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DEAD END

2002年10月第一週


10月4日

あのテンション上限なしの征希(4期生)が「あの人は若いわ!」とうめくダーティ珍ことタカシの親父、俺の大学時代のダチの声が虚空をさ迷う・・・「頭に来るとか、腹が立つとか、そんなんやないんやけどな」  しばし沈黙・・・「けどな、なんかな・・・なんか辛いな」

タカシ、受験戦線から離脱。
ダーティ珍の上ずった声は、そのことを俺に知らせる電話のBGM。自分の子供が到底歯が立たないとは分かっていても己の夢に向かって邁進する姿を眺めることは親として至福の一瞬、そして自分の子供が楽な方へと走って行く姿を眺めるのは・・・。
「なんや、少し前に先輩と話して、保育士やったらわざわざ4年制の大学に行かんでも短大で資格が取れるって・・・それで短大を受験するって言うんやけどな・・・」
俺は自分の性格が悪いのは重々承知している。だからこのネタを決して額面通りには受け取るつもりはない。よくある話だ。受験・・・名前さえ書けば合格通知が届く大学ではなく、幾度となく己の臨む山の大きさに押しつぶされそうになるような標的。そんな大学と対峙する生活を、俺は受験生活と呼ぶ。
そこには普通の日常とはかけ離れた生活がある。周りを見渡せば、享楽追求型の高校生たちが街を闊歩している。一歩、自分の部屋に入れば「時代遅れになることは罪悪だ!」と訴えかける娯楽の数々。
それら全てに背を向け、教科書や参考書の狭間をほふく前進する毎日。
そんな受験戦線からのタカシの離脱。たとえそれが短大であろうとも離脱は離脱、もうすぐ潰れそうな大学が氾濫する現在では短大入試、縄跳びの3回跳びをするくらいのレベルだろう。

短大受験への方針変更、すなわち楽しい高校生活への回帰。
所詮、それだけのことだった。
「別に珍しいことじゃねえよ。ウチの塾でも一年に一人や二人、いいもの持ってるのに努力するのを厭いやがる奴がいるよ。もったいないとは思う、でもそ奴が決めたことだ」
「・・・いろいろとすまんかったの」と消え入りそうな福井弁。「気にせんでええよ」「オマエ以外に世話になった人にも連絡せなあかんけど・・・」「それはタカシにさせろ。それが最低限の筋だ」

10月5日

森下が昼過ぎに帰省。声がかすれている、風邪をひいたようだ。「電話あったか?」「誰から?」「タカシ」「いや・・・」 かいつまんで詳細を説明する。その間に暇つぶしにウチのHPのBBSを覗いてみるとタカシからのメッセージ・・・。

投稿者:ダーティ珍jr 投稿日:10月05日 17時07分
 
 え〜こんにちは、タカシです。いきなりですが進路を変更することにしました。それは保育士への道を本気で考えたからです。今まではただ4年間遊ぶために大学を目指し勉強をしていました。しかも受験とあまり関係ない学校だったので、進路も塾頭や先輩に頼りっきりでした。そして保育士の勉強は大学在学中にどうにかしようとかおもっていました。でも、保育士の道はそれほどあまくないし、自分がそんな器用なことができるかと考えると遊びに夢中でとうてい無理だと思いました。それで、仁志先輩に進路の相談をしたら、大学に行きたいのか保育士になりたいのか聞かれました。すごく考えた結果保育士の勉強をできる大学を目指す事にきめました。しかし、調べてみると保育士というのは最近できた言葉らしく、男性が保育の勉強をできる大学は、大阪にはありませんでした。そして、短大で調べても4つしかありませんでした。だから、その4つから進学先をを選ぼうと思っています。
 本当は今までお世話になった人に直接挨拶・お礼を言いたかったのですがこんな方法でしか伝えられなくてすみません。塾頭・大西さん・森下先輩・大森先輩・仁志先輩・高橋先輩には、各教科で本当にお世話になりました。その他にもいろんな先輩が気軽に声をかけてくれたり、親切に教えてくれたり、本当にありがとうございました。あと、夏のはじめの時は、この塾でどう生活していこうとか思ってたけど塾生の人たちともけっこう仲良くなれて、うれしかったです。
 え〜、なんか知らない間に文がとんでもない量になっているので、そろそろ終わりにしたいと思います。今までみなさん本当にありがとうございました。いつかまたみんなと会えるのを待っています。
 乱文お許しください。 
                      敬 具

仁志一人に罪をおっかぶせようとしている。真摯に保育士の道を歩むとはあるが、そのきっかけを作ってくれたのは、自堕落な?大学生活に背を向けて自分の夢をかなえるために短大進学へと誘ってくれたのは仁志先輩だと、のたまってやがる。


仁志は口が裂けても絶対にそんなことは言わない!
タカシがどう書こうと仁志はウチの塾で受験生活を過ごした。ウチの生え抜きの生徒、生え抜きの受験生だ。
絶対に言うはずがねえんだ!


このメッセージには欺瞞が満ちている、腐った匂いがする。
しかし昨日、タカシの親父から聞いた「先輩」というのが福井商業のアホな享楽追求型の先輩だったら無視すれば事足りた。ところがそうではなく、その「先輩」がウチの「仁志」となると話は違う。根底から覆る。それまでの風景は一変・・・再びウチの塾のフィールド、タカシからボールが返ってきたってわけだ。


心の底から保育士を目指すのならば大阪の大学にこだわるのは笑止。どこへだって行けばいい、下宿生活ならば日本福祉大学のある美浜町、大阪の家賃の半分以下だ。さらに保育士になれる大学は大阪にはない・・・これもまた笑止。俺が調べたら2つある。それ以上は馬鹿馬鹿しくて調べなかったが。
あげく4つの短大しかないから、そのいずれかを選ぶ? 
詭弁だ。
楽な短大受験を望むゆえの詭弁にすぎない。
受験生活という異空間からの脱出を願うがゆえの詭弁。
受験生活が嫌なら嫌だと言って尻をまくって逃げ出せばいい、それのほうがはるかに爽やか、さすが毎日風呂に入っているだけのことはあると誉めてやろうか。ウチの塾のモットーは「身体の清潔よりも心の清潔」。心の清潔なくして何が身体を清潔にしましょうだ!
それを保育士云々、真摯に進路をとことん考えましたなんてロダン顔負けのポーズを取るから鼻持ちなんねえ。
その技巧にトチ狂うあまり、世話になったはずの仁志を窮地に追い詰めていることに気づかねえ。

寝起きの仁志と森下が携帯超しにやり合っている。「昨夜はガンダムあったからな」「何やそれ?」「仁志、今起きたとこやって・・・」「で、何やって?」「仁志が言うには電話を切る段階ではタカシ、大学を受けるということでケリがついたようやったのにって」「所詮電話や・・・お互い、多少の思惑のずれはあるやろけどな。でも、このBBSのタカシのメッセージはひでえよ。仁志の面子に泥塗りたくってるよ。こんなこと書いたら仁志が俺に対し、塾に対し、責任感じるやろくらい分からんかったんかいな。仁志のあの性格や、日本中の受験生に対して責任感じよるで。今となって分かったことは短大進学を決めたことを相談相手の仁志には報告せんかったこと。それでいてBBSで衝撃のデビューや、仁志にすりゃ闇夜に後ろからバッサリ切られた格好や。オマエは藤原喜明かってな」 まくし立てる俺を頭痛がするとばかりに制する病み上がりの森下、ボソッとつぶやく。「タカシは自分の言葉がどれだけ人を傷つけるか分かってへんな」
そうなのだ。あまりにも無知、そしてあまりにも残酷なのだ。

俺は保育士の養成では定評のある日本福祉大学のHPをタカシのメッセージの下に貼り付けた。
タイトルは「最後のボレー」 タカシが慇懃無礼に返してきたボールをボレー! それで全て。

10月7日

 投稿者:世古 仁志 投稿日:10月07日 14時45分

 
10月5日、土曜日。俺が平和に午後5時まで寝ていると、森下先輩から電話があり、タカシのことを聞かされた。進路先を保育士の資格が取れる短大に変更したとのこと。タカシから相談があったのは3日前のことだった。保育士の資格が取れる大学に行きたいのなら、できる限りその大学のことを調べて、周りの人に言うてみたら?というような内容を言ったつもりやったんやけど、まさか短大を選ぶなんて…。しかも、タカシのBBS上のコメントを読むと、これで塾との関係を切るみたいな書き方。やっぱり、俺が変なことを言うたんがあかんだんかな。俺みたいになってほしくなかったから、言うたつもりやったんやけど。みなさん、期待の生徒だったのに。。。 すみませんでした。

やっぱり仁志はウチの生徒だった。
「みなさん、期待の生徒だったのに・・・すいませんでした」

あのバカ、謝ってきやがった。あまりにもウチの生徒らしくて涙が出てきたよ。
予想通りの展開・・・タカシのメッセージから2日目、さぞや苦悩したことだろう。
そして福井にはお役御免で、受験生活の辛い辛い(大したことじゃねえが)生活から足を洗ったタカシがどこ吹く風で街を闊歩する。
仁志、時間の無駄だ。あんな奴のために悩むだけの価値は一切ねえよ。

辛い苦しいことから逃げ出すことは所詮は本人の自由、生き様の違いでしかない。むしろ処世術に長けていると誉められる場合もあるやもしれぬ。そのことで保育士としての資質が問われるわけでもない。
しかし逃げ出す己れの弱さを覆い隠し、さも真摯づらして理論武装して、それも先輩を晒し者にまでして、自己を正当化する奴。そんな嘘をつく奴に保育士の資質があるとは、俺には到底思えんね。

追伸

なんやここ数日、ウチのHPのカウンターは上がりっぱなしや。バトルでも期待してんの? やらんよ、ギャラ出してくれよ。せやけどさ、今日(8日)、高2の香奈子にタカシのBBSのメッセージを見せたら「感動しました」だって。これには正直まいった。香奈子は津西のヒト桁、現代文は大西君の薫陶を受けて90%をコンスタントに叩く。そんな香奈子にしてこれやもん。香奈子!そんなんじゃ将来、口先だけの男にだまされちまうぞ。こんな作文、自分の夢を叶えるという美辞麗句にほだされるようじゃ勉強できてもタカがしれてる。そして香奈子タイプのバカがウチの塾にも多く巣食ってるんじゃねえか? ゆえに危機感に苛まれてチョロチョロっと俺のコメント書いてみた。

俺の日記より面白い(悪かったな)と評判の山本愛の日記の中、10月4日分でもタカシの一件が触れられている。

10月4日(公立入試まであと160日)

今日、私が先生の横を通ると、先生が「愛!」と私を呼びとめた。そして「タカシが離脱したぞ!」とすごく笑いながら言った。「ええ!!」 私は驚いた。しかし先生はかまわず続ける。「あいつは保育士になりたいんやけどな、『保育士やったら短大でもなれる』って学校の先輩に言われたらしいんや」 「へええ」 私はただ、うなずくだけだった。それにしても、どうして先生はこんなに笑っているんだろうか? 決して嬉しい話じゃないはずだが・・・。「やっぱり分からん人やわ」 とにかく私は、先生や塾の先輩にいじめられるタカシ先輩をもう見れないと思うと、少し寂しくなったのだった。

 

「タカシが離脱した」と俺が言ったのを愛は「タカシが脱落した」と聞き違えて原稿に書いてきた。HP上には離脱と訂正したおいた。大学から専門学校や短大へ進学することは決して脱落ではない。離脱だ。脱落は落ちる、つまりは上下間、アップダウンの問題。離脱は水平方向、ホリズンタルである。あくまで自己決定、自己責任の世界。ただ、楽をしたいのなら正直に言え!ということ。グチャグチャもっともらしい理由をつけずに、世話になった人を利用せずに、己れだけで勝負せんかい!と言いたいだけや。

征希と昨夜、したたかに酒を飲んだ。タカシの一件も一因ではあった。そのなかで俺の離脱&脱落論議を拝聴した征希が言いおった、「でもね先生、俺はさ、今回の一件、あえて『タカシの脱落』やと位置付けてるよ。だから愛が作文に離脱ではなく脱落と書いたことには支持するよ。だって愛は身体を削って勉強している受験生やもん」

大澤加代という、とてもかわいがった女の子がいた。しかし一生会わないことに決めた。あの前後の学年にすれば理由が分からなかったと思う。今回の一件とほとんど同じシチュエーション。名古屋大学医学部理学療法を目指す過酷な受験生活から抜け出してアメリカへ行く・・・そんな自分の夢を正当化するために「クニちゃん」という先輩をダシに使った。「先輩に相談したら私の思うようにやればいいって」 それでいて相談したはずのクニちゃんには、その報告をしなかった。1ケ月ほど後、クニちゃんは泣きながら俺に謝った。「先生、ごめんなさい。先生が期待していた生徒やったのに。私が勝手なこと言って・・・」「オマエ、それをいつ知った?」「今日・・・」 先輩が泣いたことも知らず、例え知ったにしても歯牙にもかけず加代はアメリカへルンルン気分で旅立った。先輩を利用するだけ利用して・・・そして捨てた。

加代が帰国すると同級の古市舞(三重大教育学部2年)や杉本理恵(三重大医学部看護学科3年)などが俺にしきりに会わせようとする。「加代とは一生会うつもりはねえよ」と言うと「本当は会いたいくせに」と囃し立てる。何度でも言うけどな、俺は加代とは一生会うつもりはない。塾の先輩を自分の都合だけで利用する奴は大嫌いなんだ。

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