れいめい塾｜２５時｜2001年

　れいめい塾発 「２５時」

　午前０時をまわった。俺は高２を連れて車に乗り込んだ。助手席には仁志が座る。多分、クジ引きででも負けたんだろう。国道２３号を北上する。そしてつかの間の楽しみを乗客にと・・・有料の湾岸道路を走るものの後部座席の連中はすでに夢の中。

　仁志は津西のソフトボール部のキャプテンだ。県下にソフトボール部は数えるほどにしかないらしい。ゆえにかなりの確率で全国大会に出場できることに。そして何の因果か、仁志がキャプテンの津西は３月に開催される全国大会出場が決まった。期間は３月下旬、開催地は九州は宮崎とのこと。以下、仁志との一問一答。

　「でもクラブがある高校が少ないといっても、よく県大会で優勝できたよな」　「うん、ウチの学校の野球部は厳しいから、野球は好きやけど高校生活の全てをクラブに捧げるのまではちょっと・・・ていう連中が集まって。その大部分が野球の経験者というのが大きかったな」　「一県で一校が全国に出場できるんか」　「いや、エリアで決まるんや。この地区やったら三重・愛知・静岡・岐阜の４県から３校が出場できるんや」　「なんや最下位を絶対に決めやなアカンて性格悪いスポーツやな」　「でも県によってはクラブのある高校数が少なくて二つの県で代表を１校決めるのもあるんや」　「例えばどこや？」　「滋賀県と京都。京都府はたった２校しかないねん」　「そんなに少ないの！　じゃあ大阪は？」　「大阪は激戦区やな」　「やっぱ激戦区てあるんや」　「うん、全国大会常連校では高知のなんとか高校、それと九州がコンスタントに強いな。全国大会は九州の６県で持ち回りなんや」　「それもおもろいな」

　２３号から１号線に入る。

　秦野あたりで太陽が昇り始める。そして給油して首都高速へ。３号から谷町で循環道へ。芝公園で降りて１号線へと戻る。しばし南下すると慶応らしい上品な見上げるばかりの洋風建築の前に。車を２０分百円のパーキングに駐車し長いツアーが終わる。高校生たちとブラブラ慶応周辺をうろつき近くの” Sub Way ”という喫茶店へ。ここで９時過ぎまでねばる。９時３０分、慶応近くのコンビニで高校生がビールを買おうとすると「二十歳未満はダメ！」と販売拒否。「別に飲むわけじゃないし・・・」と抗弁するものの鉄面皮の店員。時間差攻撃で俺が最近発売されたアサヒのドライ１缶145円也を10本、それにカメラを買って慶応へ。警備員はいるものの閑散としている。合格発表の10時が迫っても人はまばら・・・。こんな合格発表ってあるか？　田舎の大学じゃねえぞ、一応慶応の経済学部合格発表やで。

　９時45分、関係者が３人、横に長い紙を持って現れた。発表や！　緊張が走る！　まだ古西は来ない。波多野の携帯へ電話。「先生ですか、今、慶応大学の前にあるパーキングに止めました」　前田の携帯・・・まだ繋がらない！　入れ替わりに俺の携帯が鳴る。「もしもし先生、海津です。今、三田の駅を出ました」　掲示板に

　３月５日、長野泰紀が姿を見せる。今年の広告では大学卒業間近にして就職をテーマに作文を書いてくれた。「どないした」　「いえ、実は結婚が決まりまして」

　３月６日、鳥羽のオッサンと大阪まで車を飛ばしボブ・ディランのコンサートを見に行く。今回は２人だけのツアーではなく賑やかな面々、読売テレビのカメちゃんとサンケイスポーツ・デスクの豊、そして鳥羽の商工会議所の清水さんが仕事が終わってから近鉄特急で来阪。扇町公園前のスカイラークでカメちゃんと落ち合い、宿泊場所のミナミへ。そしてワシントンホテルではすでに清水さんがチェックインしていて４人でタクシーに乗り込みコンサート会場の四つ橋の厚生年金会館へ。豊は急遽仕事が入る。お相撲さんのパーティがあり挨拶をしなければならないとかで遅れる。

　豊がやって来たのはアンコールかと思わせる後半がスタートしてすぐだ。それからラストナンバーまでの５曲が90.000円とは高い？　いや、この日のディランは良かった。60前のオジチャンには見えないド迫力。バックがチャーリーセクストン始めメチャうま！　

　７日、日本橋をオッサンとウロウロして阪神高速に乗ったのが昼過ぎ。途中で食事をして伊勢自動車道に入りかけた時に携帯が鳴る。「先生・・・」　「・・・なんや、弘か。どないした？」　「先生、受かりました」　「受かった？ってどこを」　「名工大」　「なんで！　発表は９日やろ」　「いえ、それは寺田君で、僕は今日ですよ」　「そやったん・・・そりゃ、おめでとう。じゃあ、今は名古屋か？」　「いえ、受かる自信なかったもんですから家で部屋を掃除してました」　

　夜になり階段が騒がしい。ドアのほうに目をやると、古西。なんとキックバックでの登場。俺を見ると一言、「やっと落ち込みから立ち直ってきたわ！」

　９日、突如１階の高２が古い塾へ引っ越しを開始。当然、３階の高１の部屋から高１が１階へ引っ越し。その部屋へ受験まで１週間を切った中３が移動。れいめい塾版・民族の大移動？

　１０日、この日から海津の小論文が始まった。受講者はアキちゃん・村瀬の高２に允・佳子・恵の高１が加わる。

　夜となり、かなりハイテンションの竹中、今井を連れて登場。