ひとりごと 3 2000ねん6がつ        

  『経ガ峰』登頂失敗(6/5)

朝、8時過ぎに携帯電話が鳴った。
いつも一緒に山へ行く友人からだった。
今日は天気がいいし、仕事が休みで、家にいるのがもったいない。

どこか山へ行かないかという誘いだった。
「行く行く。」
とすぐに返事をして、そそくさと家の用事をして、ザックに荷物を詰め込んだ。

9時出発の3時下山の掟は今も変わらない。
子供が手離れたとはいえ、お互い小学生5年生の子供がいる主婦だ。
おまけに仕事をしているため、お天気と休みがバッチリそろうなんて、そうそうない。

きょうは、絶好の登山日和ということで、二人の意見は一致した。
朝、出かける山が決まってなかった。
普通、前日に山を決め、コースを確認し、情報を拾ってから出かけるのだが、

今日の場合は、ぜんぜん予習をしていなかった。
まあ、近くの山にしようと言うことで、「経ガ峰」に決まった。
前に「錫杖ヶ岳」に行ったときに 、途中で「経ガ峰」の登山口を見つけ、そこなら行ける。

それに、マイカー登山という本に紹介がしてあったコースだから大丈夫。
それなら安心ということで、私が車を運転して、登山口までいった。
林道を進んでいくと、大雨で道が削れているところがあって、

それ以上は行けそうにない。
ちょうど2台の車が駐車してあったので、ここで車をおいて、林道を歩いていくことにした。
50分くらい歩いて、林道の終点になり、消えそうな案内板のとおり、

経ガ峰を目指すつもりだったのだが、どうも、人があまり使ってない登山道のため、
荒れていた。
沢を右にわたり、山にとりつくまでは良かったのだが、

女二人ではたしてこのままいっても大丈夫だろうか?そんな不安にかられ、
「遭難するんじゃあないの?」
「そんな気がする。」

そんなやりとりをしながら、少し登ってみてダメなら引き返すことにして、
少し登ってみたが、どうも、テープも、目印も見つけにくい。
地図も磁石も持っていないし、たとえ持っていても、使えない二人である。

二人はあっさりと断念して、おめおめとさっき来た林道を引き返した。
途中、50分も歩いてきたのにこのまま帰るなんて。
車が見えるまで、悶々とした気持ちでいっぱいだった。

このまま家に帰っても時間があるし、
「どうする?」
「そうや、錫杖ヶ岳、もういっぺん登ろう。」

二人は、ザックに入ったおむすびを、なんとか山の頂上で食べるんだと、意地を張って
錫杖ヶ岳へ向かった。登山口についたのは11時を回っていた。
頂上に着き、少し遅めのお昼ゴハンになったけど、さっきの経ガ峰のことはすっかり忘れていた。