平成13年度4年生試験 小児科学本試験
制限時間60分 / 2002年3月7日(木)実施

1.神経芽細胞種について正しいのはどれか。
  1. 交換神経節と副腎皮質に好発する。
  2. 上皮性の悪性腫瘍である。
  3. 生後6ヶ月にカテコールアミンの代謝物である尿中vanillymandelic acid(VMA)、homovanillic acid(HVA)を用いたマススクリーニングが行われている。
  4. 1才未満の患児の予後は不良である。
  5. 遺伝性腫瘍である。
 (答え: c )


2.以下は小児期に見られる貧血とその貧血症状の出現時期の組み合わせである。最も適切でないのはどれか。
  1. 鉄欠乏性貧血 − 思春期
  2. ABO型血液型不適合 − 新生児期
  3. 生理的貧血 − 乳児期
  4. 遺伝性球状赤血球症 − 新生児期
  5. ダイアモンド・ブラックファン貧血(先天性赤芽球癆) − 乳児期
 (答え: d )


3.以下の患児の診断として最も疑われるものはどれか。
患児は4才女児で、微熱、股関節痛の訴えにて1週間前より外来で経過観察されていたが、昨日来の鼻出血の止血困難のため来院した。身体診察では頚部と鼠径部にリンパ節腫脹を認め、肝を右季肋下乳頭線上に5cm触知した。血液検査では白血球数 2200/mm3、Hb 6.5g/dl、血小板 2万/mm3であった。
  1. 再生不良性貧血
  2. 伝染性単核症
  3. 急性白血病
  4. 若年性リウマチ
  5. 敗血症
 (答え: c )


4.以下の患児の病態・検査所見の説明について最も正しいと考えられるのはどれか。
患児は3才の男児で2週間前に水痘に罹患したが、現在は一部に痂皮形成を残すのみで軽快している。昨日より、顔面・下肢に点状出血を認めるため外来受診した。発熱はなく全身状態は良好。肝脾腫・表在リンパ節腫大も認めない。血液検査では白血球数 5300/mm3、Hb 13.8/dl、血小板数 0.8万/mm3であった。
  1. 腹痛・関節痛を合併することが多い。
  2. 凝固因子の異常の合併が疑われる。
  3. 骨髄検査では幼若な巨核球の増加が認められる。
  4. 骨髄検査ではN/Cの大きい幼若なリンパ球の増加が認められる。
  5. 末梢血液像では破砕赤血球が認められる。
 (答え: c )


5.痙攣発作にて来院した乳児に直ちに行うべき検査として最も重要度が低いのはどれか。
  1. 髄液検査
  2. 血糖値
  3. 電解質
  4. 脳CT検査
  5. 脳血流シンチ
 (答え: e )


6.脳性麻痺についての記載として正しくないのはどれか。
  1. 知能指数の低下は伴わない。
  2. 未熟児は成熟児に比べ発症頻度が高い。
  3. 核黄疸は重要な原因のひとつである。
  4. 出生児のアプガースコアが低い児では脳性麻痺のリスクが高くなる。
  5. 運動および姿勢の異常は生涯にわたって進行性である。
 (答え: e )


7.乳児の心不全症状として正しくないのはどれか。
  1. 無酸素発作
  2. 哺乳不良
  3. 嘔吐
  4. 発汗過多
 (答え: a )


8.中等症の心室中隔欠損症で拡大する心腔、大血管の組み合わせはどれか。
  1. 右室・左房・肺動脈
  2. 左室・左房・肺動脈
  3. 右室・右房・肺動脈
  4. 右室・左房・大動脈
  5. 左室・右室・肺動脈
 (答え: b )


9.小児喘息の記載について最も適切でない記載はどれか。
  1. アトピー型(外因性)が多い。
  2. 思春期までに寛解する例が多い。
  3. 喘鳴は吸気性である。
  4. 胸部レントゲン検査では肺気腫状変化を認める。
  5. スパイログラムでは閉塞性パターンを示す。
 (答え: c )


10.下垂体性小人症について正しくないのはどれか。
  1. 均整がとれた低身長である。
  2. 骨年齢は暦年齢相当である。
  3. 性腺刺激ホルモン分泌不全合併例がみられる。
  4. 知能指数は正常である。
  5. 病歴聴取では骨盤位分娩について確認すべきである。
 (答え: b )


11.先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)について正しくないのはどれか。
  1. 新生児マススクリーニングでは血中甲状腺ホルモンの異常低値がスクリーニングされている。
  2. 適切な治療が行わなければ知能障害をきたす。
  3. 腹部膨満は重要な初発症状である。
  4. 大腿骨レントゲン検査は診断に有用である。
  5. 低身長は鑑別診断のひとつとなる。
 (答え: a )


12.感染症の診断において検査所見と起因病原体の組み合わせとして最も適切でないのはどれか。
  1. 末梢血好中球増多 − 細菌
  2. 末梢血リンパ球増多 − ウイルス
  3. 感染部位からの培養陽性 − 真菌
  4. 感染部位からの病原体ゲノムの検出 − ウイルス
  5. ペア血清での抗体価の上昇 − ウイルス
 (答え: b )


13.以下の患児の検査所見として適切でないと考えられるのはどれか。
患児は5才の女児で昨日より腹痛、血便、発熱があり、本日からは尿量減少、出血傾向を認めている。問診では、一昨日、バーベキューで焼き肉を食べたとのことである。
  1. 血液検査で血小板数は減少していた。
  2. 生化学検査で血清尿素窒素(BUN)は増加していた。
  3. 末梢血液像で破砕赤血球が認められた。
  4. 便培養ではサルモネラ菌が検出された。
  5. 生化学検査で低蛋白血症が認められた。
 (答え: d )


14.以下の小児期の感染症の中でヘルペス属ウイルス以外のウイルスによる感染症はどれか。
  1. 伝染性単核症
  2. 乳児肝炎
  3. 突発性発疹症
  4. 水痘
  5. 伝染性紅斑
 (答え: e )


15.乳児ボツリヌス症について誤った記載はどれか。
  1. 臨床症状として便秘を認める。
  2. 臨床症状として筋力低下を認める。
  3. 蜂蜜が原因食品となる。
  4. ボツリヌス菌は毒素産生菌である。
  5. ボツリヌス菌は芽胞を形成する好気性菌である。
 (答え: e )


16.以下の小児期の感染症の中で真菌による感染症はどれか。
  1. 破傷風
  2. 乳児寄生菌性紅斑
  3. 猩紅熱
  4. 異型肺炎
  5. 乳児冬季下痢症
 (答え: b )


17.患児はある免疫以上が疑われている5才男児である。以下の経過を読み、異常があると考えられる免疫担当細胞はどれか答えよ。
2才頃より化膿性中耳炎、化膿性リンパ節炎、肺炎に繰り返し罹患し、起因菌は常に黄色ブドウ球菌であった。身体診察では慢性湿疹、出血傾向、球結膜の毛細血管の拡張なく、小脳失調の所見はなかった。先天性心疾患を疑わせる所見もない。
  1. Tリンパ球
  2. Bリンパ球
  3. 好中球
  4. 単球 − マクロファージ
  5. 好酸球
 (答え: c )


18.以下の患児の病態・治療の説明について最も正しいと考えられるのはどれか。
患児は2才の男児で、4週間つづく両手関節・両足関節痛と弛張熱のため当科紹介入院した。末梢白血球数 15,000/mm3、CRP強陽性、赤沈亢進の所見を認めたが、各種培養検査では有意な菌の検出はなく、抗生物質投与にても発熱および前期の急性炎症所見の改善はなかった。また、入院後の眼科受診にて虹彩炎を指摘されている。
  1. 溶連菌感染が先行感染として重要である。
  2. 血清補体価が減少する。
  3. 舞踏病を来すことがある。
  4. 皮疹を認めることがある。
  5. ステロイド剤が第一選択薬である。
 (答え: d )


19.川崎病についての記載として正しくないのはどれか。
  1. 診断基準に含まれる頚部リンパ節腫脹は非化膿性である。
  2. 川崎病の病態として中小の血管の炎症が考えられる。
  3. 川崎病に見られる血小板増多は血管内皮の障害に続発するものと考えられる。
  4. 川崎病の治療には抗炎症、免疫抑制作用を有する薬剤としてステロイド剤が用いられる。
  5. 川崎病に伴う死亡の原因として多いのは血栓性閉塞による急性心筋梗塞である。
 (答え: d )


20.在胎38週、出生体重 2900gの新生児に生後1日目より強い黄疸が見られ交換輸血が考慮されている。黄疸の原因として最も疑われるのはどれか。
  1. 母乳性黄疸
  2. 先天性胆道閉鎖症
  3. 新生児溶血性疾患
  4. 新生児肝炎
  5. 体質性黄疸
 (答え: c )


21.在胎32週、出生体重 1400g、アプガースコア1分後4点、5分後7点にて出生した低出生体重児に生後6時間後より多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼを認めた場合、最も考えるべき疾患はどれか。
  1. 大血管転位症
  2. 動脈管開存症
  3. 胎便吸飲症候群
  4. 呼吸窮迫症候群
  5. 気管支肺異形成
 (答え: d )


22.ダウン症候群についての記載として正しいのはどれか。
  1. 染色体の不分離に伴う染色体の数の異常がある。
  2. 父親の加齢と関係がある。
  3. 18番染色体の異常である。
  4. 翼状頚を認める。
  5. 知能は正常であることが多い。
 (答え: a )


23.先天奇形の原因となる疾患・症候群として適切でないのはどれか。
  1. 染色体異常
  2. アミノ酸代謝異常症
  3. 胎内感染症
  4. 胎児性アルコール症
  5. サリドマイド胎芽病
 (答え: b )


24.10才の小児において成人以上の発育をしている器官はどれか。
  1. リンパ系組織
  2. 生殖器
  3. 呼吸器
  4. 循環器
 (答え: a )


25.小児の成長について正しくないのはどれか。
  1. 4ヶ月児の体重は出生時に約2倍になる。
  2. 1才児の体重は出生時の約3倍になる。
  3. 1才児の身長は出生時の約1.5倍になる。
  4. 1才児の頭囲は出生時の約2倍になる。
  5. 4才児の身長は約1mである。
 (答え: d )


26.乳幼児の標準的発達について正しくない組み合わせはどれか。
  1. 2ヶ月 − 追視
  2. 4ヶ月 − 頚定
  3. 7ヶ月 − 坐位
  4. 10ヶ月 − 立位
  5. 20ヶ月 − 独歩
 (答え: e )


27.母乳と人工乳の比較について正しくないのはどれか。
  1. 母乳栄養児は人工栄養児に比べ乳児突然死症候群の頻度が少ない。
  2. 母乳栄養児は人工栄養児に比べ生後1ヶ月頃の頭蓋内出血の頻度が少ない。
  3. 母乳栄養児は人工栄養児に比べ消化管感染症の頻度が少ない。
  4. 成人T細胞白血病ウイルス(HTLV1)キャリアーの母親の場合、母乳が感染源となり得る。
  5. 母乳保育は母子間の情緒関係へ良好な効果が期待できる。
 (答え: b )


28.2才男児。言葉の遅れを主訴に来院した。母親の妊娠分娩歴には異常なく乳児健診で異常を指摘されたこともなかった。現在、独歩可能であるが、意味のある言葉は2-3語のみである。この患児および保護者に対する対応として正しくないものはどれか。
  1. 聴力の異常についての確認が必要である。
  2. 非言語性コミュニケーションがとれているか観察が必要である。
  3. 発達全体の評価が必要である。
  4. 言語発達を促すための言語訓練が必要である。
  5. 遊びや生活の中でコミュニケーションを楽しむ関わりが必要である。
 (答え: d )


29.予防接種禁忌の対象者とならないのはどれか。
  1. 免疫不全症
  2. ステロイドホルモン製剤内服中
  3. 37.5℃以上の発熱
  4. 痙攣の既往
  5. 同じワクチンにおけるアナフィラキシーの既往
 (答え: d )


30.小児の急性糸球体腎炎について正しいのはどれか。
  1. アレルギー性紫斑病が先行することが多い。
  2. 学校検尿で発見されることが多い。
  3. V型アレルギーに分類される疾患である。
  4. 膀胱尿管逆流現象(VUR)が基礎疾患として存在していることが多い。
  5. 尿濃縮能は低下する。
 (答え: c )



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