では、簡単にスロット・カーの構造を解説していこうと思います。 もっとも、簡素な構造なので解説という程、大層な物でもありませんがね。 さて、スロット・カーの構造はどうなっているのかというと、概ね下のような物である。 |
![]() 現在、手に入るスロット・カーのシャシ構造。
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向かって、左がシャシ,右側がボディである。 大抵は、この様に簡単に分解出来るように作られています。 勿論、メンテのためにであるが、もう一つの理由としてはボディを交換して遊ぶ為でもある。 当然、激しいレースによってボディにダメージが及んだ末に交換。なんて事も日常茶飯事だから、この辺りの作業は簡単でなければ困ってしまうのであるが・・・ さて、シャシは大抵の場合、アルミか真鍮のプレス加工品で単純な梯子型構造で、その後部に動力源であるモーターが取り付けられていますが、殆どの場合は縦に積まれています。 但し、タミヤ等の一部のモデルやCOX製などには、モーターを横積みした物もありますが、これらはサイド・ワインダー・シャシと呼ばれて区別されています。 モーターはナイロン製もしくは金属製のギアの組み合わせによって後輪車軸に動力が伝えられるのですが、ここのギア比の選択によりパワー重視,最高速重視等の、まるでミニ四駆と同じ世界が展開されます。 もしかしたらミニ四駆の元祖はスロットカーなのかもしれません。 動力は、シャシの前方に取り付けられたガイド・ブラシ(写真上方の黒い部品)によって、コースのスロット左右の電極より供給されますが、このブラシのシャシへの取付構造も、各メーカーが趣向を凝らしていて、大変興味深いです。 ガイド・ブラシは、スロット・サーキットに刻まれた溝にはめ込まれる事によって、モーターに電力を供給すると共に、走行における文字通りのガイドとなる機能を有しており、このガイド・ブラシの存在こそがスロットカーのスロットカーたる所以となっています。 タイヤ及び車軸に関しては、現在、入手出来るシャシでは、タイヤは車軸と共にシャシに開けられた穴に真鍮製の軸受けを用いて取り付けられ、トレッド調整は同じく真鍮製のカラーによって調整する物が多く、 このためにホイールはアルミ製で軸を固定する芋ネジが取り付けられており、多少のトレッド調整が可能になっています。 但し、当時のシャシ(1960年代のオリジナル,ここではビンテージ・スロットカーと呼びます。)では車軸にネジが切ってあり、そこに同じくネジ切り加工されたホイール(大抵はアルミ製の挽物)とナットを使ってダブル・ナットで締め付けて固定しており、トレッド調整に関しては余り自由度が高くなかった物が多かったです。 |
![]() ビンテージ・スロットカーのシャシ構造 |
ホイール・ベースの調整に関しては、現在の物も当時の物も殆ど構造に変化が無く、ある程度フレキシブルな調整が可能なのですが、当時のシャシで安価な物の中には到底、正確なホイール・ベースを調整することなど不可能な物や、プレスしたアルミ・シャシに数個の穴が開けられ、そのいずれかを選んでホイールベース調整をするという程度の低品質な物も見受けられました。 しかし、最近のシャシではその様な事は杞憂にすぎない程の精度の高さを誇っています。 さて、タイヤに関しては、当時の物は勿論ゴム製ですが、現在ではタイヤはその殆どがスポンジタイヤで、極一部のマニア向けにゴム製の物も発売されていますが、需要は少ないようです。 車軸に関しては、基本的に前後輪ともシャシに固定であり、前輪がステアするなどの特殊な物は、当時のシャシの極一部に採用されていたに過ぎませんが、サスペンション機構に関しては、色々と凝った構造の物も採用されています。 ところで、シャシ構造及び材質等のクオリティーに関しての白眉は、やはり、タミヤ製のサイド・ワインダーやCOX製のマグ・シャシ等で、当時でも最高のレベルのものであり、現代でもそれらはマニア垂涎の品となっています。 シャシとボディの装着には簡便な固定具を利用して行われ、その固定具は比較的自由度の高い構造の物(例えばスポンジ等)が採用されている場合が多いですが、これは、現代ではボディを市販のプラモデルから流用している事が多いからで、当時のスロット専用ボディには取り付け用にネジ受け台がモールドされていました。 |
![]() 愛しのモーター達。 勿論、当時のスロットカー用に作られていた物である。
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さて、動力となるモーターは、驚いたことに現在でもマブチ・モーターよりスロット・カー用のモーターが作られています。 現在、入手出来るシャシは、このモーターに対応した取り付け穴が開いているので、簡単に装着が可能であるし、メーカーによっては組み付け済みで販売されているものもあるほどです。 ただ問題なのは、ビンテージ・スロットの場合で、当時のモーターに問題があって走れない場合にはモーターのO/Hや、場合によってはデッド・ストックのモーターを手に入れる必要があるので維持するのも大変です。 勿論、今、入手出来るモーターを取り付ける事も可能ですが、貴重なシャシを改造する事になりかねないし、もしも、ビンテージ・スロットカーのレースに参戦する場合にはレギュレーション違反になる場合もあり余りお奨めできません。 昔は、モーターのコイルを巻き直してパワーアップさせた極悪な物や、負荷が掛かるのを承知のハイ・ギヤードなどが横行していましたが、統一されたルールのない昔ならともかく、現代では大人の遊びとして、ごく一部のマニアだけで楽しんでいる状態で、そのような改造を施されたスロット・カーに出会うことは殆ど無いですが、私個人としてはそのような極悪改造のマシンばかりで競われるレースを一度は見てみたい気がする。(笑) |
1/24のレベル製ロータス23のスペア・ボディ・キットのパッケージアート。
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同じくキットの組立説明書。
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当時のボディは、その殆どがワンピースの一体成形で、基本となる成型品はボディ本体及びドライバーがモールドされた上げ底の室内パーツをメインに、ウインド・シールド,ヘッドライトなどのクリア・パーツ,ホイール・キャップ(アルミ製のホイールの中にはめ込む為に、ホイールのディティール再現された物),ミラー,テールランプなどのメッキ・パーツで構成されており、大抵の場合、デカールも用意されていました。 無論、基本的にはプラモデルを走行させているわけで、走行中のクラッシュや転倒,コースからの落下(!)などでボディが損傷する事を想定して、スペア・ボディなども発売されていましたが、現代では、当時のスロット・カー・キット(勿論、未組立,未開封)はとてつもなく高価かつ貴重なシロモノですので、もしも、ビンテージ・スロットでサーキットを走りたいと望む人は、このスペア・ボディや、補充パーツとして販売されていたシャシ・キットなどを組み合わせて作った方が、完品のコンプリート・キットを購入して組み立てるよりも遙かに経済的でしょう。 当然、最近のモデルカー・キットと、さかつうやビーバー・コーポレーションのスロットカー・シャシを組み合わせた物が現在のスロットカー・サーキットの主流ですので、当時のシャシとは走行スピードや車体の安定性等に雲泥の差があり、かつ、ビンテージ・スロットカーは貴重であることもあり、雑多な種類のスロット・カーが走行する状態のサーキットでは、その走る姿を見ることは滅多に出来ませんが、中には、そのような古いキット限定のサーキット・イベントも有るようで、所有している人は意外と多いようです。 ところで肝心のスロットカーのコントロールは、コントローラーと呼ばれる抵抗器を使用して行ないます。 スロットカー自体は直流12Vまでの電流をガイド・ブラシを介してモーターに通電し、走行させているので、その電流を抵抗器で任意の電圧に制御する事によってスロットカーのスピードをコントロールしているわけで、このコントローラーこそがスロットカーのアクセルそのものなのです。 (ステアリングがいらないのは、御存知の通り。) さて、コントローラーには、大別して当時の主流であったレバー・タイプのものと、トリガー・タイプの2種類があるが、現代ではレバー・タイプは稀少品であり、中古品でも結構な価格で売られているので、あえて拘らない限りは新品で購入出来るトリガー・タイプを選ぶ人が圧倒的です。 また、コントローラーには電気抵抗を利用したブレーキ機能を組み込んだ物もあり、これは、簡単な工作によって後付する事も出来るために、多くの人がコントローラー本体にも改造を加えており、改造のためのキットも販売されています。 |
![]() スロットカーのコントローラー。
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以上が、大体のスロットカーの構造であり、最近の電動ラジコンに較べると呆れるほど簡単で原始的な構造ですが、簡単な物ほど面白い事が世の中には一杯ありますから(ミニ4駆しかり)、構造のみで物事の評価はできませんね。 さて、いよいよ私の所有するスロット・カーを見ていただくのですが、別にコレクターでは無いので、とんでも無く貴重なマシンを所有しているわけでもなく、全て実際にサーキットを走行した経歴もあるので多少痛んでいたり、汚れていたり、部品が取れていたりしていますが大目に見て欲しいです。 |