れいめい塾｜２５時｜2001年

　れいめい塾発「２５時」　

２００1年３月２９日号

　合格発表の夜のカラオケ大会、直嗣の右足はうなりをあげて俺を襲った。「１分間１ラウンドで真剣勝負や！」と威勢のいいタンカを切った４０過ぎのオッサンはあえなくその半分ももたず撃沈。尻をついたところへ直嗣のローが顔面に炸裂、かなり酒も入っていたのだろう、それほどの痛みを感じなかった。翌日となり、鼻の中に違和感を感じ鼻をかむと出るわ出るわ、ドロリとした粘着質の血だまりがティッシュに広がる。それに加えて鼻をかむ度に涙がにじむ。あげく鼻に触れると鼻骨がぎこちなく動く。

　鼻だけでなく、身体中青アザにまみれている。１階から３階まで階段をあがるのにうめき声を出しながら２．３分はゆうにかかる始末。それでも新しい学年が始まった。

　まず中２が中３数学に突入する。平方根の概念からスタートして三平方の定理へと進む。円錐や角錘の体積や表面積を徹底的に教える。そして円錐の側面上の最短距離、直方体の最短距離を教えて一日目の数学を終了する。３月中に中３数学の概略が終える予定。思えば去年はこうは行かなかった。なにしろ数学嫌いの直嗣や大森がいる。何度も何度も同じところで立ち往生、結局春休みでやっと二次関数のさわりまで行ったっけ。そんな去年に比べれば今年は快調に飛ばしていく。

　就職活動真っ最中の紀平香介（南山大学文学部３回生）から深夜の電話。「おい、こら元気か！」　就職活動をしてもこ奴の俺に対する態度に微塵の変化もなし。「まあボチボチや。どないや、就職のほうは？」　「一応動いてるけどな。アカン、今もって俺は自分が何をしたいか分からんねん」　「分からんてオマエ、じゃあどんな会社まわってるねん」　「大企業は今イチな・・・。やっぱこぢんまりした会社の方がエンジンになれるだろ、大企業だと部品にしかなれない」　「まあ、エンジンになれるだけの才能がありゃあな」　「それなんさ、問題なんは！　俺って何に向いてるんやろな」　「マスコミは？」　「バカ言え！　おまえだけやで、俺なんかがマスコミに向いてるなんて戯言抜かす奴は・・・」　「そりゃ、見る目がないんやろ」　「明日な、大阪で会社訪問の予定があるんや。そして１日開けてまた大阪で就職説明会や。大阪と名古屋のトンボ帰りも辛いしな、明日は津の実家に帰ろうかなと・・・。でな、焼肉も喰いたいしな」　「ハハハ、そりゃ楽しい夜になりそうやな」