ご挨拶





 「大学生は、あんがい孤独かも」。そんなふうに思うことがある。若さあふれてキャンパスを縦横に語らい

ながら歩いているが、それぞれは一匹狼的に孤立しているのだろうか。あるいはそれが青春の本質的な

姿かもしれない。


 だが学生諸君が何気なく綴った「短文」を読むと、一人ひとりの孤独を栄光と感じながらも、同時に人恋し

さでいっぱいという印象をうける。もっと学生同士仲良くなりたい、あるいは恋人がほしい。要するに大学生

もけっこう寂しいのだ。寂しくはないかもしれないけれども、もっと本音で語り合いたい、もっと学生同士が、

つながりを持ちたいと思っている。



 こんど三重大学の共通教育(一般教養)で私が担当している「日本学」の「ホームページ」が開設される

ことになった。「日本学」というタイトルではあるが、実際は「映画入門」講座のような性格を持つ。映画を

見ながら「日本」を考え、「日本人」を再考し、「日本の家族」に思いをはせる、そんな意図を持った講座で

ある。ただし、私の退屈なおしゃべりと堅苦しい講義の内容がインターネットで公表されるのではない。

受講者の諸君が、映画を見ると感想を書く、それらを集めた「感想文集」である。学生諸君が書く感想を

私はかなりこまめにプリントして授業で配布してきている。

はじめのタイトルは「いちにーれーいち(1201)」、以後は「エクラン」である。

そのプリントを今回公開することにした。さらに映画の感想と平行して「雑談」と言い習わしている短文感

想文も書いてもらっているが、それらもいっしょに公開する。「日本学」開講以来三年目を迎えるが、

これまでプリントで配布しつづけてきたもののほぼすべてを収録した。


 学生諸君が書いた映画の感想や雑談が面白い、それにプリント配布の意図を超えて大学生諸君の交

流の場になっている。お互いが映画の感想を書き映画情報を交換する、お互いの考えを知り、生活につ

いて、学校についての意見を交流する。それが新鮮な興味につながったようである。誰かが「浪人時代に

よく聞いていた深夜ラジオみたいで何か一体感がある」と書いているが、そんな感じを多かれ少なかれ、

学生諸君が持ったようだ。「ホームページ」を開いて、「日本学」を受講する学生のものから、もっと広く

開かれたものにするのは、若者達の「一体感」をさらに広い範囲で追求したいからである。交流・交歓

の場を現在・過去の「日本学」の受講生のものから、三重大学全体のものに広げ、あるいは学外にまで

広がっていくことを了解し、さらにそれ以上の拡大を求めるものである。


 学生の本音を吐露した「雑談」をインターネットにのせることについては多少の躊躇もありはしたが、「日

本学」の授業の中で常にプリントその他で「公表」することを前提に書くように言い続けてきたから、今回の

「ホームページ」も許容範囲と判断した。


 さあ、これを読んで、講座生の諸君であるなしを問わず、多くの人々が、映画への思いを書き、青春

の気分を交流するフォーラムとしてのこのホームページに、気楽に気軽に参加してくれることを期待する

ことにしよう。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。1999年6月   三重大学非常勤講師       

共通教育「日本学」担当  吉村英夫

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