見ていた男のかたが、なんだかミンチョルミンチョルってブツブツ言ってたの…」
「え?ストリッ○?」
「貴方出てないわよねぇ、ミンジも言ってたけど、『あれはボーイフレンドのラブ君よ』って…」
「え?ボ、ボーイフレ…」
「貴方まさか出たんじゃあ…」
「は?え?何に?」
「どうしたの?貴方らしくないわ。動揺して…まさか…」
「え?あ、スト…ストリッ○なんて僕がするわけないだろう!」『ミンジ、ミンジ、無事か?無事なのか?』
「…そう…。そうよね」
「あ…ああ、僕の歌、どうだった?」
「え?歌?ああ、貴方が歌っていた時、何故だか伴奏の音が大きくて、よく聞こえなかったわ」
「…そ、そうか…」『ソンジェの奴…ううっ…フクスケ…フクスケ…』
「じゃあ、頑張ってね」
「…」
P.M.4:00 花教室
「あらあ、貴方、あまりお店に出てない方よねぇ。私ヤン・ミミ。貴方確かいつも厨房にいらしたわねぇ」
「は、はい…」
「あら、震えてる。カワイイのねぇ。そう言えばさっきの変身ショー、貴方が一番迫力あって素敵だったわぁ」
「…う…待て…う…だめだ…」
「あらぁん、どぉしたのぉん?」
「ミミさん!どうぞこちらの方に!イナ、テソンを落ち着かせろ!」『ヤバイ、毒気にあてられてテソンが変身しそうだ!』
「テソン、深呼吸だ深呼吸。あっ待て、ちょっとここから10m離れよう。ここで息を吸ったら一巻の終りだ!」
「ううう…ううっうっ…はあはあ…イナさん…大丈夫です…大丈夫…」
「ほんとか?!」
「…ミンチョルさん、その方の担当、任せてください」
「…だが…」
「大丈夫です、この方の場合、色よりも毒の方がキツイから…」
「…そうか、解った。頑張ってくれ。変身しそうになったらひまわりを振ってくれ!」
「はい、そうならないよう頑張ります」
「ちょっと何よぉ。ミンチョル君は薔薇ばっかりでしょぉ?つまらないのよぉ」
『うるさいっ』「彼がお相手するそうです。くれぐれも挑発的な態度はおとりにならないように…」
「あらぁん、あたしったら、何もしなくても誘惑ふぇろもん出しちゃうみたいねぇほほほっ」
「そうですねぇ、ミミさんは魅力的でいらっしゃるから」『黙れ!僕の口!』
「ミミさん、挑発しすぎると、命が危ないですから、お気をつけて…」
「あらん、イナ君でもいいのよぉ〜。イナ君ならどんな花を贈るのぉ?」
「…」
「あらっどうしたの?苦しいの?」
「…い、いえ、そ、そうですね、俺なら…鉢植えの黄色い水仙を…うっ」
「イナッ大丈夫か!」
「水仙…アタシの柄じゃないわねぇ…」
「イナ、できるのか?花の講師」
「大丈夫だ。テソンだって頑張っているのに、俺だってやれるさ。今日一日やり通せば明日はもっと楽になる!」
「イナ…」
「ところで、貴方…テソンさん?」
「は・はい…」
「貴方はどんな花を贈るのぉん?」
「ぼ、僕は、驚かせるのが好きなので、大きいアレンジメントフラワーを机の上に置いておいて
彼女が帰ってきたときにびっくりさせたり、それか、彼女のロッカーの中に彼女の好きな花…
そう…ひまわりが…いいな…それを…仕込んで…おいて…ううっ…驚かせたり…くっ」
「んまあっアタシサプライズだあい好きぃ」
「うっ…はあはあ…はあはあ…」
「テソンっ大丈夫か?」『また毒気に?』
「大丈夫です、昔の女のことを思い出して、少し苦しくなりましたが、この方の、独特の気で助かりました」
「…そうか…」『毒をもって毒を制したんだ…』
「室長」
「よ、ヨンス…何だい?」『また来た。何なんだ!』
「私にもお花を贈ってくださる?」
「う…あ、ああ。そ、そうだな…君に似合う花は…」『どうしよう、花の名前なんてあまり知らない!
薔薇にしたらきっと冷たい目で見られるし…』
「少し変わった花がいいわ、優しい色の…」
「ち、ちょっと待ってて。そこを動かないで!絶対そこにいて!こっちにこないで!」『来るなよ!』
「な、何だよミンチョル、引っ張るなよ」
「何かないか、花。優しい色だって。何かないかイナ!」
『焦ってるなぁ』「…俺だってあまり知らない…さっき言った水仙とか…あと…うっ…菜…菜の花…とか…」
「菜の花?ここにあるか?これか?」
「それは水仙だ!」
「これでいい。ちょっと戴くぞ」
「…いいけど…」
「ヨンス、お待たせ。これなんかどうだい?」
「まあ、いい匂い。…優しい色って貴方にとっては『黄色』なのね…」
「…い、いけない?」『何色が優しい色なんだ!』
「私はもっと柔らかいピンクだとか薄紫だとかを想像していたの…でも有難う」
「…そ、そうか…。すまない。色は苦手で…」
「いいのよ。じゃあ、頑張ってね」
「あ、ああ君も、もう少しだから…無理しないで…」『もう来るなよっ』
「ミンチョル、ワイシャツの背中、汗が滲んでるぞ」
「…イナ、優しい色って何色なんだ…」
「…俺に聞かないでくれる?」
「…悪かった…」
P.M.6:00 食事マナー講習会
「イナさん、ミンチョルさん、どうしたんですか?随分顔色が悪いですよ」
「ああ、テソン、君はものすご〜く忙しいのに元気だな。変身ショーとか料理とかもあったのに…」
「さっきだって危なかったろ?」
「いいえ。あの個性的でカリスマ性の強いご婦人のおかげで、なんだかスッキリしました
普通の人間になれた気がします」
「そ、そうか…」
「お二人はぐったりしてますね。お忙しいから…」
「いや、君に比べればまだまだ楽な方だよ」
「私にとって、このイベントは、大変有意義です。変身を抑える事もできるんだっていう自信に繋がりました」
「それは結構。ホ○トとして店に出られる日も近いかな?」
「…いえ、私が店に出てしまうと、厨房がおろそかになるので、それは…」
「そうだな。テソンの料理は天下一品だからな」『油断大敵だよな』
「それじゃあマナーの方、それぞれ頑張ろうぜ、な、ミンチョル」
「イナ、だいぶ元気になってきたな」
「兄さん」
「げっソンジェ」
「マナーを教えるって本当?」
「…ああ…」『何しにきた!』
「そう…。兄さんはあまり気にしてないようだけど、口一杯に頬張ったまま、喋っちゃいけないって知ってる?」
「…」
「ちゃんと飲み込んでから喋るんだよ。それと、唇を指で拭かないで、ちゃんとナプキンを使ってね
兄さんは何でも指で拭う癖があるからね!解った?」
「ああ、解った」『フクスケ…持ってきてなかったか、フクスケ…』
「じゃあ、僕、兄さんが間違えたら『約束』のイントロを流すよ」
「はあ?」
「イントロが流れたら兄さん、マナーを間違えたんだって気づいてね、僕がインカムで指示するから」
「…」『インカムOFF!』ブチッ
「兄さん!もう間違えてる!それじゃあOFFだろ?」
「…」『割りたい割りたい割りたいフクスケ割りたい…』
「ミンチョル、大丈夫か?額に脂汗が…」
「…お前がやる通り真似するから、僕に見えるように指導してくれ」
「?俺の担当のテーブルとお前のテーブル、かなり離れてるけど、見える?」
「頑張る!」
P.M.8:00 ワインテイスティング
「おお、これはスンドン会長」
「これはトファン君、こんな所で会うとは」
「やはり締めくくりは酒ですからなぁ」
「はっはっはっ。しかしトファン君、これはテイスティング教室じゃ。飲んだくれてはいかんぞ、はっはっはっ」
「お邪魔します。父さん、僕も参加してもいいですか?」
「おお、チョンウォン、スンドン会長に挨拶しなさい」
「会長、失礼します。僕も本格的にワインの勉強をしたいなと思いまして」
「おお、そうだな、ホ○トとしてそれぐらいの知識は身につけんとなぁ」
「皆さんお揃いで、私たちもお邪魔致しますよ」
「おお、マイケル君、君どこへ行っておった?モノマネ教室を出たあとはぐれたから心配じゃったぞ」
「なに、イナのカードゲーム教室とやらに行って、それからまたバンジージャンプの方に行きました」
「おお、バンジージャンプは病み付きになりそうだのう」
「ええ、トファン会長と飛んだ最初の時は、恐怖で顔が引きつり、叫びまくりましたが
モノマネ教室に置いてあったフリル付きのブラウスを見てピンときましてね
私がこのようにきらびやかな衣装に身を包み、そしてバンジージャンプをする様を、ここにいらしているご婦人方に
ぜひ見ていただきたい。その為には衣装に合った飛びかたを研究しなくては…と」
「…マイケルの兄貴、それで私に次々と衣装を借りてこいと?」
「ああ、チュニル、君も飛びたかったかい?明日やり給え。楽しいぞ」
「ああらぁ、この一角、とってもリッチでゴージャスな香りがするわぁ。私も混ぜてくださらなぁい?」
「おおこれは…ミミさんでしたかな?マイケル君、わしらのアイドル登場だぞ」
「こんばんわミミさん、今日はなんとも個性的なヘアースタイルでいらっしゃる
貴方はどんな髪型でもご自分の物にしてしまう、素晴らしい!」
「あ〜ら、マイケルさんったら…。貴方の衣装だって素晴らしいわ
誰にも真似できはしないわよぉんほほほほ、ほぉっほっほっ」
「イナッ…何であの濃い連中が集まってるんだ?一般のお客様はどうした?」
「それが、あの連中を見て、引き返しちまったみたいだ。バザー会場が盛況らしい。テプンが助っ人に入ったって」
「…むうう…まあいい…いつらザルだからな。教室なんてどうでもいい
いいか、どんどん飲ませろ!酒代はきっちり取れ!」
「おいおい、ミンチョル、まるでBHCにいるみたいじゃないか」
「いいんだ、この連中ならどうせ勝手に飲み始めるだろう。テイスティングの仕方なんて聞きゃしないさ」
「おにいちゃ〜ん」
「ミンジ〜どうしたんだ?もうデッサン教室は終ったのか?」
「うん。楽しかったわ」
「はっ…そう言えば、お前、お前。無事か?」
「何が?」
「あの…その…ヨンスから聞いたんだが、ボーイフレンドとか…」
「ああ、ラブ君?ちょっとお兄ちゃんに似た髪型してて、カッコイイの。ダンスも上手いし、それに、キレイな体してるのよぉ」
「な、何っ!」
「お兄ちゃん見てない?彼のストリッ○。かっこよかったわぁ」
「み、見たのか?お前!そんな、フシダラな物を!」
「何言ってんのよ、ただ単に踊って脱いだだけよぉ」
「み、ミンジ、あの男はやめなさい」
「な…お兄ちゃん」
「やめるんだ!いいな!」
「イヤ!もう私大人よ!いつまでもお兄ちゃんの言いなりにはならないから!」
「ミンジ!ミンジ〜っ」『まさかもう何か…』
「室長」
「…ヨンス!ミンジは大丈夫なのか?君が側にいながらなんであんな男と」
「ああ、ラブ君ね?大丈夫よ」
「どう大丈夫なんだっ!」
「なんだか判らないけどしばらく摂生するって言ってたから」
「…」『心配だっ』
「兄さん、さっきのマナーのとき、僕が指示したの聞こえなかったの?!」
「…ああ、お客様のざわめきでちっとも聞き取れなかったんだ!」
「そう…。目に付いた間違いだけでもざっと15個あったよ。恥ずかしい」
「…」『そんなに?本とに?』
「なのに兄さん、堂々と教えてて…僕の方が恥ずかしかったよ…。明日はもう少しインカムの音量上げるからねっ!」
「…」『あっちへ行け!』
「貴方、ソンジェさんが親切に言ってくださってるのよ」
「…解った…」
「ごめんなさいね、ソンジェさん、この人ったらほんの少しプライドを傷つけられただけでもこうなの」
「解ってるよ、ヨンスさん。なんといってもヨンスさんより僕の方が長く兄さんと暮らしてきたからね」
「そうだったわねぇ」
「ヨンスさん、もう教室は終ったの?」
「ええ」
「じゃあ、せっかくだからここでワイン飲んで行こうよ、ね」
「え、ええ、でも」
「いいよね、兄さん。兄さんのテイスティング能力も見ておきたいし」
「…ふうっ…どーぞ!はいはいはいっさあみなさん席についてくださいっ今からワインテイスティング教室を始めますからっ!」
『あーあ、ミンチョル、キツネ顔になってるわ…』
「すみませーん、僕たちもいいですかぁ?」
「テス、おお、チョンエも。久しぶり。元気そうだなあ、さあ座って。こっちだ」
イナ、テスとチョンエを案内している。ミンチョルは、参加者にワイングラスを配っている
「あ、ミンチョルさん、すいません、気がついたらもうこんな時間で、初日はここしか来れなくぎゃーっ」
テスを無言で抱きしめるミンチョル
「兄さん!」「ミンチョル!」「室長!」「…!」
「はっ…す、すまない。つい、懐かしくなって…」
とっさに取り繕ったミンチョルだが、目は充血しており、前髪が小刻みに震えていた
『ヤベ、ミンチョルさん、そーとーキてるなぁ…』
「テス!何なの?あのキツネ男!」
「しっチョンエ、あの人いま自信喪失しかけてるんだ。ちょっと前の僕みたいに…」
「…そうなの…ふーん」
「突拍子もない事しでかしても、ちょっと疲れてるんだと思ってあげてよ、ね」
「…気をつけてよ、貴方、気づいてないかもしれないけど、とってもカワイイ顔してるんだからっ」
「えっ…えへへ。チョンエったらえへへへ」
チョンエとでれでれしているテスを、ミンチョルの視線が貫いていた。無論テスは知る由もない
〈初日終了後〉
『ああ…ボロボロだ…あと二日もこんな状態…もたない…明日はフクスケ人形10個ぐらい用意しておこう…
全く、本当に、家に帰りたくない。ヨンスも待っていてくれてもいいのに…
あのフクスケ野郎、『兄さんは責任者なんだから、会場の点検やら明日の準備やらがあるでしょ?
先に帰るよ。ああ、ミンジは友達と帰るってさ。じゃあまた明日。いこうヨンスさん』
なんて言ってさ…
ホ○ト全員手伝ってくれたけど、最終点検は僕だけでやった…
帰りたくない。もうここの控え室で寝よう。シャワーもあるし…。疲れた…
明日の朝4時に起きてシャワー浴びて…着替えの服も借りて…
ああそうだ…ヨンスに電話して着替え持ってきて貰おうか…ふああ…電話…しなくちゃ…ああ…眠い…』
二日目〜ミンチョルメモより
僕は、不覚にも、会場の入口付近で寝込んでしまったらしい。朝一番にやってきたウシクに起こされた
ウシクも驚いていたが、僕の方がもっと驚いた
何時か尋ねたら、朝の5時だという。よかった…。今からシャワーを浴びて、そうだな、着替えは何か借りて着ればいい
そう思ってシャワールームでシャワーを浴びている最中に、大切な事を思い出した
「フクスケ!」
昨夜、少しは家に帰る気持ちがあったので、フクスケを忘れずに持ってこなくては…
(でないと僕の精神がどうにかなってしまいそうだったから…〉
そう思っていたのに、しまった
僕は大慌てでシャワールームから飛び出し、服を着て、ウシクに「すぐ戻る」と言って駐車場に向かった
しかし僕のメルセデスがない!はっ、昨日ソンジェが「ヨンスさんを歩いて帰らせる気?兄さんは誰かに送ってもらえばいいだろ!」
と言って僕の車の鍵を持っていったんだった
あの時はへとへとに疲れていて、何も言い返せずにいたんだ
それで一気に帰る気が失せたんだった…。どうしよう…
とりあえずオーナーに電話して、オーナーの手元にあるフクスケを持ってこさせよう
僕は電話してみた。出た
その時交わした会話はこうだ
「オーナー、申し訳ありませんが、イベントに必要なんで、今すぐフクスケ人形の小さい方を10…
いや明日の分も…20個、会場に届けてくれませんか?それと僕のスーツの着替えを…アルマーニを一緒に」
「オーナーは、巨大フクスケの製作を手伝っておる!ちびフクスケが必要なら事務所にあるから自分でとりにいけ!」
「それができないからオーナーにお願いし…くそっ切った!」
役に立たないオーナーだ。でも巨大フクスケを作ってくれているらしい…。それはとてもウレシイ
まあ、完成して数時間後には消滅するものなんだがな…。それを考えるとちょっとオーナーに申し訳ない
いや、そんな事を言っている場合ではない
妻に電話してみようか…。妻はフクスケの事は知らないはずだ…
ミンジ、ミンジに頼もう
そう考え直した僕は、家に電話をかけた
「もしもし、もしもし」
「…もしもし?誰?」
なぜ男が電話に出る?ま、まさかあのラブって野郎が…
「誰?兄さん?」
フクス…違う…ソンジェ…
「兄さん帰ってこないから心配になってずっといたんだ。電話しても出ないし…」
え?気がつかなかった。気がつかないほど深い眠りに落ちていたのか…
「何?ヨンスさんならまだ寝てるよ」
「ど、どこで!」
「ヨンスさんの部屋で。ところで兄さんどこにいるの?」
「会場に決まってるだろう!他にどこに行くというのだ!」
「ふうん。本とかなぁ…。ヨンスさん、少し寂しそうだったよ。僕がしっかり慰めておいたけど…
いつまでもヨンスさんに寂しい思いをさせるなら、僕…本当に許さないからねっ!」
「…お前、どこで寝たんだ…」
「兄さんの書斎さ。可愛いフクスケ人形が置いてあるね。心が和んだよ。兄さんもこれを見て心を和ませているんだろう?」
「ああ、そうだ!」『それを叩き割ってな!』
「落とさないように裏に滑り止めつけてあげたよ。兄さん案外そそっかしいんだから」
「…有難う」『余計なお世話だ!』
「で?用事は?」
「ミンジはいるか?」
「ミンジも寝てる。何?伝えるよ」
「…あー…その…昨日こっちで泊まったから、着替えのシャツとネクタイ、それとスーツを持ってきてくれないか?」
「解った。二日分だね」
「え?なぜ二日分?」
「兄さん、忙しいんなら今夜も帰れないんじゃないの?明日は最終日だし、その準備もあるんでしょ?」
「…」
「二日分用意しておくよ。それだけ?」
「…ああ…。お前、今日も来るのか?」
「当たり前だよ、音響担当なんだからさ。ミミ会長も来てるだろ?」
「…そういえば、昨日あのおん…いや、ミ、ミミさん、お前のキムチチャーハン食べに行ったか?」
「ああ、来てくれたよ。びっくりしたよ、セナの髪型だったから。兄さんがしたんだって?」
「…セナと間違えなかったか?抱き着かれたんじゃないか?」
「間違えるわけないじゃない。セナは普段は普通だもん。それに僕はナベを振るってたから抱きつけるわけないでしょ?」
「…ああ…そう…」『ちっ…』
「じゃあ着替え、二日分持っていくね」
「…ああ…頼む…」
「それにしても電話するならもう少し時間を考えてね。兄さんは思い立つとすぐ電話するんだから…」
「…切るぞ…」
「じゃあね」
フクスケ〜フクスケ〜割りたい割りたい割りたい〜!
はっ、そうだ。テス君に頼もう!
僕はそうしてテス君に電話した
「ふあ〜?へ?あ、ミンチョルさん?おはようございます。どーしたんですかぁ?」
隣で『誰なのよ』と言う女の声が聞こえる。きっと昨日のあの娘さんだな
キレイだが、キツそうだ。フン
僕は、フクスケを20個持ってきてくれと頼んだ。テス君はイイヤツなので快く引き受けてくれた
テス君、ありがとう。君に薔薇を贈るよ
手配を終え、僕はウシクのいる会場へ戻った
「ミンチョルさん、髪の毛、ちょっと乱れてますよ。整えてきてください」
ああ、慌ててたからセットしてないや
とにかく、フクスケは届く事になったし、昨日よりも今日の方が楽だろう…
頑張ろう…
イナの呟き
ああ…胸が痛む…
後二日間、なんとか頑張りたい
だが最終日…彼女がやってくるらしい…
どうしたらいいんだろう…
いつもは頼りになるミンチョルも、このところ疲れきっている
ミンチョルはいいなぁ、家族がいて…
どんなに摩擦や軋轢があろうとも、家族はいいじゃないか…
ミンチョルの奥さんだって、優しそうな美しい人だし(背が高すぎるけど)それにあの弟という人だってミンチョルが言うほどヘンじゃないぞ
いつもニコニコしてていい感じだ
ふうっ…。とにかく僕の講演が明日でなくてよかったよ
明日、彼女の前で講演するのだけは避けたいからね
昨日が一番大変だった。なんせ慣れない事ばかりだし、それになぜかあの濃い人たちが俺とミンチョルの教室に寄ってくるんだよな…
まいったぜ
ああ、そういや、チョンウォンの奴、なにか誤解してたな、「ミンチョルがストリッ○するなんて」って…バカだな
相変わらず思い込みも激しいし…。バカだよな。でも俺達、友達だよなぁ…ふうっ…
さあ、もうちょっとだ…。明日の21時になれば…全て終る。 そして元通りだ
…本当は、あの家で元通りになりたいんだけどな…。うっ…胸がズキズキ痛む…ううっ
マイケル語録
今日の私のテーマは「日本」
昨日モノマネ教室で着たきらびやかな「ダイカン」衣装が忘れられない
妙に馴染むものだったのだ
それで、私のワードロープを探しあさって、あのきらびやかな「キモノ」チックな衣装を選んでみた
会場で私を見たチュニルが、あまりのきらびやかさに目を伏せて、「兄貴、お似合いです
私はちょっとイナのテコンドー教室とジュンホのボクシング教室
それからテソンの料理教室などをまわりたいので、今日は兄貴とご一緒できません。では」
と言って足早に去っていった
トファン会長は私を見るとニヤリと笑い、ご自分のコートを脱ぎ去った
ううむ。さすがはトファン会長だ。やはり昨日の「ダイカン」ファッションに影響されたらしい
どこで仕入れたのだろう、あの金銀の刺繍の背広は…
悔しいのと羨ましい気持ちが入り交ざって、私は思い切って聞いてみた
するとトファン会長は
「なあに、ニホンのエンカカシュに知り合いがいてな。そいつがステージ衣装をくれたのじゃ。ステージ衣装にしては地味だろう?」
「本当ですねぇ」
「だからワシは普段着にしておる」
「素晴らしい…。すみませんが私も一度袖を通させてくださいませんか?」
「おお、いいとも着たまえ!」
その金銀の刺繍が施された背広は、私のシルクのパープルのシャツ、シルバー地のネクタイ(これも特別な刺繍がある)とぴったりマッチした
「会長!すばらしい背広ですなぁ。私もこのような背広を会長のように着こなせるようになりたい!」
「わっはっはっは。マイケル君、君はまだまだ若い!まずは君の今の、そのナウい感覚をもっと磨きあげて
いかなる場面でも自分を見失わないファッションを極めたまえ。わしのような『材質に頼る』ファッションなど
年をとればいつだってできることじゃよ、わっはっはっ」
流石はトファン会長だ。今日もご一緒させていただこう
バンジージャンプに並びにいくと、チョンウォン君の番だった
チョンウォン君は流石だ。顔色一つ変えず、微動だにせず、飛んでいた
指導者のイヌ君は、随分と大人しい人だが、私の前にいた、ちょっとポッチャリ系の学生さんらしき男子に、随分長い事見とれていた
少し目が悪いのかもしれんな
バンジーの後はショータイムの会場で、トファン会長と私のアイドル、ミミさんに会う事になっている
ミミさんはゴージャスで美しく、そしてなによりも人間性豊かなところが素晴らしい。私たちのアイドルに相応しいのだ
今日も一日楽しく過せそうだ
人生に乾杯!
チョンウォンメモ
二日目。朝一番にバンジージャンプに行った
上に登ったところで記憶が途絶えている
どうやって降りたのか解らない
気がついたら医務室で寝かされていた
そしてイベント終了時刻になっていた
くそう…イナの講演を聞きたかった(そしてフフンと鼻で笑いたかった)のに!
明日、最終日だ。火山ショーがあるという
火山ショー…。はっ…あの人が来る?
そうだ、あの人が来るんだ
あの人の喜ぶ物をプレゼントしよう。ふふっ。ふふふっ
BHCイベント見学記
今日はイベントの日なので色々と見て回って今後の参考にしたい
全くBHCの存在は僕にとって謎だ
謎といえばあのミンチョルと言う人も、謎だ
テプンというおちゃらけた人より耽美的なだけにもっと謎だ
テス君を苦しめているみたいだし…
イベント会場に行くと、父を始めとする諸先輩方がいらして、驚いた。皆注目のイベントなんだなぁ
僕は最初に野球教室に行った。僕は野球が得意だったから
そしたらテプンという人に『お前も指導にまわれ』と言われた
僕は客なのに…と腹が立ったが『お前うまいな』と誉められてちょっと嬉しかった
その後、バンジージャンプに行った
怖かったけど一度はやってみたいと思っていた。だが、父とマイケルさんが並んでいたので、ちょっとやめた
明日は絶対に行きたい
木工教室に参加してみた。僕はゴージャスな椅子でも作ろうと思っていたのだが、材料がなく、かわりに『ブレッドケース』を作った
あんぱん10個は入るだろう
それからちょっと汗を流しにジュンホと言う人のボクシング教室を受けてみた
言葉数の少ない、朴とつとした青年だ
でもボクシングの指導は熱心だった。いい汗をかけた
シャワーを大急ぎで浴びて、ショータイムに向かった
僕はなんとしてもこれを見たかった
大急ぎで行ったにもかかわらず、既に満席で、仕方ないので後で立ち見した
最初は手品だった
イナが出てきた。が、なんだか調子が悪いのか、何度もカードを落としていた
フンっヘタクソ!
だが、お客さんたちはイナがカードを落としたりちょっと咳き込んだりすると「無理しないで〜」とか「大丈夫〜」とか叫んでた
次にテプンが子供騙しの手品をやった
子供騙しだけどうまい。それに皆大喜びしてた。聞き覚えのある野太い声がしたのでそちらを見たら、父だった…
次はダンス
テプンがそのままの格好で、テプン踊りを披露していた
変な踊りだけど、会場が一体となってテプンの真似をしていた
僕もちょっとやってみた。楽しかった
父を見ると、今までに見たこともないような笑顔で一生懸命踊っていた
そのあとスヒョンと言う人とミンチョルがでてきて、ダンスを踊っていた
スヒョンはスマートに踊っていたけど、ミンチョルはなんだか堅い動きだった
あれなら僕の方が上手だぞ!フンっ
武術の型は、イナだ。青い顔をしてたけど、ちゃんと回し蹴りや飛び蹴りを決めていた
最後にやっぱり咳き込んでた。さっきと同じように客席から声がかかった
フンっ
その次は歌だ
またテプンだ
凄い!うまい!何でなんだ。バラード歌ってるぞ、Tシャツ着て…
うーん、何でもできるんだ、テプン…
それでNo,1なのかなぁ…
その後ミンチョルが歌ったけど、何かさっきよりもカラオケの音が大きくて、ミンチョルの声がよく聞こえない
うまいのかへたなのか解んなかった
射撃コーナーでは、飛び入りだとかいってスンドン会長と父がステージに立った
物凄く恥ずかしかった
でも二人ともちゃんと的に当てていてかっこよかった
モノマネショーは、ハリウッドスターの物真似だとかで、ちょっと僕には解らない人ばかりだった
父など、最前列で『ワシは昔じえむす・でいいんといわれたもんじゃ
君、じえむす・でいいんのモノマネはできるか?』とリクエストしていた。はずかしい!
そして僕が一番気になっていた変身ショーが始まった
まず出てきたのがテジンと言う人だ
テジンは「ぼくはホジンなんだ。なぜ解らないんだ」と叫んで涙を流した
そして引っ込んでいった。え?これだけ?
次はウシクだ
「契約成立。キム・ギヒョンです」
そう言ってニッコリ笑って引っ込んだ。え?何これ?
でもお客さんはキャーキャー言ってる…
そして最後にテソンが出てきた
ちょっと舞台装置も凝っていて、真ん中に鏡がおいてあり、蝋燭が灯された
テソンは鏡に向かって話かけていた
「いいか、…出てもいいけど、10秒だけだ。いいな。すぐにひっこむんだ…
でないと、俺もお前も終りなんだ…」
『解っている…』
「信じているぞ…いいな…いくぞ…ううっうっ…うううっ」
そう言ってブルブル震えだしたかと思うと、急に鏡の横にあった漬物石を頭上に持ち上げた
『うううっは、早く…早く…』
テソンがそういうと、客が声を揃えて「10,9,8,7,…」とカウントダウンし始めた
そして0で石は床に落とされ、テソンはまたブルブル震えて
「ただいま…」
と客に呟いた
その途端割れんばかりの拍手が客席一杯に鳴り響いた
父などは、スタンディング・オベーションしていた…
その後格闘技対決だった
だが、二人ともちょっと打ち合っては頭を抱えたり胸を押さえたりで、ちっとも迫力を感じなかった
すぐによろめくし。つまらない
なのに客はきゃーきゃー大丈夫〜?と声をあげていた。フン。バカ!面白くない!
結局引き分けで終った。フン。バカ!
そして、最後のストリッ○ショーが始まった
照明がピンク色になり、ムーディなサキソフォンが鳴り響く
その舞台に、一人の男が踊りながら出てきた
ん?ミンチョル?あの前髪とあのメッシュ具合が似ている
ミンチョルにしてはラフな服装だ。音楽にあわせて上着を脱ぎ、客席にほおった
さっきあんなに堅くなってダンスを踊っていたのに、今は何だか妙にいやらしい踊り方だ
ああっ、ベルトをとったぞ。あああっシャツを脱ぎ始めたっ…いいのか?いいのかミンチョル!
うっ、上半身ハダカだっいいのかミンチョ…ああああっGパンまで脱いじゃった…パンツ一丁だ…
僕は目を疑った。あのミンチョルがパンツ一丁で…
それも、へーんなぱーんつ。大事な所が▼…へーんなの!ふんっ
お客たちは大喜びでキャーキャーキャーキャー言ってる
一人奇妙な髪型をしたオバサンが、さーっと前に走り出て、信じられない事にミンチョルの変なパン○にお札を挟み込んだんだ!
ミンチョルはそのオバサンに何事か囁いてにっこり笑っていた!信じられない!
本当にミンチョルだったのだろうか…後で確かめたい。でも怖くて聞けない…。そうだテス君に聞いてみてもらおう
そんな訳で、僕にとっては大ショックの連続だったショータイムだった
さ、今からバイキングレストランでご飯を食べて、講演会でも聞きにいこうかな〜