れいめい塾25時2001年

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「25時」 

2001年8月25日号

 ここ数年、夏季講習がブレーキの壊れたダンプカーの様相を呈している。40も折り返し点を過ぎ、猛暑に身体が耐えかね動体視力に衰えをきたしたのか? はたまたウチの塾に密航して来た者ですらが目を疑うばかりのスピードでいろんな出来事が起こっていく・・・そんな絶叫シーンの連続に、慣れているはずの俺もまた体勢を立て直せないでいるのか・・・。ともかく、そんな絶叫の数々を描き出していきたい。

 具にもつかない言い訳だが・・・パソコンの調子が悪い。掲示板がバカになった。トンと反応しない。しばらくほおっておいたら突如回復。しかし今度はホームページ作成のフロントページが閉鎖・・・。やたらバッドマーク・・・このシステムは不正な操作をしたので強制終了なんとやらの連続。俺、何も悪いことしてへんで! 高校生、パソコン使い終わったら履歴くらい消しとけ。小学生が見たらどないすんねん! 

 閑話休題、4月以降このかた、塾内「25時」は掲示板の原稿をまとめて編集することでお茶を濁してきた。5月に一応出稿はしたものの尻切れトンボで塾内に配布していない。つまりはこの塾内「25時」、今年2月以来の半年ぶりの登板となる。

 盆の15日、デンちゃんが襲来。いつものように俺のパソコンの使い方に説教を垂れ、フロントページを開く。あれ!開いたやん! 「なんやオマエ、キョトンとした顔して」とデンちゃん。「俺は昔から女にふられることには慣れていたさ。でもね、目の前で別の男に寄りかかるのを見るのは初めてだよ」

 今年の主役たる中3・・・デンちゃんから今年のメンバーの数学のデキを占ってもらうと・・・意外なことに絶賛。「去年の連中は根性なしばっかやったからな。そんで今年は期待してへんかったんや。それがどうしてどうして・・・なかなかやるやん!」 そんなデンちゃんのお気に入りは良太と直矢。いつものように「俺が大阪に帰るまでにこの問題全部解けたらジュース奢ったるわ!」 最近の贅沢な中学生、ジュース程度では心の揺らぎはないだろう。しかし問題が問題、デンちゃんの手渡す問題には灘や東大寺・洛南など関西一流どころの高校が並ぶ。ここに来て数学オタクに豹変した二人、深夜までねばる。今回のデンちゃんの予定、日帰りではなく鳥羽のオッサン(爽風塾塾頭)とこに二人して泊まる変則日程。しこたま飲み、翌日の昼過ぎに酒の匂いをプンプンさせながら塾に戻る。教室では良太と直矢、聞けば朝から塾にやって来て最終ラウンドに突入している。トラブるはずの灘の難問でさえ難なくクリア。しかし複数の答えを要求している白陵でこける。「あぶねえ、あぶねえ・・・しかし今年の中3、えらいメンバーになってきたな」

 良太の問題に対するアプローチには塾の関係者から絶賛の声があがっている。開明学院の永橋学長が言う。「この子の解き方は才能を感じさせるね。鮮やかな手順、こんな解き方塾の講師にもできないよ。こんな生徒なら中学の中間期末なんてアホらしくてやってられないだろ?」 しかしやっかいなことに良太の中間期末は80点クラス、ポロポロと基本問題で取りこぼす。

 良太の机にある古ぼけたカードボックス。これは古西(上智大学1年)がかつて使ったカードボックス。ここにペンや定規、それに解けない問題や重要事項を書き込んだカード(俗に言う京大式カード)をファイルしながら古西は津高を目指した。このカードボックスは津高に合格した古西から村瀬(津高3年)へと手渡された。「絶対に後輩になれよ」との想いを込め・・・。そして村瀬からやはり同様の想いで大輔(津高2年)へ。さらに翌年には大輔から菊山(津高1年)へと夢の紬ぎは続く・・・。そして今春、中3での遅刻145回を見事はねのけ?力業で津高に合格した菊山から良太に手渡された。古西から数えて5人目、この古びたカードボックスは今年、5回目の受験を迎える。しかしそれにしても良太、ウチの塾の伝統ともいえる脈々と伝わるこのような熱さに全く無頓着。とんと反応しないし、伝わらない。2日前のコーラのような良太に「オマエ、このカードボックスの重さ分かってんのか!」と怒鳴ると「うん、便利なんやけど古いし・・・」 飄々と我が道を行きやがって・・・新人類やで。

 中3の夏季講習はいつの間にか始まり、いつの間にか終わる。今年もまた英語の後置修飾の概念を説明しているうちに夏休みに突入。国語が高校入試の趨勢を決めると思われる優里・直矢など数人には北海道から順次、公立入試問題を1日に1題解いていくように指示。サポーターは大森(皇学館大学2年)。理科と社会は中1と中2との対抗戦で荒っぽく仕上げていく。このあたりの強引さは例年のごとし。後輩に強敵がいると中3のテンションも上がる。社会は世界地理と歴史前半、理科は植物と化学変化。つまりは中1と中2の夏休み明けの試験範囲だ。この範囲の試験が毎週のように続く。中1と中2には、この夏の中3の姿を眼に焼き付けておいてほしいと切に願う。黒板に書かれた対抗戦の成績には、中3の半数以上がミス0で続く。これがミス1や2では何かが足らない。下級生とやる試験の緊張感が受験生としての自覚を一歩ずつ覚醒させていく。中3が強いと下級生も強い。逆に下級生が強いと中3も強くなる。つまりはクラブ活動と同じである。

 今から2年前、当時中1だった優里と恵に俺は言った。「中3の先輩達の最後の試合をよく見とけ」 一瞬、優里はふてくされたような表情。気分は分かる、当時の中3に姉の花衣(津西2年)がいたからだ。そして俺は花衣にも言った。「とうとう最後の試合や。勝ち負けは問わない。ただ、見る者の心に残る試合をしろ。後輩達に何かを与えろ。将来、後輩達がクラブを続けることにくじけそうになった時、脳裏によぎるようなそんな試合をしてみろ」 そして大会初日、花衣の久居東中バスケットボール部は優勝候補と対戦し初戦敗退。花衣は人目をはばからず目を真っ赤にして号泣していた。この先輩達の試合を当時中1だった後輩、優里と恵がどのような気持ちで眺めていたのか? あれから2年が経ち、花衣達先輩の置きみやげが一体どのような重さ、どのような熱さを持って後輩達の心に宿り続けたかが問われる試合が7月20日に迫った。

 優里と恵の最後の試合を見るために階段を下りていくと、1階であすかチャン(津西2年)が勉強している。あすかチャンもまた花衣と同じ時代を久居中女子バスケットボールのキャプテンとして過ごした。あすかチャンの後輩達もまた、あすかチャンら先輩から何を受け対だのか俺としては興味がある。あすかチャンにしても後輩の試合が気になるところ。俺はあすかチャンを試合に誘った。「久居中は強いんか?」「うん、みんなミニバスの経験者やから優勝候補みたい」「そりゃすげえ。東中と当たらんといてほしいな」「ふふ・・・」

 試合会場へ行くと久居東は初戦で久居中に当たるという。「まいったよな」と泣きが入る俺。「ふふふ」と余裕のあすかチャン。久居中の選手達があすかチャンの姿を認めると笑顔でチョコンと頭を下げていく。「お!さすが元キャプテン、人望厚いな」「先生・・・あの子達は中3と違うの」「どういう意味よ?」「みんな中2なん」「え!じゃあ、中3は?」「中3はみんな辞めたん・・・」「・・・勝つためのバレーか?」「今のメンバーは小学校からミニバスやってきてるから上手なんやけど、中3と対立して・・・」「じゃあこのメンバーはあすかチャンが中学卒業と同時に入学してきたのか・・・」

 試合が始まった。中2ながらミニバス出身で固めた久居中に対して優里たちはドリブルを抑え素早いパスワークで切り込んでいく。これが功を奏したのか、前半終了時には5点リード。リードされたものの余裕を見せる久居中、後半に入っても雑な攻めが続く。しかし選手層が厚いこともあって、めまぐるしく選手が交代。対する久居東中はメンバーチェンジせずに後半戦に突入。監督としては難敵・久居中相手に優勢に試合を進めている以上、このメンバーをはずしにくいのか? しかし後半中盤戦あたりからスタミナを欠き始めたのか、パスワークに鋭さを欠くようになる。そして前半は久居中を完全に制していたリバウンド合戦もほとんど久居中に凱歌が上がる。制空権も奪われ、パスもショートカットされ久居中の縦のパスが決まり始める。東の選手達の動きがみるみる鈍くなる。22対22・・・ついに久居中に追いつかれたのは後半7分。そして瞬く間に堰を切ったように開いていく点差・・・。ラスト2分となり、それまでパスをつないで攻撃の要となってきた優里が腰砕けで転倒。優里のスタミナに問題がある・・・そんな冷静な判断は俺にはできない。あの小さな身体で優里は久居東の攻撃を支えてきた。最初っから動きっぱなし、限界は到に来ていたはずなのだ。俺にできることはただ祈るだけ・・・優里、頑張れ! なんとか最後まで頑張れ! 終了間際、久居東からタイムがかかる。メンバーチェンジ・・・優里交代。コートの外に出た途端、優里はタオルで顔を覆って泣き始めた。そしてラスト1分で久居東、最後のメンバーチェンジ。ここで恵が登場、一度パスをつないだもののゲームセット。ホイッスルと同時に恵も泣いていた。

 優里と恵はこの日、かけがえのない熱いたぎりを後輩達に残していったと思う。夜になり講釈好きな俺は塾の高校生達にこの日の久居東中VS久居中の熱戦を話していた。俺は優里や恵みがいることからついつい東びいきになっていた。終始無言だったあすかチャンが口を開いた。「先生・・・」「なんや?」「あの子たちさ、私が小6でミニバスのキャプテンやってた時に入ってきたの」「ああ、小3やったんやな」「うん。でさ、最初は全然で・・・満足にシュートも打てないし・・・ボールも届かないし・・・教えるのにも苦労して」「・・・」「それでもちょっとずつ上手くなって・・・、そして私は中学へ進学・・・。それが今日見てて、本当にあの子達は上手くなった・・・。先生、それだけは認めてあげて・・・」 俺は涙が出そうになるのを堪えた。あすかチャンの瞳を見た。真っ赤だった。

 クラブとはこんなもんだ。上から引き継いだ魂めいたものを下へと手渡していく。そしてあすかチャンみたいな優しい女の子を時には鬼にも変えるほどの感動を見ているものに与える。

 昨夏の福井からの密航者・アキラ(北陸高校から関西大学へ)に引き続き、今年の夏の密航者は清水(宇治山田高校3年)。志望は立命館・アジア太平洋大学。メチャクチャしぶい好みやと思てたら商工会議所の偉いサンやってるオヤジさんの趣味とか、納得やね。この大学、できて2年目だが授業の半分は英語で講義。教授陣は海外から有名所を大挙連れてきている。生徒も半分は海外からの留学生で、カフェテリアでの共通言語は当然のごとく英語。大学の協賛企業もソニーや松下など日本のオールスター陣が軒並み。日本人学生は4年間のうち1年を海外の提携大学への留学が義務づけられている。大学不況の今の時代にあって赤丸上昇中の大学。しかし唯一のネックは場所、これが別府ちゅうんがヤッカイなんや。でも今時おもろい大学やで。

 清水の実力は困ったほどにない。宇治山田高校もまた津西と同様、瓦解寸前である。神様は今年もまた過酷な状況で俺を試そうってか? しかしシュラフを持ち込み風呂にも入らず、ファミマで買ったおにぎりをほおばり、睡眠時間3時間ほどで俺の生活とタイマン張って勝負を始めやがった。このモチベーションがひと夏続けば十分勝負になる。8月4日の久居の花火大会の夜、清水は1週間ぶりに鳥羽の実家へ帰っていった。これっきり帰ってこなかったりして(笑)。

 8月9日、俺は香が出場する女子バレー部の東海大会を見学に岐阜まで車を走らせた。東名阪から長島インターで降り揖斐川沿いに北上する。午前中は小学生だ。今年の中3は中1と中2の先輩としては厳しさが足りないが、こと小学生相手ともなるといい先輩ぶりを発揮してくれている。夏休みだけの生徒も多かったこともあり慣れないだろうとの予想は見事に外れる。小4は面積と単位、小5は速さと単位、小6は中1数学と、俺が決めたテーマに沿って指導してくれている。中学生や高校生の山積する問題でしかめっつらの俺なんかより、現金な小学生は優しい先輩がいいらしい。夏だけの密航者の小5の男の子なんて、俺に一切見向きもせずに直矢や松原・弟の信者となっちまった。優しいだけが取り柄かと思っていた今年の中3の嬉しい誤算! そして昨日から瞳(10期生)がバイトに入った。

 瞳とは古い付き合いになる。俺がNKKのアパートに住んでいた頃、よくウチの娘さん達の遊び相手になってくれたっけ。兄貴(6期生で津西から静岡大学を経て就職)がウチにいたこともあり妹もまたウチに入った。中3の晩秋、今いちパンチに欠けた成績の瞳を車に乗せ俺は東名高速を飛ばした。津高を受けるか受けまいか? その決断を兄貴に託そうかと弱気の虫が囁いていた。静岡で兄貴と合流、駅の並びの飲み屋で3人して話した。結局は津高勝負・・・そして俺は瞳を落とした。高田に進学後、今回のように夏休みのバイトを頼んだことがあった。背中が堅かった・・・小学校時代のオキャンな女の子はいつしか物静かな女性になっていた。小学生達にとっても質問できるような雰囲気、陽気さはなかった。瞳は高3になり、大学入試の季節を迎えた。俺は内心「やり残した仕事」の依頼を待っていた。しかし連絡はなかった。瞳が奈良の専門学校に進学したことを聞いたのは、定番のうなぎパイを持って社会人初めての盆休みに帰省した兄貴からだった。妹の話をもっと聞きたかった。できれば奈良まで会いにいきたかった。会ってどうなるものでもなかった。しかし会いたかった、懺悔したかった。動揺を隠すように話題を変えた。「前の彼女はどうなった?」「なんとか別れるように計画してるんやけど」「長い付き合いじゃねえか、このままいっちまえよ」「先生、勘弁してよ。もうコリゴリだよ」 兄貴は静岡大学1年で彼女と知り合った。バイト先の予備校の事務の女の子だっけ。それが3年生となり校舎が静岡から浜松に変わる時、これ幸いにと彼女と別れる算段をしていた。しかし彼女は休日になると浜松までやって来た。結局押し切られる形で関係はズルズルと続いた。あれから2年、社会人となったのを幸い、再びこ奴は姑息な計画をたくらんでいたってわけだ。

 瞳から塾でバイトしたいという電話があったのは7月下旬。二の句もなく引き受けた。負い目を幾ばくかは払拭したいと考えた。依然として高校受験に対するこだわりがあった。4年ぶりに塾に姿を見せた瞳は昔のままだった。物静か・・・そして背中の堅さも変わっていなかった。食事に誘い言った。「オマエ、奈良で何かバイトやった経験は?」「なかなか勉強のほうが忙しくて・・・何も」「そうか・・・とにかく陽気になれ。笑顔をふりまけ。頭に来たら怒れ。喜怒哀楽をはっきりと示せ。検査技師の国家試験に合格しようとも今のままじゃ面接で落ちる」 瞳の通う学校は医療技師養成の3年制の専門学校だった。つまりは来年の春に国家試験、そして就職先の病院を決めるのは現在進行形だった。言い過ぎたか?と思った。しかし、「やり残した仕事」の依頼が形を変えて飛び込んできたわけだ。めげているわけにはいかない。目の前の瞳と対峙する。佇まいとして他者を受け付けない一徹さが垣間見えてしまう。これがやっかいなのだ。本人にそんな気はなくともやはり見えてしまうのだ。年齢以上に大人っぽく見えるのもそのためだろう。それを一番敏感に感じるているのは小学生。そこにはウチの娘さん達と戯れていた少女の頃の想い出はない。こんな時、ハネッかえりだが愛嬌のある紀平(南山大学4年・ヤマハに内定)が天使のように見える。臆病な俺はさりげなく撤退、話題を変えちまった、「兄貴は新しい彼女できたかね?」「え?」「大学ん時の彼女とは切れたんだろ?」「そんなことないわ。今も静岡の彼女と付き合ってるわよ」「へえ、結局は逃げられなかったってか。そろそろ年貢の収め時だな」 今日初めての笑顔が瞳から溢れた。

 今年の夏、わずか3年前の「やり残した仕事」が転がり込んだ。13期生のかおりチャンが再びウチの塾にやって来た。神様が俺をためすチャンスを与えたくれたってわけだ。しかし高校での評定平均5段階で4.6という成績をもってしても日本福祉大学社会福祉の指定校推薦に漏れそうだとか。女子高生達の社会福祉人気、おして知るべし。でもなんで皇学館大学社会福祉は単行本「潰れる大学」で赤丸上昇中なんや!

 かおりチャンは高校入学後、お母さんに言ったそうな・・・「もう、私に期待せんといてね」 そして3年ぶりに会った俺にこう言った。「私は高校の英語の成績はともかく、英語の実力では全然力不足。高3のみんなとは到底同じ授業に入れない。だから高1の子たちと一緒に授業を受けさせてください」 気が滅入っちまった。かおりチャンの謙虚さが俺を打ちのめした。それでも俺はやはり神様に感謝すべきなんだろう。

 金華山の麓、長良橋を渡って10分ほどで試合場の体育館に到着。よくある田舎の立派な体育館だ。昼過ぎに到着、応援団とは離れた所からコートを眺める。去年の冬、さわやか杯だっけアクエリアス杯だっけに大阪くんだりまで三重選抜で出場した紘(津西1年)を見にいった時にも感じたことだが、ユニホームがやたら派手になった。まるでJリーグやん!と嘆め息をついているところへ香の姉ちゃん、愛(愛知大学3年)が「あれ!先生、来てたの」と化粧バリバリの顔で微笑む。「今から柳ケ瀬に出勤でっか?」「何言うとるん!」「地区大会は優勝候補筆頭のチームやったから後回しにしてたんや。地区予選はやっぱ、津高の高校野球といっしょや。この試合見やんかったら今年は終わる・・・なんて連中の試合ばっか見に行ってたよ」「でも先生、このチームに期待したらアカンよ」「なんでや? おまえがかつてキャプテン努めてた中学やで。かわいい後輩達やろが」「そりゃかわいいけど・・・」「それに今年のメンバーは小学校から強かったろ、確か俺、香が小学校の時、全国大会出場に際して寄付させてもろたで」「確かに強いんだけど・・・チームワークが悪いん」「おまえん時だって悪かっただろうが」「でも私たちのチームはいくら仲が悪かっても試合になったらチーム全員で勝とうとしてたよ」「これから拝もうって時に嫌な戦前予想をするよな。じゃあ、かわいい妹がいるこのチームは負けるってか」「そりゃ勝ってほしいけど・・・」「俺は香のバレーの勝ち負けには興味ねえ、どっちだっていい。俺が興味あんのはクラブ活動を通じての受験だよ。香の受験しか頭にゃねえよ。それと付録もあるな、去年の暮れまでウチの塾にいた優果ちゃんの勇姿も一度見たかったしな」「優果と香は交互に出るよ」「あれ?そうなん。一粒で二度おいしい!てなわけにはいかんか」

 コートに選手が整列、歓声とともに試合が始まった。優果と香、まずは香が先発。しかし立ち上がりが悪い、ズルズルと点差が開いていく。横で愛が罵る。「いつだってこうなん! このチームは普段ダラダラと練習しているから試合の出だしが悪いの。やっと本来の調子が出る頃には点差が離れすぎてる」 愛のやっかいな予想通りに試合は進んでいく。さしていい所もなく1セットを落とす。「やっぱりアカンわ。この大治中には練習試合で勝ってるのに・・・なんで大切な時に本気を出せへんのやろ!」「オマエ、興奮しすぎると化粧落ちるよ」「馬鹿!」 2セット目が始まった。しかし1セットと同様の展開が続く。つかの間チャンスが到来するもののサービスエースのミスなどで流れはつれなく相手チームに戻っちまう。10対22・・・、勝負の神に抗う術もなく大勢は決していた。観客席からは悲鳴のような歓声があがり始めた。そんな喧噪の中でキャプテンが違和感ある動作を繰り返す。うん?何度も手で目をこすっている?・・・いや、泣いている・・・確かに泣いている! 何か暴力的な叫びがせり上がってきた。しかし一瞬早く隣りで愛が絶叫! 「バカ! キャプテンが泣くな!」 愛は6年前にキャプテンを努めた。背も高くなくバレー向きの体躯ではなかった。人一倍クラブの人間関係で苦しみ、塾の踊り場でよく泣いていた。津高進学後、バレー部に入部。先輩達が大学受験の勉強でクラブを引退した後はたった一人で津高バレー部の看板を守り続けた。大学でもバレー部に入部、しかし今度はあまりに軟弱な練習に嫌気が差し退部。そんな熱血系、ウチの塾を具現化する10期生の竹中愛は化粧の床上浸水をも躊躇せず号泣していた。試合は終わった。完敗だった、しかし愛の涙は途切れることはなかった。

 試合後、俺は本屋で「岐阜県入試問題過去5年間」を買った。名鉄岐阜駅で愛を降ろし市内をさ迷いながら車を走らせる。今頃、岐阜・時学館学長の中西先生、腕まくりしながら夏季講習頑張ってるやろな・・・。江南じゃモノリスの岩井先生、冷房をガンガンきかした部屋で束の間の惰眠を貪っているだろな・・・。そして俺は・・・やはりスマートな塾の先生なんぞできるはずもねえよなと一人ごちた。墨俣から堤防沿いに南下、長島インターから東名阪に入りアクセルを踏み込んだ。

 「香の試合を見てきた。いいところは一瞬すらなかった。10対22・・・勝負の趨勢が決したのを自覚したのか、キャプテンが泣き出した。まだ試合中やぞ! キャプテンが泣く、試合中やのに泣く。コートにいっしょに立っている選手はどう思う? 来年に夢を託して先輩の最後の試合に目をこらしている後輩はどんな気がする! キャプテンが泣く・・・今日は今まで俺が見てきたなかで最も最低な試合やった。勝負の最中は絶対に泣くな! 絶対に驕るな! 勝負事は終わってみなくちゃ分からねえ。オマエさん達もいっしょや。ウチの塾はバレーで言うなら、コートや。今、ケンカやってんねん、1年間かけてケンカやってんねん。勝負の途中に試合を投げ出すな。夏季講習・・・まだまだ旅の途中、勝負は最後まで分かれへんねん、絶対に泣くな! ええか、勝負は下駄を履くまで分からへんねや!」 教室内には静寂・・・。俺は静かに続けた。「今日の岐阜土産や。ありがてえだろ・・・今から平成12年度岐阜県入試問題に入る」 俺は問題を配り始めた。

 追伸

 ホーム・ページに「25時」を掲載するようになってやっかいな問題がひとつ・・・。果たしてどこまで書けるんだろうか、という点。塾内部の生徒には悪意は十分あっても、塾関連以外の描写には何ら悪意はない。もし気分を害されるようなことがあれば俺の文の稚拙さに原因はある。すんません。

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